説明

摩擦圧接方法および摩擦圧接装置

【課題】バリの発生が少なくかつ汎用性を有する摩擦圧接方法を提供する。
【解決手段】一対のワークW1,W2を相対回転させつつ押し当てることで一対のワークW1,W2を摩擦圧接する摩擦圧接方法であって、一対のワークW1,W2を相対回転させつつ押し当てて摩擦熱を発生させる摩擦工程と、摩擦工程において一対のワークW1,W2に寄り代が発生する前に開始し、一対のワークW1,W2の相対回転を規制し、かつ一対のワークW1,W2の間にアプセット圧を加えるアプセット工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のワークを相対回転させつつ押し当てることで一対のワークを摩擦圧接する摩擦圧接方法および摩擦圧接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な摩擦圧接方法が知られており、例えばLHI法(特許文献1参照)や、アルミニウム合金に適した方法(特許文献2参照)等が知られている。LHI法では、一対のワークを相対回転させつつ突合わせて摩擦熱を発生させる。そして相対回転は、ワーク間の接合面の摩擦トルクが初期最大値から定常状態になるまで続ける(摩擦工程)。そして摩擦トルクが定常状態になった状態でワーク間の相対回転を規制し(ブレーキをかけ)、ワーク間にアプセット圧を加える(アプセット工程)。
【0003】
したがってLHI法によると、摩擦圧接の初期の段階(すなわち摩擦トルクの四位相中における第二の位相)においてブレーキをかける。そのため通常のブレーキ式摩擦圧接の後期の段階(第四の位相)においてブレーキをかける方法に比べて摩擦圧接における一対のワーク間の寄り代が小さくなり、その結果、バリの発生が少なくなる。特許文献2に記載の摩擦圧接方法では、アルミニウム合金からなる一対のワーク材を相対的に回転させて接触させ、接触後0.7秒以内でブレーキをかける。したがってアルミニウム合金のワークが摩擦熱によって大きく変形してしまう前に摩擦圧接を終了させ得る。しかし特許文献2に記載の方法は、アルミニウム合金のみに対応する方法であって、一般的な摩擦圧接に対応できる方法ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−62676号公報
【特許文献2】特開平5−96385号公報
【特許文献3】特開平3−268884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、従来の方法に比べてバリの発生が少なくかつ汎用性を有する摩擦圧接方法および摩擦圧接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える摩擦圧接方法または摩擦圧接装置であることを特徴とする。すなわち請求項1に記載の発明によると、一対のワークを相対回転させつつ押し当てて摩擦熱を発生させる摩擦工程と、摩擦工程において一対のワークに寄り代が発生する前に開始し、一対のワークの相対回転を規制し、かつ一対のワークの間にアプセット圧を加えるアプセット工程とを有している。
【0007】
従来のLHI法や特許文献2に記載の方法は、一対のワークを相対回転させつつ押し当てることで一対のワーク間に寄り代が発生し、寄り代が発生した後にワーク間の相対回転にブレーキをかける方法であった。これに対して本発明では、寄り代が発生する前にワーク間の相対回転を規制する。そのため相対回転を規制する前の摩擦工程において寄り代が発生せず、アプセット工程のみにおいて寄り代が生じ得る。そのため摩擦圧接全体における寄り代が小さくなり、これによって形成され得るバリが小さくなる。
【0008】
請求項2に記載の発明によると、摩擦工程は、少なくともワーク外周部に焼付きが生じない相対回転数で行われる。ワーク外周部に焼付きが生じると、直後にワーク間の相対回転数により捩り破断が生じ、この捩り破断によって発熱量が急上昇するとともにバリが発生する虞が生じる。しかしワーク外周部が焼付きを生じないほどの高回転で摩擦工程が行われれば、バリの発生を抑制しつつ摩擦圧接に必要な発熱量を得ることができる。この際、ワーク外周部に比べて周速の低い内周部は、焼付きが生じていても良い。
【0009】
請求項3に記載の発明によると、一方のワークを回転させ、他方のワークを固定する。そしてアプセット工程において、回転させたワーク側にブレーキをかけ、かつこの時に固定したワーク側を回転可能なフリー状態にする。したがって一方のワークが減速し始め、他方のワークが一方のワークに対して連れ回り始め、その後、ワーク間の相対回転がゼロになる。そのため短時間でワーク間の相対回転がゼロになる。かくして一対のワーク間に発生する捩れが少なくなり、捩れによって生じるバリが小さくなる。
【0010】
請求項4に記載の発明によると、一方のワークを回転させ、他方のワークを固定する。そしてアプセット工程において、回転させたワーク側にブレーキをかけ、かつこの時に固定したワーク側に回転させたワークと同じ方向の回転力を加える。したがって一方のワークが減速し始め、他方のワークが一方のワークに対して積極的に回転し始め、その後、ワーク間の相対回転がゼロになる。そのため短時間でワーク間の相対回転がゼロになる。かくして一対のワーク間に発生する捩れが少なくなり、捩れによって生じるバリが小さくなる。
【0011】
請求項5に記載の発明によると、摩擦工程における一対のワークの相対回転速度を3300〜10000rpmに設定し、かつ摩擦工程における一対のワークを押す圧力を5〜10MPaに設定する。ところで鋼材からなるワーク等を摩擦圧接する場合、従前の摩擦工程は、回転速度を約1650ppmに設定し、一対のワークを約30MPaで押圧していた(特許文献1参照)。これに対して本発明では、従前に比べて一対のワークを高速で相対回転させ、かつ弱い力で押圧している。そのため寄り代を発生させることなく鋼材からなるワーク間に摩擦熱を確実に発生させることができる。その結果、鋼材からなる一対のワークを確実に接合させることができる。
