説明

改質型ジオポリマー組成物、方法、及び使用

本発明は、改質型ジオポリマー組成物、ジオポリマ−被覆された有機ポリマー基体、並びにその製造方法およびそれを含む物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質型ジオポリマー組成物、ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体、並びにこれらの製造方法及びこれらを含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオポリマー材料は何世紀にもわたって建造物において(例えば煉瓦の製造のために)使用されている。ジオポリマー組成物は、水素、アルミニウム、ケイ素、酸素、及び元素周期表の1族の金属を含む元素を含有する。
【0003】
最近では、Belaguruが特に、コンクリート、鋼、又は木材の塗布表面のために有用なジオポリマー組成物について述べている(Belaguru P., Geopolymer for Protective Coating of Transportation Infrastructures, FINAL REPORT, Report Number FHWA NJ 1998-12, 1998, Rutgers, The State University, Piscataway, New Jersey)。この文献でBelaguruはまた、中でも、特定されていないポリマーラテックスを含むか又はこのポリマーラテックスとともに調製されたいくつかの組成物について述べている。例示されたBelaguruのポリマーラテックス含有組成物(表1の組成物1及びサンプルID28〜36参照)はとりわけ「ケイ酸カリウム」(K2SiO3)、「シリカ・フューム」(SiO2)、及び「グラウンド・サンド」を含むが、しかし(例えばジオポリマーにとって特徴的な酸化アルミニウムにおけるような)有意なアルミニウム源として機能する成分を含有しているようには思われない。従って、Belaguruのポリマーラテックス含有組成物は、ジオポリマーを含んでいるとは思われない。
【0004】
国際公開第2008/017413号パンフレットには、ポンピング可能なジオポリマー配合物、及び二酸化炭素貯蔵のための応用が述べられている。
【0005】
有機ポリマー基体を被覆するのに有用な改質ジオポリマー組成物、ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体、及びこれらの製造方法がこの技術分野において必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本発明は、(i)ジオポリマー及び有機ポリマーラテックスの混合物を含む安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物、又は(ii)高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物を含む、改質型ジオポリマー組成物を提供する。いくつかの態様では、改質型ジオポリマー組成物は、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物を含み、好ましくは、混合物は事実上均一である。いくつかの態様では、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物は、高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物を含む。いくつかの態様では、改質型ジオポリマー組成物は、カルシウム系酸化物を含有しない。本明細書中に使用される「高い有機ポリマー付着能力を有する」という用語は、硬化させられ乾燥させられた後、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面(例えば、押し出しポリスチレンフォーム基体の表面)に、結合強度50キロパスカル(kPa)以上で結合されることができるとして特徴づけることができることを意味する。結合強度を測定する好ましい方法は、後で説明する引張り試験法である。
【0007】
いくつかの態様では、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物は、水和ポリシアル酸塩と、1.0重量パーセント〜50重量パーセントの有機ポリマーラテックスとの第1混合物を含むか、又は水和ポリシアル酸塩と、1.0重量パーセント〜50重量パーセントの有機ポリマーラテックスとの第1混合物を混合させることにより形成され、有機ポリマーラテックスの重量パーセントは、第1混合物の総重量を基準とする。いくつかの態様では、第1混合物を形成するために使用される有機ポリマーラテックスは、有機ポリマーラテックス粉末を含む(すなわちこの有機ポリマーラテックス粉末は水性ではない)。他の態様では、第1の混合物を形成するために使用される有機ポリマーラテックスは、水性有機ポリマーラテックスと、0.05重量パーセント〜10重量パーセントのラテックス安定剤とを含む第2混合物を含み、ラテックス安定剤の重量パーセントは、第2混合物の総重量を基準とする。
【0008】
好ましくは、高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物は、水濃度改質及びケイ素/アルミニウム(Si/Al)モル比改質型ジオポリマー組成物であり、水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物が、水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマーの総重量を基準として、36.0重量パーセント未満の水を有し、そして1.70以上のSi/Alモル比を有している。より好ましくは、Si/Alモル比は、1.70以上であり3.0以下である。
【0009】
第2の態様において、本発明は、有機ポリマー基体と付着するように接触した乾燥された改質型ジオポリマー層を含むジオポリマー被覆された有機ポリマー基体を調製する方法であって、付着するように接触することは、引張り試験法に従って測定して25キロパスカル(kPa)以上の結合強度を有するものとして特徴づけることができ、この方法は、改質型ジオポリマー前駆体層を有機ポリマー基体と接触した状態で乾燥させることの作用として、該ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体を形成することを含む、ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体を調製する方法を提供する。
【0010】
いくつかの態様では、第2の態様の方法は、硬化された改質型ジオポリマー前駆体層を提供するために、改質型ジオポリマー前駆体層を硬化させる前工程をさらに含む。より好ましくは、硬化工程は、乾燥工程と事実上同時に、又はさらにより好ましくは、乾燥工程に少なくとも部分的に先んじて(すなわち何らかの硬化が乾燥前に生じる)、又は実質的に先んじて(ほとんど又はすべての硬化が乾燥前に生じる)行われる。いくつかの態様の場合、硬化は実質的に乾燥に先んじる。いくつかの態様の場合、改質型ジオポリマー前駆体層は、硬化された改質型ジオポリマー前駆体層を含む。さらにより好ましくは、第2の態様の方法は、(a) 被覆準備ができた表面を有する有機ポリマー基体を用意する工程;(b) 有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面、又はその一部に第1の態様の改質型ジオポリマー組成物を接触させることにより、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面又はその一部と物理的に接触した改質型ジオポリマー前駆体層を提供する工程、(c) 改質型ジオポリマー前駆体層を硬化させることにより、硬化された改質型ジオポリマー前駆体層を提供する工程;そして(d) 少なくとも25重量パーセントの水を除去するように、硬化された改質型ジオポリマー前駆体層を乾燥させることにより、ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体を提供する工程を含む。
【0011】
第2の態様において、(硬化された)改質型ジオポリマー前駆体層は独立して、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面、又はその一部と物理的に接触している。いくつかの態様では、硬化され、乾燥された改質型ジオポリマー層は、硬化され、乾燥された、高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物層を含み;硬化された改質型ジオポリマー前駆体層は、硬化された、高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物前駆体層を含み;そして改質型ジオポリマー前駆体層は、高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物前駆体層を含む。高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物前駆体層は、第1の態様の高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物から形成される。
