説明

放射ヘッド設置高さ調整機構及び調整治具

【課題】放射ヘッドをねじ込み固定した状態で伸縮継手により高さ調整を簡単且つ正確に可能とする。
【解決手段】天井裏側に立ち下げ配置された配管10に継手本体18をねじ込み固定し、継手本体18に継手可動体20をねじ込み、軸方向に移動して長さを調整する。継手本体18に対し継手可動体20を位置調整した状態で止めねじ24により固定する。継手可動体20には放射ヘッド22がねじ込み固定される。継手本体18および継手可動体20の外径に対し、放射ヘッド22の外径を同一又はそれ以下として、放射ヘッド22の下端から継手本体18のナット面28に調整治具52の嵌合穴55を嵌め込み可能な構造とし、放射ヘッド22をねじ込み固定した状態で継手本体18を調整治具52により回して配管10にねじ込み固定し、続いて継手可動体20を調整治具52により回して放射ヘッド22の配置高さを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水配管に接続されて消火設備あるいは水膜による防火区画形成設備等で使用する放射ヘッドの天井面側に対する取付け位置を調整可能な放射ヘッド設置高さ調整機構及び調整治具造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井付近に配置されたスプリンクラー設備、水噴霧設備や水膜による防火区画形成設備用などの放射ヘッドから水を散布する設備にあっては、天井側に敷設された配管の先端に放射ヘッドを取り付けている(特許文献1)。
【0003】
このような天井付近に対する放射ヘッドの取り付けは、例えば天井側に設けた角バー等に取り付けられるが、放射ヘッドから理想的な散水分布や消火・防火効果が得られるように天井面と放射ヘッドとの位置関係を予め決められた状態に設定することが必要となる。
【0004】
しかしながら、天井と角バーなどの放射ヘッド固定部材との距離が施設毎に異なっており、放射ヘッドが理想とする位置にくるように配管を取り付け調整する作業が煩雑であるという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するため、従来、例えば図11に示す伸縮継手が用いられている(特許文献2)。図11において、天井裏に敷設した配管101に伸縮継手130を介して放射ヘッド103が取付けられる。伸縮継手130は配管101にねじ込み固定した外筒134の中に内筒137を挿入してねじ込み、内筒137を回すことで放射ヘッド103の天井板107の取付穴に対する高さを調整できるようにしている。
【0006】
伸縮継手101に対するヘッド103の取付けは、図12に示すように、伸縮継手101の内筒137をバイス109で保持し、放射ヘッド103に嵌め込んだボックススパナ105をラチェット106を用いて回すことにより、放射ヘッド103を伸縮継手101の内筒137にねじ込み固定している。
【0007】
続いてバイス109による保持を解除し、ラチェット106及びボックススパナ105により内筒137を回して高さを調整し、図11に示す放射ヘッド103の取付け状態としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−182772号公報
【特許文献2】特開昭62−074380号公報
【特許文献3】実開昭56−125262号公報
【特許文献4】実開昭61−140285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の伸縮継手を用いた放射ヘッドの高さ調整にあっては、伸縮継手130に放射ヘッド103を取付け固定する場合、天井裏側に位置する伸縮継手130の内筒137をバイス109等の工具で押さえ、この状態で天井表側からラチェット106を使用して放射ヘッド103側を回してねじ込み固定する作業が必要であり、作業員2名による作業となり、手間と時間がかかる問題がある。
【0010】
また配管101に対する伸縮継手130の取付け作業も、天井板117を取付けた状態にあっては、天井裏面側の狭い場所で行うこととなり、天井表面側からはできないことから手間と時間がかかる問題がある。
【0011】
また、近年の建物にあっては天井面が曲面に形成されて、継手部分が天井のコンクリート材等に埋設されて天井裏が存在しない物件もあり、その場合には上述した取付方法を採用できず、放射ヘッドの高さ調整を伴う取付作業を確実に行うことが困難である。
