説明

接触塔

【課題】良好な分散状態のもとで2相の流体を接触させることが可能であり、且つ多段化の容易な接触塔を提供する。
【解決手段】接触塔1は、内部を隔壁(垂直壁10、水平壁21、31)により複数のセル22、32に分離され、各セル22、32は、当該接触塔1内を上昇する上昇流体と、接触塔1内を下降する下降流体との向流接触空間となる。各段の垂直壁10に設けられた下降流体噴出孔52は隔壁に堰き止められて溜まった下降流体を隣接する下段側のセル22、32に噴出させ、この噴出孔52の上方側に設けられた上昇流体入口51は下段側のセル22、32からの上昇流体を流入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収、放散、蒸留等の気液接触や抽出等の液々接触、またスラリー等の固体を含んだ液体と気体との接触反応等の気液固接触等を行うための接触塔に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製やガス精製、石油化学等の産業においては、例えば気体と液体とを接触させたり、2種類の液体同士を接触させたりすることにより、これらの流体間で進行する物質やエネルギーの授受、物質間の反応等を利用して特定の物質の分離や精製、変換を行う吸収、放散、蒸留、抽出、接触反応等のプロセスが多数採用されている。例えば、相の異なる2流体を塔内で接触させ、流体間の界面にて物質移動を進行させる吸収塔、放散塔や抽出塔、塔の高さ方向に温度勾配を付与し、気液平衡を利用して物質の分離、精製を行う蒸留塔等の接触塔は、これらのプロセスに広く採用されている装置である。
【0003】
一般に接触塔には、2流体を互いによく分散させることにより接触面積を大きくして物質移動や平衡操作の効率を高めるための機構が設けられており、取り扱われる流体や適用されるプロセスに応じて種々のタイプのものが使い分けられている。このような観点から見ると、例えば気液接触塔の主なタイプには、(1)加圧ポンプ等を用いて液体を液滴の状態で塔内に供給し、気相内に液滴を分散させるスプレー塔やジェットスクラバー、液相で満たされた塔内に気泡を分散させる気泡塔、(2)塔内に充填した充填物の表面に液膜状に液体を流すことで気液接触界面を大きくする充填塔、(3)塔内を流下する液体を一時的に滞留させる棚段を一定間隔で設置し、各棚段に設けられた泡鐘や孔を通して棚段上に滞留している液相内に気泡を分散させる棚段塔等がある。
【0004】
これらの気液接触塔のうちスプレー塔や気泡塔のように液滴や気泡をそれぞれ気相、液相内に分散させるタイプのものは、充填塔等と比較して気体と液体との分散状態がよいという利点があるが、気液接触の時間が比較的短く、塔全体の理論段数が1〜2段相当しかない。このため、例えば吸収塔や放散塔において高い吸収率や放散率を得るためには、複数の接触塔を直列に接続して装置を多段化する等の特別な装置構成が必要となり、装置の複雑化やコスト増大の観点から問題がある。
【0005】
これに対して充填塔や棚段塔は、充填物の充填高さや棚段の実段数を増減することで接触塔の理論段数を比較的自由に設計できる。しかしながら気液接触の機構に注目すると、気体と液体との接触は主に液膜の表面や液相内の気泡表面にて行われるため、気相側では液が十分に分散された状態にあるとはいえず更なる改善が検討されてきた。また棚段塔では、液相内に気泡を分散させるという接触機構を採用しているため、液相の泡立ちにより処理量や処理効率を低下させてしまうフォーミング現象が接触塔の操作範囲(気体や液体の供給量や供給比率、処理可能な流体の種類等)を狭くしてしまうという問題もあった。
【0006】
ここで特許文献1には、図26(a)に示すように、棚段塔タイプの気液接触塔100について、塔内を流下する液体と上昇する気体とを孔のない棚段101の表面で並流させながら気液接触を行う技術が記載されている。しかし、本技術の目的は例えば室内に設置可能なコンパクトな接触塔を開発することであり、気体と液体との分散状態の更なる向上を目的とする技術ではない。
【0007】
また特許文献2には、充填塔タイプの気液接触反応塔110につき、図26(b)に示すように、この気液接触反応塔110内を、疎水性の触媒の充填された複数のセル111に分離することで、疎水性の触媒を用いることによる液流の偏流を防止する技術が記載されている。更に図26(c)に示すように、各々のセル111の壁面を液体、気体の流れ方向(垂直方向)を横切る方向(水平方向)に波打つ波形に形成することによって、当該波形形状に依存した液流を形成し、気流と液流との接触面積を大きくする技術が記載されている。本技術は、塔内を複数のセルに分離する点において後述する本発明の実施の形態と似た構成を備えているが、気液接触の機構においては、セル111の壁面を流下する液の表面にて気体と液体とを接触させるものであり、気相において液を分散させる技術については何ら記載されていない。
【0008】
また液々接触の例として、本願の発明者は、図27に示すように、下降する重液(H)と上昇する軽液(L)とを接触させる液々接触塔120内に、複数段の棚段121を設け、この棚段121の一部を切り欠いて重軽両液の流路123とすると共に、各棚段121の流路123側の端部から垂直下方に伸びる堰板122を設けた液々接触塔120を開発した(特許文献3)。この堰板122には、開口部124を設けてあり、堰板122に堰止められて棚段121下方に一時的に滞留した軽液(L)は開口部124を介して水平方向にジェット状に流出し(L)、下降する重液(H)からの剪断力を受けて液滴(L)となることにより重液(H)内に分散し、両液体を効率的に接触させることができる。このような技術に対して本発明者は、液々接触塔における重軽液間の分散状態を更に改善する技術の開発も進めてきた。
【特許文献1】特開2002−336657号公報:請求項1、第0010段落、図1
【特許文献2】特開2000−254402号公報:第0015〜0020段落、図1、図4
【特許文献3】特開平7−80283号公報:第0017〜0019段落、第0032段落、図5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、その目的は、良好な分散状態のもとで2相の流体を接触させることが可能であり、且つ多段化の容易な接触塔を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る接触塔は、塔内の下部から気体である上昇流体を供給すると共に、前記塔内の上部から液体である下降流体を供給して、気体及び液体を向流接触させる接触塔において、
前記上昇流体及び下降流体の向流接触空間を形成するセルを、上昇流体及び下降流体の流路に沿って互いに隣接する上段側のセルと下段側のセルとが段違いになるように多段に設けたことと、
前記上段側のセルと前記下段側のセルとを隔壁により分離したことと、
各段の隔壁において、前記上段側のセルの下部には、当該隔壁に堰き止められて溜まった下降流体が前記下段側のセルに噴出するように下降流体噴出孔が設けられると共に下降流体が溜まる領域よりも上方側には、当該下段側のセルからの上昇流体が当該上段側のセルに流入する上昇流体流入口が設けられていることと、を特徴とする。
【0011】
また、他の発明に係る接触塔は、塔内の下部から液体である上昇流体を供給すると共に、前記塔内の上部から液体である下降流体を供給して、液体同士を向流接触させる接触塔において、
前記上昇流体及び下降流体の向流接触空間を形成するセルを、上昇流体及び下降流体の流路に沿って互いに隣接する上段側のセルと下段側のセルとが段違いになるように多段に設けたことと、
前記上段側のセルと前記下段側のセルとを隔壁により分離したことと、
各段の隔壁において、前記上段側のセルの下部には、当該上段側のセルに溜まった下降流体がその位置エネルギーにより前記下段側のセルに噴出するように下降流体噴出孔が設けられると共に下降流体噴出孔よりも上方側には、当該下段側のセルからの上昇流体がその浮力により当該上段側のセルに流入する上昇流体流入口が設けられていることと、を特徴とする。
【0012】
更にまた他の発明に係る接触塔は、塔内の下部から液体である上昇流体を供給すると共に、前記塔内の上部から液体である下降流体を供給して、液体同士を向流接触させる接触塔において、
前記上昇流体及び下降流体の向流接触空間を形成するセルを、上昇流体及び下降流体の流路に沿って互いに隣接する上段側のセルと下段側のセルとが段違いになるように多段に設けたことと、
