説明

支持レール

【課題】 粉粒体や液状体の飛散を防止し作業性のよい支持レールを提供する。
【解決手段】 育苗箱14の両横側に配置されて、前記育苗箱14に粉粒体又は液状体を供給する育苗器2が載って移動する支持レール3であって、支持レール3の上面から育苗箱14側の側面に亘って傾斜面40又は曲面45を設けた構成としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗器が載って移動する支持レールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されるように、育苗箱の上を育苗器が移動することにより、育苗箱に粉粒体又は液状体を供給するものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−103618号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、育苗箱の上を育苗器が移動する構造を採用していた。そのため、育苗器の重量が大きい場合には、その重さにより育苗箱が破損することがあるため、育苗箱の強度をアップする必要があり、そうすると、育苗箱の製造コストがアップするといった問題があった。また、育苗箱の上を育苗器が移動する構造では、育苗箱の並べ方にばらつきがあれば育苗箱の上を移動させる場合にスムーズに移動できないといった問題があった。
【0005】
そのため、育苗箱の両横部に一対の支持レールを設けて上述した問題点を解消することが考えられる。しかし、支持レールを設ける構造を採用すると、育苗器から育苗箱へ粉粒体や液状体を供給する際に粉粒体や液状体が飛散し支持レールの上部に粉粒体や液状体が溜まって育苗器の移動の妨げとなるといった問題がある。また、粉粒体や液状体の飛散により、粉粒体や液状体が無駄となるばかりか、飛散による清掃などの手間がかかるなどの問題点がある。
【0006】
本発明は、粉粒体や液状体の飛散を防止し作業性のよい支持レールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、育苗箱の両横側に配置されて、前記育苗箱に粉粒体又は液状体を供給する育苗器が載って移動する支持レールにおいて、次のように構成することにある。
前記支持レールの上面から育苗箱側の側面に亘って傾斜面又は曲面を設ける。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、支持レールの上面から育苗箱側に亘って設けた傾斜面又は曲面により、育苗器から落下した粉粒体や液状体が育苗箱に転がるか又は育苗箱に流れるため、支持レールの上部に粉粒体や液状体が滞留することを防止できるとともに、粉粒体や液状体の外部への飛散を防止できる。例えば、支持レールを配置した後で育苗箱を置く場合には、支持レールに設けた傾斜面又は曲面が育苗箱のガイドとなり、育苗箱を一対の支持レールの間に置き易くなる。
【0009】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、支持レールの上部への粉粒体や液状体の滞留が少なくなり支持レールの上を育苗器がスムーズに移動できるため育苗作業の作業性が向上するとともに、粉粒体や液状体の外部への飛散が少なくなるため、粉粒体や液状体が無駄にならず育苗作業後の清掃作業等も容易になる。また、育苗箱が置き易くなるため、準備作業が効率的になる。
【0010】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の支持レールにおいて次のように構成することにある。
一対の前記支持レールに亘って連結されるフレームを設ける。
【0011】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
一対の支持レールに亘って連結されるフレームを設けることにより、育苗器の進行方向に対して一対の支持レールを平行に固定することができる。そのため、育苗作業中に支持レールがずれる事がなく、支持レールの上を育苗器が無理なく移動できる。
【0012】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「効果」を備えており、これに加えて以下のような「効果」を備えている。
支持レールの上を育苗器が無理なく移動できるため、育苗作業の作業性が向上する。
【0013】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴の支持レールにおいて次のように構成することにある。
前記支持レールと前記フレームとを分解及び組み立て可能とする。
【0014】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
支持レールとフレームとを分解及び組み立て可能とすることにより、育苗作業時には組み立てて使用し、育苗作業終了後には分解して保管することができる。
【0015】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[II]に記載の「効果」を備えており、これに加えて以下のような「効果」を備えている。
育苗作業終了後に支持レールとフレームを分解して保管できるため、保管するためのスペースが少なくて済み、保管が容易になる。また、分解することによって持ち運びが容易になるため、支持レール及びフレームの運搬作業の作業性が向上する。
