説明

支持装置

【課題】荷重を受けた場合に、支持する複数箇所にて確実に分散することができると共に、それぞれの支持箇所の耐荷重に応じて適切な荷重の分散を容易にできる支持装置を提供する。
【解決手段】第一部位21に荷重Pを受け得る荷重受体20と、荷重受体20の第二部位22を非弾性体により支持する第一回転支持体31と、荷重受体20のうち第二部位22より第一部位21側に位置する第三部位23を弾性体により支持し、第一部位21に受ける荷重Pが無荷重の場合において荷重受体20が受け得る荷重Pの方向に予圧縮または予引張を付与した状態に設けられる弾性支持体40を備える。弾性支持体40による予圧縮または予引張の力F0は、荷重受体20の第一部位21に荷重Pを受けることによって弾性支持体40に生じる荷重F1より大きな力に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばロボットの関節部や種々の可動支持構造部において、回転軸を支持する構造において、軸方向の複数箇所において支持することが一般的である。例えば、回転軸の一端部と回転軸の中間部の2カ所を軸受により支持され、回転軸の他端部に径方向荷重を受ける場合を考える。このような支持構造においては、回転軸の中間部を支持する軸受には、非常に大きな荷重が作用する。そのため、回転軸の中間部における軸受の耐荷重が大きなものとせざるを得ない。これは、回転軸の他端部に受ける荷重が、2カ所の軸受に分散されていないためである。そのため、2カ所の軸受に荷重を分散することが望まれる。
【0003】
ところで、特表2005−526933号公報(特許文献1)には、ハウジングの内周面において、軸の一端部が軸受のみにより支持され、軸の他端部が歯車に噛み合い、軸の中間部が軸受により支持されると共にばねにより歯車との噛み合い位置に向けて付勢する構成が記載されている。これにより、軸の他端部における歯車との噛み合い部分に、歯車から径方向に押しつける力が付与されたとしても、ばねの付勢力により軸の中心を一定とすることができるとされている。
【0004】
また、特開2005−297080号公報(特許文献2)には、ロボットの関節装置において、モータを支持するベアリングに対して軸方向の予圧を付与することが記載されている。また、実公平8−10524号公報(特許文献3)には、ロボットの関節部において、傾動アームの端部をばねによって旋回アームに支持されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−526933号公報
【特許文献2】特開2005−297080号公報
【特許文献3】実公平8−10524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の支持装置においては、回転軸が受ける荷重が常に一定であることを前提として、回転軸の中心が移動しないようにばねによる付勢力が設定されている。つまり、ロボットの関節部や可動支持構造部のように、受ける荷重が変化するものに適用することができない。また、特許文献2,3の支持装置は、径方向の荷重を分散するものではない。
【0007】
ところで、回転軸の他端部に受ける荷重を2カ所の支持部に分散することが望まれることは上述したとおりである。ここで、回転部を支持する軸受などの支持体には、耐荷重が設定されている。つまり、一般に、それぞれの軸受などの支持体が受け得る最大の荷重は、予め決められている。従って、支持構造を設計する際には、当該支持体が受け得る最大の荷重が必ず耐荷重の範囲内にする必要がある。
【0008】
そして、2カ所の支持体のそれぞれの耐荷重が異なる場合には、それぞれの耐荷重に応じた荷重の分散ができるように設計しなければならない。しかしながら、このように設計することは容易ではない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、例えば回転軸の場合には径方向の荷重を受けた場合に、回転軸を支持する複数箇所にて確実に分散することができると共に、それぞれの支持箇所の耐荷重に応じて適切な荷重の分散を容易にできる支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本支持装置は、第一部位に荷重を受け得る荷重受体と、前記荷重受体の第二部位を非弾性体により支持する非弾性支持体と、前記荷重受体のうち前記第二部位より前記第一部位側に位置する第三部位を弾性体により支持し、前記第一部位に受ける前記荷重が無荷重の場合において前記荷重受体が受け得る前記荷重の方向に予圧縮または予引張を付与した状態に設けられる弾性支持体と、を備え、前記弾性支持体による予圧縮または予引張の力は、前記荷重受体の前記第一部位に前記荷重を受けることによって前記弾性支持体に生じる荷重より大きな力に設定される。
