説明

撮像装置

【課題】比較的小さな絞り値による本撮影画像に関しても、ぼけ具合を確認することが可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置1は、撮影光学系3からの光束であって主反射面61で反射された光束である観察用光束を受光して画像信号を生成する撮像素子7と、撮像素子7による撮影画像に対して、ぼかしフィルタ処理を施す画像処理手段と、ぼかしフィルタ処理が施された撮影画像を表示する表示手段12とを備える。画像処理手段は、撮影画像内の各位置におけるデフォーカス量と本撮影露光時における撮影光学系の絞り値とに応じて、撮影画像内の各位置におけるぼかしフィルタの強度を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラなどの撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置において、撮影時における絞り値に応じたプレビュー画像を確認する技術として、特許文献1等に記載の技術が存在する。
【0003】
特許文献1においては、絞り込みスイッチが操作された場合に、絞りを絞り込んだ状態の画像をプレビュー表示する技術が記載されている。なお、詳細には、撮像素子からの出力信号の増幅率を増大すること、あるいは、撮像素子での電荷蓄積時間を増大することにより、撮影画像の明るさを調整することも記載されている。
【0004】
また、一眼レフレックスタイプのカメラ(一眼レフカメラとも称する)において、ライブビュー機能(被写体に関する時系列の画像を順次に液晶表示部等に表示する機能、換言すれば被写体の画像を動画的態様で液晶表示部等に表示する機能)を搭載する技術が存在する。このような技術におけるライブビュー画像は、本撮影用の撮像素子とは別に設けられた撮像素子によって撮影されて取得される。
【0005】
【特許文献1】特開2006−270426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ポートレート撮影などにおいては、絞りを開放側に設定し被写界深度を浅くして主被写体以外の被写体を意図的にぼかした画像が撮影されることがある。
【0007】
上述のような一眼レフカメラにおいて、このような本撮影画像におけるぼけ具合を確認できることが好ましい。
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術は、比較的大きな絞り値を用いる場合(絞りを絞り込む場合)には利用可能であるが、比較的小さな絞り値を用いる場合に利用できない。すなわち、特許文献1の技術を利用するとしても、比較的小さな絞り値による明るい画像に関してぼけ具合を確認することはできない。
【0009】
また特に、一眼レフカメラにおけるファインダ光学系における開放F値(撮影レンズの絞りが開放された状態でのF値)は、一般的に比較的大きい。そのため、当該ファインダ光学系における被写体像(観察用光束)をライブビュー用の撮像素子で受光して得られるライブビュー画像は、比較的大きなF値に対応する画像である。したがって、ファインダ光学系の開放F値よりも小さな開放F値を有する比較的明るい撮影レンズを用いた撮影状況を再現することは非常に困難である。
【0010】
そこで、この発明の課題は、比較的小さな絞り値による本撮影画像に関して、ぼけ具合を確認することが可能な撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、撮像装置であって、撮影光学系からの光束であって主反射面で反射された光束である観察用光束を受光して画像信号を生成する撮像素子と、前記撮像素子による撮影画像に対して、ぼかしフィルタ処理を施す画像処理手段と、前記ぼかしフィルタ処理が施された前記撮影画像を表示する表示手段とを備え、前記画像処理手段は、前記撮影画像内の各位置におけるデフォーカス量と本撮影露光時における前記撮影光学系の絞り値とに応じて、前記撮影画像内の各位置におけるぼかしフィルタの強度を変更するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、比較的小さな絞り値による本撮影画像に関して、ぼけ具合を確認することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
<1.構成概要>
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置1の外観構成を示す図である。ここで、図1は、撮像装置1の正面外観図であり、図2は、撮像装置1の背面外観図である。この撮像装置1は、レンズ交換式一眼レフレックスタイプのデジタルカメラとして構成されている。
【0015】
図1に示すように、撮像装置1は、カメラ本体部(カメラボディ)2を備えている。このカメラ本体部2に対して、交換式の撮影レンズユニット(交換レンズ)3が着脱可能である。
【0016】
撮影レンズユニット3は、主として、鏡胴36、ならびに、鏡胴36の内部に設けられるレンズ群37(図3参照)及び絞り等によって構成される。レンズ群37(撮影光学系)には、光軸方向に移動することによって焦点位置を変更するフォーカスレンズ等が含まれている。
【0017】
カメラ本体部2は、撮影レンズユニット3が装着される円環状のマウント部Mtを正面略中央に備え、撮影レンズユニット3を着脱するための着脱ボタン89を円環状のマウント部Mt付近に備えている。
【0018】
また、カメラ本体部2は、その正面左上部にモード設定ダイヤル82を備えている。モード設定ダイヤル82を操作することによれば、カメラの各種モード(各種撮影モード(人物撮影モード、風景撮影モード、およびフルオート撮影モード等)、撮影した画像を再生する再生モード、および外部機器との間でデータ交信を行う通信モード等を含む)の設定動作(切替動作)を行うことが可能である。
【0019】
また、カメラ本体部2は、正面左端部に撮影者が把持するためのグリップ部14を備えている。グリップ部14の上面には露光開始を指示するためのレリーズボタン11が設けられている。グリップ部14の内部には電池収納室とカード収納室とが設けられている。電池収納室にはカメラの電源として、例えばリチウムイオン電池などの電池が収納されており、カード収納室には撮影画像の画像データを記録するためのメモリカード90(図3参照)が着脱可能に収納されるようになっている。
【0020】
レリーズボタン11は、半押し状態(S1状態)と全押し状態(S2状態)の2つの状態を検出可能な2段階検出ボタンである。レリーズボタン11が半押しされS1状態になると、被写体に関する記録用静止画像(本撮影画像)を取得するための準備動作(例えば、AF制御動作等)が行われる。また、レリーズボタン11がさらに押し込まれてS2状態になると、当該本撮影画像の撮影動作(撮像素子5(後述)を用いて被写体像(被写体の光像)に関する露光動作を行い、その露光動作によって得られた画像信号に所定の画像処理を施す一連の動作)が行われる。このように、撮像装置1は、レリーズボタン11が半押し状態S1にされると撮影準備指示が付与されたものとみなし、レリーズボタン11が全押し状態S2にされると撮影指示が付与されたものとみなす。
