説明

放射線画像撮影装置及び放射線画像撮影装置の異常検出方法

【課題】線量計等の測定器を別途設けることなく、前記放射線画像生成手段、放射線量情報検出器又は放射線源のいずれかの異常を検出する。
【解決手段】放射線画像撮影装置であるマンモグラフィ装置12は、放射線を照射する放射線源33と、放射線源33から照射される放射線を検出し放射線画像を生成する固体検出器46と、放射線源33から照射される放射線量を検出するAECセンサ49の出力に基づき、放射線源33から照射する放射線量を制御する放射線源制御部76と、固体検出器46及びAECセンサ49の基準となる出力の範囲を規定した基準出力範囲が記憶される基準出力記憶部90と、固体検出器46及びAECセンサ49の出力と基準出力範囲とを比較して、固体検出器46、AECセンサ49又は放射線源33のいずれかの異常を検出可能な異常検出部88とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像生成手段、放射線量情報検出器又は放射線源のいずれかの異常を検出することが可能な異常検出手段を備える放射線画像撮影装置及び放射線画像撮影装置の異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、放射線源から放射された放射線を被写体に曝射し、被写体を透過した放射線を固体検出器により検出し且つ放射線画像情報を記録する放射線画像撮影装置が広汎に使用されている。
【0003】
この種の放射線画像撮影装置では、被写体(患者)の放射線量を最小にしながらも良好な放射線画像品質を確保する必要がある。従って、関心領域の適切な放射線画像情報を取得するためには、該関心領域に所望の量の放射線が曝射されるように曝射制御条件を設定する必要がある。
【0004】
特許文献1には、放射線源から照射(曝射)される放射線を検出し放射線画像を生成する固体検出器(放射線画像生成手段)の背後に自動露出制御用の検出器であるAEC(Automatic Exposure Control)センサ(放射線画量情報検出器)を配置し、このAECセンサによって検出された放射線量に基づき放射線源から照射される放射線量を制御する技術的思想が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−284289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の放射線画像撮影装置では、上記のように固体検出器やAECセンサ等の放射線検出器を用いていることから、その出力(出力信号レベル、電流の出力値)が想定値に対して上下に変動する検出器の感度異常が生じる可能性がある。その反対に、前記放射線検出器の感度が正常で、放射線源の出力異常を生じる可能性も考えられる。
【0007】
そこで、これらの異常を確実に検出して特定するためには、例えば、線量計等の測定器を別途用い、放射線出力を測定する方法が考えられるが、線量計が搭載されていない既設の放射線画像撮影装置の場合には該線量計の接続や調整に係るコスト及び時間を要することになる。当然、予め線量計を搭載した放射線画像撮影装置であっても、該線量計の搭載によるコスト上昇を生じることになる。
【0008】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、線量計等の測定器を別途設けることなく、前記放射線画像生成手段、放射線量情報検出器又は放射線源のいずれかの異常を検出することが可能な放射線画像撮影装置及び放射線画像撮影装置の異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る放射線画像撮影装置は、放射線を照射する放射線源と、前記放射線源から照射される放射線を検出し放射線画像を生成する放射線画像生成手段と、前記放射線源から照射される放射線量を検出する放射線量情報検出器の出力に基づき、前記放射線源から照射する放射線量を制御する放射線源制御手段と、前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の基準となる出力の範囲を規定した基準出力範囲が記憶される基準出力記憶手段と、前記放射線源から照射された放射線に対する前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の各出力を、前記基準出力記憶手段に記憶された前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の各基準出力範囲と比較することにより、前記放射線画像生成手段、前記放射線量情報検出器又は前記放射線源のいずれかの異常を検出可能な異常検出手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、前記異常検出手段で検出された異常を外部に通知する異常通知手段を備えるようにすることもできる。
