説明

撮像装置

【課題】撮像装置において、構造の複雑化や装置の大型化を招くことなく光学フィルタの被写体側の面への異物の付着を防止する。
【解決手段】撮像装置は、光学フィルタ9を通過した光により形成された光学像を光電変換する撮像素子8と、光学フィルタとともに撮像素子を保持する撮像素子保持部材10と、該光学像を形成する撮影光学系L1〜L5と、該撮影光学系のうち最も光学フィルタの近くに配置された像面側レンズユニットL5を保持するレンズ保持部材5とを有する。レンズ保持部材と撮像素子保持部材は、撮影光学系の光軸方向において相対移動する。レンズ保持部材と撮像素子保持部材はそれぞれ、該レンズ保持部材と該撮像素子保持部材とが相対移動する全範囲において光軸方向に直交する方向にて互いにオーバーラップして像面側レンズユニットと光学フィルタとの間の空間を囲む防塵壁5c,10cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子を備えた撮像装置では、該撮像素子の受光面よりも被写体側に赤外線カットフィルタや光学ローパスフィルタ等の光学フィルタが配置されている。撮像素子の受光面や光学フィルタに撮像装置の外部から侵入した塵埃や撮像装置の内部の機械的な摺動面で発生した摩耗粉等の異物が付着すると、該異物の像が撮像素子によって捉えられ、撮影画像に写り込むおそれがある。
撮像素子の受光面と光学フィルタにおける撮像素子側の面については、これらの間の空間を囲む防塵構造を設けることで、異物の付着が防止されることが多い。一方、圧電素子によって光学フィルタを振動させることで、該光学フィルタにおける被写体側の面(撮像素子側の面とは反対側の面)に付着した異物を除去する機構が、特許文献1にて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−264096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にて開示されたような異物除去機構を設けると、撮像装置の構造が複雑化したり撮像装置が大型化したりする。
また、上記異物除去機構をズーム等のために撮像素子と光学フィルタとを含む撮像素子ユニットを光軸方向に移動させる撮像装置に採用した場合、異物除去機構が追加されて重量が増加した撮像素子ユニットを光軸方向に移動させる駆動機構の大型化を招く。
本発明は、構造の複雑化や装置の大型化を招くことなく光学フィルタの被写体側の面への異物の付着を防止できるようにした撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面としての撮像装置は、光学フィルタと、該光学フィルタを通過した光により形成された光学像を光電変換する撮像素子と、光学フィルタとともに撮像素子を保持する撮像素子保持部材と、該光学像を形成する撮影光学系と、該撮影光学系のうち最も光学フィルタの近くに配置された像面側レンズユニットを保持するレンズ保持部材とを有する。レンズ保持部材と撮像素子保持部材とは、撮影光学系の光軸方向において相対移動する。そして、レンズ保持部材と撮像素子保持部材はそれぞれ、該レンズ保持部材と該撮像素子保持部材とが相対移動する全範囲において光軸方向に直交する方向にて互いにオーバーラップして像面側レンズユニットと光学フィルタとの間の空間を囲む防塵壁を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、レンズ保持部材と撮像素子保持部材とに設けた防塵壁によって像面側レンズユニットと光学フィルタとの間の空間を囲み、該空間への異物の侵入を阻止する。このため、本発明によれば、撮像装置の構造の複雑化や撮像装置の大型化を招くことなく光学フィルタの被写体側の面への異物の付着を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例である撮像装置の分解斜視図。
【図2】実施例の撮像装置の断面図。
【図3】実施例の撮像装置の被写体側から見た断面図。
【図4】実施例の撮像装置における第5レンズユニットと撮像素子ユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0009】
