説明

撮像装置のゴミ取り装置

【課題】撮像装置を保持する姿勢に対応してゴミ取り動作における可動部の移動方向を制御するゴミ取り装置を提供する。
【解決手段】撮像装置のゴミ取り装置は、撮像素子を有する可動部を備える。重力方向に対する撮像装置の保持姿勢を特定するための情報を検出する検出部を備える。可動部を、撮像素子の撮像面に入射する光学像を結像させる撮像光学系の光軸に垂直な第1、第2方向に平行な平面上を移動制御する制御部を備える。制御部は、ゴミ取り動作として、保持姿勢に基づいて、可動部を、第1、第2方向の一方に移動させて、可動部の移動範囲端に衝突させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置におけるゴミ取り装置に関し、ゴミ取り動作による機構の破損を抑制するゴミ取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラなどの撮像装置において、撮像素子又はそのカバーに付着した埃などのゴミを除去する装置が提案されている。
【0003】
特許文献1は、撮像素子を含む可動部を移動範囲端に衝突させて、その衝撃により撮像素子又はそのカバーに付着する埃などのゴミを除去する装置を開示する。
【特許文献1】特開2005−340988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の装置では、撮像装置を保持する姿勢が横位置であっても縦位置であっても、可動部をゴミ取りのために移動させる方向は変わらない。
【0005】
したがって本発明の目的は、撮像装置を保持する姿勢に対応してゴミ取り動作における可動部の移動方向を制御するゴミ取り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る撮像装置のゴミ取り装置は、撮像素子を有する可動部と、重力方向に対する撮像装置の保持姿勢を特定するための情報を検出する検出部と、可動部を、撮像素子の撮像面に入射する光学像を結像させる撮像光学系の光軸に垂直な第1、第2方向に平行な平面上を移動制御する制御部とを備え、制御部は、ゴミ取り動作として、保持姿勢に基づいて、可動部を、第1、第2方向の一方に移動させて、可動部の移動範囲端に衝突させる。
【0007】
好ましくは、検出部は、撮像装置の傾きを検出する傾斜センサである。
【0008】
また、好ましくは、制御部は、ゴミ取り動作として、可動部を移動範囲の中で移動範囲端に接触しない特定位置に移動させ、保持姿勢に基づいて、可動部の特定位置の第1、第2方向の他方の位置を同じ状態に保ったまま、第1、第2方向の一方に移動させて、可動部の前記移動範囲端に衝突させる。
【0009】
さらに好ましくは、特定位置は、移動範囲の中心である。
【0010】
また、好ましくは、可動部の第1、第2方向の一方に移動させることによる可動部の移動範囲端への衝突は、第1、第2方向の一方の移動範囲端の一方に対して2回、他方に対して1回、交互に行われる。
【0011】
また、好ましくは、制御部は、像ブレ補正処理のために可動部を移動範囲の中で移動制御し、像ブレ補正処理を開始する前に、ゴミ取り動作を行う。
【0012】
また、好ましくは、保持姿勢は、横位置で且つ撮像装置の上面が上を向く第1横位置状態、横位置で且つ撮像装置の底面が上を向く第2横位置状態、縦位置で且つ撮像装置の正面から見た左側面が上を向く第1縦位置状態、及び縦位置で且つ撮像装置の正面から見た右側面が上を向く第2縦位置状態のいずれかの状態である。
【0013】
さらに好ましくは、撮像装置の正面や背面が上を向いた状態の場合は、第1、第2横位置状態、第1、第2縦位置状態のいずれかの状態であるとしてゴミ取り動作が行われる。
【0014】
また、好ましくは、第1、第2横位置状態のいずれかである場合には、制御部は、ゴミ取り動作として、可動部を、第2方向に移動させて、可動部の移動範囲端に衝突させ、第1、第2縦位置状態のいずれかである場合には、制御部は、ゴミ取り動作として、可動部を、第1方向に移動させて、可動部の移動範囲端に衝突させる。
【0015】
また、好ましくは、第1、第2方向の一方は、第1、第2方向の他方に比べて重力方向と成す角が小さい。
【0016】
また、好ましくは、第1方向と、第2方向は直交し、撮像素子の撮像面は、移動制御が行われない状態において、第1方向に平行な辺と、第2方向に平行な辺で構成される四角形形状を有する。
【0017】
本発明に係る撮像装置のゴミ取り装置は、撮像素子を有する可動部と、重力方向に対する撮像装置の保持姿勢を特定するための情報を検出する検出部と、可動部を、平面上を移動制御する制御部とを備え、制御部は、ゴミ取り動作として、保持姿勢に基づいて、可動部を、平面上で且つ重力方向と成す角が最も小さい方向に移動させて、可動部の移動範囲端に衝突させる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、ゴミ取り動作による機構の破損を抑制するゴミ取り装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する。撮像装置1は、デジタルカメラであるとして説明する。なお、方向を説明するために、撮像素子の撮像面に入射する光学像を結像させる撮像光学系(撮影レンズ67など)の光軸LXと直交する第1方向x、第1方向x及び光軸LXと直交する第2方向y、光軸LXと平行な第3方向zを定義する。
【0020】
但し、第1方向xと第2方向yは直交する関係でなくても良い。
【0021】
撮像装置1の撮像に関する部分は、主電源のオンオフ切り替えを行うPonボタン11、レリーズボタン13、像ブレ補正ボタン14、傾斜センサ16、LCDモニタ17、ミラー絞りシャッタ部18、DSP19、CPU21、AE部23、AF部24、像ブレ補正部30の撮像部39a、及び撮影レンズ67から構成される(図1〜3参照)。
【0022】
Ponボタン11の押下に対応してPonスイッチ11aのオンオフ状態が切り替えられ、これにより撮像装置1の主電源のオンオフ状態が切り替えられる。被写体像は、撮像部39aによって撮影レンズ67を介した光学像として撮像され、LCDモニタ17によって撮像された画像が表示される。また被写体像は光学ファインダ(不図示)によって光学的に観察することも可能である。
【0023】
また、Ponボタン11の押下に対応して、撮像装置1の主電源がオン状態にされると、傾斜センサ16による傾き検出が行われ、その後、第1時間(220ms)の間、ゴミ取り動作が行われる。
【0024】
レリーズボタン13は、半押しすることにより測光スイッチ12aがオン状態にされ測光や測距及び合焦動作が行われ、全押しすることによりレリーズスイッチ13aがオン状態にされ撮像部39a(撮像手段)による撮像(撮像動作)が行われ、撮影像がメモリされる。
