説明

携帯機器ホルダの着脱式クリップ

【課題】部品点数が少なく、組み立て工程が不要であり、しかも、クリップをベルトに取り付けた状態で携帯機器のベルトに対する向きを容易に変えることができる携帯機器ホルダの着脱式クリップを提供する。
【解決手段】ホルダ本体1の背面1aに係止レール1b,1c、1d、1eを異なる方向に延びるように2対形成し、前記係止レール1b,1c、1d、1eと係合して摺動する1対の摺動部2b、2bが設けられたベースからU字状に抑板が折り返された構造のクリップにコ字状切り欠きを設けて前記ベースからU字状折り返し部に及ぶ弾性変形可能なつまみ2dを形成し、前記ホルダ本体1の背面またはつまみの一方にロック用突起を形成し、前記ホルダ本体の背面またはつまみの他方にロック用凹部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は携帯機器ホルダに係わり、特に、その着脱式クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯機器ホルダのベルトフックの例を図10および図11に示す。図10および図11に示すホルダ本体11の背面11aには1対の係止レール11b、11bが立設されている。また、背面11aに連なるようにレバー11cが上方に延びている。そして、レバー11cにはロック用突起11dが形成されている。
【0003】
ホルダ本体11に着脱されるベルトフック12は樹脂の弾力によりベルトを把持するもので、ホルダ本体11と密接するベースから抑板が折り返されるようにU字形に形成されており、ホルダ本体11のロック用突起11dと係合するロック用凹部が形成されている。このロック用凹部は図10および図11に見えてない。
【0004】
ベルトフック12をホルダ本体11に装着するときのホルダ本体11に対するベルトフック12の移動方向が図10の矢印で示されている。すなわち、ベルトフック12を摺動部12a、12aが係止レール11b、11bと重ならない位置でホルダ本体11に密接させた後上方向に移動させる。
【0005】
その後の上方向の移動により摺動部12a、12aが係止レール11b、11bと係合し、ベルトフック12でロック用突起11dを押してレバー11cを弾性変形させる。レバー11cは一旦弾性変形した後元に戻り、ホルダ本体11のロック用突起11dとベルトフック12のロック用凹部が係合してロック状態となる。
【0006】
ベルトフック12をホルダ本体11から外すときのホルダ本体11に対するベルトフック12の移動方向が図11下側の矢印で示されている。また、そのときレバー11cを弾性変形させる方向が上側の矢印で示されている。
【0007】
ベルトフック12をホルダ本体11から外すときの手順を説明すると、レバー11cを矢印方向に弾性変形させてホルダ本体11のロック用突起11dとベルトフック12のロック用凹部との係合を解除し、ベルトフック12を下側に下げてホルダ本体11から外す。
【0008】
上記図10および図11に示した従来のベルトフックはベルトに装着したときのホルダ本体11をベルトに直角方向に携帯機器を保持する姿勢でのみ使用される。しかしながら、携帯無線機等の携帯機器は使用場所や使用者の姿勢によっては、携帯機器をベルトと直角方向以外の向きに向けて使用する方が便利なことがあり、このような要求を満たすことができなかった。
【0009】
ベルトフック12を外す場合は、ホルダ本体11のレバー11cをホルダ本体11が保持している携帯機器の方向に弾性変形させるので、携帯機器をホルダ本体11が保持したままでホルダ本体11をベルトフック12から外すことができず、ホルダ本体11のベルトフック12への着脱に手間がかっていた。
【0010】
特開平5−243757号公報に開示された携帯用機器および着脱クリップの構造ではクリップ片を一定の姿勢で支持して携帯機器に対して着脱されるベースは携帯機器に対して一定一定の方向に着脱されるので、クリップと平行の方向のみに携帯用機器が保持される。すなわち、携帯機器はベルトに直角方向の姿勢でのみ使用される。
【0011】
さらに、この着脱クリップの構造はベース、クリック片を回動自在に支持するピン、クリック片を付勢するバネ、ベースを携帯機器にロックさせまたロック解除する着脱操作部材等の多数の部品を必要として部品点数が多く、組立て工数も大きくなるという問題があった。また、ベースを携帯機器に対してロック解除する場合は着脱操作部材の対向する両辺を持って平行に引き上げなくてはならずロック解除動作が困難であるという問題もあった。
【0012】
