摩擦圧接方法
【課題】サーボモータを用いて位相決めを精度良く行うことができる摩擦圧接方法を提供することにある。
【解決手段】主軸回転用サーボモータ14により主軸12を回転させ、主軸12のチャック13に固定されるワークW1とクランプ18に固定されるワークW2とに一定の相対回転運動を付与する。ワークW1,W2同士を接触させて摩擦推力を付与することにより接合界面を軟化させる。停止時におけるワークW1,W2間の位相が目標位相となるように主軸12の回転を減速させる。主軸回転の停止寸前において、前記接合界面の摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側に主軸トルクが加えられ、さらに、ワークW1,W2間の位相が停止位相となったときに、主軸トルクを規制して主軸回転を停止させる。
【解決手段】主軸回転用サーボモータ14により主軸12を回転させ、主軸12のチャック13に固定されるワークW1とクランプ18に固定されるワークW2とに一定の相対回転運動を付与する。ワークW1,W2同士を接触させて摩擦推力を付与することにより接合界面を軟化させる。停止時におけるワークW1,W2間の位相が目標位相となるように主軸12の回転を減速させる。主軸回転の停止寸前において、前記接合界面の摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側に主軸トルクが加えられ、さらに、ワークW1,W2間の位相が停止位相となったときに、主軸トルクを規制して主軸回転を停止させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦圧接方法に係り、特に、ワーク間に相対回転運動を付与するモータとしてサーボモータを用いて位相決めを行う摩擦圧接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワーク同士を接合する手法として摩擦圧接方法が知られている。この方法は、両ワークの接合面を摩擦接触させることによって発生する熱エネルギーを有効に利用し、さらに高い圧力(推力)を加えてワーク同士を接合する方法である。この摩擦圧接方法は、品質面、コスト面、生産性等のメリットがあるため、自動車や産業機械等に適用される量産部品を接合する方法として、特に、棒材や管材などの素材に広く用いられている。
【0003】
ここで、一般的な摩擦圧接方法による接合工程を図8を用いて説明する。
まず、接合する2つのワークを摩擦圧接装置に装着する。具体的には、一方のワークを固定して、他方のワークを回転駆動される主軸に取り付ける。
【0004】
そして、図8に示すようにt0のタイミングにおいて主軸の回転を開始して、一定の回転数で回転させながらワーク同士を接触させる。このとき、推力付与装置により両ワークの接触面に予熱推力P0を加える(t1のタイミング)。そして、所定期間が経過したt2のタイミングで推力付与装置により両ワークの接触面に摩擦推力P1を加えると接合界面は摩擦熱により温度が上昇し、高温層が形成される。つまり、ワーク間の接合界面が軟化するためt3のタイミングで寄り代が発生する。この後、接合界面が所望の軟化状態となるt4のタイミングにて回転を急停止させつつアプセット推力P2を加える。すると、寄り代の変化量が増加し、そのまま一定時間保持させると、ワークは高温・高圧のもとで固相接合が行われる。
【0005】
また、図8において2点鎖線に示すように、主軸回転の停止タイミングを遅らせた場合では、全寄り代は増加し、点線で示すようにアプセット推力P2を加えるタイミングを遅らせた場合では、全寄り代は減少する。つまり、主軸停止遅れ時間x1やアプセット推力P2の加圧遅れ時間x2を変化させることによって、摩擦圧接時の全寄り代を変えることができる。
【0006】
次に、主軸の減速及び停止時における主軸回転数と、主軸トルクとの関係を図9を用いて説明する。
図9は、主軸を回転させるためのモータとして、例えば、インダクションモータを適用し、ワーク間の位相決めを行わない摩擦圧接方法における主軸回転数、主軸トルク、推力、寄り代の関係を示している。また、図中点線は、空運転時、つまり、両ワークを接触させない無負荷運転時における主軸回転数及び主軸トルクを示している。なお、例えば、主軸の回転が停止するt5のタイミングでアプセット推力P2を加えている。
【0007】
図9に示すように、主軸回転を一定の回転数に保持する期間では、主軸トルクは、主軸を回転させる方向(図中プラス(+)方向)に加えられる。このとき、ワーク間の接合界面における摩擦抵抗により空運転時よりも主軸トルクは大きくなる。次いで、主軸回転の減速時において、摩擦圧接時及び空運転時に拘わらず同じトルクを主軸を停止させる方向(図中マイナス(−)方向)に加えた場合では、主軸回転が減速を開始して停止するまでの時間は、空運転時の主軸停止時間Tに比べ短くなる。この理由は、ワーク間の接合界面における摩擦抵抗がブレーキ力として作用するためである。ここでの空運転時の主軸停止時間Tは、例えば、0.5秒程度である。モータの回生制動だけでなくディスクブレーキ等メカニカルなブレーキを用いることも可能である。
【0008】
このように、位相決め行なわず単なる摩擦圧接のみを行うものでは、摩擦抵抗をブレーキ力として利用して、主軸の回転を急停止させることができる。これに対し、位相合わせを必要とするワーク同士を接合する摩擦圧接方法について、図10及び図11を用いて説明する。
【0009】
図10は、主軸を回転させるためのモータとしてサーボモータを適用し、位相決めを行う摩擦圧接方法における主軸回転数、主軸トルク、推力、寄り代の関係を示している。また、図11は、主軸トルク、主軸位相、推力、寄り代の関係を示している。なお、図10は、位相決めの有無の比較を行うため、図9と同様に主軸回転をT秒後に停止するように設定し、主軸の回転が停止するt5のタイミングでアプセット推力P2を加えている。また、図10における点線は、空運転時、つまり摩擦抵抗がない場合を示している。
【0010】
図10に示すように、サーボモータによって主軸の回転がフィードバック制御され、ワーク間の位相決めが行われる。詳しくは、主軸回転の減速開始時、つまり、t4のタイミングから回転を減速させる方向(図中マイナス(−)方向)に主軸トルクが加えられる。そして、主軸回転が停止する直前では、正確な位相決めを行うとともに停止時のショックを無くすために回転数と時間との関係が、所定の指数関数となるように主軸の回転が停止される。このように、停止寸前に主軸回転を所定の減速カーブにするためワーク間の相対回転速度が低下して接合界面での発熱が減少する。このため、接合界面における新たな軟化がなくなることに加え、摩擦熱により軟化した部分が回転により接合界面から排出され滑り難くなる。つまり、接合界面における摩擦抵抗が増加する。この摩擦抵抗に対してサーボモータが目標位相に向けて動こうとするため主軸に大きなトルクが加えられる。
【0011】
このように、主軸回転の停止寸前では、ブレーキ力となる摩擦抵抗に対して主軸を加速させる方向(図中プラス(+)方向)に大きな主軸トルクが加えられる。そして、図11に示すように、t5のタイミングにてワーク間の位相が目標位相(0°)となるように位相決めが行われる。
【0012】
しかしながら実際には、高速回転(例えば、2000rpm)している主軸を0.5秒程度で急停止させるためt5のタイミングにて主軸位相が目標位相(0°)となったとしても、サーボモータの反応の遅れにより、オーバーシュートが発生してしまう。つまり、目標位相(0°)を越えて主軸が回転してしまう。このため、主軸を逆回転させるべく修正トルクが発生する。即ち、主軸トルクを図中マイナス(−)方向に加え、最終的に目標位相(0°)が達成される。
【0013】
このように、トルクを加えて位相合わせが行われるためワークはねじられた状態となっている。そして、目標位相(0°)が達成された後においても、ねじられたワーク間の位相を保持しようとマイナス(−)側に主軸トルクが加えられている。このねじられた状態でアプセット推力P2が加えられているので接合界面付近が変形しねじれによる力が緩和される。そのため、位相を保持すべくマイナス(−)方向に加えられるトルクが緩和される。そして、両ワークはマイナス(−)方向にねじられた状態で接合される。