【0012】
本発明は、天井側に敷設された配管に対する伸縮継手を用いた放射ヘッドの取付けと高さ調整の作業を簡単且つ容易に可能とする放射ヘッド設置高さ調整機構及び調整治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(放射ヘッド設置高さ調整機構)
本発明は、放射ヘッド設置高さ調整機構に於いて、
天井側に配置された配管に固定され、外側に多角面を形成した継手本体と、
継手本体の端部からねじ込まれて軸方向に移動して長さを調整可能とし、外周に継手本体の多角面に対応した多角面を形成するとともに、他端に放射ヘッドが固定される継手可動体と、
を備え、継手本体および継手可動体の外径に対し、放射ヘッドの外径を略同一又はそれ以下として、放射ヘッド下端から継手本体の多角面に調整治具の嵌合穴を嵌め込み可能な構造としたことを特徴とする。
【0014】
ここで、継手本体は、両端に貫通する通し穴の一端外側に前記配管に接続するねじ部を形成し、通し穴の他端から調整ネジ穴及びシリンダ穴を形成し、更に外側に多角ナット面を形成し、
継手可動体は、両端に貫通する通し穴を形成した円筒部に継手本体のシリンダ穴に位置して摺動するピストン部と継手本体のねじ穴にねじ込まれて軸方向の長さを調整する調整ねじ部を形成し、更に円筒部の端部に継手本体の多角ナット面と略同一形状のナット部を形成した。
【0015】
(調整治具)
本発明は、天井側に配置された配管に固定され、外側に多角面を形成した継手本体と、
継手本体の端部からねじ込まれ、外側に継手本体の多角面に対応した多角面を形成し、軸方向に移動して長さを調整する継手可動体と、
継手可動体の端部にねじ込み固定される放射ヘッドと、
を備え、継手本体および継手可動体の外径に対し、放射ヘッドの外径を同一又はそれ以下とした放射ヘッド設置高さ調整機構の調整治具に於いて、
治具本体と、
治具本体の一端に開口して前記放射ヘッド下端から継手本体の多角面に嵌め込み可能な嵌合穴と、
を設けたことを特徴とする。
【0016】
ここで、継手本体は、両端に貫通する通し穴の一端外側に配管に接続するねじ部を形成し、通し穴の他端から調整ネジ穴及びシリンダ穴を形成し、更に外側に多角ナット面を形成し、
継手可動体は、両端に貫通する通し穴を形成した円筒部に継手本体のシリンダ穴に位置して摺動するピストン部と継手本体のねじ穴にねじ込まれて軸方向の長さを調整する調整ねじ部を形成し、更に円筒部の端部に継手本体の多角ナット面と略同一形状のナット部を形成した。
【0017】
調整治具の嵌合穴は、継手本体に対し継手可動体を最大長に調整した状態で継手本体のナット面にかかるように嵌め込まれる深さの穴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、調整治具の嵌合穴を継手可動体のナット部又はその先の継手本体のナット面まで嵌め込むことができ、継手本体及び継手可動体を配管に調整治具を用いてねじ込み固定及び高さ調整することができ、作業員が一人でも作業できると共に作業スペースの制約がないことから、簡単且つ容易に取付け作業を行うことができる。
【0019】
また配管に対する継手本体、継手可動体及び放射ヘッドの組立セットの取付け固定後に、調整治具の嵌合穴を継手可動体のナット部との嵌合位置に下げることで、継手本体に対し継手可動体を放射ヘッドと共に回して放射ヘッドの設置位置の高さを簡単且つ正確に調整できる。
【0020】
また配管に継手本体を先に固定した状態で、放射ヘッドを固定した継手可動体を、調整治具を使用して継手本体にねじ込みながら放射ヘッドの高さを調整しても良く、同様に、放射ヘッドの設置位置の高さを簡単且つ正確に調整できる
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による放射ヘッド設置高さ調整機構の実施形態を示した説明図
【図2】図1に示した放射ヘッド設置高さ調整機構の組立分解状態を示した説明図
【図3】図1の継手本体と継手体の組立セットを取り出して示した説明図
【図4】図3の継手本体を知り出して示した説明図
【図5】図3の継手可動体を知り出して示した説明図
【図6】図1の放射ヘッドを知り出して示した説明図
【図7】図3の継手本体と継手体の組立セットを断面で示した説明図
