説明

排水負荷計算支援システム

【課題】排水設計の知識や経験を備えていない顧客が信頼性の高い安定した設計を行うとともに、取扱業者が顧客及び物件についての情報を早期に且つ確実に取得することができる排水負荷計算支援システムを提供する。
【解決手段】中央装置2が、予め設定してある排水負荷計算の適用条件による制限を加えつつ、既存の給排水設備基準に基づいて排水管の排水負荷計算を実行するとともに、その計算結果に計算要求した顧客10の情報と計算対象の物件の情報とを加えて生成した可視情報Vを所定の業者情報処理装置3に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客の希望に応じて、中央装置が多数階建築物の物件に配管する配水管の排水負荷を計算する排水負荷計算支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集合住宅、ホテル及びオフィスビルなどの多層階建築物に排水管を配管する場合、以下の手順により排水設計を行っている。まず、排水管系統図及び間取り図などの図面を確認する。次に、社団法人空気調和・衛生工学会規格の「SHASE−S206」に基づいて、排水管に接続する衛生器具の種類及び個数などに応じた、この排水管を流れる負荷流量を算出する。最後に、算出した負荷流量を上回る許容流量を有する排水管の種類及び管径を決定する。
【0003】
しかし、従来の排水設計において、例えば、横主管については、洗濯排水が流入する排水管系統を有する場合、物件の最下層に配管する横主管に洗濯泡が充満して管内の空気の流れが変化するため、このような変化要因を考慮した上で管径を選定する必要がある。すなわち、図面から横主管の長さ寸法を確認し、その長さ寸法が基準である所定の寸法より長い場合、この横主管の管径を、決定したものより大きくする必要がある。また、立て管については、上階と下階との間取りが異なる場合、上下階を貫く排水管にオフセットが生じるため、ループ通気などによる通気対策を採用するか、排水管の管径を決定したものより大きくする必要がある。
【0004】
このように、従来の排水設計は、図面を確認して多種多様な変化要因を考慮しながら個別に検討していく必要があるため、作業が長時間に及ぶとともに、設計者の経験や勘に基づくところが多大となり、信頼性の高い安定した設計を行うことが困難となる。かかる問題を解決するために、設計段階において、排水管系統を組み立て、実際に排水を流して排水負荷などを検証する試みがなされている。このようにして得られた実験結果は、信頼性が非常に高く安定した設計を可能とする一方、手間と費用を甚大にする。
【0005】
そこで、実験結果から予測されるパラメータを変更することが可能な演算式を導き出し、この演算式に基づいて対象となる排水管系統の排水負荷などを予測演算することができる検証方法と、この方法の実施に使用する装置と、コンピュータをこの装置として機能させるためのコンピュータプログラムと、コンピュータプログラムを記録する記録媒体とが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3561800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された検証方法などは、排水設計の知識や経験を備えていない顧客が自ら実行するには困難である。そのため、顧客は、手間と費用を要して取扱業者に依頼することを強いられる。また、より信頼性の高い安定した設計を得ようとする場合には、より大きな手間と費用とを要して、複数の取扱業者に依頼し、入手した複数の計算結果を比較検討する必要がある。
【0008】
また、取扱業者にあっては、特許文献1に記載された検証方法などを用いることによって信頼性の高い安定した設計を行うことが可能となるが、まずは、設計を希望する顧客の存在を知って工事受注の機会を得ることが重要である。しかし、これらの情報は、営業担当者の人脈や営業活動に依るところが大きいため、早期に且つ確実に、取扱業者により入手されることはない。
【0009】