【0011】
また、前記放射線源から照射される放射線の伝播方向で、前記放射線画像生成手段の背後側に前記放射線量情報検出器が配置されているとよい。
【0012】
さらに、前記異常検出手段は、同一の放射線領域での放射線量に基づく前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の各出力を、各基準出力範囲と比較するように設定されるようにすることもできる。
【0013】
本発明に係る放射線画像撮影装置の異常検出方法は、放射線を照射する放射線源と、前記放射線源から照射される放射線を検出し放射線画像を生成する放射線画像生成手段と、前記放射線源から照射される放射線量を検出する放射線量情報検出器の出力に基づき、前記放射線源から照射する放射線量を制御する放射線源制御手段とを備える放射線画像撮影装置の異常検出方法であって、前記放射線源から照射された放射線に対する前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の各出力を、予め記憶された前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の各基準出力範囲と比較することにより、前記放射線画像生成手段、前記放射線量情報検出器又は前記放射線源のいずれかの異常を検出し、該検出された異常を外部に通知することを特徴とする。
【0014】
この場合、前記放射線画像生成手段の出力が前記基準出力範囲に含まれ且つ前記放射線量情報検出器の出力が前記基準出力範囲に含まれる場合には、前記放射線画像生成手段、前記放射線量情報検出器又は前記放射線源のいずれも異常なしであると判断し、前記放射線画像生成手段の出力が前記基準出力範囲に含まれず且つ前記放射線量情報検出器の出力が前記基準出力範囲に含まれる場合には、前記放射線画像生成手段が異常であると判断し、前記放射線画像生成手段の出力が前記基準出力範囲に含まれ且つ前記放射線量情報検出器の出力が前記基準出力範囲に含まれない場合には、前記放射線量情報検出器が異常であると判断し、前記放射線画像生成手段の出力が前記基準出力範囲に含まれず且つ前記放射線量情報検出器の出力が前記基準出力範囲に含まれない場合には、前記放射線源が異常であると判断するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、異常検出部を備え、該異常検出部によって放射線源から照射された放射線に対する放射線画像生成手段及び放射線量情報検出器の出力を、予め記憶された基準出力範囲と比較することにより、放射線画像生成手段、放射線量情報検出器又は放射線源のいずれかの異常を検出することが可能となる。従って、線量計等の測定器を別途設ける必要がなく、容易に且つ低コストに放射線画像生成手段等の異常を検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の異常検出方法について、この方法を実施する放射線画像撮影装置との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る放射線画像撮影装置としてのマンモグラフィ装置12の斜視説明図である。なお、本実施形態では、マンモグラフィ装置12を例示して本発明に係る放射線画像撮影装置を説明するが、本発明はこれに限られるものではないことは勿論である。
【0018】
マンモグラフィ装置12は、立設状態に設置される基台26と、基台26の略中央部に配設される旋回軸28に固定されるアーム部材30と、被写体32の撮像部位である乳房に対して放射線を曝射する放射線源33を収納し、アーム部材30の一端部に固定された放射線源収納部34と、該放射線源収納部34に対向配置されて、アーム部材30の他端部に固定される撮影台36と、撮影台36に対して乳房を押圧して保持する押圧板38とを備える。前記撮影台36は、乳房を透過した放射線を検出して放射線画像を生成する固体検出器(放射線画像生成手段、画像センサ)46を収納している(図2参照)。
【0019】
放射線源収納部34及び撮影台36が固定されたアーム部材30は、旋回軸28を中心として矢印A方向に旋回することで、被写体32の乳房に対する撮影方向が調整可能に構成される。押圧板38は、アーム部材30に連結された状態で放射線源収納部34及び撮影台36間に配設されており、矢印B方向に変位可能に構成される。
