説明

携帯式作業機

【課題】操作管を左右に振回して行なう作業をより軽快に行なうことができるようにする。
【解決手段】操作管400と、この操作管400の先端に支持させた回転作業体と、この操作管400の基端に可撓管500を介して連結され、かつ背負い枠に支持された動力源と、上記可撓管500ないし操作管400の内部に通挿され、上記動力源の回転出力を上記回転作業体に伝達する伝動軸300とを備えた携帯式作業機において、上記操作管400と上記可撓管500との間には、上記操作管400の軸線と直交するとともに略垂直状に延び、かつ上記操作管400に対して固定状の軸線を中心として屈曲可能な第1の関節部材600が介装されおり、かつ、上記伝動軸300は、少なくとも上記可撓管500に通挿される部分が可撓部とされているとともに、この可撓部が上記第1の関節部材600を貫通させられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地表に生育する雑草等の草木をその根元付近から刈払う作業に用いる携帯式動力刈払機等、小型エンジン等の動力源の回転出力を利用して作業を行なう携帯式作業機に関し、特に、背負い枠に搭載したエンジンからの回転出力を利用して作業を行うように構成したものに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の発明者はすでに、この種の携帯式作業機を提案している(特許文献1の図9〜図12)。この従来の携帯式作業機は、操作管の先端に支持した回転作業体を、エンジンと操作管との間をつなぐ可撓管ないし上記操作管に通挿された伝動軸を介して回転させる構成となっている。すなわち、エンジンの回転出力は、上記の伝動軸を介して回転作業体に伝達され、この回転作業体を回転させる。伝動軸は、少なくとも可撓管に通挿される区間において、可撓性を備える。上記特許文献1の構成ではとくに、エンジンと可撓管との間、および、可撓管と操作管との間に関節部材を介装し、この関節部材を伝動軸が貫通するようにしており、操作管を左右に振回して作業を行うに際し、操作管に対して可撓管が自由に屈曲するようにして、作業の軽快性を高めている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−147610号公報(図9〜12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、操作管と可撓管との間に介在させる関節部材が、操作管に対して自由に軸転する構成としてあったため、かえって作業の軽快性を阻害することを発見した。
【0005】
すなわち、操作管の後端に対し、可撓管が、その自重で垂れ下がったまま操作管の振回操作に伴って揺動するため、第1に、操作管に対する可撓管の屈曲度が所定以上となり、伝動軸が関節部材に接触して回転し、これにともなってエンジンの回転出力が無駄に消費されるとともに、関節部材ないし可撓管が熱を帯びることになっていた。このことは、エンジンの出力低下と作業機の寿命の短縮につながる。また、第2に、可撓管がふらつくため、操作管をスムーズに左右に振回することができず、操作管の振回操作が不安定となっていた。
【0006】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものである。本願発明の目的は、背負い枠に支持したエンジンからの出力を可撓管に通挿された伝動軸を介して操作管の先端に支持した回転作業体に伝達し、これを回転させる携帯式作業機において、より操作の軽快性を高めることができるとともに、伝動軸ないし可撓管の不当な発熱を抑制することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を採用した。
【0008】
