説明

携帯用冷風・温風装置

【課題】 特殊な上衣などを必要とせず、また使用時に不快感の生じることのない、携帯用冷風・温風装置を提供する。
【解決手段】 固体冷却・加熱装置8と送風装置6を含む冷暖房装置50をショルダーバッグのバッグ部10に配し、冷却あるいは加熱された空気をショルダーバッグのショルダーベルト15に沿って配された送風管11を介して、ユーザの上半身の所定箇所に吹き出すよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用冷風・温風装置に関し、特に人体の上半身を冷却あるいは加熱するための携帯用冷風・温風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からペルチェ素子などの固体冷却・加熱素子を用いた携帯用冷却装置あるいは携帯用加熱装置などが知られている。下記の特許文献1に記載の技術は、ペルチェ素子で冷却した空気をブロワでホースを介して衣服の内部に送風してユーザの上半身を冷却するものである。特許文献1に記載の装置では、冷却された空気を上衣の内部に送風するために、上衣の所定箇所に空気取り入れ口を設けている。また下記の特許文献2に記載の技術は、ペルチェ素子で冷却した空気をブロワでホースを介して衣服の内部に送風してユーザの上半身を冷却するものである。特許文献2に記載の装置では、冷却された空気を上衣の内部に送風するために、上衣の内部に送風パイプを挿入する構成となっている。
【特許文献1】特開平4−159119号公報 (第3図、第4図)
【特許文献2】実開昭63−15415号公報 (第1図、第2図、請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、冷却した空気を上衣の内部に送風するために、上衣自体に取り込み口を設ける必要があるため、専用の上衣をあらかじめ用意しておく必要があり、一般のユーザが通常着用する上衣、すなわち、通常のワイシャツ、ブラウス、セータ、作業着などを着用している場合には、その上に専用の特殊上衣を着用しなければならない。また、上記特許文献2に記載の技術では、冷却した空気を送風するパイプを上衣の内部に挿入しているので、ユーザは、着用時に上衣のボタンを外してパイプを上衣の内部に挿入するなどの手間を要し、また使用中において、パイプが上衣の内部に位置するため、パイプが直接に又は下着を通して皮膚に触れることとなり、不快感を生じさせることがあった。そこで本発明は、特殊な上衣などを必要とせず、また使用時に不快感の生じることのない、携帯用冷風・温風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明は、固体冷却・加熱装置と送風装置をショルダーバッグのバッグ部に配し、冷却あるいは加熱された空気をショルダーバッグのショルダーベルトに沿って配された送風管を介して、ユーザの上半身の所定箇所に吹き出すよう構成したものである。
すなわち、本発明によれば、携帯用冷風・温風装置であって、固体冷却・加熱装置と送風装置を有するものにおいて、
前記固体冷却・加熱装置と前記送風装置を保持するバッグ部と、
前記バッグ部をユーザが携帯するために、ショルダーバッグとして肩にかけるためのショルダーベルトであって、前記固体冷却・加熱装置にて冷却又は加熱された空気を導くための送風路を有し、前記ショルダーベルトの所定位置から前記送風路により導かれた空気を外部に放出する吹き出し口を有するショルダーベルトとを、
有することを特徴とする携帯用冷風・温風装置が提供される。
【0005】
前記吹き出し口が、前記ショルダーベルトの表面に固定されたガイドプレートと、前記ガイドプレートに沿って、前記ショルダーベルトの長手方向に移動可能であり、前記ガイドプレートに面する側に貫通口を有する管状の口金とを有し、前記ショルダーベルトには、前記貫通口の位置に合わせて貫通口が設けられ、前記口金が前記ショルダーベルトの長手方向の第1の位置にあるとき、前記口金の内部の空気が、前記口金の貫通口と、前記ガイドプレートの貫通口と、前記ショルダーベルトの貫通口を介して前記ショルダーベルトの裏面側に排出され、前記口金が前記ショルダーベルトの長手方向の第2の位置にあるとき、前記口金により、ガイドプレートの貫通口が塞がれ、前記口金の内部の空気が前記口金の開口端部からのみ排出されるよう構成されていることは、本発明の好ましい形態である。