【0025】
傾斜センサ16は、CPU21のポートP8と接続され、撮像装置1の傾き(重力方向と、第1方向x、第2方向yとの成す角)を検出し、High電圧信号出力やLow電圧信号出力を使ってCPU21に傾きに関する情報を出力する。CPU21は、検出した傾きに関する情報に基づいて撮像装置1が保持される姿勢(重力方向に対する撮像装置1の保持姿勢)を特定する。
【0026】
撮像装置1が保持される姿勢は、横位置で且つ撮像装置1の上面(第2方向yで且つ正方向)が上を向く第1横位置状態(図1、図2参照)、横位置で且つ撮像装置1の底面(第2方向yで且つ負方向)が上を向く第2横位置状態、縦位置で且つ撮像装置1の正面から見た左側面(第1方向xで且つ正方向)が上を向く第1縦位置状態、及び縦位置で且つ撮像装置1の正面から見た右側面(第1方向xで且つ負方向)が上を向く第2縦位置状態のいずれかの状態に特定される。
【0027】
本実施形態では、撮像装置1の正面や背面が上を向いた状態など、第1、第2横位置状態、第1、第2縦位置状態のいずれにも該当しない場合は、横位置状態にあるものとしてゴミ取り動作が行われる。この場合は、可動部30aを移動させて移動範囲端に衝突させる際に重力加速度の影響は殆ど加わらないため、縦位置状態にあるものとしてゴミ取り動作を行う形態であっても良い。
【0028】
傾斜センサ16による撮像装置1の傾きの検出は、撮像装置1の電源がオン状態にされた直後であって、ゴミ取り動作が行われる前に行われる(図4のステップS13参照)。検出された傾きに基づいて傾斜センサ16とCPU21により特定された撮像装置1が保持される姿勢は、ゴミ取り動作における可動部30aの移動方向の決定に使用される。
【0029】
ミラー絞りシャッタ部18は、CPU21のポートP7と接続され、レリーズスイッチ13aのオン状態に連動して、ミラーのUP/DOWN、絞りの開閉(閉開)、及びシャッタの開閉動作を行う。
【0030】
DSP19は、CPU21のポートP9、及び撮像部39aと接続され、CPU21の指示に基づいて、撮像部39aにおける撮像により得られた画像信号について、画像処理などの演算処理を行う。
【0031】
CPU21は、撮像に関する各部の制御、後述する像ブレ補正に関する各部の制御を行う制御手段である。また、CPU21は、後述する補正モードか否かを判断する像ブレ補正パラメータISの値、レリーズ状態管理パラメータRP、ゴミ取り状態管理パラメータGP、及びゴミ取り時間計測パラメータCNTの値をメモリする。
【0032】
レリーズ状態管理パラメータRPは、レリーズシーケンス動作に連動して値が切り替えられ、レリーズシーケンス動作中に値が1に設定され(図4のステップS24〜S31参照)、レリーズシーケンス動作終了の時に値が0に設定される(図4のステップS13、S32参照)。
【0033】
ゴミ取り状態管理パラメータGPは、ゴミ取り動作が完了したか否かを示すパラメータで、撮像装置1がオン状態にされた直後(第1時間(220ms)が経過するまで)は、ゴミ取り動作が完了していないとして、値が1に設定され(図4のステップS14参照)、撮像装置1がオン状態にされてから第1時間(220ms)が経過すると、ゴミ取り動作が完了したとして、値が0に設定される(図4のステップS16参照)。
【0034】
ゴミ取り時間計測パラメータCNTは、ゴミ取り動作が行われている時間を計測するために使用され、初期値が0で、ゴミ取り動作が行われている間、1ms経過するごとに1だけ値が加算される(図7のステップS71参照)。
【0035】
CPU21は、像ブレ補正処理前のゴミ取り動作として、可動部30aを特定位置(本実施形態では移動範囲中心:第1方向x、及び第2方向yの座標値が共に0)に移動させる(センタリング処理、図7のステップS77参照)。その後、第1方向x、第2方向yの他方の座標を一定に保った状態で、可動部30aを第1方向x、第2方向yの一方に移動させて、可動部30aの移動範囲端の一方に衝突するように移動させ(図9のステップS100、S108参照)、次に、第1方向x、第2方向yの他方の座標を一定に保った状態で、可動部30aを第1方向x、第2方向yの一方に移動させて、可動部30aの移動範囲端の他方に衝突するように移動させ(図9のステップS99、S107参照)、最後に、第1方向x、第2方向yの他方の座標を一定に保った状態で、可動部30aを第1方向x、第2方向yの一方に移動させて、可動部30aの移動範囲端の一方に衝突するように移動させる(図9のステップS95、S103参照)。可動部30aの移動範囲端との衝突の衝撃で、可動部30aの撮像部39a(撮像素子やローパスフィルタ)に付着した埃などのゴミが除去される。ゴミ取り動作の完了後、像ブレ補正処理が開始される。
【0036】
ゴミ取り動作として、可動部30aが移動範囲端に移動せしめられる方向は、撮像装置1が保持された姿勢(方向)に基づいて決定される。すなわち、撮像装置1を保持する姿勢に基づき、重力方向に近い第1方向x、第2方向yの一方(第1方向x、第2方向yのうち重力方向と成す角が小さい方)に可動部30aを移動させ、重力方向と垂直な方向に近い第1方向x、第2方向yの他方(第1方向x、第2方向yのうち重力方向と成す角が大きい方)は固定する。具体的には、第1、第2横位置状態の場合は、第1方向xの座標を一定に保った状態で、可動部30aを第2方向yに移動させ、第1、第2縦位置状態の場合は、第2方向yの座標を一定に保った状態で、可動部30aを第1方向xに移動させる。これにより、重力方向に近い第2方向yで且つ下向きに可動部30aを移動させて移動範囲端に衝突させる際に重力加速度の影響を加えることが出来、衝撃力を増し、重力加速度の影響を受けない場合に比べてよりゴミの除去が確実に行われる。
【0037】
また、CPU21は、後述する第1、第2デジタル角速度信号Vx、Vy、第1、第2デジタル角速度VVx、VVy、第1、第2デジタル角度Bx、By、位置Sの第1方向x成分Sx、第2方向y成分Sy、第1駆動力Dx、第2駆動力Dy、A/D変換後の位置Pの第1方向x成分pdx、第2方向y成分pdy、第1、第2減算値ex、ey、第1、第2比例係数Kx、Ky、像ブレ補正処理のサンプリング周期θ、第1、第2積分係数Tix、Tiy、及び第1、第2微分係数Tdx、Tdyをメモリする。
【0038】
AE部23は、被写体の測光動作を実行して露光値を演算し、この露光値に基づき撮影に必要となる絞り値及び露光時間を演算する。AF部24は、測距を行い、この測距結果に基づき撮影レンズ67を光軸方向に変位させ焦点調節を行う。
【0039】