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、中央装置が、予め設定してある排水負荷計算の適用条件による制限を加えつつ、既存の給排水設備基準に基づいて排水管の排水負荷計算を実行するとともに、その計算結果に計算要求した顧客の情報と計算対象の物件の情報とを加えて生成した可視情報を所定の業者情報処理装置に送信することにより、排水設計の知識や経験を備えていない顧客が信頼性の高い安定した設計を行うとともに、取扱業者が顧客及び物件についての情報を早期に且つ確実に取得することができる排水負荷計算支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る排水負荷計算支援システムは、顧客の希望に応じて、中央装置が多数階建築物の物件に配管する配水管の排水負荷を計算する排水負荷計算支援システムであって、前記中央装置と、該中央装置と通信網を介して接続可能な、前記排水負荷計算を希望する顧客が利用可能な顧客情報処理装置と、排水管設備の取扱業者が利用可能な複数の業者情報処理装置とを備え、前記顧客情報処理装置は、顧客が入力した、顧客の連絡先を含む顧客情報と、前記物件の所在地を含む物件情報とを受け付ける第1受付手段と、顧客が入力した、前記物件の多層階を貫いて配管する立て管と前記物件の最下層に配管する横主管とで構成される同一系統の排水管に接続する衛生器具の種類及び個数を受け付ける第2受付手段と、前記第1及び2受付手段により受け付けた各情報を前記中央装置に送信する送信手段とを備え、前記中央装置は、前記衛生器具の種類及び個数に応じた排水管の種類及び管径を求める手法を含む所定の給排水設備基準を格納するデータ格納手段と、前記顧客情報処理装置から送信された各情報を受け付ける受付手段と、予め設定してある排水負荷計算の適用条件のもと、前記データ格納手段から読み出した所定の給排水設備基準に基づいて、受け付けた前記衛生器具の種類及び個数に応じた排水管の種類及び管径を決定する決定手段と、決定した排水管の種類及び管径を含む排水負荷計算結果に、受け付けた前記顧客情報及び物件情報を加えて顧客が視認し得る可視情報を生成する生成手段と、生成した該可視情報を、前記顧客情報処理装置と、前記複数の業者情報処理装置のうちのいずれかの業者情報処理装置とに送信する送信手段とを備えることを特徴とする
【0011】
本発明にあっては、中央装置が、予め設定してある排水負荷計算の適用条件による制限を加えつつ、既存の給排水設備基準に基づいて排水管の排水負荷計算を実行することにより、排水設計の知識や経験を備えていない顧客が、設計者の経験や勘に頼ることなく、短時間に、且つ、信頼性の高い安定した設計を行うことができる。
また、その計算結果に計算要求した顧客の情報と計算対象の物件の情報とを加えて生成した可視情報を所定の業者情報処理装置に送信することにより、取扱業者が顧客情報及び物件情報を早期に且つ確実に取得する。
【0012】
また、本発明に係る排水負荷計算支援システムは、生成した前記可視情報を送信する、いずれかの業者情報処理装置は、前記顧客の連絡先又は物件の所在地を管轄する前記取扱業者が利用可能な業者情報処理装置であることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、計算要求した顧客及び計算対象の物件についての情報を、この顧客の連絡先又は物件の所在地を管轄する取扱業者が利用可能な業者情報処理装置に送信することにより、取扱業者が、工事受注を得やすい管轄内の物件の情報を早期に且つ確実に取得する。
【0014】
また、本発明に係る排水負荷計算支援システムは、前記顧客情報処理装置は、顧客が入力した、予め設定してある排水負荷計算の適用条件を確認した旨の確認情報を受け付けた場合、該確認情報を前記中央装置に送信し、前記中央装置は、前記顧客情報処理装置から送信された前記確認情報を受け付けた場合に、前記排水管の排水負荷計算を実行するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、顧客が、予め設定してある排水負荷計算の適用条件を全て確認した後に、排水管の排水負荷計算を実行することにより、顧客が納得した状態で排水負荷計算した結果を顧客に提供する。特に、この結果が顧客に対する検討書や保証書となる場合には有用である。
【0016】
