説明

撮影装置、および移動時間計時装置

【課題】 撮影装置を用いた撮影作業中に、経路に沿って移動するのに要する移動時間(部分的な競技時間)を自動的に計時するための技術を提供する。
【解決手段】 軌跡認識部105は移動物体が移動した経路を軌跡として認識する。CPU104は、それが認識した軌跡を軌跡記憶部107に記憶されている軌跡パターンと比較して、一致する軌跡パターンを特定する。そのパターンが特定できた場合、ハードタイマにより計時していた撮影時間をリセットしてその計時を再スタートさせる。計時した撮影時間は、撮像部101が出力する画像データと併せて映像保存部107に保存させ、随時、表示部109に画像データと共に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動物体の経路に沿った移動に要する移動時間を自動的に計時するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、被写体を撮影できる撮影装置は、デジタルカメラ、ビデオカメラといった形で広く普及している。被写体の画像をデジタルデータとして保存するタイプの撮影装置は、小型化・軽量化が進んだこともあって、より様々な場所で撮影に用いられている。そのこともあって、競技等を観戦する場合にも多くの人が撮影装置を携帯していると考えられる。
【0003】
競技を観戦する人の多くは、自身にとって印象的、或いは決定的なシーン(以降「重要シーン」と総称)を撮影したいと考えていると思われる。撮影装置による撮影は、静止画撮影、動画撮影の2つに大別することができる。動画撮影では、撮影したい競技者(移動物体)を撮影によって得られる画像(撮影対象画像)を常に確認しなければならない。静止画撮影では、重要シーンの撮影を逃さないように撮影対象画像を常に確認しなければならない。このため、重要シーンを撮影したいと考える人は、何れの撮影を選択したとしても、その撮影のための作業(撮影作業)には常に撮影対象画像を確認するという確認作業が含まれることになる。
【0004】
撮影画像を常に確認しなければならないような場合、ユーザーには他の作業を行ううえで大きな制約が生じることになる。行えなくなる作業、行うのが困難となる作業が生じることになる。このことから、撮影作業中に、望むものを得るためにユーザーが別作業を行う必要性を回避させることには大きな意味があると考えられる。
【0005】
競技のなかには、時間を争う時間競技がある。決められた距離を走る陸上競技や、その距離を泳ぐ水泳競技はその代表である。そのような時間競技では、或る競技者がトラック1周を走るのに要する時間(陸上競技)、レーンを往復するのに要する時間(水泳競技)、などの部分的な競技時間を計りたいと考える人も居ると考えられる。重要シーンを撮影したいと考えている人は、競技への関心も強いと思われるから、そのような時間を計りたいという要望を持っている確率は高いと推測できる。このようなことから、撮影作業中に部分的な競技時間(経路に沿って移動するのに要する移動時間)を自動的に計時することに対する潜在的な要望は大きいと考えられる。
【0006】
特許文献1に記載された従来の撮影装置では、撮影開始から撮影終了までの撮影時間をラップタイムとして計時するようにしている。このため、部分的な競技時間は、撮影開始、撮影終了をユーザーがそれぞれ指示することで計時できるようになっている。しかし、そのような指示を行わなければならない場合、競技時間の計時のために動画撮影が行えるシーンが制限される。競技全体の動画撮影を望んでいても、部分的な競技時間の計時のために中断が生じてしまい、全体の動画撮影は不可能となる。このことから、そのような制限を生じさせないようにすることは非常に重要であると言える。
【特許文献1】特開平4―316285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、撮影装置を用いた撮影作業中に、経路に沿って移動するのに要する移動時間(部分的な競技時間)を自動的に計時するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の撮影装置は、被写体として撮影可能な移動物体の経路に沿った移動を自動的に検出するための移動検出手段と、移動検出手段による検出結果を用いて、移動物体が経路に沿った移動に要する移動時間を計時する移動時間計時手段と、移動時間計時手段が計時した移動時間をユーザーに通知するための通知手段と、を具備する。
【0009】
なお、上記移動検出手段が移動物体の移動を検出する経路は、該経路に沿った移動によって移動方向、及び位置が一致すると見なせるポイントに該移動物体が戻る周回タイプ、及び往復タイプのうちの少なくとも一方であり、移動時間計時手段は、移動検出手段による検出結果を用いて、ポイント間の移動に要する移動時間を計時する、ことが望ましい。また、撮影として動画撮影を行っている間に移動時間計時手段が計時した移動時間は動画と併せて保存できる、ことが望ましい。
【0010】
