説明

操向制御装置を備えたコンバイン

【課題】ブレーキターンモードでの作業時、圃場の一部分だけ湿田になっている場合に減速ターンモードにするためには旋回モード選択手段でブレーキターンモードから減速ターンモードに切り替えるしか方法がなかった。
【解決手段】減速ターンモードとブレーキターンモードとを選択する旋回モード選択手段31aと、運転部6に設けた操向レバー11と、旋回モード選択手段31aであらかじめ選択された旋回モードにしたがって操向レバー11の左右傾動操作により機体を左右に操向制御する操向制御装置を備えたコンバインにおいて、操向レバー11に旋回モード切替手段23を設け、操向制御装置は、旋回モード選択手段31aによりブレーキターンモードを選択中に旋回モード切替手段23を操作すると、一時的に旋回モードを減速ターンモードに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操向制御装置を備えたコンバインに係り、詳しくは、運転席に設けた操向レバーと、選択手段であらかじめ選択された旋回モードにしたがって操向レバーの左右傾動操作により機体を左右に操向制御する操向制御装置を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは、機体に搭載したエンジンの動力を走行トランスミッションに設けた走行HSTで変速し、走行トランスミッションを介して左右一対のクローラ走行装置に伝達される。
【0003】
一般にコンバインは、左右一対のクローラ走行装置と、エンジンからの動力を変速して左右のクローラ走行装置を駆動する走行トランスミッションと、走行トランスミッション内に備えた左右一対のサイドクラッチと、サイドクラッチが切断された一方のクローラ走行装置を減速してもう一方のクローラ走行装置と同一方向に駆動する減速ターンモードと、サイドクラッチが切断された一方のクローラ走行装置を制動させるブレーキターンモードと、減速ターンモードとブレーキターンモードとを選択する旋回モード選択手段と、運転部に設けた操向レバーと、旋回モード選択手段であらかじめ選択された旋回モードにしたがって操向レバーの左右傾動操作により機体を左右に操向制御する操向制御装置を備えている。
【0004】
従来、このようなコンバインにおいて、旋回モード選択手段によって減速ターンモードに切り替えた状態で、操向レバーに設けた切替スイッチを操作することにより減速ターンモードからブレーキターンモードに切り替わる(旋回半径を小さくする)操向制御装置を備えたコンバインが案出されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、非作業走行である条件を検出してブレーキターンモードに自動的に切り替わる操向制御装置を備えたコンバインが案出されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3570014号公報
【特許文献2】特開2005−255073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載のものは旋回半径を小さくするものであり、不用意に操作すれば圃場を傷めることになる。また、乾田での収穫作業時には概ねブレーキターンモードで作業を行うが、圃場の一部分だけ湿田になっている場合に減速ターンモードにするためには旋回モード選択手段でブレーキターンモードから減速ターンモードに切り替えるしか方法がなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、左右一対のクローラ走行装置2と、エンジン34からの動力を変速して左右のクローラ走行装置2を駆動する走行トランスミッション35と、走行トランスミッション35内に備えた左右一対のサイドクラッチ39L,39Rと、サイドクラッチ39L,39Rが切断された一方のクローラ走行装置2を減速してもう一方のクローラ走行装置2と同一方向に駆動する減速ターンモードと、サイドクラッチが切断された一方のクローラ走行装置を制動させるブレーキターンモードと、減速ターンモードとブレーキターンモードとを選択する旋回モード選択手段31aと、運転部6に設けた操向レバー11と、旋回モード選択手段31aであらかじめ選択された旋回モードにしたがって操向レバー11の左右傾動操作により機体を左右に操向制御する操向制御装置を備えたコンバインにおいて、操向レバー11に旋回モード切替手段23を設け、操向制御装置は、旋回モード選択手段31aによりブレーキターンモードを選択中に旋回モード切替手段23を操作すると、一時的に旋回モードを減速ターンモードに切り替えることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、操向レバー11に設けた旋回モード切替手段23は、操向レバー11が中立位置の時に操作した時のみ切替操作を有効にすることを特徴とする。