前記上段側のセルと前記下段側のセルとを隔壁により分離したことと、
各段の隔壁において、前記下段側のセルの上部には、当該下段側のセルに溜まった上昇流体がその浮力により前記上段側のセルに噴出するように上昇流体噴出孔が設けられると共に上昇流体噴出孔よりも下方側には、当該上段側のセルからの下降流体がその位置エネルギーにより当該下段側のセルに流入する下降流体流入口が設けられていることと、を特徴とする。
【0013】
下降流体噴出孔を備えた上記の各接触塔は、前記上段側のセルと前記下段側のセルとは、互いに一部が上下に積層された位置関係にあり、前記下降流体の噴出孔は、前記上段側のセルの下部側面及び底面の少なくとも一方に設けられるように構成してもよく、また上昇流体噴出孔を備えた接触塔は、前記上段側のセルと前記下段側のセルとは、互いに一部が上下に積層された位置関係にあり、前記上昇流体の噴出孔は、それぞれ前記下段側のセルの上部側面及び天井面の少なくとも一方に設けられるようにしてもよい。また、前記下降流体の噴出孔、上昇流体の噴出孔、上昇流体流入口や下降流体の流入口は、横方向若しくは縦方向に延びるスリット、または横方向若しくは縦方向に多数配列された孔部により構成されていることが好ましい。
【0014】
また気体を上昇流体とし、液体を下降流体とする接触塔において、下降流体噴出孔には、下段側のセルを流れる上昇流体が当該下降流体噴出孔を介して上段側のセルへと流れ込むことを防止するために、前記隔壁に堰き止められた下降流体の量に応じて開閉する第1のシャッターを設けてもよく、このとき前記第1のシャッターは第1の付勢手段により付勢されて閉じられるように当該下降流体噴出孔の流出側に設けられ、上段側のセルに溜まった下降流体からの圧力、即ち液圧により前記第1の付勢手段の付勢に抗して開かれるように構成してもよい。
【0015】
また気体を上昇流体とし、液体を下降流体とする接触塔において、下降流体噴出孔がセルの側面に設けられている場合には、前記第1のシャッターはこの下降流体噴出孔を閉じる下降位置と、当該下降流体噴出孔を開く上昇位置との間で昇降するように構成され、上段側のセルに溜まった下降流体の浮力により下降位置から上昇するように構成してもよい。更にこのとき、下降流体噴出孔がセルの底面にも設けられている場合には、前記第1のシャッターは前記下降位置において当該底面の下降流体噴出孔を閉じるように構成するとよい。また下降流体の浮力により昇降する前記第1のシャッターは、上段側のセル側へ向けて横方向に突出する浮力調整部材を備えていてもよい。
【0016】
この他、気体を上昇流体とし、液体を下降流体とする接触塔において、上昇流体流入口には、下段側のセルから上段側のセルへと流入する上昇流体の圧力に応じて当該上昇流体流入口の一部を開閉する第2のシャッターが設けられていてもよく、この場合、当該第2のシャッターは第2の付勢手段により付勢されて閉じられるように前記上昇流体流入口の流出側に設けられ、上昇流体からの圧力により前記第2の付勢手段の付勢に抗して開かれる構成とする場合等が考えられる。
【0017】
また、前記セルの底面を、当該セルに設けられた噴出孔に向けて低くなるように傾斜させてもよく、これは下降流体が粉粒体を含むスラリー等である場合に好適である。
【0018】
さらに、多数の前記セルを縦1列に配置したセル列が複数列配置され、各セル列に属するセルと、そのセル列に隣接するセル列のセルとが段違いに配置させ、各セル列を一方向に沿って横に並べたり、円筒状に形成された接触塔内に、各セル列を同心円状に横に並べたりしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る接触塔は、上昇流体(気体や液体)と下降流体(液体)との向流接触空間を形成するセルを多段に備え、これらの各セル内では、上段側のセルから噴出孔を介して噴出させた下降流体と、下段側のセルから流入口を介して流入させた上昇流体とを向流接触させるので、各セル内に良好な分散状態を作り出すことができる。この結果、例えば気液接触塔の場合には、吸収操作の吸収効率や放散操作の放散効率を向上させることができる。
またこれらの接触空間は、塔内を隔壁により分離するだけで簡単に形成できるので、容易に多段化することが可能であり、高性能の接触塔を低コストで建設することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る実施の形態として、吸収や放散等の気液接触を行う気液接触塔1を例に、図1〜図4を用いてその構造を説明する。図1、図2は実施の形態に係る気液接触塔1の全体構造を模式的に示した縦断面図であり、図3、図4はその内部構造についての説明図である。
【0021】
気液接触塔1は、例えばステンレススチール製の円筒容器から構成され、この気液接触塔1内を上昇する気体(上昇流体)と、同じく下降する液体(下降流体)とを向流接触させる役割を果たす。図1に示すように、気液接触塔1の塔頂部には、気液接触塔1内に液体を供給するための液体供給部11と、気体を抜き出すための気体抜出部14とが設けられており、塔底部には、液体を抜き出すための液体抜出部12と、気体を供給するための気体供給部13とが設けられている。
【0022】
図1に示すように気液接触塔1内には、液体供給部11と気体供給部13との間の気液接触領域において、気液接触塔1本体を図1に向かって左右に2等分するように、この気液接触塔1の内周面が描く円の直径位置にて垂直に伸びる垂直壁10が設けられている。
【0023】
垂直壁10により区画された気液接触塔1の左側領域20には水平壁21が等間隔に複数段設けられ、これにより左側領域20の空間が上下方向に複数に区画されている。一方、垂直壁10により区画された右側領域30には、前記水平壁21と段違いにして水平壁31が等間隔に複数段設けられ、これにより右側領域30の空間が上下方向に複数に区画されている。なお、右側領域30の水平壁31は、左側領域20において上下に隣接する水平壁21の中間の高さレベルに位置している。
【0024】
従って、互いに上下に隣接する2枚の水平壁21、21(31、31)、気液接触塔1の周壁15及び垂直壁10により囲まれる空間をセルと呼ぶと、気液接触塔1内にはこれらのセルを縦1列に多段に配置したセル列が2列形成され、一方のセル列に属するセルと他方のセル列のセルとが段違いに配置された状態となっている。なお、以下の説明では、左側領域20のセル及び右側領域30のセルに対して夫々符号22、32を割り当てることとする。
【0025】
これらのセル22、32は、気液接触塔1内を流れる気体と液体との向流接触空間を成している。気液接触塔内の各セル22、32は互いに似た構成を備えているので、以下、例えば図1中の破線内に示したセル32を例に説明する。図3(a)はセル32の底面側の水平壁31の平面図(図1のA−A’面より矢視)であり、図3(b)は同じくセル32の垂直壁10の側面図(図3(a)のB−B’面より矢視)である。また図4は、気液接触塔1内におけるセル32の内部構造を示した斜視図である。
【0026】
図3(b)に示すように、垂直壁10において各水平壁21、31の直ぐ下方位置には、水平方向に伸びるスリットからなる気体通流口51が形成され、また垂直壁10における各水平壁21、31の直ぐ上方位置には、水平方向に伸び、例えば3段のスリットからなる液体通流口52が形成されている。気体通流口51は、各水平壁21、31の下面とそのスリットの上縁とを共有しており、また液体通流口52を構成する3段のスリットのうちの最下段のスリットの高さ位置は、後述のように気液接触塔1の運転が定常状態になったときの液溜まりの液面よりも低くなるように設定されている。
【0027】
以上の構成により、例えば図4の斜視図に示すように、あるセル32から垂直壁10を見たとき、上半分側における気体通流口51及び液体通流口52は夫々斜め上段(前段)側のセル22に対して上昇流体である気体を流出する気体流出口及び、斜め上段側のセル22から下降流体である液体が流入する液体流入口に相当することになる。また、同じく下半分側における気体通流口51及び液体通流口52は、夫々斜め下段(次段)側のセル22から気体が流入する気体流入口及び、斜め下段側のセル22に対し液体が流出する液体流出口に相当することになる。
【0028】