【0020】
また、基台26には、マンモグラフィ装置12によって検出された被写体32の撮像部位、撮影方向等の撮影情報、被写体32のID情報等を表示するとともに、必要に応じてこれらの情報を設定可能な表示操作部40が配設される。
【0021】
図2は、マンモグラフィ装置12における撮影台36の内部構成を示す要部説明図であり、撮影台36及び押圧板38間に被写体32の撮像部位であるマンモ44を配置した状態を示す。なお、参照符号45は、被写体32の胸壁を示す。
【0022】
撮影台36の内部には、放射線源収納部34に内蔵された放射線源33から出力された放射線Xに基づいて撮像された放射線画像情報を蓄積し、電気信号として出力し放射線画像を生成する前記固体検出器46と、固体検出器46に蓄積記録された放射線画像情報を読み取るために、固体検出器46に読取光を照射する読取光源部48とが収納される。さらに、撮影台36の内部には、放射線Xの曝射(照射)制御条件を決定するため、マンモ44及び固体検出器46を透過した放射線Xの放射線量を検出する複数の放射線量情報検出器(以下、AECセンサ49という)と、固体検出器46に蓄積されている不要電荷を除去するために、固体検出器46に消去光を照射する消去光源部50とが収納される。
【0023】
本実施形態において、放射線画像生成手段である固体検出器46は、直接変換方式且つ光読出方式の放射線固体検出器であって、マンモ44を透過した放射線Xに基づく放射線画像情報を静電潜像として蓄積し、読取光源部48からの読取光により走査されることで、静電潜像に応じた電流を発生する。
【0024】
固体検出器46は、例えば、特開2004−154409号公報に開示されたものを用いることができ、具体的には、ガラス基板上に形成され、放射線Xを透過する第1導電層と、放射線Xが曝射されることで電荷を発生する記録用光導電層と、第1導電層に帯電される潜像極性電荷に対して略絶縁体として作用する一方、潜像極性電荷と逆極性の輸送極性電荷に対して略導電体として作用する電荷輸送層と、読取光が照射されることで電荷を発生して導電性を呈する読取用光導電層と、放射線Xを透過する第2導電層とを順に積層して構成される。記録用光導電層と電荷輸送層との界面には、蓄電部が形成される。
【0025】
第1導電層及び第2導電層は、それぞれ電極を構成する。第1導電層の電極は、二次元状の平坦な平板電極とされ、第2導電層の電極は、記録される放射線画像情報を画像信号として検出するための所定の画素ピッチからなる多数の線状電極として構成される。線状電極の配列方向が主走査方向、線状電極の延在する方向が副走査方向に対応する。
【0026】
読取光源部48は、例えば、複数のLEDチップを一列に並べて構成されるライン光源と、ライン光源から出力された読取光を固体検出器46上に線状に照射させる光学系とを有し、固体検出器46の第2導電層である線状電極の延在方向と直交する方向にLEDチップが配列されたライン光源を前記線状電極の延在方向(図3の矢印C方向)に移動させることで固体検出器46の全面を露光走査する。
【0027】
消去光源部50は、図3及び図4に示すように、短時間で発光/消光し、且つ、残光の非常に小さいLEDチップ52をパネル54上に多数配列して構成される。なお、パネル54は、固体検出器46と平行に配置された状態で撮影台36に収納される。
【0028】
放射線量情報検出器であるAECセンサ49は、図2〜図4に示すように、センサ基板56上に複数(本実施形態の場合は16個)配設されており、消去光源部50を構成するパネル54に形成された孔部57から固体検出器46方向を指向している。なお、各AECセンサ49は、該孔部57からAECセンサ49側に向けて、放射線源33からの放射線X方向に沿って延出される角形の筒状部材(図示せず)で囲繞した状態で配置される。
【0029】
このようなAECセンサ49は、撮影台36上にマンモ44が位置決め固定された状態で、該マンモ44に対応するようにしてセンサ基板56上に配列される(図3及び図4参照)。
【0030】
図5は、マンモグラフィ装置12を構成する制御回路のブロック図である。
【0031】