【0009】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、乾田での収穫作業時に圃場の一部分だけ湿田になっている場合でも、操向レバーに設けた旋回モード切替手段を操作することにより、一時的に旋回モードを減速ターンモードに切り替えることができ、旋回モードを変更することなく部分的な湿田での操向に素早く対応することができる。
また、請求項2に係る発明によると、旋回中に意図せず旋回モードを切り替える誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コンバインの右側面図。
【図2】コンバインの運転部平面図。
【図3】運転部のマルチステアリングレバー背面図。
【図4】図3の右前斜視図。
【図5】運転部のスイッチパネル平面図。
【図6】トランスミッションの動力伝達系統図。
【図7】制御ブロック図。
【図8】旋回モード選択のフローチャート図。
【図9】減速ターンのフローチャート図。
【図10】ブレーキターンのフローチャート図。
【図11】フルモードターンのフローチャート図。
【図12】前処理昇降速度制御のフローチャート図。
【図13】前処理昇降操作規制制御のフローチャート図。
【図14】方向自動制御のフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面に基づいて本発明の実施形態に係るコンバインについて説明をする。なお、説明中の方向は作業者が機体に着座した状態を基準として考えるものとする。
【0013】
[コンバインの概要]
図1はコンバインの右側面図であり、コンバイン1は、左右一対のクローラ走行装置2に支持された機体3を有していると共に、機体3の前方には前処理部5が昇降自在に設けられている。前処理部5の側方には作業者が運転操作を行う運転部6が設けられ、運転部6の後方には脱穀部で脱こく・選別した穀粒を一時的に貯留するグレンタンク7が設けられている。
【0014】
[運転部の概要]
図2はコンバインの運転部平面図であり、エンジンルーム8の上方に設けた運転シート9の前方にはフロントパネル10が設けられている。フロントパネル10の右上部にはマルチステアリングレバー(操向レバー)11が備えてあり、マルチステアリングレバー11を中立位置から左方向に操作することによりコンバイン1を左方向に旋回させると共に、右方向に操作することによりコンバイン1を右方向に旋回させることができる。また、マルチステアリングレバー11を前方向に操作することにより前処理部5を下降駆動させると共に、後方向に操作することにより前処理部5を上昇駆動させることができる。
【0015】
また、フロントパネル10の左端から後方で運転シート9の左側方にわたってサイドパネル13が設けられている。サイドパネル13上の前方には走行速度を無段階に変速操作する主変速レバー14が備えてあり、主変速レバー14を中立位置から前方に操作することによりコンバイン1を前進させると共に、後方に操作することによりコンバイン1を後進させることができる。また、主変速レバー14の左側方には副変速レバー15が備えてあり、副変速レバー15を前方に操作することにより高速(路上)走行位置に変速すると共に、後方に操作することにより低速(作業)走行位置に変速する。また、副変速レバー15を低速走行位置から左方向に操作することにより、低速走行位置のままで逆転旋回モードに切り替えることができる。また、主変速レバー14の後方には各種自動スイッチや調整ダイヤルを備えるスイッチパネル17を備えている。
【0016】
[マルチステアリングレバーの概要]
図3、図4は運転部のマルチステアリングレバー背面図と同右前斜視図であり、マルチステアリングレバー11の背面(運転シート9)側に設けたスイッチ面上には機体の進行方向を微調整する左右の方向微調整スイッチ18,19、前処理部5の昇降速度を高速にする前処理高速スイッチ(前処理速度切替手段)21、前処理の昇降規制制御や方向自動制御を一時的にキャンセルするキャンセルスイッチ(キャンセル手段)22を備えている。
