説明

放射線画像撮影システム

【課題】信号受信状態による撮影準備のやり直しを軽減できる放射線画像撮影システムを提供する。
【解決手段】撮影者は撮影室1内において患者Sと立位用架台2とを適切な位置関係となるようにセッティングする。次に、撮影者は撮影室1内において撮影部3に設けた信号受信状態表示部8から信号受信状態、撮影情報表示部9から患者Sの患者情報等を確認する。撮影部3と信号送受信機6との間の無線通信による信号受信状態がX線撮影に適切な場合には撮影準備に移行する。しかし、撮影部3と信号送受信機6との間の信号受信状態が不適切な場合には、撮影部3のケーブルコネクタ10と信号送受信機6のケーブルコネクタ11をケーブルを用いて接続し有線通信とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影部と信号送受信機との間の信号受信状態を表示する機能を備えた放射線画像撮影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル技術の進歩により、工業用の非破壊検査や医療診断の場において、対象物を透過した放射線の強度分布を電気信号に変換し、この電気信号を処理することにより可視画像として再生する装置が広く利用されている。また、近年の半導体プロセス技術の進歩に伴い、半導体センサを用いて同様に放射線画像を撮影する装置が開発されている。
【0003】
これらのシステムは、従来の感光性フィルムを用いる放射線画像撮影システムと比較して、非常に広いダイナミックレンジを有し、放射線の露光量の変動に影響され難い放射線画像を得ることができる利点を有している。更には、従来の感光性フィルム方式とは異なり、化学処理が不要なため、廃液処理の問題も解消されると共に、即時的に出力画像を得ることができる利点もある。
【0004】
通常では、この種の撮影装置は撮影室に設置して利用されているが、回診撮影や様々な姿勢での撮影を行うために、より薄型、軽量で可搬性を有する撮影装置が求められてきている。
【0005】
また従来の撮影装置は、撮影部と操作部とをケーブルを介して接続することにより、通信や電力供給等を行っており、このケーブルが移動や撮影の際に操作性を損ねる原因となっている。
【0006】
そこで、特許文献1においては、撮影部と操作部とを無線により無線通信する撮影装置や無線通信システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−210444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常では、撮影部と操作部とを無線通信する場合には、撮影室で撮影の準備を行い、制御室で撮影部の操作や放射線の照射を行う。この撮影方法においては、撮影者は撮影室と制御室の2つの部屋を往来し、制御室内に設置してあるモニタを介して、初めて撮影部と操作部との間の信号受信状態が悪く、無線通信が不可能なことを認識する場合がある。このような場合には、撮影者は再度撮影室に入室して撮影準備をやり直す必要が生ずる。
【0009】
また、病床での回診X線撮影においても無線通信を用いることもある。この回診X線撮影においては、被写体である患者とベッドや車椅子との間に撮影部を挿入して撮影を行う。撮影者は撮影の準備を行った後に、移動型X線発生装置上のモニタで初めて、撮影部と操作部との間の信号受信状態が悪く、撮影不可能な状態であることを認識することがある。この場合においても、再度撮影準備をやり直す必要がある。
【0010】
上述のように、無線通信による放射線画像撮影での課題の1つに、信号受信状態の不具合による撮影準備のやり直し作業の発生の問題がある。
【0011】
本発明の目的は、上述の問題点を解消し、信号受信状態による撮影準備のやり直しの作業を軽減することができる放射線画像撮影システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る放射線画像撮影システムは、被検者を透過した放射線を検出する撮影部と、該撮影部を制御する操作部と、前記撮影部と前記操作部とを接続する信号送受信機とを有する放射線画像撮影システムにおいて、前記撮影部と前記信号送受信機は有線通信又は無線通信で接続可能な送受信手段を有し、前記撮影部又は前記信号送受信機に前記撮影部と前記信号送受信機との間の信号受信状態を表示する信号受信状態表示部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る放射線画像撮影システムによれば、信号受信状態による撮影準備のやり直しを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の放射線画像撮影システムの構成図である。
【図2】実施例1の撮影部、信号送受信機及び操作部の構成図である。
【図3】信号受信状態表示部及び撮影情報表示画面の説明図である。
【図4】実施例2の撮影部、信号送受信機及び操作部の構成図である。
【図5】実施例2の回診撮影システムの概略図である。
【図6】実施例3の撮影部、信号送受信機及び操作部の構成図である。
【図7】実施例3の放射線画像撮影システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は実施例1における病院内での撮影を想定した放射線画像撮影システムの構成図、図2は撮影部、信号送受信機及び操作部の構成図である。撮影室1内には、被検者である患者Sが立位する前方に立位用架台2が配置され、この立位用架台2にはX線画像を撮影する撮影部3を内包するケース部4が取り付けられている。また、患者Sの後方にはX線を照射するX線発生装置のX線管球5が設けられている。
【0017】
