説明

放射線検出装置及び方法、並びに放射線画像撮影システム

【課題】FPDのリセット動作によって、様々な特殊撮影に必要な機能、性能を満たすことができるようにする。
【解決手段】一般撮影、小児撮影、整形診断撮影等の撮影内容に応じて、撮影要求を受けるまでFPDの不要な信号電荷を読み出す定常リセットモードと、撮影要求を受けたときにFPDの不要な信号電荷を読み出す追加リセットモードとで実行するリセットを選択できるようにする。並列リセットは、複数行ずつ順次に不要な信号電荷を読み出すので、撮影要求からX線の曝射までのタイムラグを短くし、フレームレートが向上する。順次リセットは、1行ずつ順次に不要な信号電荷を読み出すので、電流変動による画質の劣化が発生せず、高画質な撮影を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を透過した放射線を検出して放射線画像を生成する放射線検出装置及び方法と、放射線検出装置を用いた放射線画像撮影システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
X線等の放射線を被写体に照射し、被写体を透過した放射線を受像して被写体の内部構造を表す放射線画像(以下、画像と呼ぶ)を撮影する医療用の放射線画像撮影システムが普及している。従来、放射線の受像にはフイルムが用いられていたが、現在ではイメージングプレート(以下、IPと呼ぶ)やフラットパネルディテクタ(以下、FPDと呼ぶ)等の放射線検出器の利用が進んでいる。
【0003】
FPDは、ガラス基板上に設けられた薄膜トランジスタアレイ(以下、TFTアレイと省略する)と、その上に設けられたX線変換層とを備えている。X線変換層は、被写体を透過したX線をその透過強度に比例した信号電荷に変換する。TFTアレイは、信号電荷を蓄積し、デジタルの画像データとして出力する。FPDを用いることにより、X線を連続的に曝射して人体を透視しながら行う撮影を行う透視撮影も可能となる。
【0004】
TFTアレイは、行方向に沿って配列した複数本のゲートラインと、行方向に直交する列方向に沿って配列した複数本のデータラインと、ゲートラインとデータラインとの交点近傍に設けられ、行方向及び列方向に沿って配列された複数の画素とを備えている。画素は、信号電荷を蓄積するコンデンサと、コンデンサからデータラインに信号電荷を読み出す薄膜トランジスタ(以下、TFTと省略する)とを備えている。同じ行に配列された複数のTFTは、共通のゲートラインに接続され、同じ列に配列された複数のTFTは、共通のデータラインに接続されている。
【0005】
各ゲートラインには、順次にゲート信号が入力される。ゲート信号が入力されたゲートラインに接続している複数のTFTは、同時にオンし、コンデンサからデータラインに信号電荷が出力される。データラインに出力された1行分の画素の信号電荷は、データラインに接続されたチャージアンプによって電機信号としてのアナログ電圧に変換され、A/Dコンバータによってアナログ電圧がデジタル信号に変換される。これにより、全画素の信号電荷が1行ずつデジタルの画像データに変換される。
【0006】
放射線画像撮影システムには、被写体を透過する際に散乱したX線によって画像のコントラストが低下するのを防止するため、ブッキーユニットを備えているものがある。ブッキーユニットは、FPDの前方で散乱X線を除去するグリッドと、このグリッドが撮影されないように、FPDのX線検出面と平行な方向に移動させる駆動機構とからなる。グリッドは、放射線画像撮影システムに撮影を行わせる操作(以下、撮影要求と呼ぶ)に応じて移動を開始し、X線は、グリッドの移動開始から静定時間の経過を待って曝射される。静定時間とは、グリッドが所定の速度に達する時間、またはグリッドの移動によってFPDに生じた振動が撮影に悪影響を与えないレベルまで収束するために必要な時間である。
【0007】
FPDには、放射線が照射されていないときに流れる暗電流によって、コンデンサに微量の信号電荷が蓄積される。暗電流による不要な信号電荷は、FPDによって撮影した画像にノイズとなって現れてしまう。この不要な信号電荷による画像のノイズを防止するため、従来は、撮影要求と同時に、FPDから不要な信号電荷を放出するリセット動作を行い、このリセット動作の終了後にX線を曝射していた。また、FPDの撮影待機中にリセット動作を繰り返し行い、撮影要求を受けたときには、実行中のリセット動作が終了してからX線を曝射させるものもあった。リセット動作は、撮影後の信号電荷の読み出しと略同じシーケンスであり、不要な信号電荷が1行ずつ読み出される。
ていた。
【0008】
撮影要求と同時に行われるリセット動作は、撮影要求からX線が曝射されるまでのタイムラグが長く、ユーザの操作が制約され、誤操作の原因となる可能性があった。また、連続撮影、透視撮影等のフレームレート低下の原因にもなっていた。更に、撮影直前にリセット動作を1回行っても、不要な信号電荷が十分に放出されず、FPDに残留することもあった。また、撮影待機中に繰り返し行われるリセット動作では、撮影要求のタイミングによって、撮影要求からX線が曝射されるまでのタイムラグにバラツキが生じるという問題があった。
【0009】
上述したリセット動作に係る問題を解決するため、例えば、以下で説明する特許文献1〜6の発明がなされている。特許文献1のリセット動作は、X線曝射スイッチの操作時にFPDの全ゲートラインにゲート信号を同時に入力し、全てのTFTを同時にオンさせ、全画素の不要な信号電荷を同時に放出している。これによれば、リセット動作にかかる時間がX線の曝射時間に比べて十分に短くなるので、フレームレートが向上する。
【0010】
特許文献2は、第1スイッチの操作時にFPDにリセット動作を行わせ、第2スイッチの操作時にX線源にX線を曝射させている。これによれば、第2スイッチの操作からX線が曝射されるまでのタイムラグを無くすことができる。
【0011】
特許文献3は、FPDの各画素を複数の画素群に分け、一方の画素群がリセット動作である空読み動作を行っている間に、他方の画素群によりX線を検出して信号電荷を読み出す本読み動作を行っている。これによれば、フレームレートが向上する。また、本読み動作で得た信号電荷を加算して平均化しているので、ノイズが低減する。
【0012】
特許文献4は、X線が曝射される前のアイドリング動作期間中にFPDのリセット動作を繰り返し行い、各リセット動作の終了後に、撮影者に対して曝射可能であることを知らせる曝射誘導信号を発生している。これによれば、曝射の遅延を抑えつつ安定した画像を取得することができる。
【0013】
特許文献5は、FPDとは別にX線を検出するセンサを設け、センサがX線を検出するまでFPDのリセット動作を繰り返し行い、X線が検出されたときにリセット動作を途中で中止し、X線源にX線を曝射させている。これによれば、X線源とFPDとを電気的に接続して制御しなくても適切な画像を得ることができる。
【0014】
