説明

排水処理装置

【課題】処理槽から流出した硝化菌を再利用することで、コストを抑えつつ、処理槽における硝化菌の低減を抑制することができ、排水中に含まれるアンモニア性窒素の還元効率を維持する。
【解決手段】排水処理装置400は、アンモニア性窒素の少なくとも一部を硝化する好気性細菌である硝化菌が収容される処理槽410と、処理槽410に排水を導入する排水導入部420と、処理槽410に導入された排水に含まれるアンモニア性窒素の少なくとも一部が硝化菌によって還元された処理水を排出する処理水排出部422と、処理水排出部422によって排出された処理水を遠心分離する遠心分離器430と、遠心分離することによって得られた沈降物を処理槽410に返送する返送部432と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥(硝化菌)を利用した排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物を分解する様々な細菌(以下、これらを総称して有機物分解菌とする)と、アンモニア性窒素を亜硝酸(NO)に酸化する亜硝化菌、および、硝酸(NO)に酸化する硝化菌、亜硝酸を窒素に還元する菌や亜硝酸とアンモニアを直接窒素に還元するアナモックス菌を利用して、排水中に含まれる有機物やアンモニア性窒素(アンモニア態窒素)を除去する技術が知られている。
【0003】
この技術では、まず、有機物分解菌が収容される有機物処理槽に排水を導入して有機物を分解させ第1処理水を得て、当該第1処理水を有機物処理槽から越流させる。続いて、越流した第1処理水を、亜硝化菌が収容された亜硝化処理槽に導入し、アンモニア性窒素を還元して亜硝酸とし第2処理水を得て、当該第2処理水を亜硝化処理槽から越流させる。そして、越流した第2処理水を、アナモックス菌が収容されたアナモックス処理槽に導入し、亜硝酸を還元して窒素とする。こうして、排水から有機物およびアンモニア性窒素が除去される。
【0004】
ここで、有機物分解菌は、フロック(集合体)を形成する能力(以下、フロック形成能と称する)が高いため、有機物処理槽に排水を流通させ、処理後の処理水を有機物処理槽から越流させたとしても、有機物分解菌は有機物処理槽の下方に滞留する。一方、亜硝化菌は、フロック形成能が低いため、亜硝化処理槽に処理水を流通させ、処理後の処理水を越流させると、亜硝化菌が処理水とともに処理槽から流出してしまう。また、アナモックス菌は、フロック形成能は高いものの、増殖速度が非常に低いため、処理水とともに流出した場合、アナモックス処理槽における処理能力の低下が大きくなってしまう。
【0005】
そこで、繊維やフィラメントで構成される網状物、不織布、または、織布からなる支持体にアナモックス菌を付着固定させておき、アナモックス菌が付着固定した支持体ごと処理槽に収容する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。また、亜硝化処理槽から越流した亜硝化菌を回収して亜硝化処理槽に戻すことで、亜硝化処理槽から送出される亜硝酸の濃度をアナモックス処理槽における還元処理(アナモックス処理)に適した濃度に維持する技術も開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4519836号
【特許文献2】特開2010−5554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、排水を処理した処理水の放流基準によっては、排水中に含まれるアンモニア性窒素を窒素まで還元せずとも、亜硝酸性窒素(亜硝酸態窒素)や硝酸性窒素(硝酸態窒素)に還元すればよい場合がある。この場合、アナモックス菌を利用せずとも、亜硝化菌や、アンモニア性窒素を硝酸(NO)に還元する硝化菌を利用すればよいが、亜硝化菌や硝化菌は、有機物分解菌やアナモックス菌と異なりフロック形成能が低いため、処理槽から流出しやすい。
【0008】
ここで、上述した特許文献1の技術を利用することが考えられるが、特許文献1の技術を利用すると、支持体のためのコストがかかったり、支持体に不純物が付着して細菌が死滅してしまったり、菌層が変化してしまったりするおそれがある。また、特許文献2に記載されたようなアナモックス菌は外乱に弱いため、アンモニア性窒素の還元効率を安定化するのが困難である。
