説明

支持装置およびレンズユニット

【課題】レンズ鏡筒を長期間にわたって安定に支持する。
【解決手段】支持装置であって、レンズ鏡筒を外部の支持体に支持させる支持装置であって、レンズ鏡筒の外周が挿入された環状体と、レンズ鏡筒の外周と環状体の内周との間に配され、少なくともレンズ鏡筒の径方向に交差する転動軸の回りに転動する複数の転動体とを備え、複数の転動体の転動により、レンズ鏡筒を環状体に対して光軸回りに回転可能に支持する。上記支持装置において、複数の転動体のそれぞれは剛体球であって、レンズ鏡筒の外周および環状体の内周により3点で支持されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持装置およびレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ鏡筒を支持する環状嵌合部の内周面に内周溝を形成し、レンズ鏡筒の外周面に設けた係合部材に当該内周溝内を走行させることにより、レンズユニットを光軸回りに回転させる支持構造がある(特許文献1参照)。
特許文献1 特開2009−193067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記支持構造は、厚さに制限があるレンズ鏡筒に対して係合部材をねじ止めするので鏡筒にかかる負荷が大きく、鏡筒が変形するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一態様として、レンズ鏡筒を外部の支持体に支持させる支持装置であって、レンズ鏡筒の外周が挿入された環状体と、レンズ鏡筒の外周と環状体の内周との間に配され、少なくともレンズ鏡筒の径方向に交差する転動軸の回りに転動する複数の転動体とを備え、複数の転動体の転動により、レンズ鏡筒を環状体に対して光軸の回りに回転可能に支持する支持装置が提供される。
【0005】
本発明の第二態様として、上記支持装置と、支持装置により支持されるレンズ鏡筒とを備えるレンズユニットが提供される。
【0006】
上記した発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。これら特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】カメラシステム100の側面図である。
【図2】三脚座140の径方向断面図である。
【図3】三脚座140の部分拡大断面図である。
【図4】三脚座140の光軸Xを含む断面図である。
【図5】三脚座141の光軸Xを含む断面図である。
【図6】三脚座151の分解斜視図である。
【図7】三脚座151の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。下記の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、カメラシステム100の側面図である。カメラシステム100は、三脚110、レンズユニット120およびカメラボディ130を含む。
【0010】
三脚110は、伸縮する3本の伸縮パイプ114を含む脚部112と、脚部112上端に搭載された雲台118とを有する。三脚110を使用する場合は、ロックナット116を締め込むことにより伸縮パイプ114を伸張させた状態で保持し、雲台118を一定の高さに固定する。雲台118は、脚部112の上端に本体117を固定される。
【0011】
雲台118の上端に位置する支持プレート119は、本体117に対して回動自在な状態と、固定された状態とを切り替えることができる。これにより、雲台118は、レンズユニット120およびカメラボディ130を回動させた後に固定できる。
【0012】
雲台118の支持プレート119には、レンズユニット120の三脚座140が固定される。三脚座140は、レンズユニット120を支持する環状部142と、環状部142から図中下方に突出する取付部144と、取付部144の下部から水平に延在するブラケット146とを有する。ブラケット146は、雲台118の支持プレート119に対して結合される。
【0013】
三脚座140の環状部142には、レンズユニット120のレンズ鏡筒122が挿通される。これにより、三脚座140とレンズ鏡筒122は一体化される。ただし、レンズ鏡筒122は、環状部142の内側で、レンズユニット120の光学系の光軸Xの周りに回転する。
【0014】
レンズユニット120の一端(図中右端)は、マウント機構を介してカメラボディ130に結合される。カメラボディ130は、レンズユニット120が形成した被写体像を電気信号に変換して記録する。
【0015】
ところで、焦点距離が大きい望遠レンズ等の大型のレンズユニット120は、カメラボディ130よりも大きな寸法および重量を有する場合がある。よって、この種のレンズユニット120を装着されたカメラボディ130を三脚110で支持する場合、カメラボディ130ではなく、レンズユニット120を三脚110に結合して支持させる場合がある。
【0016】
このため、大型のレンズユニット120には、雲台118の支持プレート119に結合する三脚座140を備えるものがある。なお、以下の説明においては、レンズユニット120に対して物体側を前方、像側を後方と記載する。
【0017】
図2は、三脚座140における環状部142の径方向断面図である。三脚座140は、環状部142の内側に、リテナ150および複数の剛体球152を用いた軸受け構造を有する。
【0018】
環状部142は、レンズ鏡筒122の外周面を包囲する。環状部142の外周面において、図中下端の一部は平坦に成形された取付部144をなす。取付部144には、ブラケット146を安定に取り付けることができる。
【0019】
剛体球152は、金属、セラミックス等により形成された剛硬な球体である。剛体球152は、レンズ鏡筒122の外周面と、環状部142の内周面との間に3個以上配される。これにより、レンズ鏡筒122は、環状部142から、剛体球152を介して支持される。