更にまた、本発明に係る排水負荷計算支援システムは、前記中央装置は、前記顧客情報処理装置から受け付けた各情報のいずれかが、予め設定してある排水負荷計算の適用条件から逸脱していると判定した場合、逸脱している旨の報知情報を前記顧客情報処理装置に送信するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、顧客が入力した情報が、予め設定してある排水負荷計算の適用条件から逸脱していると判定した場合に、その旨を顧客に報知することにより、顧客が誤解することがない状態で排水負荷計算した結果を顧客に提供する。特に、この結果が顧客に対する検討書や保証書となる場合には有用である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、排水設計の知識や経験を備えていない顧客が信頼性の高い安定した設計を行うとともに、取扱業者が顧客及び物件についての情報を早期に且つ確実に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る排水負荷計算支援システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】図1の排水負荷計算支援システムが備える中央装置のCPUの機能を説明するためのブロック図である。
【図3】図1の排水負荷計算支援システムが備える顧客情報処理装置の表示手段が表示する第1受付画面の一例を示す図である。
【図4】図1の排水負荷計算支援システムが備える顧客情報処理装置の表示手段が表示する第2受付画面の一例を示す図である。
【図5】図1の排水負荷計算支援システムが備える顧客情報処理装置の表示手段が表示する排水負荷計算結果を表す画面の一例を示す図である。
【図6】図1の排水負荷計算支援システムが備える顧客情報処理装置の表示手段が表示する第2受付画面において、入力情報が予め設定してある排水負荷計算の適用条件から逸脱している場合に表示される報知情報の一例を示す図であり、(a)は逸脱している旨のダイアログボックスを用いて表示する一例を示す図、(b)は逸脱している箇所を異なる背景色を用いて表示する一例を示す図である。
【図7】図6とは異なる、図1の排水負荷計算支援システムが備える顧客情報処理装置の表示手段が表示する第2受付画面において、入力情報が予め設定してある排水負荷計算の適用条件から逸脱している場合に表示される報知情報の一例を示す図である。
【図8】図1の排水負荷計算支援システムが備える中央装置が生成した可視情報の一例を示す図である。
【図9】図1の排水負荷計算支援システムが備える中央装置が生成した可視情報の一例を示す図であり、(a)は立て管などの種類及び管径を表す可視情報の一例を示す図、(b)は横主管の種類及び管径を表す可視情報の一例を示す図である。
【図10】図1の排水負荷計算支援システムが備える中央装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図1の排水負荷計算支援システムが備える中央装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る排水負荷計算支援システムを実施の形態を示す図面に基づいて以下説明する。図1に示すように、排水負荷計算支援システムは、排水負荷計算を希望する顧客10が利用可能な顧客情報処理装置1と、顧客10の希望に応じて、多数階建築物の物件に配管する排水管の排水負荷を計算する中央装置2と、排水管設備の取扱業者30が利用可能な業者情報処理装置3とを備える。これらは、通信網NWを介して接続する。
【0021】
顧客情報処理装置1は、顧客が利用可能なパーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(Personal Digital Assistant)及びスマートフォン(Smartphone)などが該当する。顧客情報処理装置1は、情報を画像出力する表示部11と、顧客10が入力した情報を受け付ける入力部12と、情報を紙媒体Pとして出力する印字装置13と、通信網NWを介して外部と通信するための通信部(図示せず)とを備える。
【0022】
表示部11は、画面出力する表示手段である。入力部12は、顧客10が入力した情報を受け付ける第1及び2受付手段である。印字装置13は、情報を紙媒体Pとして出力する印字手段である。通信部は、通信網NWを介して中央装置2との間で情報を伝送するための通信手段である。