【0012】
請求項6に記載の発明によると、摩擦工程における一対のワークの周速度を2m/s〜9m/sに設定し、かつ摩擦工程における一対のワーク間を押す圧力を5〜40MPaに設定する。これによりワーク外周部に焼付きが生じることを確実に抑制することができる。
【0013】
請求項7に記載の発明によると、アプセット工程において、アプセット圧を10〜30MPaに設定する。したがって一対のワークを摩擦工程において弱い力で押圧した後に、アプセット工程において強い力で押圧する。そのため鋼材からなるワークを確実に接合させることができる。
【0014】
請求項8に記載の発明によると、第一と第二のワークを相対的に回転させる回転装置と、第一と第二のワークを押し当てる方向に送る推力機構と、推力機構の送りの反力によって第一と第二のワークが接触したことを検知する接触検知センサと、接触検知センサからの検知信号に基づいてワークが接触した後、設定時間経過後に第一と第二のワーク間の相対回転を規制しかつ推力機構によって第一と第二のワークの間にアプセット圧を加えるように制御する制御手段とを有している。そして前記設定時間は、第一と第二のワークの間に寄り代が発生する前の時間に設定されている。
【0015】
したがって本発明の摩擦圧接装置は、寄り代が発生する前においてワーク間の相対回転を規制する。そのため相対回転を規制する前の摩擦工程において寄り代が発生せず、アプセット工程のみにおいて寄り代が生じ得る。そのため摩擦圧接全体における寄り代が小さくなり、これによって形成され得るバリが小さくなる。
【0016】
請求項9に記載の発明によると、第一のワークを回転可能に保持する第一の保持台と、第二のワークを回転可能に保持する第二の保持台と、第一のワークを第一の保持台に対して回転させる回転装置と、第二のワークを第二の保持台に対して解除可能に保持するサーボモータを有している。そして制御手段によって第一のワークの回転規制し、該回転規制の際にサーボモータを制御して第二のワークを解除することで第二のワーク側を回転可能なフリー状態にする。したがって第一のワークが減速し始め、第二のワークが第一のワークに対して連れ回り始め、その後、ワーク間の相対回転がゼロになる。そのため短時間でワーク間の相対回転がゼロになる。かくして一対のワーク間に発生する捩れが少なくなり、捩れによって生じるバリが小さくなる。
【0017】
請求項10に記載の発明によると、第一のワークを回転可能に保持する第一の保持台と、第二のワークを回転可能に保持する第二の保持台と、第一のワークを第一の保持台に対して回転させる回転装置と、第二のワークを第二の保持台に対して回転させるサーボモータを有している。そして制御手段によって第一のワークの回転規制し、該回転規制の際にサーボモータを制御して第二のワークを位置保持した状態から第一のワークと同じ方向に力を加えて強制回転させる状態にする。したがって第一のワークが減速し始め、第二のワークが第一のワークに対して積極的に回転し始め、その後、ワーク間の相対回転がゼロになる。そのため短時間でワーク間の相対回転がゼロになる。かくして一対のワーク間に発生する捩れが少なくなり、捩れによって生じるバリが小さくなる。
【0018】
請求項11に記載の発明によると、制御手段によって一対のワークが固着する固着時の前後における一対のワークの寄り代が所定値よりも大きいか否かを判断し、これによってワーク間の接合の良否を判定する品質管理工程を有している。ところで従来、ワーク間の接合を十分に行うために寄り代を制御する方法が知られている(特許文献3参照)。この時の寄り代は、ワークの移動量によって制御するが、ワークが加工時の発熱によって熱膨張するために、その補正量も加えて制御している。一方、本発明に係る摩擦圧接方法は、寄り代が非常に小さいために、寄り代を測定等することが容易でない。しかも寄り代は、摩擦圧接時のワーク移動量の測定によって得ることができるが、ワークは、摩擦圧接時において押圧力によって弾性変形し、さらに摩擦熱によって熱膨張もする。そのため寄り代を測定することが容易でない。
【0019】
これに対して本発明者は、誠意研究によって、本発明に係る摩擦圧接方法の場合、ワーク同士が接合するために必要な真の寄り代がワークの固着時前後の短い時間内において生じることを見出した。そして本発明では、寄り代を固着時の前後所定時間において測定する。そのため寄り代を比較的短い時間で測定でき、これによって摩擦圧接時に生じるワークの弾性変形や熱膨張の影響が小さくなり、寄り代を正確に測定できる。かくしてワーク間の圧接の良否を正確に判定できる。またワークを冷却したり破壊試験をすることなく、ワーク間の接合判定ができるために、ワーク間の接合の良否を迅速かつ簡便に行うこともできる。
【0020】
請求項12に記載の発明によると、一方のワークを回転させ、他方のワークを固定し、アプセット工程において、回転させたワーク側を回転規制し、かつこの時に固定したワーク側を回転可能なフリー状態にする。そしてフリー状態のワークの回転速度を測定するセンサからの検知信号に基づいて、ワークが加速から減速になった時点を固着時と制御手段が特定する。したがってフリー状態側のワークの速度変化によって固着時を特定できる。したがって固着時を簡易かつ確実に得ることができる。なお固着時が上記特定時であることは、実験結果から推測することができた。
【0021】
