説明

接着剤組成物

【課題】高いせん断接着強さ、剥離接着強さ及び衝撃接着強さを有するとともに、特に接着強さの耐冷熱サイクル性に優れた接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)2−シアノアクリル酸エステル、(b)2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体及び可溶性の重合体となり得る単量体を用いてなる共重合体(エチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸共重合体等)、並びに(c)シアノアセチル基を2個以上有する多官能シアノ酢酸エステルを含有する接着剤組成物であって、前記(c)多官能シアノ酢酸エステルの数平均分子量が1000〜50000であり、かつ、前記(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、上記(b)共重合体が2〜40質量部、及び上記(c)多官能シアノ酢酸エステルが1〜30質量部であることを特徴とする接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、2−シアノアクリル酸エステルを含有し、高いせん断接着強さ、剥離接着強さ及び衝撃接着強さを有するとともに、特に接着強さの耐冷熱サイクル性に優れた接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2−シアノアクリル酸エステルを含有する接着剤組成物は、主成分である2−シアノアクリル酸エステルが有する特異なアニオン重合性により、被着体表面に付着する僅かな水分等の微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、所謂、瞬間接着剤として、工業用、医療用、家庭用等の広範な分野において用いられている。 しかし、この接着剤組成物は、その硬化物が硬く脆いため、優れたせん断接着強さを有する反面、剥離接着強さ及び衝撃接着強さが低く、特に異種の被着体間での耐冷熱サイクル性に劣るという問題点を有する。従来、このような問題点を改良するため、種々のエラストマー及び添加剤等を配合する改質方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参考)。また、接着剤組成物にシリカを配合することや、ポリアルキレングリコールのジシアノアセテートを配合することも知られている(例えば、特許文献3、4参考)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−290484号公報
【特許文献2】特開平6−57214号公報
【特許文献3】特開平8−53651号公報
【特許文献4】特開昭57−200469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1、2に記載された改質方法では、特に異種の被着体間での耐冷熱サイクル性を十分に向上させることができないことがある。また、上記の特許文献3では、シリカを配合する目的は接着剤にチクソトロピー性を付与することであり、耐冷熱サイクル性等の接着強さの耐久性については何ら言及されていない。更に、上記の特許文献4に記載されているポリアルキレングリコールのジシアノアセテートは、接着剤組成物の硬化促進剤として機能するものであり、耐冷熱サイクル性等の接着強さの耐久性を改善することはできない。
【0005】
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、2−シアノアクリル酸エステルを含有し、高いせん断接着強さ、剥離接着強さ及び衝撃接着強さを有するとともに、特に接着強さの耐冷熱サイクル性に優れた接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
1.(a)2−シアノアクリル酸エステル、(b)2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体及び可溶性の重合体となり得る単量体を用いてなる共重合体、並びに(c)シアノアセチル基を2個以上有する多官能シアノ酢酸エステルを含有する接着剤組成物であって、
前記(c)多官能シアノ酢酸エステルの数平均分子量が1000〜50000であり、かつ、前記(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、前記(b)共重合体が2〜40質量部、及び前記(c)多官能シアノ酢酸エステルが1〜30質量部であることを特徴とする接着剤組成物。
2.上記(c)多官能シアノ酢酸エステルが、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール又は水添ポリイソプレンポリオールのシアノ酢酸エステルである上記1に記載の接着剤組成物。
3.上記(b)共重合体のうち、2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体が、エチレン、プロピレン、イソプレン及びブタジエンのうちの少なくとも1種であり、可溶性の重合体となり得る単量体が、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのうちの少なくとも一方である上記1又は2に記載の接着剤組成物。