【0023】
顧客情報処理装置1は、通信部を介して中央装置2から送信された情報を受信し、受信した情報を表示部11を介して画面出力し、入力部12を介して顧客10が入力する情報を受け付け、受け付けた情報を通信部を介して中央装置2に送信する。また、顧客情報処理装置1は、中央装置2から送信された可視情報Vを通信部を介して受信し、受信した可視情報Vを表示部11を介して画面出力するとともに、印字装置13を介して紙媒体Pとして出力する。
【0024】
業者情報処理装置3は、排水管設備の取扱業者30が利用可能なパーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(Personal Digital Assistant)又はスマートフォン(Smartphone)などが該当する。
【0025】
取扱業者30は、複数の営業所を備えている。各営業所は、例えば、行政区画に基づき分割された営業担当エリア内に少なくとも一つ設置されている。業者情報処理装置3は、各営業所に設置されている。即ち、本発明において、業者情報処理装置3は、複数存在する。
【0026】
業者情報処理装置3は、情報を画像出力する表示部31と、取扱業者30の担当者が入力した情報を受け付ける入力部32と、イントラネットLANを介して接続可能な、可視情報Vなどを格納する可視情報データベース(以下「可視情報DB」という)33と、通信網NWを介して外部と通信するための通信部(図示せず)とを備える。
【0027】
業者情報処理装置3は、通信部を介して中央装置2から送信された可視情報Vなどの情報を受信し、受信した情報を表示部31に画面出力するとともに、受信した可視情報VをイントラネットLANを介して可視情報DB33に格納する。
【0028】
可視情報DB33には、受信順に並べて可視情報が格納され、格納されている可視情報が、担当者の操作により適宜読み出され、読み出された可視情報が、例えば、印字装置(図示せず)を介して紙媒体として出力されて営業担当者に伝達される。
【0029】
中央装置2は、システムの管理会社や取扱業者30の本社などに設置されている電子計算機である。中央装置2は、顧客情報処理装置1から送信された情報を受信し、受信した情報に基づいて、顧客10の希望に応じた排水負荷計算を実行し、実行した排水負荷計算の結果から可視情報Vを生成して、生成した可視情報Vを顧客情報処理装置1及び所定の業者情報処理装置3に送信する。
【0030】
中央装置2は、記録媒体200に記録してあるコンピュータプログラムなどを読み取る外部記憶装置20と、通信網NWを介して外部と通信するための通信I/F21と、データを一時記憶する主記憶22と、データを記憶する補助記憶装置23と、入力装置(図示せず)を介して入力された情報を受け付ける入力I/F24と、出力装置(図示せず)を介して情報を出力する出力I/F25と、これらを制御するとともに排水負荷計算などを実行するCPU26とを備え、各部は、バス27を介して接続する。
【0031】
外部記憶装置20は、記録媒体200に記録してあるコンピュータプログラム及びデータを読み取る。コンピュータプログラムは、例えば、電子計算機である中央装置2に排水負荷計算を実行させるための応用プログラムや可視情報Vを生成するための応用プログラムである。データは、後述するデータなどが該当する。
【0032】
通信I/F21は、通信網NWを介して顧客情報処理装置2及び業者情報処理装置3との間で情報を伝送するための窓口及びその制御を担うものであり、顧客情報処理装置1から送信された情報を受け付ける受付手段であり、顧客情報処理装置1及び所定の業者情報処理装置3に情報を送信する送信手段である。
【0033】
主記憶22は、CPU26が排水負荷計算などを実行する際に生じたデータを一時的に記憶する。主記憶22は、SDRAM(Synchronous DRAM)又はSRAM(Static RAM)などの半導体が該当する。
【0034】
補助記憶装置23は、外部記憶装置20、通信I/F21及び入力I/F24により受け付けた情報を格納するデータ格納手段であり、コンピュータプログラム、画面データ230、適用条件データ231、給排水設備基準データ232、配管基礎データ233及び営業所データ234などを格納する。