【0009】
そこで、本願発明者は、ロバスト性が高く、外乱に強い硝化菌を利用して、排水中のアンモニア性窒素を還元することを検討した。上述したように、硝化菌はフロック形成能が低いため、処理槽から流出しやすいが、硝化菌が有機物分解菌と同様に好気性細菌であることを利用して、硝化菌を有機物分解菌とともに処理槽に収容し、かかる有機物分解菌に硝化菌を付着させることで、有機物分解菌のフロック形成能を利用して、硝化菌の処理槽からの流出を防止することを見出した。
【0010】
しかし、排水のうち、有機物が相対的に少なくアンモニア性窒素が相対的に多い排水がある。このような排水は、上述した有機物分解菌と、硝化菌とを混在させて処理槽に収容したとしても、処理槽から硝化菌が流出してしまうことがある。具体的に説明すると、処理槽に導入される排水中に有機物が少ないため、この排水を処理槽に流通させ続けると、処理槽内の有機物分解菌の量が減少していく。そうすると、処理槽内の硝化菌は有機物分解菌に付着しきれず、処理水とともに処理槽から流出してしまい、処理槽中の硝化菌の濃度が低下する。このため、排水中のアンモニア性窒素の還元が不完全となってしまうことがあった。そこで、有機物分解菌を維持すべく、有機物分解菌の餌となるメタノール等の有機物を処理槽に添加し続けることも考えられるが、コストがかかってしまう。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑み、処理槽から流出した硝化菌を再利用することで、コストを抑えつつ、処理槽における硝化菌の低減を抑制することができ、排水中に含まれるアンモニア性窒素の還元効率を維持することが可能な排水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の排水処理装置は、アンモニア性窒素の少なくとも一部を硝化する好気性細菌である硝化菌が収容される処理槽と、処理槽に排水を導入する排水導入部と、処理槽に導入された排水に含まれるアンモニア性窒素の少なくとも一部が硝化菌によって還元された処理水を排出する処理水排出部と、処理水排出部によって排出された処理水を遠心分離する遠心分離器と、遠心分離することによって得られた沈降物を処理槽に返送する返送部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
上記遠心分離器は、相対遠心加速度100G以上で、1分以上、処理水排出部によって排出された処理水を遠心分離してもよい。
【0014】
上記処理槽に収容される硝化菌は、アンモニア性窒素の少なくとも一部を硝酸または硝酸イオンに変換する硝化菌であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、処理槽から流出した硝化菌を再利用することで、コストを抑えつつ、処理槽における硝化菌の低減を抑制することができ、排水中に含まれるアンモニア性窒素の還元効率を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ガス化ガス生成システムを説明するための説明図である。
【図2】ガス化ガス精製装置および排水処理システムを説明するための説明図である。
【図3】排水処理装置の具体的な構成を説明するための説明図である。
【図4】排水処理方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図5】遠心分離器が、処理水を遠心分離した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
本実施形態にかかる排水処理装置は、有機物と比べてアンモニア性窒素が多く含まれる排水から、有機物およびアンモニア性窒素を除去する。かかる排水処理装置は、様々なプラントから排出される、このような排水を処理することができるが、ここでは、理解を容易にするために、その一例として、ガス化ガス生成システムについて説明し、その後、ガス化ガス生成システムから排出された排水を処理する排水処理装置について詳述する。
【0019】
(ガス化ガス生成システム100)