マンモグラフィ装置12の制御回路は、放射線源収納部34に収納され、曝射スイッチ72の操作によって放射線Xを放出する放射線源33を制御する放射線源制御部76と、AECセンサ49によって検出した放射線Xの単位時間当たりの放射線量に基づき、放射線源33による放射線Xの適切な曝射時間を算出し、曝射制御条件として放射線源制御部76に供給する曝射時間算出部82とを備える。また、マンモグラフィ装置12の制御回路は、固体検出器46によって検出された放射線画像情報に基づく放射線画像を形成する放射線画像形成部84と、前記放射線画像を表示する表示部86とを備える。このように前記固体検出器46は、放射線源33から曝射される放射線を検出し放射線画像を生成する放射線画像生成手段として機能する。
【0032】
さらに、マンモグラフィ装置12の制御回路には、放射線源33からの放射線Xの曝射に基づく、固体検出器46及びAECセンサ49の出力と、固体検出器46及びAECセンサ49の基準出力範囲とが入力される異常検出部(異常検出手段)88が備えられる。該基準出力範囲は、固体検出器46及びAECセンサ49の正常時の基準を示す出力範囲であり、基準出力記憶部(基準出力記憶手段)90に記憶されている。
【0033】
異常検出部88は、基準出力記憶部90からの固体検出器46及びAECセンサ49の基準出力範囲と、固体検出器46及びAECセンサ49からの出力とを比較して、固体検出器46、AECセンサ49又は放射線源33の異常を検出し(異常の有無を判断し)、その検出された異常に関する情報を異常通知部(異常通知手段)92に送信する。
【0034】
本実施形態のマンモグラフィ装置12は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作について説明する。
【0035】
先ず、図示しないコンソール、IDカード等を用いて、被写体32に係るID情報、撮影方法等の設定を行う。この場合、ID情報には、被写体32の氏名、年齢、性別等の情報があり、被写体32が所持するIDカードから取得することができる。なお、マンモグラフィ装置12がネットワークに接続されている場合には、そのネットワーク上の他の装置から取得することも可能である。また、撮影方法には、医師によって指示された撮像部位、撮影方向等の情報があり、ネットワークに接続された上位の装置から取得し、あるいは、コンソールから放射線技師が入力することが可能である。これらの情報は、マンモグラフィ装置12の表示操作部40に表示して確認することができる。
【0036】
次いで、放射線技師は、指定された撮影方法に従ってマンモグラフィ装置12を所定の状態に設定する。例えば、マンモ44の撮影方向としては、上部から放射線Xを曝射して撮影を行う頭尾方向(CC)撮影、側面から放射線Xを曝射して撮影を行う側面方向(ML)撮影、斜め方向から放射線Xを曝射して撮影を行う内外側斜位(MLO)撮影があり、これらの撮影方向に応じてアーム部材30を旋回軸28を中心に旋回させる。なお、図1は、頭尾方向(CC)撮影を行う場合を示す。
【0037】
次に、マンモグラフィ装置12に対して被写体32のマンモ44を位置決めする。すなわち、マンモ44を撮影台36に載置した後、押圧板38を押し下げ、撮影台36及び押圧板38間にマンモ44を保持させる(図2参照)。
【0038】
以上の準備作業が完了した後、マンモ44の撮影を開始する。
【0039】
先ず、マンモ44に曝射する放射線Xの放射線量を少なく設定することで、注目部位(この場合には、乳腺領域)での曝射制御条件を決定する曝射(以下、プレ曝射という)を行った後、決定された曝射制御条件に従い、所定の放射線量からなる放射線Xをマンモ44に曝射(以下、本曝射という)して撮影を行う場合について説明する。
【0040】
そこで、放射線源制御部76は、放射線源33に供給する管電流を制御し、単位時間当たりの放射線量を少なく設定した状態で放射線Xをマンモ44に曝射する。
【0041】
この場合、AECセンサ49は、押圧板38、マンモ44および固体検出器46を透過した放射線Xの放射線量を検出し、曝射時間算出部82においてAECセンサ49が検出した単位時間当たりの放射線量に基づき、マンモ44の適正な放射線画像情報を得るために必要な放射線量を曝射する曝射時間を曝射制御条件として算出する。
【0042】
なお、AECセンサ49に曝射される放射線Xは、固体検出器46によって一部が吸収されているため、その減衰の影響を考慮して、AECセンサ49が検出した単位時間当たりの放射線量を固体検出器46の検出面に到達する単位時間当たりの放射線量に補正する必要がある。また、プレ曝射においては、放射線源33から放出される放射線Xの単位時間当たりの放射線量が小さく設定されている。このため、プレ曝射のときに放射線源33から放出される単位時間当たりの放射線量と、本曝射のときに放射線源33から放出される単位時間当たりの放射線量との比率を考慮して、プレ曝射時において固体検出器46の検出面に到達する単位時間当たりの放射線量を補正する必要がある。