すなわち、本願発明によって提供される携帯式作業機は、操作管と、この操作管の先端に支持させた回転作業体と、この操作管の基端に可撓管を介して連結され、かつ背負い枠に支持された動力源と、上記可撓管ないし操作管の内部に通挿され、上記動力源の回転出力を上記回転作業体に伝達する伝動軸とを備えた携帯式作業機において、上記操作管と上記可撓管との間には、略垂直状に延び、かつ上記操作管に対して固定状の軸を中心として屈曲可能な第1の関節部材が介装されおり、かつ、上記伝動軸は、少なくとも上記可撓管に通挿される部分が可撓部とされているとともに、この可撓部が上記第1の関節部材を貫通させられていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、操作管と可撓管は、略水平面内において相互屈曲回動可能となる。すなわち、操作管の後端につづく可撓管が自重によって垂れ下がることがなく、しかも、操作管の左右振回操作に応じて、可撓管と操作管との連結部分が水平面内において柔軟に屈曲する。そのため、操作管の左右振回操作の軽快さが維持されつつ、操作管に対する可撓管の不当な程度までの屈曲が防止され、第1の関節部材に対する伝動軸の長時間接触による出力低下や発熱が防止される。
【0010】
好ましい実施の形態では、上記第1の関節部材は、上記操作管側に位置する第1部材と、上記可撓管側に位置する第2部材とを有しており、上記第1部材は上記操作管に固定状に連結されているとともに、上記第2部材は、上記第1部材に対して上記固定状の軸を中心として回動可能に連結されている。
【0011】
好ましい実施の形態ではまた、上記第1の関節部材の上記第1部材は、上記操作管に連結される筒部と、この筒部から二股ホーク状に延びる一対の対向壁とを有する一方、上記第1の関節部材の上記第2部材は、上記可撓管に連結される筒部と、この筒部から二股ホーク状に延び、上記第1部材の上記一対の対向壁の内側または外側に隣接して位置する一対の対向壁と、内外に隣接する対向壁どうしを相互回動可能に連結して上記第1部材と上記第2部材間を連結し、かつ、上記固定状の軸を構成する連結軸とを備えており、上記伝動軸は、上記一対の対向壁間を貫通している。
【0012】
好ましい実施の形態ではさらに、上記第1の関節部材の上記第1部材の上記筒部、および上記第2部材の上記筒部には、相手部材に向かうにつれて拡開し、上記伝動軸を内包するテーパ孔が形成されている。
【0013】
好ましい実施の形態ではまた、上記第1の関節部材は、上記第1部材に対する上記第2部材の上記固定状の軸を中心とした回動範囲を規制する規制手段が設けられており、この規制手段は、上記第1部材に対し、上記第2部材が、上記第1部材の軸線を挟んで片側30〜40°、両側60〜80°の範囲で回動しうるように構成されている。
【0014】
好ましい実施の形態では、上記可撓管と上記動力源との間には、上記動力源の出力軸の軸線と直交し、上記出力軸周りに自由に旋回可能な軸を中心として屈曲可能な第2の関節部材が介装されており、かつ、上記伝動軸の可撓部が上記第2の関節部材を貫通させられている。
【0015】
このような構成によれば、上記した第1の関節部材に加えて可撓管と動力源との間に第2の関節部材が設けられているので、可撓管が動力源の出力軸に対して所定角度屈曲した状態でこの動力源の出力軸を中心として自由揺動しうる。したがって、操作管を左右に振回操作することに伴う可撓管の移動に対する抵抗が少なくなり、操作管のより軽快な振回操作が可能となる。
【0016】
好ましい実施の形態ではまた、上記第2の関節部材は、上記動力源側に位置する第1部材と、上記可撓管側に位置する第2部材とを有しており、上記第1部材は上記動力源に対してその出力軸の軸線周りに軸転可能に連結されているとともに、上記第2部材は、上記第1部材に対して上記第1部材の軸線に直交する軸を中心として回動可能に連結されている。
【0017】
好ましい実施の形態ではさらに、上記第2の関節部材の上記第1部材は、上記動力源に軸転可能に連結される筒部と、この筒部から二股ホーク状に延びる一対の対向壁とを有する一方、上記第2の関節部材の上記第2部材は、上記可撓管に連結される筒部と、この筒部から二股ホーク状に延び、上記第1部材の上記一対の対向壁の内側または外側に隣接して位置する一対の対向壁と、内外に隣接する対向壁どうしを相互回動可能に連結して上記第1の部材と上記第2の部材間を連結し、かつ、上記軸を構成する連結軸とを備えており、上記伝動軸は、上記一対の対向壁間を貫通している。
【0018】
好ましい実施の形態ではまた、上記第2の関節部材の上記第1部材の上記筒部、および上記第2部材の上記筒部には、相手部材に向かうにつれて拡開し、上記伝動軸を内包するテーパ孔が形成されている。
【0019】
