説明

揮散体及び揮散性物質収納容器

【課題】十分な開花状態の表現と揮散効果とを同時に図ることができる揮散体及び揮散性物質収容容器を提供する。
【解決手段】香料と溶剤とを含む溶液を収容する容器と、容器に浸漬される吸液部材と、を備える揮散性物質収納容器に組み付けられ、吸液部材を介して溶液が供給され、溶液を揮散させる揮散体20であって、異なる2つの材質21,22を積層し、これら材質21,22のうちの伸張率の低い材質21の表面に、吸液進行材24を接合させた揮散体20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に入れられた香料と浸透性調整剤とを含む溶液を揮散させる揮散体及び揮散体が組み付けられた揮散性物質収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
揮散体及び揮散性物質収納容器の一例として、紙の片面に非吸液層または吸液層を部分的に設け、非吸液層または吸液層の反対面に非吸液層または吸液層設置部に対応する部分以外の少なくとも一部に非吸液層または吸液層を部分的に設け、揮散液体の吸液揮散時に、非吸液層または吸液層と紙との伸張率の相違、もしくは紙の抄紙方向による伸張率の相違により反り及び/またはねじれの差を生じせしめるようにした揮散体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、揮散体及び揮散性物質収納容器の他の一例として、吸液性材で形成し芳香液体を吸液することによって伸張する伸張層の一面に、芳香液体を吸液しない非吸液性材または吸液によって伸張層とは異なる伸張率を有する材質により形成した付属層を固着して成形本体を形成し、成形本体の一部を複数個に分割することで、変形片を複数個形成した揮散体が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−70428号公報
【特許文献2】特開昭61−8048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された揮散体では、紙の両面に非吸液層を等間隔に設けて、揮散体が揮散液体を吸液したときに生ずる反りを用いて花が開花したように表現している。そのため、開花状態を表現するための材質を選定すると十分な揮散効果を得ることができず、揮散効果を高めようとすると開花状態を表現し難いという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献2に開示された揮散体は、伸張層と付属層とを接着剤で接合し、伸張層の吸液と、付属層の吸液とに伴い、変形片の形状を変化させようとしているものである。そのため、上記特許文献1と同様に、開花状態を表現するための材質を選定すると十分な揮散効果を得ることができず、揮散効果を高めようとすると開花状態を表現し難いという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、十分な開花状態の表現と揮散効果とを同時に図ることができる揮散体及び揮散性物質収納容器を提供すること、また、十分な開花状態を図ることにより、装飾性に優れた揮散性物質収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は下記に示す(1)〜(6)を特徴としている。
(1) 香料と浸透性調整剤とを含む溶液を収容する容器と、前記容器に浸漬される吸液部材と、を備える揮散性物質収納容器に組み付けられ、前記吸液部材を介して前記溶液が供給されて、当該溶液を揮散させる揮散体であって、
当該溶液が供給されて当該溶液が内部で吸液されることによって伸張する揮散部材を有し、そして
この揮散部材は、異なる2つの材質が積層されると共に、当該材質のうちの伸張率の低い材質の表面に、吸液進行材が接合されて形成されることを特徴としている。
【0009】
上記構成の揮散体によれば、揮散部材は、異なる2つの材質が積層されると共に、当該材質のうちの伸張率の低い材質の表面に、吸液進行材が接合されて形成されるので、十分な開花状態の表現と揮散効果とを同時に図ることができる。
【0010】
(2) また、本発明に係る揮散体は、上記(1)に記載した揮散体において、
前記2つ、伸縮性の異なる材質は、一方がクラフト紙であり、他方がポリエチレン部材であり、且つ 前記吸液進行材が、不織布であることを特徴としている。
【0011】
上記構成の揮散体によれば、伸張率の高いクラフト紙と、伸張率の低いポリエチレン部材と、揮散効果を補うための吸液性のある不織布と、によって、十分な開花状態の表現と揮散効果とをより一層図ることができる。
【0012】
(3) また、本発明に係る揮散性物質収納容器は、
香料と浸透性調整剤とを含む溶液を収容する容器と、前記容器に浸漬される吸液部材と、を備える揮散性物質収納容器であって、