【図8】配管に対し調整軸を使用して継手本体、継手可動体及び放射ヘッドの組立セットをねじ込み固定する作業を示した説明図
【図9】図8で使用している本発明による調整治具を取り出して示した説明図
【図10】配管に継手本体側をねじ込み固定した後に行う高さ調整を示した説明図
【図11】従来の伸縮継手を用いたスプリンクラーヘッドの取付構造を示した説明図
【図12】従来の伸縮継手に対するスプリンクラーヘッドの取付作業を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明による放射ヘッド設置高さ調整機構の実施形態を示した説明図である。図1において、天井板12には放射ヘッド22を取り付ける取付穴14が形成され、取付穴14に相対した天井裏には図示しない角バー等に取り付け固定された配管10が敷設されている。
【0023】
配管10に対しては伸縮継手として機能する放射ヘッド設置高さ調整機構(以下「高さ調整機構」という)16を介して放射ヘッド22が取り付けられている。高さ調整機構16は継手本体(外筒)18と継手可動体(内筒)20で構成され、継手本体18内部に対し継手可動体20はねじ込まれており、継手可動体20を回すことにより放射ヘッド22の設置高さを理想の散水分布が得られる位置に調整することができる。
【0024】
継手本体18の下方には内部の継手可動体20側に伸びた止めねじ24を備え、継手可動体20を下降するように回しすぎて継手本体18から離脱するのを防いでいる。ここで放射ヘッド22はスプリンクラーヘッドや水噴霧ヘッドや防火区画形成設備用の水膜形成ヘッドなどが用いられる。高さ調整機構16の配管10に対するねじ込み固定および高さ調整は後述する本発明の調整治具を使用して行われる。
【0025】
図2は図1に示した放射ヘッド設置高さ調整機構の組立分解状態を示した説明図であり、図2(A)に外観を示し、図2(B)に断面を示しており、継手本体18、継手可動体20及び放射ヘッド22で構成されている。
【0026】
図3は図1の継手本体と継手可動体の組立セットを取り出して示した説明図であり、図3(A)に平面を、図3(B)に正面を、図3(C)に底面を示している。継手本体18は、上部に接続ねじ部26を形成し、続いて六角形のナット面(多角面)28を形成している。継手可動体20は継手本体18の下側から挿入した後にねじ込まれており、継手本体18のナット面28に対応したナット部30を形成している。
【0027】
図4は図3の継手本体を取り出して外観と断面で示した説明図であり、図4(A)に外観を、図4(B)に断面を示している。継手本体18は、上下に貫通する通し穴を形成しており、上端に流入口32を形成し、その外側に配管10に接続する接続ねじ部26を形成している。流入口32内部にはストレーナの一端を挿入して固定できるようにしてあり、流入口32の内径とストレーナの固定部の外径がほぼ同じにしている。ストレーナとしては、例えば開口した一端を流入口32に取付け、閉口した他端を配管10内部に伸びる屈曲性のある軸方向に長い筒状のストレーナを使用する。流入口32に続いては段付き穴としてシリンダ穴34が形成され、続いて調整ネジ穴36を形成して下端に開口している。調整ねじ穴36の下部側面には横方向にねじ穴25が形成され、そこにストッパ部材として止めねじ24をねじ込んでいる。
【0028】
図5は図3の継手可動体を取り出して外観と断面で示した説明図であり、図5(A)に外観を、図5(B)に断面を示している。継手可動体20は、上下に貫通する通し穴38を形成した円筒部の一端外側に図4に示した継手本体18のシリンダ穴34に位置して摺動するピストン部40を形成し、ピストン部40の環状溝にはOリングなどのシール42を配置している。
【0029】
継手可動体20の略中央には図4に示した継手本体18の調整ねじ穴36にねじ込まれて軸方向の長さを調整する調整ねじ部44を鍔状に形成し、更に下部に図4に示した継手本体18のナット面28に対応してヘッド接続ねじ穴46を持つナット部30を形成している。図4の止めねじ24を内部にねじ込むと、止めねじ24の内側端部は図5の調整ねじ部44の鍔状下面に接触できるよう位置することで、継手可動体20が継手本体18から不用意の離脱を防止している。
【0030】