特許文献6には、FPDの各画素を複数行ずつに分けた複数の画素群とし、各画素群のリセット動作を別々のシフトレジスタで同時に行わせている。これによれば、リセット動作にかかる時間を短縮し、また、特許文献1のように全画素の不要な信号電荷を同時に放出する場合に比べ、FPDの電流変動を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−340324号公報
【特許文献2】特開2001−103378号公報
【特許文献3】特開平10−170656号公報
【特許文献4】特開2005−312949号公報
【特許文献5】特開2007−151761号公報
【特許文献6】特許第3264693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
放射線画像撮影装置による撮影には、被写体の内部構造を通常の静止画として撮影する一般撮影の他、整形診断撮影、透視撮影等の特殊な撮影がある。整形診断撮影は、人体の骨、関節、筋肉等の運動器系の診断に用いられる撮影であり、画像の先鋭性が求められる。また、透視撮影は、X線を連続的に曝射して人体を透視しながら行う撮影であり、高感度、高い検出量子効率(DQE)、高フレームレートが求められる。また、一般撮影も被写体によって特殊な撮影となる場合がある。例えば、小児を撮影する小児撮影では、長時間静止していることができない小児を適切なタイミングで撮影するため、撮影要求からX線曝射までのタイムラグが短いこと、タイムラグのバラツキが小さいことが求められる。
【0017】
特許文献1〜6記載の発明では、撮影要求からX線曝射までのタイムラグを短くし、またはタイムラグのバラツキを小さくし、あるいは画像のノイズを低減することができる。しかし、上述した色々な特殊撮影の要求を適切に満たすことはできなかった。
【0018】
また、小児撮影や透視撮影のように短いタイムラグや高フレームレートを必要としない一般撮影、整形診断撮影では、ブッキーユニットが用いられる。しかし、特許文献1〜6記載の発明では、撮影前にブッキーユニットの静定時間を確保するのが難しい。
【0019】
本発明の目的は、FPDのリセット動作によって、様々な特殊撮影に必要な機能、性能を満たすことができるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の放射線検出装置は、放射線検出器、複数のスイッチング手段、読出制御手段、制御手順選択手段を備えている。放射線検出器は、被写体を透過した放射線を検出して信号電荷に変換し、行方向及び列方向に沿って配列した複数の画素により前記信号電荷を蓄積する。複数のスイッチング手段は、各画素を複数行ずつに分けた複数の画素群のそれぞれから、各画素に蓄積された信号電荷を1行ずつ順次に読み出す。読出制御手段は、各スイッチング手段の制御に用いる第1制御手順及び第2制御手順を少なくとも有しており、放射線検出器に放射線の検出を要求する撮影要求を受けるまで、第1制御手順または第2制御手順を繰り返す定常リセットモードと、撮影要求を受けたときに、実行中の制御手順が終了するのを待って、第1制御手順または第2制御手順を少なくとも1フレーム実行する追加リセットモードとを有している。制御手順選択手段は、定常リセットモードと追加リセットモードとに用いられる制御手順をそれぞれ選択する。
【0021】
第1制御手順は、各スイッチング手段を同時に駆動させて各画素に蓄積された不要な信号電荷を複数行ずつ順次に読み出す並列リセットであり、第2制御手順は、各スイッチング手段を1つずつ順次に駆動させて各画素に蓄積された不要な信号電荷を1行ずつ順次に読み出す順次リセットである。
【0022】
追加リセットモードの制御手順の1フレーム周期、またはフレーム数を設定する追加リセットモード調整手段を備えてもよい。また、定常リセットモード及び追加リセットモードの実行または停止を設定するリセットモード設定手段を備えてもよい。
【0023】
被写体または撮影目的に基づいて設定された複数種類の撮影モードの中から1つを選択する撮影モード選択手段を有する場合、制御手順選択手段は、撮影モード選択手段により選択された撮影モードに基づいて、待機リセットモードと追加リセットモードに用いられる制御手順を選択するようにしてもよい。
【0024】
また、放射線を検出した放射線検出器から読み出された信号電荷を電気的情報に変換する情報変換手段と、情報変換手段に蓄積された不要な信号電荷が放出されるように、情報変換手段をリセット状態にするリセット手段とを設け、信号電荷の読み出し開始に連動して、読出制御手段によりリセット手段を制御して、情報変換手段のリセット状態を解除させてもよい。
【0025】
本発明の放射線検出方法は、被写体を透過した放射線を検出して信号電荷を蓄積する放射線検出器に放射線の検出を要求する撮影要求を受けるまで、放射線検出器から信号電荷を読み出す第1制御手順または第2制御手順を繰り返し、放射線検出器の複数の画素に蓄積された不要な信号電荷を読み出すステップと、撮影要求を受けたときに、実行中の制御手順が終了するのを待って、第1制御手順または第2制御手順を少なくとも1フレーム実行し、放射線検出器の各画素に蓄積された不要な信号電荷を読み出すステップとを備えている。
【0026】
本発明の放射線画像撮影システムは、被写体に放射線を曝射する放射線曝射装置と、請求項1〜6いずれか記載の放射線検出装置と、放射線曝射装置と放射線検出装置とを制御する制御装置とを備えている。放射線検出装置の読出制御手段は、追加リセットモードの終了時に制御装置に放射線曝射許可信号を送信し、制御装置は、放射線曝射許可信号に応じて、放射線曝射装置に放射線を曝射させる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、定常リセットモードと追加リセットモードとで実行する制御手順を任意に選択して組み合わせることにより、例えば、撮影要求から放射線の曝射までのタイムラグの短縮、画像の先鋭性の向上、感度、DQE、フレームレートの向上等、各種撮影に求められる機能、性能等を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】X線画像撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】FPDの構成を示す分解斜視図である。
【図3】FPDの構成を示す模式図である。
【図4】TFTアレイの構成を示す斜視図である。
【図5】パネルユニットの構成を示すブロック図である。
【図6】TFTゲート制御回路の構成を示すブロック図である。
【図7】TFTゲート制御回路による並列リセット駆動を示すタイミングチャートである。
【図8】TFTゲート制御回路による順次リセット駆動を示すタイミングチャートである。
【図9】順次リセット駆動と並列リセット駆動の特徴を示した表である。
【図10】各種撮影に適したリセット駆動の組み合わせを示した表である。
【図11】パネルユニット制御回路の構成を示すブロック図である。
【図12】一般撮影時のパネルユニットの動作手順を示すフローチャートである。
【図13】一般撮影時のX線画像撮影システムの動作手順を示すタイミングチャートである。
【図14】小児撮影時のパネルユニットの動作手順を示すフローチャートである。
【図15】小児撮影時のX線画像撮影システムの動作手順を示すタイミングチャートである。