請求項13に記載の発明によると、一方のワークを回転させ、他方のワークを固定し、アプセット工程において、他方のワークを固定しつつ回転させたワーク側を回転規制し、回転規制を開始した時点と回転させたワークの回転が停止した時点に基づいて、制御手段が固着時を算出し特定する。したがって回転する側のワークの状態によって固着時を特定できる。例えば回転規制を開始した時点と回転が停止した時点の中間時点を固着時と特定できる。これによって固着時を簡易かつ確実に得ることができる。なお固着時が上記特定時とし得ることは、実験結果から推測することができた。
【0022】
請求項14に記載の発明によると、制御手段は、第一と第二のワークが固着する固着時を特定し、かつ固着時の前後所定時間におけるワーク間の寄り代が所定値よりも大きいか否かを判断し、これによってワーク間の接合の良否を判定する。したがって寄り代は、固着時の前後所定時間において測定されるために、摩擦圧接時に生じるワークの弾性変形や熱膨張の影響が小さい状態で測定され得る。かくして寄り代を正確に測定でき、これによってワーク間の圧接の良否を正確に判定できる。またワークを冷却したり破壊試験をすることなく、ワーク間の接合判定ができるために、ワーク間の接合の良否を迅速かつ簡便に行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】摩擦圧接装置の正面図である。
【図2】摩擦圧接装置の左側面図である。
【図3】摩擦圧接時における各種制御値および状態値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図1〜3にしたがって説明する。摩擦圧接装置1は、図1に示すようにベッド9と、ベッド9に移動可能に取付けられる第一の保持台2と、ベッド9の一端部に移動不能に取付けられる第二の保持台3と、ベッド9の他端部に移動不能に取付けられるモータ保持台6を有している。
【0025】
第一の保持台2は、図1,2に示すように上下部にベッド9に形成されたレール9aにスライド可能に装着されるガイド部2bを有している。第一の保持台2の一端部には、チャック2aが設けられている。チャック2aは、第一の保持台2の本体に対して軸回転可能に設けられており、第一のワークW1を保持する。第一の保持台2の他端部には、主軸モータ(回転装置)4aを有する主軸モータ体4が取付けられている。主軸モータ4aは、サーボモータ等であって、ベッド9に設けられた制御手段7によって制御され得る。主軸モータ体4と第二の保持台3の間には、主軸モータ4aからの動力をチャック2aに伝達して、チャック2aとともに第一のワークW1を軸回転させる動力伝達機構が設けられている(図示省略)。
【0026】
図1,2に示すように第一の保持台2とモータ保持台6の間には、第一の保持台2をスライドさせる推力機構が設けられている。推力機構は、モータ保持台6に設けられた推力用モータ6aと、ボールねじ6eを有している。推力用モータ6aは、サーボモータ等であって、制御手段7によって制御され得る。ボールねじ6eは、図1の左端において滑車6cが連結される。また推力用モータ6aの出力軸と滑車6cとの間で動力を伝達するタイミングベルト6dが掛けられている。またボールねじ6eは、第一の保持台2に設けられた雌ねじと螺合されている。そしてボールねじ6eは、推力用モータ6aによって回転駆動されることで第一の保持台2をベッド9に対してスライドさせる。また第一と第二のワークW1,W2が接触したことを検知する接触検知センサ6bが設けられている。本実施の形態では、主軸モータ4aのトルクセンサを接触検知センサ6bとして用い、圧接トルク変動を検知することでワークW1,W2の接触を検知する。
【0027】
第二の保持台3は、図1に示すように一端部に第二のワークW2を保持するチャック3aを有している。チャック3aは、第二の保持台3の本体に回転可能に支持されている。第二の保持台3の他端部には、モータ5aを有するモータ体5が設けられている。モータ5aは、サーボモータ等であって、制御手段7によって制御され得る。モータ体5と第一の保持台2の間には、モータ5aからの動力をチャック3aに伝達し、チャック3aとともに第二のワークW2を第二の保持台3の本体に対して制御する動力伝達機構が設けられている。そしてモータ5aを制御することで、第二のワークW2を第二の保持台3の本体に対して回転不能な位置保持状態、回転可能なフリー状態、あるいは強制回転する強制回転状態にすることができる。
【0028】
摩擦圧接装置1によって第一と第二のワークW1,W2を摩擦圧接する場合は、先ず、第一と第二のワークW1,W2をそれぞれチャック2a,3aに装着する。次に、制御手段7によってモータ5aを制御して第二のワークW2を回転不能な位置保持状態にする(固定する)。そして主軸モータ4aを制御して第一のワークW1を圧接回転速度A1の高速で回転させる(図3参照)。例えば、ワークW1,W2が鋼材の丸棒の場合において圧接回転速度A1を3300rpm〜10000rpm、あるいは1500rpm〜10000rpmにする。回転数が低すぎると、ワークW1,W2の外周部に焼付きが生じ、直後にワークW1,W2間の相対回転により捩り破断が生じ、この捩り破断によって発熱量が急上昇するとともにバリが発生する虞が生じる。なお鋼材としては、S15Cなどの軟鋼、S55Cなどの高炭素鋼等を利用することができる。丸棒としては、φ3〜20の中実丸棒、φ3〜30の中実丸棒、あるいはその中実丸棒の断面積に相当する断面積を有する中空丸棒等を利用することができる。
【0029】