即ち、図4に示したセル32の斜め上段側のセル22に設けられた液体流出口は、当該セル32の液体流入口に相当し、斜め下段側のセル22に設けられた気体流出口は、当該セル32の気体流入口に相当することになる。このようにして、各セル22、32に設けられた気体通流口51、液体通流口52によって、気液接触塔1内には、図2に示すように気体の上昇する流路及び液体の下降する流路が形成されることになる。なお図2中に破線で示した矢印は気流17を示しており、実線で示した矢印は液流16を示している。
【0029】
ここで、既述のように液体通流口52がスリット状の狭い流路として構成されていることにより、この液体通流口52は、図4に示すように、セル32内に流入した液体が斜め下段側のセル22へと流出する際の抵抗として機能する。この結果、各セル22、32内の下方側の空間は、そのセル22、32内を流れる液体を垂直壁10によって堰き止めて溜める滞留部53となり、セル22、32内を流れる液体はこの滞留部53に液溜まりを形成してから液体通流口52を介して下段側のセル32、22へと送り出されることになる。この滞留部53に溜まる液溜まりの深さ(液深)は、液体供給部11より供給される液体の流量によって決まり、流量が大きいほど液深は深くなり、流量が小さいと液深は浅くなる。
【0030】
以上に説明した構成に基づいて、本実施の形態に係る気液接触塔1の作用を図5、図6を参照しながら説明する。図5は、図4に示したセル32内における気流17と液流16との気液接触機構を説明するための斜視図であり、図6は気液接触塔1内の気液接触の状態を模式的に示した縦断面図である。
【0031】
図1に示す液体供給部11より気液接触塔1内に供給された液体は、重力によって各セル22、32を通りながら塔内を下降し、図5に示すセル32の斜め上段側のセル22に到達する。ここで既述のように、上段側のセル22に供給された液体は、垂直壁10に堰き止められることにより滞留部53に滞留して液溜まりを形成している。滞留部53に液溜まりが形成されると、この液溜まり内の液体の持つ位置エネルギーが液体通流口52にて運動エネルギーに変換され、液体を下段側のセル32側へ押し出す力となる。この結果、下段側のセル32から見ると、図5に示すように、上段側のセル22の滞留部53に溜まっていた液体が、スリット状の液体通流口52を介し、シート状の液流16となって噴出する。これらの作用から分かるように、スリット状の液体通流口52は垂直壁10に堰き止められて滞留部53に溜まった液体を下段側のセル32に噴出させる噴出孔としての役割を果たす。
【0032】
一方で気体供給部13より気液接触塔1内に供給された気体は、気体を押し込む圧力や気体に働く浮力によって各セル22、32を通りながら気液接触塔1内を上昇して、図5に示すセル32の斜め下段側のセル22に到達し、気体通流口51を介して当該セル32へと送り出される。既述のように気体通流口51はスリット状に構成されているため、図5に示すように、当該セル32側から見ると気体はシート状の速い気流17となって気体通流口51より導入される。
【0033】
ここで、既述のようにセル32の気体通流口51は、液体通流口52の直ぐ下方位置に設けられているため、気流17は、この気流17がセル32の空間内で拡大して減速する前に液流16と交差し、この液流16を下から吹き上げるようにして流れる。この結果、液流16には気流17と交差したことによる剪断力が働き、図6に示すように液滴となってセル32の空間内に分散される。このように、液体通流口52と気体通流口51とが互いに上下に配置されていることにより、セル32は液流16と気流17とを向流接触させる空間として機能する。
【0034】
また、気体通流口51を出た直後の速い気流17は、その気流17の周りに圧力低下を生ずるため、液体通流口52の近傍を通過する際に液体を引き込んで液流16の噴出を促進する作用を得ることもできる。
【0035】
セル32内に分散した液滴表面では、周囲の気体との間で物質移動が行われ、吸収塔の場合には気体から液体へ、放散塔の場合には液体から気体へと物質の移動が進行する。一方、セル32内の空間の水平断面積は気体通流口51の開口面積より広いため、気流17は液流16と交差した後、徐々に減速しながらセル32内を上昇していく。気流17の流れが遅くなると、液滴を吹き上げる気流17の力が弱くなり、液滴は滞留部53へと沈降を開始して気体と液体とが分離される。一方、気流17の流れが減速した場合であっても、微小液滴が気流に同伴される向流接触においては、気体通流口51にデミスターを設置することにより液滴を十分に分離させることができる。
【0036】
そしてセル32内を上昇する気体は、上面側の水平壁31に到達すると、垂直壁10に設けられた気体通流口51を介して斜め上段側のセル22へと送り出される。一方で滞留部53へと沈降した液滴は、滞留部53に形成されている液溜まりに合流し、ここで濃度が均一化された後に液体通流口52を介して斜め下段側のセル22へと送り出される。
【0037】
このようにして気液接触塔1内の各セル22、32では、液体を液滴にして気体内に分散し気液接触を行う動作と、気液接触後の気体と液体とを分離し、それぞれの流路に沿って下流側のセル22、32へと送り出す動作とが繰り返して行われ、気液間の吸収や放散が進行する。そして液体が塔底に達すると、液体は気体との接触を終えて液体抜出部12へと抜き出される。また気体についても同様に塔頂に到達した後、液体との接触を終えて気体抜出部14へと抜き出される。
【0038】
以上に説明した本実施の形態に係る気液接触塔1によれば以下のような効果がある。気液接触を行う気液接触塔1内を気体と液体との向流接触空間を形成する複数のセル22、32に区画し、各セル22、32の滞留部53に溜まった液体を、噴出孔としての役割を果たす液体通流口52を介して下段側のセル22、32に噴出させたり、これらのセル22、32内を気体が上昇する力を利用して、上段側のセル22、32に送り出したりする。このため特別な加圧手段を用いずに夫々の流体を隣接するセル22、32に勢いよく送り出すことができる。そして、各セル22、32内では、例えばシート状に噴出した液流16と気流17とが向流接触し、気相内に液滴が分散して、良好な分散状態を作り出すことができる。この結果、HETS(一理論段数あたりの高さ:Height Equivalent to a Theoretical Stage)が低くなって吸収効率や放散効率等の向上に寄与する。
【0039】
また、既述のようにHETSが低いことに加え、本実施の形態に係る気液接触塔1内では気体や液体が複数のセル22、32を通過する際に塔内を蛇行しながら上昇、下降するので、直線状に上昇、下降する従来の棚段塔等に比べて、塔内における気体や液体の滞留時間が同じであっても気液接触塔1の高さを更にコンパクトにできる。
【0040】
また、スプレー塔等と比較して各セル22、32内で形成される液滴が大きいので、気体の流れが速くても気液の分離が容易であり、単位断面積あたりの処理量を大きくすることや、同じ処理量であれば塔径を小さくすることができる。
【0041】
また、棚段上に滞留させた液相内に気体を分散させて気液接触を行う棚段塔とは異なり、本実施の形態に係るセル22、32では、気流が液相内を通過する機構とはなっていないため、フォーミング(液相の泡立ち)の発生を回避または抑えることができる。また棚段塔とのこのような接触機構の違いにより、気流の圧力損失も小さくなって、気液接触塔1に気体を送り込むために必要な動力が小さくなり省エネルギーにも貢献する。
【0042】
またこれらのセル22、32は、気液接触塔1内を垂直壁10や水平壁21、31で分離するだけで簡単に形成できるので、容易に多段化することが可能であり、高性能の気液接触塔1を低コストで建設することが可能となる。
【0043】
更に、液体通流口52や気体通流口51をスリット状に設けることにより、セル22、32内に液流16や気流17をシート状にして交差させることができるので、気流17から液体により強い剪断力を加え、液流16はより小さな液滴に分散されやすくなって、良好な分散状態を得られる。なお、これら液体通流口52や気体通流口51等の形状は、図3(b)に示したものに限定されるものではなく、例えば図7(a)に示すように液体通流口52を更に短いスリットを多数配列したり、図7(b)に示すように円形の孔部を成す液体通流口52を多数配置したりするようにしてもよい。また図7(c)に示すように、液体通流口52を垂直方向に細長いスリットを複数並べた状態で設けてもよいし、更に例えば気体通流口51のスリットを分割して横方向に多数配列してもよい。更に、図示は省略するが、図7(b)に示した液体通流口52と同様に、孔部を成す気体通流口51を横方向に多数配列してもよい。