撮像装置1の像ブレ補正装置すなわち像ブレ補正に関する部分は、像ブレ補正ボタン14、LCDモニタ17、CPU21、角速度検出部25、駆動用ドライバ回路29、像ブレ補正部30、磁界変化検出素子の信号処理回路としてのホール素子信号処理回路45、及び撮影レンズ67から構成される。
【0040】
像ブレ補正ボタン14は、押下することにより像ブレ補正スイッチ14aがオン状態にされ、測光など他の動作と独立して、第2時間ごとに、角速度検出部25、及び像ブレ補正部30が駆動されて像ブレ補正処理が行われる。像ブレ補正スイッチ14aがオン状態にされた補正モードの場合に像ブレ補正パラメータISが1に設定され、像ブレ補正スイッチ14aがオフ状態にされた補正モードでない場合に像ブレ補正パラメータISが0に設定する。本実施形態ではこの第2時間を1msであるとして説明する。
【0041】
これらのスイッチの入力信号に対応する各種の出力はCPU21によって制御される。測光スイッチ12a、レリーズスイッチ13a、像ブレ補正スイッチ14aのオン/オフ情報は、それぞれ1ビットのデジタル信号としてCPU21のP12、P13、P14に入力される。AE部23、AF部24、LCDモニタ17は、それぞれポートP4、P5、P6で信号の入出力が行われる。
【0042】
次に、角速度検出部25、駆動用ドライバ回路29、像ブレ補正部30、ホール素子信号処理回路45についての詳細、及びCPU21との入出力関係について説明する。
【0043】
角速度検出部25は、第1、第2角速度センサ26a、26b、第1、第2ハイパスフィルタ回路27a、27b、及び第1、第2アンプ28a、28bを有する。第1、第2角速度センサ26a、26bは、撮像装置1の第1方向x(第2方向yに平行な軸周りのヨーイング)及び第2方向y(第1方向xに平行な軸周りのピッチング)の角速度を検出する。第1角速度センサ26aは、第1方向xの角速度(ヨーイング角速度)を、第2角速度センサ26bは第2方向yの角速度(ピッチング角速度)を検出するジャイロセンサである。第1、第2ハイパスフィルタ回路27a、27bは、第1、第2角速度センサ26a、26bからの出力のヌル電圧やパンニングである低周波成分をカットする(アナログハイパスフィルタ処理)。第1、第2アンプ28a、28bは、低周波成分がカットされた角速度に関する信号を増幅し、第1、第2角速度vx、vyとしてアナログ信号をCPU21のA/D0、A/D1に入力する。
【0044】
低周波成分のカットは、第1、第2ハイパスフィルタ回路27a、27bにおけるアナログハイパスフィルタ処理、及びCPU21におけるデジタルハイパスフィルタ処理が行われる。後段のデジタルハイパスフィルタ処理においては、アナログハイパスフィルタ処理におけるカットオフ周波数以上のカットオフ周波数が設定される。後段のデジタルハイパスフィルタ処理では、時定数(第1、第2ハイパスフィルタ時定数hx、hy)の値の変更が、容易に行えるメリットを有する。
【0045】
CPU21、及び角速度検出部25の各部への電力供給は、Ponスイッチ11aがオン状態にされた(主電源がオン状態にされた)後に開始される。角速度検出部25におけるブレ量検出演算は、Ponスイッチ11aがオン状態にされた(主電源がオン状態にされた)後であって、傾斜センサ16による傾き検出、及びゴミ取り動作完了後に開始される。
【0046】
CPU21は、A/D0、A/D1に入力された第1、第2角速度vx、vyをA/D変換し(第1、第2デジタル角速度信号Vx、Vy)、ヌル電圧やパンニングである低周波成分をカットし(デジタルハイパスフィルタ処理、第1、第2デジタル角速度VVx、VVy)、及び積分演算を行い、像ブレ量(像ブレ角度)を求める(第1、第2デジタル角度Bx、By)。従って、角速度検出部25とCPU21は、像ブレ量演算機能を有する。
【0047】
nは、0以上の整数であり、タイマ割り込み処理開始(t=0、図4のステップS11参照)から、最新のタイマ割り込み処理を行った時点(t=n)までの時間(ms)を示す。
【0048】
第1方向xに関するデジタルハイパスフィルタ処理は、第1デジタル角速度信号Vxを、第2時間(1ms)前までのタイマ割り込み処理で求められた第1デジタル角速度VVx〜VVxn―1の和ΣVVxn−1を第1ハイパスフィルタ時定数hxで割ったもので減算して、第1デジタル角速度VVxを求めることにより行われる(VVx=Vx―(ΣVVxn−1)/hx、図6の(1)参照)。第2方向yに関するデジタルハイパスフィルタ処理は、第2デジタル角速度信号Vyを、第2時間(1ms)前までのタイマ割り込み処理で求められた第2デジタル角速度VVy〜VVyn―1の和ΣVVyn−1を第2ハイパスフィルタ時定数hyで割ったもので減算して、第2デジタル角速度VVyを求めることにより行われる(VVy=Vy―(ΣVVyn−1)/hy)。
【0049】
本実施形態では、タイマ割り込み処理における角速度検出処理は、角速度検出部25における処理、及び角速度検出部25からCPU21への第1、第2角速度vx、vyの入力処理を言うものとする。
【0050】
第1方向xに関する積分演算処理は、タイマ割り込み処理開始(t=0、図4のステップS11参照)から、最新の時点(t=n)の第1デジタル角速度VVx〜VVxの和を求めることにより行われる(Bx=ΣVVx、図6の(3)参照)。第2方向yに関する積分演算処理は、タイマ割り込み処理開始後から最新の第2デジタル角速度VVy〜VVyの和を求めることにより行われる(By=ΣVVy)。
【0051】
CPU21は、演算により求められた像ブレ量(像ブレ角度:第1、第2デジタル角度Bx、By)に応じた撮像部39aの移動すべき位置Sを、焦点距離などを考慮した位置変換係数zzに基づいて、第1方向x、第2方向yごとに演算し設定する。位置Sの第1方向x成分をSx、第2方向y成分をSyとする。撮像部39aを含む可動部30aの移動は、後述する電磁力によって行われる。可動部30aをこの位置Sまで移動させるために駆動用ドライバ回路29を介して第1駆動用コイル31aを駆動する駆動力Dの第1方向x成分を第1駆動力Dx(D/A変換後は第1PWMデューティdx)、第2駆動用コイル32aを駆動する第2方向y成分を第2駆動力Dy(D/A変換後は第2PWMデューティdy)とする。
【0052】
但し、像ブレ補正処理前のゴミ取り動作の為の第1時間(220ms)の間の移動すべき位置S(Sx、Sy)は、像ブレ量と関連しない演算で求められた値が設定される(図9のステップS96、S104参照)。
【0053】
第1方向xに関する位置設定演算処理は、最新の第1デジタル角度Bxに第1位置変換係数zxを乗算することにより求められる(位置Sの第1方向x成分Sx=zx×Bx、図6の(3)参照)。第2方向yに関する位置設定演算処理は、最新の第2デジタル角度Byに第2位置変換係数zyを乗算することにより求められる(位置Sの第2方向y成分Sy=zy×By)。
