説明

揺動部に使用する接続構造と、前記接続構造を使用した座椅子

【課題】強度の大きい接続構造を提供することによって、フレームの径を小さくしたとしても、従来の座椅子と同等の丈夫さを有する座椅子を提供することを課題とする。
【解決手段】折りたたみ式座椅子フレーム(1)の揺動部(4)に使用する接続構造であって、一方のフレームの端部を平面状の舌片(20)とし、もう一方のフレームの端部を平面状の舌片(30)とすると共に、ストッパー(40)によって双方の舌片(20、30)の平面が揺動方向と平行に接続されたことを特徴とする接続構造。及びこの接続方法を用いた座椅子

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、折りたたみ式座椅子フレームの揺動部に使用する接続構造とそれを用いた座椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、座部、背もたれ部からなる座椅子が愛用されている。高級な座椅子においては肘掛部が設けられたものもある。
【0003】
この座椅子は、フレームより枠体が形成され、必要に応じてクッション性が付与されており、畳の部屋などでテレビを見たりする際に腰が楽であり、ゆっくりとくつろぐことができる。(例えば特許文献1)
そして、座椅子の収納性を向上させる為に、座部と背もたれ部に揺動部を設け、折り畳めるものが開発されている。肘掛も同様に揺動可能とし、折り畳める座椅子が開発されている。現代の狭い住宅事情では、収納性をさらに向上させる必要がある。そして、収納性を向上させるにはフレームの径を小さくし、薄型の折り畳み座椅子が考えられている。
【0004】
しかしながら、従来の折り畳み可能な座椅子の座部と背もたれ部の接続構造は、接続強度がフレームの径に依存していた。
【0005】
例えば、図5に示すような関節部材7の一端を座部フレーム2背もたれ部フレーム3内部に挿入し、固定箇所に溶接を行い、接続させるものが挙げられる。このような接続構造は溶接箇所8に負荷がかかる為、フレームの径を小さくすると、必要十分な溶接面積を確保できず、溶接箇所8に亀裂が入り、座椅子が壊れてしまうという問題があった。
【0006】
また、溶接を用いず、関節部材7の一端を座部フレーム2背もたれ部フレーム3内部に挿入し、挿入部をかしめ加工によって固定する方法も挙げられる。この方法では、フレーム径の小さい座椅子を作成した場合、関節部材7の強度を向上させるとフレーム(座部フレーム2と背もたれ部フレーム3)の強度が下がり、フレーム(座部フレーム2と背もたれ部フレーム3)の強度を向上させると、関節部材7の強度が下がり、双方が強度を有する座椅子の作成は困難であった。なぜならば、フレーム径を小さくすると、関節部材7の肉厚9を厚くすることが困難であり、体重に耐えられる強度を確保することができなかった。
【特許文献1】特開2004−008476
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、強度の大きい接続構造を提供することによって、フレームの径を小さくしたとしても、従来の座椅子と同等の丈夫さを有する座椅子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1記載の発明)
この発明の接続構造は、折りたたみ式座椅子フレーム(1)の揺動部(4)に使用する接続構造であって、一方のフレームの端部を平面状の舌片(20)とし、もう一方のフレームの端部を平面状の舌片(30)とすると共に、ストッパー(40)によって双方の舌片(20、30)の平面が揺動方向と平行に接続されたことを特徴とする。
【0009】
(請求項2記載の発明)
この発明の接続構造は、請求項1記載の発明に関し、フレームの内部にインナーフレームを設けたことを特徴とする。
【0010】
(請求項3記載の発明)
この発明の座椅子は、請求項1又は2記載の接続構造を、背もたれ部フレームと座面フレームとの接続に使用し、揺動部としたことを特徴とする。
【0011】
(請求項4記載の発明)
この発明の座椅子は、請求項1又は2記載の接続構造を、肘掛フレームの接続に使用し、肘掛揺動部としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この接続構造は、強度の大きいものであり頑丈な座椅子とすることができる。接続構造によって頑丈なものとなった座椅子は、フレームの径を小さくしたとしても、従来の座椅子と同等の丈夫さを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態例について、実施例として示す各図を参照して詳細に説明する