【0011】
上記支持装置によれば、荷重受体が受ける荷重を弾性支持体と非弾性支持体に確実に分散することができる。従って、弾性支持体に生じる荷重、および、非弾性支持体に生じる荷重は、荷重受体の第一部位が受ける荷重よりも小さくできる。さらに、弾性支持体に予圧縮または予引張を付与すると共に、弾性支持体に付与されている予圧縮または予引張の力を荷重受体が荷重を受けることによって弾性支持体に生じる荷重よりも十分に大きく設定している。そうすると、荷重受体が荷重を受けることによって弾性支持体に荷重が発生したとしても、弾性支持体が受ける全体の荷重はほとんど変化しないようにできる。つまり、弾性支持体が受ける荷重を一定の範囲内にすることができる。これにより、弾性支持体に生じる荷重の管理が容易となる。
【0012】
また、前記支持装置は、基軸と、前記基軸に対して前記荷重受体の前記第二部位を回転可能に支持する前記非弾性支持体としての第一回転支持体と、前記基軸に対して前記弾性支持体を回転可能に支持する第二回転支持体と、を備えるようとしてもよい。このように、回転体に適用して、荷重受体に対して基軸の径方向に荷重を受けたとしても、上述した効果を奏する。
【0013】
また、前記第一回転支持体の軸直交方向の耐荷重は、前記第二回転支持体の軸直交方向の耐荷重より大きく設定されるようにしてもよい。このような場合に、非常に有用である。つまり、耐荷重が小さな第二回転支持体に、弾性支持体を介在することで、確実に第二回転支持体に生じる荷重を抑制することができる。
【0014】
また、前記支持装置は、前記基軸に対して回転可能に設けられ回転駆動力により回転する回転駆動軸を備え、前記基軸は、ベースに固定され、前記第一回転支持体は、前記基軸に回転可能に設けられると共に、前記荷重受体の前記第二部位を支持する第一軸受であり、前記第二回転支持体は、前記回転駆動軸の回転駆動力を減速して前記弾性支持体に伝達する減速機であるとしてもよい。
【0015】
ここで、単なる軸受と減速機とを比較した場合に、同程度の耐荷重の場合には、減速機は軸受よりも大型化してしまう。そのため、支持装置全体として小型化を図るためには、減速機の外形を小さなものとする必要がある。そうすると、減速機の耐荷重は、軸受の耐荷重よりも小さくせざるを得なくなる。このような場合に、減速機に対して弾性支持体を介在させることで、比較的小型な減速機を用いつつ、当該減速機に生じる荷重を確実に制限することができる。
【0016】
また、前記支持装置は、関節部を有するロボットの前記関節部に用いられるようにしてもよい。ロボットの関節部には、上述したように、荷重を分散すると共に、分散された荷重の少なくとも一方を確実に制限することが特に望まれる。そこで、ロボットの関節部に上述した支持装置を適用することで、当該要請を確実に満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一例の支持装置を示す模式図の例である。
【図2】第二例の支持装置を示す模式図の例である。
【図3】第三例の支持装置を示す模式図の例である。
【図4】第四例の支持装置を示す模式図の例である。
【図5】第五例の支持装置を示す模式図の例である。
【図6】ロボットの正面図である。
【図7】ロボットの関節部に用いる支持装置の軸方向断面図の例である。
【図8】図7の右側(軸方向)から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本実施形態の概念説明)
本発明の支持装置を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、本実施形態の概念について、第一例から第五例について説明する。
【0019】
(第一例)
第一例の支持装置について、図1を参照して説明する。図1に示すように、第一例の支持装置は、第一ベース11と、第二ベース12と、荷重受体20と、非弾性支持体30と、弾性支持体40とを備えて構成される。第一ベース11および第二ベース12は、別部材に固定される。荷重受体20は、ここでは梁として説明する。そして、荷重受体20の一端(図1の左端)に位置する第一部位21に、図1の下方向への荷重Pを受け得る。ただし、荷重受体20の第一部位21には、荷重Pを受けていない無荷重状態の場合を含む。つまり、荷重受体20の第一部位21には、無荷重から所定の荷重までの範囲の荷重Pを受け得る。
【0020】