【図16】精鋭診断撮影時のパネルユニットの動作手順を示すフローチャートである。
【図17】整形診断撮影時のX線画像撮影システムの動作手順を示すタイミングチャートである。
【図18】透視撮影時のパネルユニットの動作手順を示すフローチャートである。
【図19】透視撮影時のX線画像撮影システムの動作手順を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に示すX線画像撮影システム10は、起立状態の被写体HにX線を曝射し、被写体Hを透過したX線を検出して、被写体Hの内部構造を表す画像をリアルタイムに表示する。X線画像撮影システム10は、被写体Hの内部構造をそのまま撮影する一般撮影の他、小児撮影、整形診断撮影、透視撮影等の特殊な撮影も行うことができる。
【0030】
X線画像撮影システム10は、X線曝射装置11、パネルユニット12、コンソール装置13及びシステムコントローラ14等を備えている。X線曝射装置11は、被写体HにX線を曝射し、パネルユニット12は被写体Hを透過したX線を検出する。システムコントローラ14は、X線曝射装置11及びパネルユニット12を統轄的に制御し、コンソール装置13はシステムコントローラ14の操作に用いられる。
【0031】
X線曝射装置11は、X線源17と、X線源17を制御するX線源制御回路18とを備えている。X線源17は、陰極のフィラメントからタングステンやモリブデン等のターゲットに電子を加速して入射させることによりX線を発生させるX線管である。X線源制御回路18は、システムコントローラ14の制御に基づいて、所定の線質、線量のX線が曝射されるように、陰極に流す電流(管電流)や加速電圧(管電圧)を調節し、X線源17にX線を曝射させる。
【0032】
パネルユニット12は、被写体Hを透過したX線を検出し、被写体Hの内部構造を表す画像データをシステムコントローラ14に送信する。パネルユニット12は、床に据え付けられた支柱(図示せず)に対し、上下動できるように取り付けられた筐体21を備えている。筐体21には、被写体Hの撮影部位が当接されるX線入射面21aが設けられている。X線源17は、X線入射面21aに対面するように配置されており、X線源17により曝射されて被写体Hを透過したX線は、X線入射面21aに入射する。
【0033】
筐体21内には、被写体Hによって散乱したX線を除去するブッキーユニット24と、ブッキーユニット24を通過したX線を検出するFPD25とともに、TFTゲート制御回路26、読出回路27、パネルユニット制御回路28等が設けられている。
【0034】
ブッキーユニット24は、FPD25の前方に配置されたグリッド31と、グリッド31をFPD25のX線検出面25aに並行な矢印方向に移動させる駆動機構32とを備えている。グリッド31は、X線を遮蔽する多数の鉛の箔がX線検出面25aに略直交する方向に沿って、間隙を設けながら積層されたグリッド構造を有している。X線源17から曝射されたX線のうち、被写体Hを透過して減衰しながら直進したX線は、鉛箔の間隙を通過してFPD25のX線検出面25aに到達する。これに対し、被写体H内で散乱して方向を変えた散乱X線は、鉛箔により遮断されるので、コントラストの低下が防止される。
【0035】
駆動機構32は、X線の照射中にグリッド31を右方にスライドさせ、グリッド31のグリッド構造がFPD25により撮像されないようにする。駆動機構32は、モータ等のアクチュエータと、モータの回転によってグリッド31を移動させる機構部品とによって構成されている。
【0036】
放射線検出器であるFPD25は、X線検出面25aに入射したX線を検出し、X線量に応じた信号電荷を蓄積する直接変換型のフラットパネルディテクタである。FPD25は、X線検出面25aがX線入射面21aに向くように配置されている。X線検出面25aは、例えば、被写体Hの胸部全体をカバーすることができる程度の面積を有している。図2に示すように、FPD25は、ガラス基板35と、ガラス基板35上に積層されたTFTアレイ36、X線変換層37、共通電極38とを備えている。
【0037】
図3に示すように、X線変換層37は、アモルファスセレン等の光導電膜からなり、X線が入射したときに、電子とホールの対を生じさせる。共通電極38は、X線変換層37の表面に設けられていて、直流高電圧が印加されている。X線変換層37にて生じた電子ホール対は、共通電極38に印加された高電圧により、ホールがTFTアレイ36に収束され、信号電荷が発生する。
【0038】
図4に示すように、TFTアレイ36は、行方向に沿って配列された複数本のゲートラインGLと、行方向に直交する列方向に沿って配列された複数本のデータラインDLとを備えている。ゲートラインGLとデータラインDLとで構成された格子状の配線の交点近傍には、行列方向に沿って配列された複数個の画素41が設けられている。
【0039】
画素41は、画素電極44、コンデンサ45(図3参照)、TFT46により構成されている。画素電極44は、行列方向に沿って配列されており、X線変換層37によって生成された信号電荷を収集する。コンデンサ45は、画素電極44の下層に設けられており、画素電極44により収集された信号電荷を蓄積する。TFT46は、同じ画素41内のコンデンサ45と、近傍のゲートラインGL及びデータラインDLとに接続されている。TFT46は、ゲートラインGLからゲート信号が入力されたときにオンし、コンデンサ45内の信号電荷をデータラインDLに読み出す。
【0040】
図5に示すように、FPD25には、例えば、画素41が行方向及び列方向に沿ってそれぞれ3072個ずつ配列されている。ゲートラインGL及びデータラインDLは、画素41の配列数に合わせてそれぞれ3072本ずつ設けられている。TFT46は、同じ行に配列されたものが共通のゲートラインGLに接続され、同じ列に配列されたものが共通のデータラインDLに接続されている。したがって、ゲートラインGLにゲート信号が入力されると、そのゲートラインGLに接続されている3072個のTFT46が同時にオンし、1行分の画素41の信号電荷がデータラインDL〜DL3072にそれぞれ読み出される。
【0041】
TFTゲート制御回路26は、接続されているゲートラインGL〜GL3072を介して、FPD25の各TFT46を駆動する。図6に示すように、TFTゲート制御回路26は、信号発生回路49と、セレクタ50と、12個のゲート制御IC51〜5112とを備えている。
【0042】
信号発生回路49は、所定周期のシフトクロック信号CPVをゲート制御IC51〜5112に入力し、ストローブ信号STVをセレクタ50に入力する。セレクタ50は、ゲート制御IC51〜5112に対し、信号発生回路49から入力されたストローブ信号STVを選択的に入力する。
【0043】
スイッチング手段であるゲート制御IC51〜5112は、いわゆるシフトレジスタであり、出力側に256本のゲートラインGLがそれぞれ接続されている。例えば、ゲート制御IC51には、ゲートラインGL〜GL256が接続されており、ゲート制御IC5112には、ゲートラインGL2817〜GL3072が接続されている。ゲート制御IC51〜5112は、信号発生回路49から入力されたシフトクロック信号CPVに基づいて、セレクタ50から入力されたストローブ信号STVをシフトし、256本のゲートラインGLに対し順次にゲート信号として出力する。