【0035】
画面データ230は、顧客情報処理装置1の表示部11に表示する画面データであり、図3に示す第1受付画面、図4に示す第2受付画面、図5に示す排水負荷計算結果を表す画面並びに図6及び7に示す報知情報BRを示す画面に関するデータを含む。
【0036】
適用条件データ231は、排水負荷計算を実行する場合に前提となる適用条件であり、取扱業者30により予め設定されている。例えば、本実施の形態において、適用条件の第1条件は、多数階建築物を20階規模以下の集合住宅などに限定することである。第2条件は、立て管の途中にオフセットを設けないことである。第3条件は、サブ横主管のオフセット高さを4m以下とすることである。ここで、サブ横主管とは、複数の立て管から横引き管が合流して1本となる横引き管(メイン横主管)までの各横引き管をいう。第4条件は、最下階系統の排水は立て管に合流させることなく別系統の排水管を設置することである。また、その他の条件としては、対象となる排水システムを単管式排水システムに限定すること、対象となる排水管を所定の商品に限定すること、多数階建築物を20階規模以下の集合住宅などであっても大小便器から流れる汚水排水とそれ以外の衛生器具から流れる雑物排水とが同一系統の排水管に合流する場合は17階規模以下に限定すること、などである。
【0037】
給排水設備基準データ232は、排水負荷計算を実行する場合に必須のデータであり、例えば、本実施の形態において、給排水設備基準データ232は、既存する、社団法人空気調和・衛生工学会規格のSHASE−S218「集合住宅の排水立て管システムの排水能力試験法」によりシステム全体の許容排水量を求める手法、同規格のSHASE−S206「定常流量法」により衛生器具の種類及び個数に対応する排水管の負荷流量を求め、求めた負荷流量を上回る許容排水量を有する排水管の種類及び管径を求める手法、などについてのデータである。
【0038】
配管基礎データ233は、立て管及び横主管の種類、立て管及び横主管の管径、立て管及び横主管の種類及び管径に応じた許容排水量、衛生器具の種類、衛生器具の排水量、立て管と横主管との接続関係に基づいて、同一系統の排水管を構成する立て管とこれが合流する横主管とを把握するためのデータ、などであり、給排水設備基準データ232と併せて用いられる。
【0039】
営業所データ234は、複数の業者情報処理装置3のうち、顧客10の連絡先又は物件の所在地を管轄する取扱業者30の営業所に設置されている業者情報処理装置3を選定するためのデータであり、例えば、行政区画に基づき分割された営業担当エリアと、営業担当エリア内に設置された業者情報処理管理装置3の識別情報とを対応付けて含んでいる。
【0040】
入力I/F24は、キーボードやマウスなどの入力装置(図示せず)に入力された情報を受け付ける窓口及びその制御を担う。また、出力I/F25は、モニタやスピーカなどの出力装置(図示せず)に情報を出力する窓口及びその制御を担う。
【0041】
CPU26は、図2に示すように、補助記憶装置23に記憶してあるプログラム及びデータを読み出し、これらを用いて以下の機能を発揮する。
【0042】
CPU26は、補助記憶装置23に記憶してある適用条件データ231、給排水設備基準データ232及び配管基礎データ233を読み出して、負荷流量算出部260として機能する。負荷流量算出部260は、読み出したデータに基づいて、衛生器具の種類及び個数に応じて、この衛生器具が接続する排水管の負荷流量を算出する。
【0043】
CPU26は、補助記憶装置23に記憶してある適用条件データ231及び配管基礎データ233を読み出して、管構成把握部261として機能する。管構成把握部261は、読み出したデータと、顧客情報処理装置1から受け付けた立て管と横主管との接続関係とに基づいて、同一系統の排水管を構成する立て管とこれが合流する横主管とを把握する。
【0044】
CPU26は、補助記憶装置23に記憶してある適用条件データ231、給排水設備基準データ232及び配管基礎データ233を読み出して、排水管種類等決定部262として機能する。排水管種類等決定部262は、読み出したデータと、算出した排水管の負荷流量と、把握した排水管の構成とに基づいて、衛生器具の種類及び個数に応じて、この衛生器具が接続する排水管の種類及び管径を、同一系統の排水管を構成する立て管及び横主管に分類して決定する。