図1、図2および図3には、本発明の実施例であるビデオカメラ(撮像装置)のレンズ鏡筒部の構成を示している。
レンズ鏡筒部内には、被写体側から順に、凸凹凸凹凸の5つのレンズユニットにより構成された撮影光学系が収容されている。以下の説明において、被写体側を前側、撮像素子側を後側という場合がある。
図2において、被写体側(図の左側)から順に、L1は固定の第1レンズユニット、L2,L3はそれぞれ、光軸方向に移動して変倍(ズーム)を行う第2レンズユニットおよび第3レンズユニットである。L4は光軸方向に直交する方向(以下、レンズ径方向という)にシフトして像振れ補正を行う第4レンズユニットである。L5は光軸方向に移動してフォーカシングを行う第5レンズユニットである。第5レンズユニットL5は、後述する光学フィルタの最も近くに配置された像面側レンズユニットである。
1は第1レンズユニットL1を保持する前玉鏡筒である。前玉鏡筒1の外周には、周方向120度間隔で3つのカムフォロア1aが取り付けられている。該3つのカムフォロア1aは、固定鏡筒12に周方向120度間隔で形成された貫通穴部12aに係合している。カムフォロア1aと貫通穴部12aとの係合および前玉鏡筒1の外周面1bおよび固定鏡筒の内周面12bとの嵌め合いによって、前玉鏡筒1(第1レンズユニットL1)は位置決め保持されている。
2は第2レンズユニットL2を保持する第2移動枠であり、3は第3レンズユニットL3を保持する第3移動枠である。4は第4レンズユニットL4をレンズ径方向にシフトさせる防振ユニットである。防振ユニット4は、固定鏡筒12に対して位置決めされて固定されている。5は第5レンズユニットL5を保持する第5移動枠(レンズ保持部材)である。
8は撮影光学系によって形成された光学像を光電変換して電気信号を出力する撮像素子であり、CCDセンサやCMOSセンサ等によって構成されている。6は撮影光学系を通って撮像素子8に到達する光量を調節する絞りである。
9は撮像素子8の受光面よりも前側(撮像素子8と第5レンズユニットL5との間)に配置された赤外線カットおよび光学ローパス機能を有する光学フィルタである。10は光学フィルタ9とともに撮像素子8を保持する撮像素子保持枠(撮像素子保持部材)である。撮像素子8、光学フィルタ9および撮像素子保持枠10は、撮像素子ユニットを構成する。
撮像素子保持枠10(撮像素子ユニット)は、後述する撮像素子駆動機構によって光軸方向に移動される。第2および第3レンズユニットL2,L3の光軸方向への移動とともに撮像素子保持枠10が光軸方向に移動されることで、ズームが行われる。
7はフォーカスベースであり、後部鏡筒13に位置決めされて固定されている。後部鏡筒13とフォーカスベース7との間には、2本の直進ガイド部材19,20が固定されている。
直進ガイド部材19には、第5移動枠5に設けられたスリーブ部5aが光軸方向に移動可能に係合している。これにより、第5移動枠5は、光軸方向にガイドされる。また、直進ガイド部材20には、第5移動枠5に設けられたU溝部5bが光軸方向に移動可能に係合している。これにより、第5移動枠5の直進ガイド部材19を中心とした回転が阻止される。
22は磁石と摩擦材とを接合して構成されたスライダ(接触部材)であり、後部鏡筒13に位置決めされて固定されている。第5移動枠5には、電気−機械エネルギー変換素子と該電気−機械エネルギー変換素子によって振動が励起される板状の弾性部材とにより構成された振動子28が位置決めされて固定されている。
振動子の弾性部材は強磁性体であり、強磁性体がスライダ22の磁石と引き合うことによって、スライダ22の摩擦材の圧接面と振動子の弾性部材の光軸方向2箇所に形成された圧接面とが圧接される。
これらスライダ22および振動子によって構成される振動型リニアアクチュエータでは、フレキシブル配線板(不図示)を介して2つの位相が異なる周波信号(パルス信号又は交番信号)が電気−機械エネルギー変換素子に入力される。これにより、振動子の圧接面に楕円運動が発生し、スライダ22の圧接面に光軸方向の駆動力が発生する。この駆動力によって、第5移動枠5が光軸方向に移動する。この振動型リニアアクチュエータは、第5移動枠駆動機構を構成する。