次に、制御手段7によって推力用モータ6aを駆動させて、第一の保持台2を第二の保持台3に向けて移動させる。この時の推力P0は、第一の保持台2が低速で移動し得る大きさ、例えばワークW1,W2間の接触時における圧力を1〜3PMaになるように設定する。ワークW1,W2が接触すると、ワークW1,W2間には摩擦熱が発生する。そして推力機構によるワークW1,W2間の圧力は、P1(低圧)になる。そしてP1にて保持される。P1は、ワークW1,W2に寄り代が直ぐに発生しない程度に小さく、ワークW1,W2が鋼材の丸棒の場合には、5〜10MPa、あるいは5〜40MPaに設定する。P1が低すぎると摩擦工程での摩擦熱が不足する。また本発明は、寄り代が発生する前に摩擦工程が終了するので、P1が高すぎると直ぐに寄り代が発生してしまい、バリの発生が多くなってしまう。そのためP1の上限は、材料および形状等によって決定される。
【0030】
これにより摩擦工程が開始し、図3に示すようにワークW1,W2間に圧接トルクが発生し、接触面の摩擦によって摩擦熱が発生する。この時、ワークW1,W2は、摩擦熱によって膨張して、第一の保持台2を元の位置へ戻す方向へ押す。第一の保持台2は、基本的にはワークW1,W2が接触した位置にて保持されるが、押戻す力によって押戻されても良い。従来技術のように大きい押圧力であったり、ワークW1,W2間にさらに押圧力を加えたりすると、摩擦熱によって接触面が柔らかくなり、ワークW1,W2同士が寄る方向に移動して寄り代(摩擦代)が発生し得る。本形態では、上記のような低い押圧力P1、上記のような高い圧接回転速度A1で保持するため、摩擦工程において寄り代が発生しない状態で接合面を加熱することが可能となる。そして摩擦工程が終了するとワークW1の回転を規制する。すなわち従来技術の摩擦圧接の第一位相の途中においてワークW1の回転を規制する。したがって最大摩擦トルク(初期トルク)が発生する前に回転を規制する。
【0031】
この回転規制のタイミングは、接触検知センサ6bからの検知信号に基づいて制御手段7がタイマーを作動させ、タイマー作動後、予め設定した時間T1経過後と設定されている。そして制御手段7は、時間T1を経過した時点でブレーキ(図示省略)を作動させて第一のワークW1の回転速度を減速させる。なお本形態では、従前の方法に比べて圧接回転速度A1を速く設定し、かつ圧力P1を低く設定している。そのため摩擦工程において寄り代が発生し難く、T1を幅広く選択し得る。例えばワークW1,W2が鋼材の丸棒の場合には、T1を0.05〜1秒、あるいは0.05〜2秒で設定し得る。また圧接回転速度A1は、ワークW1,W2の外周部にて焼付きが発生しない程度に十分に高速に設定されていることが好ましい。
【0032】
また制御手段7は、回転規制する時間T1経過後において推力用モータ6aを制御して、ワークW1,W2間にアプセット圧P2を生じさせる。アプセット圧P2は、摩擦工程における圧力P1よりも大きく、例えば1.5倍以上、2〜4倍とすることが好ましい。もしくは圧力P1と同じにすることが好ましい。ワークW1,W2が鋼材の丸棒の場合には、P2を10〜30MPa、あるいは10〜40MPaに設定することが好ましい。
【0033】
また制御手段7は、回転規制した時間T1経過後においてモータ(サーボモータ)5aを制御して、第二のワークW2を軸回転可能なフリー状態にする。これにより第二のワークW2は、摩擦によって第一のワークW1に対して連れ回る方向に回転し始め、時間T1+T2経過後において第一のワークW1の回転速度A2と同じになる。これによりワークW1,W2が一体になって回転速度A2で回転し、その後、時間T1+T2+T3経過後にこれらが停止する(アプセット工程)。例えば鋼材の丸棒のワークW1,W2の場合には、T2とT3がともに0.5〜1秒になる。
【0034】
図3に示すように第一と第二のワークW1,W2の相対回転が0になる前後の時間T4において寄り代が発生する。例えば、鋼材の丸棒のワークW1,W2の場合には、約0.05秒の時間T4の間に0.05〜0.2mm、あるいは0.1〜1mmの寄り代Bが発生する。そしてバリは、寄り代が発生しない間には殆ど形成されず、寄り代Bが生じるわずかな時間T4においてのみに形成され得る。
【0035】
以上のように、摩擦圧接方法は、摩擦工程とアプセット工程を有している。アプセット工程は、摩擦工程において一対のワークW1,W2に寄り代が発生する前に、一対のワークW1,W2の相対回転を規制し、かつ一対のワークW1,W2の間にアプセット圧P2を加える。そのため相対回転を規制する前の摩擦工程において寄り代が発生せず、アプセット工程のみにおいて寄り代が生じ得る。そのため摩擦圧接全体における寄り代が小さくなり、これによって形成され得るバリが小さくなる。
【0036】
また本摩擦圧接方法によると、アプセット工程において、回転させた第一のワークW1側にブレーキをかけ、かつ固定した第二のワークW2側を回転可能なフリー状態にする。したがって第一のワークW1が減速し始め、第二のワークW2が第一のワークW1に対して連れ回り始め、その後、ワークW1,W2間の相対回転がゼロになる。そのため短時間でワークW1,W2間の相対回転がゼロになる。かくして一対のワークW1,W2間に発生する捩れが少なくなり、捩れによって生じるバリが小さくなる。またバリが小さくなるので、後加工が不要または少なくて済む。また寄り代が小さいので、素材の節約にもなり、全長の精度も向上する。さらに本摩擦圧接方法は、従来の方法に比べて捩れが少ないので同軸度の精度の向上も期待できる。
【0037】
また一対のワークW1,W2が鋼材製の場合には、摩擦工程における一対のワークW1,W2の相対回転速度を3300〜10000rpm、あるいは1500rpm〜10000rpmに設定する。そして摩擦工程における一対のワークW1,W2を押す圧力P1を5〜10MPa、あるいは5〜40MPaに設定する。したがって従前に比べて一対のワークW1,W2を高速で相対回転させ、かつ弱い力で押圧している。そのため寄り代を発生させることなく鋼材からなるワークW1,W2間に摩擦熱を確実に発生させることができる。その結果、鋼材からなる一対のワークW1,W2を確実に接合させることができる。