【0006】
前記ショルダーベルトの長手方向を軸として、前記口金の傾斜角度が調節可能であり、よって、前記送風路により導かれた空気の放出方向を自在に調節することを可能としたことは、本発明の好ましい形態である。
【0007】
前記固体冷却・加熱装置が少なくとも2枚の板状の固体冷却・加熱素子と、前記少なくとも2枚の板状の固体冷却・加熱素子に密着し、複数の空気流路を有する熱伝達トンネル部材とを有することは、本発明の好ましい形態である。
【0008】
前記板状の固体冷却・加熱素子の前記熱伝達トンネル部材に接触している面の反対側の面に一部が密着したヒートパイプ部と、前記固体冷却・加熱装置から離間した位置にある前記ヒートパイプ部の他の一部に密着したヒートシンクとを有することは、本発明の好ましい形態である。
【0009】
前記送風装置により送風される空気の一部を前記固体冷却・加熱装置の所定箇所にフィードバックするバイパス手段を有することは、本発明の好ましい形態である。
【0010】
前記送風装置が軸流ファンであることは、本発明の好ましい形態である。
【0011】
前記固体冷却・加熱装置がペルチェ素子であることは、本発明の好ましい形態である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、固体冷却・加熱装置と送風装置を含む冷暖房装置をショルダーバッグのバッグ部に配し、冷却あるいは加熱された空気をショルダーバッグのショルダーベルトに沿って配された送風管を介して、ユーザの上半身の所定箇所に吹き出すよう構成したので、ユーザは通常のショルダーバッグを使用するのと同様の感覚で、本発明の携帯用冷風・温風装置を使用することができ、特殊な衣服を必要とせず、また使用時の不快感もなく、手軽に歩行時、仕事中、作業中などに冷風あるいは温風を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の携帯用冷風・温風装置の好ましい実施の形態を図を用いて説明する。図1は、本発明の携帯用冷風・温風装置の好ましい実施の形態のショルダーバッグ部近傍を示す斜視図であり、図2は、図1に示す携帯用冷風・温風装置をユーザが使用している状態を示す模式図である。図1に示すように、本発明の携帯用冷風・温風装置はバッグ本体(バッグ部とも言う)10とそのショルダーベルト15を有し、バッグ部10の内部には、後述する図5に示す冷暖房装置50が配されている。バッグ部10は布などの通気性に富む素材である布地18を主として構成されているので、冷暖房装置50に対して外部の空気を抵抗なく送り込むことができる。冷暖房装置50は、その名称のとおり、冷房と暖房のための冷風と温風のいずれかを送出する機能を有するものであり、本実施の形態では、後述するペルチェ素子に印加する電圧の極性を切り換えることで、冷風と温風の切り換えをすることができるものとする。説明の都合上、本実施の形態は、冷風を排出する携帯用冷房装置として用いる場合を例にとっている。
【0014】
バッグ部10の前方と後方に端部が取り付けられたショルダーベルト15は、合成皮革あるいは、繊維製品などにより構成された平坦な部材から構成されている。一方、ショルダーベルト15の一方の端部近傍から約50cm程度にわたって、送風路を構成する送風管11がショルダーベルト15に沿って設けられている。送風管11は、合成皮革、可塑性のある合成樹脂などで構成することができる。送風管11は、図5に示すように冷暖房装置50の排出口に接続された一方の開口端部11Aと、図2に示すように、ユーザがショルダーベルト15を肩にかけた状態でユーザの首筋あたりを冷却するように所定位置に他の開口端部11Bを有している。送風管11は、一方の開口端部11Aから所定距離の部分11sは、その横断面が図3の(b)に示すように扁平な環状であるが、上記所定距離の位置、すなわち図3の(a)中、xで示す位置より図4の(a)に示す開口端部11Bまでの部分は、環状部分が展開され、かつ展開後の部分(以下展開部分11tと言う)の幅が調整された形状となっている。ここで図3の(a)と図4の関係を説明すると、図3の(a)は、ショルダーベルト15に沿って設けられた送風管11のバッグ部10に近い方を示し、図4は図2に示す口金12の周囲を示している。