非弾性支持体30は、第一ベース11に対して、荷重受体20の他端(図1の右端)に位置する第二部位22の下面を非弾性体により支持する。つまり、非弾性支持体30は、荷重受体20の第一部位21に受ける荷重Pの方向に抗するように、荷重受体20を支持する。ここで、非弾性体とは、ばねおよびゴムを除く意味であり、例えば、金属や木などによる固定手段を意味する。つまり、物理的には、金属や木であっても、弾性変形する。しかし、その変形量はばねおよびゴムに比べて十分に小さいものであるため、ここでは非弾性体として分類するものとする。一方、弾性体は、スプリングばね、板ばね、空気ばね、ゴムなどを含む。
【0021】
弾性支持体40は、第二ベース12に対して、荷重受体20の中間部に位置する第三部位23の下面を弾性体であるばねまたはゴムにより支持する。つまり、弾性支持体40は、荷重受体20の第一部位21に受ける荷重Pの方向に抗するように、荷重受体20を支持する。さらに、荷重受体20の第一部位21に受ける荷重Pが無荷重の場合に、弾性支持体40の弾性体であるばねまたはゴムには、予圧縮を付与した状態に設けられている。この弾性支持体40の予圧縮の力F0は、荷重受体20の第一部位21に荷重Pを受けることによって弾性支持体40に生じる荷重F2より大きな力に設定されている。なお、荷重受体20の第三部位23は、第二部位22よりも第一部位21側に位置する。
【0022】
第一例の支持装置の動作について説明する。荷重受体20の第一部位21に下方の荷重Pが作用した場合には、力の釣り合いおよびモーメントの釣り合いにより、非弾性支持体30には圧縮する方向の力F1(図1の矢印)が作用し、弾性支持体40にも圧縮する方向の力F2(図1の矢印)が作用する。このように、荷重受体20の第一部位21に受けた荷重Pを、非弾性支持体30と弾性支持体40とに分散して支持している。従って、非弾性支持体30に生じる荷重F1、および、弾性支持体40に生じる荷重F2は、荷重受体20の第一部位21が受ける荷重Pよりも小さくできる。
【0023】
さらに、弾性支持体40には、予めF0の圧縮荷重が付与されている。この予圧縮荷重F0は、荷重受体20の第一部位21に荷重Pを受けることによって弾性支持体40に生じる荷重F2より十分に大きな力である。従って、荷重受体20の第一部位21に荷重Pを受けることによって変形する弾性支持体40の圧縮変形量は、非常に小さいものとなる。つまり、荷重受体20の第一部位21が荷重Pを受けた場合における弾性支持体40の支持長(図1の上下長さ)は、荷重受体20の第一部位21に無荷重状態の場合における弾性支持体40の支持長(図1の上下長さ)とほとんど同一にできる。そうすると、荷重受体20の第一部位21が荷重Pを受けることによって弾性支持体40に荷重F2が発生したとしても、弾性支持体40が受ける全体の荷重(F0+F2)はほとんど変化しないようにできる。つまり、弾性支持体40に生じる全体の荷重(F0+F2)を一定の範囲内にすることができる。これにより、弾性支持体40に生じる全体の荷重(F0+F2)の管理が容易となる。例えば、第二ベース12の耐荷重に制限がある場合に有用である。
【0024】
(第二例)
第二例の支持装置について、図2を参照して説明する。ここでは、第二例の支持装置について、第一例の支持装置に対する相違点のみについて説明する。第二例の支持装置において、荷重受体20の第一部位21には、図2に示すように上向きの荷重Pを受け得る。また、荷重受体20の第一部位21に受ける荷重Pが無荷重の場合に、弾性支持体40の弾性体であるばねまたはゴムには、予引張を付与した状態に設けられている。この弾性支持体40の予引張の力F0は、荷重受体20の第一部位21に荷重Pを受けることによって弾性支持体40に生じる荷重F2より大きな力に設定されている。
【0025】
この場合にも、第一例の支持装置と同様に、荷重受体20の第一部位21に受けた荷重Pを、非弾性支持体30と弾性支持体40とに分散して支持している。さらに、荷重受体20の第一部位21が荷重Pを受けることによって弾性支持体40に荷重F2が発生したとしても、弾性支持体40が受ける全体の荷重(F0+F2)はほとんど変化しないようにできる。つまり、弾性支持体40に生じる全体の荷重(F0+F2)を一定の範囲内にすることができる。これにより、弾性支持体40に生じる全体の荷重(F0+F2)の管理が容易となる。
【0026】
(第三例)
第三例の支持装置について、図3を参照して説明する。ここでは、第三例の支持装置について、第一例の支持装置に対する相違点のみについて説明する。第三例の支持装置において、荷重受体20の中間部に位置する第一部位21に、図3に示すように下向きの荷重Pを受け得る。非弾性支持体30は、荷重受体20の他端(図3の右端)を非弾性体により支持する。弾性支持体40は、荷重受体20の一端(図3の左端)を弾性体により支持する。そして、弾性支持体40には、予圧縮が付与されている。
