説明

放射性廃棄物処分用トンネル

【課題】ベントナイトの遮水性の劣化を可及的に防止することができる放射性廃棄物処分用トンネルを提供する。
【解決手段】本発明に係る放射性廃棄物処分用トンネル1は、地山12を掘削して坑道11を形成し、当該坑道11の内周面を覆う環状の覆工20を設けてある。また、覆工20と坑道11との間には、アルカリ性成分を含まないか、あるいは、バリア性能に影響を及ぼさない程度のアルカリ性成分を含む骨材31とベントナイト32とで構成した充填材層30を設けてある。また、地山12を掘削して形成した堀削空間DSから、覆工20の外周面と杭道11の内周面との間の空隙16sを分断する妻型枠13を、地山12の堀削方向に向けて所定の間隔で設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば原子力発電所から排出される高レベル放射性廃棄物を処分する放射性廃棄物処分用トンネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルの中には、地山を掘削して坑道を形成し、当該坑道の内周面を覆う覆工(ライニンング)を設け、上記覆工と坑道との間隙にセメントミルクを充填することで充填材層を設けたものがある。
【0003】
このトンネルによれば、覆工と坑道との間にセメントより構成した充填材層を設けるため、覆工の位置がずれることを防止することができるとともに、地山が変形することを防止することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−309894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したトンネルを、高レベル放射性廃棄物を処分する放射性廃棄物処分用トンネルにそのまま適用した場合、セメントミルクが硬化することで形成された充填材層の遮水性が十分とは言い難い。すなわち、上述したトンネルを放射性廃棄物処分用トンネルにそのまま適用した場合には、地下水が充填材層の隙間等から覆工の内部に浸透し、地下水と放射性廃棄物とが接触し、放射能を帯びた地下水が充填材層の隙間等から覆工の外部に流出することとなる。この場合、放射能を帯びた地下水によってトンネルの周辺が汚染されることとなる。
【0006】
このような事態を防止すべく、例えば覆工の内周面に例えばベントナイトで遮水層を形成することが考えられるが、上記充填材層であるコンクリートから溶出する例えばカルシウムイオン等のアルカリイオンが溶出することによりベントナイトの遮水性を劣化させる等、ベントナイトや地山を構成する岩盤への悪影響が懸念される。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑み、ベントナイトの遮水性の劣化を可及的に防止することができる放射性廃棄物処分用トンネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、地山を掘削して坑道を形成し、当該坑道の内周面を覆う環状の覆工を設けた放射性廃棄物処分用トンネルにおいて、前記覆工と前記坑道との間に、アルカリ性成分を含まないか、あるいは、バリア性能に影響を及ぼさない程度のアルカリ性成分を含む骨材とベントナイトとで構成した充填材層を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1において、前記充填材層は、前記覆工と前記坑道との間に充填された骨材間に、エタノールを加えることによりスラリー状に変成したベントナイトを充填することによって構成したものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1において、前記充填材層は、骨材と粒状のベントナイトとを予め混合したものを、前記覆工と前記坑道との間に充填することによって構成したものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1から3のいずれか一つにおいて、前記地山を掘削して形成した掘削空間から、前記覆工の外周面と前記坑道の内周面との間の空隙を分断する妻型枠を、前記地山の掘削方向に向けて所定の間隔で設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項4において、前記妻型枠は、内部に粘土系材料を充填可能な充填空間を有し、当該充填空間に粘土系材料を充填せずに折り畳んだ収納態様と、当該充填空間に粘土系材料を充填することで前記掘削空間から前記空隙を分断する展開態様とに切り換え可能な袋体を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項5において、前記袋体の前記充填空間に、粘土系材料であるベントナイトを充填することによって、前記妻型枠に遮水性を持たせることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7に係る発明は、上記請求項2において、前記覆工の内部空間と前記空隙とを連通する通路を少なくとも2本設けることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8に係る発明は、上記請求項1から3のいずれか一つにおいて、前記覆工の外周面と前記坑道の内周面との間の開放端を閉塞する妻型枠を設けたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項9に係る発明は、上記請求項8において、前記妻型枠が板状体で構成したものであり、前記板状体は、少なくとも一部に複数の通気孔を有したものであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項10に係る発明は、上記請求項8又は9において、前記妻型枠における天端部及び前記天端部の左右両側に位置する肩部に、前記骨材を前記空隙に充填するための充填口をそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項11に係る発明は、上記請求項10において、前記妻型枠が、前記天端部から前記各肩部までの範囲に前記複数の通気孔を有したものであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項12に係る発明は、上記請求項10又は11において、前記各肩部における充填口が、前記天端部から前記坑道の中心のまわりに左右に45°回転した位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る放射性廃棄物処分用トンネルによれば、覆工と坑道との間に、アルカリ性成分を含まないか、あるいは、バリア性能に影響を及ぼさない程度のアルカリ性成分を含む骨材とベントナイトとで構成した充填材層を設けたため、充填材層からカルシウム等のアリカリイオンが溶出することによりベントナイトの遮水性が劣化することを可及的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本発明に係る放射性廃棄物処分用トンネルの好適な実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