4.ヒュームドシリカを更に含有し、上記2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、該ヒュームドシリカは1〜30質量部である上記1乃至3のうちのいずれかに記載の接着剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接着剤組成物は、2−シアノアクリル酸エステルと、2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体及び可溶性の重合体となり得る単量体を用いてなる共重合体と、特定の数平均分子量の多官能シアノ酢酸エステルとを所定の質量割合で含有しているため、2−シアノアクリル酸エステルを含有する接着剤が本来有する高いせん断接着強さを有するとともに、従来、必ずしも良好ではなかった剥離接着強さ、衝撃接着強さも十分であり、特に優れた耐冷熱サイクル性を有する。前記多官能シアノ酢酸エステルは容易に製造することができ、接着剤組成物に配合した場合に、組成物の保存安定性に悪影響を与えることもない。
また、上記多官能シアノ酢酸エステルがポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール又は水添ポリイソプレンポリオールのシアノ酢酸エステルの場合は、2−シアノアクリル酸エステルの重合体と、2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体及び可溶性の重合体となり得る単量体を用いてなる共重合体と、それぞれに適度な相溶性を有するため、優れた耐衝撃性と耐冷熱サイクル性とを併せて有する接着剤組成物とすることができる。
更に、2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る上記単量体が、エチレン、プロピレン、イソプレン及びブタジエンのうちの少なくとも1種であり、可溶性の重合体となり得る上記単量体が、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのうちの少なくとも一方である場合は、容易に2−シアノアクリル酸エステルに適度に可溶な共重合体とすることができ、高いせん断接着強さ等と、優れた耐冷熱サイクル性とを併せて有する接着剤組成物とすることができる。
また、ヒュームドシリカを更に含有し、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、ヒュームドシリカが1〜30質量部である場合は、高いせん断接着強さ等を有し、且つ優れた耐冷熱サイクル性を併せて有する接着剤組成物とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の接着剤組成物について詳しく説明する。
本発明の接着剤組成物は、(a)2−シアノアクリル酸エステル、(b)2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体及び可溶性の重合体となり得る単量体を用いてなる共重合体、並びに(c)シアノアセチル基を2個以上有する多官能シアノ酢酸エステルを含有し、前記(c)多官能シアノ酢酸エステルの数平均分子量が1000〜50000であり、かつ、前記(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、前記(b)共重合体が2〜40質量部、及び前記(c)多官能シアノ酢酸エステルが1〜30質量部である。
【0009】
上記「(a)2−シアノアクリル酸エステル」としては、この種の接着剤組成物に一般に使用される2−シアノアクリル酸エステルを特に限定されることなく用いることができる。この2−シアノアクリル酸エステルとしては、2−シアノアクリル酸のメチル、エチル、クロロエチル、n−プロピル、i−プロピル、アリル、プロパギル、n−ブチル、i−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、テトラヒドロフルフリル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、2−オクチル、n−ノニル、オキソノニル、n−デシル、n−ドデシル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシイソプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、プロポキシプロピル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシイソプロピル、ブトキシブチル、2,2,2−トリフルオロエチル及びヘキサフルオロイソプロピル等のエステルが挙げられる。これらの2−シアノアクリル酸エステルは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。併用する場合、組み合わせは特に限定されないが、例えば、炭素数1〜4のアルキルエステルとアルコキシアルキルエステルとの組み合わせや、炭素数1〜4のアルキルエステルと炭素数5〜20のアルキルエステルとの組み合わせが挙げられる。具体的には、2−シアノアクリル酸エチルと2−シアノアクリル酸2−エトキシエチル、2−シアノアクリル酸イソブチルと2−シアノアクリル酸2−エトキシエチル、2−シアノアクリル酸イソプロピルと2−シアノアクリル酸2−オクチル、及び2−シアノアクリル酸イソブチルと2−シアノアクリル酸2−オクチル、等の各々の組み合わせが挙げられる。
【0010】
上記「(b)共重合体」は、2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体が重合してなる難溶性セグメントと、可溶性の重合体となり得る単量体が重合してなる可溶性セグメントとを備える。