【0044】
また、図1〜図6を用いて説明した実施の形態においては、気液接触塔1内を垂直に2列に分割し、隣接するセル同士が段違いに配置された構造となっているが、気液接触塔1内のセル列の数や各セル22、32の形状は当該実施の形態に限定されるものではない。例えば図8(a)、図8(b)に示すように、気液接触塔1の内周面が描く円を垂直に3分割して3列のセル列が一方向に沿って横に並ぶようにし、各セル列内のセル22、32、42が隣接するセル22、32、42と段違いに配置されるようにしてもよい。
【0045】
更にセルは、図1や図8(a)に示したようにそのX−Z断面が矩形のものに限定されるものではない。例えば図9(a)〜図9(c)に示すように、上段側のセル22、32、42と下段側のセル22、32、42との一部が互いに上下に積層されるように構成し、滞留部53の体積が大きくなるようにしてもよい。またこれとは反対に、図9(a)の各セル22、32、42の天地を反転させて、滞留部53の体積が小さくなるように構成してもよい。
【0046】
またこのように上段側と下段側とのセル22、32、42の一部が互いに上下に積層されるように構成する場合には、液体通流口52は、これまで例示してきたように垂直壁10に設ける場合に限定されるものではなく、図9(a)〜図9(c)に併せて示してあるように、セル22、32の底面側の水平壁21、31に液体通流口52を設けるように構成してもよい。更にまた図10(a)〜図10(c)には気液接触塔1内を垂直方向に同心円状に分離して、円筒状のセル列を同心円状に横に並べた構造の気液接触塔1の例を示しており、このようなタイプの気液接触塔1も本発明には含まれる。なお図中の18は内側のセル22、32を支えるための梁である。
【0047】
続いて図11(a)、図11(b)には、液体に粉粒状の固体不純物を含むスラリーを処理する吸収塔や放散塔、触媒を含んだスラリーと気体とを接触させて反応させる接触反応塔等に用いられる気液接触塔1を例示している。気液接触塔1塔内でスラリーを処理する場合には、水平壁21、31上にスラリー内の粉粒体が沈降、堆積することにより塔内を下降するスラリーの流れを阻害してしまうおそれがある。そこで図11(a)、図11(b)に示した気液接触塔1では、水平壁21、31に傾斜を設けてあり、この傾斜が気体通流口51へ向けて低くなっていることによりスラリー内の粉粒体を水平壁21、31上に堆積させずに下流のセル22、32へと排出できる。なお、このような気液接触塔1を適用可能な処理対象は、粉粒体を含むスラリーに限定されるものではなく、気液接触塔1内を流下する粉粒体(固体)と気体との固気接触、液体との固液接触にも適用することができる。
【0048】
本実施の形態に係わる気液接触塔1は、例えば図5、図6にて説明したように滞留部53に液溜まりを形成して液体通流口52から噴出させた液流16と、気体通流口51を介して上昇してきた気流17とを交差させ、当該液流16を吹き上げると共に液流16に剪断力を加え、各セル22、32内に液滴を分散させることにより気体と液体との良好な分散状態を作り出している。ここで例えば気液接触塔1を低処理量で運転している場合などには、気体通流口51から流出する気流17の流速が低下し、液流16を吹き上げる力や剪断力が弱まって気液の分散状態が悪化する場合もある。
【0049】
また図6では、液体通流口52を成す全てのスリットから液体を噴出している状態を示しているが、低処理運転時などには液溜まりの液深が上段側に設けられたスリットの位置よりも低くなることがある。この場合には、液溜まりよりも高い位置に設けられているスリットからは液体が噴出されなくなり、下段側のセル32と上段側のセル22とが当該スリットを介して連通した状態となる。この結果、下段側のセル32内を上昇する気体の一部が連通したスリットを介して上段側のセル22へと流れ込み、気体通流口51を通過する気流17の流速が低下して気液の分散状態が悪化する場合もある。
【0050】
図12(a)、図12(b)に示すセル22、32は、こうした低処理運転時などにおける気液の分散状態の悪化を防止する機構を備えている。図12(a)は、例えば図13(a)に示すセル22の垂直壁10を下流側のセル32から見た正面図であり、図12(b)は、当該セル22を図12(a)に示したC1-C1’面より矢視した縦断側面図である。以下の図12〜図18に示す例では、各セル22、32は垂直壁10に設けられた2本のスリットと水平壁21、31に設けられた1本のスリットとの合計3本のスリットからなる液体通流口52を備えている場合について説明する。
【0051】
図12(a)、図12(b)に示した例において、セル22は液溜まりの液深が液体通流口52のスリットが設けられている位置よりも低くなった場合に、隣り合うセル32と連通された状態となることを防ぐための第1のシャッターを備えている。本例では第1のシャッターは垂直壁10に上下2段に設けられた液体通流口52(スリット)の上段側に設置されている。第1のシャッターは例えばスリットよりも一回り大きな矩形状のシャッタープレート71を備え、このシャッタープレート71の上端部には左右水平方向に突出する回動軸711が設けられている。
【0052】
シャッタープレート71は、図12(b)に示すように、液溜まりの形成されるセル22から見て液体通流口52(スリット)の出口側、即ち、液流16が流出する下流側のセル32内の垂直壁10面に設置される。当該垂直壁10面には、例えばリング状の軸受部712が固定されており、この軸受部712に前述の回動軸711を貫通させることによりシャッタープレートが回動軸711より懸垂された状態で設置される。
【0053】
既述のように、シャッタープレート71は液体通流口52をなすスリットよりも一回り大きなサイズに形成されているので、図12(b)に示すセル32の方向から力が加わっても、シャッタープレート71はスリットを塞いだ状態で垂直壁10面にて係止される。一方、同図に示すセル22の方向から力が加わった場合には、シャッタープレート71は加わる力に応じて下段側のセル32の内側へ向かって回動し、塞がれていたスリットを開放することができる。ここで例えば前記シャッタープレート71を閉じる方向、即ちシャッタープレート71を垂直壁10の壁面に押し付ける方向に付勢された例えば巻きバネなどの付勢手段を回動軸721と組み合わせて設け、シャッタープレート71が開き始める際の液流16の流量を調節してもよい。
【0054】
次に気体通流口51に設けられた第2のシャッターの構成について説明すると、第2のシャッターは、既述の第1のシャッターと同様に、細長い矩形状のシャッタープレート72と、シャッタープレート72の上端部に設けられ左右水平方向に突出する回動軸721と、この回動軸721を貫通させる軸受部722と、を備えている。ここで第2のシャッターのシャッタープレート72は、本例ではその幅がスリット状に形成された気体通流口51よりも一回り大きく、高さが気体通流口51の半分程度の大きさに形成されている。そして例えば回動軸721の張設される位置が気体通流口51のほぼ中央の高さとなるように、気流17の流出するセル22側に軸受部722を配置して回動軸721を貫通させることによりシャッタープレート72は当該回動軸721に懸垂された状態で配設される。
【0055】
この結果、シャッタープレート72は、気体通流口51の一部、例えば下側半分を塞いだ状態となり、図12(b)に示すセル32の方向からシャッタープレート72を持ち上げられないような小さな力が加わったとしても、シャッタープレート72は気体通流口51の一部を塞いだままの状態で殆ど動かない。しかし、セル32の方向から加わる力が更に大きくなっていくと、シャッタープレート72は回動軸721を中心としてセル22の内側へ向けて回動し、塞がれていた気体通流口51が徐々に開放されることとなる。ここで例えば前記シャッタープレート72を閉じる方向、即ちシャッタープレート72を垂直壁10の壁面に押し付ける方向に付勢された例えば巻きバネなどの付勢手段を回動軸721と組み合わせて設け、シャッタープレート72が開き始める際の気流17の流量を調節してもよい。
【0056】