【0022】
図1および図2は、本発明に係る放射性廃棄物処分用トンネル1を使用して構築した放射性廃棄物処分体10を示す説明図である。
【0023】
放射性廃棄物処分用トンネル1は、坑道11と、環状の覆工20と、充填材層30と妻型枠13とを備えている。放射性廃棄物処分体10は、上記覆工20の内部空間20s(覆工20を構成する筒体21の内部空間21s)に不図示の高レベル放射性廃棄物を設置し、上記内部空間20sを閉塞する閉塞材40を設けたものである。
【0024】
坑道11は、図3に示す掘削装置50により地山12を掘削して形成したものである。より具体的には、この坑道11は上記掘削装置50により所定の掘削方向に向けて地山12を掘削することで形成してある。坑道11は、例えば図3に示すように、自身の内径D1が5.4mである。
【0025】
掘削装置50は、自由断面掘進機である掘削装置本体51と、覆工20を構築するセグメント22を搬送し、かつ当該セグメント22を組み立てて覆工20を構築する覆工組立装置本体60とを備えている。
【0026】
掘削装置本体51は、掘削方向に沿った掘削軸の軸心51xを中心に回転可能な円柱状のカッターヘッド52と、カッターヘッド52の先端部において、この外周面に取り付けたカッター53と、駆動した場合には上記カッターヘッド52を掘削軸の軸心51x回りに回転させる駆動源54とを備えている。また、この掘削装置本体51は、回転軸の軸心55xを中心に回転自在な車輪55を4つ備えている。そして、掘削装置本体51は、駆動源54の駆動力を上記車輪55に伝達する伝達状態と、駆動源54の駆動力を上記車輪55に伝達しない非伝達状態とに切り換え可能に構成してあり、伝達状態に切り換えた状態で駆動源54を駆動した場合には、回転軸の軸心55xを中心に車輪55が回転することによって走行するものである。
【0027】
覆工組立装置本体60は、覆工20の内部空間20sにおいて、一定間隔毎に覆工20に立設する複数の柱61と、上記掘削方向に沿って延在し、上記柱61にそれぞれ取り付けたビーム63とを備えている。
【0028】
柱61は、図5に示すように、掘削方向に沿って掘削装置本体51が移動する領域R1を確保するため、中央部において折り曲げてU字状を成すよう形成してある。また、柱61の下端部には、回転可能な車輪62をそれぞれ設けてあり、当該車輪62を回転した場合、柱61は後述するレールに沿う態様で掘削方向およびこれと反対方向に移動可能である。図3に示すように、このような柱61の中央部に、上記ビーム63を取り付けてある。また、図5に示すように、柱の一方の端と、柱の他方の端との間隔L1は、例えば3.2mである。
【0029】
このビーム63には、図3に示すように、当該ビーム63に対して掘削方向およびこれと反対方向に走行する第1走行手段63aおよび第2走行手段63bを設けてある。本実施の形態では、第1走行手段63aは、ビーム63の下端部に設けてある一方、第2走行手段63bは、ビーム63の上端部に設けてある。
【0030】
第1走行手段63aには、セグメント22を組み立てて覆工20を構築する覆工組立手段70を取り付けてある。覆工組立手段70は、上記第1走行手段63aに取り付けた第1軸部材71と、回動軸の軸心70x回りに回動可能な態様で第1軸部材71に取り付けた第2軸部材72と、第2軸部材72に対して進退自在な態様で取り付けた第3軸部材73と、第3軸部材73の先端に設け、セグメント22を保持する不図示の保持具とを備えている。
【0031】
第2走行手段63bには、図5に示すように、豆砂利等の骨材31を吐出する骨材吐出手段80と、例えばベントナイト32を吐出するベントナイト吐出手段90とを設けてある。
【0032】
骨材吐出手段80は、第2走行手段63bに取り付けた骨材吐出手段本体81と、先端から骨材31を吐出する骨材吐出ノズル82とを備えている。
【0033】
ベントナイト吐出手段90は、第2走行手段63bに取り付けたベントナイト吐出手段本体91と、先端からベントナイト32を吐出するベントナイト吐出ノズル92とを備えている。
【0034】
覆工20は、いわゆるライニングと呼ばれるもので、図1に示すように、上記坑道11の内周面の全体を覆うよう環状に構成したものである。この覆工20は、例えば自身の厚さが0.1mであり、図3に示す内径D2が5.0mである。この覆工20は、図6に示すように、円筒状を成す複数の筒体21を、掘削方向に沿って連続する態様で設けることで構成してある。筒体21は、図5に示すように、弧状を成す複数のセグメント22を、上記掘削軸の軸心51x回りに沿って連続する態様で設けることで構成したものである。この筒体21は、例えば掘削方向における幅が1mとなるよう形成してある。
【0035】
セグメント22は、例えば鋼等の金属材料で形成してあり、図7に示すように、外枠となるセグメント本体23と、セグメント本体23の内部に嵌め込む複数の岩石24と、セグメント本体23と岩石24との間に充填するモルタル(図示を省略)とで構成してある。
【0036】
岩石24は、例えば堆積岩、変成岩、および火成岩等を削ることでセグメント本体23の内部に嵌め込むことができるように形成してある。なお、岩石24としては、上記堆積岩等の石灰岩のようにカルシウムやカリウム等のアリカリ性成分を含むものは使用しない。すなわち、本発明における岩石24とは、アルカリ性成分を含まないものである。
【0037】
充填材層30は、図1および図2に示すように、坑道11と覆工20との間に設けたものである。より具体的には、充填材層30は、坑道11の内周面と、覆工20の外周面との間の空隙に設けたものである、この充填材層30は、例えばカルシウムやカリウム等のアリカリ性成分を含まない岩石を破砕して形成した豆砂利等の骨材31と、ベントナイト32とで構成してある。すなわち、本発明における充填材層30は、アルカリ性成分を含まないよう構成してある。例えば骨材31は、2.5〜10.00mmの比較的粒径が小さい砂利で構成してある。このような充填材層30は、図8に示すように、後述するように、坑道11の内周面と、筒体21の外周面との間の空隙に骨材31を充填しながら筒体21を連設し、複数の筒体21で覆工20を構成してから、図9に示すように、例えば閉塞材40を設けるとともに、後述するベントナイト充填空間に、エタノールを加えることでスラリー状に変成したベントナイト32を充填することにより設けてある。このスラリー状のベントナイト32は、微粒子状又は粉末状に調整されたベントナイトを、エタノールと水とからなる液相に添加してスラリーに調製したものである。