【0014】
こうして接合されたワークが摩擦圧接装置から取り外されたときに、ねじれが戻ることで最終位相が確保される。つまり、本例の摩擦圧接方法では、ねじれの戻り量を見込んで目標位相(0°)が設定されている。
【0015】
なお、図10に示すように推力は、位相無しの場合(図9参照)と同様に主軸停止時のt5のタイミングで、アプセット推力P2が加えられているが、ワーク間に発生するねじれによってt5のタイミングよりも前に寄り代の増加量が変化する。このねじれによる寄り代の変化に伴い前述した位相決め無しの場合よりも全寄り代が増加する。なお、上述のように、位相決めを行う摩擦圧接装置として、特許文献1にて開示されているものがある。
【特許文献1】特開平09−174260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが、材料の成分等のばらつきが原因で接合界面の滑り抵抗のばらつきが生じ、摩擦抵抗が増加してしまう場合では、図11に点線で示すように主軸トルクが加わる。詳しくは、t5のタイミングでの主軸に加えられる主軸トルクが大きくなり、主軸位相におけるオーバーシュートが増加するため、修正トルクとしての主軸トルクがマイナス(−)側に急激に加えられる。すると、主軸位相が再度目標位相(0°)を越えて回転してしまう。このため、再び主軸トルクがプラス(+)側に加えられ、位相を目標位相(0°)に修正して、この状態で接合が行われる。その結果、両ワークはプラス(+)方向にねじられた状態で接合される。つまり、図11の実線のように接合されたものに対し、逆方向にねじられた状態で位相決めが終了される。このため、ワークを摩擦圧接装置から取り外したときには、このねじれがもとに戻るため、最終位相がずれてしまうことになる。また、全寄り代も増加する。
【0017】
本願発明者が、このねじれ方向の違いによる位相の違いを測定したとろ最終位相の誤差は3°となった。従って、10分単位での位相誤差しか許されない製品の接合において、上述のようにねじれ方向が逆に接合されたものは不良品となってしまう。なお、このような現象は、薄肉の管状材において、接合界面の固着が急激に行われるため特に顕著に現れる。
【0018】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、サーボモータを用いて位相決めを精度良く行うことができる摩擦圧接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載の発明は、サーボモータを用いて主軸を回転させることによって一方のワークと他方のワークとに一定の相対回転運動を付与しつつ、該一方のワークと他方のワークとを接触させて摩擦推力を付与することにより接合界面を軟化させた後に、所定の減速カーブに一致させながらワーク間の位相を目標位相とすべく前記主軸回転を減速させる摩擦圧接方法であって、前記主軸の回転が減速に移行してから停止するまでの期間において、主軸トルクを小さくするか又は前記主軸の回転方向に対して減速側に主軸トルクが加えられ、次いで、前記接合界面の摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側に主軸トルクが加えられ、その後、ワーク間の位相が前記主軸の回転方向において目標位相よりも手前側に設定された停止位相となったときに、前記主軸トルクを規制して主軸の回転を前記停止位相にて停止させることを特徴としている。
【0020】
従来の摩擦圧接方法では、停止時におけるワーク間の位相を目標位相とすべく主軸回転を所定の減速カーブにするため摩擦抵抗ブレーキ力に対し加速側に大きな主軸トルクを加える必要があった。請求項1に記載の発明によれば、摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側に主軸トルクが付与され、その後、ワーク間の位相が停止位相となったときに主軸トルクの出力が規制され、接合界面での摩擦抵抗を利用して主軸回転が停止される。
【0021】
その結果、主軸回転の停止前後において、主軸に大きな主軸トルクが加わることが防止され、接合時におけるワーク間の位相を停止位相とすることが可能となる。つまり、従来技術では、大きな主軸トルクを加えながら位置決めを行うためにワーク間のねじれ方向が逆の状態で接合されてしまう場合があったが、本方法を用いれば、大きな主軸トルクが加わることが防止されるので接合時のワーク間のねじれ方向が逆になることが確実に防止される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、サーボモータを用いて位相決めを精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、2つのワークを接合する摩擦圧接機に適用されるものであり、この摩擦圧接機の構成を図1及び図2を用いて詳述する。
【0024】
図1には、本実施の形態の摩擦圧接機1の縦断面図を示し、図2には、同摩擦圧接機1の横断面図を示す。
図1及び図2に示すように水平面上に載置された設備ベース2上に、ブラケット3により推力付与装置としてのスライド用サーボモータ4が固定されている。ボールねじ軸5の一端がスライド用サーボモータ4の回転軸にカップリング6を介して固定されるとともに、ボールねじ軸5が水平となるようにボールねじ軸5の他端がブラケット7により軸支される。設備ベース2上には直動軸受(リニアガイド)8が、ボールねじ軸5と平行に形成されており、該直動軸受8上に主軸ボックス9が摺動可能に設けられている。主軸ボックス9のアーム部9aは、ボールねじナット10及びロードセル11を介してボールねじ軸5に螺合されている。そして、スライド用サーボモータ4によりボールねじ軸5が回転駆動されることで主軸ボックス9が図2に示すY方向に摺動し、ロードセル11によってボールねじナット10と主軸ボックス9のアーム部9aとに生じる実推力が検出される。
【0025】
主軸ボックス9には主軸12が水平に軸支されており、主軸12の先端にはチャック13が設けられ、該チャック13に管状のワークW1が固定される。主軸ボックス9上には、主軸回転用サーボモータ14が固定されており、該モータ14はモータ用ギア15、アイドルギア16、主軸用ギア17を介して主軸12と駆動連結される。
【0026】
設備ベース2上においてチャック13と対向する側にはクランプ18が固定され、該クランプ18に管状のワークW2が固定される。クランプ18の後方にストッパ19が固定されている。
【0027】
また、摩擦圧接機1を構成する図示しない制御装置では、図3に示すように、CRT20とデジタルスイッチ21とからなる操作盤22がコントローラ23に接続されている。コントローラ23には、スライド用サーボドライバ(サーボアンプ)24を介して前記スライド用サーボモータ4が接続され、回転用サーボドライバ(サーボアンプ)25を介して前記主軸回転用サーボモータ14が接続されている。さらに、コントローラ23には、CRT26とCPU27とからなる品質保証装置28が接続され、長さ及び時間に関連した信号の伝達が可能となっている。品質保証装置28のCPU27には、主軸回転計29が接続され、これにより主軸12の回転(回転数、位相、トルク等)に関連した信号の伝達が可能となっている。また、回転信号を主軸回転用サーボモータ14のものを用いてもよい。さらには、前記ロードセル11は、トランスミッタ30を介してコントローラ23に接続されるとともに、トランスミッタ30が品質保証装置28のCPU27に接続され、推力(圧力)に関連した信号の伝達が可能となっている。
【0028】
なお、本実施形態で用いられる主軸回転用サーボモータ14としては、1回転、つまり、360度に対して10000パルスの信号を出力するものが用いられ、コントローラ23によって高精度の回転位置が検出される。
【0029】
次に、このように構成された本実施の形態の摩擦圧接機1による摩擦圧接方法を図4及び図5を用いて説明する。図4は、主軸回転数、推力(応力)、寄り代との関係を示している。
【0030】