【0044】
TFTゲート制御回路26は、パネルユニット12の動作モードに応じて駆動シーケンスが切り換えられる。例えば、FPD25から不要な信号電荷を放出するリセットモードは、撮影要求受けるまで実行される定常リセットモードと、撮影要求後に実行される追加リセットモードからなり、並列リセット駆動または順次リセット駆動が選択的に実行される。また、FPD25にX線を検出させる一般撮影モードでは、信号電荷を蓄積する蓄積駆動と、蓄積された信号電荷を読み出す読出駆動を行う。
【0045】
図7は、並列リセット駆動時のシフトクロック信号CPV、ストローブ信号STV、各ゲートラインGLに入力されるゲート信号を示している。セレクタ50は、各ゲート制御IC51〜5112に対して同時にストローブ信号STVを入力する。各ゲート制御IC51〜5112は、シフトクロック信号CPVに基づいてストローブ信号STVをシフトし、接続されている256本のゲートラインGLに対して順次にゲート信号として出力する。
【0046】
TFTゲート制御回路26の並列リセット駆動に基づく並列リセットでは、FPD25の各画素41に蓄積されている不要な信号電荷が、複数行ずつ、すなわち12行ずつ順次に読み出される。
【0047】
図8は、順次リセット駆動時のシフトクロック信号CPV、ストローブ信号STV、各ゲートラインGLに入力されるゲート信号を示している。セレクタ50は、ゲート制御IC51にストローブ信号STVを入力する。ゲート制御IC51は、シフトクロック信号CPVに基づいてストローブ信号STVをシフトし、接続されているデータラインGL〜GL256に対して順次にゲート信号として出力する。シフトを終えてゲート制御IC51から出力されたストローブ信号STVは、セレクタ50を介して次のゲート制御IC51に入力される。以降、セレクタ50により、ストローブ信号STVが各ゲート制御IC51〜5112に対して順次に入力される。
【0048】
TFTゲート制御回路26の順次リセット駆動に基づく順次リセットでは、FPD25の各画素41に蓄積されている不要な信号電荷が、1行ずつ順次に読み出される。
【0049】
蓄積駆動は、FPD25の全TFT46をオフ状態にして、各画素41のコンデンサ45に信号電荷を蓄積する。読出駆動は、順次リセット駆動と略同じシーケンスである。読出駆動によるデータ読み出しでは、FPD25の各画素41から1行ずつ順次に信号電荷が読み出される。なお、読出駆動において読み出される信号電荷の量は、暗電流による信号電荷よりも格段に多いので、1フレーム周期が順次リセット駆動よりも長くなっている。
【0050】
セレクタ50は、並列リセット駆動時にゲート制御IC51〜5112からストローブ信号STVが入力されたとき、または順次リセット駆動及び読出駆動時にゲート制御IC5112からストローブ信号STVが入力されたときに、1フレーム完了信号FCをパネルユニット制御回路28に送信する。
【0051】
TFTゲート制御回路26は、パネルユニット制御回路28の制御に基づいて、定常リセットモード時に、並列リセット駆動または順次リセット駆動を繰り返す。また、定常リセットモード時に撮影要求を受けたときには、実行中のリセット駆動の1フレームが終了するのを待って追加リセットモードに移行し、並列リセット駆動または順次リセット駆動を少なくとも1フレーム実行する。
【0052】
定常リセットモードと追加リセットモードで、並列リセット駆動と順次リセット駆動とのいずれを実行するかは、各リセット駆動の特徴と撮影内容とに基づいてユーザが任意に選択できるようになっている。図9に示すように、不要電荷の放出特性は、順次リセット駆動及び並列リセット駆動と、参考として記載した全ライン一括リセットとで同等である。なお、全ライン一括リセットは、FPD25の全TFT46を同時にオンさせて不要な信号電荷を読み出すリセットである。
【0053】
順次リセット駆動では、FPD25の電流変動が発生しない。これに対し、並列リセット駆動は、FPD25の電流変動が僅かに発生し、1フレーム周期は順次リセット駆動よりも短くなる。全ライン一括リセットは、電流変動が並列リセット駆動よりも大きいが、1フレーム周期は並列リセット駆動よりも格段に短い。リセット時の電流変動は、画像のノイズに影響する。そのため、電流変動の発生しない順次リセット駆動の画質が最もよく、並列リセット駆動は、全ライン一括リセットよりも画質への影響を低減することができる。
【0054】
撮影内容としては、例えば、上述した一般撮影、小児撮影、整形診断撮影、透視撮影等である。図10には、上述した各撮影に最適なリセット駆動の組み合わせが記されている。なお、表中の「順次」、「並列」は、それぞれ順次リセット駆動、並列リセット駆動を表している。
【0055】
一般撮影では、撮影要求からX線の曝射までのタイムラグがある程度短く、かつタイムラグのバラツキが小さいこと、撮影直前にブッキーユニット24の静定時間が確保できること等が求められる。一般撮影に必要な条件を満たすには、例えば、定常リセットモードでは並列リセット駆動を繰り返し、追加リセットモードでは、静定時間よりも1フレーム周期が長い順次リセット駆動を行うのが好ましい。
【0056】
また、小児撮影では、小児を長時間静止させておくことが難しいので、撮影要求からX線の曝射までのタイムラグ及びタイムラグのバラツキが、一般撮影よりも短いことが求められる。また、ブッキーユニット24は、静定時間が必要となるため使用しない。この小児撮影に必要な条件を満たすためには、例えば定常リセットモードでは並列リセット駆動を繰り返し、追加リセットモードでは、並列リセット駆動を数フレーム行うのが好ましい。
【0057】
整形診断撮影では、人体の骨、関節、筋肉等を診断するので、画像の先鋭性が求められる。よって、整形診断撮影では、ブッキーユニット24が使用される。整形診断撮影では、できるだけ画像の劣化を抑えるため、例えば定常リセットモードでは画質の良い順次リセット駆動を繰り返し、追加リセットモードでは、順次リセット駆動を1フレーム行うのが好ましい。
【0058】
透視撮影では、感度、DQE、高フレームレート等が求められる。そこで、透視撮影は、定常リセットモードでは順次リセット駆動を繰り返して感度、DQEの向上を図り、追加リセットモードで並列リセット駆動を1フレーム行ってフレームレートを向上させるのが好ましい。なお、連続して撮影を行う透視撮影では、2回目移行の撮影でリセットが行われない。したがって、追加リセットモードとして設定するのは、1回目の撮影直前のリセットのみである。
【0059】
また、追加リセットモードの順次リセット駆動は、1フレーム周期Tを任意に設定することができる。同様に、追加リセットモードの並列リセット駆動は、実行するフレーム数を任意に設定することができる。これは、撮影前にブッキーユニット24の静定時間を確保するためである。なお、グリッド31が交換された場合、グリッド31の重量等によって静定時間が変化するが、順次リセット駆動の1フレーム周期T、または並列リセット駆動のフレーム数を調整することにより対応が可能である。