【0038】
なお、アルカリ性成分を含む骨材であっても、アルカリ性成分の含有量がバリア性能に影響を及ぼさない程度であれば、上記骨材31として適用することが可能である。ここで、バリア性能とは、「埋め戻し材および緩衝材における核種の移行において、周辺岩盤が持つ遅延性能と同等となるような性能」を意味する。また、骨材のアルカリ性成分が許容値以上の場合、脱アルカリ処理等を施して許容値以下とすることで、骨材31として適用することができる。
【0039】
妻型枠13は、坑道11の先端側に骨材31が流出することを防止しながら坑道11の内周面と筒体21の外周面との間の空隙に骨材31を充填するものであって、掘削方向に沿って一定の間隔毎に設けるものである。この妻型枠13は、図12に示すように、内部に充填空間を有する袋体13cと、充填ノズル13aと、貫通ノズル13bとを備えるものである。充填ノズル13aは、上記充填空間に連通する充填口を備えている。
【0040】
袋体13cは、例えば図14に示すように、充填空間に例えばベントナイト32等の粘土系材料を充填していない状態では、折り畳んだ収納態様である一方、例えば図12に示すように、充填空間に粘土系材料を充填した状態では、当該粘土系材料によって膨らんだ展開態様に切り換わるものである。
【0041】
次に、この妻型枠13を設置する方法を説明する。ここでは、地山12の坑道11の先端側に、上記掘削装置50によって形成された掘削空間DSが存在するものとして説明する。
【0042】
先ず、図13および図14に示すように、収納態様の妻型枠13を、掘削方向の先端側において、新たに設置した筒体21の外周面に設置する。この状態では、収納態様の妻型枠13は、充填空間にベントナイト32を充填した展開態様の妻型枠13に対して予め設定した一定の間隔(本実施の形態では1m)で設置する。
【0043】
次に、収納態様の妻型枠13の充填口に、上記ベントナイト吐出ノズル92の先端を挿入してから、当該ベントナイト吐出ノズル92の先端からベントナイト32を吐出し、袋体13cの充填空間にベントナイト32を充填する。このように充填空間にベントナイト32を充填した袋体13cは、図15に示すように、膨らむことで展開態様に切り換わり、掘削空間DSから、筒体21の外周面と坑道11の内周面との空隙16sを分断する。
【0044】
貫通ノズル13bは、ノズル接続口と骨材吐出口とを備え、当該ノズル接続口および骨材吐出口とが袋体13cの充填空間にそれぞれ非連通であって、ノズル接続口と骨材吐出口とが連通するよう構成してある。この貫通ノズル13bは、上述したように掘削空間DSから空隙16sを分断した状態では、ノズル接続口が掘削空間DS側に配置され、かつ骨材吐出口が空隙16s側に配置されることとなる。よって、この状態で、ノズル接続口に上記骨材吐出ノズル82の先端を挿入した後、当該骨材吐出ノズル82の先端から骨材31を吐出すれば、上記空隙16sに骨材31を充填することができる。
【0045】
閉塞材40は、地山12を構成する岩盤がアルカリ性成分を含まないものである場合には、上記掘削装置50により地山12を掘削した際に発生する岩石を用い、当該岩石を破砕することで形成した豆砂利を使用し、この豆砂利とベントナイト32とを混合して形成する。一方、地山12を構成する岩盤がアルカリ性成分を含むものである場合、閉塞材40は、アルカリ性成分を含まない岩石を破砕することで形成した豆砂利を使用し、この豆砂利とベントナイト32とを混合して形成する。この閉塞材40は、高レベル放射性廃棄物を覆工20の内部空間20sに設置した後、覆工20の内部空間20sに充填するものである。
【0046】
次に、上記のような構成を有する放射性廃棄物処分体10の製造方法を順を追って説明する。ここでは、図3に示すように、複数の筒体21を掘削方向に沿って連設してあり、当該筒体21の内部空間21sにおける下部には、上記柱61の移動を案内する一対のレール15が掘削方向に沿って延在するよう筒体21に設けてあり、かつ掘削装置本体51が走行できるよう上面が平坦となる態様で土壌材14を敷き詰めてある。この土壌材14は、最も厚い部位における厚さH2が0.6mである。
【0047】
先ず、上記掘削装置50において、覆工組立装置本体60よりも掘削装置本体51を掘削方向の前方側に配置し、かつ掘削装置本体51を、上記駆動源54の駆動力を車輪55に伝達しない非伝達状態に切り換えた状態で駆動源54を駆動することにより、掘削軸の軸心51x回りにカッターヘッド52回転させながら、掘削装置本体51を非伝達状態から伝達状態に切り換え、当該掘削装置本体51を掘削方向に走行させる。
【0048】
この状態でカッター53が地山12に接触すれば、当該カッター53により地山12が掘削方向に向けて掘削されることとなる。さらに、この状態から、カッターヘッド52を上下方向および左右方向に移動させてカッター53により地山12を掘削し、図4に示すように、掘削方向の先端側に上記筒体21の内部空間21sに連通する掘削空間DSを形成し、掘削方向に向けて坑道11を延ばす。
【0049】
このような掘削は、掘削空間DSの掘削方向における幅が、上記筒体21の掘削方向における幅よりも大きくなるまで行う。本実施の形態では、筒体21の掘削方向における幅が1mであるため、掘削方向における掘削空間DSの幅が1m以上となるまで地山12の掘削を行う。
【0050】
次に、上記掘削空間DSに複数のセグメント22を設置することで新たな筒体21を構築する。セグメント22を設置する場合には、図10および図11に示すように、掘削装置本体51を掘削方向と反対方向に移動させ、かつ覆工組立装置本体60を掘削方向に移動させて、掘削装置本体51と覆工組立装置本体60とを入れ替える。この後、第1走行手段63aを走行させることにより各セグメント22を個別に搬送して筒体21を構築する。
【0051】
次いで、図13および図14に示すように、掘削方向における筒体21の外周面の先端側に、収納態様の袋体13cの妻型枠13を配置した後、妻型枠13の充填口に、上記ベントナイト吐出ノズル92の先端を挿入してから、当該ベントナイト吐出ノズル92の先端からベントナイト32を吐出し、図15に示すように、充填空間にベントナイト32を充填して袋体13cを展開態様に切り換え、上記掘削空間DSから、筒体21の外周面と坑道11の内周面との間の空隙16sを分断する。
【0052】
次に、図16および図17に示すように、貫通ノズル13bのノズル接続口に上記骨材吐出ノズル82の先端を挿入した後、当該骨材吐出ノズル82の先端から骨材31を吐出して、上記空隙16sに骨材31を充填する。
【0053】