まず、チャック13及びクランプ18にワークW1,W2を中心軸線を一致させながら把持する。次いで、図4に示すt0のタイミングにて主軸回転用モータ14により主軸12を回転駆動させる。そして、主軸12を一定の回転数(例えば、2000rpm)に保持しつつスライド用サーボモータ4によりボールねじ軸5を回転させて主軸ボックス9をY方向(図2参照)にスライド前進させる。なお、一定に保持する主軸12の回転数は、接合するワークW1,W2の材質や外形(パイプ材、中実材の違い、あるいは外径の違い等)により設定される。
【0031】
その後、t1のタイミングにてワークW1,W2が接触したときに、摩擦発熱工程を行うべく、ワークW1,W2の接触界面に予熱推力P0を加えて予熱送りを行う。この予熱推力P0は、接触初期に生じる過渡的なトルクの増加を低く抑え、接合面の凹凸をなじませるようにするため、摩擦推力P1よりも十分低い推力とする。そして、所定時間が経過したt2のタイミングにて摩擦推力P1を加えて接合界面に摩擦熱を生じさせる。この摩擦熱により接合界面が軟化するためt3のタイミングで寄り代が発生する。
【0032】
次いで、接合界面の軟化が所望の状態となる所定の時間が経過したt4のタイミングにてアプセット加圧工程を行うべく、主軸回転用サーボモータ14を制御して、主軸12の回転を減速して停止させる。そして、主軸が停止するt5のタイミングにてスライド用サーボモータ4によりアプセット推力P2を加えて固相接合を行う。
【0033】
ここで、主軸12の減速及び停止時における、主軸回転数、主軸トルク及び主軸位相の関係を図5を用いて詳述する。
まず、コントローラ23が所定時間(t4のタイミング)を判定すると、主軸回転用モータ14により主軸回転を減速すべく主軸トルクをマイナス(−)側に加える。ここで、主軸回転をゆっくり止める場合では、主軸トルクをマイナス(−)側にかける必要はないが、本実施形態では、例えば、2000rpmで回転しているものを0.5secで急停止させるため、マイナス(−)側に大きなトルクが加えられる。
【0034】
そして、主軸回転が低回転となると、コントローラ23は所定の減速カーブに一致させながら目標位相(0°)を目指して制御すべく接合界面の摩擦抵抗によるブレーキ力に対して回転を加速させる側(図5のプラス(+)方向)に主軸トルクが加えられる。この後、主軸回転計29からの信号に基づいてコントローラ23が、停止位相θを検出したときに、主軸回転用サーボモータ14に流れる電流値を所定の値に制限して、主軸トルクが一定の値(制限トルク)Q以上に加えられないようにする。こうして主軸12の回転を停止位相θにて停止させている。つまり、主軸12の回転停止の寸前に発生する固着トルクをブレーキ力と利用して停止位相θにて主軸回転を停止させる。
【0035】
このように、t5のタイミングまでは、従来技術と同様に主軸回転用サーボモータ14により目標位相(0°)を目指して制御されるが、停止位相角θを検出したt5のタイミングで、主軸回転用サーボモータ14による位相決め制御を停止させる。
【0036】
なお、停止位相θとしては、例えば、目標位相(0°)の5°手前で停止するように設定するとともに両ワークW1,W2を摩擦圧接装置1から取り外したときのねじれの戻り量を見込んで目標位相(0°)を設定して実施している。また、本実施形態では、図4に示すように、主軸回転が停止するt5のタイミングにて、アプセット推力P2を加えてワークW1,W2間の接合が行われる。ただし、本実施形態では、実験により制限トルクQを求めている。従って、回転停止時において接合界面でのすべりを生じさせない制限トルクQを、圧接条件等に合わせてその都度求めればよいので、アプセット推力P2を加えるタイミングは、任意のタイミングで行うことが可能である。通常、P2タイミングはt4からのタイマーであるが、主軸12の位相で行うとよりバラツキが少ない。
【0037】
そして、アプセット推力P2の付与を停止させた後に、主軸ボックス9をスライド後退させて、接合されたワークW1,W2が摩擦圧接装置1から取り外される。
以上のように、コントローラ23によりスライド用モータ4及び主軸回転用モータ14の位置指令、トルク制御及び回転速度制御が行われる。従って、接合されたワークW1,W2を摩擦圧接装置1から取り外したときに、正確な位相決めを行うことができる。ただし、材料の弾性係数のばらつきにより、ワークW1,W2を取り外したときの誤差として、例えば、15分程度の誤差が生じる。また、全寄り代としては、例えば、8ミリ程度となるように制御されている。なお、本摩擦圧接方法によるワークW1,W2の接合は、同種金属ばかりでなく、異種金属の接合においても行うことが可能である。なお、本実施形態においては、主軸規制手段として、コントローラ23が用いられ、位相検出手段として、主軸回転計29が用いられている。
【0038】
このように本実施の形態は、下記のような特徴を示す。
(1)ワークW1,W2間の位相決めを行う従来の摩擦圧接方法では、図10及び図11を用いて説明したように接合界面での摩擦抵抗が主軸回転の停止寸前で増加するため摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側(図中プラス(+)方向)に大きな主軸トルクが加えられ両ワーク間の位相が目標位相(0°)となるように主軸回転の減速及び停止が行なわれていた。
【0039】
しかしながら、本実施形態のように主軸回転の停止寸前において、摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側(図5のプラス(+)方向)に主軸トルクが付与され、さらに、ワークW1,W2間の位相が停止位相θとなったときに、コントローラ23によりサーボモータ14に流れる電流が制限される。これにより主軸トルクの出力が制限トルクQ以上に加わらないように規制される。この制限トルクQは、接合界面でのすべりを生じさせない値が設定されているため、接合界面での摩擦抵抗を利用して主軸回転の停止時の位相が停止位相θとなるように、確実に停止できる。
【0040】
その結果、主軸回転の停止寸前において、主軸12に大きな主軸トルクが加わることが防止され、接合時におけるワークW1,W2間の位相を停止位相θとすることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、図5に示すように、主軸トルクを回転させる方向(図中プラス(+)方向)に所定の制限トルクQを加えながら、接合を終了しているので、ワークW1,W2間の位相は、回転方向(プラス(+)方向)側にねじれた状態で接合される。このように、主軸回転の停止寸前において、大きな主軸トルクを加えることなく位置決めが行われるのでワークW1,W2間のねじれ方向が逆となることを確実に防止できる。このため、接合されたワークW1,W2を摩擦圧接装置1から取り外したときに、ねじれが戻ったとしても正確な位相を確保することができる。
【0042】
(2)管状のワークW1,W2を用いているので、主軸回転の減速及び停止時において接合界面が急速に固着される。つまり、接合界面における摩擦抵抗が大きくなるので、その摩擦抵抗を主軸回転の停止寸前におけるブレーキ力として積極的に利用することにより主軸12の回転を停止位相θで確実に停止することができる。
【0043】
(3)従来技術の位相決めを行う方法においては、アプセット推力P2を加えるタイミングは主軸12の停止時に限定されていたが、本実施形態では、P2のタイミングが自由となり、圧接条件の自由度が増すため、適正な圧接条件を容易に得ることができる。
【0044】
(4)従来技術のように摩擦面の抵抗に打ち勝って位相決めしないため省エネルギーとなる。従って、本摩擦圧接方法を用いれば、主軸回転用サーボモータ14の小型化が可能となる。また、同一消費電力のサーボモータ14を用いた場合では、圧接能力が向上する。つまり、大径のワーク同士の位相摩擦圧接を行うことが可能となる。
【0045】
(5)油圧によるメカ式の摩擦圧接装置を用いてワーク同士の位相決めを行うものでは、位相決め時の衝撃音(例えば、特公平8−15673号公報にて開示されている摩擦圧接装置では120〜140dBの衝撃音)が発生してしまうが、本実施形態の摩擦圧接方法によれば、位相決め時において衝撃音は発生しない。
【0046】