【0012】
いくつかの態様では、硬化され、乾燥された改質型ジオポリマー層は、硬化され、乾燥されたジオポリマー−有機ポリマーラテックス層を含み;硬化された改質型ジオポリマー前駆体層は、硬化されたジオポリマー−有機ポリマーラテックス前駆体層を含み;そして改質型ジオポリマー前駆体層は、ジオポリマー−有機ポリマーラテックス前駆体層を含む。ジオポリマー−有機ポリマーラテックス前駆体層は、第1の態様の安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物から形成される。第2の態様の方法の、硬化されたジオポリマー−有機ポリマーラテックス前駆体層を使用する態様において、有機ポリマーラテックスは、ガラス転移温度を有するものとして特徴づけることができ、そして乾燥工程は、乾燥温度を有するものとして特徴づけることができ、乾燥工程の乾燥温度は、有機ポリマーラテックスのガラス転移温度よりも高い。
【0013】
第3の態様の場合、本発明は、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面又はその一部と付着するように接触した乾燥された改質型ジオポリマー層を含むジオポリマー被覆された有機ポリマー基体であって、付着するように接触することが、引張り試験法に従って測定して25キロパスカル(kPa)以上の結合強度を有するものとして特徴づけることができる、ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体を提供する。好ましくは、ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体は、第2の態様の方法によって調製される。
【0014】
本発明のジオポリマー被覆された有機ポリマー基体は、例えばジオポリマー被覆された有機ポリマー基体にとって、審美的外観、又は好ましくは火炎、熱、光、機械、化学物質に対する抵抗性、又はこれらのうちの2つ又は3つの組み合わせが、被覆なしの有機ポリマー基体のこのようなそれぞれの審美的外観、又は抵抗性と比較して改善されることが望ましい用途及び物品において有用である。第2の態様の方法によって調製されたこのような層を含む乾燥された改質型ジオポリマー層は、ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体においてこの層が付着又は結合された有機ポリマー基体に、前記抵抗性を提供する。このように、本発明のジオポリマー被覆された有機ポリマー基体は、例えば自動車用部品(例えば自動車用ホース);建築物用部品(例えば外側及び内側の建造物クラッディング(例えば外部断熱及び仕上げシステム);屋外物品(例えば屋外用家具及び標識);及びライニングされたインフラ用部品{例えばライニングされた工業用管(例えば下水管、水道管、及び化学プロセス管)}のような物品を調製するのに有用である。ジオポリマー物品はまた、ハウジング、例えば電子デバイス及びバッテリーのハウジングを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の改質型ジオポリマー組成物は、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面に被覆を施すことができ、そして硬化及び乾燥(例えば硬化させ、そして改質型ジオポリマー組成物から多量の水を除去する)の後、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面上に、付着性の、好ましくは高度に付着性の被覆層を形成することができる。本発明の改質型ジオポリマー組成物とは異なり、改質されていないジオポリマー又は本発明以外の改質型ジオポリマーから成る本発明以外の組成物は、硬化及び乾燥の後、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面に、付着するとしても弱くしか付着しない(例えば、後で説明する引張り試験法によって測定して22kPa未満、いくつかの事例では11kPa未満の結合強度)。
【0016】
追加の態様を、特許請求の範囲を含めて明細書の残りにおいて説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
前記本発明の態様は、参照することによりここに組み入れられる。これらの態様及び後で説明する追加の態様を、下記情報を参照しながらさらに例証する。
【0018】
参照することにより主題を組み入れることを許す、米国特許及びその他の特許の審査のために、発明の詳細な説明において参照されるそれぞれの米国特許、米国特許出願、米国特許出願公開、PCT国際特許出願の各明細書、WO国際公開パンフレット、及びこれらの同等物の内容全体(他に指示のない限り)を、参照することにより本明細書に組み入れる。本明細書に書かれたものと、参照することにより組み入れられた特許明細書、特許出願明細書、特許出願公開明細書、又はこれらの一部に書かれたものとの間に不一致がある場合には、本明細書中に書かれたものが優先する。
【0019】
本出願において、数値範囲の任意の下限、又はその範囲の任意の好ましい下限は、その範囲の好ましい形態又は態様を規定するために、その範囲の任意の上限、又はその範囲の任意の好ましい上限と組み合わせることができる。それぞれの数値範囲は、その範囲内に含まれるすべての数値、つまり有理数及び無理数の双方を含む(例えば、約1〜約5の範囲は、例えば、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4,及び5を含む)。
【0020】
化合物名とその構造との間に不一致がある場合には、構造が優先する。
【0021】
括弧なしで挙げられた単位値、例えば2インチと、括弧内に挙げられた対応する単位値、例えば(5センチメートル)との間に不一致がある場合には、括弧なしで挙げられた単位値が優先する。
【0022】
本明細書中に使用される“a”、“an”、“the”、“少なくとも1つ(at least one)”、“1つ又は2つ以上(one or more)”は、相互に置き換え可能に使用される。本明細書中に記載された本発明のいずれの形態又は態様においても、数値を意味する言い回しにおける約(about)という用語は、本発明の別の形態又は態様を提供するために、この言い回しから削除することができる。「約(about)」という用語を使用する前の形態又は態様では、好ましくは、これはその数値の90パーセント〜100パーセント、その数値の100パーセント〜110パーセント、又はその数値の90パーセント〜110パーセントを意味する。本明細書中に記載された本発明のいずれの形態又は態様においても、オープンエンド用語「含む(comprising)、(comprises)」など(これは「含む(incluidng)」、「有する(having)」、及び「特徴付けられる(characterized by)」と同義である)は、本発明の別の形態又は態様を提供するために、それぞれ部分的にクローズドな言い回し「事実上〜から成る(consisting essentially of)」、「事実上〜から成っている(consists essentially of)」など、又はそれぞれクローズドな言い回し「〜から成る(consisting of)」、及び「〜から成っている(consists of)」などによって置き換えることができる。本出願において、先行して挙げられた要素(例えば成分)に言及した場合には、「これらの混合物」、及び「これらの組み合わせ」などという言い回しは、挙げられた要素のうちの、すべてを含むいずれか2つ又は3つ以上を意味する。員(members)を挙げる際に使用される「又は(or)」という用語は、特に断りのない限り、挙げられた員を個別に、また任意の組み合わせにおいて意味し、そして個々の員のうちのいずれか1つを挙げる追加の態様を支持する(例えば「10パーセント以上」という言い回しを挙げる態様において、「又は」は「10パーセント」を挙げる別の態様、及び「10パーセント超」を挙げるさらに別の態様を支持する)。「複数(plurality)」は2つ又は3つ以上を意味し、それぞれの数は、他に指示のない限り、独立して選択される。本明細書中に使用される「重量パーセント」及び「wt%」は同義であって、他に指示のない限り、混合物の総重量を基準として混合物の成分に対して計算される。
【0023】
「層」という用語は、材料被覆又は材料被膜を意味する。
【0024】
「被覆準備ができた表面」という用語は、この被覆のために、露出され、材料を受容するように調製された領域を意味する。
【0025】
「ガラス転移温度」(Tg)は、ASTM E1356-03に従って示差走査熱量計を用いた示差走査熱量測定によって割り出される。
【0026】
「を含むか、又は混合させることにより形成された」混合物は、ブレンド、又は(例えば化学的に)誘導された材料、又はその両方を意味する。
【0027】
他に断りのない限り、「元素周期表」という用語は、International Union of Pure and Applied Chemistry (IUPAC)によって刊行された公式周期表(2007年6月22日版)を意味する。また、族(Group又はGroups)に言及した場合はいずれも、元素周期表において反映された族を意味するものとする。
【0028】
