説明

撮像素子

【課題】デジタル一眼レフカメラにおいて、TTLストロボ自動調光特性の改善を図ることができる撮像素子を得る。
【解決手段】複数の光電変換素子を備えた撮像素子において、撮像素子の受光面の略全面に、入射光束の一部を拡散反射する拡散反射層110、210、310、410、510を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル一眼レフカメラに適した撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一眼レフカメラでは、TTL方式によってストロボの自動調光を行っている。銀塩フィルムを使用する一眼レフカメラの場合は、フィルム乳剤面での拡散反射光をTTL受光素子で受光して測光することができる。近年、フィルムに代えてCCD等の撮像素子を使用したデジタル一眼レフカメラが普及している。デジタルカメラに使用される撮像素子は、撮影レンズから入射した被写体光をより効率よく光電変換素子に導くため、光電変換素子の前面にマイクロレンズを設けたものが知られている。また、ダイナミックレンジを上げるため、一部の光電変換素子と色フィルタとの間に、反射率50パーセント以下の材料により減光フィルタを設ける技術が開発されている(特許文献1)。さらに、マイクロレンズ形状の強誘電体膜の表裏を透明電極層で覆って屈折率を可変する技術も開発されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003-273338号公報
【特許文献2】特開2001-332711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、デジタル一眼レフカメラに搭載される撮像素子は通常入射側面での反射率が小さいので、TTLストロボ自動調光の際に被写体で反射したストロボ光が入射側面では殆ど反射されず、TTL受光素子に入射する被写体光量が少なく、TTL受光素子の出力がきわめて小さい。そのため、TTL受光素子の測光感度分布のピークが中央に位置せず、急峻な特性を示し、さらに撮影レンズの射出瞳位置変動に伴って出力変化が大きく発生したり、Av連動特性(実際の絞り開閉度合と出力との比例関係)も悪かった。特許文献1のように一部の光電変換素子上に減光フィルタを設ける構成では、同一距離に被写体が位置しても画面上に位置によって、被写体の形状等によってTTL受光素子の出力が大きく変化してしまう。特許文献2のようにマイクロレンズの表裏を透明電極層で覆うと、多重反射等によって、1個の光電変換素子に入射すべき光束の一部が他の光電変換素子に入射してしまい、画質が劣化してしまう。
【0004】
本発明は、かかる従来のデジタル一眼レフカメラにおけるTTLストロボ自動調光の問題に鑑みてなされたもので、TTLストロボ自動調光特性の改善を図ることができる撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決する本発明は、複数の光電変換素子を備えた撮像素子において、撮像素子の受光面の全面に、入射光束の一部を拡散反射する拡散反射層を形成したことに特徴を有する。
【0006】
実際的には、撮像素子の上記複数の光電変換素子上には色フィルタが設けられていて、上記拡散反射層は、上記色フィルタの表面に設けられた透過性材料とする。拡散反射層は、上記色フィルタの表面に設けられた、入射光束の一部を拡散反射する、撮像素子の各受光素子よりも微細な微細構造とする。この微細構造は、色フィルタの表面を加工して設けることができる。
【0007】
微細構造は、回折格子状、上記各光電変換素子の縦または横寸法よりも細かい凹部または凸部構造、上記光電変換素子の中央から周辺に向かって厚さ方向に変化のある階段状構造、上記各光電変換素子の縦および横寸法よりも小径の集光レンズの集合のいずれかによって形成できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像素子に入射する被写体光束の一部が拡散反射層で拡散反射されるので、拡散反射層で拡散反射した被写体光束を受光することで、撮像素子に入射する被写体光を正確に測光することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明を適用したCCD撮像素子の実施形態の要部を示す、水平方向に切断した断面図である。このCCD固体撮像素子は、半導体基板3内に、光電変換素子として、マトリクス状に配置された多数のホトダイオード1と、ホトダイオード1とホトダイオード1の間を垂直方向に延びる垂直転送CCDチャネル2が形成されている。半導体基板3よりも上方には、絶縁膜4を介して、垂直転送CCDチャネル2上には垂直転送電極6が形成され、ホトダイオード1上には拡散反射層7が形成されている。垂直転送電極6は、遮光幕5によって覆われ、被写体光が入射しないように遮光されている。そうしてこれらの拡散反射層7および遮光幕5を含む全面に透明な平坦化膜8が設けられ、さらにこの平坦化膜8の上に、色フィルタ9が設けられている。色フィルタ9は、赤、緑、青色のいわゆる原色フィルター、または、シアン、マゼンタ、イエローのいわゆる補色フィルターである。
【0010】
この実施形態の撮像素子をデジタル一眼レフカメラに使用すれば、各ホトダイオード1に入射する光束の一部がホトダイオード1の表面に設けた拡散反射層7で反射され、平坦化膜8および色フィルタ9から射出される。しかもホトダイオード1の表面に設けた拡散反射層7は、左右が遮光幕5によって囲まれているので、反射された光束が他のホトダイオード1に入射するおそれが無い。
【0011】
次に、本発明の他の実施形態について、図2(A)乃至(E)を参照して説明する。図2の(A)に示した第2の実施形態では、拡散反射層として、色フィルタ9上に、拡散反射層(透過性拡散材料層)110を形成したことに特徴を有する。透過性拡散材料としては、オパール、アクリルライト乳白色のように、色着きが無く、内部拡散材料のものが適している。色フィルタ9の表面に透過性拡散材料を平坦に形成すればよいので、製造が容易である。
【0012】