【0038】
またアプセット工程においては、アプセット圧P2を10〜30MPa、あるいは10〜40MPaに設定する。したがって一対のワークW1,W2を摩擦工程において弱い力で押圧した後に、アプセット工程において強い力で押圧する。そのため鋼材からなるワークW1,W2を確実に接合させることができる。
【0039】
また摩擦圧接装置1は、回転装置(主軸モータ4a)と、推力機構と、接触検知センサ6bと、接触検知センサ6bからの検知信号に基づいてワークW1,W2が接触した後、設定時間T1が経過後に第一と第二のワークW1,W2間の相対回転を規制しかつ推力機構によって第一と第二のワークW1,W2の間にアプセット圧P2を加えるように制御する制御手段7とを有している。そして前記設定時間は、第一と第二のワークW1,W2の間に寄り代が発生する前の時間T1に設定されている。したがって摩擦圧接全体における寄り代が小さくなり、これによって形成され得るバリが小さくなる。
【0040】
次に、摩擦圧接の良否(接合の良否)を判定する品質管理工程について説明する。なお接合が不良な場合とは、ワークW1,W2を引っ張り試験した場合にワークW1,W2間の界面において破断する状態をいい、接合が良好な場合とは、界面以外の母材の一部において破断する状態をいう。品質管理工程では、この引っ張り試験を行うことなく、接合の良否を寄り代の大きさによって判定する。
【0041】
ところで従来、寄り代の測定は、摩擦圧接の前後のワークW1,W2の長さをワークW1,W2が十分に冷えた状態で行うことで正確に行うことも可能である。しかしこの場合、冷却する時間等を管理する必要があり、作業が煩雑になるという問題がある。また本摩擦圧接の方法では、寄り代が非常に小さいため、寄り代の測定が容易でない。そこで本形態では、容易かつ正確な寄り代を下記の方法によって測定し、その寄り代の大きさから摩擦圧接の良否を判定する。
【0042】
先ず、チャック2a,3aに第一と第二のワークW1,W2を装着する。そして第一のワークW1を圧接回転速度A1で回転させ、第一の保持台2を第二の保持台3に向けて移動させる。この時、第一の保持台2の位置を検知する位置検知手段とタイマーによって第一の保持台2の位置と時間を測定し、これら測定データを記憶手段(図示省略)によって連続して記憶する。
【0043】
続いて、ワークW1,W2を押当てて摩擦工程を行い、時間T1経過後に第一のワークW1側を回転規制し、同時に第二のワークW2側をフリー状態にする(図3参照)。この時、第二のワークW2の回転速度を検知するセンサによってワークW2の回転速度を測定し、この測定データを記憶手段によって連続して記憶する。第二のワークW2は、時間T2の間において加速し、第一のワークW1の回転速度A2と同じになった後に減速し始め、時間T2+T3経過時に停止する。
【0044】
次に、制御手段7が記憶手段に記憶されたワークW2の回転速度と時間のデータから、ワークW2が加速から減速になった時点を固着時と特定する。そして記憶手段に記憶された保持台2の位置と時間のデータから、制御手段7が固着時における前後時間T4における保持台2の移動量を求め、これを寄り代として特定する。なお寄り代は、図3に示すように固着時の前後において発生し、この寄り代がワークW1,W2の接合に必要な真の寄り代である。そしてこの現象は、発明者の誠意研究によって見出すことができた。またT4は、ワークW1,W2の材料や大きさによって決定されるものであって、予め記憶手段に記憶されたT4に基づいて制御手段7が寄り代を求める。
【0045】
次に、求めた寄り代が所定値の範囲内にあるか否かを制御手段7が判断する。例えば寄り代が0.1〜1mm、あるいは0.05〜1mmの範囲内にあるか否かを判断する。寄り代が最小所定値よりも大きい場合、ワークW1,W2間が十分に接合されていると判断し、寄り代が最大所定値よりも小さい場合には、摩擦圧接においてバリが十分に小さくなると判断する。これにより制御手段7が摩擦圧接の良否を判定する。
【0046】
以上のように、制御手段7によって一対のワークW1,W2が固着する固着時の前後(例えばT4)における一対のワークW1,W2の寄り代が所定値よりも大きいか否かを判断し、これによってワークW1,W2間の接合の良否を判定する(品質管理工程)。ところで従来、ワーク間の接合を十分に行うために寄り代を制御する方法が知られている(特許文献3参照)。この時の寄り代は、ワークの移動量によって制御するが、ワークが加工時の発熱によって熱膨張するために、その補正量も加えて制御している。一方、本発明に係る摩擦圧接方法は、寄り代が非常に小さいために、寄り代を測定等することが容易でない。しかも寄り代は、摩擦圧接時のワークW1の移動量の測定によって得ることができるが、ワークW1,W2は、摩擦圧接時において押圧力によって弾性変形し、さらに摩擦熱によって熱膨張もする。そのため寄り代を測定することが容易でない。
【0047】
これに対して本発明者は、誠意研究によって、本形態に係る摩擦圧接方法の場合、ワークW1,W2同士が接合するために必要な真の寄り代がワークW1,W2の固着時前後の短い時間T4内において生じることを見出した。そして本形態では、寄り代を固着時の前後時間T4において測定する。そのため寄り代を比較的短い時間で測定でき、これによって摩擦圧接時に生じるワークW1,W2の弾性変形や熱膨張の影響が小さくなり、寄り代を正確に測定できる。かくしてワークW1,W2間の圧接の良否を正確に判定できる。またワークW1,W2を冷却したり破壊試験をすることなく、ワークW1,W2間の接合判定ができるために、ワークW1,W2間の接合の良否を迅速かつ簡便に行うこともできる。