ケース部4の内部には、放射線を検知するためのフォトタイマや散乱線カット用のグリッドを駆動するブッキーユニット等が内蔵可能である。撮影部3内には、患者Sを透過したX線の強度分布を検出する図示しないX線検出センサや、撮影部3へ電力を供給するバッテリを内蔵している。
【0018】
また、撮影部3は有線通信又は無線通信の何れでも接続可能な送受信手段を有することにより、撮影室1に設置された信号送受信機6に接続可能とされていると共に、信号送受信機6には撮影室1内に設置された外部電源7が接続されている。
【0019】
撮影部3には、撮影者が撮影部3と信号送受信機6との間の信号受信状態を視覚的に確認するための信号受信状態表示部8と、患者情報等を確認するための文字や画像から成る撮影情報表示部9とが並設されている。本実施例1においては、この信号受信状態表示部8及び撮影情報表示部9は患者S等によって隠れてしまうことを防止するために、撮影部3の放射線入射面以外の側面に設置されている。
【0020】
また撮影部3の側面には、有線通信をするためのケーブルコネクタ10が設けられ、信号送受信機6に設けられたケーブルコネクタ11とケーブル12を介して接続可能となっている。撮影部3に設けたケーブルコネクタ10は、患者S等によって接続し難くなることを防止するために、撮影部3の放射線入射面以外の面に設置することが好ましい。
【0021】
信号送受信機6はケーブル13を介して、X線の制御や取得したX線画像の画像処理等を行う制御室14内の操作部15に接続されている。更に、この操作部15には、撮影した放射線画像や撮影条件、患者情報等を表示するモニタ16及びキーボード等の入力部17が接続されている。これにより、撮影部3と信号送受信機6は無線通信によりにより接続され、信号送受信機6と操作部15とはケーブル13を介して接続される。
【0022】
撮影を行う場合には、先ず撮影者は撮影室1内において患者Sと立位用架台2とを適切な位置関係となるようにセッティングする。次に、撮影者は撮影室1内において撮影部3に設けた信号受信状態表示部8から信号受信状態、撮影情報表示部9から患者Sの患者情報等を確認する。そして、撮影部3と信号送受信機6との間の無線通信による信号受信状態が、X線撮影に適切な場合には撮影準備に移行する。
【0023】
しかし、撮影部3と信号送受信機6との間の信号受信状態が立位用架台2等の影響により、不適切な場合には撮影部3のケーブルコネクタ10と信号送受信機6のケーブルコネクタ11をケーブル12を用いて接続し、有線通信とする。そして、有線通信とすることにより、信号受信状態が適切な状態とした後に撮影準備に移行する。
【0024】
続いて、撮影者は撮影室1から制御室14に移動し、操作部15から撮影要求信号を送信することによりX線発生装置のX線管球5からX線を照射する。撮影部3の検出パネルで、患者Sを透過したX線画像はデジタル画像として撮影され、撮影画像は操作部15に転送されモニタ16に表示される。
【0025】
上述のように、撮影者は撮影室1内において、信号受信状態表示部8により、信号受信状態の確認ができ、信号受信状態に適した通信方法を選択することができるため、撮影準備のやり直し作業を軽減することができる。
【0026】
また撮影部3には、信号受信状態表示部8とは別に、音、振動等によって警告する報知器を設け、信号受信状態がX線撮影に適さない場合には、視覚以外の感覚に働きかけて周囲に警告することも可能である。
【0027】
また有線通信時には、撮影部3と信号送受信機6をケーブル12で接続するため、撮影部3内のバッテリ残量が少ない、バッテリ残量がないなどの場合には、外部電源7から信号送受信機6、撮影部3を駆動させるための電力を供給することができる。同時に、外部電源7からの撮影部3内のバッテリに充電することもできる。
【0028】
図3(a)は撮影部3の無線通信時における信号受信状態表示部8及び撮影情報表示部9の画面を示し、図3(b)は有線通信時における信号受信状態表示部8及び撮影情報表示部9の画面を示している。
【0029】
信号受信状態表示部8により、無線通信時においては撮影部3と信号送受信機6との間の信号受信状態を確認でき、有線通信時においてはケーブル12と撮影部3又は信号送受信機6との接触不良やケーブルの断線等を確認することができる。
【0030】
図3(a)に示す無線通信時において、撮影情報表示部9には患者情報21、撮影条件22、撮影部ID23、撮影部3のバッテリ残量24、バッテリ駆動時間25、撮影履歴26が表示されている。
【0031】
また、図3(b)に示す有線通信時においては、図3(a)に示すバッテリ残量24とバッテリ駆動時間25が、それぞれバッテリ充電状態27とバッテリ充電完了時間28に変更される。なお、バッテリ充電状態27とはバッテリの状態が充電中か充電完了かを表示するものであり、バッテリ充電完了時間28は充電が完了するまでの残り時間を表示する項目である。有線通信時には、外部電源7から電力供給されるため、バッテリ残量24、残り駆動時間25を表示する必要はなくなる。
【0032】
このように、撮影情報表示部9の表示項目を無線通信又は有線通信によって変更することにより、撮影情報として必要な情報と不必要な情報を見間違えることを防止することができると共に、表示部領域を有効活用できる。
【実施例2】
【0033】
図4は実施例2の構成図を示し、撮影部3から信号受信状態表示部8及び撮影情報表示部9を分離し、ケーブル31を介して撮影部3と接続している。なお、実施例1と同一の部材には同一の符号を付している。
【0034】
例えば、撮影部3を患者Sとベッドの間に挿入して使用する場合や撮影部3を架台2内に収納して使用する場合に、撮影者は撮影部3に設けた信号受信状態表示部8の確認が困難になることがある。そこで、本実施例2においては、撮影部3から信号受信状態表示部8及び撮影情報表示部9を分離させることにより、撮影者の手元で信号受信状態表示部8及び撮影情報表示部9を確認することができる。なお、信号受信状態表示部8及び撮影情報表示部9の表示内容は実施例1と同様である。