【0011】
2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体は特に限定されず、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン、1−ヘキセン及びシクロペンテン等が挙げられる。これらの単量体は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。難溶性の重合体となり得る単量体としては、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン及びクロロプレンが用いられることが多い。
【0012】
また、2−シアノアクリル酸エステルに可溶性の重合体となり得る単量体も特に限定されず、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン及びアクリロニトリル等が挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸エトキシエチル及びアクリル酸エトキシプロピル等が挙げられる。これらの単量体は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
更に、メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸エトキシエチル及びメタクリル酸エトキシプロピル等が挙げられる。これらの単量体は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとを併用してもよい。
【0014】
難溶性の重合体となり得る単量体が重合してなる難溶性セグメントと、可溶性の重合体となり得る単量体が重合してなる可溶性セグメントとの割合は特に限定されず、これらのセグメントの合計を100モル%とした場合に、難溶性セグメントが5〜90モル%、好ましくは10〜80モル%、可溶性セグメントが10〜95モル%、好ましくは20〜90モル%であればよい。この割合は、難溶性セグメントが30〜80モル%、可溶性セグメントが20〜70モル%、特に難溶性セグメントが40〜80モル%、可溶性セグメントが20〜60モル%、更に難溶性セグメントが50〜75モル%、可溶性セグメントが25〜50モル%であることがより好ましい。難溶性セグメントが5〜90モル%であり、可溶性セグメントが10〜95モル%であれば、特に難溶性セグメントが30〜80モル%であり、可溶性セグメントが20〜70モル%であれば、共重合体を2−シアノアクリル酸エステルに適度に溶解させることができ、高いせん断接着強さ等と、優れた耐冷熱サイクル性とを併せて有する接着剤組成物とすることができる。
各々のセグメントの割合は、プロトン核磁気共鳴分光法(以下、「1H−NMR」と表記する)測定によるプロトンの積分値により算出することができる。
【0015】
接着剤組成物には、2−シアノアクリル酸エステルに可溶性の重合体となり得る単量体及び難溶性の重合体となり得る単量体と、少量のカルボキシル基含有単量体とを用いてなる共重合体を含有させることもできる。カルボキシル基含有単量体も特に限定されず、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸及び桂皮酸等が挙げられる。これらの単量体は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸及びメタクリル酸が用いられることが多く、これらはいずれか一方を用いてもよく、併用してもよい。このカルボキシル基含有単量体が重合してなるカルボキシル基含有セグメントは、親水性の高い2−シアノアクリル酸エステルに可溶性のセグメントになる。また、適量のカルボキシル基含有単量体を用いることにより、共重合体と、疎水化処理されていないヒュームドシリカ表面、又は親水性の高い2−シアノアクリル酸エステルとの親和性を高めることができる。
【0016】
カルボキシル基含有セグメントの割合も特に限定されないが、難溶性セグメント、可溶性セグメント、及びカルボキシル基含有セグメントの合計を100モル%とした場合に、0.1〜5モル%、特に0.3〜4モル%、更に0.4〜3モル%であることが好ましい。また、この含有量は、0.5〜2.5モル%、特に0.5〜2モル%であることがより好ましい。カルボキシル基含有セグメントが0.1〜5モル%、特に0.5〜2.5モル%であれば、被着体に塗布後、速やかに硬化し、且つ高いせん断接着強さと、優れた耐冷熱サイクル性とを併せて有する接着剤組成物とすることができる。
カルボキシル基含有セグメントの割合は、JIS K0070に準じ、電位差滴定法又は指示薬滴定法により測定することができる。
【0017】