(6)本実施形態の摩擦圧接装置1では、回転側である主軸12側をスライド前進させて圧接が行われるので、非回転側であるクランプ18のワークW2の固定方法を自由に選択できる。
【0047】
なお、発明の実施の形態は、上記実施の形態に限定されるものではなく、下記のように実施してもよい。
・ 上記実施形態では、回転側である主軸12側がスライドするものであったが図6に示すように、非回転側がスライドする摩擦圧接機40に具体化してもよい。なお、上記実施の形態と同様の構成については同じ符号を付している。
【0048】
詳述すると、図6に示すように、直動軸受8上に摺動クランプ41が摺動可能に設けられ、摺動クランプ41がボールねじナット10及びロードセル11を介してボールねじ軸5に螺合されている。クランプ41にはストッパ42が固定され、設備ベース2上の図中右側には主軸12を軸支する主軸ボックス43が固定されている。この構成では、摺動クランプ41がスライド前進して、摺動クランプ41に固定されたワークW2と主軸12のチャック13に固定されるワークW1とが摩擦圧接される。
【0049】
従って、この摩擦圧接機40により上述した摩擦圧接方法を実行すれば、上記実施形態と同様の特徴(ただし、(6)を除く)を示す。これに加え、主軸12側が固定されるので、主軸回転用サーボモータ14の制御に必要な電気配線の取り回し等が容易となる。さらに、スライドの慣性が小さくなるので、スライドの高速化を図ることができ、実用上好ましいものとなる。
【0050】
・ 図7に示すように、両端部材の位相決めを同時にできる摩擦圧接機50において具体化してもよい。上記実施の形態と同様の構成については同じ符号を付している。
詳述すると、図7に示すように、摩擦圧接機50では、設備ベース2上の両側に、スライド用サーボモータ4、主軸回転用サーボモータ14等を各2組ずつ配設して構成している。つまり、クランプ51にワークW3を固定して、該ワークW3の両端に、ワークW1が摩擦圧接される。
【0051】
従って、この摩擦圧接機50により上述した摩擦圧接方法を実行すれば、上記実施形態と同様の特徴を示す。これに加え、両頭の部材の接合を短時間に行うことができるので単位時間当たりの生産性が向上され、実用上好ましいものとなる。
【0052】
・ 上記実施形態では、主軸トルクを規制するために主軸回転用サーボモータ14の電流制限を行うことで主軸12の回転を停止させていたが、これに限定することなく、下記のように実施してもよい。
【0053】
・ 主軸回転用サーボモータ14への電流を完全に止める(サーボオフ)ことにより主軸12を停止させる。ただしこの場合、位置制御は行えなくなるが、回転位置の検出自体は行われる。
【0054】
・ 主軸12の回転を停止させるために軸インターロックの機能を用いてよい。この機能は、インターロックをかけた軸の回転移動を禁止するもので、インターロックがかかると減速停止して、解除されると回転移動を再開するものである。
【0055】
・ 摩擦圧接機1の自動運転をリセットするようにしてもよい。この場合では、自動運転が停止され、回転移動中の主軸12は減速停止される。
・ コントローラ23からモータ14への出力パルス(回転移動指令)を出さないようにするマシンロックにて主軸12の停止を行ってもよい。
【0056】
・ トルク指令に対して所定以上のトルク出力とならないように主軸トルクの出力を飽和させて主軸12の停止を行ってもよい。つまり、その飽和値が、接合界面での摩擦抵抗よりも小さいときはその状態で平衡して、位相偏差が残ったままの状態となる。
【0057】
以上のように、要は、主軸12に大きな主軸トルクが加えられる回転停止寸前において停止位相θを検出したときに、目標位相(0°)へ位相を合わすべく制御されるサーボモータ14の位相決め機能を行わずに主軸トルクを規制して主軸回転を停止させるものであればよい。
【0058】
・ 上記実施形態では各ギア15,16,17を介して主軸回転用サーボモータ14の回転を主軸12に伝えるものであったがこれに限定せず、これらギア15,16,17を介さずにサーボモータ14により主軸12を直接回転駆動させるようにしてもよい。
【0059】
・ 上記実施形態では、所定の時間が経過したt4のタイミングにおいて、主軸回転の減速を開始する時間制御により行うものであったが、これに限定せず、ワークW1,W2の圧接時の長さに基づいて減速を開始する寸法制御にて行うものであってもよい。つまり、スライド用サーボモータ4の回転に関する情報等により寄り代を検出して、所定の寄り代となったときに主軸回転を減速開始するようにしてもよい。
【0060】
次に、前記実施形態及び別例から把握される技術的思想を、その効果とともに以下に記載する。
・ 両端部材の位相決めを同時にできる摩擦圧接機に適用される摩擦圧接方法。この摩擦圧接方法を両頭の部材の接合に適用すれば、単位時間当たりの生産性が向上され、実用上好ましいものとなる。
【0061】
・ 一方のワークと、他方のワークとに相対回転運動を付与すべく主軸を回転させる主軸回転用サーボモータと、前記ワーク間の接合界面に応力を加えるための推力付与装置と、主軸の位相を検出する位相検出手段と、前記主軸回転の停止時におけるワーク間の位相が目標位相となるように前記主軸回転用サーボモータによる主軸トルクを制御するコントローラとを備えた摩擦圧接機であって、前記主軸回転の停止寸前において、前記コントローラにより前記接合界面の摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側に主軸トルクが加えられ、さらに、前記位相検出手段により停止位相が検知されたときに、前記サーボモータによる主軸トルクの出力を規制して主軸回転を停止させる主軸規制手段を備えた摩擦圧接機。この構成によれば、主軸回転の停止寸前において、大きな主軸トルクを加えることなく、接合時のワーク間の位相を停止位相とすることが可能となる。従って、従来技術のように、大きな主軸トルクを加えながら位置決めを行うために発生するワーク間のねじれ方向が異なることが防止され、位相決めを精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態の摩擦圧接機の縦断面図。
【図2】本実施形態の摩擦圧接機の横断面図。
【図3】本実施形態の摩擦圧接機における制御装置の構成図。
【図4】本実施形態の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【図5】本実施形態の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【図6】他の実施形態の摩擦圧接機の横断面図。
【図7】他の実施形態の摩擦圧接機の横断面図。
【図8】従来の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【図9】従来の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【図10】従来の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【図11】従来の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0063】
12…主軸、14…サーボモータとしての主軸回転用サーボモータ、W1,W2…ワーク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦圧接方法に係り、特に、ワーク間に相対回転運動を付与するモータとしてサーボモータを用いて位相決めを行う摩擦圧接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワーク同士を接合する手法として摩擦圧接方法が知られている。この方法は、両ワークの接合面を摩擦接触させることによって発生する熱エネルギーを有効に利用し、さらに高い圧力(推力)を加えてワーク同士を接合する方法である。この摩擦圧接方法は、品質面、コスト面、生産性等のメリットがあるため、自動車や産業機械等に適用される量産部品を接合する方法として、特に、棒材や管材などの素材に広く用いられている。
【0003】