【0027】
この場合にも、第一例の支持装置と同様に、荷重受体20の第一部位21に受けた荷重Pを、非弾性支持体30と弾性支持体40とに分散して支持している。さらに、荷重受体20の第一部位21が荷重Pを受けることによって弾性支持体40に荷重F2が発生したとしても、弾性支持体40が受ける全体の荷重(F0+F2)はほとんど変化しないようにできる。つまり、弾性支持体40に生じる全体の荷重(F0+F2)を一定の範囲内にすることができる。これにより、弾性支持体40に生じる全体の荷重(F0+F2)の管理が容易となる。
【0028】
(第四例)
第四例の支持装置について、図4を参照して説明する。第四例の支持装置は、基軸13に対して荷重受体20が回転可能に支持された構成である。図4に示すように、第四例の支持装置は、基軸13と、荷重受体20と、第一回転支持体31と、弾性支持体40と、第二回転支持体50とを備えて構成される。基軸10は、別部材に固定された軸である。荷重受体20は、第一例の荷重受体20と同一である。また、弾性支持体40についても、第一例の弾性支持体40と同一である。
【0029】
第一回転支持体31は、軸受(図4においては転がり軸受を図示)であり、基軸13に対して、荷重受体20の他端(図1の右端)に位置する第二部位22の下面を回転可能に非弾性体により支持する。つまり、第一回転支持体31は、荷重受体20の第一部位21に受ける荷重Pの方向に抗するように、すなわち荷重受体20を径方向に支持する第二回転支持体50は、基軸10に対して弾性支持体40を回転可能に支持する。
【0030】
この場合、第一例の支持装置を回転体に適用したものであり、同様の作用効果を奏する。特に、第二回転支持体50の耐荷重に制限がある場合には、有用である。さらに、第一回転支持体31の径方向(軸直交方向)の耐荷重が、第二回転支持体50の径方向(軸直交方向)の耐荷重より大きく設定されるものに適用すると、効果的に機能する。この場合、第二回転支持体50の径方向の耐荷重が比較的小さいため、荷重の変化を許容させにくい。そこで、上述した構成とすることで、第二回転支持体50の径方向の耐荷重が小さいとしても、確実にその耐荷重の範囲内にて使用可能となる。
【0031】
(第五例)
第五例の支持装置について、図5を参照して説明する。第五例の支持装置は、第四例の第二回転支持体50を減速機に置き換えたものである。図5に示すように、第五例の支持装置は、基軸13と、荷重受体20と、第一回転支持体31と、弾性支持体40と、回転駆動軸60と、減速機70とを備えて構成される。基軸10は、別部材であるベース(図示せず)に固定された軸である。荷重受体20は、第一例の荷重受体20と同一である。また、弾性支持体40についても、第一例の弾性支持体40と同一である。また、第一回転支持体31は、第四例の第一回転支持体31と同一である。
【0032】
回転駆動軸60は、基軸13と同軸上に設けられ、例えば電気モータや内燃機関などの回転駆動源80が発生する回転駆動力により回転する。減速機70は、第四例の第二回転支持体50に対応する部分であり、回転駆動軸60の回転駆動力を減速して弾性支持体40に伝達する。つまり、荷重受体20は、減速機70により減速された回転力によって基軸13および回転駆動軸60の中心軸周りに回転可能となる。
【0033】
この場合、第四例に示した支持装置と同様の作用効果を奏する。ここで、単なる軸受と減速機70とを比較した場合に、両者の径方向の耐荷重が同程度の場合には、減速機70は軸受よりも大型化してしまう。そのため、支持装置全体として小型化を図るためには、減速機70の外形を小さなものとする必要がある。そうすると、減速機70の径方向の耐荷重は、軸受の径方向の耐荷重よりも小さくせざるを得なくなる。このような場合に、減速機70に対して弾性支持体40を介在させることで、比較的小型な減速機70を用いつつ、当該減速機70に生じる荷重を確実に制限することができる。
【0034】
(人間共存型ロボットに適用した支持装置)
上述した第五例の支持装置を人間共存型ロボット、例えば介護ロボットの関節部に適用した場合について、図6〜図8を参照して説明する。図6に示すように、ロボット100は、人間の上半身部分を備え、当該上半身部分を指示する台座110には駆動用の車輪が配置されている。このロボット100は、人間の操作によらず、自動的に走行動作を可能である。詳細には、ロボット100は、二本の腕部101,102を備える。これら二本の腕部101,102は、肩関節、肘関節および手首関節を備え、各関節により角度を自在に駆動することができる。そして、当該二本の腕部101,102により、例えば被介護者を抱きかかえることができる。つまり、人間が人間を抱きかかえるのとほぼ同様に腕部101,102を動作させて、腕部101,102により人間を抱きかかえることができる。