以上に説明した2つのシャッターのうち、第1のシャッターの作用を説明すると、図13(a)に示すように気液接触塔1の処理量が低く、各セル22、32の滞留部53に形成される液溜まりの液位(下降流体の液量)が液体通流口52をなす上段側のスリットに達していない場合には、第1のシャッターのシャッタープレート71を回動させようとする力が働かない。このため、シャッタープレート71は回動軸711から懸垂された状態で、また例えば下段側のセル32と上段側のセル22内、または下段側のセル22内と上段側のセル32内との圧力差によってシャッタープレート71が垂直壁10面に押し付けられた状態でスリットを塞ぐ。
【0057】
この結果、下段側のセル32、22内を上昇する気体がこのセルを介して上段側のセル22、32へと流れ込むことを防止し、気体通流口51を通過する気流17の流速を落とさないよにすることができる。一方、気液接触塔1の処理量が増え、液溜まりの液位が前記上段側のスリットに達すると、シャッタープレート71を回動させる力が加わり、図13(b)に示すように塞がれていたスリットを開放して液溜まりの液位(液量)に応じて液流16を噴出させることができる。
【0058】
次に第2のシャッターの動作を説明すると、処理量の低い図13(a)に示す状態では、各セル22、32内を上昇する気体の量が少ないことからシャッタープレート72に働く圧力が小さく、当該シャッタープレート72は気体通流口51の下側半分を塞いだまま殆ど動かない。この結果、気体通流口51の開口面が小さくなり、各セル22、32内を上昇する気体の量が少ない場合であっても当該通流口51を通過する気流17の流速の低下を抑えることができる。
【0059】
そして図13(b)に示すように気液接触塔1の処理量が増えると、各セル22、32内を上昇する気体の量も増えて気体から受ける圧力も大きくなることによりシャッタープレート72が回動し、塞がれていた気体通流口51を開放して気流の通過する開口面が大きくなる。この結果、開口面が小さいままの状態と比べて圧力損失がそれ程大きくならずに、必要な流速を保った気流17を形成することができる。
【0060】
これら第1のシャッター、第2のシャッターを設けることにより、気液接触塔1の処理量が低い場合であっても、気体通流口51を通過する気流17の流速低下を抑え、液体通流口52から噴出する液流16を吹き上げる力や液流に16に働く剪断力を維持して気液の良好な分散状態を維持することができる。
【0061】
ここで第1のシャッターの構成は、図12(a)、図12(b)に示した回動式のものに限定されない。例えば図14〜図15に示すように、シャッタープレート73を例えば内部が中空のステンレス部材などで構成し、各セル22、32内に溜まった液溜まりからの浮力を受けて垂直壁10に沿って昇降することにより、液体通流口52(スリット)を開閉するようにしてもよい。図中、732はシャッタープレート73の移動方向をガイドするガイド部材であり、731はシャッタープレート73とガイド部材732との間に介設され、ガイド部材732内を走行するスライダーである。
【0062】
本例においてシャッタープレート73は、垂直壁10に上下2段に設けられた2つのスリット(液体通流口52)を開閉できるように構成されており、例えば図16(a)に示すように気液接触塔1を低処理運転している場合には、液溜まりの液位が低くシャッタープレート73は下降位置から殆ど上昇せずに垂直壁10に設けられたスリット(液体通流口52)は閉じられた状態となっていて、液流16は水平壁21に設けられたスリット(液体通流口52)からのみ噴出している。
【0063】
そして気液接触塔1の処理量が増え、滞留部53内の液溜まりの液位が上昇し始めると、液溜まりからの浮力を受けたシャッタープレート73が上昇位置まで上昇し、垂直壁10の下段側のスリット(液体通流口52)が開いて液流16の噴出を開始する。そして更に処理量が増えると上段側のスリット(液体通流口52)も開いて、図16(b)に示すように全てのスリットから液流16が噴出する。
【0064】
ここで液溜まりの浮力によって昇降するシャッタープレート73の構成は図14〜図16(b)に示した平板形状に限定されるものではなく、例えば図17(a)に示すように、シャッタープレート73aの下端部に水平壁21に沿って突出する突出プレート74を設けてプレート73a全体の断面形状がL字型となるように構成してもよい。この場合には、図18(a)、図18(b)に示すように液溜まりの液位に応じて水平壁21、31に設けられたスリット(液体通流口52)の開閉も行うことができる。
【0065】
また図17(b)に示すように、シャッタープレート73bの予め決めた高さ位置に上段側のセル22内向けて横方向に突出する浮力調整部材75を設けてプレート73b全体の断面形状がT字型となるように構成してもよい。浮力調整部材75を設けることによって、例えば図18(a)、図18(b)に示すようにシャッタープレート73bに働く浮力を液溜まりの液位に応じて変化させることが可能となる。この結果、例えば浮力調整部材75を設ける高さ位置を変化させることにより、各スリット(液体通流口52)が開閉される際の滞留部53内の液溜まりの液位を調整することができる。
なお、液溜まりからの浮力を受けて昇降するシャッタープレート73、73a、73bは、内部が中空の部材で構成する場合に限定されず、例えばプラスチックなど、気液接触塔1にて処理される液体よりも比重の軽い部材で構成してもよい。
【0066】
以上に説明したセル22、32、42の構成のしかたの様々なバリエーションは、例えば、気液接触塔1の処理量、各セル22、32、42内の気体や液体の滞留時間、吸収、放散の効率、取り扱う気体や液体の流れ易さ、メンテナンスや建設のし易さ等を考慮して総合的に決定するとよい。
【0067】
更にまた本発明に係る気液接触塔1は、図19に示すように、例えば液体を分離、精製する蒸留塔にも適用することができる。図19に示した気液接触塔1は、例えば予め加熱された液体を供給する液体供給部11を気液接触塔1の中段に設け、塔頂側と塔底側との間に温度勾配をつけて、各セル22、32内の温度に応じた気液平衡状態に近づけることにより、塔頂の気体抜出部14から軽質分を抜き出し、塔底の液体抜出部12から重質分を抜き出すようになっている。なお図19中の61は気体抜出部14から抜き出された気体を凝縮させるためのコンデンサーであり、62は液体抜出部12から抜き出された液体を再加熱するためのリボイラーである。
【0068】
以上これまでは、気体と液体とを接触させる気液接触塔1に関する実施の形態及びその変形例を説明してきたが、本発明に係る接触塔で取り扱い可能な流体の組み合わせはこれに限られない。第2の実施の形態として、例えば塔内を上昇する軽液(上昇流体)と、塔内を下降する重液(下降流体)との間の液々接触により、例えば抽出等を行うための液々接触塔1aにも本発明は適用することができる。
【0069】
図20は、第2の実施の形態に係る液々接触塔1aの内部の状態を模式的に示した縦断面図であり、第1の実施の形態と同様の構成のものには図6と同じ符号を付してある。本実施の形態では、液々接触塔1aの全体構成は、11を重液供給部、12を重液抜出部とし、13を軽液供給部、14を軽液抜出部とした以外は、例えば図1に示した気液接触塔1と同様の構成を備えているので図示を省略する。また、各セル22、32の構成も図4に示したものと同様であり図示は省略するが、51を軽液通流口、52を重液通流口とした点が、第1の実施の形態に係るセル22、32とは異なっている。
【0070】
第2の形態に係る液々接触塔1aにおいては、上段側のセル22、32に溜まった重液がその位置エネルギーにより、スリット状に設けられた重液通流口(噴出孔)52を介して下段側のセル22、32へとシート状に噴出する。一方、下段側のセル22、32からは重液通流口52の直ぐ下方に設けられたスリット状の軽液通流口51より、軽液が浮力により上昇しながらシート状の流れとなって上段側のセル22、32に流入する。
【0071】