ここで、一般的な摩擦圧接方法による接合工程を図8を用いて説明する。
まず、接合する2つのワークを摩擦圧接装置に装着する。具体的には、一方のワークを固定して、他方のワークを回転駆動される主軸に取り付ける。
【0004】
そして、図8に示すようにt0のタイミングにおいて主軸の回転を開始して、一定の回転数で回転させながらワーク同士を接触させる。このとき、推力付与装置により両ワークの接触面に予熱推力P0を加える(t1のタイミング)。そして、所定期間が経過したt2のタイミングで推力付与装置により両ワークの接触面に摩擦推力P1を加えると接合界面は摩擦熱により温度が上昇し、高温層が形成される。つまり、ワーク間の接合界面が軟化するためt3のタイミングで寄り代が発生する。この後、接合界面が所望の軟化状態となるt4のタイミングにて回転を急停止させつつアプセット推力P2を加える。すると、寄り代の変化量が増加し、そのまま一定時間保持させると、ワークは高温・高圧のもとで固相接合が行われる。
【0005】
また、図8において2点鎖線に示すように、主軸回転の停止タイミングを遅らせた場合では、全寄り代は増加し、点線で示すようにアプセット推力P2を加えるタイミングを遅らせた場合では、全寄り代は減少する。つまり、主軸停止遅れ時間x1やアプセット推力P2の加圧遅れ時間x2を変化させることによって、摩擦圧接時の全寄り代を変えることができる。
【0006】
次に、主軸の減速及び停止時における主軸回転数と、主軸トルクとの関係を図9を用いて説明する。
図9は、主軸を回転させるためのモータとして、例えば、インダクションモータを適用し、ワーク間の位相決めを行わない摩擦圧接方法における主軸回転数、主軸トルク、推力、寄り代の関係を示している。また、図中点線は、空運転時、つまり、両ワークを接触させない無負荷運転時における主軸回転数及び主軸トルクを示している。なお、例えば、主軸の回転が停止するt5のタイミングでアプセット推力P2を加えている。
【0007】
図9に示すように、主軸回転を一定の回転数に保持する期間では、主軸トルクは、主軸を回転させる方向(図中プラス(+)方向)に加えられる。このとき、ワーク間の接合界面における摩擦抵抗により空運転時よりも主軸トルクは大きくなる。次いで、主軸回転の減速時において、摩擦圧接時及び空運転時に拘わらず同じトルクを主軸を停止させる方向(図中マイナス(−)方向)に加えた場合では、主軸回転が減速を開始して停止するまでの時間は、空運転時の主軸停止時間Tに比べ短くなる。この理由は、ワーク間の接合界面における摩擦抵抗がブレーキ力として作用するためである。ここでの空運転時の主軸停止時間Tは、例えば、0.5秒程度である。モータの回生制動だけでなくディスクブレーキ等メカニカルなブレーキを用いることも可能である。
【0008】
このように、位相決め行なわず単なる摩擦圧接のみを行うものでは、摩擦抵抗をブレーキ力として利用して、主軸の回転を急停止させることができる。これに対し、位相合わせを必要とするワーク同士を接合する摩擦圧接方法について、図10及び図11を用いて説明する。
【0009】
図10は、主軸を回転させるためのモータとしてサーボモータを適用し、位相決めを行う摩擦圧接方法における主軸回転数、主軸トルク、推力、寄り代の関係を示している。また、図11は、主軸トルク、主軸位相、推力、寄り代の関係を示している。なお、図10は、位相決めの有無の比較を行うため、図9と同様に主軸回転をT秒後に停止するように設定し、主軸の回転が停止するt5のタイミングでアプセット推力P2を加えている。また、図10における点線は、空運転時、つまり摩擦抵抗がない場合を示している。
【0010】
図10に示すように、サーボモータによって主軸の回転がフィードバック制御され、ワーク間の位相決めが行われる。詳しくは、主軸回転の減速開始時、つまり、t4のタイミングから回転を減速させる方向(図中マイナス(−)方向)に主軸トルクが加えられる。そして、主軸回転が停止する直前では、正確な位相決めを行うとともに停止時のショックを無くすために回転数と時間との関係が、所定の指数関数となるように主軸の回転が停止される。このように、停止寸前に主軸回転を所定の減速カーブにするためワーク間の相対回転速度が低下して接合界面での発熱が減少する。このため、接合界面における新たな軟化がなくなることに加え、摩擦熱により軟化した部分が回転により接合界面から排出され滑り難くなる。つまり、接合界面における摩擦抵抗が増加する。この摩擦抵抗に対してサーボモータが目標位相に向けて動こうとするため主軸に大きなトルクが加えられる。
【0011】
このように、主軸回転の停止寸前では、ブレーキ力となる摩擦抵抗に対して主軸を加速させる方向(図中プラス(+)方向)に大きな主軸トルクが加えられる。そして、図11に示すように、t5のタイミングにてワーク間の位相が目標位相(0°)となるように位相決めが行われる。
【0012】
しかしながら実際には、高速回転(例えば、2000rpm)している主軸を0.5秒程度で急停止させるためt5のタイミングにて主軸位相が目標位相(0°)となったとしても、サーボモータの反応の遅れにより、オーバーシュートが発生してしまう。つまり、目標位相(0°)を越えて主軸が回転してしまう。このため、主軸を逆回転させるべく修正トルクが発生する。即ち、主軸トルクを図中マイナス(−)方向に加え、最終的に目標位相(0°)が達成される。
【0013】
このように、トルクを加えて位相合わせが行われるためワークはねじられた状態となっている。そして、目標位相(0°)が達成された後においても、ねじられたワーク間の位相を保持しようとマイナス(−)側に主軸トルクが加えられている。このねじられた状態でアプセット推力P2が加えられているので接合界面付近が変形しねじれによる力が緩和される。そのため、位相を保持すべくマイナス(−)方向に加えられるトルクが緩和される。そして、両ワークはマイナス(−)方向にねじられた状態で接合される。
【0014】
こうして接合されたワークが摩擦圧接装置から取り外されたときに、ねじれが戻ることで最終位相が確保される。つまり、本例の摩擦圧接方法では、ねじれの戻り量を見込んで目標位相(0°)が設定されている。
【0015】
なお、図10に示すように推力は、位相無しの場合(図9参照)と同様に主軸停止時のt5のタイミングで、アプセット推力P2が加えられているが、ワーク間に発生するねじれによってt5のタイミングよりも前に寄り代の増加量が変化する。このねじれによる寄り代の変化に伴い前述した位相決め無しの場合よりも全寄り代が増加する。なお、上述のように、位相決めを行う摩擦圧接装置として、特許文献1にて開示されているものがある。
【特許文献1】特開平09−174260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが、材料の成分等のばらつきが原因で接合界面の滑り抵抗のばらつきが生じ、摩擦抵抗が増加してしまう場合では、図11に点線で示すように主軸トルクが加わる。詳しくは、t5のタイミングでの主軸に加えられる主軸トルクが大きくなり、主軸位相におけるオーバーシュートが増加するため、修正トルクとしての主軸トルクがマイナス(−)側に急激に加えられる。すると、主軸位相が再度目標位相(0°)を越えて回転してしまう。このため、再び主軸トルクがプラス(+)側に加えられ、位相を目標位相(0°)に修正して、この状態で接合が行われる。その結果、両ワークはプラス(+)方向にねじられた状態で接合される。つまり、図11の実線のように接合されたものに対し、逆方向にねじられた状態で位相決めが終了される。このため、ワークを摩擦圧接装置から取り外したときには、このねじれがもとに戻るため、最終位相がずれてしまうことになる。また、全寄り代も増加する。
【0017】
本願発明者が、このねじれ方向の違いによる位相の違いを測定したとろ最終位相の誤差は3°となった。従って、10分単位での位相誤差しか許されない製品の接合において、上述のようにねじれ方向が逆に接合されたものは不良品となってしまう。なお、このような現象は、薄肉の管状材において、接合界面の固着が急激に行われるため特に顕著に現れる。