【0021】
図2において、カメラ本体部2の背面略中央上部には、ファインダ窓(接眼窓)10が設けられている。撮影者は、ファインダ窓10を覗くことによって、撮影レンズユニット3から導かれた被写体の光像を視認して構図決定を行うことができる。すなわち、光学ファインダを用いて構図決めを行うことが可能である。
【0022】
なお、この実施形態に係る撮像装置1においては、背面モニタ12(後述)に表示されるライブビュー画像を用いて構図決めを行うことも可能である。また、光学ファインダによる構図決め動作とライブビュー表示による構図決め動作との切換操作は、操作者が切換ダイヤル87を回転させることによって実現される。
【0023】
図2において、カメラ本体部2の背面の略中央には、背面モニタ12が設けられている。背面モニタ12は、例えばカラー液晶ディスプレイ(LCD)として構成される。背面モニタ12は、撮影条件等を設定するためのメニュー画面を表示すること、および再生モードにおいてメモリカード90に記録された撮影画像を再生表示することなどが可能である。また、操作者が光学ファインダによる構図決めではなくライブビュー表示による構図決めを選択した場合には、背面モニタ12には、撮像素子7(後述)によって取得された時系列の複数の画像(すなわち動画像)がライブビュー画像として表示される。
【0024】
背面モニタ12の左上部には電源スイッチ(メインスイッチ)81が設けられている。電源スイッチ81は2点スライドスイッチからなり、接点を左方の「OFF」位置に設定すると、電源がオフになり、接点の右方の「ON」位置に設定すると、電源がオンになる。
【0025】
背面モニタ12の右側には方向選択キー84が設けられている。この方向選択キー84は円形の操作ボタンを有し、この操作ボタンにおける上下左右の4方向の押圧操作と、右上、左上、右下及び左下の4方向の押圧操作とが、それぞれ検出されるようになっている。なお、方向選択キー84は、上記8方向の押圧操作とは別に、中央部のプッシュボタンの押圧操作も検出されるようになっている。
【0026】
背面モニタ12の左側には、メニュー画面の設定、画像の削除などを行うための複数のボタンからなる設定ボタン群83が設けられている。
【0027】
<2.機能ブロック>
つぎに、図3を参照しながら、撮像装置1の機能の概要について説明する。図3は、撮像装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0028】
図3に示すように、撮像装置1は、操作部80、全体制御部101、フォーカス制御部121、ミラー制御部122、シャッタ制御部123、タイミング制御回路124,125、およびデジタル信号処理回路40,50等を備える。
【0029】
操作部80は、レリーズボタン11(図1参照)を含む各種ボタンおよびスイッチ等を備えて構成される。操作部80に対するユーザーの入力操作に応答して、全体制御部101が各種動作を実現する。
【0030】
全体制御部101は、マイクロコンピュータとして構成され、主にCPU、メモリ、及びROM(例えばEEPROM)等を備える。全体制御部101は、ROM内に格納されるプログラムを読み出し、当該プログラムをCPUで実行することによって、各種機能を実現する。
【0031】
例えば、全体制御部101は、ライブビュー機能(被写体に関する時系列の画像を順次に液晶表示部等に表示する機能、換言すれば被写体の画像を動画的態様で液晶表示部等に表示する機能)に関する動作を制御する。詳細には、全体制御部101は、画像処理制御部111および表示制御部112を有している。画像処理制御部111は、フィルタ処理部47を制御して、撮像素子7(後述)によって取得された撮影画像に対して、ぼかしフィルタ処理(例えば平滑化フィルタ処理)を施す画像処理を実行する。また、表示制御部112は、ぼかしフィルタ処理が施された撮影画像を背面モニタ12に表示する動作等を制御する。
【0032】
また、全体制御部101は、AFモジュール20およびフォーカス制御部121等と協動して、フォーカスレンズの位置を制御する合焦制御動作を行う。全体制御部101は、AFモジュール20によって検出される被写体の合焦状態に応じて、フォーカス制御部121を用いてAF動作を実現する。なお、AFモジュール20は、ミラー機構6を介して進入してきた光を用いて、位相差方式等の合焦状態検出手法により被写体の合焦状態を検出することが可能である。
【0033】
フォーカス制御部121は、全体制御部101から入力される信号に基づいて制御信号を生成しモータM1を駆動することによって、撮影レンズユニット3のレンズ群37に含まれるフォーカスレンズを移動する。また、フォーカスレンズの位置は、撮影レンズユニット3のレンズ位置検出部39によって検出され、フォーカスレンズの位置を示すデータが全体制御部101に送られる。このように、フォーカス制御部121および全体制御部101等は、フォーカスレンズの光軸方向の動きを制御する。
【0034】
ミラー制御部122は、ミラー機構6が光路から退避した状態(ミラーアップ状態)とミラー機構6が光路を遮断した状態(ミラーダウン状態)との状態切替を制御する。ミラー制御部122は、全体制御部101から入力される信号に基づいて制御信号を生成しモータM2を駆動することによって、ミラーアップ状態とミラーダウン状態とを切り替える。
【0035】
シャッタ制御部123は、全体制御部101から入力される信号に基づいて制御信号を生成しモータM3を駆動することによって、シャッタ4の開閉を制御する。
【0036】
タイミング制御回路125は、撮像素子5等に対するタイミング制御を行う。
【0037】
撮像素子(ここではCCDセンサ(単にCCDとも称する))5は、光電変換作用により被写体の光像を電気的信号に変換して、本撮影画像に係る画像信号(記録用の画像信号)を生成する。撮像素子5は、記録画像取得用の撮像素子であるとも表現される。
【0038】
撮像素子5は、タイミング制御回路125から入力される駆動制御信号(蓄積開始信号および蓄積終了信号)に応答して、受光面に結像された被写体像の露光(光電変換による電荷蓄積)を行い、当該被写体像に係る画像信号を生成する。また、撮像素子5は、タイミング制御回路125から入力される読出制御信号に応答して、当該画像信号を信号処理部51へ出力する。また、タイミング制御回路125からのタイミング信号(同期信号)は、信号処理部51及びA/D(アナログ/デジタル)変換回路52にも入力される。
【0039】