本発明の移動時間計時装置は、移動物体の経路に沿った移動に要する移動時間を自動的に計時できるものであり、移動物体の経路に沿った移動を自動的に検出するための移動検出手段と、移動検出手段による検出結果を用いて、移動物体が経路に沿った移動に要する移動時間を計時する移動時間計時手段と、を具備する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、移動物体の経路に沿った移動を自動的に検出し、その検出結果を用いて、移動物体が経路に沿った移動に要する移動時間を計時する。このため、ユーザーは、その移動時間を計時するための特別な作業を行うことなく、その移動時間を計時させることができる。それにより、その移動時間を計時したいときには、そのときに行うべき作業に対しより集中できるようになる。その移動時間の計時を撮影装置に行わせる場合には、その撮影装置を用いた撮影作業中に、計時された移動時間をユーザーが随時、確認できるようにさせることができる。このことから、より高い利便性が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態による撮影装置の構成図である。
その撮影装置は、例えばデジタルビデオカメラなどの動画撮影可能な撮影装置に本発明を適用したものであり、本実施形態による移動時間計時装置が搭載されている。図1に示すように、被写体を撮影するための撮像部101と、RAM102と、被写体とされた移動物体の経路に沿った移動を検出するための軌跡パターンを記憶した軌跡記憶部103と、装置全体の制御を行うCPU104と、その移動物体が移動した経路を軌跡として認識するための軌跡認識部105と、CPU104が実行するプログラムや各種データを格納したROM106と、撮像部101によって得られた画像データを保存するための映像保存部107と、各種操作子を有するスイッチ(SW)部108と、例えば液晶表示装置に画像を表示させるものである表示部109と、を備えて構成されている。本実施形態による移動時間計時装置は、RAM102、軌跡記憶部103、CPU104、軌跡認識部105、ROM106、及びスイッチ部108によって実現される。
【0013】
スイッチ部108は、ユーザーが各種指示を行うためのものである。その指示を行うための操作子として、撮影が可能な撮影モードを設定するための撮影モードスイッチ、映像保存部107に保存された画像データを再生可能な再生モードを設定するための再生モードスイッチ、ユーザーが軌跡パターンを登録可能な軌跡記録モードを設定するための軌跡記録モードスイッチ、撮影開始/終了を指示するための撮影スイッチ等が設けられている。そのような操作子を有するスイッチ部108は、それらの操作子に対して行われた操作を検出し、その操作が行われた操作子、その操作内容を示す操作情報を生成してCPU104に送出するサブCPUを備えている。CPU104は、ROM106に格納されたプログラムをRAM102に読み出して実行することにより、その操作情報を解析して、装置全体の制御を行う。
【0014】
上記撮像部101は、例えば光学系、その光学系を構成するレンズなどを移動させるための1つ以上のモータ、そのモータを駆動するための駆動用回路、その光学系によって結像された像をアナログの電気信号に変換するイメージセンサ、そのイメージセンサが出力する電気信号をデジタルデータ(画像データ)に変換するA/D変換器、その変換器から出力された画像データに対して画像処理を施す画像処理回路、などによって構成されるものである。例えば可搬性の記録媒体(例えばメモリカード)にアクセスする媒体駆動装置である映像保存部107には、その画像処理として圧縮処理が施された後の画像データが出力されて保存される。表示部109には、圧縮処理を施していない画像データが出力されることにより、撮影によって得られる画像(撮影対象画像)が表示される。ここでは理解を容易とするために、画像データに対する圧縮処理や解凍処理といった画像処理については言及しないこととする。
【0015】
動画撮影は、その撮影対象画像を随時、保存していくような形で行われ(保存される画像は撮影対象画像より単位時間当たりの数が多い、といった違いは存在する)、静止画はその撮影対象画像を保存するような形で行われる。ユーザーは動画撮影、静止画撮影の何れかを選択して撮影を行うようになっているが、ここでは動画撮影のみを想定して説明する。
【0016】
軌跡認識部105は、例えば競技者といった移動物体が移動した経路を軌跡として検出(認識)し、検出した軌跡をCPU104に送出する。そのCPU104は、その軌跡を軌跡記憶部103に記憶された軌跡パターンと比較することにより、何れかの軌跡パターンと一致する(と見なせる)軌跡を特定(認識)する。その軌跡パターンは、移動物体の軌跡として考慮すべきパターン(軌跡パターン)であり、それを記憶した軌跡記憶部103は例えばフラッシュメモリである。
【0017】