特開昭63−254795号公報に開示されたクリップ着脱装置は、携帯局本体に設けられた台座の溝に正方形のクリップ座を2方向から差し込むことができ、携帯局本体をベルトに対して2方向に保持できる。しかしながらクリップは台座にシャフトで回動自在に連結されており、シャフトやクリップを付勢するばねが必要となり、部品点数が多く、組立て工数も大きくなるという問題があった。また、クリップ座を携帯機器に固定された台座対してロック解除する場合は低い位置にある板バネを押し込まなければならずロック解除動作が困難であるという問題もあった。
【0013】
特許第2878444号公報に開示された携帯用機器の取り付けクリップは、クリップ片を回動自在に支持する台座の裏面に正方形の被ガイド部材が設けられており、この被ガイド部材はページャに設けられた装着用切り欠きに2方向から挿入可能となっている。被ガイド部材が装着された後、装着用切り欠きの開放側は電池カバーで塞がれる。
【0014】
この携帯用機器の取り付けクリップでは、クリップ片が挾持するベルトに対してページャを4方向の向きに取り付けることができる。しかしながら、クリップ片を回動自在に支持するピンやクリップ片を付勢するスプリング等の多数の部品を必要として部品点数が多く、組立て工数も大きくなるという問題があった。
【0015】
また、クリップ片をページャから取外すためには電池カバーをページャから外す必要があり、クリップ片の取外しが面倒であるという問題があった。
【0016】
実用新案登録第3036518号公報に開示された着脱式クリップ装置は、クリップ部材を支持するクリップ板を携帯無線機を保持する革製ケース背面のクリップ受座に3方向から挿脱できる。従って、クリップ片で挾持したベルトに対する携帯無線機の方向を変えることができる。しかしながら、クリップ片を回動自在に支持する軸やクリップ片を付勢するばね等の多数の部品を必要として部品点数が多く、組立て工数も大きくなるという問題があった。
【特許文献1】特開平5−243757号公報
【特許文献2】特開昭63−254795号公報
【特許文献3】特許第2878444号公報
【特許文献4】実用新案登録第3036518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、部品点数が少なく、組み立て工程が不要であり、しかも、携帯機器がホルダ本体に装着されたままの状態で携帯機器のベルトに取付けられる向きを容易に変えることができる携帯機器ホルダの着脱式クリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明の携帯機器ホルダの着脱式クリップは、ホルダ本体の背面に係止レールを異なる方向に延びるように2対形成し、前記係止レールと係合して摺動する1対の摺動部が設けられたベースからU字状に抑板が折り返された構造のクリップにコ字状切り欠きを設けて前記ベースからU字状折り返し部に及ぶ弾性変形可能なつまみを形成し、前記ホルダ本体の背面またはつまみの一方にロック用突起を形成し、前記ホルダ本体の背面またはつまみの他方にロック用凹部を形成したものである。
【0019】
また、前記着脱式クリップにおいて、前記ホルダ本体の係止レールから前記ロック用突起またはロック用凹部の方向に外れた位置に1対の凸部を設け、前記1対の凸部がクリップのベースの側面と係合することにより係止レールと協働してロック状態のクリップのホルダ本体に対するねじれを規制するものである。
【0020】
また、前記各着脱式クリップにおいて、前記2対の係止レールが互いに直交する方向に延びるものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明の携帯機器ホルダの着脱式クリップによれば、、部品点数が少なく、組み立て工程が不要であり、しかも、携帯機器がホルダ本体に装着されたままの状態で携帯機器のベルトに取付けられる向きを容易に変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(a)はこの発明の実施例である携帯機器ホルダの着脱式クリップにおけるクリップを表側から見た斜視図、図1(b)は同クリップを裏側から見た斜視図である。
【図2】同携帯機器ホルダの着脱式クリップにおける1の組み付け状態の最初の状態を示す斜視図である。
【図3】同1の組み付け状態の途中の状態を示す斜視図である。
【図4】同1の組み付け状態の最終の状態を示す斜視図である。
【図5】同携帯機器ホルダの着脱式クリップにおける2の組み付け状態の最初の状態を示す斜視図である。
【図6】同2の組み付け状態の途中の状態を示す斜視図である。
【図7】同2の組み付け状態の最終の状態を示す斜視図である。