また、マルチステアリングレバー11の前面側にはコンバインの旋回モードを切り替えるモード切替スイッチ(旋回モード切替手段)23を備えている。
【0017】
[スイッチパネルの概要]
図5は運転部のスイッチパネル平面図であり、脱こくクラッチ及び刈取クラッチを断接操作するパワークラッチスイッチ(脱こく・刈取クラッチ操作手段)25、脱こくクラッチ及び刈取クラッチの断接状況を表示するパワークラッチインジケータ26、こぎ深さ自動制御をON/OFFするこぎ深さ自動スイッチ27、方向自動制御をON/OFFする方向自動スイッチ29、水平自動制御をON/OFFする水平自動スイッチ30、旋回モードを切り替えたりフルモードターンの駆動力を変更する旋回切替ダイヤル(旋回モード選択手段)31a、フルモードターンの駆動力を一定量上昇させる湿田スイッチ31b、選別自動制御のフィン開度を調節する選別ダイヤル33a、選別自動制御をON/OFFする選別自動スイッチ33bを備えている。なお、旋回切替ダイヤル31aと湿田スイッチ31b、選別ダイヤル33aと選別自動スイッチ33bはそれぞれダイヤルを押すことでスイッチになるように一体構成されている。
【0018】
[パワークラッチの作用]
パワークラッチスイッチ25はシーソ式のスイッチで構成していて、脱こくクラッチ及び刈取クラッチが両方とも切断している(パワークラッチインジケータ26の切位置が点灯している)状態でパワークラッチスイッチ25の左側を1回押すと脱こくクラッチのみ接続(パワークラッチインジケータ26の切位置が消灯して脱こく位置が点灯する)し、この状態で左側をもう1回押すと脱こくクラッチの接続を維持した状態で刈取クラッチが接続(パワークラッチインジケータ26の脱こく位置は点灯したまま刈取位置が点灯する)する。
また、脱こくクラッチ及び刈取クラッチが両方とも接続している(パワークラッチインジケータ26の脱こく位置と刈取位置が点灯している)状態でパワークラッチスイッチ25の右側を1回押すと刈取クラッチのみ切断(パワークラッチインジケータ26の刈取位置のみ消灯)し、この状態で右側をもう1回押すと脱こくクラッチを切断(パワークラッチインジケータ26の脱こく位置が点灯して切位置が点灯)する。
【0019】
[トランスミッションの構造及び作用]
図6は走行トランスミッションの動力伝達系統図であり、直進時はエンジン34の動力を走行トランスミッション35の走行用HST36に入力し、オペレータの主変速レバー14操作に従い走行用HST36で変速した動力をトランスミッションケース37内の副変速装置38に入力し、オペレータの副変速レバー15操作に従い副変速装置38で変速した動力を左右のサイドクラッチ39L,39Rを介して左右一対のクローラ走行装置2を等速で伝動している。
【0020】
次に、マルチステアリングレバー11に設けた左右の方向微調整スイッチ18,19操作時や方向自動制御時には、左右のサイドクラッチ39L,39Rの内の旋回側のみを切断することにより、旋回内側のクローラ走行装置2を空転させて機体の進行方向を微調整できる。
【0021】
次に、マルチステアリングレバー11の操作により減速ターンする時には、減速ターンクラッチ41を接続してから左右のサイドクラッチ39L,39Rの内の旋回側のみを切断して、左右の旋回クラッチ42L,42Rの内の旋回側のみを接続することにより、旋回内側のクローラ走行装置2を旋回外側のクローラ走行装置2より減速駆動させて機体の進行方向を緩やかに変更できる。
【0022】
次に、マルチステアリングレバー11の操作によりブレーキターンする時には、ブレーキターンクラッチ43を接続してから左右のサイドクラッチ39L,39Rの内の旋回側のみを切断して、左右の旋回クラッチ42L,42Rの内の旋回側のみを接続することにより、旋回内側のクローラ走行装置2を停止させて機体の旋回半径を減速ターンより小さくできる。
【0023】
次に、マルチステアリングレバー11の操作によりスピン旋回する時には、副変速レバー15を低速走行位置から左方向に操作することによりスピンターンクラッチ45を切り替えてから左右のサイドクラッチ39L,39Rの内の旋回側のみを切断して、左右の旋回クラッチ42L,42Rの内の旋回側のみを接続することにより、旋回内側のクローラ走行装置2を旋回外側に対して逆転させて機体の旋回半径をブレーキターンより小さくできる。
【0024】
[制御装置の構成]