共重合体としては、例えば、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ブタジエン/アクリル酸メチル共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル/アクリル酸エステル共重合体、及びブタジエン/スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸メチル共重合体等を用いることができる。この共重合体としては、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸ブチル共重合体が特に好ましい。また、上記の各々の共重合体に用いられる単量体と、アクリル酸及び/又はメタクリル酸等のカルボキシル基含有単量体とを重合させてなる共重合体を用いることもできる。これらの共重合体は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよく、カルボキシル基含有単量体を用いない共重合体と、カルボキシル基含有単量体を用いた共重合体とを併用してもよい。更に、カルボキシル基含有単量体を用いない共重合体と、カルボキシル基含有単量体を用いた共重合体とは、いずれを使用してもよいが、疎水性が高い、例えば、炭素数4以上、特に5以上のアルキル基を用いてなる2−シアノアクリル酸エステルでは、カルボキシル基含有単量体を用いない共重合体を使用することが好ましく、親水性が高い、例えば、炭素数3以下、特に2以下のアルキル基、又はアルコキシアルキル基を用いてなる2−シアノアクリル酸エステルでは、カルボキシル基含有単量体を用いた共重合体を使用することが好ましい。
【0018】
共重合体の平均分子量も特に限定されないが、数平均分子量(Mn)が5000〜500000であればよく、10000〜200000、特に15000〜150000、更に20000〜100000であることが好ましい。共重合体の数平均分子量が5000〜500000、特に10000〜200000であれば、共重合体が2−シアノアクリル酸エステルに容易に溶解し、特に耐冷熱サイクル試験後の接着強さの保持率が高い接着剤組成物とすることができる。また、共重合体の重量平均分子量(Mw)は、5000〜1000000、特に10000〜1000000であることが好ましく、Mw/Mnは1.00〜10.0、特に1.00〜8.0であることが好ましい。
共重合体の平均分子量は、前記のように、GPCにより測定することができる。
【0019】
接着剤組成物における共重合体の含有量は、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、2〜40質量部である。この共重合体の好ましい含有量は、2−シアノアクリル酸エステルの種類、共重合体の製造に用いた単量体の種類及び割合、並びにヒュームドシリカの種類及び含有量等にもよるが、3〜35質量部、特に5〜30質量部であることが好ましい。共重合体の含有量が2〜40質量部、特に3〜35質量部であれば、十分なせん断接着強さ等を有し、且つ優れた耐冷熱サイクル性を併せて有する接着剤組成物とすることができる。
【0020】
上記「(c)多官能シアノ酢酸エステル」は、2−シアノアクリル酸エステルの重合体と、2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体及び可溶性の重合体となり得る単量体を用いてなる共重合体とに、相溶する構造を有する化合物であり、シアノアセチル基を2個以上有するものである。
この多官能シアノ酢酸エステルとしては、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリアミドポリオール、ポリエステルポリアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、エチレン−ブチレン共重合体ポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂及び両末端にヒドロキシル基を有するシラン化合物又はシロキサン化合物等のシアノ酢酸エステルが挙げられる、これらの多官能シアノ酢酸エステルは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
多官能シアノ酢酸エステルとしては、硬化物が柔軟且つ強靭なため、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリアミドポリオール、ポリエステルポリアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール又は水添ポリイソプレンポリオールのシアノ酢酸エステルが好ましく、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール又は水添ポリイソプレンポリオールのシアノ酢酸エステルがより好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールは特に限定されず、ポリエチレングリコール、ポリエチレントリオール、ポリエチレンテトラオール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリプロピレンテトラオール、ポリテトラメチレングリコール等、及び前記ポリオール或いは他のグリコールとの共重合体などを用いることができる。また、ポリエステルポリオールも特に限定されず、アジピン酸等の二塩基酸とグリコール、トリオール等との反応により生成する一般的なポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合させたポリカプロラクトンポリオール等を用いることができる。更に、ポリカーボネートジオールも特に限定されず、エチレンカーボネート等から誘導される一般的なポリカーボネートジオールやカーボネートとグリコールとを共重合させたものなどを用いることができる。
【0022】
多官能シアノ酢酸エステルは、上記のポリオキシアルキレンポリオール等を公知の方法でアシル化することにより製造することができる。例えば、シアノ酢酸とアルコールを酸触媒の存在下でエステル化することにより得ることができる。また、シアノ酢酸と酸塩化物からシアノ酢酸クロライドを合成し、これにアルコールを反応させることによっても製造することができる。具体的には、シアノ酢酸クロライドと、上記ポリオキシアルキレンポリオール等を温度50〜80℃で反応させることにより得ることができる。この場合、シアノ酢酸クロライドと、ポリオキシアルキレンポリオール等の当量比(酸クロ/OH基)は、1.1〜1.5であることが好ましく、1.2〜1.4であることがより好ましい。当量比が前記範囲であれば、収率よく多官能シアノ酢酸エステルを製造することができる。