撮像素子5で取得された画像信号は、信号処理部51において所定のアナログ信号処理が施され、当該アナログ信号処理後の画像信号はA/D変換回路52によってデジタル画像データ(画像データ)に変換される。この画像データは、デジタル信号処理回路50に入力される。
【0040】
デジタル信号処理回路50は、A/D変換回路52から入力される画像データに対してデジタル信号処理を行い、撮像画像に係る画像データを生成する。デジタル信号処理回路50は、黒レベル補正回路53、ホワイトバランス(WB)回路54、γ補正回路55及び画像メモリ56を備える。
【0041】
黒レベル補正回路53は、A/D変換回路52が出力した画像データを構成する各画素データの黒レベルを基準の黒レベルに補正する。WB回路54は、画像のホワイトバランス調整を行う。γ補正回路55は、撮像画像の階調変換を行う。画像メモリ56は、生成された画像データを一時的に記憶するための、高速アクセス可能な画像メモリであり、複数フレーム分の画像データを記憶可能な容量を有する。
【0042】
本撮影時には、画像メモリ56に一時記憶される画像データは、全体制御部101において適宜画像処理(圧縮処理等)が施された後、カードI/F132を介してメモリカード90に記憶される。
【0043】
また、画像メモリ56に一時記憶される画像データは、全体制御部101によって適宜VRAM131に転送され、背面モニタ12に画像データに基づく画像が表示される。これによって、本撮影に関する確認用画像であるアフタービュー画像を撮影指示に応じて表示する確認表示(アフタービュー表示)、および撮影済みの画像を再生する再生表示等が実現される。
【0044】
なお、撮像素子5、タイミング制御回路125、信号処理部51、A/D変換回路52、およびデジタル信号処理回路50等は、撮像素子5による撮影画像の形成処理に関する処理部(画像形成処理部)150を構成する。
【0045】
また、この撮像装置1は、撮像素子5とは別の撮像素子7(図4も参照)をさらに備えている。撮像素子7は、いわゆるライブビュー画像取得用(動画取得用)の撮像素子としての役割を果たす。撮像素子7も、撮像素子5と同様の構成を有している。ただし、撮像素子7は、ライブビュー用の画像信号(動画像)を生成するための解像度を有していればよく、通常、撮像素子5よりも少ない数の画素で構成される。
【0046】
撮像装置1は、撮像素子7による撮影画像の形成処理に関する処理部(画像形成処理部)140をさらに備えている。画像形成処理部140は、画像形成処理部150と同様の構成を有している。具体的には、画像形成処理部140は、撮像素子7、タイミング制御回路124、信号処理部41、A/D変換回路42、およびデジタル信号処理回路40等によって構成される。
【0047】
撮像素子7で取得された画像信号に対しては、撮像素子5で取得された画像信号と同様の信号処理が、画像形成処理部140によって施される。
【0048】
具体的には、撮像素子7で取得された画像信号は、信号処理部41で所定の処理が施され、A/D変換回路42でデジタルデータに変換された後、デジタル信号処理回路40で所定の画像処理が施され、画像メモリ46に格納される。
【0049】
後述する山登りAF(撮像素子で取得された画像信号のコントラスト等の所定の評価値を用いて合焦動作を行う自動合焦制御)は、この画像信号を用いて実行される。なお、この撮像装置1は、EVF方式による構図決め動作(後述)においては、2種類のAF方式(具体的には、位相差AF方式および山登りAF方式)を併用する。
【0050】
一方、ライブビュー表示も、撮像素子7による当該画像信号に基づいて行われる。具体的には、撮像素子7で取得され画像メモリ46に格納される時系列の画像データは、全体制御部101によって適宜VRAM131に順次に転送され、当該時系列の画像データに基づく複数の画像が背面モニタ12に順次に表示される。これによって、構図決めを行うための動画的態様の表示(ライブビュー表示)が実現される。
【0051】
ただし、ライブビュー表示に用いられる画像としては、撮像素子7により取得された画像に対して更にフィルタ処理部47によるフィルタ処理が施された画像が用いられる。フィルタ処理の詳細等については後述する。当該フィルタ処理後の時系列の撮影画像を用いたライブビュー表示によれば、撮像素子5による本撮影画像におけるぼけ具合がシミュレートされた画像が背面モニタ12に表示されるので、当該本撮影画像におけるぼけ具合を確認することが可能である。
【0052】
<3.撮影動作>
<概要>
つぎに、この撮像装置1における構図決め動作を含む撮影動作について説明する。上述したように、この撮像装置1においては、ファインダ光学系等で構成される光学ファインダ(光学ビューファインダ(OVF)とも称される)を用いて構図決め(フレーミング)を行うことが可能であるとともに、背面モニタ12に表示されるライブビュー画像を用いて構図決めを行うことも可能である。ライブビュー画像は、被写体に関する時系列の画像であって表示部(背面モニタ12等)に順次に表示される画像、換言すれば被写体の画像を動画的態様で表示する画像である、とも表現される。なお、撮像素子7および背面モニタ12を利用して実現されるファインダ機能は、被写体の光像を電子データに変換した後に可視化するものであることから電子ビューファインダ(EVF)とも称される。
【0053】
上述したように、操作者は切換ダイヤル87を操作することによって、光学ビューファインダ(OVF)を用いて構図決めを行うか、操作者が電子ビューファインダ(EVF)を用いて構図決めを行うかを選択することができる。
【0054】
図4および図5は、撮像装置1の断面図である。図4は、OVFを用いた構図決め動作を示しており、図5は、EVFを用いた構図決め動作を示している。また、図6は、露光動作時(詳細にはOVF時)の状態を示す断面図である。
【0055】
図4等に示すように、撮影レンズユニット3から撮像素子5に至る光路(撮影光路)上にはミラー機構6が設けられている。ミラー機構6は、撮影光学系からの光を上方に向けて反射する主ミラー61(主反射面)を有している。この主ミラー61は、例えばその一部または全部がハーフミラーとして構成され、撮影光学系からの光の一部を透過する。また、ミラー機構6は、主ミラー61を透過した光を下方に反射させるサブミラー62(副反射面)をも有している。サブミラー62で下方に反射された光は、AFモジュール20へと導かれて入射し、位相差方式のAF動作に利用される。
【0056】
撮影モードにおいてレリーズボタン11が全押し状態S2にされるまで、換言すれば構図決めの際には、ミラー機構6はミラーダウン状態となるように配置される(図4および図5参照)。そして、この際には、撮影レンズユニット3からの被写体像は、主ミラー61で上方に反射され観察用光束としてペンタミラー65に入射する。ペンタミラー65は、複数のミラー(反射面)を有しており、被写体像の向きを調整する機能を有している。また、ペンタミラー65に入射した後の、観察用光束の進路は、上記の両方式(すなわちOVF方式およびEVF方式)のいずれを採用して構図決めを行うかに応じて異なっている。これについては後述する。操作者は、選択した所望の方式によって構図決めを行うことが可能である。