図7は制御ブロック図であり、制御装置を構成するマイコン46の入力側には、前処理高速スイッチ21、キャンセルスイッチ22、モード切替スイッチ23、パワークラッチスイッチ25、方向自動スイッチ29、水平自動スイッチ30、旋回切替ダイヤル31a、湿田スイッチ31bの他に、マルチステアリングレバー11の左右操作量(角度)を検出する操向ポテンショ47、マルチステアリングレバー11の前後操作量(角度)を検出する前処理操作ポテンショ49、グレンタンク7に穀粒が貯留していることを検出するモミセンサ50を接続している。
また、マイコン46の出力側には、左右のサイドクラッチ39L,39Rを切断側に切り替える油圧シリンダを駆動する左右のサイドクラッチ電磁弁51L,51R、左右の旋回クラッチ42L,42Rを接続側に切り替える油圧シリンダを駆動する左右の旋回クラッチ比例弁53L,53R、減速ターンクラッチ41を接続側(ブレーキターンクラッチ43を切断側)に切り替える油圧シリンダを駆動する減速ターン電磁弁54、前処理部5を昇降駆動する油圧シリンダを駆動する前処理上昇・下降比例弁55U,55Dを接続している。
【0025】
[操向制御装置の旋回モード選択]
次に、本実施の形態に係る操向制御装置を備えたコンバインの作用について説明をする。
図8は旋回モード選択のフローチャート図、図9は減速ターンのフローチャート図、図10はブレーキターンのフローチャート図、図11はフルモードターンのフローチャート図である。
まず、S1では脱こくクラッチが入り状態であるかを判断し、脱こくクラッチが入り状態の場合にはS2に進み、切り状態の場合にはS3に進む。
次に、S2では旋回切替ダイヤル31aの位置を判断し、旋回切替ダイヤル31a位置が左限界位置の減速ターン位置である場合にはS4から減速ターンのサブルーチンに進み、ダイヤルが右限界位置のブレーキターン位置である場合にはS5からブレーキターンのサブルーチンに進み、ダイヤルが左右限界位置の間にあるフルモードターン位置である場合にはS6からフルモードターンのサブルーチンに進む。
また、S3ではモミセンサ50がONであるかを判断し、ONならS2に進みOFFならS5からブレーキターンのサブルーチンに進む。
つまり、脱こくクラッチが切断されていてグレンタンク7に穀粒が貯留されてない時は、旋回切替ダイヤル31a位置にかかわらず非作業中(路上走行中)と判断して、自動的にブレーキターンモードを選択する。
また、脱こくクラッチが接続されているかグレンタンク7に穀粒が貯留されている時は、作業中(圃場走行中)と判断して、旋回切替ダイヤル31aの位置に従って旋回モードを選択する。
【0026】
[減速ターンモードの作用]
次に旋回モードを減速ターンモードに設定した場合、S11でモード切替フラグが0であるかを判断して、モード切替フラグが0ならばS12に進み、0でなければS13に進む。
次に、S12でモード切替スイッチ23がONであるかを判断して、モード切替スイッチ23がONならばS14に進み、ONでなければS15から減速ターン制御のサブルーチンに進む。
また、S14で操向ポテンショ47により操向レバー11が中立であるかを判断して、操向レバー11が中立ならばS16でモード切替フラグを1にセットしてS17からブレーキターン制御のサブルーチンに進み、中立でなければS15から減速ターン制御のサブルーチンに進む。
また、S13でモード切替スイッチ23がONであるかを判断して、モード切替スイッチ23がONならばS17からブレーキターン制御のサブルーチンに進み、ONでなければS18に進む。
次に、S18で操向ポテンショ47により操向レバー11が中立であるかを判断して、操向レバー11が中立ならばS19でモード切替フラグを0にセットして次に進み、中立でなければS17からブレーキターン制御のサブルーチンに進む。
つまり、圃場が湿田である場合には圃場を傷めないように減速ターンモードで刈取作業をするのが望ましいが、圃場によってはどうしてもブレーキターンを使わないといけない場合がある。しかし、従来はサイドパネル13に設けた旋回切替ダイヤル31aの位置を減速ターン位置からブレーキターン位置に切替操作しなければならず、操作性に課題があった。
しかしながら、本実施例では減速ターンモードを選択中にモード切替スイッチ23を操作すると一時的にブレーキターン制御を行うようになっているので、必要に応じて一時的にブレーキターン制御に切り替えることができ、部分的な圃場条件の変化にも簡単な操作で即座に対応できる。しかも、モード切替スイッチ23は操向レバー11が中立の時にしか操作が有効にならないので、旋回中に旋回モードが減速ターンからブレーキターンに意図せず切り替わるようなことがないので誤操作を未然に防止できる。
