改良ゴルフクラブヘッド
【課題】クラブフェースを横断するスイートスポットを事実上増大させたゴルフクラブヘッドを得る。
【解決手段】好適な構成は、クラブのフェース20のバランス点を有する中心区域を取り囲む環状区域1であって、背面23に設けた厚さの大きい環状区域を含んでいる。フェース20の中心区域は、概して減少された厚さを有しており、この厚さは、環状区域の最大値より小さいが縁辺部での最小値よりは大きい。フェース材料は金属であるが、別の実施例では、環状区域により形成される有効曲げ剛性プロファイルが、例えば適宜に複合材料を使用することで達せられる。曲げ剛性プロファイルを有するフェース20を備えたゴルフクラブヘッドを製造する方法は、鍛造または機械加工同様、レーザー光による被着やイナーシャ溶接を含む。
【解決手段】好適な構成は、クラブのフェース20のバランス点を有する中心区域を取り囲む環状区域1であって、背面23に設けた厚さの大きい環状区域を含んでいる。フェース20の中心区域は、概して減少された厚さを有しており、この厚さは、環状区域の最大値より小さいが縁辺部での最小値よりは大きい。フェース材料は金属であるが、別の実施例では、環状区域により形成される有効曲げ剛性プロファイルが、例えば適宜に複合材料を使用することで達せられる。曲げ剛性プロファイルを有するフェース20を備えたゴルフクラブヘッドを製造する方法は、鍛造または機械加工同様、レーザー光による被着やイナーシャ溶接を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にゴルフクラブヘッドに関するものであり、より具体的には、改良されたフェース構造を有するゴルフクラブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のゴルフクラブは、典型的には、ウッド、アイアン、パターに分類される。加えて「ユーティリティ」クラブまたは「アイアンウッド」と呼ばれる新種のゴルフクラブが、ロフトの小さいロングアイアンまたは番手の高いフェアウェイウッドに取って代わろうとしている。「ウッド」という用語は今でも一般に用いられている歴史的な用語であり、例えば鋼製、チタン製、ガラス繊維製、その他なじみの少ない材料製のゴルフクラブもウッドと呼ばれている。現在では、ウッドは「メタルウッド」と呼ばれることも多い。「アイアン」という用語もまた、通常、鉄製でないクラブにも一般に使用されているが、多くは「ウッド」の製造に使用されるのと同じ材料から製造されている。
【0003】
特にメタルウッドに関連する一つの改良点は、チタン等の軽量且つ強靭な金属を使用することにある。多くの高価なメタルウッド、特にドライバーは、今や主にチタンを使用して構成されている。チタンその他の軽量且つ強靭な金属を使用することにより、これまでよりサイズの大きなメタルウッドを製造することができるようになってきた。ドライバーなどのメタルウッドのサイズは体積で呼ばれることが多い。例えば現在のドライバーは300立方センチメートル(cc)を超える体積を有している。特大のメタルウッドは、一般にスイートスポットがより大きくなり、慣性が増大し、それによって通常のヘッドサイズのゴルフクラブより許容度が大きくなる。
【0004】
より軽量且つ強靭な金属を使用することによる1つの利点は、メタルウッドクラブの打撃フェースを含む壁部その他の壁部をより薄くできることにある。これによって、設計者は重量配分の点でより大きな余裕を得ることができる。例えば許容度を高めるために、重量をメタルウッドのヘッドの縁辺部へ、且つまた打撃フェースから後方へ移動させることが設計者は可能になる。前述のように、このような重量配分の結果、一般に慣性がより大きくなり、その結果中心をずれた打撃によるネジレが小さくなる。
【0005】
どの位の大きさのゴルフクラブヘッドを製造し得るかについては制限があり、それは、材料、クラブヘッドの重量およびクラブヘッドの強度、および使用する材料を含む複数のパラメータの関数である。加えて、ヘッドの大型化に伴って重量が増すことを避けるために、打撃フェースの厚さを含めた壁厚を薄くせねばならない。結果として打撃フェースは薄くなる一方であるために衝撃時にたわむ傾向がますます大きくなり、このためボールに対してより多くのエネルギーが与えられる可能性が生じる。この現象は一般に「トランポリン効果」と呼ばれる。肉薄フェースを有する適切に構成されたクラブは、したがって剛性フェースを有するクラブよりゴルフボールに対してより高い初速を与えることができる。このことはゴルファーにとって極めて重要である。なぜなら、初速はゴルフボールの飛距離を決定する1つの重要な要素だからである。
【0006】
肉薄フェースのメタルウッドによってゴルフボールに与えられる初速が、打撃フェースにゴルフボールの当たる箇所に応じて変わることは、当業者には理解されよう。一般にスイートスポットに当たったボールは、反発速度がより高い。スイートスポットの位置には、重心(CG)位置や打撃フェースの形状および厚さを含む多くの要因が関係する。
従来のゴルフクラブのヘッドでは、軽量でフレキシブルなフェースを形成することによりゴルフボールの初速または進発速度を増すことが企図されていた。メタルウッドのクラブヘッドの製造者は、最近になって、一般に可変フェース厚プロファイル(variable face thickness profil)と称されるデザインで、特にチタン合金等の軽量材料を用いて打撃フェースを設計することにより、クラブヘッドの性能を操作しようとしている。
【0007】
衝撃時の応力を低減する別の手法は、事実上クラウンからソールまでフェースを垂直に横切って延びる1以上のリブを使用することであるが、フェースを水平に横切ってトウからヒールへ延びるリブを設けた例も幾つかは存在する。最大の応力は打撃点(通常はスイートスポットまたは事実上スイートスポットの近傍)に位置するので、フェース中心は常に厚くされており、少なくともリブ付き部分と等しい厚さにされている。
1以上の細いリブを含む複数のリブ、パワーバー、および円錐体をクラブフェースの背面に形成する別の構成も存在する。スイートスポットの直ぐ背面に質量体を付加するように多数の細いリングが、あるいは代替的に螺旋体が、種々の手段により取り付けられてきた。その場合、多数のリングまたは螺旋状質量体は、スイートスポットから実質的にフェースプレートの周辺に向かって延びるようになされている。スイートスポットの位置の単一の細いリングを、トウに付加した質量体に関連づけてアイアンクラブヘッドに使用して、最小剛性点をフェース中心に移すこともある。この構成の場合、フェースの剛性は、中心に配置したリングから半径方向外側へ向かって常に高くなっている。
【0008】
別のクラブヘッドの場合には、ゴルフボールに与えられる力を増大させるためにスイートスポットの背面にパワーバーまたは円錐体を使用することが試みられている。これらのパワーバーまたは円錐体は、クラブヘッドの後方へ延びる大きな付加質量体を含み、したがってクラブヘッドの重心に影響する。しかしこれらのクラブヘッドでは、今日のゴルファーが求める反発係数(COR)の少なくとも最小値、すなわち約0.8の値は得られない。
【0009】
ゴルフクラブのCORは、ゴルフクラブヘッドとの衝突の直前と直後のゴルフボール相対速度の比の関数として略式に定義されている。CORの基準値e=0.822が米国で確立され、正式な方程式もまた、以下のように、ゴルフボールのみならず特定のクラブヘッドの相対質量を考慮している。
Vout/Vin=(eM−m)/(M+m)
M:クラブヘッドの質量
m:ゴルフボールの集合体の平均質量
Vout:ボールの反発速度
Vin:ボールの入射速度(例えば空気砲を用いてゴルフクラブヘッドのフェースに発射される)
【0010】