好ましい実施のではさらに、上記第2の関節部材は、上記第1部材に対する上記第2部材の上記軸を中心とした回動範囲を規制する規制手段が設けられており、この規制手段は、上記第1部材に対し、上記第2部材が、上記第1部材の軸線を挟んで片側30〜40°、両側60〜80°の範囲で回動しうるように構成されている。
【0020】
本願発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行なう詳細な説明から、明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本願発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1は、本願発明の一実施形態に係る携帯式作業機100の全体構成を示す。この携帯式作業機100は、いわゆる背負い式に構成されており、動力源としてのエンジン200を搭載した背負い枠22と、先端に回転作業体としての回転刃410を支持する所定長さ直線状に延びる操作管400と、この操作管400と上記エンジン200との間に介装された可撓管500を備えて大略構成されている。
【0023】
エンジン200は、小型2サイクルガソリンエンジンが好ましくは用いられ、図に示す実施形態では、このエンジン200は、支持フレーム21に支持された状態で、上記背負い枠22に対し、垂直方向の軸線周りに回転可能となるように支持されているが、エンジンの形式および背負い枠に対する支持の方法はこれに限られず、たとえば、エンジン200を背負い枠22に対して固定状に搭載しても、もちろんよい。
【0024】
図5に詳示するように、エンジン200のクラッチハウジング210には、クラッチドラム220が基端に連結された出力軸221が軸転可能に支持されている。この出力軸221には、可撓性の伝動軸300の基端が嵌合連結されており、出力軸221の回転は、この伝動軸300の軸転として伝えられ、後記するように操作管400の先端に支持された回転刃410を回転させる。
【0025】
操作管400と可撓管500との間には、第1の関節部材600が介装され、また、可撓管500とエンジン200(クラッチハウジング210)との間には、第2の関節部材700が介装されている。伝動軸300は、第2の関節部材700を貫通して可撓管500の内部を延び、第1の関節部材600を貫通して操作管400の内部を延び、操作管400の先端までいたって、ベベルギア機構420の入力軸421に連結されている(図2参照)。操作管400の先端部では、図2に示すように、上記ベベルギア機構420によって方向が転換された回転刃支持軸422に対し、回転刃410が取付けられている。
【0026】
操作管400の内部では、図3に示すように、伝動軸300は、保持管440に通挿された状態で軸転可能に保持されている。また、可撓管500の内部においては、伝動軸300は、可撓管500の内孔510に直接通挿され、軸転可能に保持されている。
【0027】
可撓管500は、たとえばコイル状に巻かれた金属心材を筒状に成形した樹脂あるいは合成ゴム内にインサートされた構成をもち、軸方向の圧力に強く、かつ、所定の抵抗をもって撓曲しうる公知のものを用いることができる。
【0028】
図1に示すように、操作管400にはまた、軸方向の適所において、左右に突出するようにしてグリップハンドル450が設けられており、また、この操作管400の適所には、エンジンの回転数を制御するためのスロットルレバー(図示略)が設けられる。この携帯式作業機100は、背負い枠22が作業者に背負われた状態において、上記グリップハンドル450を把持した作業者が、操作管400を左右に振回操作して、回転する回転刃410を地面に沿って移動させることにより、刈払い作業を行う。
【0029】
さて、この携帯式作業機100においては、操作管400と可撓管500との間に介装された第1の関節部材600、および、可撓管500とエンジン200との間に介装された第2の関節部材700の構成に特徴づけられる。以下、説明する。
【0030】
図3および図4は、第1の関節部材600の一例を示している。この第1の関節部材600は、操作管側の第1部材610と、可撓管側の第2部材620とを有している。
【0031】
