揺動型肥料散布機の潤滑装置

【課題】トラクタに装着して使用する揺動型肥料散布機において、揺動部のベアリング部への給油回数を少なくでき、尚且つ耐久性のある機構を提供する。
【解決手段】揺動型肥料散布機において、揺動部の入力軸側のフライホイールと散布筒を揺動させる揺動体とをベアリングを介して結合部材で連結し、この回転運動を揺動運動に変換する装置の結合部材のフライホイール側と揺動体側のそれぞれのベアリング部同士が、連通手段により連通されていて、潤滑剤またはグリースを流通して共有できる潤滑装置を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ホッパに収容した肥料を散布筒に供給し、散布筒を水平往復揺動させることにより肥料を投出し散布する揺動型肥料散布機の揺動部の潤滑装置に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
背景技術として、例えば特公昭６０−８３７４号公報の運動変換装置を有した振動肥料散布機や、特開昭５１−１００１２号公報の肥料散布機で公知のように、散布筒を往復揺動させて肥料を散布する肥料散布機の揺動機構は従来から知られている。
【特許文献１】特公昭６０−８３７４号公報
【特許文献２】特開昭５１−１００１２号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
前記従来技術における揺動型肥料散布機の揺動部の各回動部はベアリングで支承されているが、作動中は肥料の粉塵等の雰囲気中に曝されて過酷な使用条件となり、このベアリングには頻繁に潤滑用の潤滑剤やグリースを給油する必要があり、怠ると急激に寿命が低下したり最悪の場合は破損に至る場合がある。このため、本発明の目的は、揺動型肥料散布機の揺動部の給油回数をできるだけ少なくできて、尚且つ耐久性のある機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００４】
前記課題を解決するために、請求項１記載の発明は、散布する肥料を収容するホッパを有し、このホッパの底部から散布筒基部側に肥料を落下させ、散布筒基部側を中心に散布筒を水平方向に往復揺動させ、落下した肥料を散布筒の他方端から投出して散布する揺動型肥料散布機において、前記散布筒の往復揺動装置は、トラクタからの動力により回転可能な水平方向に回転軸を有する入力軸と、この入力軸に固着したフライホイールと、前記入力軸と直交する垂直方向のヨークシャフトを中心に水平方向に揺動する揺動体と、この揺動体にベアリングを介して枢支され、かつ前記フライホイールに偏心して設けたベアリングを介してフライホイールに支承された結合部材より成る回転運動を揺動運動に変換する装置で構成し、この結合部材のフライホイール側と揺動体側のそれぞれのベアリング部同士が連通手段により連通されていて、潤滑剤またはグリースを流通して共有できる潤滑装置を設けた。
【０００５】
また、前記課題を解決するために、請求項２記載の発明は、前記請求項１記載の揺動型肥料散布機の連通手段は、往復揺動装置の結合部材を中空で成型して、これによりフライホイール側と揺動体側のそれぞれのベアリング部とが連通していて、給油された潤滑剤またはグリースが中空部を通り、それぞれのベアリング部へ流通できるように構成した潤滑装置を設けた。
【０００６】
また、前記課題を解決するために、請求項３記載の発明は、前記請求項１記載の揺動型肥料散布機の連通手段を、往復揺動装置の結合部材のフライホイール側と揺動体側のそれぞれのベアリング部同士を中空管で連結し連通させて設け、潤滑剤またはグリースを共有して流通できるように潤滑給油装置を設けた。
【発明の効果】
【０００７】