【0045】
CPU26は、補助記憶装置23に記憶してあるコンピュータプログラムを読み出して、可視情報生成部263として機能する。可視情報生成部263は、読み出したコンピュータプログラムに基づいて、決定した排水管の種類及び管径に、顧客情報処理装置1から受け付けた顧客情報及び物件情報を加えて、顧客10が視認し得る可視情報Vを生成する。
【0046】
CPU26は、補助記憶装置23に記憶してあるコンピュータプログラム及び営業所データ234を読み出して、通信制御部264として機能する。通信制御部264は、読み出した営業所データ234に基づいて、受け付けた顧客10の連絡先又は物件の所在地を管轄する取扱業者30の営業所に設置されている業者情報処理装置3の識別情報を抽出し、抽出した識別情報に従い、該当する業者情報処理装置3に可視情報Vを送信する。
【0047】
CPU26は、上述する複数の機能を発揮させることにより、以下の処理を実行する。顧客情報処理装置1は、顧客10が入力した受付画面の出力要求を入力部12を介して受け付けて中央装置2に送信する。CPU26は、顧客情報処理装置1から送信された受付画面の出力要求を通信I/F21を介して受け付ける。
【0048】
CPU26は、受け付けた出力要求に応じて、補助記憶装置23に記憶してある第1受付画面データを読み出し、読み出した第1受付画面データを顧客情報処理装置1に送信する(ステップS101)。顧客情報処理装置1は、受信した第1受付画面を表示部11を介して出力する。第1受付画面は、顧客10が希望する取扱業者30の営業所を選択する入力欄と、物件の名称及び所在地を含む物件情報を入力する入力欄と、顧客10の名称及び連絡先を含む顧客情報を入力する入力欄と、物件の階数規模を入力する入力欄と、適用条件の確認欄を表示する(図3参照)。但し、この時点において、第1受付画面は、最下部にある「計算書作成」のボタンが非表示又は半透明状態となっている(図3の白抜き文字部分を参照)。顧客情報処理装置1は、顧客10が入力欄に入力した顧客情報及び物件情報などと、確認欄に入力した適用条件の確認情報とを入力部12を介して受け付け、中央装置2に送信する。
【0049】
CPU26は、顧客情報処理装置1から送信された、入力欄の入力された顧客情報及び物件情報などを受け付ける(ステップS102)。CPU26は、受け付けた情報の有無を確認して、第1受付画面が表示する全ての入力欄にデータが入力されているか否かを判定し(ステップS103)、全ての入力欄にデータが入力されていないと判定した場合(ステップS103でNO)、ステップS102に戻り、入力欄へのデータの再入力を待つ。
【0050】
一方、CPU26は、全ての入力欄にデータが入力されていると判定した場合(ステップS103でYES)、確認欄に入力された適用条件の確認情報を受け付ける(ステップS104)。CPU26は、第1受付画面が表示する全ての適用条件が確認されているか否かを判定し(ステップS105)、全ての適用条件が確認されていないと判定した場合(ステップS105でNO)、全ての処理を終了する。
【0051】
一方、CPU26は、全ての適用条件が確認されていると判定した場合(ステップS105でYES)、第1受付画面の最下部にある「計算書作成」ボタンを表示する(図3の引き出し部分を参照)。CPU26は、入力部12を介して「計算書作成」ボタンが押下された場合、補助記憶装置23に記憶してある第2受付画面データを読み出し、読み出した第2受付画面データを顧客情報処理装置1に送信する(ステップS106)。顧客情報処理装置1は、受信した第2受付画面を表示部11を介して出力する。第2受付画面は、一又は複数の立て管に接続する衛生器具の種類及び個数を系統毎に分類して入力する「立て管入力欄」と、立て管とこれが合流する横主管との接続関係を系統毎に入力する「メイン横主管入力欄」とを表示する(図4参照)。顧客情報処理装置1は、顧客10が入力部12を介して入力した情報を受け付けて中央装置2に送信する。
【0052】