以上に述べた諸例の場合には、しかしながら、中心をずれた打撃に対する有意な許容度を得ることには最終的に失敗している。各ゴルフクラブはCORの増大を試みており、またそのための困難な課題は種々の程度で解決が図られている。これらのクラブの場合、最高のCORを得るために打撃点はやはりスイートスポットになければならず、打撃がスイートスポットから極めて僅かだけずれただけでも、ボール速度に有意な損失が生じる結果となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、クラブ設計者が前述の問題を解決できるような解決策を提供するものであり、この解決策は、打撃フェースの多くの部分でより大きい許容度を発揮し、一方、依然としてボールに高い初速を与えられるようなゴルフクラブを含む。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの好適実施例では、測定値で少なくとも約0.8の反発係数を有するゴルフクラブヘッドが得られる。このクラブヘッドは、トウ部分と、ヒール部分と、ソール部分と、クラウン部分とを含む胴部を有し、これら部分が前部開口を共に画成している。この開口にはインサートが配置されており、インサートは、第1の側に実質的に平坦な打撃面を、第2の側に背面を有し、さらに胴部の開口に取り付けるための縁辺部を有している。この縁辺部は、上縁部と、下縁部と、第1側縁部と、第2側縁部とを有している。打撃面は、インサートの中心区域に1つのバランス点を有しており、打撃面上の各点が厚さを有し、打撃面がインサートの全域を占めている。
【0013】
フェース・インサートは、バランス点と上縁部との間に第1厚さプロファイルを、バランス点と底縁部との間に第2厚さプロファイルを、バランス点と第1側縁部との間に第3厚さプロファイルを、バランス点と第2側縁部との間に第4厚さプロファイルを有している。第1、第2、第3および第4の厚さプロファイルは、同じように、打撃フェースの縁辺部を囲んでいる第1の箇所でそれぞれ厚さ値を有しており、複数縁部に隣接した最小値を含んでいる。これらの厚さプロファイルは、同じように、第1の箇所とバランス点との間の第2の箇所で最小値の少なくとも1.5倍の厚さ値を有しており、これら第2箇所はそれぞれ最大厚さ値を有している。これらの厚さプロファイルは、同じように、中心区域の第3の箇所に、第2箇所での値よりは小さいが第1箇所での最小値よりは大きい厚さ値を有している。
【0014】
第1、第2、第3および第4の厚さプロファイルが組み合わされて、第2の箇所を含む事実上環状の厚さ増大区域を形成している。第3の箇所の厚さ値は、厚さ減少区域と事実上環状の区域とを形成し、これらの厚さ減少区域は、バランス点から上下縁部および第1および第2側縁部までの距離の約50%にわたって延びている。
あるいはまた本発明のゴルフクラブヘッドは、トウ部分、ヒール部分、ソール部分、クラウン部分、およびフェース部分を規定する胴部を含んでいてもよい。フェース部分は、外側に打撃面を有し、且つフェース部分とクラウン部分の第1接合部と、フェース部分とソール部分の第2接合部と、フェース部分とトウ部分の第3接合部と、フェース部分とヒール部分の第4接合部とに事実上隣接する縁辺部を有している。打撃面は、その外側の全域を占めており、またフェース部分の中心区域にバランス点を有している。
【0015】
打撃面上の各点は局所的な断面曲げ剛性を有しており、それによってフェース部分が、バランス点と第1接合部の間に第1剛性プロファイルを、バランス点と第3接合部の間に第2剛性プロファイルを有している。第1および第2の剛性プロファイルは、同じように、バランス点から最遠の、打撃フェース縁辺部を囲んでいる第1箇所に低い第1の剛性値を有している。第1および第2の剛性プロファイルは、同じように、縁辺部とバランス点の間に存在する第2の箇所に高い第2剛性値を有し、第1および第2の剛性プロファイルは、同じように、中心区域に第3の剛性値を有している。
【0016】
フェース部分は、垂直および水平の中心軸線を中心として実質的に対称であるので、第1剛性プロファイルは、バランス点と第2接合部の間にも当てはまり、第2剛性プロファイルは、バランス点と第4接合部の間に当てはまる。第1剛性値は、第1、第2、第3および第4の接合部に隣接して最小値を有し、この第1剛性値は、最小値の約3.4倍未満まで増大する。第2剛性値は、前記最小値の少なくとも約3.5倍であり、第3剛性値は、最小値より大きく、且つ最小値の約3.5倍未満である。第2および第3の剛性値は、打撃面の一区域を含んでおり、この一区域は、バランス点から第1、第2、第3および第4の接合部までの距離のほぼ中間まで延びている。
【0017】
本発明の別の実施例では、ゴルフクラブヘッド用のフェース・インサートが、インサートの第1側に実質的に平坦な打撃面を、第2側に背面を含んでおり、さらにゴルフクラブヘッドへ取り付けるための縁辺部を含んでいる。この縁辺部は、上縁と、下縁と、第1側縁と、第2側縁とを有している。打撃面は、フェース・インサートの中心区域にバランス点を有し、打撃面上の各点は、局所的な断面曲げ剛性を有している。打撃面は、インサート第1側の全域を占めている。
【0018】
フェース・インサートは、バランス点と上縁の間に第1剛性プロファイルを、バランス点と下縁の間に第2剛性プロファイルを、バランス点と第1側縁の間に第3剛性プロファイルを、バランス点と第2側縁の間に第4剛性プロファイルを、それぞれ有している。第1、第2、第3および第4の剛性プロファイルは、打撃フェースの縁辺部を取り囲んでいる第1の箇所で剛性値を有しており、また側縁の隣接部分で最小値を有している。これらの剛性プロファイルは、第1箇所とバランス点の間の第2の箇所に剛性値を有しており、これら剛性値は、概して縁辺部の値である最小値の少なくとも3.5倍である。第2箇所は、最大剛性値を有する箇所を含み、この剛性プロファイルは、中心区域の第3箇所に、第2箇所での値より小さいが、第1箇所の最小値より大きい剛性値を有している。
第1、第2、第3および第4の剛性プロファイルが組み合わされて、第2箇所を含む実質的に環状の高剛性区域が形成される。第3箇所の剛性値は、局所的な最小剛性値を有する箇所を含む低剛性区域を形成している。実質的に環状のこの区域は、打撃面全域の少なくとも約12%を含んでいる。
【0019】
一般に、本発明は、技術上公知の種々の普通のクラブヘッド形状に適用することができる。本発明の別の好適実施例によれば、中空の金属胴部が開示される。この胴部は、トウ部分、ヒール部分、ソール部分およびクラウン部分を含む複数の薄壁を有し、これら部分のすべてが共同で内部の空洞と前縁を有する開口とを画成している。金属製ボール打撃フェースは、技術上一般に公知の方法を用いて胴部の前縁に固定される。この実施例は、中心に近いフェース部分を除いて、ボール打撃フェース前面からフェースの背面にかけて実質的に一様な壁厚を有するボール打撃フェースを有している。フェースの中心近くには、細長のワッシャ状厚さ増大区域が存在しており、この区域は後方へキャビティ内へ延びている。ワッシャ状区域は、好ましくは、打撃フェースプレート壁の背面に一体化された一部として形成されるが、ワッシャ状区域は、技術上公知の手段により打撃フェース背面に固定取り付けしてもよい。ワッシャ状区域は、打撃フェースの相対的な可撓度を減少させるのに役立ち、その結果、一様な厚さプロファイルを有する類似サイズの打撃フェースより、中心ずれ打撃の許容度が高いクラブヘッドが得られる。一般に、厚さ増大区域はスイートスポットから半径方向外側へ向かって設けられる。
【実施例】
【0020】
図面には、本発明によるゴルフクラブヘッドの好ましい複数の実施例が示されている。
【0021】
図1には、技術上公知の多くの金属製ウッドクラブヘッドに似たクラブヘッド10が示されている。本発明の範囲内のクラブヘッドは、必ずしも図示の形状には限定されない。クラブヘッド10は、中空の金属製胴部11と打撃板すなわちつまりフェースプレート20とを有している。胴部11は、ヒール部分12と、トウ部分13と、ソール部分14と、クラウン部分16とを含み、これらの部分が、打撃板20を受容する開口(図示せず)を共同で画成している。打撃板20は、図2〜図4に拡大詳細図で示してある。クラブヘッド10は通常、胴部11と一体に形成されるホーゼル17を介してシャフト(図示せず)に結合されている。好ましくは、胴部はステンレス鋼またはチタン合金で構成されるが、他の材料、例えばシリコン鋼合金、種々の複合材料、またはそれらの組み合わせから構成してもよい。クラブヘッドは、好ましくは、胴部11がトウ部分13、ソール部分14、クラウン部分16、およびホーゼル17を含め一体に形成されるように製造され、打撃フェース15を有する打撃板20は、公知技術により固定取り付けされる。しかし、好適な胴部11の種々の部分は、成形、鋳造、鍛造、その他の公知技術により別個に製造し、その後固定取り付けして胴部を形成してもよい。