【0035】
また、ロボット100の胴体部120は、台座110に対して、ロボット100に正対して(正面から見た場合)、左右方向に揺動する関節部121を備える。つまり、当該関節部121は、ロボット100の前後方向の軸周りに、台座110に対して胴体部120を回転させる関節部である。そして、この関節部121に、上述した支持装置を適用する。つまり、ロボット100の腕部101,102に被介護者を抱きかかえていない場合に、関節部121には、ロボット100の各部品の自重が作用するのみで、新たな荷重が発生していない無荷重状態となる。一方、ロボット100の腕部101,102に被介護者を抱きかかえた場合には、被介護者の体重に応じた荷重が、関節部121に作用する。
【0036】
以下に、関節部121の支持装置の構成について、図7および図8を参照して詳細に説明する。ここで、図7の左側がロボット100の正面側であり、図7の右側がロボット100の背面側である。図7および図8に示すように、関節部121は、ベース210と、第一,第二基軸221,222と、主,副荷重受体231,232と、第一回転支持体(非弾性支持体)240と、回転駆動軸250と、減速機260と、弾性支持体270とを備えて構成される。
【0037】
ベース210は、ロボット100の台座側に固定されている部材である。第一,第二基軸221,222は、ベース210に固定されている軸状または筒状の部材である。第一基軸221は、円環状に形成され、第一基軸221の一端側(図7の右側)がベース210に固定されている(図示しないボルトにより締結されている。)。また、第二基軸222は、ほぼ円盤状に形成されている。第二基軸222の一端側(図7の右側)が、第一基軸221の他端側(図7の左側)にボルトにより締結され、第二基軸222の外周面の下方部がベース210に固定されている。つまり、第一,第二基軸221,222は、ベース210と一体的に動作する。
【0038】
主荷重受体231は、ほぼ平板状に形成され、ロボット100の胴体部120側に固定されている。つまり、主荷重受体231は、ベース210に対して、ロボット100の前後方向の軸回りに揺動する。ロボット100の腕部101,102により人間を抱きかかえた状態において、主荷重受体231の第一部位231aに荷重を受ける構造となっている。副荷重受体232は、主荷重受体231の下面にボルトにより締結されている。この副荷重受体232の下面のうち図7の左側には、後述する弾性支持体270のばね271の上端を収容するように凹部232aが形成されている。また、副荷重受体232の一端(図7の左側)には、後述する弾性支持体270の下支持体272をガイドするためのガイド部232bが形成されている。
【0039】
第一回転支持体(非弾性支持体)240は、主軸受241と、外輪側部材242とを備えて構成される。主軸受241は、第一基軸221と第二基軸222の間に挟まれて、かつ、第二基軸222の外周側に配置されている。外輪側部材242は、主軸受241の外輪に一体的に締結されている。つまり、外輪側部材242は、第一,第二基軸221,222に対して回転可能に配置されている。この外輪側部材242の外周面は、副荷重受体232の他端側(図7の右側)にボルトにより締結されている。つまり、第一回転支持体240は、主荷重受体231の他端側の第二部位231bを非弾性体により支持し、かつ、第一,第二基軸221,222に対して回転可能に支持している。
【0040】
回転駆動軸250は、伝達軸251とプーリ252とを備えて構成される。伝達軸251の一端(図7の左側)の外周面には、軸方向に延びる凸条部(キー)251aが形成されている。また、伝達軸251の他端(図7の右側)は、軸受251bを介して第二基軸222に回転可能に支持されている。プーリ252の内周面には、伝達軸251の一端側の凸条部251aに嵌め合うキー溝252aが形成されている。そして、キー溝252aを凸条部251aに嵌め込むことにより、プーリ252は、伝達軸251の一端に回転規制された状態で取り付けられている。このプーリ252と電気モータ(図示せず)の出力軸との間には、無端状ベルト(図示せず)が架けられている。つまり、電気モータの回転駆動力が無端状ベルトを介してプーリ252に伝達される。
【0041】