CPU26は、「立て管入力欄」を介して入力された、立て管に接続する衛生器具の種類及び個数を系統毎に受け付ける(ステップS107)。また、CPU26は、「メイン横主管入力欄」を介して入力された、立て管とこれが合流する横主管との接続関係を系統毎に受け付ける(ステップS108)。具体的には、CPU26は、立て管の系統番号(1、2、3、…)をこれが接続する横主管の系統番号(A、B、C、…)毎に関連付けて、情報を受け付ける。CPU26は、関連付けられた立て管と横主管とを同一系統の排水管を構成すると把握する。
【0053】
CPU26は、入力部12を介して「管種選定」ボタンが押下されることにより、顧客情報処理装置1から計算要求を受け付けた場合(ステップS109)、補助記憶装置23に記憶してある適用条件データ231を読み出す。CPU26は、読み出した適用条件データ231が含む適用条件から、顧客情報処理装置1から受け付けた各情報のいずれかが逸脱しているか否かを判定し(ステップS110)、受け付けた情報のいずれかが適用条件から逸脱していると判定した場合(ステップS110でYES)、報知情報BRを顧客情報処理装置1に送信する(ステップS111)。顧客情報処理装置1は、中央装置2から送信された報知情報BRを受け付け、受け付けた報知情報BRを表示部11を介して出力する。例えば、本実施の形態において、同一系統の排水管に接続可能な衛生器具は、適用条件の第1条件及び第4条件に従い、19階規模分に限られる。そのため、図6(a)及び(b)に示すように、同一系統の排水管に接続する衛生器具の個数が20以上となる場合、報知情報BRを出力する。また、汚水排水と雑物排水とが同一系統の排水管に合流する場合は17階規模以下に限定するという適用条件に従うため、図7に示すように、同一系統の排水管に接続する衛生器具の個数が19となる場合、報知情報BRを出力する。CPU26は、ステップS107に戻り、入力欄への正しいデータの入力を待つ。
【0054】
一方、CPU26は、受け付けた情報のいずれもが適用条件から逸脱していないと判定した場合(ステップS110でNO)、補助記憶装置23に記憶してある給排水設備基準データ232及び配管基礎データ233を読み出し(ステップS112)、読み出した各データに基づいて、排水負荷計算処理を実行する(ステップS113)。具体的には、排水負荷計算処理において、CPU26は、負荷流量算出部260として、読み出したデータに基づいて、衛生器具の種類及び個数に応じて、この衛生器具が接続する排水管の負荷流量を算出する。次に、管構成把握部261として、立て管の系統番号とこれが接続する横主管の系統番号との関連付けに基づいて、同一系統の排水管を構成する立て管とこれが合流する横主管とを把握する。最後に、排水管種類等決定部262として、算出した排水管の負荷流量と、把握した排水管の構成とに基づいて、それに接続する衛生器具の種類及び個数に対応する排水管の種類及び管径を決定する。
【0055】
CPU26は、決定した排水負荷計算結果を表す画面データを、計算要求をした顧客情報処理装置1に送信する(ステップS114)。顧客情報処理装置1は、受信した画面を表示部11を介して出力する。排水負荷計算結果を表す画面は、「立て管入力欄」に、同一系統を構成する立て管及びサブ横主管の種類及び管径を系統毎に分類して表示し、「メイン横主管入力欄」に、各系統の立て管と同一系統を構成するメイン横主管の管径を表示する(図5参照)。
【0056】
CPU26は、入力部12を介して画面の右上隅にある「データ入力」ボタンが押下された場合、ステップS107に戻り、入力欄への新たなデータの再入力を待つ。また、CPU26は、入力部12を介して画面の右上隅にある「出力」ボタンが押下されることにより、出力要求を受け付けた場合(ステップS115)、可視情報生成処理を実行する(ステップS116)。具体的には、CPU26は、可視情報生成部263として、決定した排水負荷計算結果に、ステップS102において受け付けた顧客情報及び物件情報を加えて、顧客10が視認し得る可視情報Vを生成する(図8及び図9参照)。
【0057】
最後に、CPU26は、生成した可視情報を、出力要求をした顧客情報処理装置1と、ステップS102において受け付けた顧客10の連絡先又は物件の所在地を管轄する取扱業者30の営業所に設置されている業者情報処理装置3とに送信し(ステップS117)、処理を終了する。
【0058】