【0015】
この展開部分11tは、ショルダーベルト15の片面を覆うように、展開部分11tの両縁部がショルダーベルト15に接着あるいは縫合される。すなわち、図3の(c)に示すように展開部分11tは、ショルダーベルト15と協働して空気通路を形成している。送風管11の位置xにおける環状部の端部には、のりしろ部分11uを有している。また展開部分11tの両縁部もそれぞれのりしろ部分11v、11wを有している。これらののりしろ部分11u、11v、11wは、ショルダーベルト15の片面上に接着あるいは縫合されて固定される。
【0016】
図4は、送風管11の開口端部11B近傍の構造を示す図であり、(a)は、平面図を、(b)は、側断面図を、(c)は、開口端部11Bにのみ設けられるガイドプレート16の形状を示す平面図である。図4に示すように、送風管11の開口端部11B近傍では、ショルダーベルト15の片面、すなわち空気通路を形成している側の面の上にガイドプレート16が固定されている。送風管11の内部で、かつ開口端部11Bから所定距離だけ離れた位置に、口金支持部14が設けられている。口金支持部14は、断面が長方形の管状の部材であり、大口径部14aと小口径部14bを有し、大口径部14aはガイドプレート16の片面と展開部11tの内面に固定されている。口金支持部14の小口径部14bの外周には、口金12の一方の開口端部12Aが嵌合している。
【0017】
口金12は、両端に開口端部12A、12Bを有する扁平な管状構造をしている。また、口金12は、開口端部12Aから開口端部12Bに向かって幅が狭くなるテーパー形状となっている。また、開口端部12Bより先の部分の片側には延長部12Cを有し、延長部12Cには、操作ノブ13が固定されている。操作ノブ13は、ノブ部13aと、延長部12Cを貫通する形で延長部12Cに固定されているピン部13bを有している。ピン部13bは、ガイドプレート16側に突出するガイド溝係合部13cを有している。ガイド溝係合部13cは、ガイドプレート16に設けられたガイド溝16aに係合している。
【0018】
ガイド溝係合部13cが、図4の(c)中の位置16xにあるときは、口金12が図4の(a)、(b)に示す位置にある。この状態では、口金12に設けられた貫通孔12b、12c、12dが、ガイドプレート16に設けられた穴部16b、16c、16dと、ショルダーベルト15に設けられた裏面穴部15b、15c、15dの位置にあるので、口金12から吹き出す送風の一部は、ショルダーベルト15の裏側から排出され、ユーザの胸部付近を冷却することができる。ユーザがノブ13aを操作してガイド溝係合部13cが位置16yに移動すると、口金12は、図4の(a)、(b)に示す位置より図中左方向に移動する。この移動によりショルダーベルト15に設けられた裏面穴部15b、15c、15dとガイドプレート16に設けられた穴部16b、16c、16dが口金12により塞がれる。この状態では、口金12から吹き出す送風は、ショルダーベルト15の裏側から排出されることなく、すべて口金12の開口端部12Bから排出される。
【0019】
この状態で、ユーザがノブ13aを操作してガイド溝係合部13cが位置16pに移動すると、口金12は、図4の(a)に示す位置より図中上方向に移動する。逆にユーザがノブ13aを操作してガイド溝係合部13cが位置16qに移動すると、口金12は、図4の(a)に示す位置より図中下方向に移動する。したがって、口金12の開口端部12Bは、ショルダーベルト15の軸方向に対して、所定角度の範囲で傾きの調整が可能であり、よってユーザの好みに応じて首筋や、顔面などに冷風を当てることが可能となる。このように、ガイド溝係合部13cは、英文字「E」を逆にした形状のガイド溝に沿って移動可能であり、それに応じて口金12の位置、傾きを随意に選択することが可能である。
【0020】