11は撮像素子用フレキシブル配線板(FPC)であり、撮像素子保持枠10に保持された撮像素子8への電気信号の入出力を行う。
14は後部カバーであり、後部鏡筒13の後部に位置決めされて固定されている。後部鏡筒13と後部カバー14との間には、2本の直進ガイド部材15,16が固定されている。直進ガイド部材15には、撮像素子保持枠10に設けられたスリーブ部10aが光軸方向に移動可能に係合している。これにより、撮像素子保持枠10は、光軸方向にガイドされる。また、直進ガイド部材16には、撮像素子保持枠10に設けられたU溝部10bが光軸方向に移動可能に係合している。これにより、撮像素子保持枠10の直進ガイド部材15を中心とした回転が阻止される。
撮像素子FPC11は、撮像素子保持枠10の光軸方向への移動を可能とするように曲げられて、後部鏡筒13の内周面と撮像素子保持枠10の外周面との間に配置されている。
17は磁石と摩擦材とを接合して構成されたスライダ(接触部材)であり、後部鏡筒13に位置決めされて固定されている。撮像素子保持枠10には、電気−機械エネルギー変換素子と該電気−機械エネルギー変換素子により振動が励起される板状の弾性部材とにより構成される振動子18が位置決めされて固定されている。
振動子18の弾性部材は強磁性体であり、強磁性体がスライダ17の磁石と引き合うことによりスライダ17の摩擦材の圧接面と振動子18の弾性部材の光軸方向2箇所に形成された圧接面とが圧接される。
これらスライダ17および振動子18によって構成される振動型リニアアクチュエータでは、フレキシブル配線板(不図示)を介して2つの位相が異なる周波信号(パルス信号又は交番信号)が電気−機械エネルギー変換素子に入力される。これにより、振動子18の圧接面に楕円運動が発生し、スライダ17の圧接面に光軸方向の駆動力が発生する。この駆動力によって、撮像素子保持枠10が光軸方向に移動する。この振動型リニアアクチュエータは、撮像素子駆動機構を構成する。
次に、本実施例において、光学フィルタ9の前面(被写体側の面)に異物が付着するのを防止する構造について、図4を用いて説明する。図4(a)および図4(b)はそれぞれ、第5移動枠5と撮像素子保持枠10との光軸方向での間隔が最も短い状態および最も長い状態を示している。つまり、第5移動枠5と撮像素子保持枠10は、図4(a)に示した最近接状態と図4(b)に示した最離間状態との間の範囲で相対移動する。
光学フィルタ9と撮像素子8は撮像素子保持枠10によってそれらの外周が囲まれるように保持されており、これにより光学フィルタ9の後面(撮像素子側の面)と撮像素子8の受光面との間の空間は封止されている。このため、該空間に外部から異物が侵入することはなく、光学フィルタ9の後面と撮像素子8の受光面への異物の付着は防止されている。
一方、第5移動枠5には、後方(撮像素子保持枠10の方向)に延びる防塵壁5cが形成されている。また、撮像素子保持枠10には、前方(第5移動枠5の方向)に延びる防塵壁10cが形成されている。防塵壁5c,10cは、第5移動枠5と撮像素子保持枠10が相対移動する全範囲においてレンズ径方向にて互いにオーバーラップして第5レンズユニットL5の後面と光学フィルタ9の前面との間の空間(以下、レンズ−フィルタ間空間という)Sを囲む。つまり、防塵壁5c,10cは、いわゆる入れ子構造(印籠構造)によって、光軸方向にて相対移動しても該レンズ−フィルタ間空間Sを塞いだ状態を維持する。
これにより、レンズ−フィルタ間空間Sに、その外部(例えば、レンズ鏡筒部の外部)から異物が侵入して、光学フィルタ9の前面等に付着することを防止できる。したがって、光学フィルタ9の前面に付着した異物の像が撮影画像に写り込むことを防止できる。
なお、本実施例では、第5移動枠5の防塵壁5cが、撮像素子保持枠10の防塵壁10cの外周に配置されているが、防塵壁10cが防塵壁5cの外周に配置されていてもよい。
第5移動枠5における防塵壁5cの基端部の内側および撮像素子保持枠10における防塵壁10cの基端部の外側にはそれぞれ、被写体側および像面側に凹んだ凹部5d,10dが形成されている。これら凹部5d,10dは、図4(a)に示すように、第5移動枠5と撮像素子保持枠10とが近接したときに、第5移動枠5と防塵壁10cの先端部とが干渉したり撮像素子保持枠10と防塵壁5cの先端部とが干渉したりするのを避けるために設けられている。