【0054】
像ブレ補正部30は、露光時間内であって、像ブレ補正処理を行う場合(IS=1)に、CPU21が演算した移動すべき位置Sに撮像部39aを移動させることによって、ブレによって生じた被写体像の結像面におけるずれを無くし、被写体像と結像面位置を一定に保ち、像ブレを補正する像ブレ補正処理を行う装置であり、撮像部39aを含みxy平面上に移動可能領域をもつ可動部30aと、可動部30aの移動範囲端を形成する固定部30bとを備える。露光時間内であって、像ブレ補正処理を行わない場合(IS=0)は、可動部30aは、特定位置(本実施形態では移動範囲中心)に固定される。撮像装置1の電源がオン状態にされた直後の第1時間(220ms)の間は、可動部30aを移動範囲中心に移動、及び第1方向x、第2方向yのいずれかの移動範囲端に移動(衝突)せしめるための駆動が行われる。撮像装置1の電源がオン状態にされた直後の第1時間(220ms)の間と露光時間以外は、可動部30aの駆動は行われない。
【0055】
像ブレ補正部30は、駆動オフ状態で可動部30aを固定する機構を有しない。
【0056】
像ブレ補正部30の可動部30aの駆動(特定位置への固定を含む)は、CPU21のPWM0から第1PWMデューティdx、PWM1から第2PWMデューティdyの出力を受けた駆動用ドライバ回路29を介して、駆動手段に含まれる駆動用コイル部、駆動用磁石部による電磁力によって行われる(図6の(5)参照)。可動部30aの移動前または移動後の位置Pはホール素子部44a、ホール素子信号処理回路45によって検出される。検出された位置Pの情報は、第1検出位置信号pxが第1方向x成分として、第2検出位置信号pyが第2方向y成分としてそれぞれCPU21のA/D2、A/D3に入力される(図6の(2)参照)。第1、第2検出位置信号px、pyはA/D2、A/D3を介してA/D変換される。第1、第2検出位置信号px、pyに対してA/D変換後の位置Pの第1方向x成分、第2方向y成分をそれぞれpdx、pdyとする。検出された位置P(pdx、pdy)のデータと移動すべき位置S(Sx、Sy)のデータによりPID制御(第1、第2駆動力Dx、Dyの算出)が行われる。
【0057】
第1駆動力Dxは、位置Sの第1方向x成分Sxを、A/D変換後の位置Pの第1方向x成分pdxで減算した第1減算値ex、第1比例係数Kx、サンプリング周期θ、第1積分係数Tix、第1微分係数Tdxに基づいて算出される(Dx=Kx×{ex+θ÷Tix×Σex+Tdx÷θ×(ex―exn−1)}、図6の(4)参照)。
【0058】
第2駆動力Dyは、位置Sの第2方向y成分Syを、A/D変換後の位置Pの第2方向y成分pdyで減算した第2減算値ey、第2比例係数Ky、サンプリング周期θ、第2積分係数Tiy、第2微分係数Tdyに基づいて算出される(Dy=Ky×{ey+θ÷Tiy×Σey+Tdy÷θ×(ey―eyn−1)})。
【0059】
サンプリング周期θの値は、第2時間:1msに設定される。
【0060】
像ブレ補正処理すなわちPID制御による像ブレ補正に対応した移動すべき位置S(Sx、Sy)への可動部30aの駆動は、像ブレ補正スイッチ14aがオン状態にされた補正モード(IS=1)の時に行われる。像ブレ補正パラメータISが0の時には、可動部30aは、像ブレ補正処理に対応しない特定位置へのPID制御が行われ、移動中心位置に移動せしめられる。
【0061】
撮像装置1がオン状態にされた後、像ブレ補正処理が開始されるまでの間の、ゴミ取り処理動作の間は、可動部30aは、移動中心位置、第1方向xと第2方向yの一方の移動範囲端の一方、第1方向xと第2方向yの一方の移動範囲端の他方、第1方向xと第2方向yの一方の移動範囲端の一方の順に移動せしめられる。この間、可動部30aの第1方向xと第2方向yの他方の座標は中心位置に保持される。
【0062】
可動部30aは、駆動用コイル部として2つの第1、第2駆動用コイル31a、32a、撮像素子を有する撮像部39a、及び磁界変化検出素子部としてのホール素子部44aを有する。本実施形態では、撮像素子がCCDであるとして説明するが、CMOSなど他の撮像素子であってもよい。
【0063】
撮像素子の撮像面は、移動制御が行われない状態において、第1方向x、または第2方向yに平行な辺を有し、第1方向xの辺が第2方向yの辺よりも長い矩形形状を有する。但し、第2方向yの長さが、第1方向xの長さよりも長い形態であってもよい。
【0064】
固定部30bは、駆動用磁石部として2つの第1、第2位置検出及び駆動用磁石411b、412b、第1、第2位置検出及び駆動用ヨーク431b、432bを有する。
【0065】
固定部30bは、可動部30aを第1方向x、第2方向yに移動自在に支持する。
【0066】
固定部30bは、移動により可動部30aが接触する部分(移動範囲端)に衝撃を吸収する緩衝材を有する。緩衝材は、ゴミ取り動作において、可動部30aが移動範囲端に衝突せしめられる際に可動部30aと接触し、衝撃により可動部30aなどが破損せず、且つ衝撃により可動部30aに付着したゴミが除去できる程度の硬度が設定される。
【0067】
緩衝材は、可動部30aに取り付けられても良い。
【0068】
撮像素子の撮像範囲を最大限活用して像ブレ補正を行うために、撮影レンズ67の光軸LXが撮像素子の中心近傍を通る位置関係にある時に、第1方向x、第2方向yともに可動部30aが移動範囲の中心に位置する(移動中心位置にある)ように可動部30aと固定部30bの位置関係を設定する。撮像素子の中心とは、撮像素子の撮像面を形成する矩形が有する2つの対角線の交点をいう。
【0069】
可動部30aには、シート状でかつ渦巻き状のコイルパターンが形成された第1、第2駆動用コイル31a、32a、及びホール素子部44aとが取り付けられている。第1駆動用コイル31aのコイルパターンは、第1駆動用コイル31aの電流の方向と第1位置検出及び駆動用磁石411bの磁界の向きから生じる電磁力により第1駆動用コイル31aを含む可動部30aを第1方向xに移動させるべく、第2方向yと平行な線分を有する。第2駆動用コイル32aのコイルパターンは、第2駆動用コイル32aの電流の方向と第2位置検出及び駆動用磁石412bの磁界の向きから生じる電磁力により第2駆動用コイル32aを含む可動部30aを第2方向yに移動させるべく、第1方向xと平行な線分を有する。ホール素子部44aについては後述する。
【0070】