バッグ部10の内部には、冷暖房装置50が配されているが、冷暖房装置50は、図5に示すようにケーシング50Aとその内部に取り付けられた種々の部品を有している。すなわち、送風管11の開口端部11Aは、冷暖房装置50の排出口を形成する軸流ファン6に接続されている。図中、17は放熱板、29は放熱窓、19は吸気窓、20は冷暖風取付台、21は結露溜タンクである。図6は、図5中の冷暖房装置50の主要機器部を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。図6中、8は冷却素子(あるいは加熱素子)として作用するペルチェ素子、22は熱交換用格子である。なお、図5、図6には示されていないが、冷却素子8や軸流ファン6を駆動・制御するための電源と制御回路が冷暖房装置50の一部として設けられている。
【0021】
次に冷暖房装置50の制御回路を中心とする電気系統について説明する。
<冷風温度及び風量制御回路>
携帯用冷風装置(又は温風装置)が発生する冷風又は温風は、直接人体に吹きつけられる場合が多いため、その温度と風量が手動又は自動で細かく制御できることが望ましい。さらには携帯装置として電池が使われることが多いので、その電池のエネルギーを抵抗器などに消費させず、無駄なく利用できることが望ましい。そのような目的の制御装置の構成例を図7のブロック図に示す。
【0022】
図7において、ペルチェ素子に代表される冷却素子8により冷却された外気は、軸流ファン6により吸い出され、図5に示す送風管11に冷風として供給される。ニッケルカドミニューム電池などを利用した直流電源103が発生した直流電流は、PWMコンバーター105とFETによりパルス幅変調され、スイッチS101を介して冷却素子8に加えられる。PWMコンバーター105が発生するパルス幅Wは、PWMコンバーター105のパルス幅設定端子2に接続された抵抗器R101の操作に従って変わるため、それに応じてFETのオンタイムが増減し、その結果、冷却素子8に流れる実効電流が変わり、軸流ファン6から吹き出す冷風の温度が手動で変えられることになる。安定した冷風温度を得るため抵抗器R101の端子電圧は、定電圧回路104により一定に保たれている。このように冷却素子8に流れる実効電流は、直列抵抗などで無駄に消費される代わりにパルス幅制御されるので、冷風の温度を極めて高能率に変えることができる。
【0023】
ここでFETは、冷却素子8に流れる電流をパルス幅Wに応じてオン−オフする他、パルス電流のマイナス側をアースにクランプし、冷却素子8にパルス幅Wに応じた1方向(例えばプラス極性)のパルス電流が流れるよう機能している。冷却素子8としてペルチェ素子を使用した場合は、その性質上、加える電流の極性が逆になると、冷却面と熱発生面が逆転するため、単にパルス波形の電流を加えただけでは吸気に対し冷却と加熱が交互に行われ、結果として目的の冷風又は温風を発生しない。従ってこのようなクランプ回路が必要である。
【0024】
一方、軸流ファン6の冷風排出部には、サーミスターなどを利用した温度センサー106が設けられていて、抵抗R103を通して定電圧回路104より電流が供給されている。この温度センサー106の端子電圧はPWMコンバーター105の変動入力端子1に加えられる。PWMコンバーター105は、パルス幅Wを変えて端子1と2の電位差がゼロになるよう機能するため、結果として抵抗器R101の操作により設定された冷風温度に自動制御される。
【0025】
S101は冷却素子8に加えられる電流の極性を反転させ、冷風と温風を切り換える切り換えスイッチである。PWMコンバーター105としては、市販の例えば富士通M34063あるいはシャープ3M02Aが使用できるが、その場合は定電圧回路があらかじめ組み込まれていて、その出力端子が設けられているため、それをA点に結ぶことで、図示されている定電圧回路104を省略できる。
【0026】
他方、直流電源103が発生した直流電流は抵抗R102を介して軸流ファン6に加えられる。ここでスイッチS102をHとLに切り換えることにより、抵抗R102が短絡又は開放され、軸流ファン6による風量が高低に手動制御される。なお、図7の温度センサー106に相当するものとして風量センサーを設け、さらに冷却素子8の電流制御に用いたPWMコンバーター105とFETからなる一連の制御回路と同じ物を別に設け、それにより軸流ファン6の電流を制御すれば、排出冷風又は温風の風量の自動制御も可能となる。このように発生した冷風又は温風の温度や風量を自動制御することにより、外気温度が変化したり電池の電圧が変動しても、発生した冷風又は温風の温度や風量を一定に保つことができる。