図1は、ガス化ガス生成システム100を説明するための説明図である。図1に示すように、ガス化ガス生成システム100は、ガス化ガス生成装置110と、ガス化ガス精製装置200とを含んで構成される。図1中、ガスの流れを実線の矢印で、ガス化原料の流れを破線の矢印で、砂の流れを一点鎖線の矢印で、水や油等の液体の流れを白抜きの矢印で示す。
【0020】
ガス化ガス生成システム100は、石油に代えて、石炭やバイオマス、タイヤチップ等の固体原料をガス化してガス化ガスを生成する技術である。ガス化ガス生成システム100では、流動媒体が流動層を形成しているガス化炉内で、水蒸気を利用して、700℃〜900℃程度で固体原料をガス化する(水蒸気ガス化)。
【0021】
このシステムでは、温度を低く設定することでコストを低減することが可能となるが、生成されたガス化ガスには、2000℃の高温で部分酸化して生成したガス化ガスと比較して、タールが多く含まれることとなる。そこで、生成されたガス化ガスを精製するために、ガス化ガス精製装置200が利用されるが、ガス化ガス精製装置200から排出される排水には、有機物がほとんど含まれておらず、アンモニア性窒素が多く含まれている。以下、ガス化ガス生成システム100の具体的な構成について説明する。
【0022】
(ガス化ガス生成装置110)
図1に示すようにガス化ガス生成装置110は、燃焼炉112と、媒体分離装置(サイクロン)114と、ガス化炉116とを含んで構成される。
【0023】
ガス化ガス生成装置110では、全体として、粒径が300μm程度の硅砂(珪砂)等の砂で構成される流動媒体を熱媒体として循環させている。具体的には、まず、流動媒体は、燃焼炉112で1000℃程度に加熱され、燃焼排ガスとともに媒体分離装置114に導入される。媒体分離装置114においては、高温の流動媒体と燃焼排ガスとが分離され、当該分離された高温の流動媒体が、ガス化炉116に導入される。そして、ガス化炉116に導入された流動媒体は、ガス化炉116の底面から導入されるガス化剤(水蒸気、窒素、空気、酸素、不活性ガス等)によって流動層化された後、最終的に、燃焼炉112に戻される。また、媒体分離装置114で分離された燃焼排ガスは、ボイラ等で熱回収される。
【0024】
ガス化炉116は、例えば、気泡流動層(バブリング流動層)ガス化炉であり、褐炭等の石炭、石油コークス(ペトロコークス)、バイオマス、タイヤチップ等の固体原料や、黒液等液体原料のガス化原料を700℃〜900℃でガス化させてガス化ガスを生成する。本実施形態では、ガス化炉116に水蒸気を供給することにより、ガス化原料をガス化させてガス化ガスを生成する(水蒸気ガス化)。ガス化炉116で生成されたガス化ガスX1には、タール(油)、タール以外の固形物粒子(スラッジ)、水蒸気等が含まれているため、下流のガス化ガス精製装置200に送出され、精製される。
【0025】
なお、ここでは、循環流動層方式のガス化炉116を例に挙げて説明するが、ガス化原料をガス化するガス化炉であれば、単なる流動層方式のガス化炉や、砂が自重で鉛直下方向に流下することで移動層を形成する移動層方式のガス化炉であってもよい。
【0026】
(ガス化ガス精製装置200)
図2は、ガス化ガス精製装置200および排水処理システム300を説明するための説明図である。図2に示すようにガス化ガス精製装置200は、改質炉(酸化改質炉)210と、第1熱交換器212と、スプレー塔214と、ミストセパレータ216と、第2熱交換器218と、タール処理部220とを含んで構成される。図2中、ガスの流れを実線の矢印で、水や油等の液体の流れを白抜きの矢印で示す。
【0027】
改質炉210は、ガス化炉116で生成されたガス化ガスX1に酸素や空気を加え、900〜1500℃程度にして、ガス化ガスX1に含まれるタールを改質(酸化改質)する。第1熱交換器212は、改質炉210で改質されたガス化ガスX2と水蒸気との熱交換を行い、すなわち、ガス化ガスX2の顕熱を水蒸気で回収し、ガス化ガスX2の出口温度を300℃〜600℃にする。
【0028】
スプレー塔214は、処理対象であるガス化ガスX2に40℃程度の冷却水をスプレー噴霧することにより、300℃〜600℃となったガス化ガスX2を70℃程度に冷却する。これにより、ガス化ガスX2に含まれるタールやスラッジが凝縮し、ガス化ガスX2から除去され、精製ガスX3と油混合水Y1が生成される。そして、スプレー塔214は、精製ガスX3を下流のミストセパレータ216に供給し、水、タールおよびスラッジで構成される油混合水Y1をタール処理部220に送出する。
