説明

接ぎ木苗製造システム

【課題】従来の接ぎ木苗製造装置は穂木と台木を作業者が自ら供給してやらねばならず、全てが自動化されているとは言えなかった。そこで、解決しようとする課題は、従来の接ぎ木苗製造装置に穂木と台木を自動的に供給してやることで接ぎ木作業を自動化し、作業効率を向上し生産性を高めることである。
【解決手段】接ぎ木苗製造装置1の左右一側に穂木苗供給装置11を、他側に台木苗供給装置12を、各々前記穂木苗受取手段と前記台木苗受取手段に向けて配置し、自動化された接ぎ木苗製造システムを実現し、接ぎ木作業において作業効率を向上し生産性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接ぎ木苗製造システムの技術、詳しくは穂木苗供給装置、台木苗供給装置及び接ぎ木苗製造装置の配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
接ぎ木は野菜を中心に果樹・花木などでも広く行われており、その主たる目的は
(1)連作障害の回避(土壌伝染性病害虫に対する抵抗性付与)
(2)収穫物の品質向上(糖度向上、ブルームレス)
(3)環境耐性の付与(耐寒性、耐乾性)
(4)その他(矮正化、樹性コントロール)
等である。
【0003】
ここで、日本において主な野菜接ぎ木品目は、ナス科のトマト・ナス、ウリ科のキュウリ・スイカ・メロンで、毎年5〜6億本もの接ぎ木苗が生産されている。これに対し接ぎ木苗を使用する現場では、高齢化等により「自分の接ぎ木苗を自分で接ぎ木する」ケースが減少している。その代わり、農協や苗業者から接ぎ木苗を購入する動きが顕著になっている。
その結果、各地で苗センターが設立されているが、手による接ぎ木は、手間がかかる、作業がつらい、つきにくい(活着しにくい)の原因のため、人手が集まりにくい傾向にある。しかし、苗センターでは、短期間に大量の接ぎ木をしなければならず、自ずと接ぎ木の機械化が望まれるようになった。
【0004】
ここで、接ぎ木の機械化例として、例えば、接ぎ木苗製造装置の技術は公知となっている。前記接ぎ木苗製造装置はクリップによる斜め合わせ接ぎを行う装置などがあり、穂木・台木・接ぎ木の3つのラインからなり、中央カバー部が接ぎ木作業部で、ハンド・切断刃等で構成されている。前記クリップはパーツフィーダで整列の上、1ヶずつクリップバンドに供給される。
さらに、特許文献1では前述の接ぎ木苗製造装置において、接ぎ木及び台木ハンド移動時の接合基準位置の直前で、穂木及び台木用苗の切断面を合わせる穂木及び台木用苗ガイド部材を設けて、接ぎ木苗製造装置の接合率の向上を試みている。
【特許文献1】特開2005−143393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述の接ぎ木苗製造装置は穂木と台木を作業者が自ら供給してやらねばならず、全てが自動化されているとは言えない。
そこで解決しようとする課題は、従来の接ぎ木苗製造装置に穂木と台木を自動的に供給してやることで接ぎ木作業を自動化し、作業効率を向上し生産性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、供給された穂木苗を把持し、供給された台木苗を把持して両者接合し接ぎ木苗を製造する接ぎ木苗製造装置と、穂木苗の茎を適宜切断し穂木苗を挟持搬送して、前記接ぎ木苗製造装置に供給する穂木苗供給装置と、台木苗を挟持搬送して前記接ぎ木苗製造装置に供給する台木苗供給装置とを備え、前記接ぎ木苗製造装置は前記穂木苗供給装置から穂木苗の供給を受けて把持する穂木苗受取手段と、前記台木苗供給装置から台木苗の供給を受けて把持する台木苗受取手段を接ぎ木苗製造装置の前面部に配置する一方、前記接ぎ木苗製造装置の左右一側に前記穂木苗供給装置を、他側に前記台木苗供給装置を、各々前記穂木苗受取手段と前記台木苗受取手段に向けて、配置したものである。