【0023】
多官能シアノ酢酸エステルの数平均分子量は1000〜50000である必要があり、1500〜40000、特に2000〜30000、更に2000〜25000であることが好ましい。多官能シアノ酢酸エステルの数平均分子量が1000未満であると、耐冷熱サイクル試験後の接着強さの保持率が低下する。一方、前記数平均分子量が50000を超えると、2−シアノアクリル酸エステルへの溶解性が悪くなり、結果として耐冷熱サイクル性が低下する。
尚、本発明における平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する)で測定した値である。GPC測定の際には、テトラヒドロフランを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用し、分子量の値はポリスチレン換算値で求めた。
【0024】
接着剤組成物における多官能シアノ酢酸エステルの含有量は、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、1〜30質量部である。この多官能シアノ酢酸エステルの好ましい含有量は、2−シアノアクリル酸エステル、共重合体、及び多官能シアノ酢酸エステルの各々の種類等にもよるが、3〜20質量部であり、5〜15質量部であることが特に好ましい。多官能シアノ酢酸エステルの含有量が1〜30質量部、特に5〜15質量部であれば、十分なせん断接着強さ等を有し、且つ優れた耐冷熱サイクル性を併せて有する接着剤組成物とすることができる。
【0025】
接着剤組成物にはヒュームドシリカを含有させることもできる。このヒュームドシリカは、超微粉(一次粒子が500nm以下、特に1〜200nm)の無水シリカであり、この無水シリカは、例えば、四塩化ケイ素を原料とし、高温の炎中において気相状態での酸化により生成する超微粉(一次粒子が500nm以下、特に1〜200nm)の無水シリカであって、親水性の高い親水性シリカと、疎水性の高い疎水性シリカとがある。このヒュームドシリカとしては、いずれも用いることができるが、2−シアノアクリル酸エステル及び共重合体への分散性がよいため疎水性シリカが好ましい。また、2−シアノアクリル酸エステルに可溶性の重合体となり得る単量体を多く用いてなる共重合体、即ち、可溶性セグメント(カルボキシル基含有セグメントを含む。)が多い共重合体を用いる場合は、親水性シリカを組み合わせて用いることが好ましく、難溶性の重合体となり得る単量体を多く用いてなる共重合体、即ち、難溶性セグメントが多い共重合体を用いる場合は、疎水性シリカを組み合わせて用いることが好ましい。
【0026】
親水性シリカとしては市販の各種の製品を用いることができ、例えば、アエロジル50、130、200、300及び380(以上、商品名であり、日本アエロジル社製である。)等が挙げられる。これらの親水性シリカの比表面積は、それぞれ50±15m2/g、130±25m2/g、200±25m2/g、300±30m2/g、380±30m2/gである。また、市販の親水性シリカとしては、レオロシールQS−10、QS−20、QS−30及びQS−40(以上、商品名であり、トクヤマ社製である。)等を用いることができる。これらの親水性シリカの比表面積は、それぞれ140±20m2/g、220±20m2/g、300±30m2/g、380±30m2/gである。この他、CABOT社製等の市販の親水性シリカを用いることもできる。
【0027】
更に、疎水性シリカとしては、親水性シリカと、親水性シリカの表面に存在するヒドロキシル基と反応し、疎水基を形成し得る化合物、又は親水性シリカの表面に吸着され、表面に疎水性の層を形成し得る化合物とを溶媒の存在下又は不存在下に接触させ、好ましくは加熱し、親水性シリカの表面を処理することにより生成する製品を用いることができる。
【0028】
親水性シリカを表面処理して疎水化するのに用いる化合物としては、n−オクチルトリアルコキシシラン等の疎水基を有するアルキル、アリール、アラルキル系の各種のシランカップリング剤、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイル、ステアリルアルコール等の高級アルコール、及びステアリン酸等の高級脂肪酸などが挙げられる。疎水性シリカとしては、いずれの化合物を用いて疎水化された製品を用いてもよい。
【0029】
市販の疎水性シリカとしては、例えば、シリコーンオイルで表面処理され、疎水化されたアエロジルRY200、R202、ジメチルシリル化剤で表面処理され、疎水化されたアエロジルR974、R972、R976、n−オクチルトリメトキシシランで表面処理され、疎水化されたアエロジルR805、トリメチルシリル化剤で表面処理され、疎水化されたアエロジルR811、R812(以上、商品名であり、日本アエロジル社製である。)及びメチルトリクロロシランで表面処理され、疎水化されたレオロシールMT−10(商品名であり、トクヤマ社である。)等が挙げられる。これらの疎水性シリカの比表面積は、それぞれ100±20m2/g、100±20m2/g、170±20m2/g、110±20m2/g、250±25m2/g、150±20m2/g、150±20m2/g、260±20m2/g、120±10m2/gである。