【0029】
ミストセパレータ216は、精製ガスX3に、冷却水(水温は40℃程度)を、スプレー塔214における粒径よりも小さい水滴としてスプレー噴霧する。これにより、スプレー塔214では、十分に分離、除去できなかった精製ガスX3に含まれる霧状のタール、スラッジ等が凝縮し、精製ガスX3から除去され、精製ガスX4と油混合水Y2が生成される。そして、ミストセパレータ216は、精製ガスX4を下流の第2熱交換器218に供給し、水、タールおよびスラッジで構成される油混合水Y2をタール処理部220に送出する。
【0030】
第2熱交換器218は、海水、ブライン等を用いて、精製ガスX4を30℃以下にさらに冷却する。これにより、さらに残存したタール、スラッジ等が凝縮し、精製ガスX4から除去され、精製ガスX5(精製ガス化ガス)が生成される。第2熱交換器218で利用された排水Y3は、後述する排水処理システム300に送出される。
【0031】
タール処理部220は、スプレー塔214から送出された油混合水Y1およびミストセパレータ216から送出された油混合水Y2に含まれるタールおよびスラッジを、比重の違いによって水から分離する。
【0032】
ガス化ガス精製装置200の第2熱交換器218で利用された排水Y3は、有機物がほとんど含まれておらず、アンモニア性窒素が多く含まれている排水である。したがって、排水Y3を河川や下水道等の公水に放流するためには、有機物やアンモニア性窒素を放流基準値まで低減する必要がある。そこで、排水処理システム300を利用して、排水Y3から、有機物やアンモニア性窒素を放流基準値まで低減する。
【0033】
(排水処理システム300)
図2に示すように、排水処理システム300は、バッファタンク310と、加圧浮上槽312と、排水処理装置400と、最終沈殿槽314とを含んで構成される。
【0034】
バッファタンク310は、第2熱交換器218で利用された排水Y3を貯留し、加圧浮上槽312へ供給する。加圧浮上槽312は、加圧した空気を排水Y3に導入し、排水Y3に含まれるスラッジ等の浮遊物質を浮上させて除去する。ここで、加圧浮上槽312によって浮遊物質が除去された排水Y4は、有機物と比べてアンモニア性窒素が多く含まれる排水である。排水Y4は、後述する排水処理装置400に導入され、排水処理装置400において、有機物が分解され、アンモニア性窒素が硝酸または硝酸イオンに還元されて処理水Y5となり、最終沈殿槽314に排出される。最終沈殿槽314は、硝化菌および有機物分解菌(以下、双方を合わせて活性汚泥と称する場合もある)と、有機物が分解され、アンモニア性窒素が硝酸または硝酸イオンに還元された処理水Y6とを分離する。そして、最終沈殿槽314で分離された処理水Y6は、放流、または廃棄される。
【0035】
以下、本実施形態において特徴的な排水処理装置400について詳述する。
【0036】
(排水処理装置400)
図3は、排水処理装置400の具体的な構成を説明するための説明図である。図3に示すように、排水処理装置400は、処理槽410と、曝気部412と、排水導入部420と、処理水排出部422と、遠心分離器430と、返送部432とを含んで構成される。
【0037】
処理槽410は、アンモニア性窒素の少なくとも一部を硝化する硝化菌を、有機物分解菌とともに収容する槽である。ここで、有機物分解菌および硝化菌は、好気性細菌であり、かつ、独立栄養細菌である。
【0038】
硝化菌は、以下に示す反応式(1)および(2)、または、反応式(3)に示す硝化工程を経て、アンモニア性窒素の少なくとも一部を硝酸または硝酸イオンに変換する。
NH+3/2O→NO+HO+2H
…反応式(1)
NO+1/2O→NO
…反応式(2)
NH+2O→NO+HO+2H
…反応式(3)
【0039】
処理槽410に、有機物分解菌とともに硝化菌を収容し、有機物分解菌に硝化菌を付着させることで、有機物分解菌のフロック形成能を利用して、硝化菌の処理槽410からの流出を防止することができる。
【0040】