第1、第2駆動用コイル31a、32aは、フレキシブル基板(不図示)を介してこれらを駆動する駆動用ドライバ回路29と接続される。駆動用ドライバ回路29は、CPU21のPWM0、PWM1から第1、第2PWMデューティdx、dyのそれぞれが入力される。駆動用ドライバ回路29は、入力された第1、第2PWMデューティdx、dyの値に応じて第1、第2駆動用コイル31a、32aに電力を供給し、可動部30aを駆動する。
【0071】
第1位置検出及び駆動用磁石411bは、第1駆動用コイル31a及び水平方向ホール素子hh10と対向するように固定部30bの可動部30a側に取り付けられる。第2位置検出及び駆動用磁石412bは、第2駆動用コイル32a及び鉛直方向ホール素子hv10と対向するように固定部30bの可動部30a側に取り付けられる。
【0072】
第1位置検出及び駆動用磁石411bは、第3方向zにおいて固定部30b上で且つ可動部30a側に取り付けられた第1位置検出及び駆動用ヨーク431bの上であって、第1方向xにN極とS極が並べて取り付けられる。
【0073】
第2位置検出及び駆動用磁石412bは、第3方向zにおいて固定部30b上で且つ可動部30a側に取り付けられた第2位置検出及び駆動用ヨーク432bの上であって、第2方向yにN極とS極が並べて取り付けられる。
【0074】
第1位置検出及び駆動用ヨーク431bは、軟磁性体材料で構成され、固定部30b上に取り付けられる。第1位置検出及び駆動用ヨーク431bは、第1位置検出及び駆動用磁石411bの磁界が周囲に漏れないようにする役目、及び第1位置検出及び駆動用磁石411bと第1駆動用コイル31a、及び第1位置検出及び駆動用磁石411bと水平方向ホール素子hh10との間の磁束密度を高める役目を果たす。
【0075】
第2位置検出及び駆動用ヨーク432bは、軟磁性体材料で構成され、固定部30b上に取り付けられる。第2位置検出及び駆動用ヨーク432bは、第2位置検出及び駆動用磁石412bの磁界が周囲に漏れないようにする役目、及び第2位置検出及び駆動用磁石412bと第2駆動用コイル32a、及び第2位置検出及び駆動用磁石412bと鉛直方向ホール素子hv10との間の磁束密度を高める役目を果たす。
【0076】
ホール素子部44aは、ホール効果を利用した磁電変換素子であるホール素子を2つ有し、可動部30aの第1方向x、第2方向yの現在位置P(第1検出位置信号px、第2検出位置信号py)を検出する1軸ホール素子である。2つのホール素子のうち第1方向xの位置検出用のホール素子を水平方向ホール素子hh10、第2方向yの位置検出用のホール素子を鉛直方向ホール素子hv10とする。
【0077】
水平方向ホール素子hh10は、第3方向zから見て可動部30a上であって、固定部30bの第1位置検出及び駆動用磁石411bと対向する位置に取り付けられる。鉛直方向ホール素子hv10は、第3方向zから見て可動部30a上であって、固定部30bの第2位置検出及び駆動用磁石412bと対向する位置に取り付けられる。
【0078】
直線的な変化量を使って精度の高い位置検出が行える範囲を最大限活用して位置検出を行うため、水平方向ホール素子hh10の第1方向xの位置は、撮像素子の中心近傍が光軸LXを通る位置関係にある時に、第1位置検出及び駆動用磁石411bのN極、S極と等距離近傍にあるのが望ましい。同様に、鉛直方向ホール素子hv10の第2方向yの位置は、撮像素子の中心近傍が光軸LXを通る位置関係にある時に、第2位置検出及び駆動用磁石412bのN極、S極と等距離近傍にあるのが望ましい。
【0079】
ホール素子信号処理回路45は、水平方向ホール素子hh10の出力信号から水平方向ホール素子hh10における出力端子間の水平方向電位差x10を検出し、これから第1方向xの位置を特定する第1検出位置信号pxをCPU21のA/D2に出力する第1ホール素子信号処理回路450と、鉛直方向ホール素子hv10の出力信号から、鉛直方向ホール素子hv10における出力端子間の鉛直方向電位差y10を検出し、これから第2方向yの位置を特定する第2検出位置信号pyをCPU21のA/D3に出力する第2ホール素子信号処理回路460とを有する。
【0080】
次に、撮像装置1のメイン動作について図4のフローチャートで説明する。
【0081】
撮像装置1の電源がオンにされると、ステップS10で、角速度検出部25に電力が供給され、電源オン状態にされる。ステップS11で、第2時間(1ms)間隔でタイマ割り込み処理が開始される。ステップS12で、レリーズ状態管理パラメータRPの値が0に設定される。タイマの割り込み処理の詳細については、図5のフローチャートを使って後述する。
【0082】
ステップS13で、傾斜センサ16によって、撮像装置1の傾きが検出され、CPU21によって、検出した傾きに関する情報に基づいて撮像装置1が保持される姿勢(第1、第2横位置状態、第1、第2縦位置状態のいずれの状態にあるか)を特定する。
【0083】
ステップS14で、ゴミ取り状態管理パラメータGPの値が1に設定され、ゴミ取り時間計測パラメータCNTの値が0に設定される。ステップS15で、ゴミ取り時間計測パラメータCNTの値が220を超えたか否かが判断される。超えていない場合は、ステップS15が繰り返され、超えた場合は、ステップS16に進められる。ステップS16で、ゴミ取り状態管理パラメータGPの値が0に設定される。
【0084】
ステップS17で、測光スイッチ12aがオン状態にされているか否かが判断される。オン状態にされていない場合は、ステップS17が繰り返され、オン状態にされている場合は、ステップS18に進められる。
【0085】
ステップS18で、像ブレ補正スイッチ14aがオン状態にされたか否かが判断される。像ブレ補正スイッチ14aがオン状態にされていない場合は、ステップS19で、像ブレ補正パラメータISの値が0に設定される。像ブレ補正スイッチ14aがオン状態にされている場合は、ステップS20で、像ブレ補正パラメータISの値が1に設定される。
【0086】
ステップS21で、AE部23のAEセンサ駆動により測光が行われ、絞り値や露光時間が演算される。ステップS22で、AF部24のAFセンサが駆動され測距が行われ、AF部24のレンズ制御回路駆動により合焦動作が行われる。
【0087】
ステップS23で、レリーズスイッチ13aがオン状態にされたか否かが判断される。レリーズスイッチ13aがオン状態にされていない場合には、ステップS17に戻される(ステップS17〜22を繰り返す)。レリーズスイッチ13aがオン状態にされている場合は、ステップS24に進められ、レリーズシーケンス動作が開始される。
【0088】
ステップS24で、レリーズ状態管理パラメータRPの値が1に設定される。ステップS25で、ミラー絞りシャッタ部18により、ミラーアップ動作、及び絞りの絞り込み動作が行われる。ステップS26で、ミラー絞りシャッタ部18により、シャッタ開動作(先幕動作)が行われる。