【0060】
図5に示す読出回路27は、接続されているデータラインDL〜DL3072を介して、FPD25の各コンデンサ45から信号電荷を読み出す。読出回路27は、チャージアンプ54、マルチプレクサ55、A/Dコンバータ56を備えている。
【0061】
情報変換手段であるチャージアンプ54は、例えば256ch×12の系統を有し、データラインDL〜DL3072から読み出した信号電荷を同時にアナログ電圧に変換する。チャージアンプ54の1chは、オペアンプ54a,コンデンサ54b,リセットスイッチ54cで構成されている。リセットスイッチ54cは、コンデンサ54bをショート状態にして蓄積されている不要な電荷を放出させるリセット手段である。
【0062】
マルチプレクサ55は、チャージアンプ54から入力されたアナログ電圧を所定数ずつ選択してA/Dコンバータ56に入力する。A/Dコンバータ56は、マルチプレクサ55から入力されたアナログ電圧を画素41ごとのデジタルの画素データに変換し、パネルユニット制御回路28に入力する。
【0063】
パネルユニット制御回路28は、パネルユニット12のブッキーユニット24、FPD25、TFTゲート制御回路26、読出回路27等を統括的に制御する。パネルユニット制御回路28は、光ファイバを用いた高速シリアル通信回線によってシステムコントローラ14に接続されている。システムコントローラ14からパネルユニット制御回路28には、レジスタへのアクセスや各種制御コマンド等が送信され、パネルユニット制御回路28からシステムコントローラ14には、各種応答コマンドや画像データ等が送信される。
【0064】
図11に示すように、パネルユニット制御回路28は、命令レジスタ59、状態レジスタ60、パラメータレジスタ61等の複数のレジスタを備えている。命令レジスタ59には、システムコントローラ14によって制御命令が書き込まれる。パネルユニット制御回路28は、命令レジスタに書き込まれた制御命令と、システムコントローラ14から送信された制御コマンドとに基づいてパネルユニット12の各部を制御する。
【0065】
状態レジスタ60には、パネルユニット12の動作状態(例えば、現在の動作モード等)や、制御命令及び制御コマンドに基づいて実行した制御の結果等がパネルユニット制御回路28自身によって書き込まれる。システムコントローラ14は、状態レジスタ60を参照してパネルユニット12の状態を知ることができる。
【0066】
パラメータレジスタ61には、パネルユニット12の各部の制御に用いられるパラメータが記憶されている。パネルユニット制御回路28は、制御命令及び制御コマンドにしたがって各種制御を行う際に、パラメータレジスタ61を適宜参照する。パラメータレジスタ61は、例えばA面61a、B面61b等の複数面を有しており、パネルユニット12の動作モードに応じて切り換えられる。
【0067】
例えば、パラメータレジスタ61のA面61aには、リセットモードに必要なパラメータが記憶され、B面61bには、一般撮影モードに必要なパラメータが記憶されている。リセットモード、一般撮影モード等の動作内容を変更する際には、システムコントローラ14によってパラメータレジスタ61の内容が適宜書き換えられる。なお、パラメータレジスタ61にC面、D面等を設け、それぞれエネルギーサブストラクション撮影や透視撮影等に用いてもよい。
【0068】
パネルユニット制御回路28は、読出回路27から送信されてきた画素データを集積して並べ替え、1ラインずつの画像データを生成し、内蔵するラインメモリ64に記憶する。1ラインの画像データは、ラインメモリ64から読み出されてシステムコントローラ14に送信される。ラインメモリ64の記憶容量は、1フレーム分の画像データを記憶できるサイズでもよいし、1フレーム未満の画像データを記憶できるサイズでもよい。本実施形態では、読出回路27からの画素データの読み出しと、システムコントローラ14への画像データの送信とを並行して行うので、1フレーム未満の記憶容量、例えば10ライン分の画像データが記憶可能なラインメモリ64を使用している。
【0069】
図1に示すコンソール装置13は、一般的なパーソナルコンピュータであり、光ファイバを用いた高速シリアル通信回線によって、システムコントローラ14に接続している。コンソール装置13は、インストールされているX線撮影システム用操作プログラムにより、システムコントローラ14を操作する。また、コンソール装置13は、パネルユニット12から出力された画像データを、システムコントローラ14を介して受信し、画像データに基づく画像をモニタに表示する。
【0070】
コンソール装置13によるシステムコントローラ14の操作としては、例えば、X線曝射装置11に対するX線の線種・線質設定、パネルユニット12のリセットモードの実施または解除、定常リセットモード及び追加リセットモードで実行するリセット駆動の種類、追加リセットモードで順次リセット駆動を行う際の1フレーム周期T、追加リセットモードで並列リセット駆動を行う際のフレーム数、撮影条件設定、撮影要求等がある。これらの操作は、コンソール装置13を構成するキーボードや、マウス等のポインティングデバイスによって行われる。
【0071】
撮影条件設定では、例えば、実施する撮影の種類や、X線の曝射時間、ブッキーユニット24の使用/不使用、画像サイズ等が設定される。撮影の種類は、例えば、一般撮影、エネルギーサブストラクション撮影及び透視撮影等である。X線の曝射時間、ブッキーユニット24の使用/不使用、画像サイズ等は、被写体Hの年齢、性別、撮影部位、撮影モード等に基づいてコンソール装置13から入力される。撮影要求は、例えばコンソール装置13に接続された撮影スイッチ66の操作によって行われる。
【0072】
システムコントローラ14は、一般的なパーソナルコンピュータであり、インストールされているX線撮影システム制御プログラムに基づいて、X線曝射装置11及びパネルユニット12を統轄的に制御する。システムコントローラ14は、通信I/F67、CPU68、メモリ69、DSP70、ストレージ71、曝射制御回路72等から構成されており、これらはデータバス73によって接続されている。
【0073】
通信I/F67は、光ファイバを用いた高速シリアル通信回線を行う通信回路であり、パネルユニット12とコンソール装置13とに接続されている。CPU68は、コンソール装置13によってX線の線種・線質、曝射時間等が設定されたときに、X線曝射装置11に接続されている曝射制御回路72を制御し、X線源制御回路18にX線の線種・線質、曝射時間を設定する。曝射制御回路72は、X線曝射装置11を制御するための専用回路であり、システムコントローラ14の外部基板接続端子に接続されている。
【0074】
CPU68は、コンソール装置13によってリセットモードの実施または解除、撮影要求等の制御要求が入力されたときに、通信I/F67を介してパネルユニット制御回路28の制御コマンドを送信し、または命令レジスタ59に制御命令を書き込む。なお、制御命令とは、パネルユニット制御回路28に規定動作を行わせるための命令であり、制御コマンドとは、制御命令に基づいて動作中のパネルユニット制御回路28に割り込み動作を行わせるための命令である。
