説明

支柱の引抜装置

【課題】トンネルマルチ用の支柱の引き抜きを良好に行えると共に前後方向にコンパクトな支柱の引抜装置を提供する。
【解決手段】走行体5と、長さ方向両端側が地中に差し込まれ且つアーチ状を呈した支柱3の長さ方向中央側を挟んで挟持する上下の回転体73,74とを備え、走行体5を走行させながら上下の回転体73,74を回転させて前記支柱3を引き抜く支柱の引抜装置において、前記下側回転体74は、左右軸回りに回転する側面視円形状の回転体で構成され、上側回転体73は、下側回転体74の前面側から上面側に至るように接する無端帯状の回転体で構成され、この上下の回転体73,74を走行体5の駆動輪10の周速よりも速い周速で回転させることで支柱3を上方に引き上げるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルマルチ用の支柱を引き抜く支柱の引抜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大根や人参等の作物を霜等から保護するのに該作物をトンネル状に覆うトンネルマルチがあり、このトンネルマルチは、棒状の支柱を上方に凸となるアーチ状に湾曲させると共に該支柱の両端部を地中に差し込むことにより、圃場に畝の長手方向に沿って所定間隔をおいてアーチ状支柱を建て込み、この建て込まれた支柱にわたってマルチフィルムを張架してなる。
【0003】
作物の栽培が終わって作物を収穫する際には、マルチフィルムがはぎ取られ、支柱が引き抜かれるが、この支柱の引抜作業を手作業で行う場合、引き抜く支柱の数が多いことから大変な労力を要するという問題がある。
そこで、この労力を軽減すべくトンネルマルチ用の支柱を引き抜く支柱の引抜機が提供されている(特許文献1参照)。
【0004】
この支柱の引抜機は、畝を跨いで該畝の長手方向に走行可能な走行機体と、圃場に建て込まれたアーチ状の支柱の長さ方向中央側を挟んで挟持する上下の回転体とを備えており、前記上下の回転体は、ともに無端帯状の搬送ベルトで構成されていると共に、左右軸回りに回転自在な前後のプーリに帯長手方向循環回走自在に掛装されている。
また、上下の搬送ベルトは後方に行くに従って上方に移行する傾斜状に配置されていると共に、上側搬送ベルトの下側部分と下側搬送ベルトの上側部分とを相互に密接させて、これらの間で支柱を挟持するように構成されており、上下の搬送ベルトの密接部分が後方側に移動するように上下の搬送ベルトを周方向に循環回走させることにより、挟持した支柱を後上方に搬送して引き抜くように構成されている。
【0005】
この支柱の引抜機にあっては、走行体を走行させながら上下の搬送ベルトで支柱を引き抜くことにより、走行体の前方移動を、上下の搬送ベルトによる支柱の後方移動で相殺し、圃場に対する支柱の位置を変えることなく該支柱を真上に引き上げて引き抜くようにしている。
【特許文献1】特開2002−253062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の支柱の引抜機にあっては、走行体を前進させながら支柱を走行体に対して相対的に後方移動させて圃場に対して支柱を真上に引き上げるようにしているので、走行体の駆動輪がスリップした場合、支柱を斜めに倒しながら該支柱を引き抜くこととなるので、支柱の引抜抵抗が大きくなるという問題がある。
また、支柱の引抜作業時における引抜機の走行速度は、作業者の歩行速度に合わせることから比較的遅く、このため上下の搬送ベルトの前後方向長さが長くなり、その結果、引抜機の前後方向長さが長くなるという問題もある。
【0007】
なお、上下の搬送ベルトの長さが長くなると、上下の搬送ベルトの中途部分での支柱挟持力が弱くなり、また、引抜機の前後方向長さが長くなると、旋回時、格納時等において不利である。
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みて、支柱の引抜を良好に行えると共に前後方向にコンパクトな支柱の引抜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、走行体と、長さ方向両端側が地中に差し込まれ且つアーチ状を呈した支柱の長さ方向中央側を挟んで挟持する上下の回転体とを備え、走行体を走行させながら上下の回転体を回転させて前記支柱を引き抜く支柱の引抜装置において、