【0008】
請求項2においては、請求項1記載の接ぎ木苗製造システムにおいて、前記穂木苗供給装置は挟持搬送する穂木苗の子葉方向を整列する子葉方向整列手段を備えるものである。
【0009】
請求項3においては、請求項1記載の接ぎ木苗製造システムにおいて、前記台木苗供給装置は挟持搬送する台木苗の子葉方向を整列する子葉方向整列手段を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、従来の接ぎ木苗製造装置に穂木及び台木の給苗装置を組み合わせたことで、自動化された接ぎ木苗製造システムが実現できる。つまり、接ぎ木作業において作業効率を向上し生産性を高めることができる。また、作業者は穂木及び台木の給苗装置に苗を補充する作業を、作業者が作業位置を変えることなく作業でき、作業性を向上している。
【0012】
請求項2及び請求項3においては、請求項1記載の効果の上に、穂木及び台木の子葉方向を整列するので、接合率が向上し生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る接ぎ木苗製造装置の全体的な配置構成を示した平面図、図2は本発明に係る穂木苗供給装置を示した側面図である。
<接ぎ木苗装置>
【0014】
まず、本発明の実施形態である接ぎ木苗製造装置について図1を用いて説明する。
接ぎ木苗製造装置1は、キュウリ或いはカボチャなどのウリ科等のセル成形苗である穂木用苗2、及び台木苗3を挟持する穂木苗受取手段及び台木受け取り手段である上下1組の穂木ハンド4及び台木ハンド5を備えている。さらに、前記穂木ハンド4及び前記台木ハンド5を装備して回転させる上下の回転円板6・7と、図示しないが、上下の回転円板6・7を連結させるロッド軸と回転円板6・7を間欠回転させるモータとを備えている。
【0015】
そして、図1の平面視に示す如く、前記穂木ハンド4及び前記台木ハンド5に苗2・3を供給する穂木苗供給装置11及び台木苗供給装置12の苗投入部15に対し、反時計方向に回転円板6・7を90度回転させた位置に苗切断機構16を有する苗切断部17を、さらに苗切断部17より90度回転させた位置に苗接合機構(図示せず)を有する苗接合部19を、さらに苗接合部19より90度回転させた位置に接ぎ木苗の払出部20を設けて、これら苗投入部15、苗切断部17、苗接合部19、払出部20の4つの工程で穂木ハンド4及び台木ハンド5の回転を停止させる間欠駆動をモータで行うよう構成している。
【0016】
前記接ぎ木苗製造装置1の左右一側には穂木苗搬送装置41が前後方向に配置され、左右他側には台木苗搬送装置42が前後方向に配置され、穂木苗供給装置11及び台木苗供給装置12は略左右対称に配置される。本実施例では穂木苗搬送装置41は接ぎ木苗製造装置1の右側に、台木苗搬送装置42は接ぎ木苗製造装置1の左側に配置しているが、左右逆に配置することも可能である。
【0017】
前記穂木苗搬送装置41及び台木苗搬送装置42はそれぞれセル成形苗を碁盤状に収納するセルトレイ43を後方より前方へ搬送するベルト式またはローラー式のコンベアベルト構成され、セルトレイ43の横一行ずつ前方へ間欠駆動される。穂木苗搬送装置41及び台木苗搬送装置42は搬送駆動され、ベルト上に載置されるセルトレイ43が同じ位置のセルから取り出されるようにしている。
【0018】
穂木苗搬送装置41と接ぎ木苗製造装置1の前部上方には、セルトレイ43より穂木苗を取り出して、該穂木苗の茎を適宜切断し、切断した後の根鉢を除いた穂木苗を挟持して接ぎ木苗製造装置1の苗投入部15に搬送して供給する穂木苗供給装置11を左右水平方向に配置している。また、台木苗搬送装置42と接ぎ木苗製造装置1の前部上方には、セルトレイ43より台木苗を取り出して、該台木苗の茎を適宜切断し、切断した後の根鉢側の台木苗を挟持して接ぎ木苗製造装置1の苗投入部15に搬送して供給する台木苗供給装置12を左右水平方向に配置している。該穂木苗供給装置11と台木苗供給装置12は左右方向の同一直線上に配置される。