なお、上述した実施の形態にあっては、システムの利用条件として、顧客10の登録制を採用していない一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、システムの利用条件として、顧客10が予め登録しておく登録制を採用するようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施の形態にあっては、排水負荷計算結果を表す画面に、文字や数字を用いて排水管の種類及び管径を表す一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、模式図を用いて排水管の種類及び管径を表すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 顧客情報処理装置
10 顧客
11 表示部
12 通信部
13 印字装置
2 中央装置
200 記録媒体
23 補助記憶装置
230 図面データ
231 適用条件データ
232 給排水設備基準データ
233 配管基礎データ
234 営業所データ
26 CPU
260 負荷流量算出部
261 管構成把握部
262 排水管種類等決定部
263 可視情報生成部
264 通信制御部
3 業者情報処理装置
30 取扱業者
31 表示部
33 可視情報データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の希望に応じて、中央装置が多数階建築物の物件に配管する配水管の排水負荷を計算する排水負荷計算支援システムであって、
前記中央装置と、該中央装置と通信網を介して接続可能な、前記排水負荷計算を希望する顧客が利用可能な顧客情報処理装置と、排水管設備の取扱業者が利用可能な複数の業者情報処理装置とを備え、
前記顧客情報処理装置は、
顧客が入力した、顧客の連絡先を含む顧客情報と、前記物件の所在地を含む物件情報とを受け付ける第1受付手段と、
顧客が入力した、前記物件の多層階を貫いて配管する立て管と前記物件の最下層に配管する横主管とで構成される同一系統の排水管に接続する衛生器具の種類及び個数を受け付ける第2受付手段と、
前記第1及び2受付手段により受け付けた各情報を前記中央装置に送信する送信手段と
を備え、
前記中央装置は、
前記衛生器具の種類及び個数に応じた排水管の種類及び管径を求める手法を含む所定の給排水設備基準を格納するデータ格納手段と、
前記顧客情報処理装置から送信された各情報を受け付ける受付手段と、
予め設定してある排水負荷計算の適用条件のもと、前記データ格納手段から読み出した所定の給排水設備基準に基づいて、受け付けた前記衛生器具の種類及び個数に応じた排水管の種類及び管径を決定する決定手段と、
決定した排水管の種類及び管径を含む排水負荷計算結果に、受け付けた前記顧客情報及び物件情報を加えて顧客が視認し得る可視情報を生成する生成手段と、
生成した該可視情報を、前記顧客情報処理装置と、前記複数の業者情報処理装置のうちのいずれかの業者情報処理装置とに送信する送信手段と
を備えることを特徴とする排水負荷計算支援システム。
【請求項2】
生成した前記可視情報を送信する、いずれかの業者情報処理装置は、前記顧客の連絡先又は物件の所在地を管轄する前記取扱業者が利用可能な業者情報処理装置であることを特徴とする請求項2に記載の排水負荷計算支援システム。
【請求項3】
前記顧客情報処理装置は、顧客が入力した、予め設定してある排水負荷計算の適用条件を確認した旨の確認情報を受け付けた場合、該確認情報を前記中央装置に送信し、
前記中央装置は、前記顧客情報処理装置から送信された前記確認情報を受け付けた場合に、前記排水管の排水負荷計算を実行するようにしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水負荷計算支援システム。
【請求項4】
前記中央装置は、前記顧客情報処理装置から受け付けた各情報のいずれかが、予め設定してある排水負荷計算の適用条件から逸脱していると判定した場合、逸脱している旨の報知情報を前記顧客情報処理装置に送信するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の排水負荷計算支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate