説明

携帯用切断機

【課題】集塵ボックス11の透明性を維持するとともに、耐久性を向上させる。
【解決手段】切断用ののこ刃3を通す開口部4を貫通形成した定盤2の上部に、切断時に飛散した切粉を集めるための透明な合成樹脂製集塵ボックス11を上記のこ刃3の周囲を覆うように設けた携帯用切断機において、上記集塵ボックス11の内周壁に金属製のプロテクタ16、17を取り付け、上記集塵ボックス11の内側壁から上記のこ刃3の刃先を透視可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯用切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、回転するチップソーで部材を切断する携帯用切断機は、木板のほかに鉄、アルミなどの金属製部材を切断することができる。これらの金属製部材を切断する際には切粉が飛散するので、のこ刃を回転自在に設けた定盤(ベース)の上部には飛散した切粉を集めるための集塵ボックスが設けられている。集塵ボックスは、のこ刃の上方を覆うように配置されているので、のこ刃よりも大きく、定盤と密接するように配置されている。
【0003】
部材を切断するときは、部材を定盤の下面にあてがうが、のこ刃がどこにあるのかがわからないと切断位置を特定することができない。そこで、集塵ボックスを透明な合成樹脂から構成し、集塵ボックスからのこ刃の先端を透視して切断位置の狙いが定められるようになっている(特許文献1参照)。さらに、定盤にも、のこ刃の中心の延長上で集塵ボックスに覆われない位置にのぞき窓を開口形成し、真上からのぞき窓越しに刃先と部材に設けられた切断用マークとを合せられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−202609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、切粉は金属で、熱くなっているから、切断時に定盤の上方に飛び散って合成樹脂製集塵ボックスの内面に衝突するので、切断作業を繰り返すうちに、内面を少しずつ傷つけていく。特に集塵ボックスの内周面には切粉が直接に当たる。このため、集塵ボックスの内周面が徐々に削られてついには外周面にまで達して周壁の端部に削りによる溝ができる。同時に、内面にできた小さな傷のために曇りが発生し、表面が白濁して透明性が損なわれ、のこ刃の視認性も失われていく。このため、作業者はのぞき窓から切断位置を確認することになるが、従来ののぞき窓はのこ刃の刃先から遠い位置に設けられているので、被切断部材の切断部分がのこ刃に近づくと、のこ刃が見えにくく、狙いが狂いやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消し、集塵ボックスの透明性を維持し、長期間視認性を確保することができるとともに、耐久性を向上させることができ、また集塵ボックスに曇りが発生した際にも、のこ刃に近い位置ののぞき窓より、のこ刃の情報をわかりやすくすることができる携帯用切断機を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第1の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、切断用ののこ刃を通す開口部を貫通形成した定盤の上部に、切断時に飛散した切粉を集めるための透明な合成樹脂製集塵ボックスを上記のこ刃の周囲を覆うように設けた携帯用切断機において、上記集塵ボックスの内周壁側に沿って金属製のプロテクタを取り付け、上記集塵ボックスの内側壁部から上記のこ刃の刃先を透視可能としたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記のこ刃の刃先を透視可能な内側壁部を外側に膨出させ、のこ刃を通す上記開口部を外側に拡開させて形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、上記集塵ボックスの内側壁部又は上記定規の開口部近傍に、硬質ガラスを取り付けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1において、上記定盤には、集塵ボックスに覆われない位置で上記のこ刃の中心の延長上には、上記のこ刃の刃先に近い位置と遠い位置とにそれぞれのぞき窓を開口形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4において、上記集塵ボックスの外側壁部の前側を絞り込んでくさび状にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、被切断部材を切断するにあたっては、のこ刃の先端がどこにあるかを確認しなければならないが、集塵ボックス内側壁部は透明であり、内側壁側のプロテクタは、集塵ボックスの内側壁部からのこ刃の刃先を透視するのに邪魔にならない位置に設けられているから、作業者は集塵ボックスの内側壁からのこ刃の刃先を透視することができる。したがって、刃先と被切断部材との位置関係を確実に把握して正確に切断することができる。
