説明

撮像補助具、撮像装置、撮像送受信システム、及びプログラム

【課題】携帯端末によって撮像対象の画像をより確実に且つより鮮明に撮像することが可能な携帯端末用の撮像補助具等を提供する。
【解決手段】本発明による撮像デバイス1は、直筒部11と錘筒部10とで構成される胴部を備えている。直筒部11の内壁には、他方端10a側に向かって発光する光源Sが斜めに突設されている。また、直筒部11の内壁における直筒部11の一方端11aと光源Sとの間には、拡大レンズ部Lが固定設置されている。さらに、直筒部11の一方端11aの周縁には、所定の幅の環状を成す装着部13が接合されている。この撮像デバイス1が、携帯電話機等の携帯端末の内蔵カメラ機構の部位に接続されて本発明による撮像装置が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像補助具、撮像装置、撮像送受信システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の携帯端末で人の眼等を撮像し、得られた画像を送受信するシステムとして、例えば特許文献1には、被撮像者の眼に向けて光を照射するための照射部と、目の反射光によって被撮像者の眼の画像を得るための撮像部と、周囲から眼へ入り込む光を遮断するための庇状の遮光部とを備える携帯電話端末を用いて撮影した眼の画像情報を、インターネット等の通信回線を介して別システムへ送信するシステムが記載されている。
【特許文献1】特開2005−204017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の携帯電話端末では、遮光部が庇状を成しているため、周囲の外光を十分に遮断することができず、例えば、眼の虹彩の状態等を十分に鮮明に写し出すことができないおそれがあった。また、具体的な構造として、光源が撮像部に隣接配置されており眼球の略中央に対向しているため、眼球の中央部とその周辺に光源が映り込んでしまい、虹彩全体の画像を確実に撮影することが困難な場合があった。さらに、患者の眼の虹彩の状態に基づいて病後又は術後の診断をするような場合には、虹彩のみならず、その周囲のいわゆる白眼(眼球における虹彩と瞳孔とを除いた部位)の鮮明な画像が必要なことがあるが、上記従来の携帯電話端末では、上記のような眼球への光源の映り込みによって、特に白眼の部位の画像を取得し難い傾向にあった。
【0004】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、携帯端末によって撮像対象の画像をより確実に且つより鮮明に撮像することが可能な携帯端末用の撮像補助具、撮像装置、撮像送受信システム、及び携帯端末用のプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明による撮像補助具は、撮像対象の画像を取得する撮像部、その画像のデータを記憶する(好ましくは仮想記憶(Virtual Memory)によって一時的に記憶する)第1の記憶部、その画像のデータを医用デジタル画像のデータへ変換する画像変換部、その医用デジタル画像のデータを記憶する(好ましくは仮想記憶によって一時的に記憶する)第2の記憶部、その撮像対象に対して付与された識別情報を入力する入力部、及び、第1の通信回線を介してその医用デジタル画像のデータを送信する第1の送信部を有する携帯端末に装脱着可能なものであって、筒状を成し、一方端が携帯端末の撮像部の周囲に装着される胴部と、胴部の内壁に設けられており、撮像対象に対して光を出射する光源と、胴部の一方端と光源との間に設置された拡大レンズ部とを備える。
【0006】
ここで、「医用デジタル画像」とは、DICOM Committee発行の Digital Imaging and Communications in Medicine (DICOM) 「医用におけるデジタル画像と通信(DICOM)」規格に則ったデータフォーマットを有する画像を示す。
【0007】
このように構成された撮像補助具では、その筒状の胴部の一方端が携帯端末の撮像部の周囲に装着され、その胴部の他方端が撮像対象(被撮像体)に宛がわれる。例えば、撮像対象が人の眼の場合、その眼を覆うように撮像補助具の他方端が眼の周囲に当てられる。この状態で、光源から撮像対象である眼に対して光が出射されて眼が照らされ、眼の像が光源と胴部の一方端との間に設けられた拡大レンズ部で拡大されて、携帯端末の撮像部でその拡大画像が撮像される。このとき、撮像対象の周りが胴部で略完全に覆われるので、眼へ入射する周囲からの外光は略完全に遮断され、画質及びコントラストが改善された鮮明な画像が得られる。また、光源が胴部の内壁に設置されており、撮像部の前方で且つ光軸からずれた位置から光が出射されるので、光源は、撮像対象の中心からずれた位置のわずかな部分に映り込む。よって、目的とする撮像部位及びその周辺部位の画像が確実に撮像される。
【0008】
また、本発明よる撮像装置は、本発明の撮像補助具を用いて構成されるものであり、すなわち、撮像対象の画像を取得する撮像部、画像のデータを記憶する(好ましくは仮想記憶によって一時的に記憶する)第1の記憶部、画像のデータを医用デジタル画像のデータへ変換する画像変換部、医用デジタル画像のデータを記憶する(好ましくは仮想記憶によって一時的に記憶する)第2の記憶部、撮像対象に対して付与された識別情報を入力する入力部、及び、第1の通信回線を介して医用デジタル画像のデータを送信する第1の送信部を有する携帯端末と、上記本発明の撮像補助具とを備える。
【0009】
このような撮像装置では、本発明の撮像補助具を用いて撮像部で取得された鮮明な画像が、第1の記憶部に記憶され、その画像のデータが、画像変換部で医用デジタル画像のデータに変換され、そのデータが第2の記憶部に記憶される。なお、第1の記憶部及び第2の記憶部のいずれか一方が他方を兼ねてもよい。また、入力部からは、撮像対象に対して付与された識別情報(例えば、撮像対象が人の身体部位であれば、その個人の識別番号、或いは、その個人と身体部位を表す識別番号等が挙げられる。)が入力される。そして、第1の送信部により、第1の通信回線を介して医用デジタル画像のデータが外部へ送信される。この際、入力された識別情報も同じ送信先へ送信されることが好ましい。
【0010】
また、医用デジタル画像のデータ、又は、医用デジタル画像のデータとその変換前の画像のデータは、第1の送信部による医用デジタル画像のデータの送信後に、第1の記憶部及び/又は第2の記憶部から削除されることが好ましい。こうすれば、一般に医用デジタル画像のデータ量は通常の画像データに比して大きいので、第1の記憶部及び/又は第2の記憶部の使用容量を削減できる。さらに、それらのデータを削除する時期(タイミング)としては、医用デジタル画像のデータを全て送信してからその全てを一括で削除しても、医用デジタル画像のデータを送信しながら送信した例えばパケット単位毎に逐次削除しても構わない。
【0011】
さらに、本発明による撮像送受信システムは、本発明の撮像装置を用いて有効に構成されるものであり、上記本発明による撮像装置と、第1の通信回線を介して送信された医用デジタル画像のデータ及び識別情報のデータを受信する受信部と、医用デジタル画像のデータを識別情報に関連付けて記憶する第3の記憶部と、医用デジタル画像のデータを、第2の通信回線を介して表示装置へ送信する第2の送信部とを備える。
【0012】
かかる撮像送受信システムによれば、撮像装置から第1の通信回線を介して送信された医用デジタル画像のデータ及び識別情報のデータが受信部で受信され、第3の記憶部で医用デジタル画像のデータが識別情報に関連付けられて記憶され、さらにその医用デジタル画像のデータが、第2の通信回線を介して表示装置へ送信される。例えば、撮像対象が患者の眼であれば、その患者の識別番号(ID)等に関連付けてその眼の医用デジタル画像を第3の記憶部に蓄積していくことができ、遠隔地にいる患者の眼の状態が記録された言わば医療電子カルテが、第3の記憶部を有する例えばサーバ装置又はストレージ装置内に形成される。
【0013】
蓄積された医用デジタル画像のデータ(例えば、他の情報を含む医療電子カルテのような形式でもよい)は、適時に、第2の通信回線を介して表示装置へ送信され、例えば、その患者の診療を行っている医師がその表示装置に表示された眼の画像を見ることにより、時間と場所を問わない遠隔医療システムを構築することができる。そして、本発明の撮像補助具を装着した撮像装置で撮像した撮像対象の画像は、上述の如く鮮明且つ確実なものなので、かかる遠隔医療においても、医師等による十分な診察や確実な判断・治療が可能となる。
【0014】
またさらに、本発明によるプログラムは、上記本発明の撮像装置を有効に構成するためのプログラムであって、コンピュータとしての上記携帯端末を、撮像対象の画像を取得する撮像部と、撮像対象の画像のデータを記憶する(好ましくは仮想記憶によって一時的に記憶する)第1の記憶部と、画像のデータを医用デジタル画像のデータへ変換する画像変換部と、医用デジタル画像のデータを記憶する(好ましくは仮想記憶によって一時的に記憶する)第2の記憶部と、撮像対象に対して付与された識別情報を入力する入力部と、第1の通信回線を介して医用デジタル画像のデータを送信する第1の送信部として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の撮像補助具、撮像装置、撮像システム、及びプログラムによれば、携帯端末によって撮像対象の画像をより確実に且つより鮮明に、また簡便に撮像することが可能であり、かかる高品質な画像を外部へ送信できるので、有効な遠隔医療等の遠隔処理システムの構築を実現することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0017】
図1(A)〜(D)は、本発明による撮像補助具の好適な一実施形態を示す図であり、それぞれ、正面図、側面図、下面図、及び上面図である。撮像デバイス1(撮像補助具)は、略筒状を成しており、一方端11aを有する直円筒状の直筒部11と、その直筒部11に接続されており、他方端10aに向かって徐々に径が大きくなるように円錘状に形成された錘筒部10とで構成される胴部を備えている。錘筒部10と直筒部11とは、別体に形成されて例えば螺合により接続されており、或いは一体に形成されていてもよい。
【0018】
また、直筒部11の内壁には、他方端10a側に向かって発光する白色発光ダイオード(LED)等の光源Sが斜めに突設されている。この光源Sは、図示しない電源と回動スイッチ12が接続された回路に電気的に接続されており、回動スイッチ12のその周方向の回動操作によって点灯と消灯が行われるように構成されている。
【0019】
さらに、直筒部11の内壁における直筒部11の一方端11aと光源Sとの間には、拡大レンズ部Lが固定設置されている。拡大レンズ部Lは、直筒部11の一方端11a側に配置される撮像対象の像を拡大するものであり、ルーペ等の拡大レンズ装置に使用されるレンズ又はレンズ系を適宜選択して使用することができる。なお、図示においては、2枚構成の平凸レンズ系を模して示した。またさらに、直筒部11の一方端11aの周縁には、所定の幅の環状を成す面ファスナー等の装着部13が接合されている。
【0020】
図2(A)及び(B)は、撮像デバイス1が接続される携帯端末の一例を示す図であり、それぞれ、背面図及び正面図である。カメラ付き携帯電話機2(携帯端末)は、互いに摺動可能に設けられた前面筐体20と後面筐体21とを備えている。後面筐体21の裏面側の図示上部隅には、レンズカバーで保護された内蔵カメラ機構22(撮像部)が配置されている。また、内蔵カメラ機構22のレンズカバーの周囲には、撮像デバイス1の直筒部11の一方端11a周縁に接合された装着部13と接続される所定の幅の環状を成す面ファスナー等の装着部23が接合されている。
【0021】
また、後面筐体21の表面側の図示下部には、数字や文字等を入力するためのテンキー部25が設けられている。一方、前面筐体20の表面側には、各種の文字情報や画像情報が表示されるディスプレイ26(表示部)と、その図示下方には、複数の操作ボタンから成る操作キー部24が設けられている。このように、操作キー部24及びテンキー部25から入力部が構成されている。
【0022】
ここで、図3は、携帯電話機2に撮像デバイス1を装着した状態を示す概略斜視図である。撮像デバイス1の一方端11aに接合された装着部13を、携帯電話機2の後面筐体21に接合された装着部23に面着させることにより、撮像デバイス1が携帯電話機2に脱着可能に固定され、本発明による撮像装置の好適な一実施形態である撮像装置3が構成される。
【0023】
図4は、撮像装置3の概略機能ブロック図である。撮像装置3は、CPU等から成る演算処理部30(画像変換部)に、操作キー部24及びテンキー部25から成るキー入力部3a(入力部)、内蔵カメラ機構22から成る撮像部3b、各種情報を外部へ送信するための送信部3c(第1の送信部)、各種情報を外部から受信するための受信部3d、ディスプレイ26から成る表示部3f、内蔵メモリやメモリカード等の記録媒体3g、各種のアプリケーションプログラムやその他の動作プログラムが記憶されたROM3i、ROM3iに記憶されたデータを一時的に読み出して保持するRAM3h、音声を入力するためのマイク等を有する音声入力部3j、音声を出力するためのスピーカ等を有する音声出力部3kが接続されたものである。なお、これらは、BUS等の伝送路によって接続されていてもよい。また、これらへは、電源31から駆動電力が供給される。
【0024】
ここで、図8は、上記構成を有する撮像装置3を用いて撮像対象を撮像するための本発明によるプログラムの実行手順の一例を示すフロー図である。まず、撮像デバイス1を携帯電話機2の所定位置へ装着して撮像装置3を準備する(ステップS1)。次に、携帯電話機2のキー入力部3aの一つである操作キー部24を操作してアプリケーションモードを起動し、ROM3iに記憶された所定のプログラムを選択して、操作を開始する(ステップS2)。ここでは、画像データの送信先情報を含み、個人の識別情報であるID番号と認証用パスワードを入力するステップと、撮像対象の撮影を実行するステップと、撮像した画像のデータを医用デジタル画像のデータに変換するステップと、その医用デジタル画像のデータを選択された送信先へ送信するステップと、少なくとも送信された医用デジタル画像を削除するステップとを実行するためのアプリケーション(プログラム)を選択する。
【0025】
なお、このアプリケーションでは、撮像した撮像対象の画像データ、及び、変換された医用デジタル画像データ、並びに、入力されたID番号のデータは、仮想記憶(Virtual Memory)機構によって処理される。仮想記憶は、オペレーティングシステムによって実現されてもよいし、アプリケーションモードの起動アプリケーション、或いは上記選択されたアプリケーションが仮想記憶機構を自前で保有していてもよい。
【0026】
また、仮想記憶の実装方式としては、特に制限されず、セグメント方式、ページング方式等が挙げられる。例えば、ページング方式では、メモリスワッピングによって物理メモリ空間と仮想アドレス空間が結びつけられ、仮想記憶が実現される。このメモリスワッピングにおける物理メモリとしては、CPU等である演算処理部30内のレジスタ、演算処理部30内又は演算処理部30に隣接したキャッシュメモリ(例えば、SRAMから成る場合のRAM3h)、主記憶装置としてのRAM(例えば、DRAMから成る場合のRAM3h)、補助記憶装置としての記録媒体3g等を使用でき、これらのなかでは、仮想記憶を実現するための容量、及び、読み書き速度の観点から、キャッシュメモリやRAMを用いることが好ましい。
【0027】
次いで、ID番号と認証用パスワードの入力要求画面がディスプレイ26(表示部3f)に表示され、撮像者はそれらの情報をキー入力部3aの一つであるテンキー部25から入力する(ステップS3)。それから、画像の撮像様式(例えば、撮像枚数、データ形式等)を選択する画面がディスプレイ26に表示されるので、撮像者はいずれかの撮像様式を選択入力する(ステップS4)。これにより、内蔵カメラ機構22(撮像部3b)が起動し、撮像が可能な状態になる。
【0028】
次に、撮像デバイス1の他方端10a(図1(A)参照)を、撮像対象、例えば、人の身体部位に押し当て、撮像デバイス1の筒状胴部によって外光を遮断した状態で、回動スイッチ12を手動で回動操作して光源Sを点灯し、ディスプレイ26に表示された画像を確認しながら携帯電話機2の操作キー部24を操作して内蔵カメラ機構22のシャッターを押すことにより、その身体部位の拡大画像を取得する(ステップS5)。なお、人の眼等の顔の部位を本人が撮像する場合には、携帯電話機2の場合、撮像デバイス1を宛がった状態ではディスプレイ26を確認することが困難であるが、ディスプレイ26の前方に鏡等を置いて表示画像を反射させることにより、容易に確認することができる。撮像された画像のデータは、アプリケーションが確保している物理メモリ空間上に画成された仮想アドレス空間上で一時的に記憶・保持する(ステップS6)。
【0029】
そして、更に撮像を行う場合には、ステップS4からステップS6の一連の処理を繰り返し行い、撮像が全て終了すると、ディスプレイ26に送信の可否を問い合わせる画面が表示される。ここで、操作キー部24を操作して送信を選択すると、上記仮想アドレス空間に一時的に記憶された画像のデータ(一般的には、JPEGやPNGフォーマットのデータ)を、演算処理部30による演算処理により、医用デジタル画像のデータ(DICOMフォーマット)へ変換する。変換された医用デジタル画像のデータは、仮想アドレス空間上に一時的に記憶・保持する(ステップS7)。
【0030】
このように、本実施形態では、仮想記憶によって実現される物理メモリ空間上の仮想アドレス空間が、第1の記憶部及び第2の記憶部として機能する。ただし、物理的には、使用される物理メモリ空間が、第1の記憶部及び第2の記憶部に相当するものとしてもよい。例えば、仮想記憶において選択される物理メモリがRAM3hであれば、RAM3h又はその中の物理メモリ空間が第1の記憶部及び第2の記憶部に相当する。なお、医用デジタル画像のデータへ変換される前のJPEG画像等のデータは、バックアップデータとして、例えば、記録媒体3g上に生成されたデータフォルダ等に格納してもよい。
【0031】
それから、演算処理部30は、データ変換後又はデータ変換を行いながら(例えば、通信するパケット単位)、ID番号の情報のデータと共に、医用デジタル画像のデータを、物理メモリ空間上の仮想アドレス空間から読み出し、先に選択された送信先へ送信する(ステップS8)。また、医用デジタル画像のデータ送信後又はデータ送信を行いながら、物理メモリ空間上の仮想アドレス空間に一時的に記憶されたID番号の情報のデータ及び医用デジタル画像のデータを削除(破棄)する(ステップS9)。このように、データ容量が比較的大きな医用デジタル画像のデータを送信の都度削除することにより、携帯電話機2のメモリ資源不足を防止できる。
【0032】
そして、医用デジタル画像のデータ送信が完了すると、その旨を告知する画面がディスプレイ26に表示され、操作キー部24を操作して終了を選択することにより、一連のアプリケーションの操作を完了する(ステップS10)。
【0033】
ここで、図9〜図11は、撮像装置3と同様の構成を有する実機により人の眼を撮像した画像の例を示す写真であり、それぞれ、眼に疾患のない健全な人の眼、約半年前に角膜移植をした患者の眼、及び、約1週間前に白内障手術を受けた患者の眼の撮像例である。これらの写真から明らかなように、撮像装置3で取得したいずれの画像においても、虹彩の状態(模様)及びその周囲の白眼の状態(充血の有無等)が鮮明に写し出されており、また、光源Sの反射像は、眼の中央からずれて虹彩の一部に映り込んでいるのみであり、いずれの画像も、例えば医師等による診断に何ら支障をきたすことのない良好なものであることが確認された。
【0034】
図5は、本発明による撮像システムの好適な一実施形態の概略構成を示す模式図である。撮像装置3で取得された撮像対象の画像のデータは、上述のとおり医用デジタル画像のデータへ変換され、ID番号の情報とともに、送信部3cから送信先へ送出される。送出されたデータは、携帯電話網及び/又は有線電話網等の通信回線K1(第1の通信回線)を介して無線及び/又は有線で医用データサーバ4へ送信(出力)される。
【0035】
図6は、医用データサーバ4の概略機能ブロック図である。医用データサーバ4は、CPU等から成る演算処理部40に、各種情報を外部から受信するための受信部4d、各種情報を外部へ送信するための送信部4c(第2の送信部)、内蔵メモリ、メモリカード、ハードディスク等の記録媒体4g(第3の記憶部)、各種の処理及び動作プログラム(ユーザー登録・認証、医師登録・認証プログラムを含む)が記憶されたROM4i、ROM4iに記憶されたデータを一時的に読み出して保持するRAM4hが接続されたものである。
【0036】
なお、これらは、BUS等の伝送路によって接続されていてもよい。また、これらへは、電源41から駆動電力が供給される。さらに、送信部4c及び受信部4dで行われる送受信は、先述した「医用におけるデジタル画像と通信(DICOM)」規格に則った通信プロトコル(DICOMプロトコル)及びSSL(Secure Socket Layer)によって行われる。また、医用データサーバ4に医用デジタル画像を表示して視認できる表示・閲覧手段(ビューワ)が搭載されていても好適である。このように、撮像装置3及び医用データサーバ4から、本発明の撮像送受信システムが構成されている。
【0037】
撮像装置3から送信されたID番号の情報及び医用デジタル画像のデータは、医用データサーバ4の受信部4dで受信され、記録媒体4gに記憶される。この際、医用デジタル画像のデータはID番号の情報に関連付けて記憶される。図7は、記録媒体4gに記憶される医用デジタル画像のデータ等のデータ構造の一例を示す模式図である。この例では、ID番号とDICOM画像(医用デジタル画像)のデータの他に、例えば、そのID番号で識別される患者の医療情報(診療担当医、診察日、診察内容、診察結果、過去の既往症、施術履歴、投薬記録、等)、その他患者の個人情報等が、ID番号に関連付けられて記憶されており、医用データサーバ4上に言わば医療電子カルテのデータベースが構築されている。また、ID番号の履歴管理のための他のデータベースを同じ又は異なる医用データサーバ4上に用意しても好ましい。
【0038】
このように医用データサーバ4の記録媒体4gに記憶された医用デジタル画像のデータは、送信部4cにより、例えば、インターネットを含む通信網、LAN等の通信回線K2(第2の通信回線)を介して例えば病院等の医療機関に設置された表示・閲覧装置5へ送信される。なお、インターネットを経由する場合、医用データサーバ4は、VPN(Virtual Private Network)機能(装置)、特にSSL-VPN機能(装置)を備えていることが好ましい。また、表示・閲覧装置5としては、例えば、医用データサーバ4をサーバとするクライアント機である医師等が使用するコンピュータ及びディスプレイ(VPNによる送受信)、ディスプレイを有する携帯電話機及びそれに装備された閲覧プログラム(SSLによる送受信)、等が挙げられる。
【0039】
さらに、かかる表示・閲覧装置5で医用デジタル画像を閲覧した医師等は、その所見、診察結果、投薬処方(処方箋)等の診察情報を、コンピュータから入力し、通信回線K2を介して医用データサーバ4へ送信してもよい。それらの情報のデータは、医用データサーバ4の受信部4dで受信され、その患者のID番号に関連付けて記録媒体4gに記憶され、これにより医療電子カルテが更新される。また、同じ情報のデータを、携帯電話網及び/又は有線電話網等の通信回線K3を介して無線及び/又は有線(電子メール等でSSL送信)で、撮像装置3に用いられる患者の携帯電話機2等の携帯端末に送信してもよいし、電話やファクシミリ等で送信してもよい。これにより、遠隔地に居住する患者に対する遠隔医療システムを実現することができる。
【0040】
なお、上述したとおり、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。例えば、撮像対象は、人の身体部位に限られない。また、携帯端末は、カメラ等の撮像手段を備えるものであれば、携帯電話機2に制限されない。さらに、撮像装置3で撮像する画像は、動画であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明した通り、本発明の撮像補助具、撮像装置、撮像システム、及びプログラムによれば、携帯端末によって撮像対象の画像をより確実に且つより鮮明に、また簡便に撮像することが可能であり、かかる高品質な画像を外部へ送信できるので、有効な遠隔医療等の遠隔処理システムの構築に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A)〜(D)は、それぞれ、本発明による撮像補助具の好適な一実施形態を示す正面図、側面図、下面図、及び上面図である。
【図2】(A)及び(B)は、それぞれ、撮像デバイス1が接続される携帯端末の一例を示す背面図及び正面図である。
【図3】携帯電話機2に撮像デバイス1を装着した状態を示す概略斜視図である。
【図4】撮像装置3の概略機能ブロック図である。
【図5】本発明による撮像システムの好適な一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図6】医用データサーバ4の概略機能ブロック図である。