なお、図7では軸流ファン6を冷却素子8の排気側に設けてあるが、代わりに吸気側に設けて外気を冷却素子8に押し込むような構成にしてもよい。
【0027】
<冷却トンネルの構造>
冷風の発生には、外気を通過させる冷却トンネルの内壁の一部にペルチェ素子を配置し、軸流ファン6で導入した外気をその冷却面に触れさせて冷却するが、ペルチェ素子は一般に平面構造のため、そのままでは冷却トンネルを通過する空気のごく一部しか冷却面に触れないため、冷却効果は極めて限られてしまう。したがって図8に示すように、少なくとも2枚のペルチェ素子を対向させて冷却トンネルを構成するとよい。さらにはペルチェ素子3枚で断面が三角形になるように、あるいは4枚で四角形断面、6枚で六角形断面の冷却トンネルを構成すれば冷却面に接する空気の量が増えるため大きな冷却効果が得られる。
【0028】
ここで冷却トンネルの内部を空洞のままにせず、内部にアルミ板など熱伝導率の高い材料で構成した格子状の熱交換器(熱交換格子)を挿入すれば、ペルチェ素子の冷却面からの熱伝導により熱交換格子の表面が均等に冷やされることで、冷却効果が向上する。しかし実際に熱交換格子をアルミ板で作った場合は、ペルチェ素子の冷却面に完全に接触させることは難しく、熱交換効果はやはり限られる。そこでこの熱交換格子を、図8に示したようなアルミの引き出し成型品にすれば、ペルチェ素子の冷却面と密着させることができ、高能率な熱交換効果が得られる。なお、図8では熱交換格子の空気の通路を四角形で示してあるが、蜂の巣状、すなわち六角形にすれば接触面積が大きくなりなおよい。
【0029】
<ペルチェ素子の放熱>
ペルチェ素子は、放熱面と冷却面がかなり近接した構造を有している。そのため放熱面で発生した熱が、伝導及び輻射で冷却面を温めてしまう問題がある。そのため図8に示したように、放熱面に密着させたヒートシンクを設けて、発生した熱を放散させるのが普通である。しかし元々、冷却面と放熱面が近接しているため、ヒートシンクから放散する熱の影響を避けるには限度がある。その対策としてヒートシンクを直接発熱面に設けず、図9に示したようにヒートパイプで結ぶことで、ヒートシンクを発熱面から遠ざけ任意の場所に配置することが可能になる。
【0030】
<ヒートシンクの強制冷却>
ペルチェ素子は、冷却面の温度が放熱面の温度に依存する性質がある。ペルチェ素子の動作時の冷却面と放熱面の温度差は最大温度差などと呼ばれ、ある製品の例では摂氏30度である。このことは、例えば自然放熱用ヒートシンクが設けられた放熱面の温度が摂氏60度になっている場合、冷却面の温度は摂氏30度以下にはならず、冷却面を通過する空気の温度は30度で飽和しそれ以上は下がらないことを意味する。したがって冷却面の温度を30度より低くし、充分冷えた冷風を得ようとするには、何らかの手段で放熱面の温度を更に下げる必要がある。そのため自然放熱に代わり、別に設けたファンによりヒートシンクを強制冷却することもよく行われる。しかし携帯機器では、ファンを別に設けるとその駆動のため電池を余分に消耗し、騒音も発生することになるので望ましくない。そこで図10に示したように、軸流ファン6から吹き出した冷風の一部をダクトで分岐し、ヒートシンクに吹き付けて冷やすことが考えられる。この場合、送風管に送られる冷風の風量は減るが、その分温度が低くなった冷風を送出することができる。
【0031】
<環流による冷風の再冷却>
携帯用冷風装置では、特に使用開始時など風量は少なくても特別冷えた風が欲しいことがある。そのため、発生した冷風の一部を吸気に混入して循環させることで冷風温度を下げることが考えられる。図11にその一例を示した。図11において、軸流ファン6が回転するとその排出側は正圧になり、吸気側は負圧になるため公知の制御装置501によりバイパスバルブを開くと、軸流ファン6で発生した冷風の一部がバイパス路を通り吸気側に環流され、冷却トンネルで再び冷やされる。したがって、図示してない送風管に送り出される冷風は、その分、風量は減少するが、温度は下がったものになる。ここで制御装置501で駆動される流量制御バルブをある程度閉じると、その分、環流する冷風の量が増え送風管に送り出される冷風の風量は減るが温度は更に下がる。流量制御バルブを完全に閉じた場合は、軸流ファン6で発生した冷風の全部が環流し、冷却トンネルを通過して循環再冷却されることで冷風温度は冷却素子の冷却面温度まで冷えることになる。その際、制御装置501により流量制御バルブを間欠的に開閉すれば、連続した冷風に代わり、送風管を通じてより低温度の冷風を人体に間欠的に吹きつけることができる。団扇や首振り状態の扇風機の例から明らかなように、吹きつけられる冷風が間欠的でも、清涼感を得ることに大きく変わりはない。