「ジオポリマー」という用語は、水和ポリシアル酸塩を含む三次元無機アルミノケイ酸塩鉱物ポリマーを意味する。好ましくは、水和ポリシアル酸塩は、実験式(G):
(M)y[−(−SiO2z−AlO2)]x・wH2O (G)
から成り、式中、それぞれのMは独立して元素周期表の1族のカチオンであり;xは2又は3以上の整数であって、ポリシアル酸塩反復単位の数を表し;yは、xに対するyの比がゼロより大きくなる(y/x>0)ように、好ましくはゼロを上回り1以下である(0<y/x≦1)ように選択される整数であり;zは、1〜35の有理数又は無理数であり;そしてwは、xに対するwの比(w/x)が1ポリシアル酸塩反復単位当たりの水のモル比を表す。zは、ポリシアル酸塩中のアルミニウム原子のモルに対するケイ素原子のモル(Si/Al)に等しいモル比を表す。本発明のジオポリマー組成物中のSiO2官能基の分布は、ランダムなものとして特徴づけることができる。このように、zは有理数又は無理数であってよい。
【0029】
実験式(G)の水和ポリシアル酸塩において、wは好ましくは、水の「ジオポリマー粘度に対して効果的な量」を提供するように選ばれる。この用語は、第1の態様の安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物のために望ましい流れ抵抗を、第2の態様を達成し得るように確立するのに十分な水の量を意味する。より好ましくは、wは約4〜約8、より好ましくは4〜7.5の有理数又は無理数である。安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物中の、所望のジオポリマー粘度に対して効果的な量水を提供するために、wは、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物に水を添加するか、又はこの組成物から多少の水を除去する(例えば乾燥により)ことにより、wをより高く又はより低く調節することができる。
【0030】
実験式(G)の水和ポリシアル酸塩において、好ましくはそれぞれのMは独立して、元素周期表の1族の1種又は2種以上の金属のカチオンである。最も一般的なカチオンはカリウムカチオン(K+)、ナトリウムカチオン(Na+)、リチウムカチオン(Li+)、又はこれらのうちの2種又は3種以上の組み合わせを含む。いくつかの態様の場合、カチオンはさらに、元素周期表の2族の1種又は2種以上の金属のカチオン、より好ましくはマグネシウムカチオン(Mg+2)、そしてさらにより好ましくはカルシウムカチオン(Ca+2)を含んでもよい。このような態様の場合、カルシウムカチオンは、酸化カルシウムを含まず、また酸化カルシウムから誘導されないことが好ましい。好ましくはMの少なくとも51モル%、より好ましくは少なくとも90モル%、さらにより好ましくは少なくとも98モル%、そしてさらにより好ましくは少なくとも99モル%がNa+である。
【0031】
実験式(G)の水和ポリシアル酸塩において、好ましくは、zは、1〜3の有理数又は無理数である。いくつかの態様の場合、zは2〜3,又は好ましくは1〜2である。好ましくは、zは1.70以上であり、そしてより好ましくは1.9以上である。好ましくは、zは3.0以下である。いくつかの態様の場合、zは2.0以下である。いくつかの態様の場合、式(G)の水和ポリシアル酸塩は、ポリ(シアレート)(zは実験式(G)において1である)、ポリ(シアレート−シロキソ)(zは実験式(G)において2である)、又はポリ(シアレート−ジシロキソ)(zは実験式(G)において3である)を含む。硬化前には、ポリ(シアレート)、ポリ(シアレート−シロキソ)、及びポリ(シアレート−ジシロキソ)はそれぞれ、共有される酸素原子、アルミノケイ酸塩の鉱物ポリマーの電荷全体が中性となるようなカチオン、及び水によって連結された、負電荷を有する四面体四酸化ケイ素(正式にはSiO4)と四面体四酸化アルミニウム(正式にはAlO4)との網状構造を含んでいる。SiO4とAlO4四面体との網状構造は、カチオンMを含有する構造的空洞を画定する。
【0032】
本発明の改質型ジオポリマー組成物が、高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物であるいくつかの態様の場合(高い有機ポリマー付着能力を有するとは、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物が、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面と接触した状態で硬化させられ乾燥させられた後、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面上に、有機ポリマーに高度に付着する硬化され、乾燥されたジオポリマー−有機ポリマーラテックス層を生成することを意味する)、有機ポリマーに高度に付着する硬化され、乾燥されたジオポリマー−有機ポリマーラテックス層は、結合強度50キロパスカル(kPa)以上で、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面又はその一部に付着するものとして特徴づけることができる。高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物は、水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物であり、水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物は、水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマーの総重量を基準として、36.0重量パーセント未満の水を有し、水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物は、実験式(G):
(M)y[−(−SiO2z−AlO2)]x・wH2O (G)
の水和ポリシアル酸塩を含み、式中、それぞれのMは独立して元素周期表の1族のカチオンであり;xは2又は3以上の整数であって、ポリシアル酸塩反復単位の数を表し;yは、xに対するyの比がゼロより大きくなる(y/x>0)ように選択される整数であり;zは、ケイ素/アルミニウムのモル比であって、有理数又は無理数であり;そしてwは、xに対するwの比が1ポリシアル酸塩反復単位当たりの水のモル比を表すような有理数又は無理数であり、(a)zは1.70〜3であるか、又は(b)zは1.9〜3である。より好ましくは、zは1.70〜3である。さらにより好ましくは、zは1.9〜3であり、より好ましくは、zは1.9〜3であり、水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物は、水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマーの総重量を基準として、34.0重量パーセント未満の水を有している。
【0033】
水和ポリシアル酸塩の一例としては、下記のそれぞれの実験式、(M−PS)、(M−PSS)、及び(M−PSDS)を有する水和ポリ(シアレート)、水和ポリ(シアレート−シロキソ)、及び水和ポリ(シアレート−ジシロキソ)が挙げられる:
ポリ(シアレート):(M)y−(−Si−O−Al−O−)x・wH2O(M−PS)(Si:Alのモル比は1:1である)(Z=1);
【0034】
ポリ(シアレート-シロキソ):(M)y−(Si−O−Al−O−Si−O−)x・wH2O(M−PSS)(Si:Alのモル比は2:1である)(Z=2);
【0035】
ポリ(シアレート−ジシロキソ):(M)y−(Si−O−Al−O−Si−O−Si−O−)x・wH2O(M−PSS)(Si:Alのモル比は3:1である)(Z=3);
【0036】
上記式中x、y、w、及びMは独立して実験式(G)に関して規定されている通りである。
【0037】
いくつかの態様の場合、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物、又は高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物(両方とも、第1の態様の改質型ジオポリマー組成物である)の第1混合物は、2種又は3種以上の水和ポリケイ酸塩を含むか、又はこれらの水和ポリケイ酸塩によって形成された第1複合材料を含み、複合材料のそれぞれの水和ポリケイ酸塩は独立して、本明細書中に記載された実験式(G)を有しており、これらの2種又は3種以上の水和ポリケイ酸塩は、一緒にした状態で実験式(G)によって特徴づけることができ、そして独立して、x、y、及びzのぞれぞれに対応する平均値を有しており、これらの平均値は独立して有理数又は無理数である。いくつかの態様の場合、第1の態様の改質型ジオポリマー組成物は、両方とも第1の態様の(i)の改質型ジオポリマー組成物と、(ii)の改質型ジオポリマー組成物とを含む、又はこれらを混合させることによって形成された第2複合材料を含む。いくつかの態様は、第1又は2の複合材料、又はその両方は、カルシウム系酸化物を含有しない。
【0038】