【0018】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、サーボモータを用いて位相決めを精度良く行うことができる摩擦圧接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載の発明は、サーボモータを用いて主軸を回転させることによって一方のワークと他方のワークとに一定の相対回転運動を付与しつつ、該一方のワークと他方のワークとを接触させて摩擦推力を付与することにより接合界面を軟化させた後に、所定の減速カーブに一致させながらワーク間の位相を目標位相とすべく前記主軸回転を減速させる摩擦圧接方法であって、前記主軸の回転が減速に移行してから停止するまでの期間において、主軸トルクを小さくするか又は前記主軸の回転方向に対して減速側に主軸トルクが加えられ、次いで、前記接合界面の摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側に主軸トルクが加えられ、その後、ワーク間の位相が前記主軸の回転方向において目標位相よりも手前側に設定された停止位相となったときに、前記主軸トルクを規制して主軸の回転を前記停止位相にて停止させることを特徴としている。
【0020】
従来の摩擦圧接方法では、停止時におけるワーク間の位相を目標位相とすべく主軸回転を所定の減速カーブにするため摩擦抵抗ブレーキ力に対し加速側に大きな主軸トルクを加える必要があった。請求項1に記載の発明によれば、摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側に主軸トルクが付与され、その後、ワーク間の位相が停止位相となったときに主軸トルクの出力が規制され、接合界面での摩擦抵抗を利用して主軸回転が停止される。
【0021】
その結果、主軸回転の停止前後において、主軸に大きな主軸トルクが加わることが防止され、接合時におけるワーク間の位相を停止位相とすることが可能となる。つまり、従来技術では、大きな主軸トルクを加えながら位置決めを行うためにワーク間のねじれ方向が逆の状態で接合されてしまう場合があったが、本方法を用いれば、大きな主軸トルクが加わることが防止されるので接合時のワーク間のねじれ方向が逆になることが確実に防止される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、サーボモータを用いて位相決めを精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、2つのワークを接合する摩擦圧接機に適用されるものであり、この摩擦圧接機の構成を図1及び図2を用いて詳述する。
【0024】
図1には、本実施の形態の摩擦圧接機1の縦断面図を示し、図2には、同摩擦圧接機1の横断面図を示す。
図1及び図2に示すように水平面上に載置された設備ベース2上に、ブラケット3により推力付与装置としてのスライド用サーボモータ4が固定されている。ボールねじ軸5の一端がスライド用サーボモータ4の回転軸にカップリング6を介して固定されるとともに、ボールねじ軸5が水平となるようにボールねじ軸5の他端がブラケット7により軸支される。設備ベース2上には直動軸受(リニアガイド)8が、ボールねじ軸5と平行に形成されており、該直動軸受8上に主軸ボックス9が摺動可能に設けられている。主軸ボックス9のアーム部9aは、ボールねじナット10及びロードセル11を介してボールねじ軸5に螺合されている。そして、スライド用サーボモータ4によりボールねじ軸5が回転駆動されることで主軸ボックス9が図2に示すY方向に摺動し、ロードセル11によってボールねじナット10と主軸ボックス9のアーム部9aとに生じる実推力が検出される。
【0025】
主軸ボックス9には主軸12が水平に軸支されており、主軸12の先端にはチャック13が設けられ、該チャック13に管状のワークW1が固定される。主軸ボックス9上には、主軸回転用サーボモータ14が固定されており、該モータ14はモータ用ギア15、アイドルギア16、主軸用ギア17を介して主軸12と駆動連結される。
【0026】
設備ベース2上においてチャック13と対向する側にはクランプ18が固定され、該クランプ18に管状のワークW2が固定される。クランプ18の後方にストッパ19が固定されている。
【0027】
また、摩擦圧接機1を構成する図示しない制御装置では、図3に示すように、CRT20とデジタルスイッチ21とからなる操作盤22がコントローラ23に接続されている。コントローラ23には、スライド用サーボドライバ(サーボアンプ)24を介して前記スライド用サーボモータ4が接続され、回転用サーボドライバ(サーボアンプ)25を介して前記主軸回転用サーボモータ14が接続されている。さらに、コントローラ23には、CRT26とCPU27とからなる品質保証装置28が接続され、長さ及び時間に関連した信号の伝達が可能となっている。品質保証装置28のCPU27には、主軸回転計29が接続され、これにより主軸12の回転(回転数、位相、トルク等)に関連した信号の伝達が可能となっている。また、回転信号を主軸回転用サーボモータ14のものを用いてもよい。さらには、前記ロードセル11は、トランスミッタ30を介してコントローラ23に接続されるとともに、トランスミッタ30が品質保証装置28のCPU27に接続され、推力(圧力)に関連した信号の伝達が可能となっている。
【0028】
なお、本実施形態で用いられる主軸回転用サーボモータ14としては、1回転、つまり、360度に対して10000パルスの信号を出力するものが用いられ、コントローラ23によって高精度の回転位置が検出される。
【0029】
次に、このように構成された本実施の形態の摩擦圧接機1による摩擦圧接方法を図4及び図5を用いて説明する。図4は、主軸回転数、推力(応力)、寄り代との関係を示している。
【0030】
まず、チャック13及びクランプ18にワークW1,W2を中心軸線を一致させながら把持する。次いで、図4に示すt0のタイミングにて主軸回転用モータ14により主軸12を回転駆動させる。そして、主軸12を一定の回転数(例えば、2000rpm)に保持しつつスライド用サーボモータ4によりボールねじ軸5を回転させて主軸ボックス9をY方向(図2参照)にスライド前進させる。なお、一定に保持する主軸12の回転数は、接合するワークW1,W2の材質や外形(パイプ材、中実材の違い、あるいは外径の違い等)により設定される。
【0031】
その後、t1のタイミングにてワークW1,W2が接触したときに、摩擦発熱工程を行うべく、ワークW1,W2の接触界面に予熱推力P0を加えて予熱送りを行う。この予熱推力P0は、接触初期に生じる過渡的なトルクの増加を低く抑え、接合面の凹凸をなじませるようにするため、摩擦推力P1よりも十分低い推力とする。そして、所定時間が経過したt2のタイミングにて摩擦推力P1を加えて接合界面に摩擦熱を生じさせる。この摩擦熱により接合界面が軟化するためt3のタイミングで寄り代が発生する。
【0032】
次いで、接合界面の軟化が所望の状態となる所定の時間が経過したt4のタイミングにてアプセット加圧工程を行うべく、主軸回転用サーボモータ14を制御して、主軸12の回転を減速して停止させる。そして、主軸が停止するt5のタイミングにてスライド用サーボモータ4によりアプセット推力P2を加えて固相接合を行う。
【0033】
ここで、主軸12の減速及び停止時における、主軸回転数、主軸トルク及び主軸位相の関係を図5を用いて詳述する。
まず、コントローラ23が所定時間(t4のタイミング)を判定すると、主軸回転用モータ14により主軸回転を減速すべく主軸トルクをマイナス(−)側に加える。ここで、主軸回転をゆっくり止める場合では、主軸トルクをマイナス(−)側にかける必要はないが、本実施形態では、例えば、2000rpmで回転しているものを0.5secで急停止させるため、マイナス(−)側に大きなトルクが加えられる。
【0034】
そして、主軸回転が低回転となると、コントローラ23は所定の減速カーブに一致させながら目標位相(0°)を目指して制御すべく接合界面の摩擦抵抗によるブレーキ力に対して回転を加速させる側(図5のプラス(+)方向)に主軸トルクが加えられる。この後、主軸回転計29からの信号に基づいてコントローラ23が、停止位相θを検出したときに、主軸回転用サーボモータ14に流れる電流値を所定の値に制限して、主軸トルクが一定の値(制限トルク)Q以上に加えられないようにする。こうして主軸12の回転を停止位相θにて停止させている。つまり、主軸12の回転停止の寸前に発生する固着トルクをブレーキ力と利用して停止位相θにて主軸回転を停止させる。