【0032】
上記実施の形態は、ショルダーバッグの内部に冷暖房装置を配し、ショルダーベルトに沿わして配した送風管から冷風などを排出してユーザの首筋近傍を冷却するものであったが、本発明の携帯用冷風・温風装置はこれに限らず、図12に示すように、ユーザの腰に巻き付けるベルト30に冷暖房装置50Bと、これに一体化した送風管11Cを配し、吹き出し口23Aを適宜、配することもできる。
【0033】
また、送風管と吹き出し口をベルトに設けるのではなく、図13に示すように細くて柔らかい管状部材24の随所に吹き出し口23Bを設け、この管状部材24を着物の胸部に挿入したり、ワンピースやスカートの内側にマジックテープ(登録商標)など止めて固定するようにしてもよい。図13において、31は、2本の管状部材24に可撓性を与える蛇腹である。また、狭い場所での作業者用として、放熱効果を高めるために、図5、図6に示した放熱板17を空冷ではなく水冷式とすることもできる。図14は、かかる水冷方式を具現化するために、放熱板17に冷却水タンク25を接触させる構成を示している。図14中、26はポンプ、27は循環パイプ、28は大型の水槽である。大型の水槽28は、ユーザのそばに配置することができ、冷却水タンク25に循環パイプ27を介して冷水を供給し、熱を持った冷却水を回収して放熱板17の放熱効果を高めることができる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、電源として電池などの携帯用電源を使用しているが、日中に屋外で使用する携帯用冷風・温風装置の場合は、ソーラー発電を利用することができる。すなわち、日傘や帽子にソーラーパネルを配し、発電された電力を電池に供給するように構成すれば、電池の容量を大きくする必要がなくなり重量が少なくなり便利であり、また経済的である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明の携帯用冷風・温風装置は、冷房や暖房を必要とする個人用であって、携帯可能である冷暖房装置などの分野で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の携帯用冷風・温風装置の好ましい実施の形態におけるショルダーバッグ部とショルダーベルトの一部を示す斜視図である。
【図2】図1の携帯用冷風・温風装置をユーザが使用している状態を示す模式図である。
【図3】図1の携帯用冷風・温風装置の送風管の構成を説明するための図である。
【図4】図1の携帯用冷風・温風装置の送風管の開口端部近傍の構造を説明するための図である。
【図5】図1の携帯用冷風・温風装置の冷暖房装置を示す斜視図である。
【図6】図5の冷暖房装置の主要部を示す正面図(a)、側面図(b)、及び底面図(c)である。
【図7】図5の冷暖房装置の電気回路を示すブロック図である。
【図8】図6の冷暖房装置の主要部の変形例を示す構造図である。
【図9】図6の冷暖房装置の主要部の変形例を示す構造図である。
【図10】図6の冷暖房装置の主要部の変形例を示す模式図である。
【図11】図6の冷暖房装置の主要部の他の変形例を示す模式図である。
【図12】本発明の携帯用冷風・温風装置の他の構成例を示す斜視図である。
【図13】本発明の携帯用冷風・温風装置の更に他の構成例における空気吹き出し部の構造を示す模式図である。
【図14】本発明の携帯用冷風・温風装置を水冷式に変形する構成例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
6 送風装置(軸流ファン)
8 固体冷却・加熱装置(冷却素子、ペルチェ素子)
10 ショルダーバッグのバッグ本体(バッグ部)