【0089】
ステップS27で、CCDの電荷蓄積すなわち露光が行われる。露光時間終了後、ステップS28で、ミラー絞りシャッタ部18により、シャッタ閉動作(後幕動作)、ミラーダウン動作、及び絞り開放動作が行われる。ステップS29で、CCD入力、すなわち露光時間内の間CCDに蓄積された電荷が移動せしめられる。ステップS30で、CPU21とDSP19との間で通信が行われ、移動された電荷に基づいて画像処理が行われ、画像処理された画像が撮像装置1内の映像メモリに記憶される。ステップS31で、記憶された画像信号は、LCDモニタ17によって表示される。ステップS32で、レリーズ状態管理パラメータRPの値が0に設定され、レリーズシーケンス動作が完了する。その後、ステップS17に戻される(次の撮像動作が可能な状態にされる)。
【0090】
次に、図4のステップS11で開始され、第2時間(1ms)間隔で行われるタイマ割り込み処理について図5のフローチャートを用いて説明する。タイマ割り込み処理が開始されると、ステップS50で、ゴミ取り状態管理パラメータGPの値が1に設定されているか否かが判断される。1に設定されている場合はステップS51に進められ、1に設定されていない(GP=0)場合は、ステップS52に進められる。
【0091】
ステップS51で、ゴミ取り動作が行われる。ゴミ取り動作の詳細については、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0092】
ステップS52で、角速度検出部25から出力された第1、第2角速度vx、vyが、CPU21のA/D0、A/D1を介しA/D変換され入力される(第1、第2デジタル角速度信号Vx、Vy、角速度検出処理)。第1、第2デジタル角速度信号Vx、Vyは、ヌル電圧やパンニングである低周波成分がカットされる(第1、第2デジタル角速度VVx、VVy、デジタルハイパスフィルタ処理)。
【0093】
ステップS53で、レリーズ状態管理パラメータRPの値が1に設定されているか否かが判断される。1に設定されていない場合は、ステップS54で、可動部30aの駆動がオフ状態、すなわちコイルをつかった可動部30aへの駆動制御が行われない状態にされる。1に設定されている場合はステップS55に進められる。
【0094】
ステップS55で、ホール素子部44aで位置検出され、ホール素子信号処理回路45で演算された第1、第2検出位置信号px、pyがCPU21のA/D2、A/D3を介しA/D変換され入力され、現在位置P(pdx、pdy)が求められる。
【0095】
ステップS56で、像ブレ補正パラメータISの値が0か否かが判断される。IS=0すなわち補正モードでない場合は、ステップS57で、可動部30aの移動すべき位置S(Sx、Sy)が可動部30aの移動中心位置と同じに設定される。IS=1すなわち補正モードの場合は、ステップS58で、ステップS52で求めた第1、第2角速度vx、vyから可動部30aの移動すべき位置S(Sx、Sy)が演算され設定される。
【0096】
ステップS59で、ステップS57、またはS58で設定した位置S(Sx、Sy)と現在位置P(pdx、pdy)より可動部30aの移動に必要な駆動力Dすなわち第1、第2駆動用コイル31a、32aを駆動するのに必要な第1駆動力Dx(第1PWMデューティdx)、第2駆動力Dy(第2PWMデューティdy)が演算される。ステップS60で第1、第2PWMデューティdx、dyにより駆動用ドライバ回路29を介し第1、第2駆動用コイル31a、32aが駆動され可動部30aが移動せしめられる。ステップS59、S60の動作は、一般的な比例、積分、微分演算を行うPID自動制御で用いられる自動制御演算である。
【0097】
次に、図5のステップS51で開始されるゴミ取り動作について図7のフローチャートを用いて説明する。ゴミ取り動作が開始されると、ステップS71で、ゴミ取り時間計測パラメータCNTの値が1だけ加算される。ステップS72で、ホール素子部44aで位置検出され、ホール素子信号処理回路45で演算された第1、第2検出位置信号px、pyがCPU21のA/D2、A/D3を介しA/D変換され入力され、現在位置P(pdx、pdy)が求められる。
【0098】
ステップS73で、ゴミ取り時間計測パラメータCNTの値が65以下であるか否かが判断される。65以下である場合はステップS77に進められ、65以下でない場合はステップS74に進められる。
【0099】
ステップS74で、ゴミ取り時間計測パラメータCNTの値が215以下であるか否かが判断される。215以下である場合はステップS76に進められ、215以下でない場合はステップS75に進められる。
【0100】
ステップS75で、可動部30aの駆動がオフ状態、すなわちコイルをつかった可動部30aへの駆動制御が行われない状態にされる。
【0101】
ステップS76で、ゴミ取り動作のための可動部30aの駆動が行われる。駆動の詳細については、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0102】
ステップS77で、可動部30aの移動すべき位置S(Sx、Sy)が可動部30aの移動中心位置と同じに設定される。ステップS78で、ステップS77で設定した位置S(Sx、Sy)と現在位置P(pdx、pdy)より可動部30aの移動に必要な駆動力Dすなわち第1、第2駆動用コイル31a、32aを駆動するのに必要な第1駆動力Dx(第1PWMデューティdx)、第2駆動力Dy(第2PWMデューティdy)が演算される。ステップS79で第1、第2PWMデューティdx、dyにより駆動用ドライバ回路29を介し第1、第2駆動用コイル31a、32aが駆動され可動部30aが移動せしめられる。
【0103】
次に、図7のステップS76で開始されるゴミ取り動作のための可動部30aの駆動について図9のフローチャートを用いて説明する。ゴミ取り動作のための可動部30aの駆動が開始されると、ステップS91で、傾斜センサ16による検出結果に基づいて、撮像装置1が保持される姿勢が、第1、第2横位置状態のいずれかにあるか否かが判断される。第1、第2横位置状態のいずれでもない場合は、ステップS92に進められ、第1、第2横位置状態のいずれかである場合は、ステップS101に進められる。
【0104】
ステップS92で、傾斜センサ16による検出結果に基づいて、撮像装置1が保持される姿勢が、第1、第2縦位置状態のいずれかにあるか否かが判断される。第1、第2縦位置状態のいずれでもない場合は、ステップS101に進められ、第1、第2縦位置状態のいずれかである場合は、ステップS93に進められる。
【0105】