【0016】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第1特徴、第2特徴又は第3特徴の育苗装置において次のように構成することにある。
前記支持レールに持ち手を設ける。
【0017】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第1特徴、第2特徴又は第3特徴と同様に前項[I][II][III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
支持レールに持ち手を設けることにより、作業中に支持レールを移動する場合や作業前後の支持レールを運搬する場合において、支持レールが持ち易くなる。
【0018】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第1特徴、第2特徴又は第3特徴と同様に前項[I][II][III]に記載の「効果」を備えており、これに加えて以下のような「効果」を備えている。
支持レールが持ち易くなるため、支持レールの移動や運搬等の作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は育苗器の一例である播種器2の移動方向に向かって立った作業者から見た方向に従う。なお、図2〜図4に示す白抜きの矢印は、播種器2の移動方向を示す。
【0020】
図1、図2及び図3に示すように、育苗装置1は、育苗器の一例である播種器2と一対の支持レール3及び一対の支持レール3を連結する一対のフレーム4とからなる。播種器2は、種子供給ホッパー5、種子供給ホッパー5の前部左右に設けた繰出量調整機構6、横軸繰出ロール7と連動する中間走行車輪8、前側走行車輪10及び後側走行車輪9などから構成されている。
【0021】
図1及び図2に示すように、種子供給ホッパー5上部の両側部にはハンドル11取り付け用のボス部12を備え、ハンドル11が横軸芯P1回りで回動自在に取り付けてある。このハンドル11は、播種器2を支持レール3の上に載せたり、支持レール3の上を転がして移動したりする場合に使用するものである。育苗箱14の両横側には、上面から育苗箱14側の側面に亘って傾斜面40を設けた支持レール3を備え、当該支持レール3の上部を播種器2の中間走行車輪8、前側走行車輪10及び後側走行車輪9が転がることによって、播種器2が移動するようになっている。
【0022】
図4は、播種器2の内部構造を示す断面図である。図4に示すように、播種器2の上部に種子供給ホッパー5を設ける。種子供給ホッパー5は、地面に対して垂直で播種器2の前後左右に設けた側板15と前後の側板15下部から横軸繰出ロール7部に向かって設けた流穀板16とからなり、後方の流穀板16の内面に振動板17を備え、前方の流穀板16の外面に繰出量調整機構6を備える。
【0023】
図4及び図5に示すように、振動板17の先端は横軸繰出ロール7の上部外周面に接触させて、ボルト18で流穀板16に固定してある。なお、この播種器2には左右2枚の振動板17を備える(図3参照)。一方、繰出量調整機構6は、ナット部材25を固定した調整板19、流穀板16に固着した取付板22、取付板22にP3軸回りで回動自在に取り付けた調整軸21、調整軸21に固定したダイヤル23、調整板19の下部に固定された繰出量調整体24などから構成されている。
【0024】
以上の構成により、ダイヤル23を回せば調整軸21を介してナット部材25を流穀板16に沿って移動させることにより、ナット部材25を固定した調整板19を介して繰出量調整体24を流穀板16に沿って移動させ、後述する横軸繰出ロール7の種子嵌合凹部30と繰出量調整体24との間に設けた隙間26を調整することができる。すなわち、ダイヤル23の操作により隙間26を大きくすれば育苗箱14へ播く種の量を多くすることができ、逆に隙間26を小さくすれば育苗箱14へ播く種の量を少なくすることができるようになっている。なお、図5に示すように、繰出量調整体24は、前方の流穀板16外面の中央部と両側部に固着したガイド27により(図1参照)、軸心P3方向に摺動自在に支持されている。
【0025】
図4に示すように、種子供給ホッパー5の下部には、ロール回転軸29に固定された横軸繰出ロール7及び種を下方に導くためのガイド板28を備える。横軸繰出ロール7は、その外周面にロール回転軸29の横軸心P2と平行な横溝形状の種子嵌合凹部30を、所定間隔を置いて全周に形成する。図6に示すように、ロール回転軸29は左右の側板15の外面に固定した車輪取付板34のボス部35に回動自在に支持され、ロール回転軸29の両側部には、中間走行車輪8が固定されている。中間走行車輪8の側部には、支持レール3に当接するフランジ部31を備え、左右方向にずれないように構成してある。以上の構成とすることにより、中間走行車輪8が支持レール3の上部を走行すれば、ロール回転軸29を介して横軸繰出ロール7が回転し、種子供給ホッパー5から横軸繰出ロール7の種子嵌合凹部30に供給された種をガイド板28を介して所定間隔で一定量育苗箱14に供給するようになっている。
【0026】
図4に示すように、中間走行車輪8の前後には、前軸33及び後軸32を備える。前軸33及び後軸32は、上述したロール回転軸29と同様に車輪取付板34に回動自在に支持され、前軸33の両側部に前側走行車輪10を、後軸の32両側部に後側走行車輪9をそれぞれ備え、前述した中間走行車輪8と同様に各車輪の側部にフランジ部31を備える(図1,図2参照)。
【0027】