【0048】
またアプセット工程において、回転させたワークW1側を回転規制し、かつこの時に固定したワークW2側を回転可能なフリー状態にする。そしてフリー状態のワークW2の回転速度を測定するセンサからの検知信号に基づいて、ワークW2が加速から減速になった時点を固着時と制御手段7が特定する。したがってフリー状態側のワークW2の速度変化によって固着時を特定できる。したがって固着時を簡易かつ確実に得ることができる。なお固着時が上記特定時であることは、実験結果から推測することができた。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の実施例を表を用いて説明する。表1の試験条件に示すような条件で摩擦圧接を実施し、試験片を作成した。なお第一のワークW1と第二のワークW2の接合部径は同じであり、材質は全てS15Cの中実である。なお「LHI」は、LHI法を示し、「ブレーキ」は、通常のブレーキ式摩擦圧接法を示す。
【0050】
【表1】

【0051】
各試験片について引っ張り強度と寄り代について評価した。評価結果を表2に示す。なお「HAZ部」は、接合面を中心に熱影響を受けた部分のことである。なお、表2の寄り代は、図3における時間T1〜T3の間における寄り代であり、後に説明する表3の寄り代のように、図3における時間T4の間だけの寄り代ではない。
【0052】
【表2】

【0053】
表2より、No.1,2は、アプセット圧P2が不足していたと推測される。またNo.3は、摩擦工程時間T1が不足して、加熱が不十分だったと推測される。その他の試験片は、LHI法、ブレーキ式摩擦法と比較して同等の強度を持ちながら短時間で摩擦圧接が終了し、かつ寄り代が小さい(すなわちバリの発生が少ない)ことがわかる。なおNo.1〜9は、いずれも摩擦工程での寄り代は、ほぼゼロであった。一方、LHI法とブレーキ式摩擦法での摩擦工程での寄り代は、それぞれ0.8mm、4.0mmであった。
【0054】
また、表1よりNo.9の周速度が2.9m/sであり、No.1〜8の周速度は4.4m/sであり、周速度が2m/s〜5m/sの範囲において接合が良好であることがわかった。
【0055】
以上の結果から本方法によって摩擦圧接させたワークを観察した結果、バリが従前の方法に比べて小さくなることを確認できた。また引張試験をした結果、ワーク間が十分に接合され得たことも確認できた。
【0056】
また表3に示す試験片を準備して、表3に示す試験条件において摩擦圧接も行った。試験片であるワークW1,W2の材質はS15CまたはS55Cである。ワークW1,W2の接合部は同じ形状であって、中実丸棒または中空丸棒であり、中空のNo.12,14は、外側径が24mm、肉厚が3.5mmある。表3のT0は、ワークW1,W2が接触した時から推力P0を加え始めるまでの時間である。T1は、押圧力P1を加え始めた時からアプセット圧P2を加え始めるまでの時間である。
【0057】
【表3】

【0058】
各試験片について寄り代U、すなわち固着時の前後時間T4における寄り代Uを測定し、表3にまとめた。次に、摩擦圧接後に各試験片を引っ張り試験し、その破断位置によって接合の良否を評価した。接合の評価は、破断部位がHAZ部である場合に不良、HAZ部以外の母材の一部である場合に良好であると判断した。寄り代Uと接合の評価の結果から、寄り代Uが0.1mm以上、好ましくは0.13mm以上において接合が良好であることがわかった。
【0059】
また本摩擦圧接方法は、寄り代を小さくし、これによってバリを小さくする方法である。そのため寄り代Uの上限値を決め、例えば1mmと決め、この上限値よりも大きい場合に製造不良とすることが好ましい。なお表3の各試験片は、いずれも寄り代Uの上限値が1mm以下であって、バリも十分に小さくなることが確認できた。また表1,3に示す試験片は、バリの発生を小さくする観点から、摩擦圧接時における周速度が中実丸棒の場合に2m/s以上、中空丸棒の場合に8m/s以上であることが好ましいこともわかった。
【0060】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。
(1)例えば、上記実施の形態では、回転規制と同時にモータ(サーボモータ)5aを制御して第二のワークW2側を回転可能なフリー状態にする形態であった。しかし回転規制と同時にモータ5aを制御して第二のワークW2側に第一のワークW1と同じ方向に回転力を加え、これによって第二のワークW2を強制的に回転させる形態であっても良い。その結果、第一のワークW1が減速し始め、第二のワークW2が第一のワークW1に対して積極的に回転し始め、その後、ワークW1,W2間の相対回転がゼロになる。そのため短時間でワークW1,W2間の相対回転がゼロになる。かくして一対のワークW1,W2間に発生する捩れが少なくなり、捩れによって生じるバリが小さくなる。
【0061】
(2)上記実施の形態は、摩擦工程においてワークW1,W2間を相対回転させる回転装置として、第一のワークW1を回転させる主軸モータ4aを有している形態であった。しかし回転装置として第二のワークW2を回転させるモータ等を有する形態、あるいは摩擦工程において第一と第二のワークW1,W2を相互に回転させるモータ等を有している形態であっても良い。
【0062】
(3)上記実施の形態では、アプセット圧P2が回転規制と同時に加えられていた。しかしアプセット圧P2が回転規制した後、所定時間経過後で、かつ第一と第二のワークW1,W2の相対回転数が0になる前にて加えられる形態であっても良い。
【0063】