【図8】同携帯機器ホルダの着脱式クリップにおける1の組み付け状態の最終の状態を示す断面図である。
【図9】同1の組み付け状態からクリップを外す方法を示す断面図である。
【図10】従来の携帯機器ホルダのベルトフック組み付ける方法を示す斜視図である。
【図11】同携帯機器ホルダのベルトフック取り外し方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下この発明を実施するための形態を実施例に即して説明する。
【実施例1】
【0024】
図1(a)はこの発明の実施例である携帯機器ホルダの着脱式クリップにおけるクリップを表側から見た斜視図、図1(b)は同クリップを裏側から見た斜視図である。図2〜図7は同携帯機器ホルダの着脱式クリップにおける組み付け状態を示す斜視図である。図8は同クリップの1の組み付け状態における断面図、図9は同1の組み付け状態からクリップを外す方法を示す断面図である。
【0025】
実施例のクリップ2は図1および図8、図9に詳しく示されている。このクリップ2が図2に詳しく示すホルダ本体1に装着されて使用される。すなわち、実施例の着脱式クリップは2つの部品のみで構成されている。
【0026】
先ず、クリップ2について図1および図2、図8、図9を参照して説明する。クリップ2はベース2aから抑板2cが折り返された断面略U字形状に形成されている。なお、図2〜図7では抑板2cの部分が切り欠かれた状態で示されている。
【0027】
クリップ2の中央部にコ字状切り欠きによりベース2aからU字状の折り返し部に及ぶ弾性変形可能なつまみ2dが形成されている。つまみ2dは片持梁であり幅が狭いので容易に図1(a)の上方向に変形させることができる。
【0028】
ベース2aの図1(b)で示す左上方向の先端両側に摺動部2b、2bが形成されている。ベース2aと抑板2cの先端には向き合うようにベルトを保持するためのベース側突起2fと抑板側突起2gが夫々突出形成されている。また、つまみ2dの基端部にはロック用凹部2eが形成されている。
【0029】
次に、ホルダ本体1について図2〜図7により説明する。ホルダ本体1には図2〜図7において下側に位置している携帯機器を嵌着する部分の上側の背面1aにクリップ2のベース2aが密着するようにクリップ2が装着される。
【0030】
ホルダ本体1の背面1aには略逆L字片の係止レール1b,1c、1d、1eが立設されている。係止レール1b,1cと係止レール1d、1eは夫々平行に延びるように対を形成している。なお、この例では係止レール1b,1cと係止レール1d、1eは直交する方向に延びている。
【0031】
そして、係止レール1b,1cから外れた位置に一対の凸部1f、1gが形成され、係止レール1d,1eから外れた位置に一対の凸部1h、1jが形成されている。さらに、凸部1f、1gの間にロック用突起1kが形成され、凸部1h、1jの間にロック用突起1mが形成されている。
【0032】
上記したクリップ2をホルダ本体1に装着する方法を図2〜図7により説明する。図2〜図4はクリップを2をホルダ本体1と平行となる1の組み付け状態となる装着状態を示している。
【0033】
先ず、図2に示すように、クリップ2を摺動部2b、2bが係止レール1b,1cから外れた位置となるように位置合わせして矢印で示すように移動させ、ホルダ本体1の背面1aに密着させる。その後、図3に矢印で示すようにクリップ2を移動させると摺動部2b、2bが係止レール1b,1cに係止されるようになる。
【0034】
なお、クリップ2のつまみ2dから離れた部分はベルトを挾持する部分であり、つまみ2d比較して剛性大きくしてある。この部分のベース2aの側面に後述するクリップ2がホルダ本体1にロックされた状態において、凸部1f、1gが係合し、係止レール1b,1cと協働してロック状態のクリップ2のホルダ本体1に対するねじれを規制する。
【0035】
このようにしてクリップ2の摺動部2b、2bの角がホルダ本体1の係止レール1b,1cのガイド溝の終端面と当接するまで移動されて図4および図8に示す装着状態となる。この状態でベース側突起2fと抑板側突起2gでベルトが挾持されるが、クリップ2の剛性が大きくクリップ2は堅くベルトを保持する。
【0036】
また、ホルダ本体1の凸部1f、1gに挟まれたクリップ2のベースがホルダ本体1に対してねじれないように規制される。さらに、図8に示すように、ホルダ本体1のロック用突起1kがクリップ2のつまみ2dに形成されたロック用凹部2eに入り込みクリップ2はホルダ本体1にロックされた状態となる。なお、つまみ2dは装着時に一旦弾性変形した後元に戻りロック用突起1kがロック用凹部2eに入り込む。