【0030】
接着剤組成物におけるヒュームドシリカの含有量は、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、1〜30質量部である。このヒュームドシリカの好ましい含有量は、2−シアノアクリル酸エステルの種類、共重合体の製造に用いた単量体の種類及び割合、並びにヒュームドシリカの種類等にもよるが、1〜25質量部、特に2〜20質量部であることが好ましい。ヒュームドシリカの含有量が1〜30質量部、特に1〜25質量部であれば、高いせん断接着強さ等を有し、且つ優れた耐冷熱サイクル性を併せて有する接着剤組成物とすることができる。
尚、ヒュームドシリカの含有量の増加とともに接着剤組成物の粘度が高くなる傾向にあるため、この含有量は、接着剤組成物の調製及び接着剤組成物の被着体への塗布等における作業性などを考慮して設定する必要がある。
【0031】
本発明の接着剤組成物には、上記の必須成分の他に、従来、2−シアノアクリル酸エステルを含有する接着剤組成物に配合して用いられているアニオン重合促進剤、安定剤、可塑剤、増粘剤、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤等を、目的等に応じて、接着剤組成物の硬化性及び接着強さ等を損なわない範囲で適量配合することができる。
【0032】
アニオン重合促進剤としては、ポリアルキレンオキサイド類、クラウンエーテル類、シラクラウンエーテル類、カリックスアレン類、シクロデキストリン類及びピロガロール系環状化合物類等が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド類とは、ポリアルキレンオキサイド及びその誘導体であって、例えば、特公昭60−37836号、特公平1−43790号、特開昭63−128088号、特開平3−167279号、米国特許第4386193号、米国特許第4424327号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、(1)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンオキサイド、(2)ポリエチレングリコールモノアルキルエステル、ポリエチレングリコールジアルキルエステル、ポリプロピレングリコールジアルキルエステル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル等のポリアルキレンオキサイドの誘導体などが挙げられる。クラウンエーテル類としては、例えば、特公昭55−2236号、特開平3−167279号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−12−クラウン−4、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、トリベンゾ−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、ジベンゾ−14−クラウン−4、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、シクロヘキシル−12−クラウン−4、1,2−デカリル−15−クラウン−5、1,2−ナフト−15−クラウン−5、3,4,5−ナフチル−16−クラウン−5、1,2−メチルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−tert−ブチル−18−クラウン−6、1,2−ビニルベンゾ−15−クラウン−5等が挙げられる。シラクラウンエーテル類としては、例えば、特開昭60−168775号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、ジメチルシラ−11−クラウン−4、ジメチルシラ−14−クラウン−5、ジメチルシラ−17−クラウン−6等が挙げられる。カリックスアレン類としては、例えば、特開昭60−179482号、特開昭62−235379号、特開昭63−88152号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、5,11,17,23,29,35−ヘキサ−tert−butyl−37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔6〕アレン、25,26,27,28−テトラ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔4〕アレン等が挙げられる。シクロデキストリン類としては、例えば、公表平5−505835号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、α−、β−又はγ−シクロデキストリン等が挙げられる。ピロガロール系環状化合物類としては、特開2000−191600号等で開示されている化合物が挙げられる。具体的には、3,4,5,10,11,12,17,18,19,24,25,26−ドデカエトキシカルボメトキシ−C−1、C−8、C−15、C−22−テトラメチル[14]−メタシクロファン等が挙げられる。これらのアニオン重合促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