【0019】
こうして、後方よりセル成形苗を収容したセルトレイ43を穂木苗搬送装置41及び台木苗搬送装置42上に載せて前方へ搬送させる。そして、穂木苗搬送装置41の前部上で穂木苗供給装置11の穂木苗受取手段が一つのセル成形苗の茎を挟持して持ち上げて、切断して根鉢を取り除いて、姿勢を整えてから接ぎ木苗製造装置1へ搬送して、苗投入部15へ供給するのである。そして略同時に、台木苗搬送装置42の前部上で台木苗供給装置12の台木苗受取手段が一つのセル成形苗の茎を挟持して持ち上げて、切断して上側の葉部を取り除いて、姿勢を整えてから接ぎ木苗製造装置1へ搬送して、苗投入部15へ供給するのである。
【0020】
次に、穂木苗供給装置11及び台木苗供給装置12は略同じ構成としているので、穂木苗供給装置11について説明する。
<苗供給装置>
本発明の実施形態である給苗装置について図2を用いて説明する。図2は穂木苗供給装置11の側面図を表している。
ここで、セルトレイ内に整列されて穂木が収納され、セルトレイ(図2で図示を省略している)は穂木苗搬送装置41のコンベアベルト21に載置して、前記穂木苗供給装置11下方に搬送される。穂木苗供給装置11は該セルトレイより1本ずつ穂木を掴んで胚軸より切断し、子葉方向を整える受渡部22と、該受渡部22を穂木苗搬送装置41上方と接ぎ木苗製造装置1の間を移動させる搬送部30より構成される。
【0021】
前記受渡部22は穂木の胚軸を挟持可能な構成とした上下2つの把持バンド23a・23bが前後方向にスライド可能とした把持ハンド支持部材24に支持されている。また、穂木の胚軸を切断するカッター25が下側の把持バンド23bの下方に備えられ、同様に前後方向にスライド可能なカッター支持部材26に支持されている。該把持ハンド支持部材24はシリンダ28により前後摺動され、カッター支持部材26はシリンダ29により前後摺動され、前後摺動時にカム等により把持バンド23a・23bは開閉され、カッター25は切断動作される。
【0022】
前記シリンダ28・29はブラケット31に固定され、該ブラケット31の上部から後方にアーム32が突設され、該アーム32の後端から姿勢矯正ガイド板27が下方に垂設されて、該姿勢矯正ガイド板27が前記把持バンド上部23aの上方に配置されている。該姿勢矯正ガイド板27は平面断面視で略三角形状に形成され、穂木を押し当てることによって、穂木の子葉を一定方向に整えることを可能としている。つまり、姿勢矯正ガイド板27は子葉方向整列手段であり、茎の上端から左右方向に二枚の子葉が出ている場合には、二枚の葉を姿勢矯正ガイド板27に押し当てることで、茎を頂部に位置させ、頂部の両側に葉が位置することになり、子葉が左右方向に向くようになるのである。なお、把持バンド23a・23bの挟持力は茎をつぶすほどでもない力としているので、葉を姿勢矯正ガイド板27に押し当てることで、茎を中心に回転することになる。
【0023】
また、前記ブラケット31は搬送部30の下部に設けられたシリンダ33のピストンロッドに連結され、該シリンダ33の作動により前後動可能としている。更にシリンダ33は左右移動手段となるシリンダ34に連結され、受渡部22が穂木苗搬送装置41と接ぎ木苗製造装置1の間を移動可能としている。搬送部30はフレーム35に固定されている。
【0024】
以下に穂木苗供給装置11の動作は以下のとおりである。
(1)穂木苗搬送装置41はセルトレイを1行ずつ穂木苗供給装置11の下方に搬送する。受渡部22は、シリンダ28・29の作動により後方へ移動されて、コンベアベルト21上のセルトレイ端部の穂木苗から順に把持バンド23にて掴む。