減速機260は、伝達軸251の回転駆動力を減速した回転力を出力することができる。この減速機260は、伝達軸251に取り付けられ、かつ、第二基軸222の一端側に取り付けられている。この減速機260は、例えば、波動歯車減速機を用いる。具体的には、減速機260は、ウェーブジェネレータ261と、フレクスプライン262と、サーキュラスプライン263と、軸受264と、出力回転盤265とを備えて構成される。
【0042】
ウェーブジェネレータ261は、楕円カム形状の外周面のウェーブプラグ261aと、ウェーブプラグ261aの外周面に嵌め込まれているウェーブベアリング261bとを備えて構成される。ウェーブプラグ261aは、伝達軸251の外周側にボルトにより締結されている。また、ウェーブベアリング261bの外周面形状は、ウェーブプラグ261aの外周面形状の相似形状である楕円形状をなしている。
【0043】
フレクスプライン262は、端部が開口した薄肉のシルクハット形状に形成され、筒状胴部262aとダイヤフラム262bとを備えて構成される。フレクスプライン262の筒状胴部262aは、可撓性を有し、一方の開口端側の外周面には外歯が形成されている。この筒状胴部262aは、ウェーブベアリング261bの外周側に嵌合され、ウェーブベアリング261bの外周面の楕円形状に倣って変形する。フレクスプライン262のダイヤフラム262bは、筒状胴部262aの他端(図7の左側)から径方向外方に延びるように一体的に形成されている。このダイヤフラム262bの最外周部分の軸方向厚みは、内周部分に比べて厚く形成されている。
【0044】
サーキュラスプライン263は、第二基軸222の一端に固定され、内周面に内歯が形成されている。サーキュラスプライン263の内歯の数は、フレクスプライン262の筒状胴部262aの外歯の数よりも僅かに多く形成されている。そして、サーキュラスプライン263の内歯は、フレクスプライン262の筒状胴部262aの外歯に噛み合っている。ただし、フレクスプライン262の筒状胴部262aは楕円形状に変形しているため、サーキュラスプライン263の内歯とフレクスプライン262の筒状胴部262aの外歯の噛み合っている部分は、楕円の長軸付近のみとなる。
【0045】
軸受264は、クロスローラベアリングであり、軸受264の内輪は、サーキュラスプライン263にボルトにより締結されている。一方、軸受264の外輪は、フレクスプライン262のダイヤフラム262bの外周部分にボルトにより締結されている。
【0046】
出力回転盤265は、円盤形状に形成されており、伝達軸251の軸方向中間部分に軸受265aを介して回転可能に支持されている。この出力回転盤265は、軸受264の外輪およびフレクスプライン262のダイヤフラム262bにボルトにより締結されている。
【0047】
上述した減速機260の動作を説明する。伝達軸251が回転すると、ウェーブジェネレータ261が回転する。つまり、ウェーブベアリング261bの長軸部分が周方向に移動する。この動作に伴って、サーキュラスプライン263の内歯とフレクスプライン262の筒状胴部262aの外歯との噛み合い部位が周方向に移動する。一方、サーキュラスプライン263は第二基軸222に固定されている。そうすると、フレクスプライン262は、サーキュラスプライン263の内歯とフレクスプライン262の筒状胴部262aの外歯との歯数差の分だけ回転する。そして、フレクスプライン262は、伝達軸251の回転を減速して、出力回転盤265を回転させる。
【0048】
弾性支持体270は、金属製のばね271と、ばね271の下端を支持する下支持体272とを備えて構成される。このばね271の上端は、副荷重受体232の凹部232aに収容されている。さらに、このばね271は、予め圧縮された状態で組み付けられている。この予圧縮の力は、主荷重受体231の第一部位231aに荷重を受けることによってばね271に生じる荷重より大きな力に設定されている。
【0049】
下支持体272は、厚肉の板状であって、減速機260の出力回転盤265の上方にボルトにより締結されている。図8に示すように、下支持体272の軸方向視において上面の左右方向中央部には、上方に突出する突起272aが形成されている。この突起272aは、ばね271の下端側の内部に挿入され、ばね271の位置ずれ防止機能を発揮している。さらに、下支持体272は、副荷重受体232のガイド部により、副荷重受体232に対して上下方向に移動可能となるようにガイドされている。つまり、主荷重受体231の第三部位231c(第一部位231aと第二部位231bの中間)が、弾性支持体270を介して減速機260に支持されている。
【0050】