【0075】
CPU68は、定常リセットモード及び追加リセットモードで実行するリセット駆動の種類、追加リセットモードで順次リセット駆動を行う際の1フレーム周期T、追加リセットモードで並列リセット駆動を行う際のフレーム数、X線の曝射時間、ブッキーユニット24の使用/不使用、画像サイズ等、パネルユニット12の制御に用いるパラメータがコンソール装置13から入力されたときには、パラメータレジスタ61の当該パラメータを書き換える。
【0076】
メモリ69は、CPU68が各部の制御時に各種データや、パネルユニット12から送信されてきた画像データ等を記憶する。デジタルシグナルプロセッサ(以下、DSPと省略する)70は、メモリ69に記憶された複数ラインの画像データから1フレームの画像データを生成し、この画像データに階調調節、ガンマ補正等の各種画像処理を施して、コンソール装置13のモニタへの表示に適した画像を生成する。DSP70で各種画像処理が施された画像(以下、単に画像または撮影した画像という)は、メモリやHDD等で構成されたストレージ71に記憶され、コンソール装置13によって適宜読み出される。
【0077】
一般撮影を行う際の作用について、図12のフローチャートと図13のタイミングチャートとを参照しながら説明する。図1に示すように、X線画像撮影システム10が起動すると、パネルユニット制御回路28は、パネルユニット12の各部を動作可能な状態にする初期状態を経て、NOP(Not Operation:非動作)状態となる。
【0078】
NOP状態では、FPD25及びTFTゲート制御回路26は停止されている。しかし、読出回路27のチャージアンプ54は、パネルユニット制御回路28によってリセットスイッチ54cがオンされてリセット状態となっている。これにより、チャージアンプ54内の不要な信号電荷が放出される。
【0079】
NOP状態の命令レジスタ59には、制御命令が書き込まれておらず、状態レジスタ60には、NOP状態であることが書き込まれている。また、起動直後のパラメータレジスタ61は、リセットモード用のA面61aが適用される。
【0080】
システムコントローラ14は、システム動作の準備完了後、パネルユニット制御回路28の命令レジスタ59に、制御命令「リセットモード設定」を書き込む。
【0081】
パネルユニット制御回路28は、命令レジスタ59の制御命令「リセットモード設定」に基づいて、NOP状態からリセットモードに移行し、状態レジスタ60の内容を「リセットモード」に書き換える。また、パネルユニット制御回路28は、パラメータレジスタ61を参照して順次リセット駆動の1フレーム周期Tを取得し、この1フレーム周期Tから、並列リセット駆動の1フレーム周期tと、シフトクロック信号CPVの周期とを決定する。例えば、順次リセット駆動の1フレーム周期Tが50msecのとき、並列リセット駆動の1フレーム周期tは、1/12の4msecとなる。
【0082】
パネルユニット制御回路28は、TFTゲート制御回路26に定常リセットモードを開始させる。定常リセットモードでは、並列リセット駆動が繰り返される。これにより、FPD25の各画素41に蓄積されている不要な信号電荷が、12行分ずつ順次に読み出される並列リセットが開始される。セレクタ50は、各ゲート制御IC51〜5112からシフトを終えたストローブ信号STVが入力されたときに、パネルユニット制御回路28に1フレーム完了信号FCを送信する。
【0083】
パネルユニット制御回路28は、1フレーム完了信号FCが入力されたときに命令レジスタ59を参照し、「リセットモード」であることを確認して、TFTゲート制御回路26に定常リセットモードを実行させる。これにより、リセットモード中のパネルユニット12では、並列リセットが繰り返し実行されるので、FPD25の残留電荷を最小限にすることができる。
【0084】
コンソール装置13によって順次リセット駆動の1フレーム周期Tが設定されると、その設定内容はシステムコントローラ14によってパネルユニット制御回路28に送信され、パラメータレジスタ61の当該項目が書き換えられる。パネルユニット制御回路28は、書き換えられた1フレーム周期Tに基づいて、新たなシフトクロック信号CPVと並列リセット駆動の1フレーム周期tとを決定し、これらに基づいて並列リセット駆動を継続する。
【0085】
システムコントローラ14は、パネルユニット制御回路28の状態レジスタ60を参照し、撮影可能な状態であるか否かを確認している。例えば、状態レジスタ60が「リセットモード」であるときには、システムコントローラ14は撮影可能であると判断し、コンソール装置13にその旨を送信する。コンソール装置13は、撮影可能である旨をモニタ等に表示し、ユーザに報知する。
【0086】
システムコントローラ14は、コンソール装置13に接続された撮影スイッチ66がユーザにより操作されたときに、制御コマンド「撮影要求」をパネルユニット制御回路28に送信する。
【0087】
パネルユニット制御回路28は、制御コマンド「撮影要求」を受信したときに、現在実行中の並列リセット駆動が1フレームするのを待って、定常リセットモードから追加リセットモードに移行する。一般撮影の追加リセットモードでは、TFTゲート制御回路26により、順次リセット駆動が開始される。これにより、FPD25の各画素41に蓄積されている不要な信号電荷が1行ずつ順次に読み出される順次リセットが開始される。順次リセットは、並列リセットよりも信号電荷の放出特性がよいので、並列リセットで残留した不要な信号電荷を放出することができる。また、順次リセットは、FPD25の電流変動が発生しないので、並列リセットのみを繰り返す場合に比べ、電流変動に起因する画像のノイズを小さくすることができる。
【0088】
パネルユニット制御回路28は、追加リセットモードへの移行と同時に、ブッキーユニット24の駆動機構32を駆動させ、グリッド31をFPD25のX線検出面25aと平行な方向に移動させる。グリッド31の移動によりパネルユニット12に発生した振動は、静定時間の経過後に撮影に影響を及ぼさない程度まで収束する。そのため、順次リセット駆動の1フレーム周期Tを静定時間よりも長く設定しておけば、ブッキーユニット24による振動の影響を防止することができる。
【0089】
パネルユニット制御回路28は、セレクタ50から順次リセット駆動の1フレーム完了信号FCが入力されたときに、動作モードをリセットモードから一般撮影モードに切り換え、状態レジスタ60を「一般撮影モード」に書き換える。また、パラメータレジスタ61を、A面61aからB面61bに切り換える。パネルユニット制御回路28は、TFTゲート制御回路26を初期化した後、パラメータレジスタ61に記憶されているX線曝射時間の間、全てのTFT46をオフ状態で保持する蓄積駆動をTFTゲート制御回路26に行わせる。なお、TFTゲート制御回路26の初期化は、パラメータレジスタ61の切り換えによる動作不良を解消するために行っている。
【0090】