【0035】
このように、t5のタイミングまでは、従来技術と同様に主軸回転用サーボモータ14により目標位相(0°)を目指して制御されるが、停止位相角θを検出したt5のタイミングで、主軸回転用サーボモータ14による位相決め制御を停止させる。
【0036】
なお、停止位相θとしては、例えば、目標位相(0°)の5°手前で停止するように設定するとともに両ワークW1,W2を摩擦圧接装置1から取り外したときのねじれの戻り量を見込んで目標位相(0°)を設定して実施している。また、本実施形態では、図4に示すように、主軸回転が停止するt5のタイミングにて、アプセット推力P2を加えてワークW1,W2間の接合が行われる。ただし、本実施形態では、実験により制限トルクQを求めている。従って、回転停止時において接合界面でのすべりを生じさせない制限トルクQを、圧接条件等に合わせてその都度求めればよいので、アプセット推力P2を加えるタイミングは、任意のタイミングで行うことが可能である。通常、P2タイミングはt4からのタイマーであるが、主軸12の位相で行うとよりバラツキが少ない。
【0037】
そして、アプセット推力P2の付与を停止させた後に、主軸ボックス9をスライド後退させて、接合されたワークW1,W2が摩擦圧接装置1から取り外される。
以上のように、コントローラ23によりスライド用モータ4及び主軸回転用モータ14の位置指令、トルク制御及び回転速度制御が行われる。従って、接合されたワークW1,W2を摩擦圧接装置1から取り外したときに、正確な位相決めを行うことができる。ただし、材料の弾性係数のばらつきにより、ワークW1,W2を取り外したときの誤差として、例えば、15分程度の誤差が生じる。また、全寄り代としては、例えば、8ミリ程度となるように制御されている。なお、本摩擦圧接方法によるワークW1,W2の接合は、同種金属ばかりでなく、異種金属の接合においても行うことが可能である。なお、本実施形態においては、主軸規制手段として、コントローラ23が用いられ、位相検出手段として、主軸回転計29が用いられている。
【0038】
このように本実施の形態は、下記のような特徴を示す。
(1)ワークW1,W2間の位相決めを行う従来の摩擦圧接方法では、図10及び図11を用いて説明したように接合界面での摩擦抵抗が主軸回転の停止寸前で増加するため摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側(図中プラス(+)方向)に大きな主軸トルクが加えられ両ワーク間の位相が目標位相(0°)となるように主軸回転の減速及び停止が行なわれていた。
【0039】
しかしながら、本実施形態のように主軸回転の停止寸前において、摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側(図5のプラス(+)方向)に主軸トルクが付与され、さらに、ワークW1,W2間の位相が停止位相θとなったときに、コントローラ23によりサーボモータ14に流れる電流が制限される。これにより主軸トルクの出力が制限トルクQ以上に加わらないように規制される。この制限トルクQは、接合界面でのすべりを生じさせない値が設定されているため、接合界面での摩擦抵抗を利用して主軸回転の停止時の位相が停止位相θとなるように、確実に停止できる。
【0040】
その結果、主軸回転の停止寸前において、主軸12に大きな主軸トルクが加わることが防止され、接合時におけるワークW1,W2間の位相を停止位相θとすることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、図5に示すように、主軸トルクを回転させる方向(図中プラス(+)方向)に所定の制限トルクQを加えながら、接合を終了しているので、ワークW1,W2間の位相は、回転方向(プラス(+)方向)側にねじれた状態で接合される。このように、主軸回転の停止寸前において、大きな主軸トルクを加えることなく位置決めが行われるのでワークW1,W2間のねじれ方向が逆となることを確実に防止できる。このため、接合されたワークW1,W2を摩擦圧接装置1から取り外したときに、ねじれが戻ったとしても正確な位相を確保することができる。
【0042】
(2)管状のワークW1,W2を用いているので、主軸回転の減速及び停止時において接合界面が急速に固着される。つまり、接合界面における摩擦抵抗が大きくなるので、その摩擦抵抗を主軸回転の停止寸前におけるブレーキ力として積極的に利用することにより主軸12の回転を停止位相θで確実に停止することができる。
【0043】
(3)従来技術の位相決めを行う方法においては、アプセット推力P2を加えるタイミングは主軸12の停止時に限定されていたが、本実施形態では、P2のタイミングが自由となり、圧接条件の自由度が増すため、適正な圧接条件を容易に得ることができる。
【0044】
(4)従来技術のように摩擦面の抵抗に打ち勝って位相決めしないため省エネルギーとなる。従って、本摩擦圧接方法を用いれば、主軸回転用サーボモータ14の小型化が可能となる。また、同一消費電力のサーボモータ14を用いた場合では、圧接能力が向上する。つまり、大径のワーク同士の位相摩擦圧接を行うことが可能となる。
【0045】
(5)油圧によるメカ式の摩擦圧接装置を用いてワーク同士の位相決めを行うものでは、位相決め時の衝撃音(例えば、特公平8−15673号公報にて開示されている摩擦圧接装置では120〜140dBの衝撃音)が発生してしまうが、本実施形態の摩擦圧接方法によれば、位相決め時において衝撃音は発生しない。
【0046】
(6)本実施形態の摩擦圧接装置1では、回転側である主軸12側をスライド前進させて圧接が行われるので、非回転側であるクランプ18のワークW2の固定方法を自由に選択できる。
【0047】
なお、発明の実施の形態は、上記実施の形態に限定されるものではなく、下記のように実施してもよい。
・ 上記実施形態では、回転側である主軸12側がスライドするものであったが図6に示すように、非回転側がスライドする摩擦圧接機40に具体化してもよい。なお、上記実施の形態と同様の構成については同じ符号を付している。
【0048】
詳述すると、図6に示すように、直動軸受8上に摺動クランプ41が摺動可能に設けられ、摺動クランプ41がボールねじナット10及びロードセル11を介してボールねじ軸5に螺合されている。クランプ41にはストッパ42が固定され、設備ベース2上の図中右側には主軸12を軸支する主軸ボックス43が固定されている。この構成では、摺動クランプ41がスライド前進して、摺動クランプ41に固定されたワークW2と主軸12のチャック13に固定されるワークW1とが摩擦圧接される。
【0049】
従って、この摩擦圧接機40により上述した摩擦圧接方法を実行すれば、上記実施形態と同様の特徴(ただし、(6)を除く)を示す。これに加え、主軸12側が固定されるので、主軸回転用サーボモータ14の制御に必要な電気配線の取り回し等が容易となる。さらに、スライドの慣性が小さくなるので、スライドの高速化を図ることができ、実用上好ましいものとなる。
【0050】
・ 図7に示すように、両端部材の位相決めを同時にできる摩擦圧接機50において具体化してもよい。上記実施の形態と同様の構成については同じ符号を付している。
詳述すると、図7に示すように、摩擦圧接機50では、設備ベース2上の両側に、スライド用サーボモータ4、主軸回転用サーボモータ14等を各2組ずつ配設して構成している。つまり、クランプ51にワークW3を固定して、該ワークW3の両端に、ワークW1が摩擦圧接される。
【0051】
従って、この摩擦圧接機50により上述した摩擦圧接方法を実行すれば、上記実施形態と同様の特徴を示す。これに加え、両頭の部材の接合を短時間に行うことができるので単位時間当たりの生産性が向上され、実用上好ましいものとなる。
【0052】
・ 上記実施形態では、主軸トルクを規制するために主軸回転用サーボモータ14の電流制限を行うことで主軸12の回転を停止させていたが、これに限定することなく、下記のように実施してもよい。