前記下側回転体は、左右軸回りに回転する側面視円形状の回転体で構成され、上側回転体は、下側回転体の前面側から上面側に至るように接する無端帯状の回転体で構成され、この上下の回転体を走行体の駆動輪の周速よりも速い周速で回転させることで支柱を上方に引き上げるように構成したことを特徴とする。
【0009】
また、下側回転体の周面よりも径方向外方に突出し且つ該下側回転体と同行回転して支柱を引っ掛けて上方に引き上げる引上げ部材を設けるのがよい。
また、上下の回転体の後方側に、引き抜いた支柱を収容する支柱収容部を設け、下側回転体の側方から支柱収容部に至るように形成されていて引き抜いた支柱を支柱収容部に案内するガイド手段を設け、このガイド手段の支柱案内面が、支柱を支柱収容部へと案内する途中で引上げ部材から離反させるように構成するのがよい。
【0010】
また、前記ガイド手段に、支柱が引上げ部材と連れ回りするのを防止する連回り防止手段を設けるのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下側の回転体を側面視円形状の回転体で構成すると共に上側の回転体を下側回転体の前面側から上面側に至るように接する無端帯状の回転体で構成して、これら上下の回転体で支柱を挟持すると共に該上下の回転を回転させることにより支柱を上方に引き上げるように構成し、且つ、該上下の回転体を走行体の駆動輪の周速よりも速い周速で回転させるようにしたので、走行体の駆動輪がスリップしても支柱を良好に引き抜くことができると共に、支柱の引抜装置の前後方向の寸法をコンパクトに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図2及び図3において、1はトンネルマルチのマルチフィルム2及び支柱3を回収するトンネルマルチ回収機であり、このトンネルマルチ回収機1は、畝4を跨いで該畝4に沿って走行可能な走行体5と、マルチフィルム2をはぎ取るマルチはぎ取り機構6と、圃場に差し込まれたトンネルマルチ用の支柱3を引き抜く支柱引抜機構7とを備えてなる歩行型の作業機であり、換言すると、走行体5及びマルチはぎ取り機構6からなるマルチはぎ取り機と、走行体5及び支柱引抜機構7からなる支柱の引抜機とを合体させて、マルチフィルム2のはぎ取りと支柱3の引き抜きとを一工程で行えるようにした作業機である。
【0013】
トンネルマルチ用の支柱3は、弾性変形可能な棒状の支柱3をアーチ状(上方に凸となるU字状)に湾曲させると共に該支柱3の長さ方向両端部を地中に差し込むことにより、アーチ状を呈するように且つ畝4の長手方向に沿って所定間隔をおいて圃場に建て込まれており、マルチフィルム2は、畝4に沿って且つ前記支柱3にわたってトンネル状に張られている。
【0014】
走行体5は、図1〜図4に示すように、走行機体8と、この走行機体8を走行可能に支持する左右一対の前後輪9,10と、後輪10を駆動するエンジン(駆動手段)12と、該エンジン12用の燃料を貯留する燃料タンク13と、ミッションケース14と、前記エンジン12で駆動される油圧ポンプ15と、油圧駆動機器用の作動油を貯留する作動油タンク16と、操向用のハンドル17とを有する。
【0015】
走行機体8は、左右方向に間隔をおいて配置された左右一対のサイドフレーム18と、この左右サイドフレーム18の上端側同士を相互に連結する連結フレーム19と、左右サイドフレーム18の前下部同士を連結する前下部フレーム20とを有する。
左右の各サイドフレーム18は、上下方向に配置された後縦フレーム部材21と、この後縦フレーム部材21の上端側から前方突出状に設けられた上フレーム部材22と、後縦フレーム部材21の上下方向中途部から前方突出状に設けられた中間フレーム部材23と、この中間フレーム部材23の前端側と前記上フレーム部材22の前端側とを連結する前縦フレーム部材24と、後縦フレーム部材21の下端側から前方に向けて且つ中間フレーム部材23の前後方向中途部まで延出された下フレーム部材25と、後上方に凸となる湾曲状に形成されていて下フレーム部材25の前端と中間フレーム部材23の前部側とを連結する湾曲フレーム部材26と、後縦フレーム部材21の上端側から後方に延びる延出フレーム部材27とから主構成されている。
【0016】