【実施例1】
【0014】
図1は本願発明の折りたたみ式座椅子フレームの使用状態での全体斜視図である。図2は本願発明の折りたたみ式座椅子フレームの折りたたみ状態での断面図である。図3は折りたたみ式座椅子フレームの揺動部の拡大斜視図である。図4は折りたたみ式座椅子フレームの揺動部の断面図である。図5は従来の折りたたみ式座椅子フレームの揺動部の拡大斜視図である。
【0015】
(1−1:折りたたみ式座椅子フレーム1の基本的構成について)
折りたたみ式座椅子フレーム1は、図1に示すように、転倒防止フレーム10と、座部フレーム2と、背もたれ部フレーム3と、座部2と背もたれ部3を揺動可能とする揺動部4からなる。
【0016】
このような構成によって、折りたたみ式座椅子フレーム1を用いた座椅子は折り畳み可能ものとなる。折り畳んだ座椅子は、図2に示すようにL字状ではなくなるため、収納場所に困らないものとなる。
【0017】
座椅子は、この折りたたみ式座椅子フレーム1にポリウレタン等の柔らかい素材を乗せ、座り心地を良くしている。
【0018】
(1−2:折りたたみ式座椅子フレーム1の好ましい態様について)
図2に示すように、揺動部4付近の座部フレーム2内部及び背もたれ部フレーム3内部には、座部インナーフレーム21、背もたれ部インナーフレーム31を設けるのが好ましい。
【0019】
揺動部4の位置は、座面フレーム2及び転倒防止フレーム10近傍(床から鉛直上方に約60mm)が好ましい。このような位置に揺動部4を設けると、薄手のポリウレタン等の柔らかい素材を座椅子フレーム1に設けたとしても図2に示す如く、背もたれ部フレーム3を水平に折りたたむことが出来、折りたたみ時の収納が容易なものとなる。
【0020】
(2−1:揺動部4の接続構造について)
揺動部4の接続構造は、図3に示すように、座部舌片20と背もたれ部舌片30との間にワッシャ41を介在させ、ストッパー40を被せ、軸42によって貫通する態様で固定されている。
【0021】
座部舌片20は、座部フレーム2の端部を左右からプレス成形し、平面状にし、軸42の挿通孔を形成したものである。前記プレス成形は、座部舌片20の平面が背もたれ部フレーム3の揺動方向と平行になるように成形されている。
【0022】
背もたれ部舌片30も同様に、背もたれ部フレーム3の端部を左右からプレス成形し、平面状にし、軸42の挿通孔を形成したものである。前記プレス成形は、背もたれ部舌片30の平面が背もたれ部フレーム3の揺動方向と平行になるように成形されている。
【0023】
ストッパー40は断面略コの字状であり、軸42を挿通させることによって、座部フレーム2と背もたれ部フレーム3が定められた位置以上に動かないようにしている。
【0024】
軸42は、ストッパー40側面、背もたれ部舌片30、ワッシャ41、座部舌片20、ストッパー40側面の順で挿通している。軸42の両端は径が拡がるように加工され、抜け止め状態となっている。軸42の抜け止め状態は、端部を潰す加工を行っても良いし、ボルト・ナットを用いても良い。
【0025】
(2−2:揺動部4の好ましい態様について)
図4に示すように、座部舌片20と背もたれ部舌片30の双方に、舌片凸部43を成形し、ワッシャ41を介在させない揺動部4とすることもできる。舌片凸部43は、座部舌片20と背もたれ部舌片30が向かい合う方向に成形されており、成形方法はプレス成形等が挙げられる。プレス成形は、前述した座部舌片20及び背もたれ部舌片30の平面成形のプレス成形と同時に行うことができる。
【0026】
ワッシャ41を介在させない揺動部4であると、部品点数が少なくすることが可能となり、座部フレーム2と背もたれ部フレーム3を組み立てる作業を簡単なものとすることができる。
【0027】
また、舌片凸部43を成形すると、ストッパー40内に空間が形成され、座部舌片20と背もたれ部舌片30の双方が弾性を有する(撓むことができる)態様となり、軸24の固定を強固に行った(例えばボルト・ナットを大きいトルクで締めた)としても、座部フレーム2と背もたれ部フレーム3が揺動可能なものとなる。
【0028】
(2−3:プレス方向と揺動方向による強度向上について)
2−1で述べた通り、この折りたたみ式座椅子フレーム1は、座部舌片30と背もたれ部舌片40の、双方の舌片の平面がストッパー40によって平行に接続されており、前記平行接続が揺動方向となるものである。
【0029】
したがって、座部フレーム2と背もたれ部フレーム3の、揺動方向への断面係数が向上し、背もたれへの荷重が大きいものとなったとしても、揺動部4が破損しないものとなる。
【0030】