上記(1)又は(2)に記載の揮散体が1又は複数個組み付けられ、且つ 前記浸透性調整剤が、3−メチル−3−メトキシブタノールであることを特徴としている。
【0013】
上記構成の揮散性物質収納容器によれば、浸透性調整剤が3−メチル−3−メトキシブタノールであるので、十分な揮散効果を一層発揮することができる。
【0014】
(4) また、本発明に係る揮散性物質収納容器は、上記(3)に記載した揮散性物質収納容器において、
前記揮散体は、前記揮散部材の吸液方向に略垂直に交差する方向で且つ前記吸液進行材が外側となるように筒形状に巻回され、前記吸液部材に接続されて組み付けられることを特徴としている。
【0015】
上記構成の揮散性物質収納容器によれば、
揮散体が、揮散部材の吸液方向に略垂直に交差する方向に筒形状に巻回されてから吸液部材に接続されることとなるので、溶液の吸液方向を揮散体の長寸方向にして、例えば花弁を模した場合には開花状態の表現を容易にして形成できる。
【0016】
(5) また、本発明に係る揮散性物質収納容器は、上記(3)又は(4)に記載した揮散性物質収納容器において、
前記揮散体それぞれの少なくとも一部が、花のつぼみが開花する状態を表現するように形成されることを特徴としている。
【0017】
上記構成の揮散性物質収納容器によれば、吸液進行材を介して溶液の吸液状態が進行することにより、例えば、伸張率の高いクラフト紙と、伸張率の低いポリエチレン部材と、の伸張率の差により、カールを起こさせて、つぼみの開花状態を表現することができる。
【0018】
(6) また、本発明に係る揮散性物質収納容器は、上記(3)〜(5)のいずれか1項に記載した揮散性物質収納容器において、
前記揮散体が複数組み付けられ、
当該複数の揮散体が、一部で花のつぼみを表現し、他の一部で開花する状態を表現するように形成されることを特徴としている。
【0019】
上記構成の揮散性物質収納容器によれば、吸液前から開花状態を表現する開花部分と、溶液の吸液進行に伴い開花を表現するつぼみ部分と、を備えることで、用事前における表現に変化を付与して、生花を模した外観性を得ることができ、装飾性をより向上させることができ、消費者の購買欲を惹起するだけではなく、揮散性物質収納容器の設置時の美感性を起こさせる効果も奏することとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、十分な開花状態の表現と揮散効果とを同時に図ることができる揮散体及び揮散性物質収納容器を提供することができる。
また、十分な開花状態を図ることにより、装飾性に優れた揮散性物質収納容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る好適な実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1〜図5は本発明に係る揮散体及び揮散性物質収納容器の一実施形態であって、図1は本発明に係る揮散体及び揮散性物質収納容器の一実施形態を示す揮散性物質収納容器の花を模したつぼみ状態を表現する外観斜視図、図2は図1の揮散性物質収納容器の花を模した開花状態を表現する外観斜視図、図3は揮散体の揮散性物質収納容器への組付手順の説明図、図4は本発明の揮散体の断面図、図5は図1の揮散性物質収納容器の変形例の外観斜視図である。
【0023】
図1に示されるように、本発明に係る一実施形態である揮散性物質収納容器10は、収納容器本体11と、後述する揮散体を有する花成形本体12と、を備えて構成される。
【0024】
収納容器本体11は、樹脂のブロー成形によって薄肉状で中空の壷形状に形成されていて上方が開放されており、開放部分にキャップ13がねじ込まれる等することで開放部分が閉塞される。そして、キャップ13の中央部に、長尺の円柱状に形成された吸液部材14が1又は複数嵌挿されている。吸液部材14は、下方の端部が溶液15に浸漬されて収納容器本体11の内部底面に接近又は接触した状態で配され、上方の端部が開口部から収納容器本体11の外部に露呈した状態で配される。収納容器本体11としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ガラス、陶器などを適宜用いることができる。
【0025】
また、溶液15は、香料及び色素並びに溶剤を含む。溶液15は、溶媒(浸透性調整剤)として、3−メチル−3−メトキシブタレール、プロピレングリコール、エタノール等を使用することができるが、好ましくは、3−メチル−3−メトキシブタレール(商品名:ソルフィット、株式会社クラレ社製)を溶液全体の15〜25重量%配合したものが良い。なお、ソルフィット以外の浸透性調整剤としては、ハッカ油、鉱物油、そして、アセトン、エタノール、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、プロパノール、グリセリン、プロピレングコール、ポリエチレングリコール、D−ソフビトール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ベンジルアルコールなどの有機極性溶剤なども適宜採用することができる。
