説明

播種装置及び播種方法

【課題】 焼土からなる床土層の形成、播種、同じく焼土からなる覆土層の形成を自動的に行うことが可能で、しかも焼土を用いる効果を十分に発現し得る播種装置を提供する。
【解決手段】 床土、覆土、種子を貯留し、それぞれの成分を一定速度で供給するホッパを備えた播種装置を構成する。土に含まれる雑草の種子や病虫害の原因となる生体を、加熱により死滅させた後、当該播種装置のホッパに投入し、床土層と覆土層の形成及び播種を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畑に農作物の種子を播くための播種装置と当該播種装置を用いた播種方法に関し、特に播種後の雑草の発生や病虫害を抑制する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境の保全と食の安全確保を目的として、化学肥料や除草剤などの各種薬剤を用いない有機農業が提唱、実践されている。肥料については堆肥などを用いることで対応できるが、その他の薬剤を用いないで農作物を育成する上での問題点として、病虫害対策と除草が挙げられる。
【0003】
この対処方法として、土壌に加熱などの処理を施し、雑草の種子や病虫害の元になる生体を死滅させることが、一定の効果を奏することが知られている。このような方法の一例として、特許文献1には、病原菌、雑草の種子、害虫、草根などの混入の可能性がある土を、粉砕した上で、火力を用いて処理し、焼土とする技術が開示されている。しかし、ここに開示されているのは、土を起耕しながら焼いた後、畑に戻すという一連の工程を一つの装置で行うものであり、装置が大型化し、高価なものとなってしまう問題がある。
【0004】
また、焼土を用いる効果を確実なものにするには、播種する際に、一定の厚さで形成した焼土の層の上に種子を播き、さらに一定の厚さの焼土で種子を覆う必要があり、多くの手間を要することになる。これに対処する技術として、特許文献2には、床土、種子、覆土の供給を自動的に行うことができる播種装置が開示されている。しかしながら、当該文献には、焼土を効果的に用いる機構が必ずしも十部には開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2000−125742号公報
【特許文献2】 特開2009−095250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、焼土からなる床土層の形成、播種、同じく焼土からなる覆土層の形成を自動的に行うことが可能で、しかも焼土を用いる効果を十分に発現し得る播種装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題の解決のため、簡便に床土層の形成、播種、覆土層の形成を行うことが可能な播種装置と、焼土を効果的に使用し得る床土層及び覆土層の構成、当該構成を実現するために必要な播種装置の構造を検討した結果なされたものである。
【0008】
即ち、本発明は、床土を貯留する第一のホッパ、覆土を貯留する第二のホッパ、種子を貯留する第三のホッパ、前記3基のホッパを牽引する手段を有し、前記第一のホッパから床土を排出して一定の厚さで帯状を呈する床土層を形成する機能と、前記第三のホッパにより前記床土層の上に播種する機能と、前記第二のホッパから前記覆土を排出して、播種を施された前記床土層を一定の厚さで帯状に覆う覆土層を形成する機能とを有することを特徴とする播種装置である。
【0009】
また本発明は、前記第一のホッパの排出口が、畑土に一定の深さと幅の溝を形成する手段を有することを特徴とする、前記の播種装置である。
【0010】
前記第二のホッパには、鎮圧ローラーが設けられていることを特徴とする、前記の播種装置。
【0011】
また、本発明は、前記床土及び前記覆土に熱処理を施すことにより、雑草の種子や病原菌を含む、農作物育成の障害となる生体を死滅させた後、前記の播種装置を用いて、前記熱処理を施された床土からなる一定の厚さで帯状を呈する床土層を形成し、前記床土層の上に播種し、さらに前記熱処理を施された覆土からなる一定の厚さで帯状を呈する覆土層を形成することを特徴とする播種方法である。
【0012】
または本発明は、前記溝の深さが10〜50mm、幅が30〜100mmであることを特徴とする、前記の播種方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の播種装置には、床土の排出口の部分に、畑土に一定の深さと幅の溝を形成する手段が設けられているので、当該溝に床土層と覆土層を形成することが可能で、簡単に流出したり崩壊したりすることがない、焼土からなる床土層と覆土層が得られ、しかも二つの層の間に播種を施すことができる。
【0014】