図20に示した液々接触塔1aは、重液が分散相、軽液が連続相となるように構成されたものであって、軽液は重液通流口52付近の下方側に設けられた軽液通流口51にて流速が急速に上昇し、流速が最大となった状態で上段側のセル22、32に流入した後、軽液通流口51から離れるにつれ流速が急低下していく。この軽液が流入する領域に、縦方向に設置された複数の重液通流口52よりシート状に噴出する重液が突入すると、重液のシート状の流れは、図20に示すように波板状に変形増幅されて、液々界面積の拡大が進行し、最終的には分裂して多数の液滴となる。さらに、上方側の重液通流口52で生成した液滴は下降し、その一段下から最下段に至るまでの重液通流口52で生成した重液のシートあるいはそれから分裂生成した液滴に衝突して、合一あるいは分散あるいは分裂する。各セル22、32に開口している重液通流口52の数及び/または面積が大きいほど液滴の合一、分裂の頻度が高い。この液滴が生成する過程で、重液と周囲の軽液との液々界面積が極めて大きくなるうえ、生成後の液滴が合一、分散、分裂を繰り返すため、物質移動が進行し、例えば特定の物質の抽出を効果的に行うことができる。さらに、生成した多数の液滴は大きさ、滴径が揃っており、微小液滴が生成しにくいため、例えばフラッディングが発生しにくくなる。なお、かかる液々接触塔1aにおいても図8〜図11を用いて説明したバリエーションを適用してもよいことは勿論である。
【0072】
一方、界面張力が大きい抽出系、あるいは重液と軽液の粘度が高い抽出系では、生成する液滴径がやや大きく、抽出を効率よく行えない場合もある。そこで図21に示すように、例えば本実施の形態に係わる液々接触塔1aからなる抽出塔1dの塔底部である下方静置部に脈動発生器19を接続するかあるいは空気パルスを送ることにより発生させた脈動を併用して、生成液滴をより小さくし、抽出をより効果的に行える。なお、図21中において11aは重液供給部、12aは重液抜出部、13aは軽液供給部、14aは軽液抜出部である。
【0073】
一方、軽液を分散相、重液を連続相とする場合には、図22に示した液々接触塔1bのように、図4に示したセル32の天地を反転させ、当該図中の51が重液通流口(重液通流口51aと記す)、52が軽液通流口(軽液通流口52aと記す)となっている点が、図20にて説明した液々接触塔1aとは異なっている。
【0074】
当該液々接触塔1bにおいては、下段側のセル22、32に溜まった軽液がその浮力により、スリット状に設けられた軽液通流口(噴出孔)52aを介して上段側のセル22、32へとシート状に噴出する。一方、上段側のセル22、32からは軽液通流口52aの直ぐ上方に設けられたスリット状の重液通流口51aより、重液が位置エネルギーにより下降しながらシート状の流れとなって下段側のセル22、32に流入する。
【0075】
この結果、軽液通流口52a付近の上方側に設けられた重液通流口51aより、流速が最大の状態で重液がシート状に流入している領域に、軽液通流口52aよりシート状に噴出する軽液が突入すると、軽液のシート状の流れは図22に示すように波板状に変形増幅されて、液々界面が拡大し、最終的には分裂して多数の液滴となる。さらに縦方向に連設された軽液通流口52aのうち、下方側の軽液通流口52aで生成した液滴は上昇し、その一段上から最上段に至るまでの軽液通流口52aで生成した軽液のシートあるいはそれから分裂生成した液滴に衝突して、合一あるいは分散あるいは分裂する。各セル22、32に開口している軽液通流口52aの数及び/または面積が大きいほど液滴の合一、分裂の頻度が高い。この結果、図20を用いて説明した既述の液々接触塔1aと同様に、重液と周囲の軽液との液々界面積が極めて大きくなるうえ、生成後の液滴が合一、分散、分裂を繰り返すため、物質移動が進行し、効果的な抽出を行うことができるだけでなく、生成した多数の液滴は大きさ、滴径が揃っており、微小液滴が生成しにくいため、例えばフラッディングが発生しにくくなる。なお、当該液々接触塔1bにおいても、例えば軽液通流口52aへ向けて高くなる傾斜を水平壁21、31に設けて、軽液を排出し易くしてもよく、また上段側のセル22、32と下段側のセル22、32との一部が互いに上下に積層されるようにして、軽液通流口52aを天井面側の水平壁21、31にも設けるようにしてもよい。一方、界面張力が大きい抽出系、あるいは重液と軽液の粘度が高い抽出系では、効率よく抽出を行う上で生成する液滴径がやや大きい場合もある。そこで既述の図22の例と同様に、例えば本実施の形態に係わる液々接触塔1bからなる抽出塔の塔底部である下方静置部に例えば脈動発生器19を接続するかあるいは空気パルスを送ることにより発生させた脈動を併用して、生成液滴をより小さくし、抽出をより効果的に行える。
【0076】
以上に説明したように、図20及び図22に示した第2の実施の形態では、図27を用いて背景技術にて説明した液々接触塔120と比較してシート状に噴出する分散相である重液(あるいは軽液)と連続相である軽液(あるいは重液)とをより勢いよく交差させることができるので、液滴生成時の液々界面積をより増大させ、生成後の液滴の合一、分裂の頻度を高め、物質移動速度をより増大させることが可能となり、抽出効率を向上させることができる。さらに、従来の液柱状の噴出とは異なり、シート状に重液(あるいは軽液)を噴出させるので、生成液滴の大きさ、滴径がより均一になり、微小液滴の生成を抑制でき、例えばフラッディング速度を向上させることができる。
【0077】
以上、第1、第2の実施の形態において説明した接触塔1、1aでは、円筒状の塔内を垂直壁10や水平壁21、31、41からなる隔壁にて分離して複数のセル22、32、42を形成したものを例示したが、本発明に含まれる接触塔は、これらの例のように隣り合うセル22、32、42同士で隔壁を共有するものに限定されない。例えば、立方体形状を備えたセル22、32、42を個別に製作し、隣り合うセル22、32、42の液体通流口52、気体通流口51同士を夫々配管にて接続して段違いになるようにした接触塔も本発明に含まれる。
【実施例】
【0078】
(実験1)
図8(a)、図8(b)に示したものとほぼ同様の構成を備えた気液接触塔1を製作し、気液接触の状態を確認した。
A.実験方法
気液接触塔1の本体には塔径が210mm、高さが1,200mmの塩ビ製で透明な円筒管を用い、ステンレス(SUS304)製の隔壁(垂直壁10、水平壁21、31)を用いてセル22、32、42を形成した。各セル22、32、42の高さは200mmとし、5段に積み上げたセル列が横方向に3列並ぶように前記円筒管内を分離した。各セル22、32、42の側面は、図3(b)に示したものとほぼ同様の構成であり、液体通流口52のスリットの上下方向の高さを3mmとし、気体通流口51のスリットではこれを10mmとした。
【0079】
上述の気液接触塔1に液体供給部11より水を供給し、気体供給部13より空気を供給しこれらを向流接触させた。
(実施例1)空気を空塔速度0.5m/sで供給し、水の空塔速度を0.5、1.0、1.5cm/sと変化させた。
(実施例2)空気の空塔速度を1.0m/sとし、実施例1と同様の条件で水の空塔速度を変化させた。
(実施例3)空気の空塔速度を1.5m/sとし、実施例1と同様の条件で水の空塔速度を変化させた。
(実施例4)空気の空塔速度を1.0m/sとし、水の代わりに発泡性の水溶液である低濃度(0.5wt%)エタノール水溶液を供給し、空塔速度を0.5、1.0、1.5cm/sと変化させた。
(実施例5)空気の空塔速度を1.0m/sとし、水の代わりに発泡性の水溶液として界面活性剤TRITON X−100の微量を水に混入(5mg/L)し、これを0.5、1.0、1.5cm/sと変化させた。
【0080】
B.実験結果
目視による気液状態の観察結果によると、(実施例1)〜(実施例3)のいずれの条件においても、各セル22、32内にて水は液滴となって分散すると共に、その後、気相から分離され滞留部53に液溜まりが形成されることを確認できた。また(実施例4)及び(実施例5)では発泡が全くないことを確認した。低濃度エタノール水溶液や微量界面活性剤含有水溶液に気体を分散させると、液体の上層部に気泡層が生成するため、棚段塔での気液接触ではフォーミングが発生し、処理能力が低下する問題が生ずる。しかし、本例のように気体中に液滴を分散させると、発泡が回避でき、気泡層が生成しないため、フォーミングによる処理能力低下を防ぐ効果が得られる。
【0081】
(実験2)
図9に示したものと同様に、垂直壁10及び水平壁21、31に液体通流口52を設け、垂直壁10側の液体通流口52の直ぐ下方位置に気体通流口51を設け、列数が2のセル22、32を製作し(図23)、既設の蒸留塔に組み込んで、蒸留試験、放散試験を行った。
A.実験方法
蒸留塔は塔内径198mm、高さ3,300mmで、これに2列7段(合計14段)のセル22、32を設置した。各セル22、32の高さは400mm、気体通流口51は20mm幅、液体通流口52は水平壁に3mm幅スリットが2列、垂直壁に3mm幅スリットが3列とした。また当該蒸留塔は、塔底部にリボイラー62を備え、塔頂部にコンデンサー61を備えている。