本発明の改質型ジオポリマー組成物を調製するために有用な、改質されていないジオポリマー組成物は典型的には、種々のアルミノケイ酸塩酸化物及びケイ酸塩を、水酸化物アニオン(O(H)-)の存在において化学的に分解し、続いて再凝結することによって調製することができる。いくつかの態様の場合、水と、水酸化ナトリウムと、フュームドシリカとを混合することにより、水性ケイ酸ナトリウム混合物(例えばケイ酸ナトリウム溶液)を調製する。水性ケイ酸ナトリウム混合物を、酸化アルミニウム源(例えば焼成カオリン粘土)と混合することにより、改質されていないジオポリマー組成物を提供する。例えば、所定量の水と、水酸化ナトリウムと、フュームドシリカとを混合することにより所定のケイ酸ナトリウム溶液を調製することによって、正式には72重量パーセント(wt%)の水と、10wt%の水酸化ナトリウムと、18wt%のフュームドシリカとを含有する所定のケイ酸ナトリウム溶液を提供する。所定のケイ酸ナトリウム溶液と、所定量の焼成カオリン粘土と混合することにより、正式には29wt%の焼成カオリン粘土と、71wt%のケイ酸ナトリウム溶液とを含有する、改質されていないジオポリマー組成物を提供する。好ましくは、本発明の改質型ジオポリマー組成物は、水性ケイ酸ナトリウム混合物を含むか、又は水性ケイ酸ナトリウム混合物から調製される。
【0039】
有機ポリマーラテックス、有機ポリマー基体、又はその両方として有用な有機ポリマーは、天然又は合成有機ポリマーであってよい。「有機ポリマー」という用語は、炭素と水素とを含むマクロ分子を意味する。マクロ分子は複数の反復単位を含み、それぞれの反復単位は、モノマーから形成された残基を含み、それぞれのモノマーは別のモノマーと同じであるか又は異なっている。マクロ分子の残基を形成したモノマーがすべて同じである場合には、残基は互いに同じであるか又は異なっていてよい(例えば末端基が内部残基とは異なっているか;又は、重合後に改質された残基が改質されていない残基とは異なっているか;又は、その両方である)。好適なモノマーの例は、炭化水素モノマー(すなわち、炭素と水素とから成るモノマー)、及びヘテロ原子含有モノマー(すなわち、炭素と、水素と、少なくとも1つのヘテロ原子とを含むモノマーであり、それぞれのヘテロ原子は好ましくは酸素、窒素、フルオロ、クロロである)である。好適な炭化水素モノマーの例は、エチレン、プロピレン、(C4−C8)アルファ−オレフィン、1,4−ブタジエン、及びスチレンである。好適なヘテロ原子含有モノマーの例は、アジピン酸及びエチレンジアミン、テレフタル酸及び1,4−ブタンジオール、4−ヒドロキシ安息香酸、アクリル酸、及び乳酸の混合物である。ジカルボン酸誘導体、例えばジメチルジカルボン酸エステル、無水ジカルボン酸(環状及び混合カルボン酸無水物を含む)、ジカルボン酸二塩化物(すなわちジカルボキソイル二塩化物)を、ジカルボン酸モノマーの代わりに使用することができる。
【0040】
本発明において有用な有機ポリマーの例はこのように、天然ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、(C4−C8)アルファ−オレフィン、ポリ(ブタジエン)、及びこれらの共重合混合物;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、及びポリブチレンテレフタレートを含むポリエステル;ポリアクリレート;ポリメタクリレート;及び前記有機ポリマーの製造時に使用されるモノマーのうちのいずれか2種又は3種以上のインターポリマー(例えばコポリマー)である。特に断りのない限り、本明細書中に使用される「ブタジエン」という用語は、1,3−ブタジエンを意味する。
【0041】
好ましくは、本発明において有用な有機ポリマー基体は、直前の段落で述べた有機ポリマー例のうちの1種又は2種以上を含む。前述の有機ポリマー例はまた、有機ポリマーラテックスとしてのラテックス形態において有用であるが、有機ポリマーラテックスはこれらに制限されるものではない。
【0042】
有機ポリマーラテックスは天然有機ポリマーラテックス(例えばhevea brasilienesisゴムノキ)、又は好ましくは合成有機ポリマーラテックスを含む。いくつかの態様の場合、本発明において有用な有機ポリマーラテックスは、水性有機ポリマーラテックスである。「水性有機ポリマーラテックス」という用語は、液状物質中の、前述の有機ポリマーから成るミクロ粒子の分散体を意味する。液状物質は、分子式H2Oを有する。好ましい水性有機ポリマーラテックスは、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、又はポリ(スチレン−ブタジエン)から成るミクロ粒子の水性分散体である。いくつかの態様の場合、本発明において有用な有機ポリマーラテックスはラテックス粉末である。好ましくは、ラテックス粉末は水中に再分散させることができる。好ましいラテックス粉末は、ビニルアセテート・モノマー又はアクリル酸モノマー、又はポリ(ビニルアセテート/ビニルベルサテート)コポリマー、ポリ(ビニルアセテート/エチレン)コポリマー、又はポリ(スチレンブタジエン)コポリマーであるコポリマーから調製されて、その残基を含むホモポリマーである。例えばDow Wolff Cellulosics(米国ミシガン州Midland在Dow Chemical Companyの事業単位)から、少なくともいくつかのラテックス粉末が商業的に入手可能である。いくつかの態様の場合、本発明において有用な有機ポリマーラテックスは、水性有機ポリマーラテックスと有機ポリマーラテックス粉末とを含む組み合わせである。
【0043】
好ましくは、有機ポリマーラテックスは、水性形態であるか粉末形態であるかにかかわらず、150℃未満のガラス転移温度によって特徴づけられる。より好ましくは、有機ポリマーラテックスは、100℃未満、より好ましくは75℃未満、さらにより好ましくは40℃未満、そしてさらにより好ましくは30℃未満のガラス転移温度によって特徴づけられる。独立して、ガラス転移温度は少なくとも−40℃、好ましくは少なくとも−20℃、より好ましくは−10℃、そしてさらにより好ましくは少なくとも−5℃である。いくつかの好ましい態様の場合、本発明の改質型ジオポリマー組成物は、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物であり、この安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物は、水和ポリシアル酸塩と1.0重量パーセント〜50重量パーセントの有機ポリマーラテックスとの第1混合物を含むか、又は水和ポリシアル酸塩と1.0重量パーセント〜50重量パーセントの有機ポリマーラテックスとの第1混合物を混合させることにより形成され、有機ポリマーラテックスの重量パーセントは、第1混合物の総重量を基準とする。有機ポリマーラテックスは、150℃未満のガラス転移温度によって特徴づけられる。
【0044】
好ましくは、有機ポリマーラテックスは、第1の態様の安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物を、すべて第1混合物の総重量を基準として40wt%以下、より好ましくは35wt%以下、及びさらにより好ましくは30wt%以下の濃度で含む第1混合物中に存在している。このような状況下で付着するように接触するための所望の結合強度をもたらすのに効果的な最小量の有機ポリマーラテックスを使用するのが普通は望ましいが、いくつかの態様の場合、第1の態様の安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物を含む第1混合物中の有機ポリマーラテックスの濃度は、すべて第1混合物の総重量を基準として好ましくは少なくとも1wt%、より好ましくは少なくとも2wt%、さらにより好ましくは少なくとも4wt%、そしてさらにより好ましくは少なくとも5wt%である。好ましい濃度範囲の一例は、すべて第1混合物の総重量を基準として約5wt%〜約30wt%、そしてより好ましくは約5wt%〜約25wt%である。後で例において提供される有機ポリマーラテックスの濃度が特に有用である。
【0045】
「ラテックス安定剤」という用語は、水性有機ポリマーラテックスを含む有機ポリマー粒子の凝塊又は凝集を阻害する物質を意味する。ラテックス安定剤は、例えば、米国特許第4,110,293号明細書において知られている。好適なラテックス安定剤の例はタンパク質(例えばゼラチン及びカゼイン酸塩)、炭水化物(例えばペクチネート)、グリコール、及び界面活性剤である。好適な界面活性剤の例は、アニオン性(例えば硫酸塩、スルホン酸塩、又はカルボン酸塩を含有する)界面活性剤、例えばペルウルオロオクタンスルホン酸塩;カチオン性(すなわち第四アンモニウム含有)界面活性剤、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド;両性イオン(すなわち両性)界面活性剤、例えばココ・アムフォ・グリシネート;及び非イオン性界面活性剤、例えばアルキルポリ(エチレンオキシド)及びセチルアルコールである。非イオン性界面活性剤が好ましい。商業的に利用可能なラテックスは典型的には、本発明に適した量でラテックス安定剤を含有する。いくつかの態様では、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物を調製する場合に、追加の量のラテックス安定剤又は追加のラテックス安定剤を添加することができる。
【0046】