従って、播種を施した焼土で構成される条の部分には、雑草の発芽が見られなくなり、除草は条間のみ既存の除草機を用いて行えばよく、条間より手間を要する株間の除草が不要となる。しかも、土に対して予め加熱による殺菌消毒を施しているため、病虫害の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 本発明の実施の形態に係る播種機の一例を示す図、図1(a)は側面の断面図、図1(b)は正面図。
【図2】 本発明の播種装置で形成した床土層及び覆土層の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に具体的な図に基づき、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態に係る播種装置の一例を示す図、図1(a)は側面の断面図、図1(b)は正面図である。また、図2は、本発明の播種装置で形成した床土層及び覆土層の断面を模式的に示した図である。
【0017】
図1及び図2において、1は播種装置、2は床土を貯留する第一のホッパ、3は覆土を貯留する第二のホッパ、4は種子を貯留する第三のホッパ、5は床土排出口、6は覆土排出口、7は種子排出口、8a及び8bは攪拌装置、9は畑土に溝を形成するためのブレード、10は鎮圧ローラー、11は畑土、12は床土層、13は覆土層、14は種子である。なお、図1の矢印は、播種装置1の進行方向を示す。
【0018】
本播種装置は、トラクターのような外部牽引装置により牽引され、床土排出口5の部分に設けられているブレード9により、畑土11が進行方向に対して垂直方向に掘り起こされ、溝が形成される。この溝に床土、種子、覆土の順に、それぞれのホッパから流し込んだ後に、鎮圧ローラー10により、表面をならし、図2に示したような構成とすることができる。
【0019】
また、深部に埋もれている雑草の種子は発芽が困難であることなどから、焼土を流し込む深さと幅、即ち溝の深さと幅の最適値は、経験的に、深さが10〜50mm、幅が30〜100mm程度であることを、本発明者は把握している。
【0020】
以上に説明したように本発明によれば、焼土を用いることで雑草や病虫害を抑制することが可能な、播種装置とその使用方法を提供することができ、有機農業の発展に寄与することができる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0021】
1 播種装置 2 第一のホッパ 3 第二のホッパ 4 第三のホッパ
5 床土排出口 6 覆土排出口 7 種子排出口 8a,8b 攪拌装置
9 ブレード 10 鎮圧ローラー 11 畑土 12 床土層
13 覆土層 14 種子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床土を貯留する第一のホッパ、覆土を貯留する第二のホッパ、種子を貯留する第三のホッパ、前記3基のホッパを牽引する手段を有し、前記第一のホッパから床土を排出して一定の厚さで帯状を呈する床土層を形成する機能と、前記第三のホッパにより前記床土層の上に播種する機能と、前記第二のホッパから前記覆土を排出して、播種を施された前記床土層を一定の厚さで帯状に覆う覆土層を形成する機能とを有することを特徴とする播種装置。
【請求項2】
前記第一のホッパの排出口は、畑土に一定の深さと幅の溝を形成する手段を有することを特徴とする、請求項1に記載の播種装置。
【請求項3】
前記第二のホッパには、鎮圧ローラーが設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の播種装置。
【請求項4】
前記床土及び前記覆土に熱処理を施すことにより、雑草の種子や病原菌を含む、農作物育成の障害となる生体を死滅させた後、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の播種装置を用いて、畑土に溝を形成した後、前記熱処理を施された床土からなる一定の厚さで帯状を呈する床土層を形成し、前記床土層の上に播種し、さらに前記熱処理を施された覆土からなる一定の厚さで帯状を呈する覆土層を形成することを特徴とする播種方法。
【請求項5】
前記溝は、深さが10〜50mm、幅が30〜100mmであることを特徴とする、請求項4に記載の播種方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−19501(P2011−19501A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186091(P2009−186091)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(509226059)
【Fターム(参考)】