【0043】
曝射時間算出部82は、以上の補正要因を考慮して補正された固体検出器46の検出面での単位時間当たりの放射線量と曝射時間との積算値が、適正な放射線画像情報を得ることのできる必要放射線量となるように、放射線Xの前記曝射時間を算出する。算出された曝射時間は、曝射制御条件として放射線源制御部76に設定される。
【0044】
次いで、本曝射を開始する。
【0045】
放射線源制御部76は、放射線源33に供給する管電流を、本曝射に必要な単位時間当たりの放射線量が得られる電流に設定する。次いで、放射線技師が曝射スイッチ72を操作すると、放射線源33が前記電流によって制御された状態で放射線Xがマンモ44に曝射され、曝射制御条件として設定されている曝射時間が経過した後、放射線Xの曝射が停止される。
【0046】
なお、本曝射を行っている間の放射線量をAECセンサ49により検出してその積算量を算出し、設定された曝射時間に達する前に放射線Xの放射線量が許容量を超過した場合、放射線源制御部76を制御して放射線源33による放射線Xの曝射を強制的に停止させることにより、マンモグラフィ装置12の故障等で被写体32に過剰な放射線Xが曝射される事態を未然に防止することもできる。
【0047】
押圧板38及び撮影台36間に保持されたマンモ44を透過した放射線Xは、撮影台36に収納されている固体検出器46に到達し、放射線画像情報が記録される。マンモ44の撮影が終了した後、読取光源部48が固体検出器46に沿って図3の矢印C方向に移動して読取光が照射されると、固体検出器46に記録された放射線画像情報が読み出され、放射線画像形成部84において放射線画像が形成され、表示部86に表示される。放射線画像情報の読み取られた固体検出器46には、次の撮影を行うため、消去光源部50から発せられた消去光が照射され、蓄積されている不要電荷が除去される。
【0048】
ところで、前記のような固体検出器46やAECセンサ49では、その出力(出力信号レベル、電流の出力値)が想定値に対して上下に変動する感度異常を生じる可能性があり、また、このような感度異常が、放射線源33の出力異常に起因する場合も想定される。そこで、本実施形態に係るマンモグラフィ装置12では、異常検出部88により、固体検出器46、AECセンサ49又は放射線源33のそれぞれの異常の有無を検出し、異常通知部92により放射線技師等に通知可能に構成されている。
【0049】
次に、本発明に係る放射線画像撮影装置の異常検出方法につき、図6に示す本実施形態に係るマンモグラフィ装置12での異常検出方法を例示して説明する。
【0050】
この異常検出方法は、マンモグラフィ装置12において、撮影台36に被写体32がある状態(前記のプレ曝射や本曝射)、又は、撮影台36に被写体32がない状態のいずれでも実行することができる。なお、撮影台36に被写体32がない状態の方がマンモ44で放射線が吸収されることがなく、固体検出器46等の異常をより正確に検出可能である一方、撮影台36に被写体32がある状態では、放射線画像撮影と同時に異常検出を行うことができるため異常検出に係る手間を削減することができる。以下では、撮影台36に被写体32がない状態での制御方法について説明するが、撮影台36に被写体32がある状態でも略同様な制御を行うことができる。
【0051】
先ず、図6のステップS1において、操作者(放射線技師)は、例えば、表示操作部40に設けられたモード切替スイッチ(図示せず)を操作して、マンモグラフィ装置12を撮影モードから異常検出モードに設定し、曝射スイッチ72を操作する。そうすると、放射線源33からの放射線Xが固体検出器46に曝射され、放射線画像情報が記録されると共に、各AECセンサ49によりその放射線量が検出される。
【0052】
次いで、読取光源部48が固体検出器46に沿って図4の矢印C方向に移動して読取光が照射されると、固体検出器46に記録された放射線画像情報が出力され、異常検出部88に入力される。また、各AECセンサ49の出力も異常検出部88に入力される。
【0053】
異常検出部88では、先ず、固体検出器46の出力が、基準出力記憶部90に記憶された基準出力範囲であるか否かを判断する(ステップS2)。
【0054】
この場合、固体検出器46の出力は、該固体検出器46の全面(各画素)からの出力(合計値若しくは平均値)、又は、複数の画素を含む特定領域D1やD2(図7参照)からの出力(合計値若しくは平均値)として設定される。なお、前記特定領域とは、図7に示すように、固体検出器46を複数の画素を含むいくつかの領域に細分化したものである。