【0022】
図4は、ステンレス鋼製打撃板20の背面23を示している。背面23は、外側背面27と内側背面29とを有している。外側背面27と内側背面29との間には、隆起面28が設けられている。この隆起面28は、実質的に楕円形の区域を形成している。隆起面には外側肩25と内側肩26とが設けられ、これら肩が、隆起面28と、外側背面27および内側背面29との移行部を形成している。隆起面28と肩25,26とは、クラブヘッドのキャビティ内側の後方へ向かって延びる楕円形のワッシャ状突出部を形成している。
【0023】
別の好ましい打撃板30は、図5に示すように、一体構造物として鍛造することができる。厚さ(32,33,34,35,36)の変化を示す地形線(topographical line)31で分かるように、鍛造により極めて簡単な工程で比較的複雑な面を形成する機会が得られる。この実施例における厚さは、打撃板の縁辺部37の近傍の約1.6mm厚から、縁辺部から半径方向内側へ打撃板30のほぼ中心38のバランス点へ向かって約1.9mm厚までに及んでいる。厚さは、さらに内側へ約2.5mmまで増大し、バランス点38での2.5mm厚の区域を囲む概して楕円形の部分39での約4.8mmの最大値まで増大する。
【0024】
図6〜図8の実施例は、打撃板40の背面の厚さ変化が図5に示したものよりも対称的である点で、図2〜図4の実施例と類似している。図6〜図8の実施例に使用される好適な材料は、チタン合金である。図6に示したように、概ね環状の厚さ増大区域41の形状は円形であるが、図2に示した隆起面28の環状区域は、より楕円形である。加えて、図7と図8に示した環状区域は、図1と図3に示した大部分が平坦な隆起面28の最大厚区域より幾分厚く、且つ傾斜がゆるやかである。
【0025】
図2〜図8に示したフェース部分の実施例は、中心(例えば29,38)から打撃板の縁辺部(例えば37)までの距離の約75%以内で厚さが実質的に増加するという特徴を共有している。好ましくは、中心から縁辺部までの距離の約50%以内で厚さが増加する。また、環状区域(例えば41)は、最も外側の縁辺部(図6〜図8の42)での最小厚より少なくとも50%大きい厚さを有し、打撃板40の全域の少なくとも約12%の区域を占めている。好ましくは、環状区域41は、打撃板全域の少なくとも約15%の面積、最も好ましくは少なくとも約20%の面積を占めている。表1および表2は、イナーシャ溶接フェースおよび鍛造フェースの実施例の面積がフェース全面積に占める割合を、記載の各厚さレベルごとにまとめたものである。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
ここに説明した本発明はゴルフクラブヘッドのフェース部分を提供し、このフェース部分は、図9に示されているように、低剛性区域、中間剛性区域および高剛性区域を有している。フェース部分(例えば図1の打撃フェース)の各点は、各点に関する局所的な断面曲げ剛性値EIを有している。特に、最低剛性EIは、全般的にスイートスポットとも呼ばれるフェースのバランス点(BP)から最も外側の区域に位置している。スイートスポットは通常、打撃フェース(例えば図1の打撃フェース15)の実質的に幾何学的な中心に存在する。
【0029】
所定の材料の場合、クラブフェース上の1点は、断面内でビーム状であると考えられ、フェース上の所定箇所でのその曲げ剛性は、厚さの3次関数「h3」として計算される。すなわちEI=f(h3)であり、この式において、Eはヤング係数、Iは慣性である。したがってフェース上の第1点の厚さが2mm、第2点の厚さが3mmであるとすれば、第2点は、第1点の1.5倍の厚さであり、第1点の剛性の3.375倍の剛性を有することになり、次式で表される。
(3mm)3/(2mm)3=(1.5)3=3.375
【0030】
スイートスポットを含むフェース中心区域の剛性値は、最も外側区域の縁辺点(P)での最小剛性値より少なくとも高い値であるが、フェースの最大剛性値は、スイートスポットから半径方向外側へ向かって所定の距離のところに設けられている。中心区域は、局所的な最小剛性値を含んでいるが、この最小剛性値は、最も外側の区域での最小剛性値よりは高い値である。図9を見ると、中心区域がBPからCまで延びており、一方、最大剛性値を含む区域はCとDの間に延びている。フェースの外縁はDからPまで延びている。
このように剛性プロファイルは、半径方向外側へ、スイートスポットからフェース縁辺部へ向かう距離に応じて剛性値が変化するようになっている。フェースの打撃面は、それぞれフェースのバランス点を含んでいる実質的に垂直な平面および実質的に水平な平面から形成される中心軸線により定義される四分区域によって表すことができる。少なくとも1つの剛性プロファイルが、バランス点から概ね半径方向に延びる各四分区域に含まれており、これは中心軸線の1つと合致してもよく、あるいは合致していなくてもよい。
【0031】
半径方向の線に沿って設けられる或る特定剛性プロファイルは、フェース上のどこか他のところで反復されてもよいし反復されなくともよいが、各プロファイルは、スイートスポットから半径方向で最大距離のところに少なくとも最小値を有し、また最小値箇所とスイートスポットの間のどこかに最大値を有していることが好ましい。中心区域の周囲に形成される概して環状の区域は、フェースの中心区域または最外側区域の剛性値より概して高い剛性値のみならず、概して楕円形または円形等を形成する最大剛性値をも有している。この環状区域を区分するための好ましい境界剛性値は、最小剛性値の少なくとも約3.5倍である。
【0032】
打撃板の可能な剛性プロファイルのすべてを含む中央区域全域は、周囲の事実上環状の区域より概して剛性値が低い。中心区域に存在する局所的最小剛性点Kは、スイートスポットに存在するように、どのプロファイルにも共通のものとすることができるが、図10に示すようにわずかにずらして、或る特定の剛性プロファイルに含まれるようにしてもよい。図10には2つの剛性プロファイルが示され、BPからC1までの長さが、BPからC2までの長さより僅かに短く、BPからD1までとD2までとの距離は異なるが、双方とも、各縁辺点P1,P2までのほぼ半分しか延びていない。
【0033】
スイートスポットから半径方向の複数の線のどの線に沿った比剛性プロファイルも、好ましくは漸次的且つ連続的であり、各区域が境界値により線引きされる。しかしながら、特定の厚さを使用して形成されるため、所望の剛性プロファイルは、例えば段階的で非連続の区間といった剛性区域内または剛性区域の間で急に変化する一定の厚さ値を用いて達成することもできる。あるいはまた複数の厚さ区域が、滑らかに変化する連続的な厚さの区間、例えば面取り区間を含んでいてもよい。また複数の厚さ区間が、粗いかまたはシャープなテクスチャ面、またはよりゆるやかな波形の面と見えるような区域内で極端に変化する厚さを有していてもよい。これらの種類の厚さプロファイルのどの組み合わせも、結果として得られる剛性プロファイルが既述のようなものである限り利用可能である。
【0034】
図11〜図13は、別の厚さパターンを有する本発明の打撃フェース50を示している。厚さの増大した四分区域が形成されており、個々の四分区域(51,52,53,54)が、縁辺部55と等厚のX字形部分57によって分割されている。このX字形部分57は、バランス点56を中心としている。四分区域(51,52,53,54)として示された厚さの増大した分離区域は、図12に示すように、バランス点を中心として対称ではない。バランス点56の左方の四分円52は、最大厚が、右方の四分円54の最大厚より大きい。
【0035】
以上に詳説した複数の実施例は単に説明を目的とするのものであり、本発明は、金属やそれらの合金の代わりに別の材料、例えば複合材料を用いたり、また例えば金属と複合材料の積層物を使用したハイブリッド構造を用いても具体化できる。クラブヘッドは、中空でも中実でもよく、300ccを超える体積、または約250cc未満の体積を有していてもよい。胴部は、一体でも複数部分から成っていてもよい。加えて、フェース部分は、クラウン、ソール、トウ、およびホーゼル部分を有するかまたは有していないヒールとの接合部の1つ以上にわたっている延長部を有していてもよい。あるいはまた別個の打撃板を有さない事実上一体のヘッドを鋳造または複合材料合板層の使用によって形成するのが望ましいかもしれない。本発明で重要なのは、特定の曲げ剛性プロファイルを有するクラブヘッド前面の打撃フェース区域である。