上述した作業、具体的には、地山12を掘削して掘削空間DSを形成し、当該掘削空間DSに複数のセグメント22を設置して筒体21を構築し、掘削方向の先端側に妻型枠13を設置して掘削空間DSから空隙16sを分断し、当該空隙16sに骨材31を充填することを繰り返し、掘削方向に延在する坑道11を形成し、かつ掘削方向に延在する筒体21を構築する。
【0054】
上述したように、掘削方向に延在する坑道11を形成し、かつ掘削方向に延在する筒体21を構築する際、適宜の間隔で上記妻型枠13に遮水性を持たせる。具体的には、図18に示すように、例えば複数の筒体21において、9個に1個の間隔で遮水性を持たせる。例えば図18中、N1〜N9で示す妻型枠13のうち、N9で示す妻型枠13にのみ遮水性を持たせる。遮水性を持たせるには、当該妻型枠13(図18中、N9で示す妻型枠13)の貫通ノズル13bをベントナイト32で閉塞する。そして、掘削方向において、例えば9個に1個の間隔で妻型枠13に遮水性持たせることで、坑道11の内周面と筒体21の外周面との間にベントナイト充填空間Bsを画成する。また、上記筒体21には、ベントナイト充填空間Bsと筒体21の内部空間21sとを連通する通路である注入ノズル101および排出確認ノズル102を設ける。注入ノズル101は、各ベントナイト充填空間Bsにおいて、例えば掘削方向における先端側に設ける一方、排出確認ノズル102は、掘削方向における後端側に設ける。しかも、この排出確認ノズル102は、筒体21の内部空間21sの天井部に設けることが好ましい。
【0055】
そして、筒体21を連設することで、掘削方向において予め設定した長さを有する覆工20を構築した後、上記覆工20の内部空間20sに放射性廃棄物を設置する。その後、上記掘削方向に対して反対となる閉塞方向に向けて、覆工20の内部空間20sを閉塞材40で閉塞しながら上記ベントナイト充填空間Bsにベントナイト32を充填する。
【0056】
先ず、例えば図20に示すように、上記ベントナイト充填空間Bsに対応する覆工20の内部に、アルカリ性成分を含まない岩石を破砕して形成した豆砂利とベントナイトとを混合したものを転圧装置110で転圧して閉塞材40を設ける。
【0057】
次に、図18に示すように、エタノールを加えることでスラリー状に変成したベントナイト32を吐出するベントナイト吐出装置100と、上記注入ノズル101とを接続管103で接続した後、ベントナイト吐出装置100からベントナイト32を吐出し、ベントナイト充填空間Bsにベントナイト32を充填する。このとき、排出確認ノズル102からベントナイト32が排出された場合、ベントナイト充填空間Bsがベントナイト32で満たされたことが分かる。なお、上記接続管103、注入ノズル101、および排出確認ノズル102は、必ずしも放射性廃棄物処分用トンネル1から取り外す必要はない。
【0058】
本実施の形態に係る放射性廃棄物処分用トンネル1によれば、覆工20と坑道11との間に、アルカリ性成分を含まないか、あるいは、バリア性能に影響を及ぼさない程度のアルカリ性成分を含む骨材31とベントナイト32とで構成した充填材層30を設けたため、充填材層30からアルカリ性成分が溶出することによりベントナイト32の遮水性が劣化することを可及的に防止することができる。
【0059】
また、地山12を掘削して形成した掘削空間DSから、覆工20の外周面と坑道11の内周面との空隙16sを分断する妻型枠13を設けたため、上記空隙16sに骨材31を充填する際、掘削空間DSに骨材31が流出することを防止することができる。しかも、上記空隙16sに骨材31を確実に充填することができる。
【0060】
さらに、上述したように、掘削空間DSに筒体21を設置する毎に、坑道11の内周面と、筒体21の外周面との空隙16sに骨材31を充填しながら放射性廃棄物処分用トンネル1を形成しているため、掘削により地山12が変形することを可及的に防止することができる。
【0061】
また、地山12の掘削方向に向けて所定の間隔で妻型枠13を設け、当該妻型枠13に遮水性を持たせるため、スラリー状のベントナイト32をベントナイト充填空間Bsに確実に充填することができる。
【0062】
さらに、千年または万年等の長期間が経過し、当該期間の経過によって金属材料で形成したセグメント本体23が腐食したとしても、充填材層30のベントナイト32が膨潤することで、覆工20の内部空間20sに地下水が浸入することを防止することができる。
【0063】
また、覆工20の内部空間20sに閉塞材40を設けるため、上述したようにセグメント本体23が腐食したとしても、覆工20が潰れることを防止することができる。
【0064】
なお、上述した実施の形態には、アリカリ性成分を含まない岩石を破砕して形成した豆砂利とベントナイト32とを混合して形成した閉塞材40を使用し、当該閉塞材40を転圧装置110で転圧して覆工20の内部空間20sを閉塞材40で閉塞するもので説明した。しかし、この発明の閉塞材40は、上述した方法で製造するものに限られず、ベントナイト32と豆砂利を混合したもので直方体状のレンガを形成し、当該レンガで覆工20の内部空間20sを閉塞しても良いし、上記豆砂利とベントナイト32とを混合したものを吹き付けて覆工20の内部空間20sを閉塞しても良い。
【0065】
また、上述した実施の形態には、各ベントナイト充填空間Bsにおいて、掘削方向における先端側に注入ノズル101を設ける一方、掘削方向における後端側に排出確認ノズル102を設けるもので説明した。しかし、この発明はそれに限られず、注入ノズル101および排出確認ノズル102を設ける位置は上述した位置に限られない。
【0066】
さらに、上述した実施の形態には、覆工20の内部空間20sに放射性廃棄物を設置する放射性廃棄物処分用トンネルで説明した。しかし、この発明はそれに限られず、放射性廃棄物処分用トンネルの下部に下方に向けて延在する処分孔を立設け、その処分孔に放射性廃棄物を設置しても良い。
(実施の形態2)
【0067】
次に実施の形態2の放射性廃棄物処分用トンネルについて説明する。なお、上述した実施の形態1と同一の構成については同一の符号を使用し、その説明を省略する。
【0068】
図21は、建設途中の放射性廃棄物処分用トンネル1の切羽11a近傍を側方から見た断面図、図22は、図21における矢視G−Gでの断面図である。なお、図21及び図22では、掘削装置50(掘削装置本体51、覆工組立装置本体60、覆工組立手段70、骨材吐出手段80、ベントナイト吐出手段90)の図示を省略している。
【0069】
上述した実施の形態1では、覆工20と坑道11との間の開放端を閉塞する妻型枠13として、粘土系材料を充填可能な充填空間を有する袋体13cを適用したが、本実施の形態では、覆工20と坑道11との間の開放端を閉塞する妻型枠130として、上述した袋体13cのような充填空間をもたない板状体を適用している点において、上記実施の形態1と異なっている。それ以外の構成は上記実施の形態1と同じである。
【0070】