ステップS93で、ゴミ取り時間計測パラメータCNTの値が115以下であるか否かが判断される。115以下である場合はステップS100に進められ、115以下でない場合はステップS94に進められる。
【0106】
ステップS94で、ゴミ取り時間計測パラメータCNTの値が165以下であるか否かが判断される。165以下である場合はステップS99に進められ、165以下でない場合はステップS95に進められる。
【0107】
ステップS95、及びステップS100で、第1PWMデューティdxの値が、−DDに設定される。また、ステップS99で、第1PWMデューティdxの値が+DDに設定される。|DD|の値は、可動部30aを第1方向xに移動させて、可動部30aの移動範囲端に衝突させた場合に、衝撃により撮像素子などに付着したゴミの除去が出来る程度の可動部30aの衝突時の第1方向xの加速度を実現する値に設定される。
【0108】
ステップS96で、可動部30aの移動すべき位置Sの第2方向y成分:Syが可動部30aの第2方向yの移動中心位置と同じに設定される。ステップS97で、ステップS96で設定した位置Sの第2方向y成分:Syと現在位置Pの第2方向y成分:pdyより可動部30aの第2方向yの移動(中心固定)に必要な駆動力Dすなわち第2駆動用コイル32aを駆動するのに必要な第2駆動力Dy(第2PWMデューティdy)が演算される。ステップS98で、第1、第2PWMデューティdx、dyにより駆動用ドライバ回路29を介し第1、第2駆動用コイル31a、32aが駆動され可動部30aが移動せしめられる。
【0109】
撮像装置1の電源がオン状態にされた後、像ブレ補正動作が開始されるまでの間に、撮像素子を含む可動部30aを、一旦移動範囲中心に移動させた後、第2方向yの位置を移動範囲中心に保持したまま、第1方向xの移動範囲端の一方と他方に衝突させる。衝突による衝撃により、撮像素子やローパスフィルタに付着したゴミが除去される。ゴミ取り動作の間、可動部30aの第2方向yの位置は移動範囲中心に保持されるため、可動部30aの第1方向xの移動の際に、可動部30aの第2方向yの端部が、第2方向yの移動範囲端に触れることはなく、可動部30aや固定部30bを傷つけることはない。
【0110】
可動部30aが、第1方向xの移動範囲端のいずれか一方に衝突する際には、重力方向に近い方向に移動するため、重力加速度の影響により、第1方向xの移動範囲端のいずれか他方に衝突する場合に比べて衝撃力を強めることが可能になり、ゴミ除去を効果的に行うことが可能になる。
【0111】
ステップS101で、ゴミ取り時間計測パラメータCNTの値が115以下であるか否かが判断される。115以下である場合はステップS108に進められ、115以下でない場合はステップS102に進められる。
【0112】
ステップS102で、ゴミ取り時間計測パラメータCNTの値が165以下であるか否かが判断される。165以下である場合はステップS107に進められ、165以下でない場合はステップS103に進められる。
【0113】
ステップS103、及びステップS108で、第2PWMデューティdyの値が、−DDに設定される。また、ステップS107で、第2PWMデューティdyの値が+DDに設定される。|DD|の値は、可動部30aを第2方向yに移動させて、可動部30aの移動範囲端に衝突させた場合に、衝撃により撮像素子などに付着したゴミの除去が出来る程度の可動部30aの衝突時の第2方向yの加速度を実現する値に設定される。
【0114】
ステップS104で、可動部30aの移動すべき位置Sの第1方向x成分:Sxが可動部30aの第1方向xの移動中心位置と同じに設定される。ステップS105で、ステップS104で設定した位置Sの第1方向x成分:Sxと現在位置Pの第1方向x成分:pdxより可動部30aの第1方向xの移動(中心固定)に必要な駆動力Dすなわち第1駆動用コイル31aを駆動するのに必要な第1駆動力Dx(第1PWMデューティdx)が演算される。ステップS106で、第1、第2PWMデューティdx、dyにより駆動用ドライバ回路29を介し第1、第2駆動用コイル31a、32aが駆動され可動部30aが移動せしめられる。
【0115】
撮像装置1の電源がオン状態にされた後、像ブレ補正動作が開始されるまでの間に、撮像素子を含む可動部30aを、一旦移動範囲中心に移動させた後、第1方向xの位置を移動範囲中心に保持したまま、第2方向yの移動範囲端の一方と他方に衝突させる(図8参照)。衝突による衝撃により、撮像素子やローパスフィルタに付着したゴミが除去される。ゴミ取り動作の間、可動部30aの第1方向xの位置は移動範囲中心に保持されるため、可動部30aの第2方向yの移動の際に、可動部30aの第1方向xの端部が、第1方向xの移動範囲端に触れることはなく、可動部30aや固定部30bを傷つけることはない。
【0116】
可動部30aが、第2方向yの移動範囲端のいずれか一方に衝突する際には、重力方向に近い方向に移動するため、重力加速度の影響により、第2方向yの移動範囲端のいずれか他方に衝突する場合に比べて衝撃力を強めることが可能になり、ゴミ除去を効果的に行うことが可能になる。
【0117】
また、ゴミ取り動作のための可動部30aの移動方向は、第1方向x、第2方向yに限られず、第1方向x及び第2方向yに平行な平面上で且つ重力方向と成す角が最も小さい方向に移動させる制御を行っても良い。この場合、保持姿勢から、重力方向と撮像装置1との関係を特定し、可動部30aを重力方向と成す角が最も小さい方向と垂直な方向の座標を一定に保ったまま、重力方向と成す角が最も小さい方向に移動させて移動範囲端に衝突させる。
【0118】
また、ゴミ取り動作の最初に、可動部30aを移動させる位置は移動範囲中心に限らず、可動部30aが移動範囲端のいずれかに接触しない位置であればよい。
【0119】
また、撮像装置1の保持姿勢を特定するために傾斜センサ16を用いる形態を説明したが、保持姿勢の特定は、傾斜センサに限られない。例えば、可動部30aを第1方向xの両方、及び第2方向yの両方に移動可能な状態で、可動部30aの駆動を一定期間オフ状態にし重力方向に移動させ、一定期間の間に可動部30aが移動した方向に基づいて撮像装置1の保持姿勢を特定する形態であってもよい。
【0120】
また、磁界変化検出素子としてホール素子を利用したホール素子部44aによる位置検出を説明したが、磁界変化検出素子として別の検出素子を利用してもよい。具体的には、磁界の変化を検出することにより可動部の位置検出情報を求めることが可能なMIセンサ(高周波キャリア型磁界センサ)、または磁気共鳴型磁界検出素子、MR素子(磁気抵抗効果素子)であり、ホール素子を利用した本実施形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本実施形態における撮像装置の外観を示す背面からみた斜視図である。