【0037】
このように、ホルダ本体1に装着されているクリップ2を外す方法を図9により説明する。図9に示すように、ロック状態にあるクリップ2のつまみ2dを指で上方向に撓ませてロック用凹部2eをロック用突起1kから外し、クリップ2を装着時と逆方向に移動させることによりクリップ2をホルダ本体1から外すことができる。
【0038】
このとき、クリップ2のつまみ2dをホルダ本体1に挿入している携帯機器と反対方向に撓ませるので、ホルダ本体1に携帯機器を保持させたままホルダ本体1をクリップ2から外すことができる。同様に携帯機器を保持させたホルダ本体1をクリップ2に装着できる。また、つまみ2は片持ち梁に形成されており、剛性も適度のものとすることができるので、クリップ2からホルダ本体1を簡単に外すことができる。
【0039】
図5〜図7はクリップを2をホルダ本体1と直交する2の組み付け状態となる装着状態を示している。この場合の装着の最初の状態、途中の状態、最終の状態が夫々図5、図6図7に示されている。
【0040】
2の組み付け状態ではホルダ本体1の係止レール1b,1cと直交する係止レール1d、1eによりクリップ2の摺動部2b、2bが係止されて摺動する。そして、クリップ2の摺動部2bの角がホルダ本体1の係止レール1dのガイド溝の終端面と当接するまで移動されて図7に示す装着状態となる。このとき、ロック用突起1mがつまみ2に形成されたロック用凹部2eに入り込みクリップ2がホルダ本体1にロックされる。
【0041】
クリップ2のつまみ2dを指で押し上げてクリップ2とホルダ本体1とのロックを外し、クリップ2をホルダ本体1から容易に外すことも1の組み付け状態のときと同様である。この場合もホルダ本体1に携帯機器を保持させたままホルダ本体1をクリップ2から外すことができる。
【0042】
この例では、ホルダ本体1とクリップ2との2個の部品のみが用いられており、部品点数が少なく、また、使用時にクリップ2をホルダ本体1に装着すればよく組付け工程が不要である。
【0043】
実施例は以上のように構成されているが発明はこれに限られず、例えば、ホルダ本体の2対の係止レールを傾斜する角度に配置し、携帯機器をベルトに傾斜するように取り付けてももよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明の携帯機器ホルダの着脱式クリップは、携帯機器をベルトに取り付ける姿勢を容易に変えることができるので、携帯無線機に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 ホルダ本体、1a 背面、1b,1c、1d、1e 係止レール、1f、1g
1h、1j 凸部、1k、1m ロック用突起
2 クリップ、2a ベース、2b 摺動部、2c 抑板、2d つまみ
2e ロック用凹部、2f ベース側突起、2g 抑板側突起
11 ホルダ本体、11a 背面、11b 係止レール、11c レバー、
11d ロック用突起
12 ベルトフック、12a 摺動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ本体の背面に係止レールを異なる方向に延びるように2対形成し、前記係止レールと係合して摺動する1対の摺動部が設けられたベースからU字状に抑板が折り返された構造のクリップにコ字状切り欠きを設けて前記ベースからU字状折り返し部に及ぶ弾性変形可能なつまみを形成し、前記ホルダ本体の背面またはつまみの一方にロック用突起を形成し、前記ホルダ本体の背面またはつまみの他方にロック用凹部を形成したことを特徴とする携帯機器ホルダの着脱式クリップ。
【請求項2】
前記ホルダ本体の係止レールから前記ロック用突起またはロック用凹部の方向に外れた位置に1対の凸部を設け、前記1対の凸部が前記クリップのベースの側面と係合することにより係止レールと協働してロック状態のクリップのホルダ本体に対するねじれを規制する請求項1の着脱式クリップ。
【請求項3】
前記2対の係止レールが互いに直交する方向に延びる請求項1または2の着脱式クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−286082(P2010−286082A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141884(P2009−141884)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【出願人】(596098128)株式会社山形ケンウッド (13)
【Fターム(参考)】