【0036】
好ましくは、本発明は、従来のクラブヘッドより広い打撃面部分にわたって約0.80を超えるCOR値を得るために用いられる。例えば、いわゆる「ホット」メタルウッド・ゴルフクラブの場合に、スイートスポットを事実上拡大させことができる。しかしながら本発明により拡大されるスイートスポットの利点は、またユーティリティタイプのクラブヘッドやアイアンを含む他のクラブに適用した場合にも認められる。
本発明がインサートに適用される場合、別個の打撃板を鍛造または鋳造してもよい。あるいはまた、種々の溶接技術を利用して打撃板の定厚部分の背方に別個の部分を取り付けることもできる。フェースインサートを溶接で取り付ける場合、縁辺部での打撃板の最小厚は、形成される溶接ビードの直近になお存在するようにすべきである。あるいはまた、打撃板は、当業者には公知の接着方法を用いて取り付けてもよい。以上、メタルウッド、すなわちドライバーおよびフェアウェイウッドの好適な構造について詳述してきたが、本発明は、アイアンその他のクラブで利用できることも理解されよう。
【0037】
本発明によるゴルフクラブヘッドを製造する好適な一方法では、別個の金属製打撃板が周知の鍛造技術を使用して製造され、所望の曲げ剛性プロファイルが形成される。レーザー光による被着も考えられ、その場合には、レーザー装置を使用して金属材料を融解し、その金属材料を打撃板背面に被着させ、所望の剛性プロファイルが得られる。この工程を実施するレーザー装置は、当業者には公知である。
【0038】
さらに別の方法では、打撃面を形成するインサートの前部に別個の部材をイナーシャ溶接することにより、打撃板背面に形成した構造物を介して所望の剛性プロファイルを得ることができる。図14〜図16は、一連のアタッチメントの形状における、好適な打撃板の背面部分を示したものである。特に、図14および14Aに示したディスク60は、直径が約38mm、厚さが約3mmで、一方の側61に僅かに凸状の面を有している。図15および図15Aには、ディスク縁辺部に形成された凹所または打込み穴62が示されており、この凹所の深さは、取り付け後の最終面厚によって制限されている。イナーシャ溶接用の装置(図示せず)は、溶接が完了するまで、ディスクを凹所のところで保持する。打撃板の背面の最終付形は機械加工によって行われ、図16および図16Aには好ましい1つの最終形状が示されている。
【0039】
既述の方法のいずれの場合も、最終工程として打撃板の背面を機械加工することが好ましい。あるいはまた、事実上一定厚のフェースは、機械加工を最終工程に持ち越す代わりに、所望の剛性プロファイルを得る工程として機械加工してもよい。
クラブヘッドのフェース部分および/または残部を形成するのに、複合材料を使用することもできる。フェース部分の場合、所望の剛性プロファイルは、ヤング係数の異なる1種類以上の金属繊維とエポキシ樹脂等の材料を適宜に配置することによって比較的一定の厚さ範囲内で達成可能である。あるいはまた、フェースの打撃面の背面は、複合材料合板を付加して成層にして、厚さプロファイルを変化させてもよい。付加される合板は、打撃面を形成するのと等しい繊維を使用しても、異なる繊維を使用してもよい。
【0040】
以上、本発明を複数の好適実施例についてのみ詳説したが、当業者には、別のゴルフクラブヘッドをも本発明の範囲を逸脱することなしに製造できることが理解されよう。したがって本発明は特許請求の範囲によってのみ定義されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明によるゴルフクラブヘッドの第1実施例の前面図。
【図2】図1の線2−2に沿った断面図。
【図3】図1の線3−3に沿った断面図。
【図4】図1に示したゴルフクラブヘッドに対応するフェースインサートの背面図。
【図5】本発明の第2実施例の鍛造フェースインサートを示す背面図。
【図5A】図5の線A−Aに沿った断面図。
【図5B】図5の線B−Bに沿った断面図。
【図6】本発明の別の実施例の機械加工されたフェースインサートの背面図。
【図7】図6の線7−7に沿った断面図。
【図8】図6の線8−8に沿った断面図。
【図9】フェースのバランス点(BP)から縁辺部の点(P)までの剛性プロファイルの一実施例を示す線図。
【図10】本発明の2つの剛性プロファイルがバランス点から延びるとともに、中心区域に局所的な最小値を含んでおり、この中心区域が、縁辺部の点P1,P2へ向かって延びるプロファイルに沿って設けられている実施例を示す線図。
【図11】本発明のフェースインサートの別の実施例の背面図であって、このインサートは、厚さが非連続で、少なくとも、インサートのヒールとトウとの端部の間を結ぶ線に沿って見た場合に非対称である背面図。
【図12】図11の線12−12に沿った断面図。
【図13】図11の線13−13に沿った断面図。
【図14】本発明のフェースインサートにイナーシャ溶接される背面部分の前面図。
【図14A】本発明のフェースインサートにイナーシャ溶接される背面部分の側面図であって、図14の線A−Aに沿った断面図。
【図15】イナーシャ溶接装置(図示せず)の取り付け用に凹部が形成された後の図14および図14Aに示した背面部分の前面図。
【図15A】イナーシャ溶接装置(図示せず)の取り付け用に凹部が形成された後の図14および図14Aに示した背面部分の側面図であって、図15の線A−Aに沿った断面図。
【図16】最終厚さの背面図。
【図16A】最終厚さの断面図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にゴルフクラブヘッドに関するものであり、より具体的には、改良されたフェース構造を有するゴルフクラブヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のゴルフクラブは、典型的には、ウッド、アイアン、パターに分類される。加えて「ユーティリティ」クラブまたは「アイアンウッド」と呼ばれる新種のゴルフクラブが、ロフトの小さいロングアイアンまたは番手の高いフェアウェイウッドに取って代わろうとしている。「ウッド」という用語は今でも一般に用いられている歴史的な用語であり、例えば鋼製、チタン製、ガラス繊維製、その他なじみの少ない材料製のゴルフクラブもウッドと呼ばれている。現在では、ウッドは「メタルウッド」と呼ばれることも多い。「アイアン」という用語もまた、通常、鉄製でないクラブにも一般に使用されているが、多くは「ウッド」の製造に使用されるのと同じ材料から製造されている。
【0003】
特にメタルウッドに関連する一つの改良点は、チタン等の軽量且つ強靭な金属を使用することにある。多くの高価なメタルウッド、特にドライバーは、今や主にチタンを使用して構成されている。チタンその他の軽量且つ強靭な金属を使用することにより、これまでよりサイズの大きなメタルウッドを製造することができるようになってきた。ドライバーなどのメタルウッドのサイズは体積で呼ばれることが多い。例えば現在のドライバーは300立方センチメートル(cc)を超える体積を有している。特大のメタルウッドは、一般にスイートスポットがより大きくなり、慣性が増大し、それによって通常のヘッドサイズのゴルフクラブより許容度が大きくなる。
【0004】
より軽量且つ強靭な金属を使用することによる1つの利点は、メタルウッドクラブの打撃フェースを含む壁部その他の壁部をより薄くできることにある。これによって、設計者は重量配分の点でより大きな余裕を得ることができる。例えば許容度を高めるために、重量をメタルウッドのヘッドの縁辺部へ、且つまた打撃フェースから後方へ移動させることが設計者は可能になる。前述のように、このような重量配分の結果、一般に慣性がより大きくなり、その結果中心をずれた打撃によるネジレが小さくなる。
【0005】