【0057】
一方、レリーズボタン11が全押し状態S2にされると、ミラー機構6はミラーアップ状態となるように駆動され、露光動作が開始される(図6参照)。被写体に係る記録用静止画像(本撮影画像とも称する)を取得する際の基本的動作(すなわち露光の際の動作)は、上記の両方式(すなわちOVF方式およびEVF方式)による構図決めに共通である。
【0058】
具体的には、図6に示すように、露光時には、ミラー機構6は、撮影光路から待避する。詳細には、撮影光学系からの光(被写体像)を遮らないように主ミラー61とサブミラー62とが上方に待避し、撮影レンズユニット3からの光が、主ミラー61で反射されることなく進行して、シャッタ4の開放タイミングに合わせて撮像素子5に到達する。撮像素子5は、光電変換によって、受光した光束に基づいて被写体の画像信号を生成する。このように、被写体からの光束(被写体像)が撮影レンズユニット3を通過して撮像素子5に導かれることによって、被写体に係る撮影画像(撮影画像データ)が得られる。
【0059】
<光学ファインダによる構図決め動作(フレーミング動作)>
次に、構図決めの際の上記両方式の各動作についてそれぞれ説明する。
【0060】
まず、OVF方式の構図決め動作について説明する。
【0061】
図4に示すように、ミラー機構6の主ミラー61およびサブミラー62が、撮影レンズユニット3からの被写体像の光路上に配置されると、被写体像が主ミラー61とペンタミラー65と接眼レンズ67とを介してファインダ窓10へと導かれる。このように、主ミラー61とペンタミラー65と接眼レンズ67とを含むファインダ光学系は、撮影光学系からの光束であって主ミラー61で反射された光束である観察用光束をファインダ窓10へと導くことが可能である。
【0062】
詳細には、撮影レンズユニット3からの光は、主ミラー61で反射されて上方に進路を変更し、焦点板63において結像し、焦点板63を通過する。その後、焦点板63を通過した光は、ペンタミラー65でその進路をさらに変更した後に接眼レンズ67を通ってファインダ窓10へ向かう(図4の光路PA参照)。このようにして、ファインダ窓10を通過した被写体像は撮影者(観察者)の眼へ到達して視認される。すなわち、撮影者はファインダ窓10を覗くことによって、被写体像を確認することができる。
【0063】
ここにおいて、ペンタミラー65は、三角屋根状に形成された2面のミラー(ダハミラー)65a,65bと、当該ダハミラー(ダハ面)65a,65bに対して固定された面65cと、もう1つのミラー(反射面)65eとを有している。また、三角屋根状の2面のミラー65a,65bは、プラスチック成型により一体部品65dとして形成されている。主ミラー61で反射されて上方に進路を変更した光は、ダハミラー65a,65bで反射されて左右反転されて進行し、さらにミラー65eでも反射されることによって上下も反転されて撮影者の眼に到達する。このように、撮影レンズユニット3において左右上下が反転されていた光像は、ペンタミラー65でさらに左右上下が反転される。これにより、撮影者は、光学ファインダにおいて、その上下左右が実際の被写体と同じ状態で被写体像を観察することができる。
【0064】
なお、ここでは、ファインダ光学系の一部である光学ユニットU1が撮像装置1内部の上部空間SUに設けられている。この光学ユニットU1は、接眼レンズ67とファインダ窓10とを有するととともに、駆動手段(不図示)によって開閉可能なアイピースシャッタ16をさらに有している。OVF方式の構図決め動作時においては、アイピースシャッタ16は開放されており、ペンタミラー65からの被写体像がファインダ窓10を通過するように構成されている。
【0065】
また、主ミラー61を透過した光はサブミラー62で反射されて下方に進路を変更しAFモジュール20へと進入する。AFモジュール20およびフォーカス制御部121等は、主ミラー61およびサブミラー62を介して進入してきた光を用いて、AF動作を実現する。
【0066】
<電子ファインダによる構図決め動作(フレーミング動作)>
次に、EVF方式による構図決め動作について説明する。
【0067】
この場合にも、図5に示すように、ミラー機構6の主ミラー61およびサブミラー62が、撮影レンズユニット3からの被写体像の光路上に配置される。そして、撮影レンズユニット3からの光は、主ミラー61で反射されて上方に進路を変更し、焦点板63において結像し、焦点板63を通過する。
【0068】
ただし、このEVF方式による構図決め動作においては、焦点板63を通過した光は、ペンタミラー65でその進路をさらに変更した後に、ビームスプリッタ71でさらにその進路を変更して結像レンズ69(結像光学系)を通過して撮像素子7の撮像面上で再結像する(図5の光路PB参照)。なお、主ミラー61で反射されて上方に進路を変更した光は、ダハミラー65a,65bで反射されて左右反転されて進行し、さらにミラー65eでも反射されることによって上下も反転され、さらに結像レンズ69で上下左右反転されて撮像素子7に到達する。
【0069】
より詳細には、図4と比較すると判るように、図5においてはミラー65eの角度(カメラ本体部2に対する設置角度)が変更されている。具体的には、ミラー65eは、図4の状態から、その下端側の軸AX1を中心に矢印AR1の向きに所定角度α回動している。なお、ミラー65eは、切換ダイヤル87の操作に応じて回動する。具体的には、操作者による切換ダイヤル87に対する回転操作力が、所定の伝達機構(不図示)によりミラー65eの回転軸に対して伝達されることによって、ミラー65eが回動する。
【0070】
そして、このミラー65eの角度変更によって、ミラー65eで反射される光(観察用光束)の反射角度が変更され、当該ミラー65eによる反射光の進行経路が変更される。具体的には、図4の状態に比べて、ミラー65eへの入射角度θ1が比較的小さくなり、反射角度θ2も比較的小さくなる。その結果、ミラー65eの反射光は、接眼レンズ67に向かう光路からダハミラー65a,65b寄りの光路へとその進路を上方に変更してビームスプリッタ71に向かい、ビームスプリッタ71でさらにその進路を変更して結像レンズ69を通過して撮像素子7に到達する。なお、ビームスプリッタ71、結像レンズ69および撮像素子7は、接眼レンズ67よりも上方に配置されており、且つ、OVFの際にミラー65eから接眼レンズ67へと進行する光束を遮らない位置に配置されている。
【0071】
また、ミラー65eで反射された光束の進路は、ミラー65eの変更角度αに応じて、その2倍の大きさの角度β(=2×α)変更される。逆に言えば、反射光路の進行角度を角度β変更するために、ミラー65eの回転角度は、当該角度βの半分の角度αで済む。すなわち、ミラー65eの比較的小さな回転角度でミラー65eの反射光の進路を比較的大きく変更することが可能である。また、ミラー65eと撮像素子7とは光学的に比較的離れて配置されているため、ミラー65eの回転角度を小さく変更するだけで、ミラー65eによる2つの反射光を、互いに離れて配置された接眼レンズ67および撮像素子7へと確実に導くことが可能である。すなわち、ミラー65eの回転角度を小さく変更することによってミラー65eによる反射光の光束を良好に2つの光路に選択的に進行させることが可能である。したがって、ミラー65eの回転によるスペースの増大は最小限に止められる。
【0072】
撮像素子7は、ミラー65eで反射され結像レンズ69を通過して撮像素子7に到達した被写体像に基づいて、ライブビュー画像を生成する。具体的には、微小時間間隔(例えば、1/60秒)で複数の画像を順次に生成する。そして、取得された時系列の画像は背面モニタ12において順次に表示される。これによって、撮影者は、背面モニタ12に表示される動画像(ライブビュー画像)を視認し、当該動画像を用いて構図決めを行うことが可能になる。
【0073】
また、この場合も、OVFによる構図決めの際(図4参照)と同様に、主ミラー61とサブミラー62とを介してAFモジュール20に入射した光を用いてAF動作が実現される。
【0074】
なお、EVF方式の構図決め動作時においては、ファインダ窓10からの光が上部空間SUへと入射しないように、アイピースシャッタ16が閉じられている。
【0075】
以上のように、ミラー65eで反射した後の観察用光束の進路(詳細には主進路)は、ミラー65eの反射角度の変更によって、ミラー65eから接眼レンズ67およびファインダ窓10に向かう光路PA(図4)と、ミラー65eから結像レンズ69および撮像素子7に向かう光路PB(図5)との間で切り換えられる。換言すれば、当該観察用光束の進路は、ミラー65eの反射角度の変更によって、ミラー65eで反射されてファインダ窓10に向かう第1の光路PAと、ミラー65eで反射されて撮像素子7に向かう第2の光路PBとの間で切り換えられる。
【0076】
<4.ライブビュー画像>
つぎに、ライブビュー画像の生成動作等について詳細に説明する。なお、ここでは、ポートレート撮影などにおいて、絞りを開放側に設定し被写界深度を浅くして主被写体以外の被写体を意図的にぼかした画像を撮影する場合を想定する。
【0077】
図7の背面図には、ライブビュー画像VLが背面モニタ12に表示されている様子が示されている。例えば、図7の背面モニタ12に示すような構図、すなわち、画面中央の主被写体(人物)が、その周囲の比較的遠距離の被写体(木)を背景として、比較的近距離に存在する構図を想定する。このような構図を、開放側もしくは開放側に近い絞り値で、主被写体を合焦状態にして撮影すると、遠景部分において「ぼけ」が生じる。この「ぼけ」を用いた撮影技法は、主被写体を際立たせる技法の1つである。
【0078】
ここにおいて、このようなポートレート撮影等では、撮影レンズユニット3において、一般的に比較的明るいレンズが用いられる。換言すれば、撮影レンズユニット3の開放F値は、一般的に比較的小さな値(例えば、F=1.4)である。これにより、「ぼけ」の程度が比較的大きな画像が得られる。
【0079】
一方、撮像装置1のファインダ光学系においては、そのサイズ等に起因して、撮影レンズユニット3からの光を全て利用することは困難である。したがって、撮像装置1のファインダ光学系の開放F値(撮影レンズユニット3の絞りが開放された状態でのF値)は、一般的に、比較的大きな値(例えば、F=4.0)であり、撮影レンズユニット3の開放F値よりも大きい。このため、ファインダ光学系を介した被写体像は、比較的深い被写界深度を有するものとなる。例えば、当該ファインダ光学系からの被写体像をライブビュー用の撮像素子7で受光して得られるライブビュー画像は、比較的大きなF値に対応する画像になる。すなわち、ファインダ光学系で取得された画像をそのまま用いる場合には、「ぼけ」の程度が比較的小さな(弱い)画像しか表現できない。
【0080】
このように、比較的暗い光学系に配置された撮像素子による画像をそのまま用いる場合には、比較的明るい光学系(撮影レンズ)による撮影状況を再現することは非常に困難である。すなわち、撮像素子7で取得された撮影画像をそのまま背面モニタ12に表示するのでは、撮像素子5による本撮影画像におけるぼけ具合を確認することができない。なお、このような撮影状況においては、光学ファインダ(OVF)による構図決め動作においても、本撮影画像におけるぼけ具合を確認することも困難である。
【0081】
そこで、この実施形態においては、撮像素子7による撮影画像に対して、ぼかしフィルタ処理(例えば、平滑化フィルタ処理)を施し、当該ぼかしフィルタ処理が施された撮影画像をライブビュー画像として背面モニタ12に表示する。これによれば、撮像素子5による本撮影画像におけるぼけ具合を、撮像素子7による画像を用いてシミュレートすることが可能である。
【0082】
ここでは、図8(正確には図9)に示すような、3×3のサイズのガウシアンフィルタ(平滑化フィルタの1つ)を「ぼかしフィルタ」として用いるものとする。
【0083】
また、ガウシアンフィルタ内の各位置(p,q)における要素値fn(p,q)は、自然対数の底(ネーピアの数)e(=2.71828...)等を用いて、式(1)で表現される。ただし、値fn(p,q)は、正規化(後述)される前のフィルタの要素値である。
【0084】
【数1】

【0085】
また、変数σは、式(2)で表現される。
【0086】
【数2】

【0087】
ここにおいて、値kは定数であり、値ΔDは撮影画像内での注目画素の位置におけるデフォーカス量を表し、値Fは本撮影露光時における撮影レンズユニット3の絞り値(F値)であり、値fは撮影レンズユニット3の焦点距離であり、値Lは撮像装置1から合焦状態の被写体までの距離である。なお、図11に示すような幾何学的関係に基づき、撮影倍率MG(=y/Y)は、値f/Lに等しい(MG=f/L)。なお、距離yは、撮像面(撮像素子)上での被写体のY方向(縦方向)の長さを表しており、距離Yは、Y方向における被写体の実際の長さ(実空間での長さ)を表している。同様に、距離xは、撮像面上での被写体のX方向(横方向)の長さを表しており、距離Xは、X方向における被写体の実際の長さ(実空間での長さ)を表している。
【0088】
この「ぼかしフィルタ」は、撮像素子7による撮影画像の全画素のそれぞれについて作成される。そして、当該撮影画像の全画素のそれぞれに関して、対応する「ぼかしフィルタ」によるフィルタ処理が実行される。
【0089】