【0027】
[ブレーキターンモードの作用]
次に旋回モードをブレーキターンモードに設定した場合、S21でモード切替フラグが0であるかを判断して、モード切替フラグが0ならばS22に進み、0でなければS23に進む。
次に、S22でモード切替スイッチ23がONであるかを判断して、モード切替スイッチ23がONならばS24に進み、ONでなければS25からブレーキターン制御のサブルーチンに進む。
また、S24で操向ポテンショ47により操向レバー11が中立であるかを判断して、操向レバー11が中立ならばS26でモード切替フラグを1にセットしてS27から減速ターン制御のサブルーチンに進み、中立でなければS25からブレーキターン制御のサブルーチンに進む。
また、S23でモード切替スイッチ23がONであるかを判断して、モード切替スイッチ23がONならばS27から減速ターン制御のサブルーチンに進み、ONでなければS28に進む。
次に、S28で操向ポテンショ47により操向レバー11が中立であるかを判断して、操向レバー11が中立ならばS29でモード切替フラグを0にセットして次に進み、中立でなければS27からブレーキターン制御のサブルーチンに進む。
つまり、圃場が乾田である場合にはきちんと旋回できるようにブレーキターンモードで刈取作業をするのが望ましいが、部分的に湿田になっている等、圃場によってはどうしても減速ターンを使わないといけない場合がある。しかし、従来はサイドパネル13に設けた旋回切替ダイヤル31aの位置をブレーキターン位置から減速ターン位置に切替操作しなければならず、操作性に課題があった。
しかしながら、本実施例ではブレーキターンモードを選択中にモード切替スイッチ23を操作すると一時的に減速ターン制御を行うようになっているので、必要に応じて一時的に減速ターン制御に切り替えることができ、部分的な圃場条件の変化にも簡単な操作で即座に対応できる。しかも、モード切替スイッチ23は操向レバー11が中立の時にしか操作が有効にならないので、旋回中に旋回モードがブレーキターンから減速ターンに意図せず切り替わるようなことがないので誤操作を未然に防止できる。
【0028】
[フルモードターンモードの作用]
次に旋回モードをフルモードターンモードに設定した場合、S31でモード切替スイッチ23がONであるかを判断して、モード切替スイッチ23がONならばS32で減速ターンの駆動力をUPするように設定したあとS33からフルモードターンのサブルーチンに進み、ONでなければそのままS33からフルモードターンのサブルーチンに進む。
つまり、圃場条件によりオペレータの好みでフルモードターンモードを選択している時に、部分的に湿田になっている等、圃場によってはどうしても減速ターンの旋回力を上げないといけない場合がある。しかし、従来はサイドパネル13に設けた旋回切替ダイヤル31aか湿田スイッチ31bを操作しなければならず、操作性に課題があった。
しかしながら、本実施例ではフルモードターンモードを選択中にモード切替スイッチ23を操作すると一時的に減速ターン制御の駆動力を上昇するようになっているので、必要に応じて一時的に減速ターン制御の駆動力を上昇することができ、部分的な圃場条件の変化にも簡単な操作で即座に対応できる。
【0029】
[前処理昇降速度制御の作用]
次に、前処理昇降速度制御の作用について説明をする。
図12は前処理昇降速度制御のフローチャート図である。
まず、S41で前処理高速スイッチ21がONであるかを判断して、前処理高速スイッチ21がONならばS42から高速昇降制御のサブルーチンに進み、OFFならばS43から標準昇降制御に進む。
つまり、刈取作業開始時や刈取終了時等、前処理部5を略フルストローク操作する時がある。しかし、従来は前処理部5の昇降速度が一定速である場合には刈取高さの微調整との両立があるために中間的な速度に設定されていた。また、マルチステアリングレバー11の操作量に応じて前処理部5の昇降速度を可変させるものもあるが、高速で昇降させる場合にはマルチステアリングレバー11をフルストローク操作しなければならず、操作性に課題があった。
しかしながら、本実施例ではマルチステアリングレバー11の操作に前処理高速スイッチ21の操作を組み合わせることにより、前処理部5の昇降速度を簡単な操作で可変することができ、多様な操作状況に素早く対応できる。