図6に示すように、育苗箱14の両横部に設けた支持レール3の上面から育苗箱14側の側面に亘って傾斜面40を備えるとともに、育苗箱14に向かって傾斜面40を突出させている。車輪取付板34の下部には、育苗箱14に向かって折り曲げられた折り曲げ部41を備える。なお、傾斜面40に限らず、図8(イ)に示すように曲面45を支持レール3に設けてもよい。図6の矢印で示すように、横軸繰出ロール7から落下した種(種は図示せず)が、まず、車輪取付板34の折り曲げ部41に当たって育苗箱14内部に落下し、さらに、車輪取付板34の折り曲げ部41では育苗箱14内部に導くことができない種が支持レール3の傾斜面40に当たって育苗箱14内部に落下するように構成されている。そのため、育苗箱14に供給した種が育苗箱14の外側にこぼれにくく、支持レール3の上面に種が落ちにくいようになっている。
【0028】
図3に示すように、上述した支持レール3の前後方向の両端部には、左右の支持レール3に亘ってフレーム4を備える。フレーム4の長手方向の両端部には支持レール3に固定するためのフレーム取付座42が固着され長穴43が加工されている。長穴43は、支持レール3を左右方向にずらすことなくフレーム4を組み付けできるように加工されている。また、フレーム4の中央部の上面には運搬や移動がし易いように、持ち手穴44が加工されている。
【0029】
図7に示すように、支持レール3の前後方向の両端部で支持レール3の上面には、支持レール3に固着されたフレーム4固定用のナット38とダイヤル付きボルト39を備える。ダイヤル付きボルト39を設けたのは、育苗作業において特殊な工具等(図示せず)を用いずに簡易にフレーム4と支持レール3を分解又は組み立て可能にするためである。なお、図8(イ)及び(ロ)に示すように、支持レール3の側部にナット38とダイヤル付きボルト39を配置することも可能である。
【0030】
図3及び図7に示すように、支持レール3の外側の側面には複数の持ち手37を備え、それぞれの支持レール3に固着されている。支持レール3の外側の側面に持ち手37を設けたのは、支持レール3の上面に設けると播種器2の移動の妨げとなり、支持レール3の内側の側面に設けると育苗箱14と干渉するからである。なお、特に図示しないが、持ち手37の形状や寸法、種類などは特に問わず、支持レール3の重さや長さ等の差異によって、運搬や移動がし易い形状や寸法のものを設ければよい。例えば、前述したフレーム4に設けた持ち手穴44のような持ち手37でもよい。
【0031】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]に示した支持レール3を備えた育苗装置1は、1列に並べた育苗箱14に育苗作業をする場合の例を示したが、図9に示すように、2列に並べた育苗箱14に育苗作業をするように支持レール3を備えた育苗装置1を構成すれば、一度に2列の育苗箱14に播種することができるため、より効率的な育苗作業が可能である。なお、図9において、育苗器の一例である播種器2の左右方向の長さが長くなることに伴う変更及びフレーム4の長さが長くなることに伴う変更以外の他の構成は、前述した[発明を実施するための最良の形態]に示した育苗装置1と同様である。また、図9に示す白抜きの矢印は播種器2の移動方向を示す。
【0032】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]に示した支持レール3を備えた育苗装置1は、育苗器の一例である播種器2を用いた例を示しているが、他の育苗器、すなわち、覆土、施肥、施薬、散水などの育苗作業を行う育苗器を用いた育苗装置1の支持レール3の場合にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】育苗装置の全体正面図
【図2】育苗装置の全体側面図
【図3】育苗装置の全体平面図
【図4】播種器の内部構造を示す縦断側面図
【図5】横軸繰出ロール付近の構造を示す縦断側面図
【図6】育苗装置の縦断背面図
【図7】フレーム取付部の構造を示す縦断背面図
【図8】フレーム取付部の要部詳細図
【図9】発明の実施の第1別形態における育苗装置の全体平面図
【符号の説明】
【0034】
2 播種器
3 支持レール
4 フレーム
14 育苗箱
37 持ち手
40 傾斜面
45 曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗箱の両横側に配置されて、前記育苗箱に粉粒体又は液状体を供給する育苗器が載って移動する支持レールであって、
前記支持レールの上面から育苗箱側の側面に亘って傾斜面又は曲面を設けたことを特徴とする支持レール。
【請求項2】
一対の前記支持レールに亘って連結されるフレームを設けたことを特徴とする請求項1記載の支持レール。
【請求項3】
前記支持レールと前記フレームとを分解及び組み立て可能としたことを特徴とする請求項2記載の支持レール。
【請求項4】
前記支持レールに持ち手を設けたことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の支持レール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−244297(P2007−244297A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72954(P2006−72954)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】