第1部材610は、操作管400の基端側に回転不能状態に内嵌される筒部611と、この筒部611から後方に延びる連絡部612と、この連絡部612の後端において、上下に二股ホーク状に延びる一対の対向壁613とを備える。筒部611の内部には、保持管440の後端部が嵌合連結される。連絡部612の内孔612aは、後方に向かうほど水平方向に拡開するテーパ状となっている。上下一対の対向壁613の内面間寸法は、連絡部612の内孔612aの上下寸法より大となっており、連絡部612と上下一対の対向壁613との間には、筒部611の軸線と直交する垂直状の段部614が形成されている。また、一対の対向壁613には、厚み方向に貫通する連結孔613aが設けられているとともに、外周には、円弧部613bが形成されている。
【0032】
第2部材620は、可撓管500の先端に外嵌される筒部621と、この筒部621から先端に延びる連絡部622と、この連絡部622の先端において、上下に二股ホーク状に延びる一対の対向壁623とを備える。連絡部622の内孔622aは、前方に向かうほど水平方向に拡開するテーパ状となっている。上下一対の対向壁623の外面間寸法は、上記第1部材610の一対の対向壁613の内面間寸法に対応させられている。また、上下一対の対向壁623の内面間寸法は、少なくとも、伝動軸300の外径よりもわずかに大に設定されている。さらに、この一対の対向壁623には、厚み方向に貫通するねじ穴623aが設けられている。さらに、この一対の対向壁623の先端部は、上記第1部材610の段部614に当接して第1部材610に対する第2部材620の回動範囲を規制するための規制面623bが、この第2部材620の軸線に対して直交する直線に対して40°以内の角度をもって形成されている。
【0033】
上記第1部材610と第2部材620とは、図3に示すように、第1部材610の対向壁613に設けた連結孔613aに通したねじ630を第2部材620の対向壁623のねじ穴623aにねじ込むことにより、相互に連結される。このとき、伝動軸300は、第1部材610の内孔612a、第2部材620の一対の対向壁623の間、および第2部材620の内孔622aを連通挿しており、このようにして、この第1の関節部材600を貫通させられている。なお、上記ねじ630は、その頭部631の首下部に第1部材610の対向壁613の厚みよりやや長い支軸部632を有していることにより、第2部材620は、第1部材610に対し、上記ねじ630の軸線を中心として回動自由となる。上記したように、第2部材620の対向壁623の先端には、規制面623bが形成されているので、第2部材620は、第1部材610に対し、第1部材610の軸線方向を中心として、片側40°以内、両側80°以内の角度範囲内を回動しうる。上記ねじ630の延びる方向は、この携帯式作業機の使用時、ほぼ垂直方向を向くように設定される。これにより、操作管400に対して可撓管500は、この第1の関節部材600により、ほぼ水平方向に回動可能となり、操作管400に対して可撓管500が自重によって下方に屈曲するという状況は生じなくなる。
【0034】
図5および図6は、第2の関節部材700の一例を示している。この第2の関節部材700は、エンジン側の第1部材710と、可撓管側の第2部材720とを有している。
【0035】
第1部材710は、エンジン200のクラッチハウジング210の筒部225に軸転可能に内嵌される筒部711と、この筒部711から先端側に二股ホーク状に延びる一対の対向壁713とを備える。筒部711の外周には、Oリング溝711aと、環状溝711bとが形成されている。この筒部711は、クラッチハウジング210の筒部225に挿入された状態で、ノックピン226が上記環状溝711bに位置させられることにより、クラッチハウジング210に対する抜けが防止されつつ、クラッチハウジング210に対して軸転可能となり、かつ、Oリング溝711aに装着されたOリング227により、クラッチハウジング210の内外の気密性が確保される。この第1部材710の筒部711の内孔711cは、前方に向かうほど幅方向に拡開するテーパ状となっている。一対の対向壁713の内面間寸法は、筒部711の内孔711cの上下寸法より大となっており、一対の対向壁713の基端部に隣接するようにして、筒部711の軸線と直交する垂直状の段部714が形成されている。また、一対の対向壁713には、厚み方向に貫通する連結孔713aが設けられているとともに、外周には、円弧部713bが形成されている。
【0036】