好ましくは、ラテックス安定剤は、これがその中で使用される本発明の安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物の態様において、本発明の安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物が硬化の準備、又は硬化及び乾燥の準備(例えば硬化させ、そして組成物から水を除去する)ができるまでの間に、第1混合物の水性有機ポリマーラテックスを凝塊又は凝集に抗して安定化する手段として使用される。ラテックス安定剤は、凝塊阻害量で第2混合物中に存在する。凝塊阻害量は、水性有機ポリマーラテックスの凝塊を1時間以内に、好ましくは接触工程完了まで、より好ましくは乾燥工程開始まで、そしてさらにより好ましくは第2の態様の硬化工程の開始まで、50%以上、好ましくは75%以上、そしてより好ましくは90%以上だけ阻害するのに十分な量である。好ましくは、凝塊阻害量とは、ラテックス安定剤が、水性有機ポリマーラテックスとラテックス安定剤とを含む第2混合物中に存在しており、ラテックス安定剤が第2混合物の総重量を基準として、少なくとも1.0wt%、より好ましくは少なくとも2.0wt%、さらにより好ましくは少なくとも3.0wt%、そしてより好ましくは少なくとも4.0wt%;また好ましくは9.0wt%以下、より好ましくは8.0wt%以下、さらにより好ましくは7.0wt%以下、そしてさらにより好ましくは6.0wt%以下で存在する。
【0047】
有機ポリマー基体は、本発明では任意の形態又は形状で使用することができる。有機ポリマー基体の好適な形態例は、固形及び発泡体である。好適な形状例は、熱可塑性材料のフィルム、シート、繊維、粒子、及び織布又は不織布である。有機ポリマー基体は、任意のコンベンショナルな方法、例えばキャスティング、モールディング、及び押し出しによって調製することができる。「有機ポリマー基体」という用語は、別の材料が接触又は付着させられるか、又は接触及び付着させられる、前記有機ポリマーを含むベース材料を意味する。好ましい有機ポリマー基体はポリスチレンである。有機ポリマー基体の形態を記述することに関する「フィルム」という用語は、厚さ0.001センチメートル(cm)〜0.1cmの任意の所望の長さ又は幅の材料を意味する。「シート」という用語は、厚さ0.1センチメートル(cm)〜10cmの任意の所望の長さ又は幅の材料を意味する。好ましくは、基体は、表面多孔質(例えば発泡体)によって特徴づけられる。いくつかの態様の場合、有機ポリマー基体は、有機ポリマー基体と、多層構造の1つ又は2つ以上の層としての、又は1つ又は2つ以上の層から成る構成部分としての、同じか又は異なる有機ポリマー基体、又は任意のその他の好適材料(例えば粘土、タルク、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、又は石によって例示される、木材、紙、金属、布地、又は1種又は2種以上の金属又はメタロイドの酸化物)から成る1つ又は2つ以上の層との積層体を含み、但し、有機ポリマー基体は、本発明の改質型ジオポリマー組成物を塗布することができる露出面を有することを条件とする。
【0048】
好ましくは、ジオポリマーが塗布された有機ポリマー基体は、ジオポリマー被覆された物品を含む。すなわち、いくつかの態様の場合、本発明は、ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体を含む物品である。いくつかの態様の場合、物品は、ジオポリマー被覆された自動車構成部分、建築物構成部分、屋外物品、又はジオポリマーでライニングされたインフラ用部品を含む。より好ましくは、ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体の有機ポリマー基体は、ポリスチレンを含む。このようなジオポリマー被覆された物品の例は、本明細書中に前述した通りである。ジオポリマー被覆された物品は、部分的又は全体的に被覆を有することができる。例えば、ジオポリマー被覆された物品は、内面、外面、又はこれらの組み合わせに被覆を有することができる。好ましいことに、ジオポリマー被覆された物品を含む硬化され、乾燥された改質型ジオポリマー層には亀裂、剥離、又は気泡が発生しない。
【0049】
第1の態様の改質型ジオポリマー組成物は、当業者に知られているような任意の接触法を用いて、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面又はその一部に接触させることができる。好適な接触法の例は、展着(例えばポンピング、機械的な押圧、又は流動による)、噴霧、キャスティング、モールディング、成形、及びスタンピングである。接触工程は、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面又はその一部と物理的に接触した、改質型ジオポリマー前駆体層を提供する。好ましくは、改質型ジオポリマー前駆体層は、厚さ、より好ましくは均一な厚さによって特徴づけされる。改質型ジオポリマー前駆体層はまた、乾燥工程において改質型ジオポリマー前駆体層の水の少なくとも30wt%がそこから除去される乾燥準備のできた露出面として特徴づけられる。好ましくは、改質型ジオポリマー前駆体層の乾燥準備のできた露出面には、硬化工程中に水バリア材料(例えばポリマー膜又はガラス)が一時的に覆われ、次いで乾燥工程中にこの材料が外される。
【0050】
硬化された改質型ジオポリマー前駆体層を乾燥させる(すなわち前駆体層から水を除去する)ことは、好ましくは、蒸発、ストリッピング、凍結乾燥、又はこれらの組み合わせを含む。乾燥は周囲圧力(例えば101kPa)、高い圧力(例えば110kPa超、しかし好ましくは120kPa未満)、又は低い圧力(例えば95kPa未満)で行うことができる。乾燥は、改質型ジオポリマー組成物からいくらかの水を除去するのに適した任意の温度で行うことができる。好ましくは、乾燥温度は100℃以下、より好ましくは75℃未満、さらにより好ましくは50℃未満、そしてさらにより好ましくは40℃未満;そして独立して好ましくは少なくとも−10℃、より好ましくは少なくとも−5℃、さらにより好ましくは少なくとも10℃、そしてさらにより好ましくは少なくとも15℃である。いくつかの態様の場合、乾燥は周囲温度(例えば10℃〜40℃)で行われ、蒸発を含む。
【0051】
好ましくは、水の除去は乾燥温度で行われるものとして特徴づけることができ、乾燥温度は好ましくは、有機ポリマーラテックスを使用する態様では、有機ポリマーラテックスのガラス転移温度を上回る。「乾燥温度」という用語は、水の少なくとも30wt%が硬化された改質型ジオポリマー前駆体層から除去される冷暖の度合いを意味する。乾燥され、硬化された改質型ジオポリマー層を提供するために、第2の態様の方法の乾燥工程中に、硬化された改質型ジオポリマー前駆体層から、好ましくは水の少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、さらにより好ましくは少なくとも70wt%、そしてさらにより好ましくは少なくとも75wt%が除去される。有機ポリマーラテックスが複数のガラス転移温度を呈する場合には、複数のガラス転移温度のうちの少なくとも1つ、好ましくは最も低い温度は、硬化された改質型ジオポリマー前駆体層の乾燥温度を下回る。
【0052】
硬化された改質型ジオポリマー前駆体層を提供するために改質型ジオポリマー前駆体層を硬化させることは、改質型ジオポリマー組成物を硬化させるのに適した任意の温度で行うことができる。「硬化温度」という用語は、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物、又は水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物が、その結合を可能にすることによって硬化される冷暖の度合いを意味する。好ましくは、硬化は、周囲温度である硬化温度で行われ、そしてより好ましくは、20℃〜40℃の硬化温度で行われる。硬化及び乾燥の温度及び圧力は同じでも異なっていてもよい。
【0053】
前述のように、改質型ジオポリマー前駆体層を硬化・乾燥させると、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面、又はその一部と付着するように接触した硬化され、乾燥された改質型ジオポリマー層が提供される。「付着するように接触する」とは、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面、又はその一部に、すべてすぐ下の段落で説明する引張り試験法に従って測定して、30キロパスカル(kPa)以上、より好ましくは49kPa以上、さらにより好ましくは70kPa以上、そしてさらにより好ましくは100kPa以上;そしていくつかの態様では好ましくは約150kPa以下の結合強度で付着することを意味する。改質型ジオポリマー前駆体層が、第1の態様の安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物を含む場合、好ましくは、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物は、高い有機ポリマー付着能力を有するものとして特徴づけることができる。すなわち、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物は、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面と接触した状態で硬化・乾燥させられた後、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面上に、有機ポリマーに高度に付着する硬化され、乾燥されたジオポリマー有機ポリマーラテックス層を提供することになり、高い有機ポリマー付着能力を有する硬化され、乾燥されたジオポリマー有機ポリマーラテックス層は、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面、又はその一部に、すぐ下の段落で説明する引張り試験法に従って測定して、50キロパスカル(kPa)以上の結合強度で付着するものとして特徴づけることができる。