CPU104は、軌跡パターンと一致する軌跡を認識してから、再度、そのような軌跡を認識するまでの時間を計時し、その時間を表示部109に表示させ、動画撮影によって得られた画像データ(動画)と併せて映像保存部107に保存する。その時間の計時は、例えば内蔵のハードタイマを用いて行う。最終的に計時した時間は、軌跡パターンに対応する経路に沿って移動物体が1回、移動するのに要した移動時間である。
【0018】
このようにして、本実施形態では、計時した移動時間は画像データの再生時に提示できるようにしつつ、リアルタイムにユーザーに提示するようにしている。このため、ユーザーは、撮影作業のみを行いながら、移動物体の移動時間を確認することができる。その移動時間は自動的に表示されるために、ユーザーにとっては高い利便性が得られることになる。
【0019】
上述したような軌跡パターンに沿った移動物体の移動に要する移動時間の計時は、撮影が可能な撮影モード設定時のみ行わせるようにしている。これは、撮影したいと考えるシーンを逃してしまわないように、撮影中、或いは撮影を行おうとするユーザーが撮影作業に対しより専念できる環境を提供するためである。特に詳細な説明は省略するが、実際には移動時間の計時はそれを有効とするサブモードが設定された場合にのみ行うようにしている。そのサブモードが設定されている場合、ユーザーの選択が動画撮影では撮影中のみ、選択が静止画撮影では常時、移動時間の計時を有効とさせている。
【0020】
被写体の撮影条件や位置関係などによって、1画像で撮影できる範囲は変化する。これは、移動物体が移動する経路全体が写るように撮影されるとは限らないことを意味する。経路の一部分のみが写るように撮影する場合、移動物体の動きに合わせて撮影範囲を変化させることになるが、そのように変化させると、移動していない物体が移動しているように写ることになる。このため、移動物体(地球上では、地球に対して相対的に移動している物体が相当する)の特定自体も困難となるが、たとえ移動物体を正確に特定できたとしても、撮影のために取り込んだ画像間の関係を正確に把握しなければ(例えば経路が陸上競技で用いられるトラックであれば、各画像がトラックのどの場所を写したものか正確に特定することに相当)、その移動物体が移動した経路の特定は非常に困難である。なぜなら、移動物体の動きから移動方向や移動速度を常に正確に特定できるとは限らないためである。
【0021】
撮影することを望む被写体は普通、撮影画像の中央付近に写るように撮影する。そうであれば、移動物体を被写体として撮影する場合、たとえ経路全体を1画像で撮影できるとしても、その移動物体の移動に合わせて撮影装置を動かすことが多いということになる。本実施形態では、そのことに着目して、撮影装置の動きから移動物体の移動を検出するようにしている。撮影作業を行うことで生じる撮影装置の動きを利用することから、移動の検出(更にはその検出結果を用いた移動時間の計時)のためにユーザーに特別な作業を行わせることは回避される。
【0022】
図2は、移動物体が移動する経路例を説明する図である。図2(a)は陸上競技や競馬のトラック、図2(b)はプールのレーンをそれぞれ示している。
陸上競技には、図2(a)に示すようなトラック(周回タイプの経路)を1周以上、走るものがある。水泳競技には、図2(b)に示すようなレーン(往復タイプの経路)を1回以上、泳ぐものがある。前者では、1周、走るのに要する時間を計時しようとする場合が多いと考えられる。後者では、1往復、泳ぐのに要する時間を計時しようとする場合が多いと考えられる。
【0023】
図2(a)に示すようなトラックを走る競技者、図2(b)に示すようなレーンを泳ぐ競技者を撮影しようとする人は、同じ場所で止まって撮影する場合が多いと考えられる。これは、撮影中は周りに居る人や地形の変化等に対応するのが困難になるからである。そうであれば、経路(競技者)と撮影者の位置関係は変化しないとの仮定が成立する。その仮定では、撮影者は撮影装置の位置や向き(姿勢)を随時、変化させながら撮影を行うことになる。図2(a)、及び図2(b)に示すような経路に沿った移動を想定するならば、或る地点(ポイント)を通過、或いはスタートした競技者は再び同じ地点に戻ってくるから、撮影装置の位置や向きも同様に、或る地点での位置や向きの少なくとも一方には、競技者の移動に合わせて経路に特有の変化が生じ、競技者がその地点に戻ったときには、前にその地点に居たときの位置や向きと一致する(より正確には許容範囲内での一致である)ということになる。
【0024】
その位置や向き(姿勢)は、競技者が経路に沿った移動を行っている途中に一致することがありうる。例えば図2(b)に示すようなレーンでは競技者は往復の直線移動をすることから、つまり往路と復路は同じであることから、その位置や向きは一致してしまうことになる。しかし、競技者の位置は同じであっても移動方向は反対である。その移動方向の違いは、撮影装置の位置、向きのうちの少なくとも一方の変化内容となって現れる。このことから、本実施形態では、撮影装置の位置、及び向きの一致の他に、それらの変化内容も考慮して移動物体の経路に沿った移動を認識するようにしている。それにより、レーンの或る地点を泳いでいた競技者がターンしてその地点に再び戻るまでの軌跡が何れかの軌跡パターンと一致すると判定するようなことを回避している。
【0025】
経路に沿って移動する移動物体としては、競技者が多いと思われる。このことから、以降、特に断らない限り、競技者は移動物体の意味で用いることにする。
撮影装置の位置、及び向きは、それを直接的に検出しても良いが、それぞれの変化を検出するようにしても良い。これは、上記特有の変化が生じたことが分かれば良いためである。本実施形態では、向き(姿勢)の変化検出用にジャイロ、位置の変化検出用に加速度センサを採用している。3次元で位置の変化を検出できるように、加速度センサは複数、設けている。その場合、軌跡認識部105は、ジャイロ、加速度センサ、及びそれらの出力を処理して撮影装置の位置、向き(姿勢)の変化量を計算し、計算したそれらの変化量から撮影対象となっている場所を仮想平面上で特定する処理回路を備えたものとなる。それにより競技者の軌跡は、仮想平面上で特定した場所を時系列に連続的につなげたものとして認識される(図3)。場所を仮想平面上で特定するのは、経路に沿って移動する移動物体を撮影するための撮影装置の動きを正規化するためである。
【0026】
撮影者は常に一人の競技者を撮影しているとは限らない。途中にその競技者とは離れた位置に居る別の被写体を撮影するようなことがありうる。そのような撮影を行った場合、認識される軌跡には、経路に沿って移動した競技者の撮影によって得られる軌跡が含まれたものとなる。このことから、CPU104は、軌跡認識部105が認識した軌跡のなかから対象とすべきと考えられる部分を必要に応じて切り出すようにさせている。その部分とは、上述したように、少なくとも撮影装置の位置、向きが共に一致すると見なせ、且つ競技者の移動方向(特定された場所の変化から特定される)が反対と見なせる時点間に得られた軌跡である。そのような部分の切り出しを行った場合には、その部分が軌跡パターンと比較する対象となる。以降、混乱を避けるために、特に断らない限り、軌跡とは軌跡パターンと比較する対象のものを指す意味で用いる。
【0027】
その軌跡は、当然のことながら、競技者(経路)と撮影者(撮影装置のユーザー)の間の位置関係等によって大きさが変化する。このことから、軌跡と一致する軌跡パターンの特定は、パターンマッチング技術を用いて行っている。
【0028】
認識される軌跡は、競技者(経路)と撮影者の間の位置関係等によって、その形状が変化する。例えばトラックは真上からは図2(a)のように見えるが、斜め上からはより細長く見える。このことから、軌跡パターンは、経路別に用意するだけでなく、経路を見る状況別にも用意している。パターンマッチング技術は、軌跡を回転させての認識に対応できるようにする意味からも採用している。
【0029】
上述したように、経路(競技者が移動する範囲)と撮影者の位置関係によってその経路の見え方は変化する。また、その経路としては、余り考えられないような特異な形をしたものもありうる。このことから、本実施形態では、軌跡パターンを登録可能な軌跡記録モードを用意し、ユーザーが任意の軌跡パターンを登録できるようにしている。任意の軌跡パターンを登録することにより、そのときの状況に合った、競技者の移動時間を計時すべき軌跡(経路)を常に正確に判定させることができるようになる。
【0030】
図3は、軌跡パターンの登録方法を説明する図である。
その軌跡パターンの登録が可能な軌跡記録モードは、軌跡記録モードスイッチを操作して設定する。その設定は、1つの軌跡パターンの登録のみを有効、つまり1つの軌跡パターンの登録により解除するようになっている。
【0031】
登録する軌跡パターンは、例えば撮影スイッチを操作してから再度、操作するまでの間、撮影装置の位置や向き(姿勢)を変化させることで認識された軌跡としている。図3は、その軌跡として、野球場のダイヤモンドを登録する様子を示している。撮影対象画像の中央にそのダイヤモンドに沿った線が常に写るように撮影装置を動かした場合には、そのダイヤモンドの見え方と同じ形状の軌跡パターンが認識されて登録されることとなる。その登録は、軌跡認識部104が認識した軌跡をCPU104が受け取り、軌跡記憶部103に格納することで行われる。
【0032】
そのCPU104は、図4〜図10に示す各処理を実行することにより、撮影装置全体の制御を行う。次に図4〜図10を参照して、CPU104が実行する処理について詳細に説明する。図4〜図10に示す各処理は、CPU104が、ROM106に格納されたプログラムを読み出して実行することで実現される。
【0033】
図4は、全体処理のフローチャートである。始めに図4を参照して、全体処理について詳細に説明する。
先ず、ステップ401では、電源のオンによりイニシャライズを行う。次のステップ402では、軌跡記憶モードスイッチ(SW)がオンされたか否か判定する。そのスイッチをユーザーが操作した場合、その旨を示す操作情報がスイッチ部108からCPU104に送出されることから、判定はYESとなってステップ403に移行し、軌跡パターンの登録に対応するための軌跡記録処理を実行した後、上記ステップ402に戻る。そうでない場合には、判定はNOとなってステップ404に移行する。
【0034】
ステップ404では、撮影モードスイッチ(SW)がオンされたか否か判定する。そのスイッチをユーザーが操作した場合、判定はYESとなってステップ405に移行し、撮影を可能とするための撮影処理を実行した後、上記ステップ402に戻る。そうでない場合には、判定はNOとなってステップ406に移行する。
【0035】
ステップ406では、再生モードスイッチ(SW)がオンされたか否か判定する。そのスイッチをユーザーが操作した場合、判定はYESとなってステップ407に移行し、映像保存部107に保存された画像データの再生を可能とするための再生処理を実行した後、上記ステップ402に戻る。そうでない場合には、判定はNOとなってそのステップ402に移行する。
【0036】
特には図示していないが、ステップ406の判定がNOとなった場合、ステップ402に戻るまでの間に、他のスイッチへの操作に対応するための処理が実行される。そのような処理は本発明に直接は関係しないため、ここでは省略している。図5〜図10に示す各処理でも同様に、本発明に直接は関係しない処理は省略している。
【0037】
図5は、上記ステップ403として実行される軌跡記録処理のフローチャートである。次に図5を参照して、その記録処理について詳細に説明する。その記録処理の実行によって軌跡パターンとして登録する軌跡は、ユーザーが撮影スイッチを操作してからそれを再度、操作するまでの間に検出されたものとしている。それにより、撮影を行うようにして登録すべき軌跡パターンをユーザーに入力させるようにしている。
【0038】
先ず、ステップ501では、軌跡記憶部103の空きエリアを取得、より具体的には新たに登録する軌跡パターンを格納する空きエリアを確保する。また、撮像部101をオンさせ、それが取り込んだ画像を撮影対象画像として表示部109への表示を開始する。その次のステップ502では、軌跡の入力開始を指示するための撮影スイッチ(SW)の操作(オン)が行われたか否か判定する。軌跡記録モードの設定後、そのスイッチをユーザーが初めて操作した場合、判定はYESとなってステップ503に移行する。そうでない場合には、つまりそのスイッチへの2度目の操作が行われた、或いはそのスイッチへの操作が行われていない場合には、判定はNOとなってステップ508に移行する。
【0039】
ステップ503では、変数であるオンフラグに1を代入する。続くステップ504では、軌跡認識部105をオンさせ、軌跡の検出を開始させる。その次に移行するステップ505では、オンフラグが1か否か判定する。そのオンフラグは、軌跡の検出を行う期間を管理するためのものであり、代入された1の値は、軌跡の検出を行う期間であることを示している。このことから、その期間であった場合、判定はYESとなってステップ506に移行し、軌跡認識部105が新たに検出した分の軌跡(軌跡データ)を取り込み、次のステップ507でその軌跡を軌跡記録部507にストアするための処理を実行した後、上記ステップ502に戻る。それにより、再度、撮影スイッチをユーザーが操作するまでの間、軌跡の検出、その保存を行う。そうでない場合には、判定はNOとなり、これまで検出された軌跡を1つの軌跡パターンとして軌跡記録部103に保存するための処理を行った後、一連の処理を終了する。
【0040】
軌跡認識部105から取り込んだ軌跡は一旦、RAM102に確保した領域に保存し、保存した軌跡が或る程度のデータ量となってから軌跡記憶部103にストアさせる。これは、軌跡記憶部(フラッシュメモリ)103への書き込み回数をより抑えるためである。ステップ505の判定がNOとなって実行する処理は、その記憶部103に書き込んだ軌跡を1ファイルとするためのものである。
【0041】
上記ステップ502の判定がNOとなって移行するステップ508では、撮影スイッチがオフ、つまり軌跡の入力終了を指示するための撮影スイッチ(SW)の操作が行われたか否か判定する。軌跡記録モードの設定後、そのスイッチへの2度目の操作をユーザーが行った場合、判定はYESとなり、ステップ509でオンフラグに0を代入し、更にステップ510で軌跡認識部105をオフさせた後、上記ステップ505に移行する。そうでない場合には、つまり撮影スイッチをユーザーが操作していない場合には、判定はNOとなって直接、そのステップ505に移行する。
【0042】
図6は、図4に示す全体処理内でステップ405として実行される撮影処理のフローチャートである。次にその再生処理について、図6に示すそのフローチャートを参照して詳細に説明する。上述したように、ここでは動画撮影のみを想定して簡略化している。
【0043】
撮影モードが設定されると、CPU104は撮像部101をオンさせ、それが取り込んだ画像を撮影対象画像として表示部109への表示を開始させる。撮影を行う期間の管理用の変数である撮影フラグには2を代入する。そのようなことを行った後にステップ901に移行し、撮影開始を指示するための撮影スイッチのオンが行われたか否か判定する。撮影モード設定後、そのスイッチをユーザーが初めて操作した場合、判定はYESとなってステップ902に移行する。そうでない場合には、ここでは撮影スイッチを操作していない、或いはそれへの操作が2度目であった場合には、判定はNOとなってステップ908に移行する。
【0044】
ステップ902では、撮影フラグに、撮影を行う期間であることを示す値の1を代入する。次のステップ903では、軌跡認識部105をオンさせ、軌跡の検出を開始させる。その次のステップ904では、撮影時間計時用のカウントをスタートさせる。これは、ハードタイマの内容をクリアして計時をスタートさせることで行う。その次に移行するステップ905では、撮影フラグの値の判定を行う。その値が0であった場合、その旨が判定され、画像データの映像保存部107へのファイルとしてのストアを完了させるための処理を行った後、一連の処理を終了する。その値が1であった場合には、その旨が判定されてステップ906に移行する。その値が2であった場合には、その旨が判定されて上記ステップ901に戻る。それにより、撮影開始が指示されるのを待つ。
【0045】
ステップ906では、撮像部101から出力された画像データ(撮像データ)を取り込む。続くステップ907では、取り込んだ画像データを撮影時間と共に映像保存部107にストアするための処理を行う。また、必要に応じて、取り込んだ画像データを撮影時間と共に表示部109に表示させて、その表示内容の更新を行う。それにより、最終的に計時した撮影時間だけでなく、その途中経過も確認可能とさせている。そのようなことを必要に応じて行った後は、図7のステップ912に移行して、軌跡認識部105が新たに認識(検出)した軌跡を取り込み、次のステップ913でそれをRAM102に確保したバッファにストアする。ステップ914にはその後に移行する。
【0046】
ステップ914では、バッファにストアした軌跡が軌跡記憶部103に登録されている何れかの軌跡パターンと一致したか否か判定する。一致すると見なせる軌跡パターンが登録されていた場合、判定はYESとなり、計時した撮影時間(移動時間)をリセットして再スタートさせ(ステップ915)、撮影時間を計時した撮影期間を明確にするために映像保存部107に編集点を挿入し(ステップ916)、更にバッファをクリアしてから(ステップ917)、図6のステップ901に戻る。そうでない場合には、判定はNOとなり、次にそのステップ901に移行する。
【0047】
このようにして、本実施形態では、編集点を挿入することにより、撮影スイッチへの操作によって撮影を行った撮影期間を、撮影時間を計時した期間、つまり競技者が1経路の移動に要した期間別に自動的に分割するようにしている。そのような自動的な分割は行わなくとも良く、それを行わせるか否かをユーザーに選択させるようにしても良い。
【0048】
上述したように、本実施形態では、軌跡認識部105が認識した軌跡(ここではバッファにストアされた軌跡が対応)から必要に応じて切り出しを行うようにしている。その切り出しを行う場合、計時した撮影時間は切り出した部分の移動に要した時間とは一致しないことが多いと考えられる。このことから、認識した軌跡から切り出しを行った場合には、計時した撮影時間が正しくない可能性があることを通知すようにしても良い。その通知は、認識した軌跡とそれから切り出した部分の関係を考慮して、必要に応じて行うようにしても良い。
【0049】
図6のステップ901の判定がNOとなって移行するステップ908では、撮影終了を指示する撮影スイッチへの操作が行われたか否か判定する。その操作をユーザーが行った場合、判定はYESとなり、撮影フラグに0を代入し、軌跡認識部105をオフさせ、更に撮影時間の計時を停止させてから(ステップ909〜911)、上記ステップ905に移行する。そうでない場合には、つまりユーザーが撮影スイッチを操作していない場合には、判定はNOとなってそのステップ905に移行する。
【0050】
図8は、図4に示す全体処理内でステップ407として実行される再生処理のフローチャートである。次にその再生処理について、図8に示すそのフローチャートを参照して詳細に説明する。その再生処理が実行される再生モードでは、そのモード用の機能がスイッチ部108が有する所定の複数のスイッチに割り当てられる。図中の「全再生SW(スイッチ)」「キャプタ再生SW(スイッチ)」及び「モードクリアSW(スイッチ)」はその機能が動的に割り当てられたものである。全再生スイッチは、映像保存部107に保存された全ての画像データの再生を指示する機能が割り当てられたスイッチを表し、キャプタ再生スイッチは、指定する画像データのみの再生を指示する機能が割り当てられたスイッチを表している。モードクリアスイッチは、再生モードの設定解除を指示する機能が割り当てられたスイッチを表している。
【0051】
先ず、ステップ601では、再生モード画面を表示部109に表示させる。続くステップ602では、全再生スイッチがオンされたか否か判定する。そのスイッチをユーザーが操作した場合、判定はYESとなってステップ603に移行し、全ての画像データの再生に対応するための全再生処理を実行した後、そのステップ601に戻る。そうでない場合には、判定はNOとなってステップ604に移行する。
【0052】
ステップ604では、キャプタ再生スイッチがオンされたか否か判定する。そのスイッチをユーザーが操作した場合、判定はYESとなり、画像データ選択用のキャプタ選択画面を表示部109に表示させ(ステップ605)、再生対象の画像データをそれに割り当てた番号(キャプタ番号)によりユーザーに指定させ(ステップ606)、更に指定された画像データを再生するためのキャプタ再生処理を実行してから(ステップ607)、上記ステップ601に戻る。そうでない場合には、判定はNOとなってステップ608に移行する。
【0053】
ステップ608では、モードクリアスイッチがオンされたか否か判定する。そのスイッチをユーザーが操作した場合、判定はYESとなり、通常画面を表示部109に表示させた後、一連の処理を終了する。そうでない場合には、判定はNOとなって上記ステップ602に戻る。それにより、再生させる画像データを選択できる状態を維持させる。
【0054】
図9は、上記ステップ603として実行される全再生処理のフローチャートである。次に図9を参照して、その全再生処理について詳細に説明する。図中の「スタートSW(スイッチ)」及び「ストップSW(スイッチ)」は、この全再生処理の実行時に動的に機能が割り当てられたスイッチである。スタートスイッチは、再生開始を指示する機能が割り当てられたスイッチを表している。ストップスイッチは、その終了を指示する機能が割り当てられたスイッチを表している。
【0055】
先ず、ステップ701では、スタートスイッチがオンされたか否か判定する。そのスイッチをユーザーが操作していない場合、判定はNOとなってステップ712に移行する。そうでない場合には、判定はYESとなってステップ702に移行する。
【0056】
ステップ702では、再生を行うべき期間を管理するための変数STFに、その期間であることを示す値の1を代入する。次のステップ703では、映像保存部107の再生開始位置、つまり最初に再生する画像データを指定する。それに続くステップ704では、再生時間の計時をスタートさせる。その計時は、例えば上記撮影時間と同様に行うものである。再生時間の計時をスタートさせた後はステップ705に移行する。
【0057】
ステップ705では、変数STFの値が1か否か判定する。その値が1でなかった場合、判定はNOとなって上記ステップ701に戻る。そうでない場合には、判定はYESとなり、ステップ706に移行して、計時した再生時間に対応する画像データを映像保存部107から読み出す。その後はステップ707に移行する。
【0058】
ステップ707では、読み出したデータの種類を判定する。読み出したデータが存在しなかった場合、その旨が判定されてステップ713に移行する。そのデータが画像(撮像)データであった場合には、その旨が判定されてステップ708に移行する。そのデータが編集点であった場合には、その旨が判定されてステップ710に移行する。
【0059】
ステップ708では、読み出した画像データを表示部109に表示させることにより再生を行う。次のステップ709では、計時した再生時間を重ねて表示させる。その後は上記ステップ701に戻る。
【0060】
一方、ステップ710では、再生時間の計時をリセットして再スタートさせる。続くステップ711では、次に再生すべき画像データ(キャプタ)の再生開始位置を指定する。上記ステップ701にはその後に移行する。
【0061】
上記ステップ701の判定がNOとなって移行するステップ712では、ストップスイッチがオンされたか否か判定する。そのスイッチをユーザーが操作した場合、判定はYESとなり、画像データの表示部109への表示を停止させてから通常画面を表示させ、変数STFに0を代入してから(ステップ713、714)、一連の処理を終了する。そうでない場合には、判定はNOとなって上記ステップ705に移行する。
【0062】
最後に、図10を参照して、図8に示す再生処理内でステップ607として実行されるキャプタ再生処理について詳細に説明する。
そのキャプタ再生処理で実行されるステップの処理の内容の多くは上記全再生処理におけるそれと基本的に同じである。このことから、処理内容が基本的に同じものには同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
キャプタ再生処理では、ステップ702で変数STFに1を代入した後、ステップ801に移行して、ユーザーが入力したキャプタ番号に対応する画像データ(ファイル)を再生するための開始位置を指定する。その後は同様にステップ704に移行する。
【0064】