また、安定剤としては、(1)二酸化イオウ、メタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素ジエチルエーテル、HBF4及びトリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、カテコール及びピロガロール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
可塑剤は、特に、難溶性の重合体となり得る単量体を多く用いてなる共重合体、即ち、難溶性セグメントが多い共重合体(難溶性セグメントの割合が65モル%以上の共重合体)を用いる場合に、適量含有させることにより、その溶解性を向上させることができる。この可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2−エチルヘキシル)、2−エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2−シアノアクリル酸エステルとの相溶性が良く、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、可塑剤の含有量は特に限定されないが、2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、3〜50質量部、特に10〜45質量部、更に20〜40質量部であることが好ましい。可塑剤の含有量が3〜50質量部であれば、特に難溶性セグメントが多い共重合体であるときに、共重合体の2−シアノアクリル酸エステルへの溶解を容易とし、特に耐冷熱サイクル試験後の接着強さの保持率を向上させることができる。
【0035】
更に、増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、アクリルゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル−2−シアノアクリル酸エステル及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]多官能シアノ酢酸エステルの合成
合成例1(化合物A)
攪拌機、温度計、リービッヒ冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを備える容量500ミリリットルのフラスコに、シアノ酢酸クロライド1.40g(13.5ミリモル)と、ベンゼン210ミリリットルとを仕込んだ。その後、反応系を60℃に昇温させ、窒素吹き込み管から窒素ガスを吹き込みながら、ポリプロピレングリコール[数平均分子量;10000(カタログ値)、両末端ヒドロキシル基型、旭硝子社製、商品名「プレミノールS−4011」]47.3g[当量比(酸クロ/OH基)=1.4]を30ミリリットルのベンゼンに溶解させた溶液を加えた。次いで、温度を60℃に維持し、30分間攪拌した。その後、室温(15〜35℃)まで冷却後、減圧下、ベンゼンを留去して、無色で粘ちょうなオイル状の多官能シアノ酢酸エステル47.7gを得た。
尚、ベンゼンとしては乾燥ベンゼンを使用し、ガラス器具は十分加熱乾燥させたものを用いた。
【0037】
合成例2(化合物B)
合成例1で用いたポリプロピレングリコールに変えて、数平均分子量が異なるポリプロピレングリコール[数平均分子量;3000(カタログ値)、両末端ヒドロキシル基型、ADEKA製、商品名「P−3000」]を使用し、化合物の数平均分子量及び官能基数に応じた仕込み量とした他は、合成例1と同様にして多官能シアノ酢酸エステルBを合成した。
【0038】
合成例3(化合物C)
合成例1で用いたポリプロピレングリコールに変えて、数平均分子量が異なるポリプロピレングリコール[数平均分子量;425(カタログ値)、両末端ヒドロキシル基型、Aldrich試薬]を使用し、化合物の数平均分子量及び官能基数に応じた仕込み量とした他は、合成例1と同様にして多官能シアノ酢酸エステルCを合成した。
【0039】
[2]接着剤組成物の製造
実施例1、2
2−シアノアクリル酸エトキシエチルに、二酸化硫黄を40ppm、18−クラウン−6を100ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸エトキシエチルを100質量部とする)配合し、これに更に表2に記載の、エチレン/アクリル酸メチル/アクリル酸共重合体(デュポンエラストマー社製、商品名「Vamac MR」)、合成例1で得られた多官能シアノ酢酸エステルA、ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、商品名「アエロジル R974」)、及び可塑剤[アセチルクエン酸トリブチル(キシダ化学社製、試薬)、表1では「ATBC」と表記する](実施例2)を、表1に記載の含有量(2−シアノアクリル酸エトキシエチルを100質量部としたときの「質量部」である)となるように配合し、温度20〜40℃で、15分間攪拌し、混合して接着剤組成物を製造した。
【0040】
実施例3〜7
共重合体、多官能シアノ酢酸エステル、ヒュームドシリカ及び可塑剤の含有量を表1のように変更した以外は実施例1と同様に接着剤組成物を得た。
【0041】
比較例1
多官能シアノ酢酸エステルAの配合に代え、ポリプロピレングリコール[数平均分子量;10000(カタログ値)、両末端ヒドロキシル基型、旭硝子社製、商品名「プレミノールS−4011」]を配合した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を製造した。
【0042】
比較例2〜6
共重合体、多官能シアノ酢酸エステル及びヒュームドシリカの含有量を表1のように変更した以外は実施例1と同様に接着剤組成物を得た。