連結フレーム19は、走行機体8の左右方向中央部と上フレーム部材22との間に前後方向に配置された前後方向フレーム部材28と、上フレーム部材22の前端部と前後方向フレーム部材28の前端部とを連結する前横フレーム部材29と、上フレーム部材22と前後方向フレーム部材28の中途部同士を連結する前後一対の中間横フレーム部材30とを左右一対備えると共に、前記左右延出フレーム部材27の後端部同士を連結する後横フレーム部材32と、左右の前後方向フレーム部材28の前部同士を連結する前連結フレーム部材33と、左右の後側の中間横フレーム部材30同士を連結する中間連結フレーム部材34とを備えている。
【0017】
前後方向フレーム部材28は、前横フレーム部材29と後側の中間横フレーム部材30とを連結する前構成部材28Aと、後側の中間横フレーム部材30と後横フレーム部材32とを連結する後構成部材28Bとからなり、後構成部材28Bは上下一対設けられている。
左右各前輪9は左右各サイドフレーム18の前下部に取付フレーム35を介して取り付けられ、左右各後輪10は左右後縦フレーム部材21の下端側に左右軸回りに回動自在に取り付けられ、前輪9はキャスター輪とされ、後輪10は駆動輪とされている。
【0018】
エンジン12,ミッションケース14,燃料タンク13,油圧ポンプ15,作動油タンク16は、左側のサイドフレーム18の中間フレーム部材23上に固定された載置板36上に搭載されており、走行機体8の右側後部(右側後縦フレーム部材21の上下方向中途部)には、左側の前記エンジン12,ミッションケース14,燃料タンク13,油圧ポンプ15,作動油タンク16との重量バランスを図るためのウエイト37が取り付けられている。
【0019】
エンジン12は走行機体8の前後方向中間部に配置され、ミッションケース14はエンジン12の後方側に後傾状に配置され、燃料タンク13はエンジン12の上方側に配置され、油圧ポンプ15及び作動油タンク16はエンジン12の前方側に配置されており、油圧ポンプ15はエンジン12の出力軸からベルト巻き掛け伝動機構等の伝動手段38を介して伝達される動力によって駆動され、また、エンジン12の動力は該エンジン12の出力軸からベルト巻き掛け伝動機構等の伝動手段39を介してミッションケース14内にその下部から入力される。
【0020】
このミッションケース14内に入力された動力は、該ミッションケース14内の動力伝達機構を経て該ミッションケース14上部に配置された左右の伝動軸40,41から出力されると共に、該左右の伝動軸40,41から左右の各後縦フレーム部材21内の動力伝達機構を介して後輪10に伝達されて、該後輪10が回転駆動されるように構成されている。
【0021】
前記操向用のハンドル17は、左側のサイドフレーム18の上フレーム部材22に取り付けられ、前後一対備えられている。
なお、前後各ハンドル17には、図示省略の操向レバーが設けられ、この操向レバーの一方を操作することにより左右の後輪10の一方への動力伝達が切断され、操向レバーの他方を操作することにより左右の後輪10の他方への動力伝達が切断されることにより、走行機体8の操向が可能とされている。
【0022】
また、走行体5には、左右の後輪10への動力伝達を同時に切断する走行クラッチレバー、前後進切換操作及び変速操作するための変速レバー等が備えられている。
支柱引抜機構7は、図1〜図7に示すように、走行機体8の前側に配置されて該走行機体8に着脱自在に取り付けられたメインフレーム43と、このメインフレーム43の高さを調整する高さ調整装置44と、支柱3を引き抜く引抜部45と、この引抜部45を取り付ける取付体46と、引抜部45で引き抜かれた支柱3を収容する支柱収容部47と、引き抜かれた支柱3を引抜部45から支柱収容部47へと案内するガイド手段48と、引き抜かれた支柱3の躍りを規制する規制杆49と、引抜部45の下方側を覆う保護カバー50とを有する。
【0023】
メインフレーム43は、上下方向に配置された左右一対の縦枠材51と、一方の縦枠材51の上面から他方の縦枠材51の上面にわたるように左右方向に配置されていて該左右縦枠材51を連結する横枠材52と、この横枠材52の下方側の縦枠材51間に配置されていて左右縦枠材51の上部同士を連結する上下一対の上連結枠材53と、左右縦枠材51間の下端側に配置されて該左右縦枠材51を連結する下連結枠材54とを有する。
【0024】
左右縦枠材51の上部は、走行機体8の、左右方向で同じ側にある前横フレーム部材29の左右方向内端側の前面にボルト・ナットによって取付固定されており、この左右縦枠材51に形成されたボルト挿通孔は上下方向に長い長孔とされていて、ナットの締め付けを緩めることによりメインフレーム43が上下方向移動可能とされている。