【0055】
従って、ステップS2では、固体検出器46の全面からの出力をそれに対応するように記憶された基準出力範囲と比較するか、又は、前記特定領域D1やD2を通過する放射線X1やX2を検出したことによる固体検出器46の出力を、各特定領域に対応するように記憶された基準出力範囲と比較する。
【0056】
なお、前記基準出力範囲とは、固体検出器46やAECセンサ49の出力のノイズ等による変動を考慮して、正常時の出力値に一定の許容範囲を設けて設定したものであり、前記変動がない場合には当然1つの出力値に設定することも可能である。
【0057】
このようなステップS2を実行した結果、固体検出器46の出力が基準出力記憶部90に記憶された基準出力範囲内の場合には、次にステップS3が実行され、固体検出器46の出力が基準出力記憶部90に記憶された基準出力範囲外の場合には、次にステップS4が実行される。
【0058】
ステップS3では、AECセンサ49の出力が、基準出力記憶部90に記憶された基準出力範囲内であるか否かを判断する。なお、マンモグラフィ装置12では、上記のようにAECセンサ49を複数個設けている。従って、ステップS3及びS4においては、各AECセンサ49の出力(合計値若しくは平均値)が、基準出力記憶部90に記憶された基準出力範囲と比較される。
【0059】
そして、ステップS3において、各AECセンサ49の出力が、基準出力記憶部90に記憶された基準出力範囲内である場合には、固体検出器46及びAECセンサ49及び放射線源33のいずれも異常なしと判断する(ステップS5)。一方、AECセンサ49の出力のうち、少なくとも1個が前記基準出力範囲外である場合にはAECセンサ49に異常があり、固体検出器46及び放射線源33には異常がないと判断する(ステップS6)。
【0060】
また、ステップS4では、全てのAECセンサ49の出力が、基準出力記憶部90に記憶された基準出力範囲内であるか否かを判断する。
【0061】
ステップS4において、全てのAECセンサ49の出力が、基準出力記憶部90に記憶された基準出力範囲外である場合には、放射線源33に異常があり、固体検出器46及びAECセンサ49には異常がないと判断する(ステップS7)。このことは、複数のAECセンサ49の全てに異常があることは通常発生し難く、従って、ステップS4において全てのAECセンサ49が異常であると判断された場合には放射線源33に異常があると判断する方が妥当であるからである。一方、全てのAECセンサ49の出力が、前記基準出力範囲内である場合には固体検出器46に異常があり、AECセンサ49及び放射線源33には異常がないと判断する(ステップS8)。
【0062】
異常検出部88では、上記ステップS5〜S8での判断結果を異常通知部92に送信する。これにより、異常通知部92では、前記判断結果を外部、例えば、表示操作部40に表示させて操作者に通知する。従って、操作者は、異常が検出された部品を容易に特定することができるため、該部品の交換や修理等のメンテナンスを迅速に行うことができる。すなわち、本実施形態の場合、線量計等の測定器を別途設ける必要がなく、容易に且つ低コストに固体検出器46等の異常を検出することができる。
【0063】
また、上記ステップS2と、ステップS3及びS4では、同一の特定領域に属する固体検出器46及びAECセンサ49の出力を異常検出部88にて基準出力範囲と比較することが好ましい。すなわち、例えば、図7に示す放射線X1が曝射された固体検出器46の特定領域D1での出力と、該放射線X1が曝射されたAECセンサ49の出力とを、異常検出部88にて一括して基準出力範囲と比較する。この場合、放射線源33からの線量が変動したとしても、固体検出器46の特定領域D1とAECセンサ49には、同一の領域の放射線X1が曝射されることになる。従って、放射線X1の線量が変動すると、固体検出器46及びAECセンサ49の出力も、この線量の変動に伴って同様に変動する。このため、例えば、固体検出器46及びAECセンサ49の出力が同時に前記基準出力範囲外となった場合には、固体検出器46及びAECセンサ49の出力は線量の変動に対応して変動したものと判断することができ、放射線源33の異常であると一層確実に判断することができる。
【0064】