【0082】
最初にエチルベンゼン−クロロベンゼン混合液を用い、全還流条件下で、蒸留試験を行った。
つぎに、原料であるエチルベンゼンとクロロベンゼンの混合物を蒸留塔の塔頂に供給して、原料供給量ならびにリボイラー62の温度を変え、還流なしで放散試験を行った。いずれの実験においても、塔頂からの蒸気をコンデンサー61に導き、圧力を大気圧に保った。
(実施例6)
エチルベンゼン−クロロベンゼン混合液(エチルベンゼン重量分率0.50、クロロベンゼン重量分率0.50)を蒸留塔の塔底に仕込んだ後、この一部をリボイラー62に送り、リボイラー出口液を塔底に戻しながら、塔底液を所定温度まで上昇させた。塔頂から流出する蒸気はコンデンサー61に導き、冷却液化させた後、留出液全量を塔頂に還流する。コンデンサー61の圧力を大気圧に保ち、リボイラー出口、塔底、塔頂の各液温度、還流流量が一定になってから、塔頂液、塔底液をサンプリングし、ガスクロマトグラムで分析した。定常状態に達したときの塔頂液、塔底液の測定結果を表1に示す。
(実施例7)
エチルベンゼン−クロロベンゼン混合液(エチルベンゼンモル分率0.379、クロロベンゼンモル分率0.621)を放散塔の塔頂に連続的に供給し、塔頂から留出液全量、塔底から缶出液を抜き出した。定常状態に達した後、塔頂液、塔底液をサンプリングし、ガスクロマトグラムで分析した。測定結果を表2に示す。
(実施例8)
放散塔への原料(エチルベンゼンモル分率0.426、クロロベンゼンモル分率0.574)供給量を実施例7より約17%増加させ、同じ方法で運転し、データを採取した。測定結果を表2に示す。
(表1)


(表2)


【0083】
B.実験結果
(表1)に示した実験結果によれば、(実施例6)の全還流蒸留試験において、仕込み時の組成と比較して塔頂部にて低沸点のクロロベンゼン(132℃)の濃度が高くなり、塔底部にて高沸点のエチルベンゼン(136.2℃)の濃度が高くなっているので、蒸留塔内にて両成分の分留が行われていることがわかる。リボイラー62の出口温度137.4℃、コンデンサー61からの還流量261kg/hのとき、測定した塔頂、塔底の各組成(モル分率(mol fr.))から計算した理論段数は6.9段であり、総括セル効率は49%であった。
【0084】
また(表2)に示した実験結果によると、(実施例7)、(実施例8)のいずれにおいても混合液のフィード組成に対して塔頂部からの留出液では低沸点のクロロベンゼン濃度が高くなり、塔底部からの缶出液では高沸点のエチルベンゼン濃度が高くなっているので、蒸留塔内では軽質分の放散が行われていることがわかる。
【0085】
(実施例7)の放散試験では、リボイラー62の出口温度を136.4℃に保ち、放散塔への原料供給量を260kg/hに設定すると、留出量253kg/h、缶出量7kg/hとなり、総括セル効率は50%であった。さらに処理量を増した(実施例8)の放散試験では、リボイラー62の出口温度を136.6℃に保ち、放散塔への原料供給量を305kg/hとすると、留出量238kg/h、缶出量67kg/hとなり、総括セル効率は64%となった。処理量を上げ、各セルでの液滞留量を増加させると、接触効率が向上した。
【0086】
(実験3)
以下の比較例ならびに実施例においては、いずれも濃度29wt%の酢酸水溶液(以下、原料という)から、酢酸を酢酸エチル80vol%+シクロヘキサン20vol%の混合溶剤(以下、溶剤という)で抽出する液々抽出操作を行った。
(比較例1)
抽出装置として、図24に示す構造をもつ堰板型液々抽出塔120(特許文献3)を用いた。当該液々抽出塔120は内径が208mmであり、棚段121の液流路123開口面積比(液流路面積/塔断面積)を32%とし、分散相液流路として25mm×20mmの矩形の開口部124を4個有する堰板型棚段121を、棚段間隔100mmで25段配置した。
原料が重液、溶剤が軽液であり、前者を分散相として、溶剤比(溶剤/原料の重量比)を2/1に選び、温度約20℃、大気圧下で液々向流接触させた。
原料供給量 218kg/h、溶剤(酢酸濃度0%)供給量 436kg/hのとき、抽残量は液流量 131kg/hで酢酸濃度 2.3wt%であった。液々平衡計算を行って一理論段数当りの高さ(以下、「HETS」という。)を求めたところ、 0.64mであった。
原料および溶剤の供給量を増加し、原料 335kg/h、溶剤 670kg/hとしたとき、フラッディングが発生した。
【0087】
(実施例9)
抽出装置として、図25に示す構造を備えた本発明の実施の形態に係るセル式抽出装置(液々接触塔1c)を用いて実験を行った。内径208mmの塔内に3列12段のセル22、32、42を設置し、各セル22、32、42の高さを200mm、重液通流口52のスリットを幅5mm、2列とし、軽液通流口51の幅を20mmとした。原料及び溶剤の供給量以外の条件は比較例1と同様にした。
原料供給量 218kg/h、溶剤(酢酸濃度0%)供給量 436kg/hのとき、抽残量は液流量 132kg/hで酢酸濃度 1.5wt%であった。液々平衡計算を行ってHETSを求めたところ、 0.54mであった。
原料供給量 335kg/h、溶剤(酢酸濃度0%)供給量 670kg/hのとき、抽残量は液流量 205kg/hで酢酸濃度 1.2wt%であった。液々平衡計算を行って一理論段数当りの高さ(以下、「HETS」という。)を求めたところ、 0.49mであった。
原料および溶剤の供給量を増加し、原料 450kg/h、溶剤 900kg/hとしたとき、フラッディングが発生した。
比較例1と本発明による処理量、抽出効率をまとめると、表3の通りである。
【0088】
(表3)

(表3)に示した実験結果によれば、液供給量を同じ条件(原料218kg/h、溶剤436kg/h)にした場合において、(比較例1)の堰板型の液々抽出塔120と、(実施例9)のセル型の液々抽出塔1cとの抽出実験の結果を比較すると、(実施例9)の方が(比較例1)よりもHETSの値が約15.6%小さく、抽出効率がよい。また(比較例1)にてフラッディングが発生する液供給量(原料335kg/h、溶剤670kg/h)においても、(実施例9)ではフラッディンを生じずに抽出操作が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】発明の実施の形態に係る気液接触塔の全体の構造を示す縦断面図である。
【図2】前記気液接触塔内を気体及び液体が流れる方向を模式的に示した説明図である。
【図3】前記気液接触塔内部の接触空間の構造を示す説明図である。
【図4】前記接触空間の構造を示す斜視図である。
【図5】前記接触空間の作用を説明するための斜視図である。
【図6】前記接触空間の作用を説明するための縦断面図である。
【図7】前記接触空間に供給される気体や液体の入出口の変形例を示した側面図である。
【図8】前記接触空間の変形例を示した説明図である。
【図9】前記接触空間の第2の変形例を示した説明図である。
【図10】前記接触空間の第3の変形例を示した説明図である。
【図11】前記接触空間の第4の変形例を示した説明図である。
【図12】第1、第2のシャッターを備えたセルの正面図及び縦断面図である。
【図13】前記第1、第2のシャッターを備えたセルの作用を示す説明図である。
【図14】前記第1のシャッターの第1の変形例に係わるセルの正面図である。
【図15】前記第1の変形例に係わるセルの縦断面図である。
【図16】前記第1の変形例に係わるセルの作用を示す説明図である。
【図17】前記第1のシャッターの第2、第3の変形例に係わるセルの縦断面図である。
【図18】前記第2、第3の変形例に係わるセルの作用を示す説明図である。
【図19】前記気液接触塔内部の蒸留塔への適用例を示す縦断面図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係る液々接触塔の作用を説明するための縦断面図である。
【図21】上記第2の実施の形態に係わる液々接触塔を適用した抽出塔の構成例を示す縦断面図である。
【図22】上記第2の実施の形態の変形例を示す縦断面図である。
【図23】実施例中の実験に使用した蒸留塔の構成を示す縦断面図である。
【図24】他の実施例中の比較例実験に使用した液々抽出塔の構成を示す縦断面図である。
【図25】上記他の実施例中の実験に使用した液々抽出塔の構成を示す縦断面図である。
【図26】気液接触塔の従来技術に関する説明図である。