【0013】
また、集塵ボックスの内側壁部において、のこ刃を透視できる部位は、切粉が直接に当たりにくい部位であるから、集塵ボックスの透明性は長く維持され、長期間視認性を確保することができる。
【0014】
さらに、集塵ボックスの内周壁とその近傍には、切断時に飛び散った切粉が直接に当たるが、ここには金属製のプロテクタ、が取り付けられ、切粉で特に削れ易い部分がプロテクタによって良好に保護されるから、集塵ボックスの耐久性が向上する。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、のこ刃の刃先を透視可能な内側壁部の一部を、外側に膨出させるとともに、のこ刃を通す開口部を外側に拡開形成したので、視認領域が増大し、のこ刃の位置をより広い範囲で認識することができる。
【0016】
そして、この場合、外側に膨出させた分だけ集塵カバーの内側壁には切粉が接触しにくくなるので、内側壁部が白濁しにくく、視認性がより良好に持続する。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、のこ刃の刃先を透視可能な内側壁部の一部又は上記定規の開口部近傍には、合成樹脂ではなく硬質ガラスが取り付けられているので、硬質ガラスは硬く表面に傷がつきにくいから、長期間にわたり透明度を維持することができる。特に、膨出した部分に硬質ガラスを取り付けることにより、透明度が維持される期間をさらに長くすることができる。硬質ガラスは内側壁部の内側に接着してもよく、あるいは内側壁部に開口部を形成し、開口部に硬質ガラスを固着するようにしてもよい。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、切断時に発生した切粉はプロテクタで覆った部分だけでなく、それ以外の部分にも飛び散るから、切断作業が繰り返されると、のこ刃の先端を透視する内側壁部も徐々に白濁し、ついにはのこ刃の先端が見えなくなる。このような状態になったときでも、のこ刃の先端位置を第1ののぞき窓と第2ののぞき窓から確認しながら正確に切断することができる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、集塵ボックスの外側壁部の前側を絞り込んでくさび状の形状にしたので、集塵ボックスは前方が先細となり、作業者が上からのぞいたときに、特に第1ののぞき窓からのこ刃の先端位置が見やすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る携帯用切断機の斜視図
【図2】図1の一部の拡大図
【図3】上記携帯用切断機を図1の反対側から見た斜視図
【図4】上記携帯用切断機の側面図
【図5】上記携帯用切断機の平面図
【図6】図4のa−a線上の前側の一部の拡大断面図
【図7】図4のb−b線上の断面図
【図8】図5のc−c線上の断面図
【図9】図6のd−d線上の断面図
【図10】集塵ボックスの内側壁部を外側に膨出させた状態の拡大断面図
【図11】定盤を下側から見た状態を示す底面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図9において符号Aは携帯用切断機を示す。この切断機Aは、切断機本体1を定盤2に回動自在に設けたもので、定盤2の一側には、切断機本体1に設けられたのこ刃(丸鋸)3を通す開口部4が貫通形成され、のこ刃3の一部は定盤2の下方に突出可能に構成されている。
【0022】
切断機本体1には、切断用ののこ刃3とのこ刃3を回転させる回転駆動機構と操作用ハンドル5とが設けられている。回転駆動機構には、図7に示されるように、のこ刃3の回転軸7と減速歯車9を介して作動連結する電動モータ6と、電動モータ6に電力を供給するバッテリパック21とが含まれる。電動モータ6はモータハウジングの内部に配置されている。操作用ハンドル5には電動モータの作動を制御するトリガ8が取り付けられている。
【0023】