パネルユニット制御回路28は、リセットモードの終了時に、システムコントローラ14に対して、応答コマンド「X線曝射許可」を送信する。応答コマンド「X線曝射許可」を受信したシステムコントローラ14は、曝射制御回路72によりX線源制御回路18を制御し、X線源17にX線を曝射させる。
【0091】
本実施形態では、システムコントローラ14がパネルユニット12の状態を確認し、あるいはコマンドを受信することにより、最適なタイミングでX線を曝射させることができる。したがって、パネルユニット12をX線曝射装置11と電気的に接続させて制御する必要がない。よって、本発明のパネルユニット12は、各種レジスタへのアクセス、またはコマンド受信ができるように構成された様々な診断システムにも適用することができる。
【0092】
撮影要求からX線が曝射されるまでのタイムラグは、最大で並列リセット駆動の1フレーム周期tと、順次リセット駆動の1フレーム周期Tとを加算した時間となる。本実施形態では、順次リセット駆動の1フレーム周期Tが50msec、並列リセット駆動の1フレーム周期tが4msecなので、タイムラグは最大で54msecとなる。このタイムラグは、従来の放射線画像撮影装置の1行ずつ順次に信号電荷を読み出すリセット動作に比べ、格段に短くなる。
【0093】
また、撮影要求からX線が曝射されるまでのタイムラグのバラツキは、最大で並列リセット駆動の1フレーム周期tの4msecとなる。これにより、タイムラグが長すぎること、タイムラグのバラツキが大きいことを原因とする誤操作を防止することができる。
【0094】
X線源17により曝射されたX線は、被写体Hを透過し、X線検出面25aに入射し、X線変換層により信号電荷に変換される。発生した信号電荷は、各画素41の画素電極44に収集され、コンデンサ45により蓄積される。
【0095】
パネルユニット制御回路28は、X線曝射時間の経過後、TFTゲート制御回路26に読出駆動を開始させる。また、パネルユニット制御回路28は、チャージアンプ54のリセットスイッチ54cをオフさせて、リセット状態を解除する。チャージアンプ54は、FPD25から信号電荷を読み出す直前までリセットされているので、不要な信号電荷の影響を小さくすることができる。
【0096】
TFTゲート制御回路26の読出駆動により、FPD25の各画素41に蓄積された信号電荷を1行ずつデータラインDLに読み出すデータ読み出しが開始される。読み出された信号電荷は、チャージアンプ54によりアナログ電圧に変換され、マルチプレクサ55により選択されて、A/Dコンバータ56によりデジタルの画素データに変換される。パネルユニット制御回路28は、A/Dコンバータ56から送信されてきた画素データから1ラインごとの画像データを生成し、ラインメモリ64に記憶していく。
【0097】
パネルユニット制御回路28は、読出駆動の開始と同時に、システムコントローラ14に対して「1フレームデータ開始」コマンドを送信している。「1フレームデータ開始」コマンドを受信したシステムコントローラ14は、画像データの受信が可能であるときに、パネルユニット制御回路28に制御コマンド「1ラインデータ要求」を送信する。
【0098】
制御コマンド「1ラインデータ要求」を受信したパネルユニット制御回路28は、ラインメモリ64から1ラインの画像データを読み出し、シリアルデータに変換し、1ラインごとのパケット単位でシステムコントローラ14に送信する。システムコントローラ14は、受信した1ライン分の画像データをメモリ69に記憶し、受信可能であれば、次の制御コマンド「1ラインデータ要求」をパネルユニット制御回路28に送信する。システムコントローラ14は、所定ライン数、すなわち1フレーム分の画像データを受信すると、パネルユニット制御回路28に対する制御コマンド「1ラインデータ要求」の送信を中止する。
【0099】
システムコントローラ14では、DSP70がメモリ69内に記憶されている複数ラインの画像データから1フレームの画像データを生成し、各種画像処理を施してストレージ71に記憶する。コンソール装置13は、ストレージ71から画像データを読み出し、モニタに画像を表示する。
【0100】
パネルユニット制御回路28は、画像データの送信完了後、一般撮影モードからリセットモードに切り替わり、状態レジスタ60を「リセットモード」に書き換える。また、パラメータレジスタ61をA面61aに切り換える。パネルユニット制御回路28は、TFTゲート制御回路26に並列リセット駆動を開始させ、チャージアンプ54のリセットスイッチ54cをオンさせることにより、不要な信号電荷を放出する。
【0101】
リセットモード中に、コンソール装置13によりリセットモードの解除が設定されたときには、システムコントローラ14からパネルユニット制御回路28に制御コマンド「リセットモード解除」が送信される。制御コマンド「リセットモード解除」を受信したパネルユニット制御回路28は、直ちにリセットモードを解除し、NOP状態に移行する。これにより、動作不良等によって緊急にパネルユニット12の動作を停止させたいときには、迅速にパネルユニット12をNOP状態にすることができる。
【0102】
上述した一般撮影と同様に、定常リセットモード及び追加リセットモードのリセット駆動を選択し、追加リセットモードで実行する順次リセット駆動の1フレーム周期T、または並列リセット駆動のフレーム数を設定することにより、小児撮影、整形診断撮影、透視撮影等の特殊な撮影を適切に行うことができる。
【0103】
図14及び図15に示すように、小児撮影では、定常リセットモードにおいて並列リセット駆動を繰り返し、追加リセットモードでは設定したフレーム数だけ並列リセット駆動が実行される。また、X線曝射までのタイムラグを優先するため、ブッキーユニット24は使用しない。並列リセット駆動の1フレーム周期tが例えば8msecであり、追加リセットモードのフレーム数が例えば1フレームであるとき、撮影要求からX線の曝射までのタイムラグは最大で16msecとなり、タイムラグのバラツキは最大で8msecとなる。これにより、長時間静止するのが難しい小児を最適なタイミングで撮影することができる。
【0104】
図16及び図17に示すように、整形診断撮影では、定常リセットモードにおいて順次リセット駆動を繰り返し、追加リセットモードでは順次リセット駆動が1フレーム実行される。画像の先鋭性を優先するため、ブッキーユニット24が使用される。これによれば、電流変動による画質の劣化が発生しない順次リセット駆動のみを使用するので、整形診断に最適な高画質を得ることができる。
【0105】
図18及び図19に示すように、透視撮影では、定常リセットモードにおいて順次リセット駆動を繰り返し、追加リセットモードでは設定したフレーム数だけ並列リセット駆動が実行される。また、連写のフレームレートを維持するため、ブッキーユニット24は使用しない。これによれば、定常リセットモードで順次リセット駆動を用いているため、並列リセット駆動を用いる場合よりX線曝射までのタイムラグは長くなるものの、高感度、高いDQE、高フレームレートで撮影を行うことができる。
【0106】