また、香料としては、合成(フローラル)香料を用いた(油性香料を用いてもよい。)。また、色素は水溶性色素の赤色102号(0.001重量%)を用いると好適である。溶液15に、これら香料と色素を溶媒である脱イオン水に溶解させ、2.5重量%の活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(非イオンエーテル型)とスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(アニオン)との混合物(例えば、商品名:マーポンSG200、松本油脂製薬株式会社製))を加えている。ここで、活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(例えば、アクチノールHC−40AやアクチノールHC−60A 松本油脂製薬株式会社製)を用いてもよい。溶液15の揮散成分としては、例えば、芳香剤、消臭剤、忌避剤、医薬品、化粧品、或いは殺虫剤、殺菌剤、殺ダニ剤等の薬剤(薬液)が使用される。また、溶液15に用いる溶媒としては、水性、油性のいずれでもよく、例えば、脱イオン水、アイソパーH(エクソンモービル、第4類第2石油類、一号灯油)、エタノールと水との混媒である。そして、溶液15に用いることができる香料としては、水性、油性のいずれでもよく、上記以外に、例えば、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、イグサ、ヒノキ、シトロネラ、シトラール、シトロネラール、レモン、レモングラス、オレンジ、ユーカリ、ラベンダー等の精油成分及びそれから得られる芳香成分を有するものを挙げることができる。
【0026】
吸液部材14は、材質がポリプロピレン・ポリエチレン複合繊維で、芯径を例えばφ2〜10mmとし、長さを5〜20cmとし、気孔率を50〜80%としている。吸液部材14は、揮散体12に供給する溶液15の量を調整可能である。吸液部材14の材質としては、無機材料、有機材料のいずれでも用いることができる。好ましくは樹脂であり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンの1種あるいは2種以上を挙げることができ、上記したポリプロピレン・ポリエチレンの複合繊維、ポリエステル、ポリアクリルが良い。
【0027】
図3に示すように、花成形本体12は、花弁を表現する花弁部16と、芯部17と、雄しべや雌しべを表現するしべ部18と、がくや花托を表現するがく部19と、を備えて構成されている。
【0028】
花弁部16は、複数の層を有する揮散体20により溶液15吸液の際、花のつぼみが開花する状態を表現するように花形状に形作られる。即ち、揮散体20は、組み付けられる前には、図3(左中央)に示すように、花形状に形作られるため、略四角形状とされ、一端部が接続されたままとなるように切込みが施され、この切込みが施されて先端となる上端部が花弁一枚一枚を表現するように円弧形状に形成されることとなる。
【0029】
この揮散体20は、溶液15が供給されて内部で溶液15が吸液されることによって伸張する揮散部材を有しており、そして伸張率の異なる2つの材質が接着剤などにより積層されると共にこの材質のうち伸縮率の低い材質に、揮散効果を発揮する吸液進行材が接合されて形成されている。そして、本実施形態では、図4に示すように、その2つの伸縮性を有する材質として、クラフト紙21と、クラフト紙21よりも伸縮率の低いポリエチレン部材22とが接着層23を介して積層されており、また、そのポリエチレン部材22には、吸液進行材として不織布24が接合されている。
なお、これに限らず、他の揮散部剤を適宜利用することができるが、無機材料、有機材料を問わず樹脂が好ましく、また吸液進行材としては不織布に限らず吸液性を有しているものであればよい。また、不織布24の接合方法としては、接着、溶着、縫付けの他、適宜種々のものを用いることができる。さらに、その2つの伸縮性を有する材質として、クラフト紙21及びポリエチレン部材22を採用する場合には、クラフト紙21の目付質量は80〜150g/mが好ましく、ポリエチレン部材22の厚さは15〜20μmが好ましい。
【0030】
そして、このように形成された揮散体16は、伸張率の高いクラフト紙21が内側となると共に、それら揮散部材の溶液15の吸液方向と略垂直方向(図3中のA方向)で筒形状に巻回して形成されて、花弁部16とされる。
【0031】
なお、花弁部16は、キキョウを表現する場合には、花弁の先端となる上端部が円弧形状に形成されて白色に着色され、ガーベラを表現する場合には、上端部がキキョウよりも幅の小さい楕円形状に形成されて桃色に着色され、マーガレットを表現する場合には、上端部が短冊状に形成されて黄色に着色される。このように、花弁部16は、適用される花の種類に応じて、任意形状に形成することができることとなる。