ステップ706の処理を実行した後はステップ802に移行して、映像保存部107から読み出したデータが画像データ(撮像データ)か否か判定する。そのデータが画像データでなかった場合、判定はNOとなり、再生が完了したとしてステップ713に移行する。そうでない場合には、判定はYESとなってステップ708に移行する。
【0065】
なお、本実施形態では、計時した撮影時間(移動時間)を動画と併せて随時、保存するようにしているが、最終的に計時した撮影時間のみを保存するようにしても良い。撮影時間は保存しないようにしても良く、或いは、保存させるか否かユーザーに選択させるようにしても良い。静止画撮影の場合には、例えば直前に計時した最終的な撮影時間を静止画と併せて保存できるようにしても良い。
【0066】
また、本実施形態では、競技者(移動物体)を撮影する際、撮影装置はその移動に合わせて動かすとの仮定から、撮影装置の動きにより競技者の経路に沿った移動を検出するようにしているが、撮影する際に取り込む撮影対象画像を解析してその検出を行うようにしても良い。或いはその解析結果をその検出に併せて用いるようにしても良い。
【0067】
上述したような撮影装置、或いは移動時間計時装置を実現させるようなプログラムは、CD−ROM、DVD、或いはメモリカード等の記録媒体に記録させて配布しても良い。公衆網等の通信ネットワークを介して、そのプログラムの一部、若しくは全部を配信するようにしても良い。そのようにした場合には、ユーザーはプログラムを取得して撮影装置、或いはデータ処理装置等にロードすることにより、その装置に本発明を適用させることができる。このことから、記録媒体は、プログラムを配信する装置がアクセスできるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態による撮影装置の構成図である。
【図2】移動物体が移動する経路例を説明する図である。
【図3】軌跡パターンの登録方法を説明する図である。
【図4】全体処理のフローチャートである。
【図5】軌跡記録処理のフローチャートである。
【図6】撮影処理のフローチャートである。
【図7】撮影処理のフローチャートである(続き)。
【図8】再生処理のフローチャートである。
【図9】全再生処理のフローチャートである。
【図10】キャプタ再生処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
101 撮像部
102 RAM
103 軌跡記憶部
104 CPU
105 軌跡認識部
106 ROM
107 映像保存部
108 スイッチ部
109 表示部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影できる撮影装置において、
前記被写体として撮影可能な移動物体の経路に沿った移動を自動的に検出するための移動検出手段と、
前記移動検出手段による検出結果を用いて、前記移動物体が前記経路に沿った移動に要する移動時間を計時する移動時間計時手段と、
前記移動時間計時手段が計時した移動時間をユーザーに通知するための通知手段と、
を具備することを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記移動検出手段が前記移動物体の移動を検出する経路は、該経路に沿った移動によって移動方向、及び位置が一致すると見なせるポイントに該移動物体が戻る周回タイプ、及び往復タイプのうちの少なくとも一方であり、
前記移動時間計時手段は、前記移動検出手段による検出結果を用いて、前記ポイント間の移動に要する移動時間を計時する、
ことを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記撮影として動画撮影を行っている間に前記移動時間計時手段が計時した移動時間は動画と併せて保存できる、
ことを特徴とする請求項1、または2記載の撮影装置。
【請求項4】
移動物体の経路に沿った移動に要する移動時間を自動的に計時できる装置であって、
前記移動物体の前記経路に沿った移動を自動的に検出するための移動検出手段と、
前記移動検出手段による検出結果を用いて、前記移動物体が前記経路に沿った移動に要する移動時間を計時する移動時間計時手段と、
を具備することを特徴とする移動時間計時装置。
【請求項5】
前記移動検出手段が前記移動物体の移動を検出する経路は、該経路に沿った移動によって移動方向、及び位置が一致すると見なせるポイントに該移動物体が戻る周回タイプ、及び往復タイプのうちの少なくとも一方であり、
前記移動時間計時手段は、前記移動検出手段による検出結果を用いて、前記ポイント間の移動に要する移動時間を計時する、
ことを特徴とする請求項4記載の移動時間計時装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−93432(P2007−93432A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284420(P2005−284420)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】