尚、表1において、「GLS」はデュポンエラストマー社製、商品名「Vamac MR、GLS」であり、「200」及び「RY200」は日本アエロジル社製、商品名「アエロジル 200、RY200」)を表す。
【0043】
【表1】

【0044】
上記の共重合体のうち、デュポンエラストマー社製の商品名「Vamac」シリーズの組成並びに数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は表2のとおりである。また、日本アエロジル社製の商品名「アエロジル」シリーズのヒュームドシリカの表面処理の有無及び表面処理剤並びに親水性、疎水性の指標となるSiOH残存量は表3のとおりである。
尚、表2において、「E」はエチレン、「MA」はメチルアクリレート、「AA」はアクリル酸を表す。
更に、共重合体の組成のうちエチレンとアクリレートの比は前記の1H−NMR測定(日本電子社製、型式「ECA−400」を用いた)により、溶媒:重クロロホルム、温度:室温の条件で測定した値であり、アクリル酸の組成比はJIS K0070に準じ、酸価測定により求めた値である。また、平均分子量は、GPC(ウォーターズ社製、型式「アライアンス2695」)により、[カラム:東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ−H」2本+東ソー社製「TSKgel SuperHZ−2500」2本連結、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、分子量の値はポリスチレン換算値である]の条件で測定した値である。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
[3]耐冷熱サイクル性の評価
アルミニウム板(JIS A6061Pに規定された材質)とABS樹脂製(ABS樹脂として新神戸電機社製、商品名「ABS−N−WN」を用いた)の試験片とを、実施例1〜7及び比較例1〜6の接着剤組成物を用いて接着させ、23℃で3日間静置して養生させた後、JIS K 6861に準じて引張せん断接着強さを測定し(これを初期強度とする)、次いで、冷熱衝撃試験機を用いて、−40℃で1時間保持し、その後、80℃で1時間保持する冷熱サイクルを1サイクルとして10サイクル後の引張せん断接着強さを上記と同様にして測定し(これを試験後強度とする)、下記のようにして保持率を算出した。結果は表4のとおりである。
保持率(%)=(試験後強度/初期強度)×100
【0048】
【表4】

【0049】
表4の結果によれば、実施例1〜7の接着剤組成物は、冷熱サイクル後の引張せん断接着強さの保持率は50%以上であり、十分な耐冷熱サイクル性を有していることが分かる。一方、比較例1〜6の接着剤組成物は、保持率が30%未満であり、劣っていることがわかる。この結果より、シアノアセチル基を有する特定の多官能シアノ酢酸エステルを含有することにより、耐冷熱サイクル性が大きく向上していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、2−シアノアクリル酸エステルを含有し、所謂、瞬間接着剤として一般家庭用、医療分野等の他、各種産業界などの広範な製品、技術分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2−シアノアクリル酸エステル、(b)2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体及び可溶性の重合体となり得る単量体を用いてなる共重合体、並びに(c)シアノアセチル基を2個以上有する多官能シアノ酢酸エステルを含有する接着剤組成物であって、
前記(c)多官能シアノ酢酸エステルの数平均分子量が1000〜50000であり、かつ、前記(a)2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、前記(b)共重合体が2〜40質量部、及び前記(c)多官能シアノ酢酸エステルが1〜30質量部であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
上記(c)多官能シアノ酢酸エステルが、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール又は水添ポリイソプレンポリオールのシアノ酢酸エステルである請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
上記(b)共重合体のうち、2−シアノアクリル酸エステルに難溶性の重合体となり得る単量体が、エチレン、プロピレン、イソプレン及びブタジエンのうちの少なくとも1種であり、可溶性の重合体となり得る単量体が、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのうちの少なくとも一方である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ヒュームドシリカを更に含有し、上記2−シアノアクリル酸エステルを100質量部とした場合に、該ヒュームドシリカは1〜30質量部である請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2012−246328(P2012−246328A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116593(P2011−116593)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】