【0032】
芯部17は、吸液性のある、例えば不織布製などで四角形板状に形成されており、花弁部16と同様にして巻回して筒形状に形成されてから、花弁部16の内部に芯状に組み付けられている。
【0033】
おしべ部18は、樹脂を用いて黄色等に着色されて、雄しべや雌しべを模した形状に形成されており、芯部17に上部から突き刺す等して芯部17に組付けられる。
【0034】
がく部19は、樹脂を用いて緑色等に着色されて、花弁部16の下端部寄りの周りを囲むがくと、花弁部16の下端中央部に台座状に配置される花托と、を模した形状に形成されており、芯部17の下部に組み付けられる。
【0035】
このような揮散性物質収納容器10は、キャップ13に有する不図示のバージンシール等が切除されずに、揮散体12のつぼみ状態で製造・販売される。そして、揮散性物質収納容器10は、用事に、上記のバージンシールが切除されることで、吸液部材14を通じて芯部17が溶液15を吸液し、時間の経過に伴い、その後に、芯部17から、花弁部16、即ち揮散体20に溶液15が吸液されて行く。
【0036】
図2に示すように、吸液部材14を通じて芯部17が溶液15を吸液し、その後に、芯部17から揮散体20の先端部まで溶液15が吸液されて行くことで、揮散体12は、花弁部16において、クラフト紙21が多く伸張し、ポリエチレン部材22が多く伸張しないので、つぼみが開花するようにカールする。また、ポリエチレン部材22には、不織布24が接合されているので、これら揮散部材の溶液15の吸液を進行させて揮散性を向上させる。
【0037】
図3に示すように、揮散性物質収納容器10は、揮散体12を先端部まで浸透させることで開花を表現するように形成されている。このとき、開花に伴うカールは、クラフト紙21とポリエチレン部材22との伸張率の差に基づくものであり、カールの方向をクラフト紙21の吸液方向Aに略垂直に直交する方向に設定しているために、クラフト紙21の吸液方向Aに交差する方向が筒方向となるように筒形状に巻回されている。そして、吸液部材14の上端部にしべ部18を、例えばホットメルト等で溶着してから、吸液部材14を芯部17の上部から挿し込み、芯部17を芯にして花弁部16を巻回し、これら花弁部16と芯部17としべ部18と吸液部材14との組付体をがく部19に固定することで、複数の花を束ねたものとして一体的に組み立てられる。
【0038】
上述した揮散性物質収納容器10によれば、積層された伸張率の異なるクラフト紙21及びポリエチレン部材22と、伸張率の低いポリエチレン部材22に接合された不織布24との構成により、カールの度合いを向上させつつも、不織布24が吸液性を有して揮散部材の吸液を進行させて揮散性を向上させることができるので、十分な開花状態の表現と揮散効果とを同時に図ることができる。
【0039】
また、揮散性物質収納容器10によれば、溶剤が3−メチル−3−メトキシブタノールであり、さらに溶液全体の15〜25重量%に設定されることで、好ましい溶剤と溶液内重量とによって、本発明の揮散体20との組み合わせにより相乗効果を有して、十分な揮散効果を一層発揮することができる。
【0040】
また、揮散性物質収納容器10によれば、揮散体12がクラフト紙21の吸液方向Aに略垂直に交差する筒方向を有する筒形状に巻回されて吸液部材14に接続されることで、溶液の吸液方向を円周方向にして開花表現をしやすくすることができる。
【0041】
また、揮散性物質収納容器10によれば、芯部17を介して吸液された溶液15が進行することで、伸張率の高いクラフト紙21と、伸張率の低いポリエチレン部材22と、の伸張率の差により、カールを起こさせて、つぼみの開花を効率よく表現することができる。
【0042】
図5に、本発明に係る上記実施形態の変形例について示す。
図5に示すように、揮散性物質収納容器10の変形例は、キャップ13に有する不図示のバージンシール等が切除されない状態で、花弁部16が、花弁部16の開花状態を表現する開花部31と、溶液の進行に伴い開花を表現するつぼみ部32と、一体に備えている。
【0043】
本変形例の揮散性物質収納容器10によれば、用事前に、開花状態を表現する開花部31と、溶液の進行に伴い開花を表現するつぼみ部32と、を備えることで、用事前における表現に変化を付与して、生花を模した外観性、装飾性を得ることができる。これにより、店頭販売時においては消費者の購買欲を惹起すると共に、揮散性物質収納容器10の設置時においては美感性を起こす効果を奏することとなる。
【0044】
(実施例)
次に、本発明の作用効果を確認するため、本発明の揮散体(20)が組み付けられた揮散性物質収納容器(10)を用いた実施例について説明する。
【0045】
(送液性試験)