【0053】
・ 主軸回転用サーボモータ14への電流を完全に止める(サーボオフ)ことにより主軸12を停止させる。ただしこの場合、位置制御は行えなくなるが、回転位置の検出自体は行われる。
【0054】
・ 主軸12の回転を停止させるために軸インターロックの機能を用いてよい。この機能は、インターロックをかけた軸の回転移動を禁止するもので、インターロックがかかると減速停止して、解除されると回転移動を再開するものである。
【0055】
・ 摩擦圧接機1の自動運転をリセットするようにしてもよい。この場合では、自動運転が停止され、回転移動中の主軸12は減速停止される。
・ コントローラ23からモータ14への出力パルス(回転移動指令)を出さないようにするマシンロックにて主軸12の停止を行ってもよい。
【0056】
・ トルク指令に対して所定以上のトルク出力とならないように主軸トルクの出力を飽和させて主軸12の停止を行ってもよい。つまり、その飽和値が、接合界面での摩擦抵抗よりも小さいときはその状態で平衡して、位相偏差が残ったままの状態となる。
【0057】
以上のように、要は、主軸12に大きな主軸トルクが加えられる回転停止寸前において停止位相θを検出したときに、目標位相(0°)へ位相を合わすべく制御されるサーボモータ14の位相決め機能を行わずに主軸トルクを規制して主軸回転を停止させるものであればよい。
【0058】
・ 上記実施形態では各ギア15,16,17を介して主軸回転用サーボモータ14の回転を主軸12に伝えるものであったがこれに限定せず、これらギア15,16,17を介さずにサーボモータ14により主軸12を直接回転駆動させるようにしてもよい。
【0059】
・ 上記実施形態では、所定の時間が経過したt4のタイミングにおいて、主軸回転の減速を開始する時間制御により行うものであったが、これに限定せず、ワークW1,W2の圧接時の長さに基づいて減速を開始する寸法制御にて行うものであってもよい。つまり、スライド用サーボモータ4の回転に関する情報等により寄り代を検出して、所定の寄り代となったときに主軸回転を減速開始するようにしてもよい。
【0060】
次に、前記実施形態及び別例から把握される技術的思想を、その効果とともに以下に記載する。
・ 両端部材の位相決めを同時にできる摩擦圧接機に適用される摩擦圧接方法。この摩擦圧接方法を両頭の部材の接合に適用すれば、単位時間当たりの生産性が向上され、実用上好ましいものとなる。
【0061】
・ 一方のワークと、他方のワークとに相対回転運動を付与すべく主軸を回転させる主軸回転用サーボモータと、前記ワーク間の接合界面に応力を加えるための推力付与装置と、主軸の位相を検出する位相検出手段と、前記主軸回転の停止時におけるワーク間の位相が目標位相となるように前記主軸回転用サーボモータによる主軸トルクを制御するコントローラとを備えた摩擦圧接機であって、前記主軸回転の停止寸前において、前記コントローラにより前記接合界面の摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側に主軸トルクが加えられ、さらに、前記位相検出手段により停止位相が検知されたときに、前記サーボモータによる主軸トルクの出力を規制して主軸回転を停止させる主軸規制手段を備えた摩擦圧接機。この構成によれば、主軸回転の停止寸前において、大きな主軸トルクを加えることなく、接合時のワーク間の位相を停止位相とすることが可能となる。従って、従来技術のように、大きな主軸トルクを加えながら位置決めを行うために発生するワーク間のねじれ方向が異なることが防止され、位相決めを精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態の摩擦圧接機の縦断面図。
【図2】本実施形態の摩擦圧接機の横断面図。
【図3】本実施形態の摩擦圧接機における制御装置の構成図。
【図4】本実施形態の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【図5】本実施形態の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【図6】他の実施形態の摩擦圧接機の横断面図。
【図7】他の実施形態の摩擦圧接機の横断面図。
【図8】従来の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【図9】従来の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【図10】従来の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【図11】従来の摩擦圧接方法を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0063】
12…主軸、14…サーボモータとしての主軸回転用サーボモータ、W1,W2…ワーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータを用いて主軸を回転させることによって一方のワークと他方のワークとに一定の相対回転運動を付与しつつ、該一方のワークと他方のワークとを接触させて摩擦推力を付与することにより接合界面を軟化させた後に、所定の減速カーブに一致させながらワーク間の位相を目標位相とすべく前記主軸回転を減速させる摩擦圧接方法であって、
前記主軸の回転が減速に移行してから停止するまでの期間において、主軸トルクを小さくするか又は前記主軸の回転方向に対して減速側に主軸トルクが加えられ、次いで、前記接合界面の摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側に主軸トルクが加えられ、
その後、ワーク間の位相が前記主軸の回転方向において目標位相よりも手前側に設定された停止位相となったときに、前記主軸トルクを規制して主軸の回転を前記停止位相にて停止させる摩擦圧接方法。
【請求項1】
サーボモータを用いて主軸を回転させることによって一方のワークと他方のワークとに一定の相対回転運動を付与しつつ、該一方のワークと他方のワークとを接触させて摩擦推力を付与することにより接合界面を軟化させた後に、所定の減速カーブに一致させながらワーク間の位相を目標位相とすべく前記主軸回転を減速させる摩擦圧接方法であって、
前記主軸の回転が減速に移行してから停止するまでの期間において、主軸トルクを小さくするか又は前記主軸の回転方向に対して減速側に主軸トルクが加えられ、次いで、前記接合界面の摩擦抵抗によるブレーキ力に対して加速側に主軸トルクが加えられ、
その後、ワーク間の位相が前記主軸の回転方向において目標位相よりも手前側に設定された停止位相となったときに、前記主軸トルクを規制して主軸の回転を前記停止位相にて停止させる摩擦圧接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−272834(P2008−272834A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210082(P2008−210082)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【分割の表示】特願平10−252873の分割
【原出願日】平成10年9月7日(1998.9.7)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000101994)イヅミ工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【分割の表示】特願平10−252873の分割
【原出願日】平成10年9月7日(1998.9.7)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000101994)イヅミ工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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