(2−4:従来技術との比較)
従来の折りたたみ式座椅子フレームは図5に示すように、関節部材7の一端を座面フレーム2に挿入し、もう一端を背もたれ部フレーム3に挿入し、固定箇所に溶接を行い、接続させているものであった。このような接続構造は溶接箇所8に負荷がかかる為、フレームの径を小さくすると、溶接箇所8に亀裂が入り、座椅子が壊れてしまうという問題があった。
【0031】
(3−1:本願発明が有する効果について)
本願発明においては、揺動部3付近に溶接箇所を必要とせず、一体的に形成された揺動部3となる。このことから、溶接箇所の面積を確保する為に太いパイプフレーム(現在、一般的に使用されている座椅子用のパイプフレームはφ19.1mm)を使用する必要はなく、細いパイプフレーム(例えば、φ15.9mm)を使用したとしても、使用に耐える強度を得ることができる。
【0032】
そして、細いパイプフレームを使用すると、座椅子を折り畳んだ時の収納性を向上させることができる。
【0033】
(3−2:インナーフレームによる強度向上について)
この折りたたみ式座椅子フレーム1は、座部舌片20付近に座部インナーフレーム21、背もたれ部舌片30付近に背もたれ部インナーフレーム31を設けることができる。
【0034】
舌片(座部舌片20、背もたれ部舌片30)は外側のフレーム(座部フレーム2、背もたれ部フレーム3)とインナーフレーム(座部インナーフレーム21、背もたれ部インナーフレーム31)を同時にプレス成形するのが好ましい。
【0035】
インナーフレーム21、31を設けることによって、さらに揺動部4の強度を向上させ、座椅子を丈夫なものとすることができる。
【0036】
また、座部インナーフレーム21を長いものとし、座面付近にまで挿入することによって、座部フレーム2の曲部22の強度をも向上させることができる。
【0037】
図5に示すような従来の折りたたみ式座椅子フレームでは、関節部材7によって、外側のフレーム(座部フレーム2、背もたれ部フレーム3)の空洞が塞がれている為、インナーフレーム21、31を設けることはできず、強度を向上させることはできない。
【0038】
(3−3:接続構造の肘掛への応用について)
図6は、肘掛フレームを有する折りたたみ式座椅子フレームである。
【0039】
座面フレーム2と背もたれ部フレーム3の揺動部4に用いた接続機構を、肘掛フレーム5に使用することもできる。
【0040】
肘掛フレーム5の接続機構として用いた、肘掛揺動部6においても、前述の揺動部4と同様の効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本願発明の折りたたみ式座椅子フレームの全体斜視図である。
【図2】本願発明の折りたたみ式座椅子フレームの折りたたみ状態での断面図である。
【図3】折りたたみ式座椅子フレームの揺動部の拡大斜視図である。
【図4】折りたたみ式座椅子フレームの揺動部の断面図である。
【図5】従来の折りたたみ式座椅子フレームの揺動部の拡大斜視図である。
【図6】肘掛フレームを有する折りたたみ式座椅子フレームである
【符号の説明】
【0042】
1 折りたたみ式座椅子フレーム
10 転倒防止フレーム
2 座部フレーム
20 座部舌片
21 座部インナーフレーム
22 曲部
3 背もたれ部フレーム
30 背もたれ部舌片
31 背もたれ部インナーフレーム
4 揺動部
40 ストッパー
41 ワッシャ
42 軸
43 舌片凸部
5 肘掛
6 肘掛揺動部
7 関節部材
8 溶接箇所



【特許請求の範囲】
【請求項1】
折りたたみ式座椅子フレーム(1)の揺動部(4)に使用する接続構造であって、一方のフレームの端部を平面状の舌片(20)とし、もう一方のフレームの端部を平面状の舌片(30)とすると共に、ストッパー(40)によって双方の舌片(20、30)の平面が揺動方向と平行に接続されたことを特徴とする接続構造。
【請求項2】
フレームの内部にインナーフレーム(21、31)を設けたことを特徴とする請求項1記載の接続構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の接続構造を、座面フレーム(2)と背もたれ部フレーム(3)との接続に使用し、揺動部(4)としたことを特徴とする座椅子。
【請求項4】
請求項1又は2記載の接続構造を、肘掛フレーム(5)の接続に使用し、肘掛揺動部(6)としたことを特徴とする座椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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