どの位の大きさのゴルフクラブヘッドを製造し得るかについては制限があり、それは、材料、クラブヘッドの重量およびクラブヘッドの強度、および使用する材料を含む複数のパラメータの関数である。加えて、ヘッドの大型化に伴って重量が増すことを避けるために、打撃フェースの厚さを含めた壁厚を薄くせねばならない。結果として打撃フェースは薄くなる一方であるために衝撃時にたわむ傾向がますます大きくなり、このためボールに対してより多くのエネルギーが与えられる可能性が生じる。この現象は一般に「トランポリン効果」と呼ばれる。肉薄フェースを有する適切に構成されたクラブは、したがって剛性フェースを有するクラブよりゴルフボールに対してより高い初速を与えることができる。このことはゴルファーにとって極めて重要である。なぜなら、初速はゴルフボールの飛距離を決定する1つの重要な要素だからである。
【0006】
肉薄フェースのメタルウッドによってゴルフボールに与えられる初速が、打撃フェースにゴルフボールの当たる箇所に応じて変わることは、当業者には理解されよう。一般にスイートスポットに当たったボールは、反発速度がより高い。スイートスポットの位置には、重心(CG)位置や打撃フェースの形状および厚さを含む多くの要因が関係する。
従来のゴルフクラブのヘッドでは、軽量でフレキシブルなフェースを形成することによりゴルフボールの初速または進発速度を増すことが企図されていた。メタルウッドのクラブヘッドの製造者は、最近になって、一般に可変フェース厚プロファイル(variable face thickness profil)と称されるデザインで、特にチタン合金等の軽量材料を用いて打撃フェースを設計することにより、クラブヘッドの性能を操作しようとしている。
【0007】
衝撃時の応力を低減する別の手法は、事実上クラウンからソールまでフェースを垂直に横切って延びる1以上のリブを使用することであるが、フェースを水平に横切ってトウからヒールへ延びるリブを設けた例も幾つかは存在する。最大の応力は打撃点(通常はスイートスポットまたは事実上スイートスポットの近傍)に位置するので、フェース中心は常に厚くされており、少なくともリブ付き部分と等しい厚さにされている。
1以上の細いリブを含む複数のリブ、パワーバー、および円錐体をクラブフェースの背面に形成する別の構成も存在する。スイートスポットの直ぐ背面に質量体を付加するように多数の細いリングが、あるいは代替的に螺旋体が、種々の手段により取り付けられてきた。その場合、多数のリングまたは螺旋状質量体は、スイートスポットから実質的にフェースプレートの周辺に向かって延びるようになされている。スイートスポットの位置の単一の細いリングを、トウに付加した質量体に関連づけてアイアンクラブヘッドに使用して、最小剛性点をフェース中心に移すこともある。この構成の場合、フェースの剛性は、中心に配置したリングから半径方向外側へ向かって常に高くなっている。
【0008】
別のクラブヘッドの場合には、ゴルフボールに与えられる力を増大させるためにスイートスポットの背面にパワーバーまたは円錐体を使用することが試みられている。これらのパワーバーまたは円錐体は、クラブヘッドの後方へ延びる大きな付加質量体を含み、したがってクラブヘッドの重心に影響する。しかしこれらのクラブヘッドでは、今日のゴルファーが求める反発係数(COR)の少なくとも最小値、すなわち約0.8の値は得られない。
【0009】
ゴルフクラブのCORは、ゴルフクラブヘッドとの衝突の直前と直後のゴルフボール相対速度の比の関数として略式に定義されている。CORの基準値e=0.822が米国で確立され、正式な方程式もまた、以下のように、ゴルフボールのみならず特定のクラブヘッドの相対質量を考慮している。
Vout/Vin=(eM−m)/(M+m)
M:クラブヘッドの質量
m:ゴルフボールの集合体の平均質量
Vout:ボールの反発速度
Vin:ボールの入射速度(例えば空気砲を用いてゴルフクラブヘッドのフェースに発射される)
【0010】
以上に述べた諸例の場合には、しかしながら、中心をずれた打撃に対する有意な許容度を得ることには最終的に失敗している。各ゴルフクラブはCORの増大を試みており、またそのための困難な課題は種々の程度で解決が図られている。これらのクラブの場合、最高のCORを得るために打撃点はやはりスイートスポットになければならず、打撃がスイートスポットから極めて僅かだけずれただけでも、ボール速度に有意な損失が生じる結果となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、クラブ設計者が前述の問題を解決できるような解決策を提供するものであり、この解決策は、打撃フェースの多くの部分でより大きい許容度を発揮し、一方、依然としてボールに高い初速を与えられるようなゴルフクラブを含む。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの好適実施例では、測定値で少なくとも約0.8の反発係数を有するゴルフクラブヘッドが得られる。このクラブヘッドは、トウ部分と、ヒール部分と、ソール部分と、クラウン部分とを含む胴部を有し、これら部分が前部開口を共に画成している。この開口にはインサートが配置されており、インサートは、第1の側に実質的に平坦な打撃面を、第2の側に背面を有し、さらに胴部の開口に取り付けるための縁辺部を有している。この縁辺部は、上縁部と、下縁部と、第1側縁部と、第2側縁部とを有している。打撃面は、インサートの中心区域に1つのバランス点を有しており、打撃面上の各点が厚さを有し、打撃面がインサートの全域を占めている。
【0013】
フェース・インサートは、バランス点と上縁部との間に第1厚さプロファイルを、バランス点と底縁部との間に第2厚さプロファイルを、バランス点と第1側縁部との間に第3厚さプロファイルを、バランス点と第2側縁部との間に第4厚さプロファイルを有している。第1、第2、第3および第4の厚さプロファイルは、同じように、打撃フェースの縁辺部を囲んでいる第1の箇所でそれぞれ厚さ値を有しており、複数縁部に隣接した最小値を含んでいる。これらの厚さプロファイルは、同じように、第1の箇所とバランス点との間の第2の箇所で最小値の少なくとも1.5倍の厚さ値を有しており、これら第2箇所はそれぞれ最大厚さ値を有している。これらの厚さプロファイルは、同じように、中心区域の第3の箇所に、第2箇所での値よりは小さいが第1箇所での最小値よりは大きい厚さ値を有している。
【0014】
第1、第2、第3および第4の厚さプロファイルが組み合わされて、第2の箇所を含む事実上環状の厚さ増大区域を形成している。第3の箇所の厚さ値は、厚さ減少区域と事実上環状の区域とを形成し、これらの厚さ減少区域は、バランス点から上下縁部および第1および第2側縁部までの距離の約50%にわたって延びている。
あるいはまた本発明のゴルフクラブヘッドは、トウ部分、ヒール部分、ソール部分、クラウン部分、およびフェース部分を規定する胴部を含んでいてもよい。フェース部分は、外側に打撃面を有し、且つフェース部分とクラウン部分の第1接合部と、フェース部分とソール部分の第2接合部と、フェース部分とトウ部分の第3接合部と、フェース部分とヒール部分の第4接合部とに事実上隣接する縁辺部を有している。打撃面は、その外側の全域を占めており、またフェース部分の中心区域にバランス点を有している。
【0015】
打撃面上の各点は局所的な断面曲げ剛性を有しており、それによってフェース部分が、バランス点と第1接合部の間に第1剛性プロファイルを、バランス点と第3接合部の間に第2剛性プロファイルを有している。第1および第2の剛性プロファイルは、同じように、バランス点から最遠の、打撃フェース縁辺部を囲んでいる第1箇所に低い第1の剛性値を有している。第1および第2の剛性プロファイルは、同じように、縁辺部とバランス点の間に存在する第2の箇所に高い第2剛性値を有し、第1および第2の剛性プロファイルは、同じように、中心区域に第3の剛性値を有している。
【0016】
フェース部分は、垂直および水平の中心軸線を中心として実質的に対称であるので、第1剛性プロファイルは、バランス点と第2接合部の間にも当てはまり、第2剛性プロファイルは、バランス点と第4接合部の間に当てはまる。第1剛性値は、第1、第2、第3および第4の接合部に隣接して最小値を有し、この第1剛性値は、最小値の約3.4倍未満まで増大する。第2剛性値は、前記最小値の少なくとも約3.5倍であり、第3剛性値は、最小値より大きく、且つ最小値の約3.5倍未満である。第2および第3の剛性値は、打撃面の一区域を含んでおり、この一区域は、バランス点から第1、第2、第3および第4の接合部までの距離のほぼ中間まで延びている。
【0017】