妻型枠130は、図21及び図22に示すように、環状の板状体として構成してある。板状体は充分な強度を確保できる程度の厚みを有した木材あるいは鋼板等の材料からなるものである。以下の説明では、妻型枠130において、坑道11の天端に隣接する部位を「天端部131」、坑道11の天端の左肩に隣接する部位を「左肩部132」、坑道11の天端の右肩に隣接する部位を「右肩部133」とよぶことにする。
【0071】
図22に示すように、妻型枠130の天端部131付近、左肩部132付近及び右肩部133付近には、坑道11と覆工20(セグメント22)との間の空隙に骨材31を充填するための充填口135,136,137がそれぞれ設けてある。各充填口135,136,137は、骨材吐出手段80における骨材吐出ノズル82(ともに図16を参照)の先端部の寸法よりも大きい寸法を有した貫通孔である。
【0072】
本実施の形態の例では、妻型枠130を、複数の通気孔134が形成された有孔板130aと、通気孔134が形成されていない無孔板130bとで構成してある。図23は、図22に示した有孔板130aの一部を拡大して示した図であり、図24は、妻型枠130に設けた充填口135から坑道11と覆工20(セグメント22)との間に骨材31を充填した状態を示す断面図である。
【0073】
図23及び図24に示すように、有孔板130aに形成された複数の通気孔134は、骨材31の径よりも若干大きいかあるいは小さい径を有した円形の貫通孔であり、坑道11と覆工20(セグメント22)との間の空隙に骨材31を充填する際に、骨材充填部31sに溜まった空気を外部に排出するための孔である。
【0074】
より詳細に説明すると、本実施の形態では、妻型枠130に設けた充填口135,136,137から圧縮空気によって坑道11と覆工20との間の空隙に骨材31を吹き込んでいる。このため、例えば図25に示すように、通気孔のない妻型枠130´を用い、充填口135´に骨材吐出ノズル82の先端部82aを差し込んで骨材31を吹き込んだ場合、骨材充填部31sにおいて、骨材31とともに吹き込まれた空気の逃げ場がなくなり、骨材充填部31sの奥側に空気溜まりASによる骨材の未充填部が生じることが実験により確認されている。図25に示すような空気溜まりASが生じた状態では、地山12の押し出しによる地圧がセグメント22に均等に作用せず、セグメント22の支保効果が充分に得られなくなるとともに、セグメント22に局所的に大きな曲げモーメントが発生することが推定される。このため、セグメント22の厚みを厚くせざるを得なくなり、結果的にセグメント22に使用するモルタルの量が多くなってしまう。
【0075】
そこで、本実施の形態では、妻型枠130の少なくとも一部を有孔板130aで構成することで、骨材充填部31sに溜まった空気を通気孔134から速やかに排出させ、骨材充填部31sに空気溜まりASが生じるのを防止するようにしている。通気孔134の直径及び密度は、骨材充填部31sに溜まった空気を十分に排出することができ、且つ、骨材31が通気孔134から外部に流出しない程度としてある。具体的には、通気孔134の直径は、骨材の粒径の2倍程度以下とするのが好ましい。また、通気孔134の密度は有孔板130aの材質の強度により異なるが、有孔板130aに必要な強度を損なわない程度とする。
【0076】
本実施の形態では、図22に示すように、妻型枠130の天端部131から左右肩部132,133までの範囲を上述した有孔板130aで構成する一方、妻型枠130の左右肩部132,133より下方の部位を無孔板130bで構成している。なお、全周を有孔板130aとすることも考えられる。ただし、坑道11と覆工20との間の空隙部分において、左右肩部132,133より下方の部位では、充填口136、137から吹き込まれた骨材31が自然に下方に向かって落ちていくため、天端部131から左右肩部132,133までの範囲と比べると、未充填空間が生じにくい。従って、妻型枠130の左右肩部132,133より下方の部位については、必ずしも有孔板130aを用いる必要はない。図22に示す構成はあくまでも一例であり、施工条件によっては、妻型枠130の全体を有孔板130aで構成してもよい。
【0077】
上述した妻型枠130において、左右肩部132,133における充填口136,137は、天端部131から坑道11の中心のまわりに左右に約45°回転した位置に設けられるのが好ましい。また、有孔板130aは、天端部131の左右約45°の範囲に用いられるのが好ましい。上記のように構成した妻型枠130を用いて骨材充填試験を行ったところ、坑道11と覆工20の間の骨材充填部31sに空気溜まりASを作らずに、均質に充填できることを確認した。
【0078】
次に、上述した妻型枠130を用いた放射性廃棄物処分用トンネル1の構築手順について簡単に説明する。なお、上述した実施の形態1では、坑道11と覆工20との間に所定の間隔で妻型枠13を設置していき、放射性廃棄物処分用トンネル1の構築後も妻型枠13を撤去せずに残す工法を採用したが、本実施の形態では、1つの掘削区間での骨材充填作業が完了する都度、妻型枠130を撤去する工法を採用している。また、上述した実施の形態1では、坑道11の底部に設置されたセグメント22上に土壌材14を敷き詰め、この土壌材14上で掘削装置50(図3を参照)を走行させるようにしたが、本実施の形態では、土壌材14に替えて路盤コンクリート140を敷き詰めている。この路盤コンクリート140は、図21及び図22に示すように、内部に鉄筋が埋設された複数のコンクリートブロックを、坑道11の底部に設置されたセグメント22上に、坑道11の軸方向に並設することによって形成したものである。路盤コンクリート140は、放射性廃棄物処分用トンネル1の建設中には掘削装置50の往来に利用され、放射性廃棄物処分用トンネル1の建設後には廃棄体の搬入台車の移動等に利用される。
【0079】
先ず、掘削装置50(図3を参照)を用いて1つの掘削区間を掘削した後、覆工組立装置本体60(図3を参照)を用いて複数のセグメント22を設置し、新たな筒体21(覆工20)を構築する。次いで、妻型枠130を坑道11と筒体21と間の開放端に設置し、開放端を閉塞する。
【0080】
この後、妻型枠130の左肩部132に設けた充填口136に骨材吐出手段80(図16を参照)の骨材吐出ノズル82を挿入して、坑道11と筒体21との間の空隙に骨材31を吹き込み、坑道11の底部から左肩までの空隙部分に骨材31を充填する。このとき、充填口136から吹き込まれた骨材は自然に下方に向かって落ちていくため、空気溜まりはほとんど生じない。同様にして、妻型枠130の右肩部133に設けた充填口137に骨材吐出ノズル82を挿入して骨材31を吹き込み、坑道11の底部から右肩までの空隙部分に骨材31を充填する。
【0081】