【0035】
図5は実施例2における回診撮影システムの概略図を示しており、操作者Oは撮影部3をベッド32と患者Sの間に挿入し、移動型X線撮影装置41からX線を照射することによりX線撮影を行う。一般に、移動型X線撮影装置41の本体42の下部には車輪43、44が設けられ、任意の位置に移動可能であり、本体42内には信号送受信機6及び操作部15が内蔵されている。更に、本体42には任意に位置調整可能なアーム部45が取り付けられ、このアーム部45の先端にはX線管球5が固定されている。
【0036】
また、本体42内には操作部15が内蔵されており、移動型X線撮影装置41の上部の図示しない操作卓の操作が可能とされている。実施例1と同様に、撮影部3と信号送受信機6は信号受信状態によって、有線通信又は無線通信の何れの通信も方式も適用可能である。
【実施例3】
【0037】
図6は実施例3の構成図、図7は病院内での撮影を想定した放射線画像撮影システムの概略図を示している。信号送受信機6には信号受信状態表示部8及び撮影情報表示部9が設けられている。前述したように、撮影部3を患者Sとベッドの間に挿入して使用する場合や、撮影部3を架台2内に収納して使用する場合がある。このような場合に、実施例1、2のように撮影部3に信号受信状態表示部8及び撮影情報表示部9が設けられていると、撮影者は信号受信状態及び患者情報の確認が困難となる場合がある。
【0038】
そこで本実施例3においては、信号送受信機6に信号受信状態表示部8及び撮影情報表示部9を設けることにより、撮影者は撮影部3の撮影状態や姿勢に左右されることなく、信号受信状態表示部8及び撮影情報表示部9を確認することができる。
【0039】
また、信号送受信機6と操作部15とは、ケーブル13を介して接続されているため、信号受信状態に影響を受けることなく撮影情報表示部9の表示をすることが可能である。
【0040】
撮影者は撮影室1内に設置してある信号送受信機6の信号受信状態表示部8から信号受信状態を確認し、信号受信状態がX線撮影に適切な場合には、撮影準備に移行する。しかし、信号受信状態が不適切な場合には撮影部3のケーブルコネクタ10と信号送受信機6のケーブルコネクタ11とをケーブル12により接続して有線通信とすることによって、信号受信状態を適切にした後に、撮影準備に移行する。
【0041】
このように、信号送受信機6に信号受信状態表示部8を設けることにより、撮影者は撮影室1内で信号受信状態の確認と信号受信状態に達した通信方法を選択することができるため、撮影準備のやり直し作業を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上の説明では、発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらの形態に限定されないことは云うまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 撮影室
2 立位用架台
3 撮影部
5 X線管球
6 信号送受信機
7 外部電源
8 信号受信状態表示部
9 撮影情報表示部
12、13 ケーブル
14 制御室
15 操作部
16 モニタ
17 入力部
41 移動型X線撮影装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者を透過した放射線を検出する撮影部と、該撮影部を制御する操作部と、前記撮影部と前記操作部とを接続する信号送受信機とを有する放射線画像撮影システムにおいて、前記撮影部と前記信号送受信機は有線通信又は無線通信で接続可能な送受信手段を有し、前記撮影部又は前記信号送受信機に前記撮影部と前記信号送受信機との間の信号受信状態を表示する信号受信状態表示部を設けたことを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記信号受信状態表示部に対し文字や画像を表示する撮影情報表示部を並設することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記撮影情報表示部は前記撮影部と前記信号送受信機との間の通信方法によって表示項目が変更することを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記撮影部に前記信号受信状態表示部を設けたとき、前記信号受信状態表示部は前記撮影部の放射線入射面以外の面に設けたことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記撮影部と前記信号送受信機とを有線通信するためのケーブルを接続するケーブルコネクタは、前記撮影部の放射線入射面以外の面に設けたことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記信号受信状態表示部は前記信号受信状態表示部を設けた前記撮影部又は前記信号送受信機から分離できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記撮影部は前記信号受信状態表示部とは別の報知器を有し、前記信号受信状態が放射線画像撮影に適さないとき、前記報知器によって警告することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−115384(P2011−115384A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275498(P2009−275498)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】