図6は図1の放射ヘッドを取り出して示した説明図であり、円筒状のヘッド本体48のの下部が開口し、消火用水等が放射される。放射ヘッド内部には火災による熱気流を受けて所定温度に達した時に分解して流路を開く感熱作動機構が内蔵された閉鎖型の放射ヘッドや、内蔵されない開放型の放射ヘッドでもよい。ヘッド本体48の上部にはナット面50が形成され、その上に接続ねじ部51を形成している。
【0031】
図1に示した本発明の高さ調整機構16で重要なことは、図4の継手本体18の外径をD1、図5の継手可動体20の外径をD2、図6の放射ヘッド22の外径をD3とした場合、継手本体18と継手可動体20の外径D1,D2は略同一とし、継手本体18と継手可動体20の外径D1,D2に対し、放射ヘッド22の周径D3を略同一又はそれ以下、即ち
D1=D2≧D3 (1)
として、放射ヘッド22の下端から継手可動体20及び継手本体18のナット面に、後述する本発明による調整治具の嵌合穴を嵌め込み可能な構造としたことにある。なお、外形D1,D2,D3は六角ナット面の頂角位置を通る円の径を意味する。D1,D2,D3の相当する各ナット面は六角形等の同じ形状であることが好ましい。
【0032】
図7は図3の継手本体と継手可動体の組立セットを断面で示した説明図であり、図7(A)に最小調整高さの調整状態を、図7(B)に最大調整高さの調整状態を示している。
【0033】
図7において、継手可動体20は、継手本体18の下端からピストン部40を挿入し、続いて調整ねじ穴36に調整ねじ部38をねじ込んでいる。図7(A)の最小高さの調整状態では、ピストン部40をシリンダ穴34の上側段部に当接する位置付近まで調整ねじ部44を調整ねじ穴36にねじ込んでいる。
【0034】
また図7(B)の最大高さの調整状態では、継手可動体20の調整ねじ部44の下側が継手本体18にねじ込んでいる止めねじ24に当る位置まで緩めている。
【0035】
ここで継手本体18のナット面28下端と継手可動体20のナット部30の上端の間隔を調整高さΔHとすると、図7(A)の状態では調整高さΔHは0mmで最小となり、図7(B)の状態では調整高さΔHは最大となり、例えば最大高さは例えば20〜30mm程度の値となるように各部の寸法を決めている。
【0036】
また、止めねじ24は、継手可動体20に先端を当接させた状態および少し緩めた状態で、外側の頭部がねじ穴25の中に入っていて外部に飛び出すことのない長さとしている。このように止めねじ24の頭部が外に飛び出さないようにしていることで、後述する調整治具の下側からの嵌め込みを止めねじ24が妨げないようにしている。
【0037】
更に、継手可動体20は先端にシール42を備えたピストン部40を形成し、その後方に調整ねじ部44を形成したことで、継手本体18に挿入してねじ込んだ場合、先端のピストン部40に設けたシール42により消火用水に対する密閉が行われ、調整ねじ部44と調整ねじ穴36は消火用水に接触することがなく、消火用水によ腐食結果の問題は起きない。
【0038】
図8は、配管に対し本発明の調整治具を使用して継手本体、継手可動体及び放射ヘッドの組立セットをねじ込み固定する作業を示した説明図である。図8において、天井板12の裏面に配置された配管10に対する高さ調整機構16を用いた放射ヘッド22の取り付けは、まず、継手本体18、継手可動体20及び放射ヘッド22の組立セットを準備する。
【0039】
即ち、図5に示した継手可動体20のヘッド接続ねじ穴46に、図6に示した放射ヘッド22の接続ねじ部51をシールテープを巻いた状態でねじ込み固定し、継手可動体20のナット部30のナット面に、面一となるように放射ヘッド22のナット面50を位置合せする。
【0040】
続いて放射ヘッド22をねじ込み固定した継手可動体20を図4に示した継手本体18の下側から嵌め入れた後にねじ込み、例えば図7(B)に示した調整高さΔHを最大とした位置とし、止めねじ24はねじ穴25から飛び出さない位置に緩めておく。
【0041】
続いて継手本体18、継手可動体20及び放射ヘッド22の組立セットを調整治具52の嵌合穴55の中に嵌め込み、嵌合穴55が放射ヘッド22のナット面50、継手可動体20のナット面、更に継手本体18のナット面28の下部に嵌り込んだ状態で、天井表側から天井板12の取付穴14を通して天井裏側に配置している配管10のねじ穴11に押し当てて位置合せし、調整治具52の下部の工具着脱穴58に市販のラチェットレンチ60を装着してねじ込み操作し、調整治具52により上部の継手本体18を回すことで配管10のねじ穴11にねじ込み固定する作業を行う。
