説明

排水溝内の殺菌装置

【課題】排水溝内に澱む水やゴミの堆積により雑菌が繁殖して異臭が発生したり、雑菌の繁殖による衛生上の問題を解消することができる排水溝内の殺菌装置を提供する。
【解決手段】排水溝1にグレーチング2を押圧圧電素子を組込んだガタ付き防止用のマット4を介在させて装着し、マット4の排水溝側の側端にLEDよりなる殺菌灯6を取付け、殺菌灯6より排水溝内に紫外線を照射する。グレーチング2にはまた光触媒を付着したプレート4を吊持し、ライトの光を当て、殺菌灯6からの紫外線の照射と、光触媒とにより排水溝内に繁殖する雑菌や微生物を殺菌し、腐敗臭等の異臭やかび等の汚れを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレーチング等の溝蓋(以下、単に溝蓋といい、本明細書において溝蓋とはグレーチングを含むものとする)が装着される道路脇の側溝や道路の横断溝、食品工場や厨房等での床排水設備の排水溝(これら側溝や排水溝を本明細書では単に排水溝という)の溝内を殺菌する殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溝蓋としてグレーチングを例にとっていえば、グレーチングは、その多くが鋼製で、道路脇の側溝や床排水設備の排水溝に取付けた同じ鋼製の受枠に装着されるが、受枠に隙間なく装着することは困難で、一部が受枠から浮き上がって、その上を車両が走行したり、歩行者が歩行するとき、グレーチングが受枠に当たって、ガタ付き音を生じがちである。ガタ付き防止のためグレーチングと受枠の間に金属材或いはゴムよりなるマットを介装したものも知られる(特許文献1及び2)。
【0003】
溝蓋が装着される排水溝においては、流れ込んだ水が澱んだり、堆積した有機物が腐敗して異臭を発生させることがあり、食品工場ではとくに床排水設備での雑菌の繁殖は不衛生で、食品の衛生管理上問題である。
【0004】
雑菌対策としては、紫外線照射や光触媒が有効であることが知られ、これを利用してキッチンの生ゴミ粉砕装置やトイレにLEDからなる殺菌灯を設置して紫外線照射を行ったり、食品工場の床排水構内面に光触媒機能体を付着させて、これに光を照射することにより殺菌を行い、また有機物分解を行って排水溝の汚れを除去することなどが提案されている(特許文献3〜5)。
【特許文献1】特開平8−49286号
【特許文献2】特開2005−320768号
【特許文献3】特開2001−112855号
【特許文献4】特開2001−65035号
【特許文献5】特開2002−59178号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、排水溝の雑菌対策として、溝蓋上を車両が走行したり、歩行者が歩行することにより発電して殺菌灯から紫外線照射を行い、これにより排水溝内を殺菌して異臭を除去したり、有機物を分解して排水溝の汚れを除去しようとするもので、そのための殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係わる発明は、排水溝にガタ付き防止用のマットを介在させて装着した溝蓋の前記マットに組み付けられるか、或いはマットを構成する圧電素子と、該圧電素子に接続され、排水溝内に紫外線を照射するためのLEDからなる殺菌灯とからなることを特徴とし、
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、殺菌灯の表面に光触媒を付着させることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明において、溝蓋の表面に光触媒を付着させることを特徴とする。
請求項4に係わる発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、排水溝内に殺菌灯からの紫外線が当てられる光触媒機能体が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係わる発明によると、マットにより溝蓋のガタ付きが防止され、ガタ付きによる騒音を防止できること、溝蓋上を通行する車両や人の動きにより圧電素子が電力を発生させ、これにより殺菌灯から紫外線が排水溝内に照射されて排水溝内に繁殖する雑菌や微生物を殺菌でき、腐敗臭等の異臭やかび等の汚れを除去できること、LEDよりなる殺菌灯は紫外線ランプに比べ、圧電素子からの低電力でも発光でき、電源からの配線を必要としないうえ、ランプのような頻繁な取換えも必要としないこと、人手による排水溝の清掃や薬剤による消毒をなくすか、減らすことができ、また厨房等では薬剤の使用による食品安全上の問題を回避できること、等の効果を奏する。
【0009】
請求項2に係わる発明によると、殺菌灯表面の汚れを光触媒により取り除くことができると共に、紫外線照射と、光触媒による殺菌作用が相俟って排水溝内での殺菌作用や有機物の分解作用を高めることができる。
【0010】
請求項3に係わる発明によると、溝蓋の殺菌と共に、有機物の分解作用による溝蓋の汚れを除去することができる。
請求項4に係わる発明によると、紫外線照射と、光触媒による殺菌作用が相俟って排水溝内での殺菌作用や有機物の分解作用を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の殺菌装置について図面により説明する。
図1は、排水溝1に装着した溝蓋としてのグレーチング2を示すもので、グレーチング2は既知の構造のもの、例えば鋼製で、主部材2aとツイストバーよりなる補助部材2bを格子状に組合わせたもので、排水溝1の開口部上縁の段部3に押圧圧電素子を組み込んだガタ付き防止材、好ましくは合成樹脂又はゴム製の弾性マット4を介在させてガタ付きのないように装着されている。このマット4は、グレーチング2の側縁に固定したベースプレート5にボルト、ネジ、リベット或いは接着剤や両面粘着テープにより取付けられるか、排水溝1の前記段部3に接着剤や両面粘着テープにより取付けられ、或いはベースプレート5と段部3のいずれにも固定しないで段部3とベースプレート4との間に単に置かれ介装される。