香料と、活性剤と、ソルフィット(株式会社クラレ社製)と、プロピレングリコールとを異なる量で配合した溶液を用いて4種類の揮散性物質収納容器を作成し、送液性試験を行った。
実施例1には、香料が3.0%、活性剤が0.7%、ソルフィットが18.0%、プロピレングリコールが2.0%の揮散性物質収納容器10を用意した。
実施例2には、香料が3.0%、活性剤が1.5%、ソルフィットが8.0%、プロピレングリコールが2.0%の揮散性物質収納容器を用意した。
実施例3には、香料が3.0%、活性剤が1.5%、ソルフィットが13.0%、プロピレングリコールが2.0%の揮散性物質収納容器を用意した。
実施例4には、香料が3.0%、活性剤が1.5%、ソルフィットが18.0%、プロピレングリコールが2.0%の揮散性物質収納容器10を用意した。
なお、揮散体(20)として、目付質量が120g/mであるクラフト紙(21)と、厚さ17μmのポリエチレン部材(22)とを接合したものを使用した。
試験例を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1から明らかなように、実施例1及び実施例4では、溶液がほぼ全体に行き渡った。これらに対して、実施例2では、先端まで液が行き渡らず、一方実施例3では、先端まで液が行き渡らない部分があった。これにより、配合割合を変更することにより揮散体の浸透性を調整し得ることがわかった。これにより、用事における花弁部の模様を選択的に造形し得ることがわかる。
【0048】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、組み合わせ、等が可能である。その他、前述した実施形態や変形例における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る揮散体及び揮散性物質収納容器の一実施形態を示す揮散性物質収納容器の花を模したつぼみ状態を表現する外観斜視図である。
【図2】図1の揮散性物質収納容器の花を模した開花状態を表現する外観斜視図である。
【図3】揮散体の揮散性物質収納容器への組付手順の説明図である。
【図4】揮散体の断面図である。
【図5】図1の揮散性物質収納容器の変形例の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 揮散性物質収納容器
11 収納容器本体(容器)
12 花成形本体
14 吸液部材
16 花弁部
17 芯部
20 揮散体
21 クラフト紙(揮散部材)
22 ポリエチレン部材
24 不織布(吸液進行材)
31 開花部(開花)
32 つぼみ部(つぼみ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料と浸透性調整剤とを含む溶液を収容する容器と、前記容器に浸漬される吸液部材と、を備える揮散性物質収納容器に組み付けられ、前記吸液部材を介して前記溶液が供給されて、当該溶液を揮散させる揮散体であって、
当該溶液が供給されて当該溶液が内部で吸液されることによって伸張する揮散部材を有し、そして
この揮散部材は、異なる2つの材質が積層されると共に、当該材質のうちの伸張率の低い材質の表面に、吸液進行材が接合されて形成される
ことを特徴とする揮散体。
【請求項2】
前記2つの、伸縮性の異なる材質は、一方がクラフト紙であり、他方がポリエチレン部材であり、且つ
前記吸液進行材が、不織布である
ことを特徴とする請求項1に記載の揮散体。
【請求項3】
香料と浸透性調整剤とを含む溶液を収容する容器と、前記容器に浸漬される吸液部材と、を備える揮散性物質収納容器であって、
請求項1又は2に記載の揮散体が1又は複数個組み付けられ、且つ
前記浸透性調整剤が、3−メチル−3−メトキシブタノールである
ことを特徴とする揮散性物質収納容器。
【請求項4】
前記揮散体は、
前記揮散部材の吸液方向に略垂直に交差する方向で且つ前記吸液進行材が外側となるように筒形状に巻回され、前記吸液部材に接続されて組み付けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の揮散性物質収納容器。
【請求項5】
前記揮散体それぞれの少なくとも一部が、花のつぼみが開花する状態を表現するように形成される、
請求項3又は4に記載の揮散性物質収納容器。
【請求項6】
前記揮散体が複数組み付けられ、
当該複数の揮散体が、一部で花のつぼみを表現し、他の一部で開花する状態を表現するように形成される、
請求項3〜5のいずれか1つに記載の揮散性物質収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−307102(P2008−307102A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155200(P2007−155200)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】