本発明の別の実施例では、ゴルフクラブヘッド用のフェース・インサートが、インサートの第1側に実質的に平坦な打撃面を、第2側に背面を含んでおり、さらにゴルフクラブヘッドへ取り付けるための縁辺部を含んでいる。この縁辺部は、上縁と、下縁と、第1側縁と、第2側縁とを有している。打撃面は、フェース・インサートの中心区域にバランス点を有し、打撃面上の各点は、局所的な断面曲げ剛性を有している。打撃面は、インサート第1側の全域を占めている。
【0018】
フェース・インサートは、バランス点と上縁の間に第1剛性プロファイルを、バランス点と下縁の間に第2剛性プロファイルを、バランス点と第1側縁の間に第3剛性プロファイルを、バランス点と第2側縁の間に第4剛性プロファイルを、それぞれ有している。第1、第2、第3および第4の剛性プロファイルは、打撃フェースの縁辺部を取り囲んでいる第1の箇所で剛性値を有しており、また側縁の隣接部分で最小値を有している。これらの剛性プロファイルは、第1箇所とバランス点の間の第2の箇所に剛性値を有しており、これら剛性値は、概して縁辺部の値である最小値の少なくとも3.5倍である。第2箇所は、最大剛性値を有する箇所を含み、この剛性プロファイルは、中心区域の第3箇所に、第2箇所での値より小さいが、第1箇所の最小値より大きい剛性値を有している。
第1、第2、第3および第4の剛性プロファイルが組み合わされて、第2箇所を含む実質的に環状の高剛性区域が形成される。第3箇所の剛性値は、局所的な最小剛性値を有する箇所を含む低剛性区域を形成している。実質的に環状のこの区域は、打撃面全域の少なくとも約12%を含んでいる。
【0019】
一般に、本発明は、技術上公知の種々の普通のクラブヘッド形状に適用することができる。本発明の別の好適実施例によれば、中空の金属胴部が開示される。この胴部は、トウ部分、ヒール部分、ソール部分およびクラウン部分を含む複数の薄壁を有し、これら部分のすべてが共同で内部の空洞と前縁を有する開口とを画成している。金属製ボール打撃フェースは、技術上一般に公知の方法を用いて胴部の前縁に固定される。この実施例は、中心に近いフェース部分を除いて、ボール打撃フェース前面からフェースの背面にかけて実質的に一様な壁厚を有するボール打撃フェースを有している。フェースの中心近くには、細長のワッシャ状厚さ増大区域が存在しており、この区域は後方へキャビティ内へ延びている。ワッシャ状区域は、好ましくは、打撃フェースプレート壁の背面に一体化された一部として形成されるが、ワッシャ状区域は、技術上公知の手段により打撃フェース背面に固定取り付けしてもよい。ワッシャ状区域は、打撃フェースの相対的な可撓度を減少させるのに役立ち、その結果、一様な厚さプロファイルを有する類似サイズの打撃フェースより、中心ずれ打撃の許容度が高いクラブヘッドが得られる。一般に、厚さ増大区域はスイートスポットから半径方向外側へ向かって設けられる。
【実施例】
【0020】
図面には、本発明によるゴルフクラブヘッドの好ましい複数の実施例が示されている。
【0021】
図1には、技術上公知の多くの金属製ウッドクラブヘッドに似たクラブヘッド10が示されている。本発明の範囲内のクラブヘッドは、必ずしも図示の形状には限定されない。クラブヘッド10は、中空の金属製胴部11と打撃板すなわちつまりフェースプレート20とを有している。胴部11は、ヒール部分12と、トウ部分13と、ソール部分14と、クラウン部分16とを含み、これらの部分が、打撃板20を受容する開口(図示せず)を共同で画成している。打撃板20は、図2〜図4に拡大詳細図で示してある。クラブヘッド10は通常、胴部11と一体に形成されるホーゼル17を介してシャフト(図示せず)に結合されている。好ましくは、胴部はステンレス鋼またはチタン合金で構成されるが、他の材料、例えばシリコン鋼合金、種々の複合材料、またはそれらの組み合わせから構成してもよい。クラブヘッドは、好ましくは、胴部11がトウ部分13、ソール部分14、クラウン部分16、およびホーゼル17を含め一体に形成されるように製造され、打撃フェース15を有する打撃板20は、公知技術により固定取り付けされる。しかし、好適な胴部11の種々の部分は、成形、鋳造、鍛造、その他の公知技術により別個に製造し、その後固定取り付けして胴部を形成してもよい。
【0022】
図4は、ステンレス鋼製打撃板20の背面23を示している。背面23は、外側背面27と内側背面29とを有している。外側背面27と内側背面29との間には、隆起面28が設けられている。この隆起面28は、実質的に楕円形の区域を形成している。隆起面には外側肩25と内側肩26とが設けられ、これら肩が、隆起面28と、外側背面27および内側背面29との移行部を形成している。隆起面28と肩25,26とは、クラブヘッドのキャビティ内側の後方へ向かって延びる楕円形のワッシャ状突出部を形成している。
【0023】
別の好ましい打撃板30は、図5に示すように、一体構造物として鍛造することができる。厚さ(32,33,34,35,36)の変化を示す地形線(topographical line)31で分かるように、鍛造により極めて簡単な工程で比較的複雑な面を形成する機会が得られる。この実施例における厚さは、打撃板の縁辺部37の近傍の約1.6mm厚から、縁辺部から半径方向内側へ打撃板30のほぼ中心38のバランス点へ向かって約1.9mm厚までに及んでいる。厚さは、さらに内側へ約2.5mmまで増大し、バランス点38での2.5mm厚の区域を囲む概して楕円形の部分39での約4.8mmの最大値まで増大する。
【0024】
図6〜図8の実施例は、打撃板40の背面の厚さ変化が図5に示したものよりも対称的である点で、図2〜図4の実施例と類似している。図6〜図8の実施例に使用される好適な材料は、チタン合金である。図6に示したように、概ね環状の厚さ増大区域41の形状は円形であるが、図2に示した隆起面28の環状区域は、より楕円形である。加えて、図7と図8に示した環状区域は、図1と図3に示した大部分が平坦な隆起面28の最大厚区域より幾分厚く、且つ傾斜がゆるやかである。
【0025】
図2〜図8に示したフェース部分の実施例は、中心(例えば29,38)から打撃板の縁辺部(例えば37)までの距離の約75%以内で厚さが実質的に増加するという特徴を共有している。好ましくは、中心から縁辺部までの距離の約50%以内で厚さが増加する。また、環状区域(例えば41)は、最も外側の縁辺部(図6〜図8の42)での最小厚より少なくとも50%大きい厚さを有し、打撃板40の全域の少なくとも約12%の区域を占めている。好ましくは、環状区域41は、打撃板全域の少なくとも約15%の面積、最も好ましくは少なくとも約20%の面積を占めている。表1および表2は、イナーシャ溶接フェースおよび鍛造フェースの実施例の面積がフェース全面積に占める割合を、記載の各厚さレベルごとにまとめたものである。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
ここに説明した本発明はゴルフクラブヘッドのフェース部分を提供し、このフェース部分は、図9に示されているように、低剛性区域、中間剛性区域および高剛性区域を有している。フェース部分(例えば図1の打撃フェース)の各点は、各点に関する局所的な断面曲げ剛性値EIを有している。特に、最低剛性EIは、全般的にスイートスポットとも呼ばれるフェースのバランス点(BP)から最も外側の区域に位置している。スイートスポットは通常、打撃フェース(例えば図1の打撃フェース15)の実質的に幾何学的な中心に存在する。
【0029】
所定の材料の場合、クラブフェース上の1点は、断面内でビーム状であると考えられ、フェース上の所定箇所でのその曲げ剛性は、厚さの3次関数「h3」として計算される。すなわちEI=f(h3)であり、この式において、Eはヤング係数、Iは慣性である。したがってフェース上の第1点の厚さが2mm、第2点の厚さが3mmであるとすれば、第2点は、第1点の1.5倍の厚さであり、第1点の剛性の3.375倍の剛性を有することになり、次式で表される。
(3mm)3/(2mm)3=(1.5)3=3.375
【0030】
スイートスポットを含むフェース中心区域の剛性値は、最も外側区域の縁辺点(P)での最小剛性値より少なくとも高い値であるが、フェースの最大剛性値は、スイートスポットから半径方向外側へ向かって所定の距離のところに設けられている。中心区域は、局所的な最小剛性値を含んでいるが、この最小剛性値は、最も外側の区域での最小剛性値よりは高い値である。図9を見ると、中心区域がBPからCまで延びており、一方、最大剛性値を含む区域はCとDの間に延びている。フェースの外縁はDからPまで延びている。