【図27】液々接触塔の従来技術に関する説明図である。
【符号の説明】
【0090】
1 気液接触塔
1a〜1c 液々接触塔
10 垂直壁
11 液体供給部、重液供給部
12 液体抜出部、重液抜出部
13 気体供給部、軽液供給部
14 気体抜出部、軽液抜出部
15 周壁
16 液流
17 気流
18 梁
20 左側領域
21 水平壁
22 セル
30 右側領域
31 水平壁
32 セル
41 水平壁
42 セル
51 気体通流口、軽液通流口
51a 重液通流口
52 液体通流口、重液通流口
52a 軽液通流口
53 滞留部
61 コンデンサー
62 リボイラー
71、72、73、73a、73b
シャッタープレート
711、721
回動軸
712、722
軸受部
731 スライダー
732 ガイド部材
74 突出プレート
75 浮力調整部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塔内の下部から気体である上昇流体を供給すると共に、前記塔内の上部から液体である下降流体を供給して、気体及び液体を向流接触させる接触塔において、
前記上昇流体及び下降流体の向流接触空間を形成するセルを、上昇流体及び下降流体の流路に沿って互いに隣接する上段側のセルと下段側のセルとが段違いになるように多段に設けたことと、
前記上段側のセルと前記下段側のセルとを隔壁により分離したことと、
各段の隔壁において、前記上段側のセルの下部には、当該隔壁に堰き止められて溜まった下降流体が前記下段側のセルに噴出するように下降流体噴出孔が設けられると共に下降流体が溜まる領域よりも上方側には、当該下段側のセルからの上昇流体が当該上段側のセルに流入する上昇流体流入口が設けられていることと、を特徴とする接触塔。
【請求項2】
前記下降流体噴出孔には、下段側のセルを流れる上昇流体が当該下降流体噴出孔を介して上段側のセルへと流れ込むことを防止するために、前記隔壁に堰き止められた下降流体の量に応じて開閉する第1のシャッターが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の接触塔。
【請求項3】
前記第1のシャッターは第1の付勢手段により付勢されて閉じられるように当該下降流体噴出孔の流出側に設けられ、上段側のセルに溜まった下降流体からの圧力により前記第1の付勢手段の付勢に抗して開かれることを特徴とする請求項2に記載の接触塔。
【請求項4】
前記下降流体噴出孔はセルの側面に設けられ、前記第1のシャッターはこの下降流体噴出孔を閉じる下降位置と、当該下降流体噴出孔を開く上昇位置との間で昇降するように構成され、上段側のセルに溜まった下降流体の浮力により下降位置から上昇することを特徴とする請求項2に記載の接触塔。
【請求項5】
前記下降流体噴出孔は更にセルの底面にも設けられ、前記第1のシャッターは前記下降位置において当該底面の下降流体噴出孔を閉じるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の接触塔。
【請求項6】
前記第1のシャッターは、上段側のセル側へ向けて横方向に突出する浮力調整部材を備えていることを特徴とする請求項4に記載の接触塔。
【請求項7】
前記上昇流体流入口には、下段側のセルから上段側のセルへと流入する上昇流体の圧力に応じて当該上昇流体流入口の一部を開閉する第2のシャッターが設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の接触塔。
【請求項8】
前記第2のシャッターは第2の付勢手段により付勢されて閉じられるように前記上昇流体流入口の流出側に設けられ、上昇流体からの圧力により前記第2の付勢手段の付勢に抗して開かれることを特徴とする請求項7に記載の接触塔。
【請求項9】
塔内の下部から液体である上昇流体を供給すると共に、前記塔内の上部から液体である下降流体を供給して、液体同士を向流接触させる接触塔において、
前記上昇流体及び下降流体の向流接触空間を形成するセルを、上昇流体及び下降流体の流路に沿って互いに隣接する上段側のセルと下段側のセルとが段違いになるように多段に設けたことと、
前記上段側のセルと前記下段側のセルとを隔壁により分離したことと、
各段の隔壁において、前記上段側のセルの下部には、当該上段側のセルに溜まった下降流体がその位置エネルギーにより前記下段側のセルに噴出するように下降流体噴出孔が設けられると共に下降流体噴出孔よりも上方側には、当該下段側のセルからの上昇流体がその浮力により当該上段側のセルに流入する上昇流体流入口が設けられていることと、を特徴とする接触塔。
【請求項10】
前記上段側のセルと前記下段側のセルとは、互いに一部が上下に積層された位置関係にあり、
前記下降流体の噴出孔は、前記上段側のセルの下部側面及び底面の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一つに記載の接触塔。
【請求項11】
前記下降流体の噴出孔は、横方向若しくは縦方向に延びるスリット、または横方向若しくは縦方向に多数配列された孔部により構成されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一つに記載の接触塔。
【請求項12】
前記上昇流体の流入口は、横方向若しくは縦方向に延びるスリット、または横方向若しくは縦方向に多数配列された孔部により構成されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか一つに記載の接触塔。
【請求項13】
前記セルの底面は、当該セルに設けられた噴出孔に向けて低くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一つに記載の接触塔。
【請求項14】
塔内の下部から液体である上昇流体を供給すると共に、前記塔内の上部から液体である下降流体を供給して、液体同士を向流接触させる接触塔において、
前記上昇流体及び下降流体の向流接触空間を形成するセルを、上昇流体及び下降流体の流路に沿って互いに隣接する上段側のセルと下段側のセルとが段違いになるように多段に設けたことと、
前記上段側のセルと前記下段側のセルとを隔壁により分離したことと、
各段の隔壁において、前記下段側のセルの上部には、当該下段側のセルに溜まった上昇流体がその浮力により前記上段側のセルに噴出するように上昇流体噴出孔が設けられると共に上昇流体噴出孔よりも下方側には、当該上段側のセルからの下降流体がその位置エネルギーにより当該下段側のセルに流入する下降流体流入口が設けられていることと、を特徴とする接触塔。
【請求項15】
前記上段側のセルと前記下段側のセルとは、互いに一部が上下に積層された位置関係にあり、
前記上昇流体の噴出孔は、それぞれ前記下段側のセルの上部側面及び天井面の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項14に記載の接触塔。
【請求項16】
前記上昇流体の噴出孔は、横方向若しくは縦方向に延びるスリット、または横方向若しくは縦方向に多数配列された孔部により構成されていることを特徴とする請求項14または15に記載の接触塔。
【請求項17】
前記下降流体の流入口は、横方向若しくは縦方向に延びるスリット、または横方向若しくは縦方向に多数配列された孔部により構成されていることを特徴とする請求項14ないし16のいずれか一つに記載の接触塔。
【請求項18】
多数の前記セルを縦1列に配置したセル列が複数列配置され、各セル列に属するセルと、そのセル列に隣接するセル列のセルとが段違いに配置されていることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか一つに記載の接触塔。
【請求項19】
前記各セル列は、一方向に沿って横に並んでいることを特徴とする請求項18に記載の接触塔。
【請求項20】
接触塔は円筒状に形成され、前記各セル列は同心円状に横に並んでいることを特徴とする請求項18に記載の接触塔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−5604(P2010−5604A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180562(P2008−180562)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】