曝気部412は、処理槽410に空気を供給(曝気)する。上述したように、処理槽410に収容される活性汚泥(有機物分解菌および硝化菌)は好気性細菌であるため、曝気部412が処理槽410に空気(酸素)を供給することで、処理槽410において活性汚泥を活性化することができ、処理槽410における有機物の分解効率およびアンモニア性窒素の還元効率を向上させることが可能となる。
【0041】
排水導入部420は、加圧浮上槽312によって浮遊物質が除去された排水Y4を処理槽410に導入する。
【0042】
処理水排出部422は、処理槽410に導入された排水Y4に含まれるアンモニア性窒素の少なくとも一部が硝化菌によって還元された処理水Y4’を排出する。
【0043】
遠心分離器430は、処理水排出部422によって排出された処理水Y4’を遠心分離する。ここで遠心分離器430は、相対遠心加速度100G以上、好ましくは相対遠心加速度300G以上、より好ましくは相対遠心加速度500G以上で、1分以上、処理水Y4’を遠心分離する。なお、本実施形態において遠心分離器430は、間欠的に処理水Y4’を遠心分離する構成について説明したが、例えば、2液分級サイクロンや3液分級サイクロン等の液体サイクロンで遠心分離器430を構成して、処理水Y4’を連続的に遠心分離してもよい。
【0044】
遠心分離器430が処理水Y4’を遠心分離することにより、処理水Y4’から活性汚泥を沈降物として確実に回収することができる。
【0045】
返送部432は、遠心分離器430が処理水Y4’を遠心分離することによって得られた沈降物を処理槽410に返送する。
【0046】
上述したように、排水導入部420を通じて、加圧浮上槽312から処理槽410に導入される排水Y4は、有機物と比べてアンモニア性窒素が多く含まれる排水である。したがって、遠心分離器430および返送部432を設けず、排水Y4を処理槽に流通し続けると、排水Y4中の有機物のみでは、処理槽内の有機物分解菌を維持できず、有機物分解菌の量が減少してしまう。そうすると、処理槽内の硝化菌は有機物分解菌に付着しきれず、処理水とともに処理槽から流出してしまい、処理槽中の硝化菌の濃度が低下する。例えば、遠心分離器430および返送部432を設けず、処理槽に排水Y4を導入し続けると、2週間程度で硝化菌の濃度が半減してしまう。つまり、処理槽に収容されていた硝化菌の半分は、処理水排出部422を通じて排出されてしまう。
【0047】
そこで、処理水排出部422によって排出された処理水Y4’を遠心分離器430が遠心分離することで、処理水排出部422を通じて流出した硝化菌を沈降物として回収することができる。また、返送部432が沈降物として回収された硝化菌を処理槽410に返送する構成により、流出した硝化菌を処理槽410に再度戻すことができ、処理槽410における硝化菌の濃度を維持することが可能となる。
【0048】
また、ガス化炉116における急激な負荷変動等によって排水Y4にベンゼン等が含まれるようになると、処理槽410に収容された活性汚泥の菌層が変化することがある。この場合、有機物分解菌のフロック形成能が低下して(バルキングが発生して)しまうことがあり、有機物分解菌までもが処理水排出部422から流出してしまう。
【0049】
このような事態が発生した場合であっても、遠心分離器430が処理水Y4’を遠心分離することで、処理水排出部422を通じて流出した硝化菌のみならず、有機物分解菌をも沈降物として回収することができる。そして、返送部432が沈降物として回収された硝化菌および有機物分解菌を処理槽410に返送する構成により、流出した硝化菌および有機物分解菌を処理槽410に再度戻すことができ、処理槽410における硝化菌および有機物分解菌の濃度を維持することが可能となる。
【0050】
(排水処理方法)
続いて、排水処理装置400を用いた排水処理方法について説明する。図4は、排水処理方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。処理槽410には、予め、有機物分解菌および硝化菌を収容しておく。
【0051】
図4に示すように、排水導入部420を通じて、加圧浮上槽312から処理槽410へ排水Y4を導入する(S500)。そうすると、処理槽410において、硝化菌が排水Y4に含まれるアンモニア性窒素を還元し、有機物分解菌が有機物を分解することで、排水Y4からアンモニア性窒素および有機物が除去された処理水Y4’が得られる(S502)。
【0052】