定盤2は切断機本体1の下部に配置された金属製の板状部材で、のこ刃3を通す開口部4の下方にはのこ刃3の一部が露出し、円弧状のロアガード10によって覆われている。このロアガード10はのこ刃3の回転軸7を中心に後方から上方に回動可能に装着されている。また、定盤2の上部には、切断時に飛散した切粉を集めるための透明なポリカーボネート等の合成樹脂製集塵ボックス11が上記のこ刃3の周囲を覆うように設けられている。なお、集塵ボックス11は、図7に示されるように、半円弧状の周壁部11aと略半円形の内側壁部11bと外側壁部11cとによって構成され、内側壁部11bは切断機本体1と一体的に配設され、また周壁部11aと外側壁部11cとは一体になって、内側壁部11bに対して着脱できるように構成されている。また、外側壁部11cの前側は図6に示すように一重だが、中心側は内壁部12と外壁部13の二重構造になっており、外側壁部11cはのこ刃3をはさんで内側壁部11bに対向し、内壁部12と外壁部13との間には切粉収容部14が形成されている。内壁部12には穴15が形成され、切断によって生じた切粉は、図8に示すように穴15から切粉収容部14に飛び込んで切粉が溜まるように形成されている。なお、集塵ボックス11はのこ刃3の上部を保護するアッパーガードを兼ねている。
【0024】
次に、集塵ボックス11は透明であるから、内側壁部11bから定盤2の開口部4を通してのこ刃3の前側先端部を透視することができる。なお、開口部4の全体は図11に示したとおりである。
【0025】
ところで、切断時に形成された切粉は定盤2の開口部4から上方に飛び散り、集塵ボックス11の内面に衝突するが、その際、直接に当たるのは、のこ刃3の刃先の接線方向である。そこで、集塵ボックス11の内周壁20とその近傍の切粉が直接に当たる位置には金属製のプロテクタ16、17が取り付けられている。
【0026】
特に、内側壁部11b側のプロテクタ17は、集塵ボックス11の内側壁部11b側からのこ刃3の刃先を透視するのに邪魔にならない位置に設けられている。
【0027】
次に、定盤2には、集塵ボックス11に覆われない位置で、のこ刃3の延長上に、のこ刃3の刃先に近い位置と遠い位置とにそれぞれ第1ののぞき窓18と第2ののぞき窓19とが開口形成されている。第1ののぞき窓18は二等辺三角形に、また第2ののぞき窓19は菱形に形成され、のこ刃3の延長は第1ののぞき窓18の底角を結ぶ線と第2ののぞき窓19の前後の対角を結ぶ線P(図5参照)上にあるように形成されている。
【0028】
上記切断機によって被切断部材を切断するときは、被切断部材の表面に定盤2の下面を当て、トリガ8を引き操作し、電動モータ2を作動させ、ハンドル5を押しつつ定盤2を被切断部材の表面に沿って移動させればよい。
【0029】
被切断部材を切断するにあたっては、のこ刃3の先端がどこにあるかを確認しなければならない。これに対応し、集塵ボックス11の内側壁部11bは透明であり、内側壁側のプロテクタ16、17は、集塵ボックス11の内側壁部11b側からのこ刃3の刃先を透視するのに邪魔にならない位置に設けられているから、図1及び図2に示されるように、作業者は集塵ボックス11の内側壁からのこ刃3の刃先を透視することができる。したがって、刃先と被切断部材との位置関係を確実に把握して正確に切断することができる。
【0030】
また、集塵ボックス11の内側壁部11bで、のこ刃3を透視できる部位は、切粉が直接に当たりにくい部位であるから、集塵ボックス11の透明性は長く維持され、長期間視認性を確保することができる。
【0031】
さらに、集塵ボックス11の内周壁20とその近傍には、切断時に飛び散った切粉が直接に当たるが、ここには金属製のプロテクタ16、17が取り付けられ、切粉で特に削れ易い部分がプロテクタ16、17によって良好に保護されるから、集塵ボックス11の耐久性が向上する。
【0032】
なお、図10に示されるように、のこ刃3の刃先を透視可能な内側壁部11bの一部を、外側に膨出させるとともに、のこ刃3を通す開口部4を外側に拡開形成するようにしてもよい。これによれば、視認領域が増大するので、のこ刃3の位置をより広い範囲で認識することができる。
【0033】
そして、この場合、外側に膨出させた分だけ集塵カバー11の内側壁には切粉が接触しにくくなるので、内側壁部11bが白濁しにくく、視認性がより良好に持続する。
【0034】
なお、のこ刃3の刃先を透視可能な内側壁部11bの一部又は定規2ののこ刃3を通す開口部4の近傍には、合成樹脂ではなく硬質ガラス22(図1、図2、図6、図10参照)を使用してもよい。これによれば、硬質ガラスは硬く表面に傷がつきにくいので、長期間にわたり透明度を維持することができる。特に、膨出した部分に硬質ガラスを取り付けることにより、透明度が維持される期間をさらに長くすることができる。硬質ガラスは内側壁部11bの内側に接着してもよく、あるいは内側壁部11bに開口部を形成し、開口部に硬質ガラスを固着するようにしてもよい。