このように剛性プロファイルは、半径方向外側へ、スイートスポットからフェース縁辺部へ向かう距離に応じて剛性値が変化するようになっている。フェースの打撃面は、それぞれフェースのバランス点を含んでいる実質的に垂直な平面および実質的に水平な平面から形成される中心軸線により定義される四分区域によって表すことができる。少なくとも1つの剛性プロファイルが、バランス点から概ね半径方向に延びる各四分区域に含まれており、これは中心軸線の1つと合致してもよく、あるいは合致していなくてもよい。
【0031】
半径方向の線に沿って設けられる或る特定剛性プロファイルは、フェース上のどこか他のところで反復されてもよいし反復されなくともよいが、各プロファイルは、スイートスポットから半径方向で最大距離のところに少なくとも最小値を有し、また最小値箇所とスイートスポットの間のどこかに最大値を有していることが好ましい。中心区域の周囲に形成される概して環状の区域は、フェースの中心区域または最外側区域の剛性値より概して高い剛性値のみならず、概して楕円形または円形等を形成する最大剛性値をも有している。この環状区域を区分するための好ましい境界剛性値は、最小剛性値の少なくとも約3.5倍である。
【0032】
打撃板の可能な剛性プロファイルのすべてを含む中央区域全域は、周囲の事実上環状の区域より概して剛性値が低い。中心区域に存在する局所的最小剛性点Kは、スイートスポットに存在するように、どのプロファイルにも共通のものとすることができるが、図10に示すようにわずかにずらして、或る特定の剛性プロファイルに含まれるようにしてもよい。図10には2つの剛性プロファイルが示され、BPからC1までの長さが、BPからC2までの長さより僅かに短く、BPからD1までとD2までとの距離は異なるが、双方とも、各縁辺点P1,P2までのほぼ半分しか延びていない。
【0033】
スイートスポットから半径方向の複数の線のどの線に沿った比剛性プロファイルも、好ましくは漸次的且つ連続的であり、各区域が境界値により線引きされる。しかしながら、特定の厚さを使用して形成されるため、所望の剛性プロファイルは、例えば段階的で非連続の区間といった剛性区域内または剛性区域の間で急に変化する一定の厚さ値を用いて達成することもできる。あるいはまた複数の厚さ区域が、滑らかに変化する連続的な厚さの区間、例えば面取り区間を含んでいてもよい。また複数の厚さ区間が、粗いかまたはシャープなテクスチャ面、またはよりゆるやかな波形の面と見えるような区域内で極端に変化する厚さを有していてもよい。これらの種類の厚さプロファイルのどの組み合わせも、結果として得られる剛性プロファイルが既述のようなものである限り利用可能である。
【0034】
図11〜図13は、別の厚さパターンを有する本発明の打撃フェース50を示している。厚さの増大した四分区域が形成されており、個々の四分区域(51,52,53,54)が、縁辺部55と等厚のX字形部分57によって分割されている。このX字形部分57は、バランス点56を中心としている。四分区域(51,52,53,54)として示された厚さの増大した分離区域は、図12に示すように、バランス点を中心として対称ではない。バランス点56の左方の四分円52は、最大厚が、右方の四分円54の最大厚より大きい。
【0035】
以上に詳説した複数の実施例は単に説明を目的とするのものであり、本発明は、金属やそれらの合金の代わりに別の材料、例えば複合材料を用いたり、また例えば金属と複合材料の積層物を使用したハイブリッド構造を用いても具体化できる。クラブヘッドは、中空でも中実でもよく、300ccを超える体積、または約250cc未満の体積を有していてもよい。胴部は、一体でも複数部分から成っていてもよい。加えて、フェース部分は、クラウン、ソール、トウ、およびホーゼル部分を有するかまたは有していないヒールとの接合部の1つ以上にわたっている延長部を有していてもよい。あるいはまた別個の打撃板を有さない事実上一体のヘッドを鋳造または複合材料合板層の使用によって形成するのが望ましいかもしれない。本発明で重要なのは、特定の曲げ剛性プロファイルを有するクラブヘッド前面の打撃フェース区域である。
【0036】
好ましくは、本発明は、従来のクラブヘッドより広い打撃面部分にわたって約0.80を超えるCOR値を得るために用いられる。例えば、いわゆる「ホット」メタルウッド・ゴルフクラブの場合に、スイートスポットを事実上拡大させことができる。しかしながら本発明により拡大されるスイートスポットの利点は、またユーティリティタイプのクラブヘッドやアイアンを含む他のクラブに適用した場合にも認められる。
本発明がインサートに適用される場合、別個の打撃板を鍛造または鋳造してもよい。あるいはまた、種々の溶接技術を利用して打撃板の定厚部分の背方に別個の部分を取り付けることもできる。フェースインサートを溶接で取り付ける場合、縁辺部での打撃板の最小厚は、形成される溶接ビードの直近になお存在するようにすべきである。あるいはまた、打撃板は、当業者には公知の接着方法を用いて取り付けてもよい。以上、メタルウッド、すなわちドライバーおよびフェアウェイウッドの好適な構造について詳述してきたが、本発明は、アイアンその他のクラブで利用できることも理解されよう。
【0037】
本発明によるゴルフクラブヘッドを製造する好適な一方法では、別個の金属製打撃板が周知の鍛造技術を使用して製造され、所望の曲げ剛性プロファイルが形成される。レーザー光による被着も考えられ、その場合には、レーザー装置を使用して金属材料を融解し、その金属材料を打撃板背面に被着させ、所望の剛性プロファイルが得られる。この工程を実施するレーザー装置は、当業者には公知である。
【0038】
さらに別の方法では、打撃面を形成するインサートの前部に別個の部材をイナーシャ溶接することにより、打撃板背面に形成した構造物を介して所望の剛性プロファイルを得ることができる。図14〜図16は、一連のアタッチメントの形状における、好適な打撃板の背面部分を示したものである。特に、図14および14Aに示したディスク60は、直径が約38mm、厚さが約3mmで、一方の側61に僅かに凸状の面を有している。図15および図15Aには、ディスク縁辺部に形成された凹所または打込み穴62が示されており、この凹所の深さは、取り付け後の最終面厚によって制限されている。イナーシャ溶接用の装置(図示せず)は、溶接が完了するまで、ディスクを凹所のところで保持する。打撃板の背面の最終付形は機械加工によって行われ、図16および図16Aには好ましい1つの最終形状が示されている。
【0039】
既述の方法のいずれの場合も、最終工程として打撃板の背面を機械加工することが好ましい。あるいはまた、事実上一定厚のフェースは、機械加工を最終工程に持ち越す代わりに、所望の剛性プロファイルを得る工程として機械加工してもよい。
クラブヘッドのフェース部分および/または残部を形成するのに、複合材料を使用することもできる。フェース部分の場合、所望の剛性プロファイルは、ヤング係数の異なる1種類以上の金属繊維とエポキシ樹脂等の材料を適宜に配置することによって比較的一定の厚さ範囲内で達成可能である。あるいはまた、フェースの打撃面の背面は、複合材料合板を付加して成層にして、厚さプロファイルを変化させてもよい。付加される合板は、打撃面を形成するのと等しい繊維を使用しても、異なる繊維を使用してもよい。
【0040】
以上、本発明を複数の好適実施例についてのみ詳説したが、当業者には、別のゴルフクラブヘッドをも本発明の範囲を逸脱することなしに製造できることが理解されよう。したがって本発明は特許請求の範囲によってのみ定義されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明によるゴルフクラブヘッドの第1実施例の前面図。
【図2】図1の線2−2に沿った断面図。
【図3】図1の線3−3に沿った断面図。
【図4】図1に示したゴルフクラブヘッドに対応するフェースインサートの背面図。
【図5】本発明の第2実施例の鍛造フェースインサートを示す背面図。
【図5A】図5の線A−Aに沿った断面図。
【図5B】図5の線B−Bに沿った断面図。