また、左右縦枠材51の下端側は、走行機体8の前下部フレーム20の前面側に設けられたホルダ56に上下方向移動自在で前後及び左右に移動不能に挿通されている。
【0025】
高さ調整装置44は、メインフレーム43の後方側で且つ走行機体8の左右方向中央部に配置されている。
この高さ調整装置44は、例えば、上下方向に配置されていて上部がメインフレーム43の横枠材52に固定された外筒57と、この外筒57の下端側から上下方向移動可能に挿入された内筒58と、外筒57内に挿通されて該外筒57に上下方向の軸心回りに回動自在に支持されると共に内筒57の上部に設けられたナット部材59に螺合されたネジ杆60と、このネジ杆60の上端側に設けられた操作ハンドル61と、内筒57の下端に固定されていて走行機体8の前下部フレーム20の上面側に固定されたステー62に枢支連結されたブラケット63とから構成されている。
【0026】
この高さ調整装置44にあっては、左右縦枠材51の固定用のナットを緩めた状態で、操作ハンドル61を回してネジ杆60を軸心回りに回動させることにより内筒58が上下動し、これによりメインフレーム43(引抜部45)の高さが調整可能とされている。
取付体46はメインフレーム43から前方突出状に設けられた上下の支持フレーム66,67を有する。
【0027】
上支持フレーム66は左右一対設けられ、この左右各上支持フレーム66は板材によって構成され、板厚方向が左右方向となるように配置されており、後部側がメインフレーム43から前方に延出するように形成されていると共に中途部で屈曲されていて、前部側が前方に行くに従って下方に移行する傾斜方向に延出するように形成されている。
左右の上支持フレーム66は前部側及び後部側において連結部材68によって相互に連結されている。
【0028】
左右各上支持フレーム66の後端側は、メインフレーム43の上下の上連結枠材53に亘って固定された取付板69に固定されたL字形のステー70に取付固定されている。
前記ステー70は前記取付板69にボルト・ナットによって上下位置調整可能に取り付けられ、上支持フレーム66の後端側は前記ステー70にボルト・ナットによって前後位置調整可能に取り付けられていて、左右の上支持フレーム66が一体的に上下及び前後に位置調整可能とされている。
【0029】
下支持フレーム67は角パイプ等から構成されて左右一対設けられ、この左右各下支持フレーム67は、メインフレーム43の下連結枠材54から前方に突出状とされて該下連結枠材54に固定されており、左右各下支持フレーム67の前端側には、支持板71L,71Rが立設され、左右下支持フレーム67の後部側は前後一対の連結部材72で連結されている。
【0030】
引抜部45は、圃場にアーチ状に建て込まれた支柱3の長さ方向中央側(頂部側)を挟んで挟持する上下の回転体73,74と、下側回転体74を駆動する駆動手段75とを有する。
下側回転体74は左右一対設けられており、この左右の下側回転体74は左右下支持フレーム67間の前部側に配置されている。
【0031】
また、この左右の下側回転体74は、側面視円形状の回転体で構成され、少なくとも外周側がゴム等の弾性体によって構成されていて外周側が弾性変形可能とされており、本実施の形態では、ホイル74Aと、該ホイル74Aに外嵌された空気入りタイヤ74Bによって構成されている。
左右各下支持フレーム67の前端側に立設された前記支持板71L,71R間には回転軸76が架設されていて該回転軸76が支持板71L,71Rに回転自在に支持され、この回転軸76に前記左右の下側回転体74が一体回転自在に外嵌固定され、これによって左右の下側回転体74が前記支持板71L,71Rに左右軸回りに回動自在に支持されている。
【0032】
駆動手段75は、走行体5に備えられた油圧ポンプ15からの圧油によって駆動される油圧モータで構成されていて左側の支持板71Lの外面に取付固定され、該油圧モータ75によって前記回転軸76を回転駆動することにより下側回転体74の上部側において前部から後部に向けて回転するように(図7の矢示A方向に)左右の下側回転体74を一体的に回転駆動可能としている。
【0033】
なお、この油圧モータ75は、走行機体8に設けられた操作レバー等の操作手段によって操作される切換弁の切り換えにより、駆動・停止可能とされている。