充填口136,137を塞いだ後、妻型枠130の天端部131に設けた充填口135に骨材吐出ノズル82を挿入して骨材31を吹き込む。充填口135から骨材31を吹き込んでいる間、骨材充填部31s(図24を参照)に溜まった空気が有孔板130aの通気孔134から排出されるため、骨材充填部31sの空気の循環が良くなる。このため、骨材充填部31sに空気溜まりが生じることはない。その結果、図21及び図24に示すように、骨材31は、坑道11と筒体21との間全体に均質に充填されることになる。
【0082】
この後、次の掘削区間の掘削作業を行う。前の掘削区間で使用した妻型枠130は撤去する。なお、セグメント組立て時に妻型枠130を撤去するようにしてもよい。撤去した妻型枠130は再利用することが可能である。上記工程を最終の掘削区間まで繰り返した後、ベントナイト吐出装置100(図18を参照)を用いて、骨材充填部31sにベントナイト32を充填することにより、坑道11と覆工20との間に充填材層30(図1及び図9を参照)が設けられる。放射性廃棄物処分用トンネル構築後、坑道11の底部を掘削して形成した複数の処分孔(図示せず)に放射性廃棄物を埋設し、閉塞材40(図1を参照)によって放射性廃棄物処分用トンネル1の内部を埋め戻す。
【0083】
以上説明したように、実施の形態2の放射性廃棄物処分用トンネル1においても、覆工20と坑道11との間に、アルカリ性成分を含まないか、あるいは、バリア性能に影響を及ぼさない程度のアルカリ性成分を含む骨材31とベントナイト32とで構成した充填材層30を設けたことで、充填材層30からアルカリ性成分が溶出することによりベントナイト32の遮水性が劣化することを可及的に防止することができる。さらに、千年または万年等の長期間が経過し、当該期間の経過によって金属材料で形成したセグメント本体23が腐食したとしても、充填材層30のベントナイト32が膨潤することで、覆工20の内部空間20sに地下水が浸入することを防止することができる。
【0084】
また、実施の形態2の放射性廃棄物処分用トンネル1によれば、覆工20(セグメント22)の外周面と坑道11の内周面との間の開放端を閉塞する妻型枠130を設けたことで、覆工20と坑道11との間の空隙部分に骨材31を吹き込む際に、外部に骨材31が流出するのを防止することができるとともに、上記空隙部分に骨材31を確実に充填することができる。
【0085】
また、実施の形態2の放射性廃棄物処分用トンネル1によれば、妻型枠130を板状体で構成するとともに、この板状体として複数の通気孔134を有した有孔板130aを適用したことで、覆工20(セグメント22)と坑道11との間の空隙部分に骨材31を吹き込む際に、骨材充填部31sに空気溜まりASが生じるのを防止することができる。その結果、骨材充填部31s全体に骨材31を均質に充填することができる。
【0086】
さらに、実施の形態2の放射性廃棄物処分用トンネル1によれば、妻型枠130における天端部131及び天端部131の左右両側に位置する肩部132,133に、上記空隙部分に骨材を充填する充填口136,137をそれぞれ設けたことで、空隙部分への骨材の充填性をさらに向上させることができる。
【0087】
加えて、実施の形態2の放射性廃棄物処分用トンネル1によれば、充填口136,137を、天端部131から坑道11の中心のまわりに左右に45°回転した位置に設けたことで、空隙部分への骨材の充填性を最も優れたものとすることができる。
(実施の形態3)
【0088】
次に実施の形態3の放射性廃棄物処分用トンネルについて説明する。なお、上述した実施の形態1,2と同一の構成については同一の符号を使用し、その説明を省略する。
【0089】
上述した実施の形態1,2では、坑道11と覆工20(セグメント22)との間の空隙に骨材31を吹き込んだ後に、骨材31と骨材31の間隙部分にスラリー状のベントナイト32を充填することによって充填材層30を構成した。これに対して本実施の形態では、骨材31を上記空隙に吹き込む前に、骨材31に粒状のベントナイト32´を予め混合しておき、この混合物を上記空隙に吹き込むことによって充填材層30´を構成している点において、上記実施の形態1,2と異なっている。
【0090】
上述した実施の形態1,2で設けた充填材層30は、放射線核種の移行を妨げるのに十分な遮水性を有したものであるが、遮水性をさらに向上させるために、エタノールに添加するベントナイトの分量を多くしすぎると、粘性が高くなるなどの理由から、骨材31の間隙部分へのベントナイトの流入・充填性が低下する。このため、目標とするベントナイトの分量を確保することが難しくなる。本実施の形態3では、骨材31と粒状のベントナイト32´を予め混合し、この混合物を坑道11と覆工20との間の空隙に吹き込むことによって充填材層30´を構成したことで、上記実施の形態1,2と同程度もしくはそれ以上に、充填材層30´の骨材31の間隙に充填する粒状のベントナイト32´の分量を多くすることが可能である。以下、この充填材層30´について説明する。なお、以下では、粒状のベントナイト32´を、省略して「粒状ベントナイト32´」とよぶ。
【0091】
図26は、坑道11と覆工20(セグメント22)との間の空隙に骨材31と粒状ベントナイト32´との混合物が吹き込まれ、充填材層30´が形成された状態を示す図である。ここで、図26に例示する妻型枠130は、上述した実施の形態2の妻型枠130(図21〜図23を参照)と同じものである。
【0092】
骨材31は、上記実施の形態1,2で用いた骨材31と同じものであり、アルカリ性成分を含まないか、あるいは、バリア性能に影響を及ぼさない程度のアルカリ性成分を含む砕石・豆砂利等から構成されるものである。この骨材31としては、上記実施の形態1,2で用いたものと同様に、粒径2.5mm〜10.0mm程度のものを適用することができる。
【0093】
粒状ベントナイト32´は、粉末状のベントナイトを高密度成形することによって球状(ペレット状)や円柱状等の各種形状に形成されたものである。また、粉末状のベントナイトを高密度に圧縮した後に破砕処理されたものや、ベントナイトの原鉱石が破砕処理されたもので、粒度が調整されたものなども使用することができる。本実施の形態では、図26に示すように、球状に成形された粒状ベントナイト32´を用いている。粒状ベントナイト32´は、粒状ベントナイト32´自身の密度が大きいものほど遮水性能(低透水性)が高い。このため、本実施の形態では、粒状ベントナイト32´として、その密度が2500kg/m3〜2700kg/m3程度の高密度に圧縮された粒状ベントナイトを用いている。
【0094】
また、粒状ベントナイト32´は、坑道11と覆工20との間の空隙に充填される際に骨材31と骨材31との間隙に容易に入り込めるようにするために、骨材31よりも小粒径のものを用いるのが好ましい。具体的には、粒状ベントナイト32´の粒径は、0.5mm〜5.0mm程度とするのが好ましい。なお、微粒子状又は粉末状のベントナイトは、坑道11と覆工20との間の空隙に吹き込む際に粉塵の発生源となるため、好ましくない。