第2部材720は、可撓管500の基端に外嵌される筒部721と、この筒部721から後方側に延びる連絡部722と、この連絡部722の先端において、上下に二股ホーク状に延びる一対の対向壁723とを備える。連絡部722の内孔722aは、後方に向かうほど幅方向に拡開するテーパ状となっている。上下一対の対向壁723の外面間寸法は、上記第1部材710の一対の対向壁713の内面間寸法に対応させられている。また、上下一対の対向壁723の内面間寸法は、少なくとも、伝動軸300の外径よりもわずかに大に設定されている。さらに、この一対の対向壁723には、厚み方向に貫通するねじ穴723aが設けられている。さらに、この一対の対向壁723の端部は、上記第1部材710に形成された上記段部714に当接して第1部材710に対する第2部材720の回動範囲を規制するための規制面723bが、この第2部材720の軸線に対して直交する直線に対して40°以内の角度をもって形成されている。
【0037】
上記第1部材710と第2部材720とは、図5に示すように、第1部材710の対向壁713に設けた連結孔713aに通したねじ730を第2部材720の対向壁723のねじ穴723aにねじ込むことにより、相互に連結される。このとき、伝動軸300は、第1部材710の内孔711c、第2部材720の一対の対向壁723の間、ないし第2部材720の内孔722aを連通挿しており、このようにして、この第2の関節部材700を貫通させられている。なお、上記ねじ730は、その頭部731の首下部に第1部材710の対向壁713の厚みよりやや長い支軸部732を有していることにより、第2部材720は、第1部材710に対し、上記ねじ730の軸線を中心として回動自由となる。上記したように、第2部材720の対向壁723の先端には、規制面723bが形成されているので、第2部材720は、第1部材710に対し、第1部材710の軸線方向を中心として、片側40°以内、両側80°以内の角度範囲内を回動しうる。これにより、可撓管500は、エンジン200の出力軸221に対し、片側40°以内、両側80度以内で自由に屈曲しうると同時に、この屈曲状態において、エンジン200の出力軸221を中心として、自由旋回しうるようになる。
【0038】
次に、上記構成の携帯式作業機100の作用について説明する。
【0039】
刈払い作業において、作業者は、背負い枠22を背負った状態で、グリップハンドル450を把持しつつ、操作管400を支持し、エンジン200の回転数を上げて操作管400を左右に振回することによって、回転刃410を地面に沿って左右に往復移動させながら前進してゆく。スロットルレバー(図示略)を操作することによってエンジン200の回転数を制御することができ、エンジン200の回転数が所定以上となるとクランクチハウジング210内のクラッチが作動してエンジン200の出力が出力軸221に伝達され、この出力軸221の回転が上記した可撓性の伝動軸300を軸転させて操作管400の先端の回転刃410を回転させる。
【0040】
操作管400は、概ね、作業者の右側を前後方向に延びるように位置するから、可撓管500は、操作管400の後端から、大きく湾曲しながら作業者の背中に位置するエンジン200に至る。操作管400と可撓管500との間の第1の関節部材600は、操作管400と可撓管500とを垂直軸線周りに相互回動させるから、操作管400を左右に振回させる際に、可撓管500の撓み量が大きく変化することなく上記第1の関節部材600が屈曲する。したがって、操作管400の左右の振回操作に無駄な抵抗がなく、その操作に軽快さが増す。また、第1の関節部材600においては、上記したように、操作管400に対する可撓管500の屈曲可能範囲が制限されているから、伝動軸300が必要以上に屈曲させられることがない。したがって、伝動軸300の軸転に無駄な抵抗が生じることがなく、エンジン200の出力低下を抑制することができる。しかも、上記の実施形態では、第1の関節部材600における第1部材610および第2部材620の各連絡部612,622の内孔612a,622aは上記したように水平方向に拡がるテーパ状となっているから、第1の関節部材600の屈曲状態において、軸転する伝動軸300が第1部材610および第2部材620の内孔612a,622aに強く接触することを回避することができる。したがって、伝動軸300が第1の関節部材600に接触することによる摩擦熱の発生や、出力低下を抑制することができる。