(4)上記実施の形態では、第二のワークW2が加速から減速に変わる時点を固着時と特定している。しかし第一のワークW1側を回転規制し、かつ第二のワークW2をフリー状態にした時から所定の時間経過時を固着時として制御手段が特定する方法であっても良い。なお前記所定の時間は、予め記憶手段に記憶させておくこともできる。
【0064】
(5)寄り代Uが下限値(例えば0.03mm)よりも小さい場合に製造不良とすることを品質管理工程に加えても良い。なお、その下限値としては、寄り代Uがある値よりも小さい場合にワークW1とW2間が十分に接合されないという値を実験等により求め、その値を寄り代Uの下限値として設定するのが好ましい。
【0065】
(6)規制ONから所定の時間内の寄り代Uがゼロより大きいか、または所定値より大きい場合に製造不良とすることを品質管理工程に加えても良い。規制ONからの所定の時間内としては、規制ONの時点から真の寄り代の発生が予想される時点までの時間範囲となるように設定する。真の寄り代が発生する前に寄り代が発生してしまうと、寄り代が大きくなりすぎてバリが多く出てしまうことが予想されるためである。
【0066】
(7)規制ONから固着までの時間が所定時間を越えた場合に製造不良とすることを品質管理工程に加えても良い。これは、予想される時間内に固着が起こらなかった場合に、予想通りの摩擦加工が行われなかったことが予想されるため、不良と判断するというものである。
【0067】
(8)主軸停止前(第一のワークW1が回転停止する前)の所定の時間内における寄り代が上限値より大きい場合に製造不良とすることを品質管理工程に加えても良い。
【0068】
(9)上記実施の形態では、ワークW1,W2が固着する固着時を特定し、かつ固着時の前後所定時間における寄り代が所定値よりも大きいか否かを判断している。しかし固着時を求めずに、固着が予想される時間の前後の所定時間を設定し、その所定時間における寄り代が上限値より大きい場合に製造不良と判断しても良い。
【0069】
(10)上記実施の形態では、摩擦圧接時に第二のワークW2をフリー状態にする。しかし摩擦圧接時に第二のワークW2を回転不能に固定し続ける方法(簡易ML法)であっても良い。この場合は、第一のワークW1側を回転規制を開始した時点と、ワークW1の回転が停止した時点に基づいて、制御手段7が固着時を算出し特定する。例えば、回転規制時と回転停止時の中間時点を固着時と算出し特定する。したがって回転する側のワークW1の状態によって固着時を特定でき、これによって固着時を簡易かつ確実に得ることができる。なお固着時が上記特定時とし得ることは、実験結果から推測することができた。
【0070】
(11)上記実施の形態では、摩擦圧接時に第二のワークW2をフリー状態にする。しかし摩擦圧接時に第二のワークW2を回転不能に固定し続ける方法(簡易ML法)であっても良い。この場合は、第一のワークW1側を回転規制した時間と、ワークW1が停止した時間とに基づいて、制御手段7が固着時を算出し特定する。例えば、回転規制時と回転停止時の中間時点を固着時と算出し特定する。したがって回転する側のワークW1の状態によって固着時を特定でき、これによって固着時を簡易かつ確実に得ることができる。なお固着時が上記特定時とし得ることは、実験結果から推測することができた。
【0071】
(12)簡易ML法における固着時の特定方法を上記(11)に代えて、回転規制時から所定の時間経過時にする方法であっても良い。なお前記所定の時間は、予め記憶手段に記憶させておくこともできる。
【0072】
(13)簡易ML法における固着時の特定方法を上記(11)に代えて、ワークW1,W2間のトルクによって特定する方法であっても良い。例えば、第一のワークW1を回転させるトルクをトルクセンサによって測定し、そのトルクを連続して記憶手段が記憶し、制御手段がトルクのピーク時を固着時と特定する方法であっても良い。
【0073】
(14)簡易ML法における固着時の特定方法を上記(11)に代えて、固定側のワーク(本実施形態ではW2)における伝達トルクを測定することによって特定する方法であっても良い。例えば、第二のワークW2に伝達されるトルクをトルクセンサによって測定し、そのトルクを連続して記憶手段が記憶し、制御手段がトルクのピーク時を固着時と特定する方法であっても良い。
【符号の説明】
【0074】
1…摩擦圧接装置
2…第一の保持台
2a,3a…チャック
3…第二の保持台
4…主軸モータ体
4a…主軸モータ(回転装置)
5…モータ体
5a…モータ(サーボモータ)
6…モータ保持台
6a…推力用モータ(推力機構)
6b…接触検知センサ
7…制御手段
9…ベッド
A1…圧接回転速度
B…寄り代
P1…圧力
P2…アプセット圧
W1…第一のワーク
W2…第二のワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のワークを相対回転させつつ押し当てることで前記一対のワークを摩擦圧接する摩擦圧接方法であって、
前記一対のワークを相対回転させつつ押し当てて摩擦熱を発生させる摩擦工程と、
前記摩擦工程において前記一対のワークに寄り代が発生する前に開始し、前記一対のワークの相対回転を規制し、かつ前記一対のワークの間にアプセット圧を加えるアプセット工程とを有していることを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦圧接方法であって、
摩擦工程は、少なくともワーク外周部に焼付きが生じない相対回転数で行われることを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の摩擦圧接方法であって、
一方のワークを回転させ、他方のワークを固定し、