以上のような構成にしたことにより、揺動部の結合部材の各ベアリング部は、連通手段により連通されていて、潤滑剤またはグリースを流通して共有しているため、各ベアリングごとに給油する必要がなく、また、連通手段内に潤滑剤やグリースの貯留部を設けることで、潤滑剤やグリースの保有量が増え劣化も少なくでき、潤滑剤の交換やグリースの補給回数を減らすことができる。また、連通手段で潤滑の必要な箇所を連通しておくことで、一ヶ所に給油すると連通されている箇所すべてに一度に給油できるため、給油も簡単で、多数の給油箇所があると見落とし等による給油忘れの可能性もあるが、このようなことによる事故防止にもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００８】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図１は本発明を実施した肥料散布機の一部断面した側面図、図２は本発明を実施した肥料散布機のホッパを外した平面図、図３は揺動部を断面した結合部材が中空の場合の平面図、図４は揺動部を断面した結合部材摺動部を中空管で連結した平面図を示したものである。
【０００９】
図１，図２において、５はフレームで前方部にロアピン５ａとトップブラケット５ｂを設けて、図示されていないがトラクタ三点リンク機構に装着できるようをこ構成してある。
【００１０】
１はホッパで上方より肥料を投入できるように上方を開口し下方を狭くした逆円錐形状に構成し、フレーム５の上部に着脱自在に固定され、ハンドル８を緩めるとホッパを外すことができメンテナンス及び格納に便利である。
【００１１】
ホッパ１内の底部には肥料の落下量を調節するシャッター部２０が設けられて、シャッターレバー９を操作すると、ロッド９ｂで連結されたシャッター板３が回動し、肥料の落下量を調節できる。落下した肥料は散布部２１により散布される。
【００１２】
１０は入力軸で、図示されていないがトラクタＰＴＯ軸とユニバーサルジョイントで連結し、トラクタから回転動力を伝達されるものである。入力軸より伝達された回転動力はフライホイール１１を回転し、ホッパ１の中心部に設けられたヨークシャフト１４を揺動させる。
【００１３】
ヨークシャフト１４は入力軸中心線の延長上に直交して揺動中心線を有し、ヨークシャフト１４に固着されたヨークボス１３と回転中心線をフライホイール１１の回転中心の外周部にオフセットさせ、かつその中心線が入力軸中心線とヨークシャフト中心線の交点を通るように設けた結合部材であるフォークアーム１２でフライホイールと連結連動させ、フォークアーム１２のヨークボス側は二又に形成させてヨークボス１３を水平方向で挟み込む様に構成してある。このため、フライホイール１１を回転させると、フォークアーム１２のフライホイール側がフライホイールとともに回転しヨークシャフト側は揺動運動をする。
【００１４】
ヨークシャフト１４が揺動すると、落下した肥料を受けるサブホッパー１５と散布筒６及びアジテータ１６がヨークシャフト１４に固着されて揺動し、散布筒６の先端部の散布皿７部分より肥料を投出し散布する。
【００１５】
ホッパ１の底部には肥料を掻き出すアジテータ１６が設けられ、その下方に落下口を設けた固定板２がフレーム５に固定されて取り付けられている。さらにこれに密着し落下口を設けたシャッター板３がヨークシャフトと同軸で回動するように、固定板２の背面に回動中心部を形成するブッシュ４により支持されている。シャッター板３を回動させ、固定板落下口２ａとシャッター落下口３ａを重合させ重合度合により肥料の落下量を調節する。
【００１６】
図３は、揺動部を断面した平面図で、回転するフライホイール１１と揺動するヨークボス１３との結合部材であるフォークアーム１２は、中空で成型されていて、フライホイール１１側のベアリング１１ａ部とヨークボス１３側のベアリング１２ｅ，１２ｅ部とは、中空部分の連通孔１２ａにより連通されていて、フォークアーム１２のヨークボス１３側である一方側に設けた給油栓１２ｄより給油された潤滑剤は、連通孔１２ａによりヨークボス１３側の他方側ベアリング１２ｅ部とフライホイール１１側のベアリング１１ａ部とに行きわたる。
【００１７】
また、ヨークボス１３側の一方側には、チューブ継手１２ｆが取り付けてあり、これに一方端を連結した中空管のチューブ１２ｇによりフォークアーム１２より上方のフレーム５に取り付けられたエアブリーザ１２ｃに他方端を連結し、連通孔１２ａ内を大気に連通して、内外の気圧差が起こらないように構成してある。