【0041】
しかも、操作管400に対して可撓管500が自重によって大きく屈曲するようにして垂れ下がることがないので、作業中、可撓管500が操作管400の基端から垂れ下がった状態でぶらぶら揺れるといったこともなく、このことによっても、操作管400の左右振回操作を軽快に行うことができるようになる。
【0042】
さらには、可撓管500とエンジン200との間の第2の関節部材700は、エンジン200の出力軸221に対して可撓管500を所定の範囲内で屈曲させることができ、しかも、この屈曲状態でエンジン200の出力軸221を中心として旋回することができるので、操作管400の左右振回操作によって、可撓管500に軸方向の往復移動があっても、可撓管500の撓み量を大きく変化させずに上記の往復移動を吸収することができる。このことによっても、可撓管500の撓み量が大きく変化することによるエンジン200の出力低下を抑制することができるし、また、操作管400の左右振回操作の軽快さを維持することができる。しかも、上記の実施形態では、第2の関節部材700における第1部材710および第2部材720の筒部711,連絡部722の内孔711c,722aは上記したようにテーパ状となっているから、第2の関節部材700の屈曲状態において、軸転する伝動軸300が第1部材710および第2部材720の内孔711c,722aに強く接触することを回避することができる。したがって、伝動軸300が第2の関節部材700に接触することによる摩擦熱の発生や、出力低下を抑制することができる。
【0043】
以上の結果、上記構成の携帯式作業機100は、操作管400を左右に振回して行う作業をより軽快に行うことができ、しかも、エンジン200の出力低下や、関節部材における摩擦熱の発生を抑制して、長寿命化を図ることができる。
【0044】
さらには、伝動軸300の各関節部材600,700への必要以上に大きな圧力での接触や、可撓管500の必要以上の撓みを防止してエンジン200の出力低下を抑制することができることは、エンジン200をより小出力の小型のものを採用できることにつながる。このことは、携帯式作業機100のさらなる軽量化に寄与し、操作性の向上につながる。
【0045】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施形態に限定されることはなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本願発明の範囲に含まれる。
【0046】
実施形態では、背負い枠22に搭載されるエンジン200は、その出力軸221が横方向に延びるようにして搭載しているが、出力軸221を上方に向けて搭載してもよい。また、各関節部材600,700の具体的構成についても、実施形態のものに限定されず、種々の変更が可能である。なお、各関節部材600,700は、たとえば、ジャバラ状のカバーによって、内部を覆い隠すのが望ましい。また、実施形態では、伝動軸300はその全長が可撓性を有しているが、少なくとも、第1の関節部材600、可撓管500ないし第2の関節部材700に通挿される部分が可撓部となっておればよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本願発明に係る携帯式作業機の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図1のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0048】
22 背負い枠
100 携帯式作業機
200 エンジン(動力源)
210 クラッチハウジング
221 出力軸
300 伝動軸
400 操作管
410 回転刃
500 可撓管
600 第1の関節部材
610 第1部材(第1の関節部材の)
613 対向壁
620 第2部材(第1の関節部材の)
623 対向壁
700 第2の関節部材
710 第1部材(第2の関節部材の)
713 対向壁
720 第2部材(第2の関節部材の)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作管と、この操作管の先端に支持させた回転作業体と、この操作管の基端に可撓管を介して連結され、かつ背負い枠に支持された動力源と、上記可撓管ないし操作管の内部に通挿され、上記動力源の回転出力を上記回転作業体に伝達する伝動軸とを備えた携帯式作業機において、