【0042】
このように本発明の実施形態にあっては、天井裏面側に敷設している配管10に対する継手本体18、継手可動体20及び放射ヘッド22の組立セットの取付け作業を、本発明による調整治具を用いて天井表側から行うことができ、作業員1人の作業として効率良く取付けできる。
【0043】
図9は図8の取付け作業で使用している調整治具を取り出して示した説明図であり、図9(A)に平面を、図9(B)に軸方向断面を、図9(C)に底面を示している。本実施形態の調整治具52は、治具本体54の上端に開口した嵌合穴55を形成し、嵌合穴55は図8に示したように放射ヘッド22の下端から継手本体18のナット面28に嵌め込み可能な深さを持ち、上部側の穴内面に軸方向の嵌合溝56を周方向に複数形成している。治具本体54の下端に工具着脱穴58が開口し、工具着脱穴58はラチェットレンチを着脱するラッチ矩形ボールを備えた矩形穴としている。
【0044】
図10は配管に高さ調整機構を介して放射ヘッドを取付け固定した後に行う高さ調整を示した説明図である。図8に示したように、調整治具52とラチェットレンチ60を使用して継手本体18、継手可動体20及び放射ヘッド22の組立セットを配管10にねじ込み固定したら、高さ調整のため調整治具52をその嵌合穴55の嵌合溝56が継手本体18のナット面28を外れて継手可動体20のナット部30に嵌合する位置まで下げ、この状態でラチェットレンチ60を装着した調整治具52を介して放射ヘッド22と一体に継手可動体20を回し、高さを調整する。
【0045】
この高さ調整は、天井板12に設けた取付穴14の中の理想の散水分布が得られる所定位置となるように、調整治具52の着脱の繰り返しにより放射ヘッド22の位置を見ながら調整する。なお、高さ調整が完了したら止めねじ24を奥までねじ込んで継手可動体20に接触させて調整高さに固定するようにしてもよい。
【0046】
ここで図8にあっては、天井裏側の配管10に対し予め準備した継手本体18、継手可動体20及び放射ヘッド22の組立セットを、調整治具52を使用してねじ込み固定する場合を例にとっているが、継手本体18のみを最初に配管10にねじ込み固定し、続いて継手可動体22に放射ヘッド22をねじ込み固定して組立セットとして準備してねじ込み固定するようにしても良い。
【0047】
この場合の継手本体18のねじ込み固定、及び継手可動体20及び放射ヘッド22の組立セットの継手本体18に対するねじ込み固定は、調整治具60とラチェットレンチ60を用いて天上表面側から行うことができる。
【0048】
なお、上記の実施形態は天井裏面に敷設された角バーに固定した配管に対し高さ調整機構16を介して放射ヘッド22を取付ける場合を例にとっているが、天井裏面に敷設された角バーにT型継手を固定し、T型継手の分岐口に高さ調整機構16を介して放射ヘッド22を取付ける場合についても同様に適用できる。
【0049】
また上記の放射ヘッドとしては、前記(1)式の条件を満足するものであれば、適宜の形状又は構造のものに適用できる。放射ヘッドの下面放射口側には防塵キャップが備えられていても良く、調整治具52の嵌合穴55内に防塵キャップを備える放射ヘッドが嵌合または挿入されるようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、放射ヘッドは天井板12のある設備に取り付けているが、天井板が設けられずに天井側に放射ヘッドが固定される設備に対しても適用できる。
【0051】
また、ピストン部40と調整ネジ部44の配置を上下逆にしてもよい。この場合は調整ネジ部44に水がかかりネジ部の信頼性の面で上記の実施形態よりも劣るが、本発明の容易な高さ調整を実現することができる。継手可動体20のピストン部に設けた0リングは、継手本体18の内面に形成した溝に配置してもよく、この場合は、高さ調整時の最小から最大位置まで継手可動体20が0リングに継続して接触してシールするように、継手可動体20の外周の一部を円筒状に形成する必要がある。
【0052】
継手本体18の本体全体にナット部28を設ける必要はなく、一部に形成しても良い。継手可動体のナット部も必ずしも端部に設ける必要はない。
【0053】
治具本体54とラチェットレンチ60は一体で形成してもよい。
【0054】