【0012】
押圧圧電素子は、グレーチング2上を通行する車両や歩行者等により荷重が加えられたときと、その荷重がなくなったときに発電するもので、発生した電気エネルギーは図示しないコンデンサ又はバッテリーに蓄電されるようになっている。
弾性マット4には、排水溝側の側端にLEDよりなる殺菌灯6が図2に示すように排水溝1の長手方向に等間隔で排水溝内に突出して設けられている。この各殺菌灯6は前記コンデンサ又はバッテリーに接続され、該コンデンサ又はバッテリーを電源として紫外線を排水溝内に連続して照射できるようにしている。
【0013】
図3に示すものでは、前述する殺菌灯6が弾性マット4より斜め下向きに突設され、紫外線が排水溝側壁および底壁に照射されるようにしている。
【0014】
図4に示す実施形態においては、図5に示すように殺菌灯6を長手方向に一定間隔で取り付けた例えば鋼板、合成樹脂またはゴムよりなる細板8がグレーチング2中央の補助部材2bに引掛けられるハンガー9により支持され、圧電素子に接続された図示しないコンデンサ又はバッテリーと殺菌灯6が導線10にて接続されている。
【0015】
図6及び図7は、細板に取付けられる殺菌灯の別の例を示すもので、細板12には、殺菌灯6が下向き、右斜め下向き及び左斜め下向きと順に細板長手方向に取り付けられ、図7に示すように、図示しないコンデンサ又はバッテリーに接続された殺菌灯6から紫外線が排水溝内に万遍なく連続して照射できるようにしている。
【0016】
前記実施形態の殺菌灯6は、横向き、下向き、或いは斜め下向きに固定されているが、細板8、12に例えば弾性マット4と導線10にて接続される球軸受を介して取付けるようにすれば、殺菌灯6を向き調整して任意の向きに向けることができる。
【0017】
図8に示す実施形態においては、弾性マット4より殺菌灯6が斜め下向きに突設され、グレーチング中央の補助部材2bに引掛かって支持されるハンガー13には、光触媒を全面に付着させたプレート14が排水溝1の溝底に着床して支持されている。このプレート14には殺菌灯6から紫外線が照射されるが、殺菌灯6とは別に設けた前記コンデンサ又はバッテリーを電源として発光するライト或いは太陽灯や厨房、食品工場等の照明のライトが当てられることによっても殺菌作用が行われる。
【0018】
別の実施形態においては、殺菌灯6の表面に光触媒が付着され、更に別の実施形態においては、グレーチング2の表面に光触媒が付着され、殺菌と共に有機物の付着による汚れが除去できるようにされる。
【0019】
本発明の実施形態の殺菌灯は前述するように、紫外線を照射して殺菌作用や有機物の分解作用を行うが、紫外線のほか可視光線を照射させるようにすれば、夜間での照明機能を持たせることもできる。紫外線を照射するLEDに代えて照明用のLEDを用いてもよい。夜間にコンデンサやバッテリーを電源として照明用のLEDから可視光を発光させることにより次のような効果、例えば
1)車両や歩行者に対する夜間通行時の照明として使用できること
2)グレーチング等の溝蓋や路肩に取り付けて点滅させ、或いは連続して発光させることにより、車両や歩行者が通路を通行する際の視線誘導として利用でき、とくに車両に対する路肩はみ出しや急カーブ等の警告に有効であること
3)LEDに赤、青、緑、黄、白などの種々の色のLEDを用いることによりイルミネーションとしての機能を持たせることができること
などの効果を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】グレーチングを弾性マットを介在させて装着した排水溝の断面図。
【図2】殺菌灯を取り付けた弾性マットを排水溝に取付けた状態を示す平面図。
【図3】殺菌灯を斜め下向きに取付けた弾性マットの断面図。
【図4】殺菌灯を取り付けたプレートをハンガーにより吊持した状態を示す断面図。
【図5】図4に示すプレートの斜視図。
【図6】プレートの別の態様を示す斜視図。
【図7】図6に示すプレートの断面図。
【図8】別の態様の殺菌装置を備えた排水溝の断面図。
【符号の説明】
【0021】
1・・排水溝
2・・グレーチング
2a・・主部材
2b・・補助部材
3・・段部
4・・弾性マット
5・・ベースプレート
6・・殺菌灯
8・・細板
9、13・・ハンガー
10・・導線
12・・細板
14・・プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水溝にガタ付き防止用のマットを介在させて装着した溝蓋の前記マットに組み付けられるか、或いはマットを構成する圧電素子と、該圧電素子に接続され、排水溝内に紫外線を照射するためのLEDからなる殺菌灯とからなることを特徴とする排水溝内の殺菌装置。
【請求項2】
前記殺菌灯には表面に光触媒を付着させることを特徴とする請求項1記載の排水溝内の殺菌装置。
【請求項3】
前記溝蓋には表面に光触媒を付着させることを特徴とする請求項1又は2記載の排水溝内の殺菌装置。
【請求項4】
排水溝内に殺菌灯からの紫外線が当てられる光触媒機能体が設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の排水溝内の殺菌装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−95917(P2010−95917A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268036(P2008−268036)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【Fターム(参考)】