このような構成により、上述した第五例にて説明したように、主荷重受体231の第一部位231aに荷重を受けた場合に、当該荷重は、第一回転支持体(非弾性支持体)240と弾性支持体270とに分散できる。従って、第一回転支持体240が受ける荷重および弾性支持体270が受ける荷重は、主荷重受体231の第一部位231aに受ける荷重よりも小さくできる。
【0051】
また、減速機260を小型にすると、減速機260の耐荷重が小さくなってしまう。そこで、上述したように、副荷重受体232と減速機260の出力回転盤265との間に予圧縮されたばね271を介在させることで、すなわち減速機260に対して副荷重受体232を予圧縮されたばね271により支持することにより、減速機260に生じる荷重を一定の範囲にすることができる。これにより、比較的小型な減速機260を用いつつ、減速機260に生じる荷重を確実に制限することができる。
【符号の説明】
【0052】
10,13:基軸、 11:第一ベース、 12:第二ベース
20:荷重受体、 21:第一部位、 22:第二部位、 23:第三部位
30:非弾性支持体、 31:第一回転支持体
40:弾性支持体、 50:第二回転支持体、 60:回転駆動軸
70:減速機、 80:回転駆動源
100:ロボット、 101,102:腕部、 110:台座
120:胴体部、 121:関節部
210:ベース、 221:第一基軸、 222:第二基軸
231:主荷重受体、 231a:第一部位、 231b:第二部位
231c:第三部位
232:副荷重受体、 232a:凹部、 232b:ガイド部
240:第一回転支持体、 241:主軸受、 242:外輪側部材
250:回転駆動軸、 251:伝達軸、 251a:凸条部、 251b:軸受
252:プーリ、 252a:キー溝
260:減速機、 261:ウェーブジェネレータ、 261a:ウェーブプラグ
261b:ウェーブベアリング、 262:フレクスプライン、 262a:筒状胴部
262b:ダイヤフラム、 263:サーキュラスプライン
264:軸受、 265:出力回転盤、 265a:軸受
270:弾性支持体、 271:ばね、 272:下支持体、 272a:突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部位に荷重を受け得る荷重受体と、
前記荷重受体の第二部位を非弾性体により支持する非弾性支持体と、
前記荷重受体のうち前記第二部位より前記第一部位側に位置する第三部位を弾性体により支持し、前記第一部位に受ける前記荷重が無荷重の場合において前記荷重受体が受け得る前記荷重の方向に予圧縮または予引張を付与した状態に設けられる弾性支持体と、
を備え、
前記弾性支持体による予圧縮または予引張の力は、前記荷重受体の前記第一部位に前記荷重を受けることによって前記弾性支持体に生じる荷重より大きな力に設定される支持装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記支持装置は、
基軸と、
前記基軸に対して前記荷重受体の前記第二部位を回転可能に支持する前記非弾性支持体としての第一回転支持体と、
前記基軸に対して前記弾性支持体を回転可能に支持する第二回転支持体と、
を備える支持装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第一回転支持体の軸直交方向の耐荷重は、前記第二回転支持体の軸直交方向の耐荷重より大きく設定される支持装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記支持装置は、前記基軸に対して回転可能に設けられ回転駆動力により回転する回転駆動軸を備え、
前記基軸は、ベースに固定され、
前記第一回転支持体は、前記基軸に回転可能に設けられると共に、前記荷重受体の前記第二部位を支持する第一軸受であり、
前記第二回転支持体は、前記回転駆動軸の回転駆動力を減速して前記弾性支持体に伝達する減速機である支持装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記支持装置は、関節部を有するロボットの前記関節部に用いられる支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−106312(P2012−106312A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256995(P2010−256995)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】