さらに、通常、マンモグラフィ装置12のような放射線画像撮影装置では、平面視で放射線源33から離間するに伴い固体検出器46及びAECセンサ49に曝射される放射線の線量は異なるものとなる。一方、上記のように、特定領域D1にて固体検出器46に曝射された放射線と、該特定領域D1を通過した後AECセンサ49に曝射された放射線の線量は同一の領域の放射線X1に基づくものである(図7参照)。従って、基準出力記憶部90では、前記特定領域D1や他の特定領域での想定される線量に対応した固体検出器46及びAECセンサ49の基準出力範囲を設定しておくことにより、固体検出器46及びAECセンサ49では、各特定領域を通過する放射線を検出して前記基準出力範囲と比較することができるため、一層高精度に基準出力範囲と実際の出力とを比較することが可能となる。このため、より高精度に固体検出器46やAECセンサ49、放射線源33の異常を検出できるようになる。
【0065】
なお、上記実施形態に係るマンモグラフィ装置12では、AECセンサ49を複数個備えるものとしたが、当然、AECセンサ49を1個のみしか備えない放射線画像撮影装置であっても本発明に係る異常検出方法を適用することができる。この場合、図8のフローチャートに基づき異常検出が行われることになる。
【0066】
図8において、ステップS11、S12及びS19は、図6に示すステップS1、S2及びS9と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0067】
従って、ステップS12において、固体検出器46の出力が基準出力記憶部90に記憶された基準出力範囲内の場合には次にステップS13が実行され、固体検出器46の出力が基準出力記憶部90に記憶された基準出力範囲外の場合には次にステップS14が実行される。
【0068】
ステップS13では、AECセンサ49の出力が、基準出力記憶部90に記憶された基準出力範囲内であるか否かを判断する。該ステップS3において、AECセンサ49の出力が前記基準出力範囲内である場合には、固体検出器46及びAECセンサ49及び放射線源33のいずれも異常なしと判断する(ステップS15)。一方、AECセンサ49の出力が、前記基準出力範囲外である場合にはAECセンサ49に異常があり、固体検出器46及び放射線源33には異常がないと判断する(ステップS16)。
【0069】
また、ステップS14において、AECセンサ49の出力が、前記基準出力範囲外である場合には、放射線源33に異常があり、固体検出器46及びAECセンサ49には異常がないと判断する(ステップS17)。一方、AECセンサ49の出力が、前記基準出力範囲内である場合には固体検出器46に異常があり、AECセンサ49及び放射線源33には異常がないと判断する(ステップS18)。
【0070】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0071】
例えば、上記実施形態では、固体検出器46を用いた場合について説明したが、蓄積性蛍光体パネルを撮影台36に対して着脱自在に構成される放射線画像撮影装置や、読取光源部48を用いることなく直接変換して画像を生成可能な放射線固体検出器を用いるようにしてもよい。
【0072】
本発明に係る放射線画像撮影装置及び放射線画像撮影装置の異常検出方法は、上記実施形態にて例示したマンモグラフィ装置に限らず、例えば、被写体の他の部位(例えば、胸部)の撮影を行う放射線画像撮影装置等にも適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に係る放射線画像撮影装置としてのマンモグラフィ装置の斜視説明図である。
【図2】図1に示すマンモグラフィ装置における撮影台の内部構成を示す要部説明図である。
【図3】図2に示す撮影台の内部構成を示す一部省略斜視図である。
【図4】図2に示す撮影台の内部構成を示す一部省略平面図である。
【図5】図1に示すマンモグラフィ装置を構成する制御回路のブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る放射線画像撮影装置の異常検出方法において複数のAECセンサを有する場合の制御手順を示すフローチャートである。
【図7】図1に示すマンモグラフィ装置における放射線源と固体検出器とAECセンサとの関係を模式的に示す一部省略斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る放射線画像撮影装置の異常検出方法において1個のAECセンサを有する場合の制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
12…マンモグラフィ装置 32…被写体
33…放射線源 34…放射線源収納部
36…撮影台 44…マンモ
46…固体検出器 49…AECセンサ
56…センサ基板 72…曝射スイッチ