【0020】
また、環状部142の内側で、レンズ鏡筒122が光軸Xの周りを回転した場合、剛体球152は、環状部142の内周面およびレンズ鏡筒122の外周面の間で、レンズ鏡筒122の径方向に交差する転動軸の回りに転動する。
【0021】
このように、三脚座140は、剛体球152を用いた軸受け構造を介してレンズ鏡筒122を支持する。よって、レンズ鏡筒122が環状部142の内側で光軸Xの周りに回転する場合に、レンズ鏡筒122の環状部142の内周面に対する摩擦を低減できる。
【0022】
なお、リテナ150は、環状部142およびレンズ鏡筒122の間に配され、環状部142の周方向について剛体球152を等間隔に保つ。換言すれば、リテナ150は、剛体球152が相互の間隔を維持して、相互に接触することを防止する。また、リテナ150は、レンズ鏡筒122が環状部142に対して回転した場合に、回転する剛体球152の間隔を維持しつつ環状部142に連れ回される。
【0023】
図3は、三脚座140の部分断面図である。図3は、図2において点線Aで囲った領域を拡大して示す。
【0024】
図示のように、リテナ150に設けられた切欠き部153は、剛体球152の各々の外周を半周以上包囲する。このため、切欠き部153の開口幅Dは、剛体球152の直径Dよりも狭い。これにより、レンズ鏡筒122が環状部142から抜かれた場合も、リテナ150が剛体球152を保持する。よって、保守等を目的としてレンズ鏡筒122を外した場合に、三脚座140から剛体球152が脱落することが防止される。
【0025】
図4は、三脚座140の光軸Xを含む断面図である。図3と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0026】
三脚座140において、剛体球152を用いた軸受け構造は、レンズ鏡筒122の前後方向の離間した位置に複数配される。図示の例では、環状部142の前端近傍および後端近傍に、それぞれ剛体球152を用いた一対の軸受け構造が形成される。
【0027】
図中左側に位置する前側の軸受け構造を形成する剛体球152は、レンズ鏡筒122の外周面および環状部142の内周面の他に、レンズ鏡筒122に形成された段差部123の側面にも接している。また、前側の軸受け構造において、剛体球152が接する環状部142の内面は、前側の内径がより大きくなるように傾斜している。
【0028】
図中右側に位置する後側の軸受け構造を形成する剛体球152は、レンズ鏡筒122の外周面および環状部142の内周面の他に、環状部142の後方でレンズ鏡筒122に取り付けられた固定環148の側面にも接している。また、後側の軸受け構造において、剛体球152が接する環状部142の内面は、後側の内径がより大きくなるように傾斜している。
【0029】
固定環148は、後側の軸受け構造において、更に後方から剛体球152に対して当接した状態で、ビス149によりレンズ鏡筒122に対して固定される。これにより、環状部142からレンズ鏡筒122が抜けなくなる。このような構造により、剛体球152は、前側軸受け構造および後側軸受け構造のそれぞれにおいて、レンズ鏡筒122および環状部142に3点で当接する。
【0030】
また、固定環148と段差部125側面との間隔は、シムリング156の厚さを変更することにより調節できる。よって、厚さの異なる複数のシムリング156から選択したものを組み付けることにより、レンズ鏡筒122の環状部142に対する円滑な回転を維持しつつ、レンズ鏡筒122および環状部142の間のガタを解消できる。
【0031】
このような構造により、三脚座140は、レンズ鏡筒122の長手方向についても、間隔をおいた複数の位置で、剛体球152を介してレンズ鏡筒122を支持する。よって、レンズ鏡筒122およびカメラボディ130を操作する場合に、例えば、レンズユニット120の光軸Xがぶれるような負荷がレンズ鏡筒122に掛かった場合であっても、三脚座140によるレンズ鏡筒122の支持は安定しており、レンズ鏡筒122を光軸Xの周りに回転させることができる。
【0032】
図5は、他の三脚座141の光軸Xを含む断面図である。三脚座141において、既に説明した三脚座140と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0033】
三脚座141において、レンズ鏡筒122および環状部142の間には、転動体としてローラ154が配される。ローラ154は、レンズ鏡筒122の外周に沿って3本以上配される。
【0034】
ローラ154の各々は円筒状の形状を有し、レンズ鏡筒122と環状部142の間で、光軸Xと平行な転動軸の周りを転動する。よって、環状部142の内側でレンズ鏡筒122を回転させた場合、ローラ154が転動してレンズ鏡筒122および環状部142の間の摩擦を低減する。
【0035】
図6は、また他の三脚座151の分解斜視図である。三脚座151は、環状部142に対して、レンズユニット120の後側から装着されるリテナ150、剛体球152、シムリング156およびライナリング160を有する。更に、ライナリング160の後方には固定環148が配される。
【0036】
また、三脚座151は、レンズユニット120の前側から環状部142に装着されるリテナ150、剛体球152およびライナリング160を有する。更に、三脚座151は、環状部142に内周面側から装着されるスリーブリング158およびビス168と、環状部142の外周面側から装着されるおよびホローセット170、サムノブ162付きボルト163および取付部144を有する。
【0037】
上記要素を有する三脚座151は、下記の順序でレンズ鏡筒122に組み付けられる。まず、環状部142の内側にスリーブリング158を嵌める。次いで、ホローセット170が環状部142にねじ込まれる。ホローセット170は、環状部142の内側に向かってねじ込まれる。
【0038】