11、11C 送風管(送風路)
11A 開口端部(固体冷却・加熱装置側)
11B 開口端部(吹き出し口側)
12 口金
12A 開口端部
12B 開口端部
12C 延長部
13 操作ノブ
14 口金支持部
15 ショルダーベルト
16 ガイドプレート
17 放熱板
18 布地
19 吸気窓
20 冷暖風取付台
21 結露溜タンク
22 熱交換用格子
23A、23B 吹き出し口
24 管状部材
25 冷却水タンク
26 ポンプ
27 循環パイプ
28 大型の水槽
29 放熱窓
30 ベルト
31 蛇腹
50、50B 冷暖房装置
50A ケーシング
103 直流電源
104 定電圧回路
105 PWMコンバーター
106 温度センサー
501 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用冷風・温風装置であって、固体冷却・加熱装置と送風装置を有するものにおいて、
前記固体冷却・加熱装置と前記送風装置を保持するバッグ部と、
前記バッグ部をユーザが携帯するために、ショルダーバッグとして肩にかけるためのショルダーベルトであって、前記固体冷却・加熱装置にて冷却又は加熱された空気を導くための送風路を有し、前記ショルダーベルトの所定位置から前記送風路により導かれた空気を外部に放出する吹き出し口を有するショルダーベルトとを、
有することを特徴とする携帯用冷風・温風装置。
【請求項2】
前記吹き出し口が、前記ショルダーベルトの表面に固定されたガイドプレートと、前記ガイドプレートに沿って、前記ショルダーベルトの長手方向に移動可能であり、前記ガイドプレートに面する側に貫通口を有する管状の口金とを有し、前記ショルダーベルトには、前記貫通口の位置に合わせて貫通口が設けられ、前記口金が前記ショルダーベルトの長手方向の第1の位置にあるとき、前記口金の内部の空気が、前記口金の貫通口と、前記ガイドプレートの貫通口と、前記ショルダーベルトの貫通口を介して前記ショルダーベルトの裏面側に排出され、前記口金が前記ショルダーベルトの長手方向の第2の位置にあるとき、前記口金により、ガイドプレートの貫通口が塞がれ、前記口金の内部の空気が前記口金の開口端部からのみ排出されるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の携帯用冷風・温風装置。
【請求項3】
前記ショルダーベルトの長手方向を軸として、前記口金の傾斜角度が調節可能であり、よって、前記送風路により導かれた空気の放出方向を自在に調節することを可能としたことを特徴とする請求項2に記載の携帯用冷風・温風装置。
【請求項4】
前記固体冷却・加熱装置が少なくとも2枚の板状の固体冷却・加熱素子と、前記少なくとも2枚の板状の固体冷却・加熱素子に密着し、複数の空気流路を有する熱伝達トンネル部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の携帯用冷風・温風装置。
【請求項5】
前記板状の固体冷却・加熱素子の前記熱伝達トンネル部材に接触している面の反対側の面に一部が密着したヒートパイプ部と、前記固体冷却・加熱装置から離間した位置にある前記ヒートパイプ部の他の一部に密着したヒートシンクとを有することを特徴とする請求項1に記載の携帯用冷風・温風装置。
【請求項6】
前記送風装置により送風される空気の一部を前記固体冷却・加熱装置の所定箇所にフィードバックするバイパス手段を有することを特徴とする請求項1に記載の携帯用冷風・温風装置。
【請求項7】
前記送風装置が軸流ファンであることを特徴とする請求項1に記載の携帯用冷風・温風装置。
【請求項8】
前記固体冷却・加熱装置がペルチェ素子であることを特徴とする請求項1に記載の携帯用冷風・温風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−136628(P2006−136628A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330708(P2004−330708)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(304054389)
【Fターム(参考)】