【0095】
上記の骨材31と粒状ベントナイト32´は、坑道11と覆工20との間の空隙に充填される前に予め所定の割合で混合される。そして、図26に示すように、妻型枠130の各充填口135(136,137)から、骨材31と粒状ベントナイト32´との混合物が上記空隙に吹き込まれることにより、充填材層30´が形成される。
【0096】
ここで、充填材層30´における骨材31の分量(充填密度)は、上記実施の形態1,2の充填材層30における骨材31と同じ分量(充填密度)となるようにする。充填材層30´の骨材31の分量(充填密度)を、上記実施の形態1,2における充填材層30の骨材31と同じ分量(充填密度)とする理由は、切羽近傍での地山の内空へ押し出そうとする地圧をできるだけ直接剛性の高いセグメントに伝達する能力が、上記実施の形態1,2と同じ程度となるようにするためである。
【0097】
次に、放射性廃棄物処分用トンネル1の構築手順について簡単に説明する。先ず、掘削装置50(図3を参照)を用いて1つの掘削区間を掘削した後、覆工組立装置本体60(図3を参照)を用いて複数のセグメント22を設置し、覆工20を構築する。次いで、妻型枠130を坑道11と覆工20と間の開放端に設置し、開放端を閉塞する。
【0098】
この後、図26に示すように、妻型枠130の左肩部132(図22を参照)に設けた充填口136に骨材吐出ノズル82を挿入して、坑道11と覆工20との間の空隙部分に骨材31と粒状ベントナイト32´の混合物を吹き込む。同様にして、妻型枠130の右肩部133(図22を参照)に設けた充填口137に骨材吐出ノズル82を挿入して骨材31と粒状ベントナイト32´の混合物を吹き込む。
【0099】
充填口136,137を塞いだ後、妻型枠130の天端部131(図22を参照)に設けた充填口135に骨材吐出ノズル82を挿入して骨材31及び粒状ベントナイト32´の混合物を吹き込む。充填口135から骨材31と粒状ベントナイト32´の混合物を吹き込んでいる間、骨材・ベントナイト充填部31s´に溜まった空気は、妻型枠130における有孔板130aの通気孔134から排出されるため、骨材・ベントナイト充填部31s´の空気の循環が良くなる。このため、骨材・ベントナイト充填部31s´に空気溜まりが生じることはない。その結果、図26に示すように、骨材31及び粒状ベントナイト32´は、坑道11と覆工20との間全体に均質に充填されることになる。以上の工程を行うことにより、1つの掘削区間において、坑道11と覆工20との間に充填材層30´が形成される。
【0100】
次いで、次の掘削区間の掘削作業を行う。前の掘削区間で使用した妻型枠130は撤去する。なお、セグメント組立て時に妻型枠130を撤去するようにしてもよい。上記工程を最終の掘削区間まで繰り返すことにより、トンネルの構築が完了する。
【0101】
なお、上述した実施の形態1,2では、放射性廃棄物処分用トンネル1の構築後(埋め戻し時)に、坑道11と覆工20との間にスラリー状のベントナイト32を充填した。これに対して、本実施の形態では、トンネルを掘削区間ごとに順次構築していく際に、坑道11と覆工20との間に骨材31とともに粒状ベントナイト32´を充填していくので、トンネルの構築完了と同時に充填材層30´の裏込めも完了する。
【0102】
この後、坑道11の底部を掘削して形成した複数の処分孔に放射性廃棄物を埋設し、閉塞材40(図1を参照)によって放射性廃棄物処分用トンネル1の内部を埋め戻す。
【0103】
なお、本実施の形態では、実施の形態2の妻型枠130を用いて骨材31と粒状ベントナイト32´の充填を行う場合について説明したが、実施の形態1の妻型枠13を用いた場合も、同様にして骨材31と粒状ベントナイト32´の充填を行うことができる。
【0104】
以上説明したように、実施の形態3の放射性廃棄物処分用トンネル1においても、覆工20と坑道11との間に、アルカリ性成分を含まないか、あるいは、バリア性能に影響を及ぼさない程度のアルカリ性成分を含む骨材31と粒状ベントナイト32´とで構成した充填材層30´を設けたことで、充填材層30´からアルカリ性成分が溶出することにより粒状ベントナイト32´の遮水性が劣化することを可及的に防止することができる。さらに、千年または万年等の長期間が経過し、当該期間の経過によって金属材料で形成したセグメント本体23が腐食したとしても、充填材層30´の粒状ベントナイト32´が膨潤することで、覆工20の内部空間20sに地下水が浸入することを防止することができる。
【0105】
また、実施の形態3の放射性廃棄物処分用トンネル1では、骨材31と粒状ベントナイト32´とを予め混合し、この混合物を坑道11と覆工20との間に充填することによって充填材層30´を構成している。また、粒状ベントナイト32´として、粒状ベントナイト32´自身の密度が高密度であり、かつ、骨材31と骨材31との間隙に容易に入り込める程度の小粒径のものを用いている。このため、上記実施の形態1,2のように、スラリー状のベントナイト32を後充填する場合よりも、充填材層30´の骨材31の間隙に充填する粒状ベントナイト32´の分量を多くすることができる。その結果、充填材層30´の遮水性(低透水性)をさらに向上させることができるようになるため、トンネル周辺への放射線核種の移行をさらに効果的に防止することができる。
【0106】
また、充填材層30´の密度が高くなり、充填性が高くなることで、充填材層30´中の骨材31の地圧による変形が拘束されるため、充填材層30´の弾性係数を高くすることができる。これにより、セグメント22による支保効果が高くなることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明に係る放射性廃棄物処分用トンネルを使用して構築した放射性廃棄物処分体を示す横断面である。
【図2】図1における矢視A−Aでの断面図である。
【図3】図1に示した放射性廃棄物処分体を構築する際に使用する採掘装置を示す説明図である。
【図4】図1に示した放射性廃棄物処分用トンネルの製造方法を示す説明図である。
【図5】図4における矢視B−Bでの断面図である。
【図6】図1に示した放射性廃棄物処分用トンネルが備える覆工を示す斜視図である。
【図7】図6に示した覆工の筒体を構成するセグメントを示す斜視図である。
【図8】図1に示した放射性廃棄物処分用トンネルにおいて、坑道と筒体との間隙を示す要部断面図である。
【図9】図1に示した放射性廃棄物処分用トンネルが備える充填材層を示す要部断面図である。
【図10】図1に示した放射性廃棄物処分用トンネルの製造方法を示す説明図である。
【図11】図10における矢視C−Cでの断面図である。