上記操作管と上記可撓管との間には、略垂直状に延び、かつ上記操作管に対して固定状の軸を中心として屈曲可能な第1の関節部材が介装されおり、かつ、上記伝動軸は、少なくとも上記可撓管に通挿される部分が可撓部とされているとともに、この可撓部が上記第1の関節部材を貫通させられていることを特徴とする、携帯式作業機。
【請求項2】
上記第1の関節部材は、上記操作管側に位置する第1部材と、上記可撓管側に位置する第2部材とを有しており、上記第1部材は上記操作管に固定状に連結されているとともに、上記第2部材は、上記第1部材に対して上記固定状の軸を中心として回動可能に連結されている、請求項1に記載の携帯式作業機。
【請求項3】
上記第1の関節部材の上記第1部材は、上記操作管に連結される筒部と、この筒部から二股ホーク状に延びる一対の対向壁とを有する一方、上記第1の関節部材の上記第2部材は、上記可撓管に連結される筒部と、この筒部から二股ホーク状に延び、上記第1部材の上記一対の対向壁の内側または外側に隣接して位置する一対の対向壁と、内外に隣接する対向壁どうしを相互回動可能に連結して上記第1部材と上記第2部材間を連結し、かつ、上記固定状の軸を構成する連結軸とを備えており、上記伝動軸は、上記一対の対向壁間を貫通している、請求項2に記載の携帯式作業機。
【請求項4】
上記第1の関節部材の上記第1部材の上記筒部、および上記第2部材の上記筒部には、相手部材に向かうにつれて拡開し、上記伝動軸を内包するテーパ孔が形成されている、請求項3に記載の携帯式作業機。
【請求項5】
上記第1の関節部材は、上記第1部材に対する上記第2部材の上記固定状の軸を中心とした回動範囲を規制する規制手段が設けられており、この規制手段は、上記第1部材に対し、上記第2部材が、上記第1部材の軸線を挟んで片側30〜40°、両側60〜80°の範囲で回動しうるように構成されている、請求項2ないし4のいずれかに記載の携帯式作業機。
【請求項6】
上記可撓管と上記動力源との間には、上記動力源の出力軸の軸線と直交し、上記出力軸周りに自由に旋回可能な軸を中心として屈曲可能な第2の関節部材が介装されており、かつ、上記伝動軸の可撓部が上記第2の関節部材を貫通させられている、請求項1ないし5のいずれかに記載の携帯式作業機。
【請求項7】
上記第2の関節部材は、上記動力源側に位置する第1部材と、上記可撓管側に位置する第2部材とを有しており、上記第1部材は上記動力源に対してその出力軸の軸線周りに軸転可能に連結されているとともに、上記第2部材は、上記第1部材に対して上記第1部材の軸線に直交する軸を中心として回動可能に連結されている、請求項6に記載の携帯式作業機。
【請求項8】
上記第2の関節部材の上記第1部材は、上記動力源に軸転可能に連結される筒部と、この筒部から二股ホーク状に延びる一対の対向壁とを有する一方、上記第2の関節部材の上記第2部材は、上記可撓管に連結される筒部と、この筒部から二股ホーク状に延び、上記第1部材の上記一対の対向壁の内側または外側に隣接して位置する一対の対向壁と、内外に隣接する対向壁どうしを相互回動可能に連結して上記第1の部材と上記第2の部材間を連結し、かつ、上記軸を構成する連結軸とを備えており、上記伝動軸は、上記一対の対向壁間を貫通している、請求項7に記載の携帯式作業機。
【請求項9】
上記第2の関節部材の上記第1部材の上記筒部、および上記第2部材の上記筒部には、相手部材に向かうにつれて拡開し、上記伝動軸を内包するテーパ孔が形成されている、請求項8に記載の携帯式作業機。
【請求項10】
上記第2の関節部材は、上記第1部材に対する上記第2部材の上記軸を中心とした回動範囲を規制する規制手段が設けられており、この規制手段は、上記第1部材に対し、上記第2部材が、上記第1部材の軸線を挟んで片側30〜40°、両側60〜80°の範囲で回動しうるように構成されている、請求項7ないし9のいずれかに記載の携帯式作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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