【0054】
引張り試験法:
工程(a):硬化され、乾燥された三層試験試料:
それぞれの試料片の寸法が2インチ(5.1センチメートル(cm)x2インチ(5.1cm)平方x1インチ(2.54cm)高さである有機ポリマー基体(例えばプロスチレンフォーム)試料2片を得た。試料片のそれぞれ1つの第1の4平方インチ(26平方cm)の面を別々に試験ジオポリマー組成物で塗布し、そして得られたジオポリマー層を手で押し合わせることにより、下側有機ポリマー基体層と、真ん中のジオポリマー層と、上側有機ポリマー基体層とを三層積層複合前駆体試料を提供する。前駆体試料のエッジから余剰の試験ジオポリマー組成物を拭い取る。これを4回繰り返すことにより全部で5つの前駆体試料を提供する。前駆体試料をプラスチック・ラップ(例えばポリ塩化ビニリデンのラップ)で別々にラップするか、又は気密な蓋で密閉された部分充填水浴内に前駆体試料を入れ、そして得られたプラスチックでラッピングされた前駆体試料、又は部分充填水浴内に密閉された前駆体試料を45℃の炉内に一晩(例えば12時間〜24時間)にわたって入れることにより、ジオポリマーを硬化させる(すなわちジオポリマーをハードニングする)。{或いは、特定の環境下で望ましいことがあるように、最低2日間にわたって、好ましくは約7日間にわたって、開いた(すなわちカバーされていない)環境内で(すなわち、プラスチック・ラップ内に前駆体試料をラッピングすることなしに、又は前駆体試料を密閉水浴内に入れることなしに)、周囲温度(約20℃)で前駆体試料を硬化・乾燥させる}。結果として生じた硬化された前駆体試料を炉から取り出してプラスチック・ラップを取り外し、又は部分充填水浴から試料を取り出し、そしてラッピングされていない硬化された前駆体試料を室温で一定の重量になるまで乾かしておくことにより、硬化され、乾燥された三層試験試料を提供する。
【0055】
工程(b):五層最終試験試料の調製
工程(a)の硬化され、乾燥された三層試験試料のそれぞれに対して、二剤エポキシ(3M Scotch-Weldエポキシ接着剤2216 B/A)を、下側有機ポリマー基体層の外(底)面、及び上側有機ポリマー基体層の外(上)面に塗布する。硬化され、乾燥された試験試料のそれぞれのエポキシ含有外面を、2枚の2インチ(2.54cm)x2インチ(2.54cm)鋼板のうちの異なる1枚に接触させる。エポキシを少なくとも24時間にわたって乾かしておくことにより、対向する下側及び上側の鋼板層を有する五層最終試験試料を提供する。
【0056】
工程(c):引張り強度試験
工程(b)の五層最終試験試料の引張り強度を、Instron (モデル4204又は5585)機器で測定する。1分当たり0.05インチ(1分当たり0.13cm)のクロスヘッド速度でプロスチレンフォームの引張り試験に特に有用な、ASTM D 1623に記載された試験パラメータを使用する。
【0057】
比較例(本発明でない)
本発明の或る態様と対照を成すものとして比較例を提供する。これらは、従来技術又は本発明以外のものの代表として解釈されるものではない。
【0058】
比較例A1a〜Ald:非改質型ジオポリマー組成物(有機ポリマーラックス及びラテックス安定剤を欠いている)の調製(含水率は非改質型ジオポリマー組成物の総重量を基準としている)
【0059】
Ala:成分である、61.9gの水と、19.65gの固形水酸化ナトリウムと、18.45gのフュームドシリカとを混合することにより、ケイ酸ナトリウムを調製する。ケイ酸ナトリウムの10gポーションに、4gの焼成カオリン粘土を添加し、得られた混合物を混合することにより、比較例Alaのジオポリマー組成物を提供する。含水率47.3wt%及びSi/Alモル比1.85である。
【0060】
Alb:次の成分及び量:56.26gの水と、21.47gのNaOHと、22.26gのフュームドシリカと、65.82gの焼成カオリンとを用いることを除いて比較例laの一般手順を繰り返すことにより、比較例Albのジオポリマー組成物を提供する(モル比:Si/Al=1625;Na/Al=0.899)、及び含水率36.8wt%である。
【0061】
Alc:次の成分及び量:52.78gの水と、20.16gのNaOHと、27.06gのフュームドシリカと、55.56gの焼成カオリンとを用いることを除いて比較例laの一般手順を繰り返すことにより、比較例Alcのジオポリマー組成物を提供する(モル比:Si/Al=1.9;Na/Al=1.0、及び含水率36.8wt%である。
【0062】
Ald:次の成分及び量:52.31gの水と、23.41gのNaOHと、24.27gのフュームドシリカと、71.76gの焼成カオリンとを用いることを除いて比較例laの一般手順を繰り返すことにより、比較例Aldのジオポリマー組成物を提供する(モル比:Si/Al=1.625;Na/Al=0.899、及び含水率33.5wt%である。
【0063】
比較例B1a〜B1d:引張り試験法のための五層最終試験試料
B1a〜B1d:それぞれ、前述の引張り試験法の工程(a)及び(b)の調製を用いて、そして試験ジオポリマー組成物の代わりに比較例A1a〜A1dのうちの1つの非改質型ジオポリマーを使用して、それぞれの非改質型ジオポリマーによって、比較例B1a〜B1dの五層最終試験試験試料を調製する。前述の引張り試験法の工程(c)に従って五層最終試験試料の平均付着強度を測定した。引張り試験結果を後で表1に記録する。
【0064】
本発明の例
本発明の非制限的な例を下記のように説明する。いくつかの態様の場合、本発明は例において説明した通りである。
【0065】
例A1:6.5wt%水性ポリ(スチレン−ブタジエン)ラテックスを含有する安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物
52.0gの水と、19.65gのNaOHと、18.45gのシリカと、40gの焼成カオリンとを用いることを除いて比較例Alaの一般手順を繰り返す。非改質型ジオポリマー組成物に、所定の重量(19.6g)のLatex DL 460 {米国ミシガン州Midland在Dow Chemical Companyから商業的に入手可能なPolyglycol-36(PG-36), 安定化水性(スチレン−ブタジエン)ラテックス、Tg=8℃}を添加することにより、両方とも、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物の総重量を基準として、6.5wt%の水性ポリ(スチレン−ブタジエン)ラテックスと、44.2wt%の水とを含有し、Si/Alモル比が1.85である改質型ジオポリマー組成物を提供する。
【0066】
例A2〜A4:それぞれ16.7wt%、20wt%、及び23.1wt%の水性ポリ(スチレン−ブタジエン)ラテックスを含有し、含水率がそれぞれ39.5wt%、37.9wt%、及び36.4wt%であり、そしてそれぞれのSi/Alモル比が1.85である、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物
【0067】
(i)33.9gの水、19.65gのNaOH,18.45gのシリカ、40gの焼成カオリン、(ii)26.9gの水、19.65gのNaOH,18.45gのシリカ、40gの焼成カオリン、又は(iii)19.9gの水、19.65gのNaOH,18.45gのシリカ、40gの焼成カオリンで3回、比較例A1aの一般手順を繰り返すことにより、それぞれの非改質型ジオポリマー組成物を提供する。それぞれの非改質型ジオポリマー組成物、及びより重い量(それぞれ56.0g、70.0g、及び84.0g)のLatex DL 460(上記)を用いて例A1の一般手順を繰り返すことにより、代わりに、すべて安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物の総重量を基準として、それぞれ16.7wt%、20wt%、及び23.1wt%の水性ポリ(スチレン−ブタジエン)ラテックスを含有し、含水率がそれぞれ39.5wt%、37.9wt%、及び36.4wt%であり、そしてそれぞれのSi/Alモル比が1.85である、例A2〜A4の安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物を提供する。
【0068】
例A5a〜A5c:それぞれ4.8wt%、9.1wt%、及び17wt%のポリ(ビニルアセテート/エチレン)ラテックス粉末を含有し;含水率が36.8wt%であり;そしてSi/Alモル比=1.625である安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物。調製法は後で説明する。
【0069】