【0030】
[前処理昇降操作規制制御の作用]
次に、前処理昇降操作規制制御の作用について説明をする。
図13は前処理昇降操作規制制御のフローチャート図である。
まず、S51でキャンセルスイッチ22がONであるかを判断して、キャンセルスイッチ22がONならばS52から規制解除制御のサブルーチンに進み、OFFならばS53からレバーラージゾーン制御に進む。
つまり、刈取作業開始時や刈取終了時等、コンバインを旋回しながら前処理部5昇降操作する時がある。しかし、旋回中に意図せずマルチステアリングレバー11を前後に傾けて前処理部5を昇降しないように、従来はマルチステアリングレバー11操作による旋回中は、マルチステアリングレバー11を前後にフルストローク操作しないと前処理部5が昇降しないように規制してあり、操作性に課題があった。
しかしながら、本実施例ではマルチステアリングレバー11の操作にキャンセルスイッチ22の操作を組み合わせることにより、マルチステアリングレバー11の操作による旋回中でも前処理部5を昇降操作することができ、多様な操作状況に素早く対応できる。
【0031】
[方向自動制御の作用]
次に、方向自動制御の作用について説明をする。
図14は方向自動制御のフローチャート図である。
まず、S61で方向自動スイッチ29がONであるかを判断して、方向自動スイッチ29がONならばS62に進み、OFFならば次に進む。S62でキャンセルスイッチ22がONであるかを判断して、キャンセルスイッチ22がONならば次に進み、OFFならばS63から方向自動制御に進む。
つまり、方向自動制御中に圃場内の一部の穀稈が倒伏したり、雑草が生えている時がある。このような状況で方向自動制御を起動したままにしておくと、方向自動制御が誤動作を起こして穀稈を刈残したり踏み倒したりする可能性がある。しかし、従来はサイドパネル13に設けた方向自動スイッチ29を操作して方向自動制御を停止しなければならず、操作性に課題があった。
しかしながら、本実施例では方向自動制御中にキャンセルスイッチ22を操作するだけで、マルチステアリングレバー11を握ったまま一時的に方向自動制御をキャンセルすることができ、多様な圃場状況にも素早く対応できる。
【符号の説明】
【0032】
2 クローラ走行装置
6 運転部
11 マルチステアリングレバー(操向レバー)
23 モード切替スイッチ(旋回モード切替手段)
31a 旋回切替ダイヤル(旋回モード選択手段)
34 エンジン
39L サイドクラッチ
39R サイドクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のクローラ走行装置(2)と、エンジン(34)からの動力を変速して左右のクローラ走行装置(2)を駆動する走行トランスミッション(35)と、走行トランスミッション(35)内に備えた左右一対のサイドクラッチ(39L,39R)と、サイドクラッチ(39L,39R)が切断された一方のクローラ走行装置(2)を減速してもう一方のクローラ走行装置(2)と同一方向に駆動する減速ターンモードと、サイドクラッチが切断された一方のクローラ走行装置を制動させるブレーキターンモードと、減速ターンモードとブレーキターンモードとを選択する旋回モード選択手段(31a)と、運転部(6)に設けた操向レバー(11)と、旋回モード選択手段(31a)であらかじめ選択された旋回モードにしたがって操向レバー(11)の左右傾動操作により機体を左右に操向制御する操向制御装置を備えたコンバインにおいて、
操向レバー(11)に旋回モード切替手段(23)を設け、
操向制御装置は、旋回モード選択手段(31a)によりブレーキターンモードを選択中に旋回モード切替手段(23)を操作すると、一時的に旋回モードを減速ターンモードに切り替えることを特徴とする操向制御装置を備えたコンバイン。
【請求項2】
操向レバー(11)に設けた旋回モード切替手段(23)は、操向レバー(11)が中立位置の時に操作した時のみ切替操作を有効にすることを特徴とする請求項1記載の操向制御装置を備えたコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−235010(P2010−235010A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86567(P2009−86567)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】