【００１８】
さらに、フォークアーム１２の中空部を広くして、潤滑剤が貯留できるようにした貯留部１２ｂを設けることにより、潤滑剤の絶対量が増え劣化も少なくでき潤滑剤の補給や交換回数を減らすことができる。
【００１９】
図４は揺動部を断面した平面図で、結合部材であるフォークアーム１２の各ベアリング部同士を中空管で連結し連通させた一例を示したもので、フォークアーム１２のヨークボス１３側の一方に設けたグリースニップル２２ｅより給油されたグリースは、この部分のベアリング１２ｅ部を充満させると、外側を覆っているカバーに取り付けられたＬ型継手２２ａから、これに連結された中空管２２ｃを通ってＴ型継手２２ｂに達し、この部分からフォークアーム１２のヨークボス１３側のもう一方側へ中空管２２ｃを通って分配供給され、フライホイール１１側のベアリング部へは連通孔２２ｄにより分配され供給される。このように構成することで、一ヶ所に給油することで複数ヶ所に給油可能となる。本例では、結合部材であるフォークアーム１２のベアリング部のみ中空管で連結しているが、その他のベアリング部にも中空管を連結することで給油が可能である。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】本発明を実施した肥料散布機の一部断面した側面図
【図２】本発明を実施した肥料散布機のホッパを外した平面図
【図３】揺動部を断面した結合部材が中空の場合の平面図
【図４】揺動部を断面した結合部材摺動部を中空管で連結した平面図
【符号の説明】
【００２１】
１ホッパ
２固定板
２ａ固定板落下口
３シャッター板
３ａシャッター落下口
４ブッシュ
５フレーム
５ａロアピン
５ｂトップブラケット
６散布筒
７散布皿
８固定ハンドル
９シャッターレバー
９ｂロッド
１０入力軸
１１フライホイール
１１ａベアリング
１２フォークアーム
１２ａ連通孔
１２ｂ貯留部
１２ｃエアブリーザ
１２ｄ給油栓
１２ｅベアリング
１２ｆチューブ継手
１２ｇチューブ
１３ヨークボス
１４ヨークシャフト
１５サブホッパー
１６アジテータ
２０シャッター部
２１散布部
２２ａＬ型継手
２２ｂＴ型継手
２２ｃ中空管
２２ｄ連通孔
２２ｅグリースニップル

【特許請求の範囲】
【請求項１】
散布する肥料を収容するホッパを有し、このホッパの底部から散布筒基部側に肥料を落下させ、散布筒基部側を中心に散布筒を水平方向に往復揺動させ、落下した肥料を散布筒の他方端から投出して散布する揺動型肥料散布機において、前記散布筒の往復揺動装置は、トラクタからの動力により回転可能な水平方向に回転軸を有する入力軸と、この入力軸に固着したフライホイールと、前記入力軸と直交する垂直方向のヨークシャフトを中心に水平方向に揺動する揺動体と、この揺動体にベアリングを介して枢支され、かつ前記フライホイールに偏心して設けたベアリングを介してフライホイールに支承された結合部材より成る回転運動を揺動運動に変換する装置で構成し、この結合部材のフライホイール側と揺動体側のそれぞれのベアリング部同士が連通手段により連通されていて、潤滑剤またはグリースを流通して共有できる潤滑装置を設けたことを特徴とするトラクタに装着して使用する揺動型肥料散布機。
【請求項２】
前記請求項１記載の揺動型肥料散布機の連通手段は、往復揺動装置の結合部材を中空で成型して、これによりフライホイール側と揺動体側のそれぞれのベアリング部とが連通していて、給油された潤滑剤またはグリースが中空部を通り、それぞれのベアリング部へ流通できるように構成した潤滑装置を設けたことを特徴とする請求項１記載のトラクタに装着して使用する揺動型肥料散布機。
【請求項３】
前記請求項１記載の揺動型肥料散布機の連通手段は、往復揺動装置の結合部材の、フライホイール側と揺動体側のそれぞれのベアリング部同士を中空管で連結して連通させ、潤滑剤またはグリースを共有して流通できるように潤滑給油装置を設けたことを特徴とする請求項１記載のトラクタに装着して使用する揺動型肥料散布機。

【図１】