この左右の下側回転体74は、作業時における走行体5の駆動輪(本実施の形態では、後輪10)の周速よりも速い周速で回転駆動され、本実施の形態では、後輪10の直径が500mm、下側回転体74の直径が380mmで、エンジン12回転数が1200rpmのときに、後輪10の回転数を14rpm、下側回転体74の回転数を86rpmとした。
【0034】
したがって、後輪10の周速が、約2.2m/分であるのに対し、下側回転体74の周速は、約102.6m/分である。
なお、これらの数値は限定的ではなく、適宜設計変更自在である。
前記回転軸76の左右下側回転体74間にはボス77が外嵌固定され、このボス77には、回転軸76の軸心に直交する方向に配置された引上げ部材78が設けられていて、該引上げ部材78が下側回転体74と同行回転自在に設けられている。
【0035】
この引上げ部材78は、本実施の形態では、ボス77の周方向に等間隔をおいて4つ設けられていると共に、金属製の芯材の外面をゴム材によって被覆してなる1又は複数本の棒材からなる。
また、引上げ部材78の先端側は、下側回転体74の周面から径方向外方に突出している。
【0036】
上側回転体73は、ゴム様弾性体からなる無端帯状の回転体で構成され、前記下側回転体74に対応して左右一対設けられている。
また、本実施の形態では、上側回転体73の外周面(下側回転体74との接触面)には、該上側回転体73の帯幅方向にわたる直方体状の突部79が周方向に所定間隔をおいて且つ全周にわたって一体形成されている。
【0037】
左右の各上側回転体73は、上支持フレーム66間に配置されていると共に左右方向で同じ側にある下側回転体74の前上部に配置されており、左右の各上支持フレーム66の内面側(対向面側)に設けられた前後のガイドプーリ81,82及びテンションローラ83に亘って長手方向(周方向)循環回走自在に掛装されており、これによって左右の各上側回転体73が左右方向で同じ側にある上支持フレーム66に支持されている。
【0038】
左右の前ガイドプーリ81は、上支持フレーム66の前部下端側に配置されていて下側回転体74の前方側に所定の隙間をおいて位置し、左右の上支持フレーム66に亘って架設された前支軸84に左右軸回りに回転自在に支持されている。
前支軸84の左右両端側は左右上支持フレーム66に形成されたガイド孔85を挿通して上支持フレーム66から左右方向外方に突出しており、この突出部分に筒体86が外嵌固定されていると共に、前記ガイド孔85は前方に行くに従って下方に移行する傾斜方向に長い長孔に形成されており、前支軸84がガイド孔85に沿って移動自在とされている。
【0039】
また、左右各上支持フレーム66の前下部の外面側には、前記ガイド孔85の長さ方向に沿った軸心を有する調整ネジ87の先端側が配置され、この調整ネジ87は上支持フレーム66の外面に固定された取付壁88に形成されたネジ孔を螺進・螺退自在に貫通していると共に、該調整ネジ87の先端側は前記筒体86に固定されており、調整ネジ87を取付壁88に対して螺進・螺退させることにより、前ガイドプーリ81がガイド孔85に沿って位置調整自在とされている。
【0040】
また、前記調整ネジ87にはロックナット89が螺合されている。
左右の後ガイドプーリ82は、上支持フレーム66の中途部に配置されていて下側回転体74の上方側に所定の隙間をおいて位置し、左右の上支持フレーム66に亘って架設されて該左右上支持フレーム66に左右軸回りに回動自在に支持された後支軸91に外嵌固定されている。
【0041】
左右のテンションローラ83は上側回転体73の前後ガイドプーリ81,82間の上側部分の内周面に接当するように配置され、テンション調整機構92のバネ93の付勢力によって上側回転体73内周面を押圧するように該テンション調整機構92に支持されている。
なお、このテンション調整機構92のバネ93の付勢力は調整自在とされている。
【0042】
前記上側回転体73の前後ガイドプーリ81,82間の下側部分は、下側回転体74の上部前側の周面に密接(下側回転体74の周面の前面側から上面側に至るように密接)しており、下側回転体74を回転駆動することにより、摩擦力により上側回転体73は下側回転体74と同じ周速で同行回転し、図7の矢示B方向に循環回走する。
この上側回転体73の下側回転体74に対する密接度(押し付け力)は、上支持フレーム66の前後及び左右の位置調整、前ガイドプーリ81の位置調整によって調整可能である。