例A6a〜A6d:それぞれ4.8wt%、9.1wt%、23wt%、及び33wt%のポリ(スチレン−ブタジエン)ラテックス粉末を含有し;含水率が36.8wt%であり;そしてSi/Alモル比=1.625である安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物。調製法は後で説明する。
【0070】
例A7a〜A7d:それぞれ4.8wt%、9.1wt%、17wt%、及び23wt%のポリアクリル酸ラテックス粉末を含有し;含水率が36.8wt%であり;そしてSi/Alモル比=1.625である安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物。調製法は後で説明する。
【0071】
例A5a〜A7dの安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物の調製
(i)比較例A1aの非改質型ジオポリマー組成物の代わりに、比較例A1bの非改質型ジオポリマー組成物を使用すること;そして(ii) Latex DL 460の代わりに、Tg=3℃の適切な重量のポリ(ビニルアセテート/エチレン)ラテックス粉末(例A5a〜A5d);又は、Tg=8℃のポリ(スチレン−ブタジエン)ラテックス粉末(例A6a〜A6d);又は、Tg=10℃のポリアクリル酸ラテックス粉末(例A7a〜A7d)を使用することを除いて、例A1の一般手順を別々に繰り返す。これらの調製により、例A5〜A5cのそれぞれ4.8wt%、9.1wt%、及び17wt%のポリ(ビニルアセテート/エチレン)ラテックス粉末を含有する安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物;例A6a〜A6dのそれぞれ4.8wt%、9.1wt%、23wt%、及び33wt%のポリ(スチレン−ブタジエン)ラテックス粉末を含有する安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物;及び、例A7a〜A7dのそれぞれ4.8wt%、9.1wt%、17wt%、及び23wt%のポリアクリル酸ラテックス粉末を含有する安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物を提供し、そして例A5a〜A7dの安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物のすべての含水率は36.8wt%;Si/Alモル比=1.625である。
【0072】
例A8:含水率33.5wt%及びSi/Alモル比=1.9の水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物
48.8gの水、21.9gのNaOH,29.3gのシリカを有する含水率が低減されたケイ酸ナトリウム溶液を使用し、含水率が低減されたケイ酸ナトリウム溶液を60.2gの焼成カオリンと混合することにより、比較例A1cの非改質ジオポリマー組成物の含水率と比較して含水率が低減された水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物を調製し、これにより、含水率が33.5wt%でありSi/Alモル比が1.9である例A8の水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物である、高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物を提供する。
【0073】
例B1〜B4:それぞれ、例A1〜A4のいずれか1つの安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物を含む五層最終試験試料。調製及び試験は後で説明する。
【0074】
例B5a〜B5c;B6a〜B6d;及びB7a〜B7d:それぞれ、例A5a〜A5c;A6a〜A6d;A7a〜A7dのいずれか1つの安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物を含む五層最終試験試料。調製及び試験は後で説明する。
【0075】
例B8:例A8の安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物を含む五層最終試験試料。調製及び試験は後で説明する。
【0076】
例B1〜B8の五層最終試験試料の調製
試験ジオポリマー組成物の代わりに、それぞれ例A1〜A4、B5a〜B5c;B6a〜B6d;及びB7a〜B7d、又はB8の安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物のそれぞれに対して、引張り試験法の工程(a)及び(b)の手順を4回繰り返す。4つの五層最終試験試料のそれぞれを用いて引張り試験法の前述の工程(c)に従って平均付着強度を測定する。改質型ジオポリマー組成物の改質のタイプ、重量パーセント、及び引張り試験結果を下記表1に記録する。
【0077】
【表1】

【0078】
例によって示されるように、本発明の安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物は、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面に塗布することができ、そして硬化させられ乾燥させられた後、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面上に、付着性の、そしていくつかの事例では高度に付着性の被覆層を形成する。対照的に、非改質型ジオポリマーから成る、ひいては有機ポリマーラテックスを欠いているか、又は低減された含水率と高められたSi/Al比との組み合わせを有していない組成物は、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面に、全く付着しないか、又は弱くしか付着しない。
【0079】
本発明を好ましい態様に従って説明してきたが、本発明はこの開示内容の思想及び範囲の中で改変することができる。従って本出願は、本明細書中に開示された一般原理を用いた、本発明のいかなる変更形、使用、又は適応形にも範囲が及ぶものとする。さらに、本出願は、本発明が関連する技術分野において知られた又は通例の実施の範囲内に入るような、そして請求項の範囲内に含まれるような、本開示内容からの逸脱にも範囲が及ぶものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ジオポリマー及び有機ポリマーラテックスの混合物を含む安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物、又は(ii)高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物を含んでなる改質型ジオポリマー組成物であって、
該高い有機ポリマー付着能力とは、該高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物が、硬化させられ、乾燥させられた後、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面(例えば、押し出しポリスチレンフォーム基体の表面)に、結合強度50キロパスカル(kPa)以上で結合されることができるとして特徴づけることができることを意味する、改質型ジオポリマー組成物。
【請求項2】
ジオポリマー及び有機ポリマーラテックスの均一な混合物を含む、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物である、改質型ジオポリマー組成物。
【請求項3】
該安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物が、水和ポリシアル酸塩と、1.0重量パーセント〜50重量パーセントの有機ポリマーラテックスとの第1混合物を含むか、又は水和ポリシアル酸塩と、1.0重量パーセント〜50重量パーセントの有機ポリマーラテックスとの第1混合物を混合させることにより形成され、該有機ポリマーラテックスの重量パーセントが該第1混合物の総重量を基準とする、請求項2に記載の改質型ジオポリマー組成物。
【請求項4】
該水和ポリシアル酸塩が、実験式(G):
(M)y[−(−SiO2z−AlO2)]x・wH2O (G)
(上式中、それぞれのMは独立して元素周期表の1族のカチオンであり;xは2又は3以上の整数であって、ポリシアル酸塩反復単位の数を表し;yは、xに対するyの比がゼロより大きくなる(y/x>0)ように選択される整数であり;zは、1〜35の有理数又は無理数であり;そしてwは、xに対するwの比が1ポリシアル酸塩反復単位当たりの水のモル比であるような有理数又は無理数を表す)
を有する、請求項3に記載の改質型ジオポリマー組成物。
【請求項5】
該第1の混合物を形成するために使用される該有機ポリマーラテックスが、水性有機ポリマーラテックスと0.05重量パーセント〜10重量パーセントのラテックス安定剤とを含む第2混合物を含み、該ラテックス安定剤の重量パーセントが該第2混合物の総重量を基準とする、請求項3又は4に記載の改質型ジオポリマー組成物。
【請求項6】
該水性有機ポリマーラテックスが、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、又はポリ(スチレン−ブタジエン)の水性分散体を含む、請求項5に記載の改質型ジオポリマー組成物。
【請求項7】