ホローセット170において、環状部142の内側から見える一端には、樹脂チップ166が取り付けられる。これにより、ホローセット170の端部が、環状部142に挿入されたレンズ鏡筒122に接した場合に表面を傷つけることが防止される。
【0039】
環状部142にレンズ鏡筒122が挿通された状態で、ホローセット170を環状部142の内側に向かってねじ込んだ場合、先端の樹脂チップ166がレンズ鏡筒122の外周面に押し付けられる。これにより、環状部142に挿通されたレンズ鏡筒122の、光軸X周りの回転し易さが抑制される。ホローセット170の他端は環状部142の外側に露出しており、環状部142にレンズ鏡筒122を挿通した状態で、環状部142の外側から回すことができる。
【0040】
次に、スリーブリング158の内側からビス168を環状部142に通して、環状部142の外周面にブラケット146を固定する。ビス168は、環状部142にレンズ鏡筒122が挿通された後は、外部から見えなくなる。
【0041】
更に、環状部142の外側から、サムノブ162の付いたボルト163が環状部142の内側に向かって螺入される。ボルト163の先端には樹脂チップ164が取り付けられる。
【0042】
ボルト163はサムノブ162を有するので、工具無しに手で締め込み、また、緩めることができる。ボルト163を締め込んだ場合、ボルト163の先端は、環状部142に挿通されたレンズ鏡筒122の外周面に当接する。これにより、レンズ鏡筒122の回転を規制できる。ボルト163の先端には樹脂チップ164が装着されているので、レンズ鏡筒122の表面を傷つけることはない。
【0043】
次に、環状部142の前側および後側から、リテナ150および剛体球152を、それぞれ装着する。図3を参照して既に説明したように、リテナ150が剛体球152を保持するので、レンズ鏡筒122が環状部142に挿通されていない状態でも、剛体球152が散逸することはない。
【0044】
次いで、ライナリング160を、レンズ鏡筒122の前側の段差部123側面に装着してからスリーブリング158の内側にレンズ鏡筒122を挿通する。これにより、前側の剛体球152がライナリング160に当接する。
【0045】
続いて、レンズ鏡筒122の他の段差部125側面にシムリング156を装着した後、ライナリング160を装着する。更に、固定環148をレンズ鏡筒122に通し、固定環148がライナリング160に当接したら、ビス149により固定環148をレンズ鏡筒122に固定する。
【0046】
図7は、三脚座151の、光軸Xを含む部分断面図である。図6と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0047】
図示のように、三脚座151において、剛体球152と環状部142および固定環148との間には、スリーブリング158またはライナリング160が間挿されている。スリーブリング158は、ステンレス鋼等、耐磨耗性の高い材料により形成される。これにより、剛体球152の回転により、環状部142の表面が磨耗することが防止される。
【0048】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0049】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0050】
100 カメラシステム、110 三脚、112 脚部、114 伸縮パイプ、116 ロックナット、117 本体、118 雲台、119 支持プレート、120 レンズユニット、122 レンズ鏡筒、123、125 段差部、130 カメラボディ、140、141、151 三脚座、142 環状部、144 取付部、146 ブラケット、148 固定環、149、168 ビス、150 リテナ、152 剛体球、153 切欠き部、154 ローラ、156 シムリング、158 スリーブリング、160 ライナリング、162 サムノブ、163 ボルト、164、166 樹脂チップ、170 ホローセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ鏡筒を外部の支持体に支持させる支持装置であって、
レンズ鏡筒の外周が挿入された環状体と、
前記レンズ鏡筒の外周と前記環状体の内周との間に配され、少なくとも前記レンズ鏡筒の径方向に交差する転動軸の回りに回転する複数の転動体と
を備え、
前記複数の転動体の転動により、前記レンズ鏡筒を前記環状体に対して光軸の回りに回転可能に支持する支持装置。
【請求項2】
前記複数の転動体のそれぞれは、剛体球であって、前記レンズ鏡筒の外周および前記環状体の内周により3点で支持される請求項1に記載の支持装置。
【請求項3】
前記環状体と前記複数の転動体との間に配され、前記複数の転動体に直接接触する補強環をさらに備える請求項1または2に記載の支持装置。
【請求項4】
前記複数の転動体を周方向について互いに分離した状態で相対的に位置決めする分離環をさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の支持装置。
【請求項5】
前記分離環は、前記複数の転動体の脱落を防止して保持する請求項4に記載の支持装置。
【請求項6】
一端を前記環状体に固定され、他端を前記レンズ鏡筒の外周面に当接させて、前記レンズ鏡筒の光軸の周りの回転に摩擦抵抗を生じさせる回転抑制部材を更に備える請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の支持装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の支持装置と、
前記支持装置により支持される前記レンズ鏡筒と
を備えるレンズユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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