(2)穂木を把持バンド23にて挟持したまま、穂木の胚軸をカッター25にて切断し、不要な根をトレイに残す。
(3)穂木を把持バンド23にて挟持したまま、シリンダ28・29を縮小して、把持ハンド支持部材24を後方にスライドさせ、姿勢矯正ガイド板27に穂木の子葉の根元中心に押し当てることによって、子葉の向きを整える。
(4)この状態で搬送部30により接ぎ木苗製造装置1側へ移動させ、シリンダ33を伸長させて受渡部22によって、接ぎ木苗製造装置1の苗投入部15に供給される。
また、台木苗供給装置12については、構造・作動とも穂木苗供給装置11と同様であり、詳細説明は省略する。
【実施例】
【0025】
以上より本発明の実施形態に示したとおり、従来ある接ぎ木苗製造装置の左右にそれぞれ穂木苗供給装置と台木苗供給装置を配置したことによって、接ぎ木が自動化を可能とした。作業者は前記穂木苗供給装置及び前記台木苗供給装置に穂木トレイ及び台木トレイを供給してやるだけで、後は自動的に接ぎ木ができる。ここで、前記穂木トレイ及び台木トレイの供給は同じ側からの作業が可能である。
【0026】
ここで、特記しておくべきこととして、接ぎ木の際には穂木苗と台木苗のそれぞれの子葉方向を90度ずらせて接ぎ木を実施することになる。ここで、子葉方向整列手段として前記穂木苗供給装置11及び前記台木苗供給装置12には前記姿勢矯正ガイド板27が備わっているが、穂木及び台木共に子葉方向整列手段は同様とするが、接ぎ木苗製造装置1に供給の際にどちらか一方を90度ずらせて接ぎ木を実施させることにする。
なお、実施形態では示していないが、接ぎ木苗製造装置1の払出部20より出来上がった接ぎ木苗をコンベアベルト等で搬送するようにして、自動化の接ぎ木苗製造装置システムを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る接ぎ木苗製造装置の全体的な配置構成を示した平面図。
【図2】本発明に係る穂木苗供給装置を示した側面図。
【符号の説明】
【0028】
1 接ぎ木苗製造装置
11 穂木苗供給装置
12 台木苗供給装置
27 姿勢矯正ガイド板
41 穂木苗搬送装置
42 台木苗搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された穂木苗を把持し、供給された台木苗を把持して両者接合し接ぎ木苗を製造する接ぎ木苗製造装置と、穂木苗の茎を適宜切断し穂木苗を挟持搬送して、前記接ぎ木苗製造装置に供給する穂木苗供給装置と、台木苗を挟持搬送して前記接ぎ木苗製造装置に供給する台木苗供給装置とを備え、前記接ぎ木苗製造装置は前記穂木苗供給装置から穂木苗の供給を受けて把持する穂木苗受取手段と、前記台木苗供給装置から台木苗の供給を受けて把持する台木苗受取手段を接ぎ木苗製造装置の前面部に配置する一方、前記接ぎ木苗製造装置の左右一側に前記穂木苗供給装置を、他側に前記台木苗供給装置を、各々前記穂木苗受取手段と前記台木苗受取手段に向けて、配置したことを特徴とする接ぎ木苗製造システム。
【請求項2】
請求項1記載の接ぎ木苗製造システムにおいて、
前記穂木苗供給装置は挟持搬送する穂木苗の子葉方向を整列する子葉方向整列手段を備えることを特徴とする接ぎ木苗製造システム。
【請求項3】
請求項1記載の接ぎ木苗製造システムにおいて、
前記台木苗供給装置は挟持搬送する台木苗の子葉方向を整列する子葉方向整列手段を備えることを特徴とする接ぎ木苗製造システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−74930(P2007−74930A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264123(P2005−264123)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)