アプセット工程において、前記回転させたワーク側にブレーキをかけ、かつこの時に固定したワーク側を回転可能なフリー状態にすることを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の摩擦圧接方法であって、
一方のワークを回転させ、他方のワークを固定し、
アプセット工程において、前記回転させたワーク側にブレーキをかけ、かつこの時に固定したワーク側に前記回転させたワークと同じ方向の回転力を加えることを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の摩擦圧接方法であって、
摩擦工程における一対のワークの相対回転速度を3300〜10000rpmに設定し、かつ前記摩擦工程における前記一対のワーク間を押す圧力を5〜10MPaに設定することを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の摩擦圧接方法であって、
摩擦工程における一対のワークの周速度を2m/s〜9m/sに設定し、かつ前記摩擦工程における前記一対のワーク間を押す圧力を5〜40MPaに設定することを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の摩擦圧接方法であって、
アプセット工程において、アプセット圧を10〜30MPaに設定することを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項8】
第一と第二のワークを相対回転させつつ押し当てることで前記第一と第二のワークを摩擦圧接する摩擦圧接装置であって、
前記第一と第二のワークを相対的に回転させる回転装置と、前記第一と第二のワークを押し当てる方向に送る推力機構と、前記推力機構の送りの反力によって前記第一と第二のワークが接触したことを検知する接触検知センサと、前記接触検知センサからの検知信号に基づいてワークが接触した後、設定時間経過後に前記第一と第二のワーク間の相対回転を規制しかつ前記推力機構によって前記第一と第二のワーク間にアプセット圧を加えるように制御する制御手段とを有し、
前記設定時間は、前記第一と第二のワークの間に寄り代が発生する前の時間に設定されていることを特徴とする摩擦圧接装置。
【請求項9】
請求項8に記載の摩擦圧接装置であって、
第一のワークを回転可能に保持する第一の保持台と、第二のワークを回転可能に保持する第二の保持台と、前記第一のワークを前記第一の保持台に対して回転させる回転装置と、前記第二のワークを前記第二の保持台に対して解除可能に保持するサーボモータを有し、
制御手段によって前記第一のワークの回転規制し、該回転規制の際に前記サーボモータを制御して前記第二のワークを解除することで前記第二のワーク側を回転可能なフリー状態にすることを特徴とする摩擦圧接装置。
【請求項10】
請求項8に記載の摩擦圧接装置であって、
第一のワークを回転可能に保持する第一の保持台と、第二のワークを回転可能に保持する第二の保持台と、前記第一のワークを前記第一の保持台に対して回転させる回転装置と、前記第二のワークを前記第二の保持台に対して位置保持および強制回転させるサーボモータを有し、
制御手段によって前記第一のワークの回転規制し、該回転規制の際に前記サーボモータを制御して前記第二のワークを位置保持した状態から前記第一のワークと同じ方向に力を加えて強制回転させる状態にすることを特徴とする摩擦圧接装置。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の摩擦圧接方法であって、
制御手段によって一対のワークが固着する固着時の前後における前記一対のワークの寄り代が所定値よりも大きいか否かを判断し、これによって前記ワーク間の接合の良否を判定する品質管理工程を有していることを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項12】
請求項11に記載の摩擦圧接方法であって、
一方のワークを回転させ、他方のワークを固定し、
アプセット工程において、前記回転させたワーク側を回転規制し、かつこの時に固定したワーク側を回転可能なフリー状態にし、
前記フリー状態のワークの回転速度を測定するセンサからの検知信号に基づいて、前記ワークが加速から減速になった時点を固着時と制御手段が特定することを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項13】
請求項11に記載の摩擦圧接方法であって、
一方のワークを回転させ、他方のワークを固定し、
アプセット工程において、前記他方のワークを固定しつつ前記回転させたワーク側を回転規制し、
回転規制を開始した時点と前記回転させたワークの回転が停止した時点に基づいて、制御手段が固着時を算出し特定することを特徴とする摩擦圧接方法。
【請求項14】
請求項8〜10のいずれか一つに記載の摩擦圧接装置であって、
制御手段は、第一と第二のワークが固着する固着時を特定し、かつ前記固着時の前後所定時間における前記ワーク間の寄り代が所定値よりも大きいか否かを判断し、これによって前記ワーク間の接合の良否を判定することを特徴とする摩擦圧接装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−233745(P2009−233745A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7790(P2009−7790)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000101994)イヅミ工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】