また、継手本体18と継手可動体20は、高さ調整を可能とするためねじ込み構造とする必要はあるが、継手可動体20と放射ヘッドの固定構造は必ずしもねじ込み構造とする必要はなく、例えば脱着が容易なワンタッチ固定構造を採用してもよい。
【0055】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0056】
10:配管
11:ねじ穴
12:天井板
14:取付穴
16:高さ調整機構
18:継手本体
20:継手可動体
22:放射ヘッド
24:止めねじ
26,51:接続ねじ部
28,50:ナット面
30:ナット部
32:流入口
34:シリンダ穴
36:調整ねじ穴
38:通し穴
40:ピストン部
42:シール
44:調整ねじ穴
46:ヘッド接続ネジ穴
48:ヘッド本体
52:調整治具
54:治具本体
55:嵌合穴
56:嵌合溝
58:工具着脱穴
60:ラチェットレンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井側に配置された配管に固定され、外周に多角面を形成した継手本体と、
前記継手本体の端部からねじ込まれて軸方向に移動して長さを調整可能とし、外周に前記継手本体の多角面に対応した多角面を形成するとともに、他端に放射ヘッドが固定される継手可動体と、
を備え、前記継手本体および継手可動体の外径に対し、前記放射ヘッドの外径を略同一又はそれ以下として、前記放射ヘッド下端から前記継手本体の多角面に調整治具の嵌合穴を嵌め込み可能な構造としたことを特徴とする放射ヘッド設置高さ調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載の放射ヘッド設置高さ調整機構に於いて、
前記継手本体は、両端に貫通する通し穴の一端外側に前記配管に接続するねじ部を形成し、前記通し穴の他端から調整ネジ穴及びシリンダ穴を形成し、更に外側に多角ナット面を形成し、
前記継手可動体は、両端に貫通する通し穴を形成した円筒部に前記継手本体のシリンダ穴に位置して摺動するピストン部と前記継手本体のねじ穴にねじ込まれて軸方向の長さを調整する調整ねじ部を形成し、更に前記円筒部の端部に前記継手本体の多角ナット面と略同一形状のナット部を形成したことを特徴とする放射ヘッド設置高さ調整機構。
【請求項3】
天井側に配置された配管に固定され、外側に多角面を形成した継手本体と、
前記継手本体の端部からねじ込まれ、外側に前記継手本体の多角面に対応した多角面を形成し、軸方向に移動して長さを調整できるとともに、他端に放射ヘッドが固定される継手可動体と、
を備え、
前記継手本体および継手可動体の外径に対し、前記放射ヘッドの外径を略同一又はそれ以下とした放射ヘッド設置高さ調整機構の調整治具に於いて、
治具本体と、
前記治具本体の一端に開口して前記放射ヘッド下端から前記継手本体の多角面に嵌め込み可能な嵌合穴と、
を設けたことを特徴とする放射ヘッド設置高さ調整機構の調整治具。
【請求項4】
請求項3記載の放射ヘッド設置高さ調整機構の調整治具に於いて、
前記継手本体は、両端に貫通する通し穴の一端外側に前記配管に接続するねじ部を形成し、前記通し穴の他端から調整ネジ穴及びシリンダ穴を形成し、更に外側に多角ナット面を形成し、
前記継手可動体は、両端に貫通する通し穴を形成した円筒部に前記継手本体のシリンダ穴に位置して摺動するピストン部と前記継手本体のねじ穴にねじ込まれて軸方向の長さを調整する調整ねじ部を形成し、更に前記円筒部の端部に前記継手本体の多角ナット面と略同一形状のナット部を形成したことを特徴とする放射ヘッド設置高さ調整機構の調整治具。
【請求項5】
請求項3記載の放射ヘッド設置高さ調整機構の調整治具に於いて、前記嵌合穴は、前記継手本体に対し前記継手可動体を最大長に調整した状態で前記継手本体のナット面にかかるように嵌め込まれる深さの穴であることを特徴とする放射ヘッド設置高さ調整機構の調整治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−161346(P2012−161346A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21521(P2011−21521)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】