【図2】撮像装置の正面図である。
【図3】撮像装置の回路構成図である。
【図4】撮像装置のメイン動作処理を示すフローチャートである。
【図5】割り込み処理を示すフローチャートである。
【図6】像ブレ補正処理における各手順の演算式を示す図である。
【図7】ゴミ取り動作を示すフローチャートである。
【図8】ゴミ取り動作における可動部の移動軌跡を示す図である。
【図9】ゴミ取り動作のための可動部の駆動の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0122】
1 撮像装置
11 Ponボタン
12a 測光スイッチ
13 レリーズボタン
13a レリーズスイッチ
14 像ブレ補正ボタン
14a 像ブレ補正スイッチ
16 傾斜センサ
17 LCDモニタ
18 ミラー絞りシャッタ部
19 DSP
21 CPU
23 AE部
24 AF部
25 角速度検出部
26a、26b 第1、第2角速度センサ
27a、27b 第1、第2ハイパスフィルタ回路
28a、28b 第1、第2アンプ回路
29 駆動用ドライバ回路
30 像ブレ補正部
30a 可動部
30b 固定部
31a、32a 第1、第2駆動用コイル
39a 撮像部
411b、412b 第1、第2位置検出及び駆動用磁石
431b、432b 第1、第2位置検出及び駆動用ヨーク
44a ホール素子部
45 ホール素子信号処理回路
67 撮影レンズ
Bx、By 第1、第2デジタル角度位置
CNT ゴミ取り時間計測パラメータ
dx、dy 第1、第2PWMデューティ
Dx、Dy 第1、第2駆動力
ex、ey 第1、第2減算値
GP ゴミ取り状態管理パラメータGP
hh10 水平方向ホール素子
hv10 鉛直方向ホール素子
hx、hy 第1、第2ハイパスフィルタ時定数
Kx、Ky 第1、第2比例係数
LX 撮影レンズの光軸
pdx A/D変換後の位置Pの第1方向x成分
pdy A/D変換後の位置Pの第2方向y成分
PPx、PPy 第1、第2現在位置パラメータ
px、py 第1、第2検出位置信号
RP レリーズ状態管理パラメータ
Sxの第1方向x成分
Syの第2方向y成分
Tdx、Tdy 第1、第2微分係数
Tix、Tiy 第1、第2積分係数
vx、vy 第1、第2角速度
Vx、Vy 第1、第2デジタル角速度信号
VVx、VVy 第1、第2デジタル角速度
θ サンプリング周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を有する可動部と、
重力方向に対する撮像装置の保持姿勢を特定するための情報を検出する検出部と、
前記可動部を、前記撮像素子の撮像面に入射する光学像を結像させる撮像光学系の光軸に垂直な第1、第2方向に平行な平面上を移動制御する制御部とを備え、
前記制御部は、ゴミ取り動作として、前記保持姿勢に基づいて、前記可動部を、前記第1、第2方向の一方に移動させて、前記可動部の移動範囲端に衝突させることを特徴とする前記撮像装置のゴミ取り装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記撮像装置の傾きを検出する傾斜センサであることを特徴とする請求項1に記載のゴミ取り装置。
【請求項3】
前記制御部は、ゴミ取り動作として、前記可動部を移動範囲の中で前記移動範囲端に接触しない特定位置に移動させ、前記保持姿勢に基づいて、前記可動部の前記特定位置の前記第1、第2方向の他方の位置を同じ状態に保ったまま、前記第1、第2方向の一方に移動させて、前記可動部の前記移動範囲端に衝突させることを特徴とする請求項1に記載のゴミ取り装置。
【請求項4】
前記特定位置は、前記移動範囲の中心であることを特徴とする請求項3に記載のゴミ取り装置。
【請求項5】
前記可動部の前記第1、第2方向の一方に移動させることによる前記可動部の前記移動範囲端への衝突は、前記第1、第2方向の一方の前記移動範囲端の一方に対して2回、他方に対して1回、交互に行われることを特徴とする請求項1に記載のゴミ取り装置。
【請求項6】
前記制御部は、像ブレ補正処理のために前記可動部を前記移動範囲の中で移動制御し、前記像ブレ補正処理を開始する前に、前記ゴミ取り動作を行うことを特徴とする請求項1に記載のゴミ取り装置。
【請求項7】
前記保持姿勢は、横位置で且つ前記撮像装置の上面が上を向く第1横位置状態、前記横位置で且つ前記撮像装置の底面が上を向く第2横位置状態、縦位置で且つ前記撮像装置の正面から見た左側面が上を向く第1縦位置状態、及び前記縦位置で且つ前記撮像装置の正面から見た右側面が上を向く第2縦位置状態のいずれかの状態であることを特徴とする請求項1に記載のゴミ取り装置。
【請求項8】
前記撮像装置の正面や背面が上を向いた状態の場合は、前記第1、第2横位置状態、前記第1、第2縦位置状態のいずれかの状態であるとして前記ゴミ取り動作が行われることを特徴とする請求項7に記載のゴミ取り装置。
【請求項9】
前記第1、第2横位置状態のいずれかである場合には、前記制御部は、前記ゴミ取り動作として、前記可動部を、前記第2方向に移動させて、前記可動部の前記移動範囲端に衝突させ、
前記第1、第2縦位置状態のいずれかである場合には、前記制御部は、前記ゴミ取り動作として、前記可動部を、前記第1方向に移動させて、前記可動部の前記移動範囲端に衝突させることを特徴とする請求項7に記載のゴミ取り装置。
【請求項10】
前記第1、第2方向の一方は、前記第1、第2方向の他方に比べて重力方向と成す角が小さいことを特徴とする請求項1に記載のゴミ取り装置。
【請求項11】
前記第1方向と、前記第2方向は直交し、
前記撮像素子の撮像面は、前記移動制御が行われない状態において、前記第1方向に平行な辺と、前記第2方向に平行な辺で構成される四角形形状を有することを特徴とする請求項1に記載のゴミ取り装置。
【請求項12】
撮像素子を有する可動部と、
重力方向に対する撮像装置の保持姿勢を特定するための情報を検出する検出部と、
前記可動部を、平面上を移動制御する制御部とを備え、
前記制御部は、ゴミ取り動作として、前記保持姿勢に基づいて、前記可動部を、前記平面上で且つ前記重力方向と成す角が最も小さい方向に移動させて、前記可動部の移動範囲端に衝突させることを特徴とする前記撮像装置のゴミ取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−98863(P2008−98863A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276872(P2006−276872)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】