【図12】図1に示した放射性廃棄物処分用トンネルが備える妻型枠を示す斜視図である。
【図13】図1に示した放射性廃棄物処分用トンネルの製造方法を示す説明図である。
【図14】図13における矢視D−Dでの断面図である。
【図15】図12に示した妻型枠を展開態様に切り換えた状態を示す説明図である。
【図16】図1に示した放射性廃棄物処分用トンネルの製造方法を示す説明図である。
【図17】図16における矢視E−Eでの断面図である。
【図18】図1に示した放射性廃棄物処分用トンネルにおいて、坑道の内周面と、覆工の外周面との間の空隙にベントナイトを充填する際の説明図である。
【図19】図18における矢視F−Fでの断面図である。
【図20】図1に示した放射性廃棄物処分用トンネルにおいて、覆工の内部空間を閉塞する場合の説明図である。
【図21】実施の形態2である放射性廃棄物処分用トンネルの切羽近傍を示す断面図である。
【図22】図21における矢視G−Gでの断面図である。
【図23】図22に示した妻型枠の一部を拡大して示した図である。
【図24】実施の形態2において、坑道と覆工との間の空隙部分に骨材を充填した状態の一例を示す図である。
【図25】実施の形態2において、坑道と覆工との間の空隙部分に骨材を充填した状態の一例を示す図である。
【図26】実施の形態3において、坑道と覆工との間の空隙部分に骨材と粒状のベントナイトとの混合物を充填した状態の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0108】
1 放射性廃棄物処分用トンネル
10 放射性廃棄物処分体
11 坑道
11a 切羽
12 地山
13 妻型枠
13a 充填ノズル
13b 貫通ノズル
13c 袋体
14 土壌材
15 レール
16s 空隙
20 覆工
20s 内部空間
21 筒体
21s 内部空間
22 セグメント
23 モルタル
24 岩石
30,30´ 充填材層
31 骨材
31s 骨材充填部
31s´ 骨材・ベントナイト充填部
32 ベントナイト
32´ 粒状ベントナイト
40 閉塞材
50 掘削装置
51 掘削装置本体
51x 軸心
52 カッターヘッド
53 カッター
54 駆動源
55 車輪
55x 軸心
60 覆工組立装置本体
61 柱
62 車輪
63 ビーム
63a 第1走行手段
63b 第2走行手段
70 覆工組立手段
70x 軸心
71 第1軸部材
72 第2軸部材
73 第3軸部材
80 骨材吐出手段
81 骨材吐出手段本体
82 骨材吐出ノズル
82a 骨材吐出ノズル先端部
90 ベントナイト吐出手段
91 ベントナイト吐出手段本体
92 ベントナイト吐出ノズル
101 注入ノズル
102 排出確認ノズル
103 接続管
100 ベントナイト吐出装置
110 転圧装置
130 妻型枠
130a 有孔板
130b 無孔板
131 天端部
132 左肩部
133 右肩部
134 通気孔
135,136,137 充填口
140 路盤コンクリート
Bs ベントナイト充填空間
DS 掘削空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山を掘削して坑道を形成し、当該坑道の内周面を覆う環状の覆工を設けた放射性廃棄物処分用トンネルにおいて、
前記覆工と前記坑道との間に、アルカリ性成分を含まないか、あるいは、バリア性能に影響を及ぼさない程度のアルカリ性成分を含む骨材とベントナイトとで構成した充填材層を設けたことを特徴とする放射性廃棄物処分用トンネル。
【請求項2】
前記充填材層は、前記覆工と前記坑道との間に充填された骨材間に、エタノールを加えることによりスラリー状に変成したベントナイトを充填することによって構成したものであることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物処分用トンネル。
【請求項3】
前記充填材層は、骨材と粒状のベントナイトとを予め混合したものを、前記覆工と前記坑道との間に充填することによって構成したものであることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃棄物処分用トンネル。
【請求項4】
前記地山を掘削して形成した掘削空間から、前記覆工の外周面と前記坑道の内周面との間の空隙を分断する妻型枠を、前記地山の掘削方向に向けて所定の間隔で設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の放射性廃棄物処分用トンネル。
【請求項5】
前記妻型枠は、内部に粘土系材料を充填可能な充填空間を有し、当該充填空間に粘土系材料を充填せずに折り畳んだ収納態様と、当該充填空間に粘土系材料を充填することで前記掘削空間から前記空隙を分断する展開態様とに切り換え可能な袋体を有することを特徴とする請求項4に記載の放射性廃棄物処分用トンネル。
【請求項6】
前記袋体の前記充填空間に、粘土系材料であるベントナイトを充填することによって、前記妻型枠に遮水性を持たせることを特徴とする請求項5に記載の放射性廃棄物処分用トンネル。
【請求項7】
前記覆工の内部空間と前記空隙とを連通する通路を少なくとも2本設けることを特徴とする請求項2に記載の放射性廃棄物処分用トンネル。
【請求項8】
前記覆工の外周面と前記坑道の内周面との間の開放端を閉塞する妻型枠を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の放射性廃棄物処分用トンネル。
【請求項9】
前記妻型枠は板状体で構成したものであり、
前記板状体は、少なくとも一部に複数の通気孔を有したものであることを特徴とする請求項8に記載の放射性廃棄物処分用トンネル。
【請求項10】
前記妻型枠における天端部及び前記天端部の左右両側に位置する肩部に、前記骨材を前記空隙に充填するための充填口をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項8又は9に記載の放射性廃棄物処分用トンネル。
【請求項11】
前記妻型枠は、前記天端部から前記各肩部までの範囲に前記複数の通気孔を有したものであることを特徴とする請求項10に記載の放射性廃棄物処分用トンネル。
【請求項12】
前記各肩部における充填口は、前記天端部から前記坑道の中心のまわりに左右に45°回転した位置に設けられていることを特徴とする請求項10又は11に記載の放射性廃棄物処分用トンネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2009−276335(P2009−276335A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220338(P2008−220338)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】