第1混合物を形成するために使用される該有機ポリマーラテックスが、有機ポリマーラテックス粉末を含む、請求項3又は4に記載の改質型ジオポリマー組成物。
【請求項8】
該有機ポリマーラテックス粉末が、アクリル酸モノマーから調製されて該アクリル酸モノマーの残基を含むホモポリマー、又はポリ(スチレンブタジエン)コポリマーを含む、請求項7に記載の改質型ジオポリマー組成物。
【請求項9】
該安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物が、高い有機ポリマー付着能力を有するとして特徴づけることができ、高い有機ポリマー付着能力を有するとは、硬化させられ、乾燥させられた後、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面と接触する該安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物が、該有機ポリマー基体の該被覆準備ができた表面上に、有機ポリマーに高度に付着する硬化され、乾燥されたジオポリマー−有機ポリマーラテックス層を生成することを意味し、該有機ポリマーに高度に付着する硬化され、乾燥されたジオポリマー−有機ポリマーラテックス層は、結合強度50キロパスカル(kPa)以上で、該有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面又はその一部に付着するものとして特徴づけることができる、請求項2〜8のいずれか1項に記載の改質型ジオポリマー組成物。
【請求項10】
高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物である改質型ジオポリマー組成物であって、
高い有機ポリマー付着能力を有するとは、硬化させられ乾燥させられた後、有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面と接触する該高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物が、該有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面上に、有機ポリマーに高度に付着する硬化され、乾燥された改質型ジオポリマー層を生成することを意味し、該有機ポリマーに高度に付着する硬化され、乾燥された改質型ジオポリマー層は、結合強度50キロパスカル(kPa)以上で、該有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面又はその一部に付着するものとして特徴づけることができる、改質型ジオポリマー組成物。
【請求項11】
該高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物が、水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物であり、該水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物が、該水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマーの総重量を基準として、36.0重量パーセント未満の水を有し、そして1.70以上のケイ素/アルミニウムのモル比を有している、請求項10に記載の改質型ジオポリマー組成物。
【請求項12】
該水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物が、実験式(G):
(M)y[−(−SiO2z−AlO2)]x・wH2O (G)
(上式中、それぞれのMは独立して元素周期表の1族のカチオンであり;xは2又は3以上の整数であって、ポリシアル酸塩反復単位の数を表し;yは、xに対するyの比がゼロより大きくなる(y/x>0)ように選択される整数であり;zは、ケイ素/アルミニウムのモル比であって、1.70〜35の有理数又は無理数であり;そしてwは、xに対するwの比が1ポリシアル酸塩反復単位当たりの水のモル比であるような有理数又は無理数を表す)を有する水和ポリシアル酸塩を含む、請求項11に記載の改質型ジオポリマー組成物。
【請求項13】
(a)zが1.70〜3であるか、又は(b)zが1.9〜3であり、そして該水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマー組成物が、該水濃度改質及びSi/Alモル比改質型ジオポリマーの総重量を基準として、34.0重量パーセント未満の水を有している、請求項12に記載の改質型ジオポリマー組成物。
【請求項14】
有機ポリマー基体と付着するように接触した乾燥された改質型ジオポリマー層を含むジオポリマー被覆された有機ポリマー基体を調製する方法であって、付着するように接触することが、25キロパスカル(kPa)以上の結合強度を有するとして特徴づけることができ、該方法が、硬化された改質型ジオポリマーの前駆体層を乾燥させることの作用として、該ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体を形成することを含む、ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体を調製する方法。
【請求項15】
硬化された改質型ジオポリマー前駆体層を提供するために、改質型ジオポリマー前駆体層を硬化させることをさらに含み、該硬化が、該乾燥と事実上同時に、又は該乾燥に実質的に先んじて行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該方法が:
(a) 被覆準備ができた表面を有する該有機ポリマー基体を用意する工程;
(b) 改質型ジオポリマー組成物を、該有機ポリマー基体の該被覆準備ができた表面、又はその一部に接触させることにより、該被覆準備ができた表面又はその一部と物理的に接触した改質型ジオポリマー前駆体層を提供する工程、
該改質型ジオポリマー組成物は、(i)安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物;又は(ii)高い有機ポリマー付着能力を有する改質型ジオポリマー組成物である;
(c) 該改質型ジオポリマー前駆体層を硬化させることにより、該硬化された改質型ジオポリマー前駆体層を提供する工程;そして
(d) 少なくとも25重量パーセントの水を除去するように、該硬化された改質型ジオポリマー前駆体層を乾燥させることにより、該ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体を提供する工程
を含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
該硬化され、乾燥された改質型ジオポリマー層が、硬化され、乾燥されたジオポリマー−有機ポリマーラテックス層を含み、該硬化された改質型ジオポリマー前駆体層が、硬化されたジオポリマー−有機ポリマーラテックス前駆体層を含み、そして改質型ジオポリマー前駆体層が、ジオポリマー−有機ポリマーラテックス前駆体層を含み、
該ジオポリマー−有機ポリマーラテックス前駆体層が、水和ポリシアル酸塩と、1.0重量パーセント〜50重量パーセントの有機ポリマーラテックスとの第1混合物を含むか、又は水和ポリシアル酸塩と、1.0重量パーセント〜50重量パーセントの有機ポリマーラテックスとの第1混合物を混合させることにより形成された、安定化させたジオポリマー−有機ポリマーラテックス組成物から形成され、該有機ポリマーラテックスの重量パーセントは、該第1混合物の総重量を基準とし、そして
該有機ポリマーラテックスは、ガラス転移温度を有するものとして特徴づけることができ、そして該乾燥工程が、乾燥温度を有するものとして特徴づけることができ、該乾燥工程の乾燥温度は、該有機ポリマーラテックスのガラス転移温度よりも高く、該硬化され、乾燥されたジオポリマー−有機ポリマーラテックス層が、該有機ポリマー基体の該被覆準備ができた表面又はその一部に、引張り試験法で試験して結合強度25キロパスカル(kPa)以上で付着しているとして特徴づけられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該有機ポリマー基体がポリスチレンを含む、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
有機ポリマー基体の被覆準備ができた表面又はその一部と付着するように接触した乾燥された改質型ジオポリマー層を含むジオポリマー被覆された有機ポリマー基体であって、該付着するように接触することが、25キロパスカル(kPa)以上の結合強度を有するものとして特徴づけることができる、ジオポリマー被覆された有機ポリマー基体。
【請求項20】
請求項19に記載のジオポリマー被覆された有機ポリマー基体を含む物品。

【公表番号】特表2012−528066(P2012−528066A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513129(P2012−513129)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/035383
【国際公開番号】WO2010/138351
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】