【0043】
また、左右各上支持フレーム66の前部下端側には、トンネルマルチ用の支柱3を前ガイドプーリ81と下側回転体74との間に案内するガイド部材94が設けられている。
このガイド部材94は、棒材によって形成され、下部側は、前ガイドプーリ81の外側方に配置されていると共に前ガイドプーリ81の下面側に沿うように湾曲状に折曲され、上部側は、前ガイドプーリ81の前側において前方に行くに従って上方に移行する傾斜状に形成されている。
【0044】
前記規制杆49は、走行機体8の左右各前縦フレーム部材24の上部にそれぞれ前方突出状に取り付けられていて左右一対設けられている。
支柱収容部47は、引抜部45の後方側に位置し、本実施の形態では、支柱3の長さ方向中央側を受持する左右の下支持フレーム67の後部側と、走行機体8の前下部フレーム20の左右両側に前方突出状として設けられていて支柱3の長さ方向端部側を受持する左右一対の載置杆95と、この左右各載置杆95の前端側に設けられていて収容された支柱3の前方移動を規制する前方規制部材96と、収容された支柱3の左右方向の移動を規制する左右一対の側方規制部材97とで構成されている。
【0045】
前記左右の各載置杆95の前端部には左右方向に配置された取付筒98が固定され、この左右の各取付筒98には、左右方向に配置された支持杆99が挿通されて左右方向位置調整可能に固定され、この左右の各支持杆99の左右方向外端側に側方規制部材97が固定されている。
ガイド手段48は左右一対設けられ、本実施の形態では棒材を湾曲状に折曲して形成されており、左右の下支持フレーム67の前部に設けられた支持板71L,71Rの前端から下支持フレーム67の後部に亘って設けられている。
【0046】
このガイド手段48は、前部側が支持板71L,71Rの前端上部から上方に向けて延出状とされていると共に下側回転体74の上端よりも下方側において後方側に向けて延出するように折曲され、中途部において後方に延出状とされると共に上方に凸となる湾曲状に形成され、後部側において、後方に行くに従って下方に移行する傾斜状で且つ後上方に凸となる湾曲状で且つ後方に行くに従って下側回転体74から徐々に離れるように形成されており、該ガイド手段48の後部側の端部が下支持フレーム67に固定されている。
【0047】
このガイド手段48の中途部の上面側及び後部の後面側が支柱3を支柱収容部47へと案内する支柱案内面100とされている。
また、ガイド手段48は、後下部側において、引上げ部材78の先端軌跡よりも後方側に位置するように形成されており、この引上げ部材78の先端軌跡よりも後方側に位置する部分において左右ガイド手段48同士が左右方向の連結杆101によって連結されている。
【0048】
なお、このガイド手段48の後部側は、支柱収容部47に収容された支柱3の前方移動を規制する規制部材としての機能を有する。また、ガイド手段48は板材によって形成されていてもよい。
保護カバー50は、その左右両側が下支持フレーム67の前端側の側面に上下位置調整自在に取り付けられていると共に、下側回転体74の下方側に配置されて該下側回転体74の下面側を覆い、作物が下側回転体74及び引上げ部材78に接触するのを防止している。
【0049】
マルチはぎ取り機構6は、図2及び図3に示すように、左右軸回りに回転してマルチフィルム2を巻き取る巻取体103と、この巻取体103を回転駆動する油圧モータ(駆動手段)104と、マルチフィルム2をガイドする前後のフィルムガイド105,106とを有する。
巻取体103は、駆動軸107と、該駆動軸107の左右両側に固定された回転円板108と、この左右回転円板108間に亘って設けられた一対の巻取杆109と、左右各回転円板108の外側に配置されて駆動軸107に固定されたフランジ部材115とを有する。
【0050】
巻取体103の駆動軸107は、その左右両端側が走行機体8に立設された支持体110に左右軸回りに回動自在に支持されており、この駆動軸107に、油圧モータ104の出力軸からベルト巻掛け伝動機構111を介して回転動力が伝達されることにより駆動軸107が回転駆動されるように構成されている。
油圧モータ104は走行体5に備えられた油圧ポンプ15からの圧油によって駆動されると共に、走行機体8に設けられた操作レバー等の操作手段によって操作される切換弁の切り換えにより、駆動・停止可能とされている。
【0051】