続いて、処理槽410から処理水排出部422を通じて、処理水Y4’が排出され、遠心分離器430は、排出された処理水Y4’を遠心分離する(S504)。そして、返送部432は、遠心分離することで得られた沈降物を処理槽410に返送する(S506)。また、上清(処理水Y5)は、最終沈殿槽314に排出される。
【0053】
以上説明したように、排水処理方法によっても、処理槽410から流出した硝化菌を再利用することで、コストを抑えつつ、処理槽410における硝化菌の低減を抑制することができ、排水Y4中に含まれるアンモニア性窒素の還元効率を維持することが可能となる。
【0054】
(実施例)
図5は、遠心分離器430が、処理水Y4’を遠心分離した結果を示す図である。図5に示すように、遠心分離器430が処理水Y4’を、相対遠心加速度500Gで1分間遠心分離した場合であっても、相対遠心加速度1000Gで1分間遠心分離した場合であっても、相対遠心加速度1500Gで1分間遠心分離した場合であっても、処理水Y4’から活性汚泥を確実に沈降させることが分かった。なお、相対遠心加速度を500G、1000G、1500Gと上げるに従って、活性汚泥の沈降量は増加するものの、増加量は低いため、相対遠心加速度が500G程度で遠心分離すれば、活性汚泥を十分に沈降させることができる。
【0055】
したがって、相対遠心加速度500G以上で遠心分離を行えば、確実に活性汚泥を沈降させることができる。また、ここでは示していないが、相対遠心加速度100G以上であれば、相対遠心加速度500Gよりは少ないものの、処理水Y4’から活性汚泥を十分に分離できることが分かっている。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば、上述した実施形態において、排水処理装置400は、有機物が相対的に少なくアンモニア性窒素が相対的に多い排水として、水蒸気ガス化によって生成されたガス化ガスを精製した結果、排出される排水を処理対象としている。しかし、排水処理装置400は、有機物が相対的に少なくアンモニア性窒素が相対的に多い排水であれば、どのような排水でも処理することができ、ガス化ガスを精製した結果、排出される排水に限定されない。
【0058】
また、上述した実施形態において遠心分離器430が遠心分離することで放流基準以下の活性汚泥を沈降物として回収することができれば、最終沈殿槽314を省略することもできる。
【0059】
なお、本明細書の排水処理方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、活性汚泥(硝化菌)を利用した排水処理装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
400 …排水処理装置
410 …処理槽
412 …曝気部
420 …排水導入部
422 …処理水排出部
430 …遠心分離器
432 …返送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア性窒素の少なくとも一部を硝化する好気性細菌である硝化菌が収容される処理槽と、
前記処理槽に排水を導入する排水導入部と、
前記処理槽に導入された排水に含まれるアンモニア性窒素の少なくとも一部が前記硝化菌によって還元された処理水を排出する処理水排出部と、
前記処理水排出部によって排出された処理水を遠心分離する遠心分離器と、
前記遠心分離することによって得られた沈降物を前記処理槽に返送する返送部と、
を備えたことを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記遠心分離器は、相対遠心加速度100G以上で、1分以上、前記処理水排出部によって排出された処理水を遠心分離することを特徴とする請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記処理槽に収容される前記硝化菌は、前記アンモニア性窒素の少なくとも一部を硝酸または硝酸イオンに変換する硝化菌であることを特徴とする請求項1または2に記載の排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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