振動型アクチュエータからは、スライダ17,22と振動子18,28との間の摩擦によって摩耗粉が発生する。また、直進ガイド部材15,16,19,20に対して第5移動枠5および撮像素子保持枠10のスリーブ部5a,10aおよびU溝部5b,10bが摺動すると、ここからも摩耗粉が発生する可能性がある。
このため、本実施例では、防塵壁5c,10cは、前述した直進ガイド部材15,16,19,20および振動型アクチュエータ(スライダ17,22および振動子18,28)よりもレンズ径方向における内側に形成されている。これにより、上記のようにレンズ鏡筒部の内部で発生した摩耗粉等の異物がレンズ−フィルタ間空間Sに侵入して光学フィルタ9の前面等に付着することを防止できる。
防塵壁5cの内周面と防塵壁10cの外周面との間には、わずかなクリアランスが設けられている。これにより、防塵壁5c,10cが互いに摺動して摩耗粉が発生したり第5移動枠5および撮像素子保持枠10の光軸方向駆動に対する負荷が増加したりすることを避けることができる。また、このクリアランスは、第5移動枠5と撮像素子保持枠10が光軸方向に移動してレンズ−フィルタ間空間Sの体積が増減する際の空気の出入り通路にもなる。
ただし、防塵壁5cと防塵壁10cのいずれかに異物は通さない通気フィルタで覆った空気通路を形成した上で、防塵壁5cの内周面と防塵壁10cの外周面との間に粘着剤やグリスを塗布してもよい。これにより、クリアランスを通過した異物がレンズ−フィルタ間空間Sに侵入することを効果的に防止できる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記実施例では、レンズ保持部材と撮像素子保持部材とがともに光軸方向に移動する場合について説明した。しかし、本発明は、これらのうち一方のみが光軸方向に移動する場合でも(すなわち、レンズ保持部材と撮像素子保持部材が相対移動すれば)、適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
撮影画像への異物の写り込みを防止する撮像装置を提供できる。
【符号の説明】
【0011】
5 第5移動枠
5c,10c 防塵壁
8 撮像素子
9 光学フィルタ
10 撮像素子保持枠
L5 第5レンズユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルタと、
該光学フィルタを通過した光により形成された光学像を光電変換する撮像素子と、
前記光学フィルタとともに前記撮像素子を保持する撮像素子保持部材と、
前記光学像を形成する撮影光学系と、
該撮影光学系のうち最も前記光学フィルタの近くに配置された像面側レンズユニットを保持するレンズ保持部材とを有し、
前記レンズ保持部材と前記撮像素子保持部材は、前記撮影光学系の光軸方向において相対移動し、
前記レンズ保持部材と前記撮像素子保持部材はそれぞれ、該レンズ保持部材と該撮像素子保持部材とが相対移動する全範囲において前記光軸方向に直交する方向にて互いにオーバーラップして前記像面側レンズユニットと前記光学フィルタとの間の空間を囲む防塵壁を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記レンズ保持部材と前記撮像素子保持部材のうち少なくとも一方の保持部材を前記光軸方向に移動させる駆動機構と、該一方の保持部材を前記光軸方向にガイドするガイド部材とを有し、
前記防塵壁は、前記駆動機構および前記ガイド部材よりも前記光軸方向に直交する方向における内側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子保持部材を前記光軸方向に移動させる撮像素子駆動機構を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−170122(P2011−170122A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34243(P2010−34243)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】