上記実施形態では、ユーザが撮影内容に応じて、定常リセットモード及び追加リセットモードで実行するリセット駆動の種類、追加リセットモードで実行する順次リセット駆動の1フレーム周期、または並列リセット駆動のフレーム数等を設定している。しかし、一般撮影、小児撮影等の撮影モードの設定が可能なX線画像撮影装置に適用する場合には、選択された撮影モードに合わせて、パネルユニット制御回路28が上記リセットに関する項目を自動的に設定するようにしてもよい。これによれば、リセットに関するユーザの設定が不要になる。
【0107】
上記実施形態では、システムコントローラ14が、X線画像撮影システム10の起動後に、制御命令「リセットモード設定」を命令レジスタ59に自動的に書き込んでいるが、コンソール装置13での設定を待ってから命令レジスタ59に書き込んでもよい。また、順次リセット駆動の1フレーム周期Tを設定できるようにしたが、例えばゲート制御IC51の1個あたりの1フレーム周期を設定できるようにしてもよい。
【0108】
また、パネルユニット制御回路28は、1ラインの画像データをそのままシステムコントローラ14に送信しているが、パネルユニット制御回路28で可能な程度のフィルタ処理等の画像処理を行ってから送信してもよい。また、1ラインの画像データは、ラインメモリ64に記憶させずに、そのままシステムコントローラ14に送信してもよい。
【0109】
また、チャージアンプ54は、TFTゲート制御回路26が読出駆動を実行するとき以外は、常にリセット状態としたが、リセットモードの間だけリセット状態にしてもよい。
【0110】
上記各実施形態は、直接変換型のFPDを例に説明したが、間接変換型のFPDにも適用可能である。また、被写体が起立した状態で撮影を行う立位式のX線画像撮影装置を例に説明したが、診察台に横たわった状態で撮影を行う臥位式の放射線画像撮影装置や、乳ガンの検診に用いるマンモグラフィ等にも適用可能である。
【0111】
以上、本発明に係るX線画像撮影システムについて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0112】
10 X線画像撮影システム
11 X線曝射装置
12 パネルユニット
13 コンソール装置
14 システムコントローラ
24 ブッキーユニット
25 FPD
26 TFTゲート制御回路
27 読出回路
28 パネルユニット制御回路
36 TFTアレイ
41 画素
45 コンデンサ
46 TFT
54 チャージアンプ
54c リセットスイッチ
50 セレクタ
51 ゲート制御IC
55 セレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過した放射線を検出して信号電荷に変換し、行方向及び列方向に沿って配列した複数の画素により前記信号電荷を蓄積する放射線検出器と、
前記各画素を複数行ずつに分けた複数の画素群のそれぞれから、前記各画素に蓄積された前記信号電荷を1行ずつ順次に読み出す複数のスイッチング手段と、
前記各スイッチング手段の制御に用いる第1制御手順及び第2制御手順を少なくとも有し、前記放射線検出器に放射線の検出を要求する撮影要求を受けるまで、前記第1制御手順または前記第2制御手順を繰り返す定常リセットモードと、前記撮影要求を受けたときに、実行中の制御手順が終了するのを待って、前記第1制御手順または前記第2制御手順を少なくとも1フレーム実行する追加リセットモードとを有する読出制御手段と、
前記定常リセットモードと前記追加リセットモードとに用いられる前記制御手順をそれぞれ選択する制御手順選択手段とを備えたことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記第1制御手順は、前記各スイッチング手段を同時に駆動させて前記各画素に蓄積された不要な信号電荷を複数行ずつ順次に読み出す並列リセットであり、前記第2制御手順は、前記各スイッチング手段を1つずつ順次に駆動させて前記各画素に蓄積された不要な信号電荷を1行ずつ順次に読み出す順次リセットであることを特徴とする請求項1記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記追加リセットモードの制御手順の1フレーム周期、またはフレーム数を設定する追加リセットモード調整手段を備えたことを特徴とする請求項1または2いずれか記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記定常リセットモード及び前記追加リセットモードの実行または停止を設定するリセットモード設定手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記被写体または撮影目的に基づいて設定された複数種類の撮影モードの中から1つを選択する撮影モード選択手段を有し、前記制御手順選択手段は、前記撮影モード選択手段により選択された前記撮影モードに基づいて、前記待機リセットモードと前記追加リセットモードに用いられる前記制御手順を選択することを特徴とすることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の放射線検出装置。
【請求項6】
放射線を検出した前記放射線検出器から読み出された信号電荷を電気的情報に変換する情報変換手段と、前記情報変換手段に蓄積された不要な信号電荷が放出されるように、前記情報変換手段をリセット状態にするリセット手段とを有し、前記読出制御手段は、前記信号電荷の読み出し開始に連動して前記リセット手段による前記情報変換手段のリセット状態を解除させることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の放射線検出装置。
【請求項7】
被写体を透過した放射線を検出して信号電荷を蓄積する放射線検出器に放射線の検出を要求する撮影要求を受けるまで、前記放射線検出器から信号電荷を読み出す第1制御手順または第2制御手順を繰り返して前記放射線検出器の複数の画素に蓄積された不要な信号電荷を読み出すステップと、
前記撮影要求を受けたときに、実行中の制御手順が終了するのを待って、前記第1制御手順または前記第2制御手順を少なくとも1フレーム実行し、前記放射線検出器の各画素に蓄積された不要な信号電荷を読み出すステップとを備えたことを特徴とする放射線検出方法。
【請求項8】
被写体に放射線を曝射する放射線曝射装置と、
請求項1〜6いずれか記載の放射線検出装置と、
前記放射線曝射装置と前記放射線検出装置とを制御する制御装置とを備え、
前記放射線検出装置の読出制御手段は、前記追加リセットモードの終了時に前記制御装置に放射線曝射許可信号を送信し、前記制御装置は、前記放射線曝射許可信号に応じて、前記放射線曝射装置に放射線を曝射させることを特徴とする放射線画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−227510(P2010−227510A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81522(P2009−81522)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】