【図7】記録媒体4gに記憶される医用デジタル画像のデータ等のデータ構造の一例を示す模式図である。
【図8】撮像装置3を用いて撮像対象を撮像するための本発明によるプログラムの実行手順の一例を示すフロー図である。
【図9】撮像装置3で撮像した眼に疾患のない健全な人の眼の画像を示す写真である。
【図10】撮像装置3で撮像した約半年前に角膜移植をした患者の眼の画像を示す写真である。
【図11】撮像装置3で撮像した約1週間前に白内障手術を受けた患者の眼の画像を示す写真である。
【符号の説明】
【0043】
1…撮像デバイス(撮像補助具)、2…携帯電話機(携帯端末)、3…撮像装置、3a…キー入力部(入力部)、3k…音声出力部、3j…音声入力部、3g…記録媒体、3b…撮像部、3c…送信部(第1の送信部)、3d…受信部、3f…表示部、3i…ROM、3h…RAM、4…医用データサーバ、4c…送信部(第2の送信部)、4d…受信部、4g…記録媒体(第3の記憶部)、4i…ROM、4h…RAM、5…表示・閲覧装置、10…錘筒部(胴部)、10a…他方端、11…直筒部(胴部)、11a…一方端、12…回動スイッチ、13,23…装着部、20…前面筐体、21…後面筐体、22…内蔵カメラ機構(撮像部)、24…操作キー部(入力部)、25…テンキー部(入力部)、26…ディスプレイ(表示部)、30…演算処理部(画像変換部)、31,41…電源、40…演算処理部、K1…通信回線(第1の通信回線)、K2…通信回線(第2の通信回線)、K3…通信回線(第3の通信回線)、L…拡大レンズ部、S…光源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象の画像を取得する撮像部、該画像のデータを記憶する第1の記憶部、該画像のデータを医用デジタル画像のデータへ変換する画像変換部、該医用デジタル画像のデータを記憶する第2の記憶部、該撮像対象に対して付与された識別情報を入力する入力部、及び、第1の通信回線を介して該医用デジタル画像のデータを送信する第1の送信部を有する携帯端末に装脱着可能な撮像補助具であって、
筒状を成し、一方端が前記携帯端末の前記撮像部の周囲に装着される胴部と、
前記胴部の内壁に設けられており、前記撮像対象に対して光を出射する光源と、
前記胴部の一方端と前記光源との間に設置された拡大レンズ部と、
を備える撮像補助具。
【請求項2】
撮像対象の画像を取得する撮像部、該画像のデータを記憶する第1の記憶部、該画像のデータを医用デジタル画像のデータへ変換する画像変換部、該医用デジタル画像のデータを記憶する第2の記憶部、該撮像対象に対して付与された識別情報を入力する入力部、及び、第1の通信回線を介して該医用デジタル画像のデータを送信する第1の送信部を有する携帯端末と、
請求項1記載の撮像補助具と、
を備える撮像装置。
【請求項3】
請求項2記載の撮像装置と、
前記第1の通信回線を介して送信された前記医用デジタル画像のデータ及び前記識別情報のデータを受信する受信部と、
前記医用デジタル画像のデータを前記識別情報に関連付けて記憶する第3の記憶部と、
前記医用デジタル画像のデータを、第2の通信回線を介して表示装置へ送信する第2の送信部と、
を備える撮像送受信システム。
【請求項4】
請求項2記載の携帯端末を、
撮像対象の画像を取得する撮像部と、
前記撮像対象の画像のデータを記憶する第1の記憶部と、
前記画像のデータを医用デジタル画像のデータへ変換する画像変換部と、
前記医用デジタル画像のデータを記憶する第2の記憶部と、
前記撮像対象に対して付与された識別情報を入力する入力部と、
第1の通信回線を介して前記医用デジタル画像のデータを送信する第1の送信部と、
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−93118(P2008−93118A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276921(P2006−276921)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(506260113)サイナップス・コミュニケーションズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】