具体的には、撮影画像内の或る注目画素に関するフィルタ処理においては、まず、対応する「ぼかしフィルタ」の中央の要素値(fn(0,0))が撮影画像における注目画素の画素値に対して乗算される。また、当該「ぼかしフィルタ」の周辺8要素の要素値(fn(−1,−1),...,fn(1,1))が、撮影画像における注目画素の周辺8画素の画素値に対してそれぞれ乗算される。そして、これら9個の乗算値が加算された値が、当該注目画素のフィルタ処理後の値として算出される。
【0090】
ただし、ここでは、当該9個の乗算値の加算値として算出された値をさらに正規化した値を、当該注目画素のフィルタ処理後の値として算出する。具体的には、図9に示すような「ぼかしフィルタ」、すなわち、各要素が予め正規化された「ぼかしフィルタ」を用いる。図9のフィルタの各要素値g(p,q)は、図8のフィルタ要素の各値fn(p,q)を、9個のフィルタ要素のfn(i,j)の和で除算した値として算出される(式(3)参照)。
【0091】
【数3】

【0092】
また、図10は、ぼかしフィルタの数値例を示す図である。図10の左列には、図8に対応するフィルタの数値例が配置されており、図10の右列には、図9に対応するフィルタの数値例が配置されている。また、図10においては、最下段から最上段へ向けて「ぼけ」の程度が徐々に大きくなる5段階のフィルタが例示されている。
【0093】
具体的には、図10の最下段においては、σ=0.2のときのフィルタ(その強度が比較的弱いフィルタ)が示されている。当該フィルタにおいては、中央の要素がほぼ1であり、周囲の8つの要素がほぼゼロである。これによれば、フィルタ処理前の中央画素の値がそのままフィルタ処理後の中央画素の値となるため、「ぼけ」が生じていない状態、換言すれば比較的先鋭な状態を表現することができる。
【0094】
また、図10の最上段においては、σ=5のときのフィルタ(その強度が比較的強いフィルタ)が示されている。当該フィルタにおいては、中央要素の値とその周辺要素の値とは略同等な値である。これによれば、注目画素のフィルタ処理後の画素値として、周辺画素の値を取り込み平滑化された画素値を得ることができる。すなわち、ぼけた状態を表現することができる。
【0095】
さらに、最下段と最上段との間には、σ=0.333333...,1,3にそれぞれ対応する中間的な3種類のフィルタが示されている。比較的上側のフィルタに関する中央要素の値に対するその周辺要素の値の割合は、比較的下側のフィルタに関する中央要素の値に対するその周辺要素の値の割合に比べて高い。すなわち、比較的上側のフィルタによる「ぼけ」の程度は、比較的下側のフィルタによる「ぼけ」の程度よりも大きい。
【0096】
また、この実施形態においては、式(2)に示すように、撮影画像内の位置ごとに異なる強度を有するフィルタを用いる。具体的には、注目画素の撮影画像内での位置におけるデフォーカス量ΔDにも応じたフィルタを用いる。換言すれば、撮影画像内の各位置における「ぼかしフィルタ」の強度は、撮影画像内の各位置におけるデフォーカス量に応じて変更される。
【0097】
図12は、デフォーカス量ΔDを説明する概念図である。例えば、図7において、中央の人物が合焦状態である場合には、本撮影画像における遠景の「木」は、合焦状態からずれている。すなわちデフォーカス状態になっている。
【0098】
図12の曲線C1に示すように、山登りAF(ビデオAFとも称する)においては、或る画素位置(例えば中央の人物被写体に対応する位置)P1(図7参照)のコントラスト評価値は、レンズ位置に応じて変化する。図12においては、曲線C1の極値(極大値)に対応するレンズ位置が合焦レンズ位置として取得され、撮影レンズユニット3内のフォーカスレンズが当該合焦レンズ位置に移動される。
【0099】
一方、当該画素位置P1以外の位置P2(例えば画面内周辺部の木に対応する位置)(図7参照)におけるコントラスト評価値は、図12の曲線C2に示すように、レンズ位置に応じて変化する。この位置P2に関する合焦レンズ位置(曲線C2の極大値)は、曲線C1の合焦レンズ位置(曲線C1の極大値)から距離ΔDずれている。
【0100】
したがって、撮影レンズユニット3内のフォーカスレンズが、位置P1に関する合焦レンズ位置に存在する場合には、当該画素位置P1以外の位置(例えば画面内周辺部の木に対応する位置)P2では、デフォーカス状態が生じている。例えば、中央の人物(図7参照)が合焦状態である場合には、本撮影画像における遠景の「木」は、非合焦状態である。このとき、位置P2におけるデフォーカス量ΔDは、図12の値ΔDで表現される。また、位置P1におけるデフォーカス量ΔDは、ゼロである。
【0101】
なお、ここでは、位置P1,P2のデフォーカス量ΔDについて説明したが、同様にして、撮影画像内の各位置におけるデフォーカス量ΔDが求められる。
【0102】
そして、このような各位置におけるデフォーカス量ΔDが、上記の式(2)における値ΔDとして採用される。この結果、画像内の位置ごとに互いに異なる強度の「ぼかしフィルタ」が設定され、各ぼかしフィルタによるフィルタ処理が撮像素子7による撮影画像に対して各位置ごとに適用される。
【0103】
詳細には、式(2)に示すようにデフォーカス量ΔDが大きくなるにつれて値σが大きくなり、フィルタ強度が大きくなる。逆に、デフォーカス量ΔDが小さくなるにつれて値σが小さくなり、フィルタ強度が小さくなる。
【0104】
これによれば、デフォーカス量ΔDが比較的大きな位置においてぼけの程度が比較的大きな画像を得ることができる。したがって、本撮影時における実際のぼけ具合に近い画像を生成することが可能である。
【0105】
また、この実施形態においては、撮影画像内の各位置における「ぼかしフィルタ」の強度は、本撮影時(本撮影用の露光時)における撮影レンズユニット3の絞り値に応じて変更される。具体的には、式(2)に示すように、撮影レンズユニット3の絞り値(F値)が小さくなるにつれて値σが大きくなり、フィルタ強度が大きくなる。逆に、当該F値が大きくなるにつれて値σが小さくなり、フィルタ強度が小さくなる。
【0106】
これによれば、F値が比較的小さい場合には、画像全体にわたってぼけの程度が比較的大きな画像を得ることができる。したがって、本撮影時における実際のぼけ具合に近い画像を生成することが可能である。
【0107】
さらに、この実施形態においては、撮影画像内の各位置における「ぼかしフィルタ」の強度は、本撮影時における撮影倍率MGに応じて変更される。
【0108】
具体的には、式(2)に示すように撮影倍率MGが大きくなるにつれて値σが大きくなり、フィルタ強度が大きくなる。逆に、撮影倍率MGが小さくなるにつれて値σが小さくなり、フィルタ強度が小さくなる。
【0109】