【図6】本発明の別の実施例の機械加工されたフェースインサートの背面図。
【図7】図6の線7−7に沿った断面図。
【図8】図6の線8−8に沿った断面図。
【図9】フェースのバランス点(BP)から縁辺部の点(P)までの剛性プロファイルの一実施例を示す線図。
【図10】本発明の2つの剛性プロファイルがバランス点から延びるとともに、中心区域に局所的な最小値を含んでおり、この中心区域が、縁辺部の点P1,P2へ向かって延びるプロファイルに沿って設けられている実施例を示す線図。
【図11】本発明のフェースインサートの別の実施例の背面図であって、このインサートは、厚さが非連続で、少なくとも、インサートのヒールとトウとの端部の間を結ぶ線に沿って見た場合に非対称である背面図。
【図12】図11の線12−12に沿った断面図。
【図13】図11の線13−13に沿った断面図。
【図14】本発明のフェースインサートにイナーシャ溶接される背面部分の前面図。
【図14A】本発明のフェースインサートにイナーシャ溶接される背面部分の側面図であって、図14の線A−Aに沿った断面図。
【図15】イナーシャ溶接装置(図示せず)の取り付け用に凹部が形成された後の図14および図14Aに示した背面部分の前面図。
【図15A】イナーシャ溶接装置(図示せず)の取り付け用に凹部が形成された後の図14および図14Aに示した背面部分の側面図であって、図15の線A−Aに沿った断面図。
【図16】最終厚さの背面図。
【図16A】最終厚さの断面図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドであって、
共同して前部を画成するトウ部分、ヒール部分、ソール部分およびクラウン部分を有する胴部を有しており、
前記前部が、前側に設けられた実質的に平坦な打撃表面と、裏側の背面と、周囲部分とを有し、該周囲部分が、上縁と、下縁と、第1側縁と、第2側縁とを有し、前記打撃表面が、前記前部の中心区域にバランス点を有し、前記打撃表面上の各点が局所的な断面曲げ剛性を有し、前記打撃表面が前記前部の前側に全面積を有しており、
前記前部が、前記バランス点と前記上縁との間に第1剛性プロファイルを、前記バランス点と前記下縁との間に第2剛性プロファイルを、前記バランス点と前記第1側縁との間に第3剛性プロファイルを、前記バランス点と前記第2側縁との間に第4剛性プロファイルを有しており、
前記第1、第2、第3および第4の剛性プロファイルが、前記打撃面の周囲部分を取り囲む複数の第1の箇所でそれぞれ剛性値を有し、また前記周囲部分に隣接して最小値を含んでおり、前記剛性プロファイルが、前記複数の第1箇所と前記バランス点との間の第2の箇所で最小値の少なくとも3.5倍の剛性値を有しており、該第2の箇所が、最大剛性値を有する複数の点を含み、前記剛性プロファイルが、前記中心区域の複数の第3の箇所に複数の剛性値を有しており、該剛性値が、前記第2の箇所での剛性値よりは小さいが、前記第1の箇所での最小値より大きく、また前記剛性プロファイルが、スイートスポットから半径方向の複数の線のどの線に沿った比剛性プロファイルも、漸次的且つ連続的であり、
前記第1、第2、第3および第4の剛性プロファイルが共同して、前記第2箇所を含む実質的に環状で剛性の高い区域を形成しており、前記第3の箇所の剛性値が、局所的な最小剛性値を有する点を含む低剛性区域を形成しており、前記実質的に環状の区域が、前記打撃表面の全域の少なくとも12%を有しており、
前記前部が、一体構造を有し、前記胴部が、前記前部によって閉じられる中空キャビティを画成している、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記ヘッドが、複数の第1箇所と前記バランス点との間の第2の箇所で最小値の3.5〜6.0倍の剛性値を有している請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
中心区域の周囲に形成される概して環状の区域は、フェースの中心区域または最外側区域の剛性値より概して高い剛性値のみならず、概して楕円形または円形等を形成する最大剛性値をも有している請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドであって、
共同して前部を画成するトウ部分、ヒール部分、ソール部分およびクラウン部分を有する胴部を有しており、
前記前部が、前側に設けられた実質的に平坦な打撃表面と、裏側の背面と、周囲部分とを有し、該周囲部分が、上縁と、下縁と、第1側縁と、第2側縁とを有し、前記打撃表面が、前記前部の中心区域にバランス点を有し、前記打撃表面上の各点が局所的な断面曲げ剛性を有し、前記打撃表面が前記前部の前側に全面積を有しており、
前記前部が、前記バランス点と前記上縁との間に第1剛性プロファイルを、前記バランス点と前記下縁との間に第2剛性プロファイルを、前記バランス点と前記第1側縁との間に第3剛性プロファイルを、前記バランス点と前記第2側縁との間に第4剛性プロファイルを有しており、
前記第1、第2、第3および第4の剛性プロファイルが、前記打撃面の周囲部分を取り囲む複数の第1の箇所でそれぞれ剛性値を有し、また前記周囲部分に隣接して最小値を含んでおり、前記剛性プロファイルが、前記複数の第1箇所と前記バランス点との間の第2の箇所で最小値の少なくとも3.5倍の剛性値を有しており、該第2の箇所が、最大剛性値を有する複数の点を含み、前記剛性プロファイルが、前記中心区域の複数の第3の箇所に複数の剛性値を有しており、該剛性値が、前記第2の箇所での剛性値よりは小さいが、前記第1の箇所での最小値より大きく、また前記剛性プロファイルが、スイートスポットから半径方向の複数の線のどの線に沿った比剛性プロファイルも、漸次的且つ連続的であり、
前記第1、第2、第3および第4の剛性プロファイルが共同して、前記第2箇所を含む実質的に環状で剛性の高い区域を形成しており、前記第3の箇所の剛性値が、局所的な最小剛性値を有する点を含む低剛性区域を形成しており、前記実質的に環状の区域が、前記打撃表面の全域の少なくとも12%を有しており、
前記前部が、一体構造を有し、前記胴部が、前記前部によって閉じられる中空キャビティを画成している、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記ヘッドが、複数の第1箇所と前記バランス点との間の第2の箇所で最小値の3.5〜6.0倍の剛性値を有している請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
中心区域の周囲に形成される概して環状の区域は、フェースの中心区域または最外側区域の剛性値より概して高い剛性値のみならず、概して楕円形または円形等を形成する最大剛性値をも有している請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図14A】
【図15】
【図15A】
【図16】
【図16A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図14A】
【図15】
【図15A】
【図16】
【図16A】
【公開番号】特開2009−6151(P2009−6151A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178176(P2008−178176)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【分割の表示】特願2003−510117(P2003−510117)の分割
【原出願日】平成14年6月27日(2002.6.27)
【出願人】(500014161)テイラー メイド ゴルフ カンパニー インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【分割の表示】特願2003−510117(P2003−510117)の分割
【原出願日】平成14年6月27日(2002.6.27)
【出願人】(500014161)テイラー メイド ゴルフ カンパニー インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
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