前フィルムガイド105は支柱引抜機構7の前方に位置すると共に上端が支柱引抜機構7の上方側に位置し、一対のサポート部材112,113によって支持されている。
一方のサポート部材112は、左右一対設けられ、支柱引抜機構7のメインフレーム43の横枠材52の左右両側から前斜め上方に向けて突出するように立設された支持部材114に、該支持部材114から前方に突出するように取り付けられ、前端部が前フィルムガイド105に固定されている。
【0052】
他方のサポート部材113は、その前端側が前記一方の左右のサポート部材112を連結する連結部材に固定され、後端側が支柱引抜機構7の左右の上支持フレーム66の前側を連結する連結部材68に固定されている。
後フィルムガイド106は、前記左右の支持部材114の上端間に亘るように設けられている。
【0053】
マルチフィルム2は、前後のフィルムガイド105,106によって案内されて、支柱引抜機構7の上方を通って巻取体103に巻き採られる。
前記構成のトンネルマルチ回収機1においてトンネルマルチを回収するには、支柱3の長手方向中央側が上側回転体73の前部下端の高さ位置にくるように支柱引抜機構7の高さを調整し、下側回転体74を駆動して上下の回転体73,74を回転させると共に、マルチはぎ取り機構6によってマルチフィルム2を巻き取りながら走行体5を前進させる。
【0054】
支柱3の長手方向中央側が、上側回転体73の前下部(前ガイドプーリ81)と下側回転体74との間の下側に位置すると、下側回転体74の前部側において下方側から上方に向けて移動する引上げ部材78の先端側によって支柱3の長手方向中央側が引っ掛けられて引き上げられ、該支柱3の長手方向中央側が上側回転体73の前下部と下側回転体74との間に強制的に押し入れられ、該支柱3の長手方向中央側が上下の回転体73,74で挟持されて搬送され、走行体5の駆動輪10の周速よりも速い周速で回転する上下の回転体73,74の回転にともなって支柱3が引き上げられて該支柱3が一気に引き抜かれる。
【0055】
これにより、走行体5の駆動輪10がスリップしても支柱3を良好に引き抜くことができる。
前記支柱3は直線状の弾性棒材をアーチ状に弾性変形させて圃場に建て込まれているので、支柱3は引き抜かれた際に、その長手方向両側が、弾性復元力によって跳ね上げられるが、該支柱3の長手方向両側が規制杆49に接当することにより支柱3の躍りが規制される。
【0056】
そして、上下の回転体73,74及び引上げ部材78によって下側回転体74の上部に搬送された支柱3は、上側回転体73の後上部と下側回転体74との間から後方に放出され、ガイド手段48に沿って支柱収容部47へと案内されて該支柱収容部47に収容される。
ガイド手段48は、その後下部側において、引上げ部材78の先端軌跡よりも後方側に位置するように形成されていることから、支柱3は、支柱収容部47へ案内される途中で引上げ部材78から離反するが、このとき、支柱3が引上げ部材78と連れ回って該引上げ部材78で支柱3が巻き込まれるのが、左右ガイド手段48同士を連結する前記連結杆101によって防止される。
【0057】
この連結杆101が、支柱3が引上げ部材78と連れ回りするのを防止する連回り防止手段を構成している。
本実施の形態では、支柱3の長手方向中央側が上側回転体73の前部下端の高さ位置より上方に位置ずれしている場合には、前記ガイド部材94によって支柱3の長手方向中央側が、上側回転体73の前下部と下側回転体74との間に案内され、また、支柱3の長手方向中央側が上側回転体73の前部下端の高さ位置より下方に位置ずれしている場合でも、引上げ部材78によって支柱3の長手方向中央側が上側回転体73の前下部と下側回転体74との間に確実に導かれる。
【0058】
なお、前記引上げ部材78は必ずしも必要ではなく、支柱3の長手方向中央側を上側回転体73の前部下端の高さ位置より上方に位置させて、ガイド部材94で支柱3の長手方向中央側を上側回転体73の前下部と下側回転体74との間に案内するようにしてもよく、また、下側回転体74の周面に凹凸を設けて該凹凸によって支柱3の長手方向中央側を上側回転体73の前下部と下側回転体74との間に導くようにしてもよく、また、支柱3の長手方向中央側を上側回転体73の前下部と下側回転体74との間に導く他のガイド手段を設けてもよい。
【0059】