この第1の実施形態の撮像素子をデジタル一眼レフカメラに使用すれば、撮像素子に入射する被写体光は一部が拡散反射層110で拡散反射されるので、TTL測光素子に入射する光量が増え、かつ広い領域からの反射光がTTL測光素子に入射する。
【0013】
図2の(B)に示した第3の実施形態では、拡散反射層210として、回折格子状の、断面矩形溝部212および断面矩形突起部213を、水平方向に、所定幅、所定深さ/高さで繰り返し形成した。矩形溝部212、矩形突起部213の幅は、各ホトダイオード1の縦、横寸法よりも狭く、図示実施例ではホトダイオード1の幅の約1/4の幅程度としてあるが、さらに幅狭に形成してもよく、矩形溝部212、矩形突起部213の幅を異ならせてもよい。矩形溝部212および矩形突起部213は垂直方向に延びているが、水平方向に延びる矩形溝部212および矩形突起部213としてもよい。また、矩形溝部212を縦横に形成してもよい。
【0014】
この第3の実施形態の撮像素子をデジタル一眼レフカメラに使用すれば、拡散反射層210に向かう被写体光は、一部が矩形突起部213の表面213aで反射され、矩形溝部212に入射した被写体光束の一部は、矩形溝部212の底面212aだけでなく、矩形溝部212および矩形突起部213共通の側面214で複数回反射されて矩形溝部212から射出される。
【0015】
このように第3の実施形態によれば、受光面全域に亘る拡散反射層210によって被写体光の一部が略均等分布で反射されるで、TTL測光素子に入射する光量が増え、かつ広い領域からの反射光がTTL測光素子に入射する。
【0016】
図2の(C)に示した第4の実施形態の拡散反射層310は、厚さ方向に変化をつけたものであって、各ホトダイオード1の境界からホトダイオード1の中央に向かってステップ311を積み重ねて、ホトダイオード1の中央が最も高く(厚く)なるように厚さ方向に変化を持たせた形状に形成してある。ステップ311の幅、ステップ311の厚さ(段差)は任意である。このステップ311は、受光面に対して縦(垂直)方向または横(水平)方向の一方向にのみ延びた、二辺方向に厚さが変化する形状でもよいが、ホトダイオード1の4辺方向に厚さが減ずるピラミッド形状に形成してもよい。
【0017】
図2の(D)に示した第5の実施形態の拡散反射層410は、表面に微細構造として凸レンズ面411を形成してある。各凸レンズ面411の径はホトダイオード1の横および縦寸法よりも小さく設定されている。この凸レンズ面411は、垂直方向または水平方向に延びるシリンドリカル面状に形成してもよく、あるいは垂直水平方向に曲率を有するように形成してもよい。
【0018】
図2の(E)に示した第6の実施形態は、拡散反射層510を色フィルタ9自体に形成したことに特徴を有する。この拡散反射層510は、色フィルタ9の表面に微細構造として形成された、微細な凹凸からなる。この構成によれば、部材を増やさずに済み、かつ色フィルタ9を形成する工程で製造できるので工程も少なくて済む。
【0019】
これらの実施形態によれば、撮像素子に入射した被写体光束の一部が拡散反射層7、110、210、310、410、510で乱反射する。この撮像素子を一眼レフカメラに搭載すれば、TTL受光素子に入射する光量が増え、TTLストロボ調光特性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用するCCD撮像素子の横断面図を示す図である。
【図2】(A)、(B)、(C)、(D)、(E)は本発明を適用したCCD撮像素子の第1、第2、第3、第4、第5の実施形態の概要を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ホトダイオード
2 垂直転送CCDチャネル
3 半導体基板
4 絶縁膜
5 遮光幕
6 垂直転送電極
7 拡散反射層
8 平坦化膜
9 色フィルタ
110 拡散反射層
210 拡散反射層
212 矩形溝部
212a 底面
213 矩形突起部
310 拡散反射層
311 ステップ
410 拡散反射層
411 凸レンズ面
510 拡散反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光電変換素子を備えた撮像素子において、
撮像素子の受光面の略全面に、入射光束の一部を拡散反射する拡散反射層を形成したことを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
請求項1記載の撮像素子は上記複数の光電変換素子上に色フィルタが設けられていて、上記拡散反射層は、上記色フィルタの表面に設けられた透過性材料からなる撮像素子。
【請求項3】
請求項1記載の撮像素子は上記複数の光電変換素子上に色フィルタが設けられていて、拡散反射層は、上記色フィルタの表面に設けられた、入射光束の一部を拡散反射する、撮像素子の各受光素子よりも微細な微細構造である撮像素子。
【請求項4】
請求項1記載の撮像素子は上記複数の光電変換素子上に色フィルタが設けられていて、拡散反射層は、色フィルタの表面に形成された、入射光束の一部を拡散反射する微細構造である撮像素子。
【請求項5】
請求項3または4記載の撮像素子において、上記微細構造は、回折格子状である撮像素子。
【請求項6】
請求項3または4記載の撮像素子において、上記微細構造は、上記各光電変換素子の縦または横寸法よりも細かい凹部または凸部構造である撮像素子。
【請求項7】
請求項3または4記載の撮像素子において、上記微細構造は、上記光電変換素子の中央から周辺に向かって厚さ方向に変化のある階段状構造である撮像素子。
【請求項8】
請求項3または4記載の撮像素子において、上記微細構造は、上記各光電変換素子の縦および横寸法よりも小径の集光レンズの集合である撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−344709(P2006−344709A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167825(P2005−167825)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】