換言すれば、式(2)に示すように焦点距離fが大きくなるにつれて値σが大きくなり、フィルタ強度が大きくなる。逆に、焦点距離fが小さくなるにつれて値σが小さくなり、フィルタ強度が小さくなる。例えば、望遠撮影においては、焦点距離fが大きいため、比較的大きな強度を有するフィルタが用いられる。また、式(2)に示すように、合焦状態の被写体までの距離Lが小さくなるにつれて値σが大きくなり、フィルタ強度が大きくなる。逆に、当該距離Lが大きくなるにつれて値σが小さくなり、フィルタ強度が小さくなる。例えば、マクロ撮影においては、距離Lが小さいため、比較的大きな強度を有するフィルタが用いられる。
【0110】
これによれば、撮影倍率MGが比較的大きな位置においてぼけの程度が比較的大きな画像を得ることができる。したがって、本撮影時における実際のぼけ具合に近い画像を生成することが可能である。
【0111】
<5.詳細動作>
つぎに、図13のフローチャートを参照して、ライブビュー画像の生成動作について説明する。撮像装置1の全体制御部101においては、図13に示すような処理ルーチンが微小時間(例えば1/60秒)間隔で実行される。
【0112】
ここでは、図13の処理ルーチンが開始される前において、まず、切換ダイヤル87を用いた操作によって、EVF方式による構図決めが予め選択されているものとする。また、レリーズボタン11が半押し状態S1にまで押下され、位相差AF方式と山登りAF方式(ビデオAF方式)とが併用されたAF動作が既に実行されているものとする。さらに、撮影レンズユニット3の絞りは、開放F値に設定されているものとする。なお、これに限定されず、操作者による手動設定操作あるいは撮像装置1による自動設定動作によって、撮影レンズユニット3の絞りは、本撮影時の絞り値に設定されてもよい。
【0113】
上述したように、EVF方式においては、ミラー65eは、下降した状態(ミラーダウン状態)である(図5参照)。このとき、撮影レンズユニット3を通過した被写体像は、主ミラー61およびミラー65e等で反射され結像レンズ69を通過して撮像素子7に到達する。そして、撮像素子7は、当該被写体像を光電変換して画像データを生成する(ステップSP11)。すなわち、撮像素子7は、撮影レンズユニット3の全部(或いは一部であってもよい)を通過した後に主ミラー61で反射されファインダ光学系をも通過した被写体像を受光して画像(詳細には画像信号)を生成する。
【0114】
つぎに、ステップSP12において、カメラ本体部2側の全体制御部101は、撮影レンズユニット3と通信し、撮影レンズユニット3の焦点距離fおよび絞り値Fを取得する。
【0115】
また、ステップSP13において、全体制御部101は、AF動作による測距結果を取得する。
【0116】
上述したように、ここでは、山登りAFと位相差AFとを併用したAF動作が既に実行されているものとする。例えば、まず位相差AFの結果に基づいて合焦状態付近にまでレンズを比較的高速で移動させ、その後に更にレンズを比較的低速で移動させる際における各レンズ位置と評価値(コントラスト評価値)との関係に基づく合焦位置決定動作(山登りAF動作)を行えばよい。なお、このAF動作においては、比較的広いレンズ位置範囲における評価値の変化を求めるため、比較的高速でレンズが移動する際にも各レンズ位置と評価値(コントラスト評価値)との関係を求めておくことが好ましい。あるいは、レンズ駆動域の全域にわたってレンズを高速移動させつつ各レンズ位置と評価値(コントラスト評価値)との関係を求めた後に、位相差AFの結果に基づく合焦位置近傍にレンズを高速で移動させ、低速レンズ移動を伴う山登りAF動作をさらに実行するようにしてもよい。
【0117】
このステップSP13においては、全体制御部101は、AF動作による測距結果として、全画素のそれぞれのデフォーカス量ΔDを取得するとともに合焦位置での被写体距離Lをも取得する。この距離Lは、合焦レンズ位置と被写体距離との関係に基づいて、合焦状態の被写体に対する合焦レンズ位置(具体的には、図12の曲線C1の極値に対応するレンズ位置)から算出される。また、合焦レンズ位置と被写体距離との関係は、撮像装置1内(例えば全体制御部101のROM内)に予め記憶されている。なお、レンズ駆動域において極値(極大値)が決定不可能であるときには、デフォーカス量ΔDが所定値DT以上であると判断して、当該所定値DT(あるいは値DTより大きな値)をデフォーカス量ΔDとして決定するようにしてもよい。
【0118】
その後、各位置におけるフィルタの各フィルタ係数が式(3)等に基づいて決定され、ステップSP11で取得された撮影画像に対してフィルタ処理(フィルタ演算処理)が施される(ステップSP14)。このとき、上述のような距離L、デフォーカス量ΔD、焦点距離fおよび絞り値Fが用いられる。
【0119】
そして、ステップSP15において、フィルタ処理が施された撮影画像が、ライブビュー画像として背面モニタ12に表示される。
【0120】
以上のような動作が繰り返し実行されることによって、フィルタ処理後の時系列の画像が背面モニタ12において順次に表示される。これによって、撮影者は、背面モニタ12に表示される動画像(ライブビュー画像)を視認し、当該動画像を用いて構図決めを行うことが可能になる。
【0121】
特に、このライブビュー画像においては、撮像素子5による本撮影画像におけるぼけ具合がシミュレートされているため、当該本撮影画像におけるぼけ具合を本撮影前に確認することができる。また特に、比較的小さな絞り値による本撮影画像に関して、ぼけ具合を確認することが可能である。
【0122】
また特に、上述したように、比較的明るい光学系(撮影レンズ)による撮影状況においては、光学ファインダ(OVF)による構図決め動作では、本撮影画像におけるぼけ具合を確認することは困難である。これに対して、上記実施形態に係るEVF方式の構図決め動作によれば、比較的明るい光学系(撮影レンズ)による撮影状況においても、本撮影画像のぼけ具合を確認することが可能になる。
【0123】
<6.その他>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0124】
たとえば、上記実施形態においては、撮像素子7による画像を用いて山登りAF(ビデオAF)と位相差AFとの双方を併用してデフォーカス量ΔDを求める場合を例示したが、これに限定されず、例えば、山登りAFと位相差AFとのいずれか一方のみを用いてデフォーカス量ΔDを求めるようにしてもよい。
【0125】
詳細には、位相差AFのみを用いてデフォーカス量ΔDを求めるようにしてもよい。
【0126】
図14は、位相差AFに用いられるAFエリアセンサASiの位置を画像に対応させて示す図である。図14に示すように、例えば9つのAFエリアセンサを用いて、各AFエリアセンサ位置でのデフォーカス量ΔDを求めるようにしてもよい。
【0127】
あるいは、図15に示すように、更に多数(例えば25個)のAFエリアセンサASijを用いて、各AFエリアセンサ位置でのデフォーカス量ΔDを求めるようにしてもよい。
【0128】