【0035】
同様に、プロテクタ16、17は金属であるから、のこ刃3の刃先を透視することはできないが、その取付け領域は内周壁20とその近傍にのみ限定されるものではない。のこ刃3の刃先を透視する際の障害とならない限り、他の部分に延設させてもよい。
【0036】
次に、切断による切粉はプロテクタ16、17で覆った部分だけでなく、それ以外の部分にも飛び散るから、切断作業が繰り返されると、のこ刃3の先端を透視する内側壁部11bも徐々に白濁し、ついにはのこ刃3の先端が見えなくなる。このような状態になったときでも、のこ刃3の先端の直近に第1ののぞき窓18を設け、さらにその延長線上に第2ののぞき窓19を設けることで、のこ刃3の切断方向の情報を確認することができる。通常の場合、作業者は、被切断部材の表面に切断用のマークとして墨線を施しておき、定盤2の前部を被切断部材の上に置く。このとき、のこ刃3を被切断部材から少し離すので、墨線は第2ののぞき窓19から確認する。そして、のこ刃3の回転速度を最大にしてから、のこ刃3を被切断部材に近づけ、第1ののぞき窓18から切断位置を確認しながら切断を開始する。
【0037】
なお、被切断部材に墨線を施さないときは、第1ののぞき窓18と第2ののぞき窓19から直接にのこ刃3の先端を直接に見て切断すべき部位に正確に狙いを合せて切断すればよい。このように、集塵ボックス11が白濁しても、第1又は第2ののぞき窓18又は19からのこ刃3の切断方向の情報を確認することができる。
【0038】
ところで、第1ののぞき窓18は、なるべくのこ刃3の先端に近い位置に配置するのが好ましい。近ければ近いほどよいが、開口部4から連続して延長形成すると、この部分の強度に影響が出るので、開口部4の前端部から1mm以上の位置に形成するのが好ましい。1mm以下では強度上問題が発生する。また、10mm以上になると、第1のぞき窓は定盤2の開口部4からのこ刃3の先端が見えにくくなる。
【0039】
なお、のぞき窓は3個以上あってもよい。
【0040】
なお、のこ刃3の位置を容易に確認するためには、なるべく集塵ボックス11の形状を薄くするのが好ましい。特に、図3に示されるように、集塵ボックス11の外側壁部11cの前側形状を内側に絞り込んでくさび状の形状とするのがよい。これによれば、集塵ボックス11は前方が先細となるので、作業者が上からのぞいたときに、特に第1ののぞき窓18からのこ刃3の先端が見やすくなる。
【符号の説明】
【0041】
1 切断機本体
2 定盤
3 のこ刃
4 開口部
6 定盤2
11 集塵ボックス
11b 内側壁部
11c 外側壁部
16、17 プロテクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断用ののこ刃を通す開口部を貫通形成した定盤の上部に、切断時に飛散した切粉を集めるための透明な合成樹脂製集塵ボックスを上記のこ刃の周囲を覆うように設けた携帯用切断機において、
上記集塵ボックスの内周壁側に沿って金属製のプロテクタを取り付け、上記集塵ボックスの内側壁部から上記のこ刃の刃先を透視可能とした
ことを特徴とする携帯用切断機。
【請求項2】
上記のこ刃の刃先を透視可能な内側壁部を外側に膨出させ、のこ刃を通す上記開口部を外側に拡開させて形成したことを特徴とする、請求項1に記載の携帯用切断機。
【請求項3】
上記集塵ボックスの内側壁部に、硬質ガラスを取り付けたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の携帯用切断機。
【請求項4】
上記定盤には、集塵ボックスに覆われない位置で上記のこ刃の中心の延長上には、上記のこ刃の刃先に近い位置と遠い位置とにそれぞれのぞき窓を開口形成したことを特徴とする、請求項1に記載の携帯用切断機。
【請求項5】
上記集塵ボックスの外側壁部の前側を絞り込んでくさび状にしたことを特徴とする、請求項4に記載の携帯用切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−115969(P2012−115969A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270320(P2010−270320)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】