76…放射線源制御部 82…曝射時間算出部
84…放射線画像形成部 86…表示部
88…異常検出部 90…基準出力記憶部
92…異常通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源から照射される放射線を検出し放射線画像を生成する放射線画像生成手段と、
前記放射線源から照射される放射線量を検出する放射線量情報検出器の出力に基づき、前記放射線源から照射する放射線量を制御する放射線源制御手段と、
前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の基準となる出力の範囲を規定した基準出力範囲が記憶される基準出力記憶手段と、
前記放射線源から照射された放射線に対する前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の各出力を、前記基準出力記憶手段に記憶された前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の各基準出力範囲と比較することにより、前記放射線画像生成手段、前記放射線量情報検出器又は前記放射線源のいずれかの異常を検出可能な異常検出手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
請求項1記載の放射線画像撮影装置において、
前記異常検出手段で検出された異常を外部に通知する異常通知手段を備えることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の放射線画像撮影装置において、
前記放射線源から照射される放射線の伝播方向で、前記放射線画像生成手段の背後側に前記放射線量情報検出器が配置されていることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線画像撮影装置において、
前記異常検出手段は、同一の放射線領域での放射線量に基づく前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の各出力を、各基準出力範囲と比較するように設定されることを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項5】
放射線を照射する放射線源と、
前記放射線源から照射される放射線を検出し放射線画像を生成する放射線画像生成手段と、
前記放射線源から照射される放射線量を検出する放射線量情報検出器の出力に基づき、前記放射線源から照射する放射線量を制御する放射線源制御手段と、
を備える放射線画像撮影装置の異常検出方法であって、
前記放射線源から照射された放射線に対する前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の各出力を、予め記憶された前記放射線画像生成手段及び前記放射線量情報検出器の各基準出力範囲と比較することにより、前記放射線画像生成手段、前記放射線量情報検出器又は前記放射線源のいずれかの異常を検出し、該検出された異常を外部に通知することを特徴とする放射線画像撮影装置の異常検出方法。
【請求項6】
請求項5記載の放射線画像撮影装置の異常検出方法において、
前記放射線画像生成手段の出力が前記基準出力範囲に含まれ且つ前記放射線量情報検出器の出力が前記基準出力範囲に含まれる場合には、前記放射線画像生成手段、前記放射線量情報検出器又は前記放射線源のいずれも異常なしであると判断し、
前記放射線画像生成手段の出力が前記基準出力範囲に含まれず且つ前記放射線量情報検出器の出力が前記基準出力範囲に含まれる場合には、前記放射線画像生成手段が異常であると判断し、
前記放射線画像生成手段の出力が前記基準出力範囲に含まれ且つ前記放射線量情報検出器の出力が前記基準出力範囲に含まれない場合には、前記放射線量情報検出器が異常であると判断し、
前記放射線画像生成手段の出力が前記基準出力範囲に含まれず且つ前記放射線量情報検出器の出力が前記基準出力範囲に含まれない場合には、前記放射線源が異常であると判断することを特徴とする放射線画像撮影装置の異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−228750(P2008−228750A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68092(P2007−68092)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】