従来のように、支柱を挟持して引き抜く上下の回転体を、無端帯状の搬送ベルトで構成すると共に、この上下の搬送ベルトを後方に行くに従って上方に移行する傾斜状に配置してなるものにあっては、走行体の進行速度に合わせて、上下の回転体の前後長さがある程度必要であることから、上下の回転体の前後長さが長くなると共に搬送経路の中間部分での支柱の挟持力が弱くなるという問題があるが、本実施の形態のものにあっては、上下の回転体73,74を、側面視円形状の下側回転体74と、該下側回転体74の前面側から上面側に至るように密接する無端帯状の上側回転体73とで構成し、上下の回転体73,74を走行体5の駆動輪10の周速よりも速い周速で回転させることで支柱3を上方に引き上げるように構成しているので、上側回転体73と下側回転体74との接触部分の前後方向の距離を短く構成でき、前後方向長さをコンパクトにできると共に下側回転体74と上側回転体73との接触部分における支柱3の挟持力を略一定にすることができる。
【0060】
なお、この実施の形態では、弾性を有する棒状の支柱3をアーチ状に湾曲させて地中に差し込んでなる支柱3を引き抜く支柱引抜機構7を備えたトンネルマルチ回収機1を例示したが、支柱引抜機構7は、アーチ状に折曲して塑性変形されたアーチ型支柱3を地中に差し込んでなるトンネルマルチ回収機1に採用してもよく、また、トンネルマルチ回収機1ではなく支柱3の引抜専用の支柱の引抜機に採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】走行体及び支柱引抜機構の側面図である。
【図2】トンネルマルチ回収機の側面図である。
【図3】トンネルマルチ回収機の正面図である。
【図4】走行体及び支柱引抜機構の平面図である。
【図5】支柱引抜機構の側面図である。
【図6】支柱引抜機構の斜視図である。
【図7】(a)は引抜部の側面図、(b)は上側回転体の一部の側面断面図である。
【符号の説明】
【0062】
3 支柱
5 走行体
10 後輪(駆動輪)
47 支柱収容部
48 ガイド手段
73 上側回転体
78 引上げ部材
74 下側回転体
100 支柱案内面
101 連結杆(連回り防止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体(5)と、長さ方向両端側が地中に差し込まれて且つアーチ状を呈した支柱(3)の長さ方向中央側を挟んで挟持する上下の回転体(73,74)とを備え、走行体(5)を走行させながら上下の回転体(73,74)を回転させて前記支柱(3)を引き抜く支柱の引抜装置において、
前記下側回転体(74)は、左右軸回りに回転する側面視円形状の回転体で構成され、上側回転体(73)は、下側回転体(74)の前面側から上面側に至るように接する無端帯状の回転体で構成され、この上下の回転体(73,74)を走行体(5)の駆動輪(10)の周速よりも速い周速で回転させることで支柱(3)を上方に引き上げるように構成したことを特徴とする支柱の引抜装置。
【請求項2】
下側回転体(74)の周面よりも径方向外方に突出し且つ該下側回転体(74)と同行回転して支柱(3)を引っ掛けて上方に引き上げる引上げ部材(78)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の支柱の引抜装置。
【請求項3】
上下の回転体(73,74)の後方側に、引き抜いた支柱(3)を収容する支柱収容部(47)を設け、下側回転体(74)の側方から支柱収容部(47)に至るように形成されていて引き抜いた支柱(3)を支柱収容部(47)に案内するガイド手段(48)を設け、このガイド手段(48)の支柱案内面(100)が、支柱(3)を支柱収容部(47)へと案内する途中で引上げ部材(74)から離反させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の支柱の引抜装置。
【請求項4】
前記ガイド手段(48)に、支柱(3)が引上げ部材(78)と連れ回りするのを防止する連回り防止手段(101)を設けたことを特徴とする請求項3に記載の支柱の引抜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−215522(P2007−215522A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42885(P2006−42885)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】