なお、図14および図15において、AFエリアセンサが配置されていない位置のデフォーカス量を、他の位置におけるデフォーカス量ΔDに基づいて推定するようにしてもよい。例えば、図15において、或る位置P3におけるデフォーカス量ΔDは、当該位置P3の近隣の4つのAFエリアセンサAS41,AS42,AS51,AS52の位置におけるデフォーカス量ΔDを、当該位置P3と各AFエリアセンサAS41,AS42,AS51,AS52との距離比に応じて加重平均した値として求められればよい。
【0129】
また、山登りAFのみを用いてデフォーカス量ΔDを求めるようにしてもよい。
【0130】
さらに、上記実施形態においては、ぼかしフィルタのサイズとして、3×3を例示したが、これに限定されない。例えば、5×5、あるいは、7×7などの他のサイズのぼかしフィルタを用いるようにしてもよい。
【0131】
また、上記実施形態においては、レリーズボタン11が半押しされた後のライブビュー動作について例示した。具体的には、レリーズボタン11が半押し状態S1にまで押下された状態からAF動作が開始され、当該AF動作によりデフォーカス量ΔD等が算出され、当該デフォーカス量ΔD等に基づくフィルタ処理がライブビュー画像に対して施される場合を例示した。しかしながら、本発明は、これに限定されない。例えば、レリーズボタン11が半押し状態S1にまで押下される前にも、位相差AF方式および/または山登りAF方式等によるAF動作が実行され、当該AF動作によりデフォーカス量ΔD等が算出され、当該デフォーカス量ΔD等に基づくフィルタ処理が施されるようにしてもよい。このような動作によれば、レリーズボタン11が半押しされる前のライブビュー表示においても、本撮影におけるぼけ具合を確認することが可能である。
【0132】
また、上記実施形態においては、動画的態様のプレビュー画像であるライブビュー画像に関して「ぼかしフィルタ処理」を施す場合を例示したが、これに限定されない。例えば、静止画のプレビュー画像に関して「ぼかしフィルタ」処理を施すようにしてもよい。具体的には、所定ボタンの押下に応答して撮像素子7により取得された1枚の撮影画像に対して上記と同様の「ぼかしフィルタ」処理を施し、当該フィルタ処理後の画像を背面モニタ12に所定期間(例えば1秒)にわたってプレビュー表示するようにしてもよい。
【0133】
また、上記実施形態においては、撮像素子5および撮像素子7に対して、それぞれ、デジタル信号処理回路50およびデジタル信号処理回路40が独立に設けられているが、これに限定されない。例えば、共通のデジタル信号処理回路40によって、撮像素子5および撮像素子7に対する画像処理が施されても良い。
【0134】
また、上記実施形態においては、式(1)〜(3)に基づいて、ぼかしフィルタのフィルタ係数を逐次算出する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、所定数(例えば数十個)のσに対応する所定数のフィルタを予め準備しておき、式(2)に基づいて算出されたσに最も近いσに対応するフィルタを、上記の「ぼかしフィルタ」として選択するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】撮像装置の正面外観図である。
【図2】撮像装置の背面外観図である。
【図3】撮像装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】撮像装置の断面図(OVF方式の構図決め動作時)である。
【図5】撮像装置の断面図(EVF方式の構図決め動作時)である。
【図6】撮像装置の断面図(OVF方式の構図決め動作後の露光動作時)である。
【図7】ライブービュー画像が表示された状態を示す背面図である。
【図8】ぼかしフィルタ(正規化前)を示す図である。
【図9】ぼかしフィルタ(正規化後)を示す図である。
【図10】ぼかしフィルタの数値例を示す図である。
【図11】撮像倍率を説明する概念図である。
【図12】デフォーカス量を説明する概念図である。
【図13】ライブビュー画像の生成動作を示すフローチャートである。
【図14】位相差AF用エリアセンサの配置例を示す図である。
【図15】位相差AF用エリアセンサの別の配置例を示す図である。
【符号の説明】
【0136】
1 撮像装置
2 カメラ本体部
3 撮影レンズユニット
5,7 撮像素子
6 ミラー機構
10 ファインダ窓
12 背面モニタ
61 主ミラー
65 ペンタミラー
ΔD デフォーカス量
f 焦点距離
L 被写体距離
F 絞り値(F値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
撮影光学系からの光束であって主反射面で反射された光束である観察用光束を受光して画像信号を生成する撮像素子と、
前記撮像素子による撮影画像に対して、ぼかしフィルタ処理を施す画像処理手段と、
前記ぼかしフィルタ処理が施された前記撮影画像を表示する表示手段と、
を備え、
前記画像処理手段は、前記撮影画像内の各位置におけるデフォーカス量と本撮影露光時における前記撮影光学系の絞り値とに応じて、前記撮影画像内の各位置におけるぼかしフィルタの強度を変更することを特徴とすることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記画像処理手段は、前記デフォーカス量が大きくなるにつれて、前記ぼかしフィルタの強度を強くすることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記画像処理手段は、前記絞り値が小さくなるにつれて、前記ぼかしフィルタの強度を強くすることを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記画像処理手段は、撮影倍率にも応じて前記ぼかしフィルタの強度を変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記画像処理手段は、焦点距離にも応じて前記ぼかしフィルタの強度を変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記画像処理手段は、合焦状態の被写体までの距離にも応じて前記ぼかしフィルタの強度を変更することを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記ぼかしフィルタは、平滑化フィルタであることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−219085(P2009−219085A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63593(P2008−63593)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】