説明

放射線量測定法及び遮断抗体並びに癌を治療する際の該方法及び使用

被検体内の外科的に作られた切除空洞のところ、またはその周辺の関心領域に対する線量測定見積もりの方法が開示されている。これらの方法を利用することにより、開業医は、最終的な放射線吸収線量(RAD)を安全に、効果的に得るために必要な投与放射免疫治療(RIT)薬剤の量を見積もることができる。更に、本明細書ではコンピュータのハードウェア及びソフトウェアが実現され、これにより、本発明による方法は、より効率的に利用できるように自動化されうる。更に、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法も開示される。この方法は、有効な用量の遮断抗体を被検体に投与し、前記遮断抗体が前記細胞外間質成分に特異的に結合し、治療抗体の非標的組織への結合を阻害することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援
本発明は、国立研究資源センター臨床試験センタープログラム、国立衛生研究所、及び米国癌学会からの助成金番号MO1−RR30、NS20023、CA11898、CA70164、CA42324、1P50CA108786−01、5P20CA96890、及びPDT−414の下で政府支援によりなされた。政府は、本発明にいくつかの権利を有する。
【0002】
本発明は、標的療法、例えば、放射性標識治療抗体を使って癌を治療する方法の安全性及び効力を高めることに関係する。例えば、本発明は、癌及び腫瘍を治療するための抗体療法を必要とする被検体に投与したときに安全で、しかも治療上有効な放射線量を見積もる線量測定技術の使用を規定する。本発明は、更に、標識治療抗体が健常非標的組織に結合するのを阻害する非標識抗体の使用にも関係する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍、例えば、脳腫瘍を有する被検体のための療法は、一般に、外部ビーム療法及び/または全身性化学療法と併用する腫瘍の外科的切除を含む。外科的切除の後、「外科的に作られた切除空洞(SCRC:surgically created resection cavity)」が、腫瘍が除去された場所に残る。放射免疫療法(RIT:Radio-immunotherapy)は、SCRCに対し、例えば、SCRCの近くに埋め込まれているリックマンリザーバーなどのリザーバー及びカテーテル配列を使用することにより、施すことができる。典型的には、リザーバーには、RIT薬剤、例えば、放射性標識抗体が充填される。RIT薬剤は、カテーテルを通り、外科的に作られた切除空洞に入る。RIT薬剤は、当業者には、極めて毒性が強いことが知られている。従って、正常な脳組織への損傷を最小限に抑えるか、低減しつつ、限局性腫瘍管理を高める正確なRIT用量を決定することが重要である。従って、有効で、しかも安全な最終吸収用量を得るために、それを必要としている被検体にどのようなRIT用量を投与すべきかを正確に決定することが極めて重要である。
【0004】
多形性膠芽腫(GBM:Glioblastoma Multiforme)脳腫瘍を有する被検体では、診断後の平均生存期間は、約40から50週である。腫瘍の外科的切除後、脳に空洞が残るが、進行と再発の90から95%は、切除空洞のマージン内で局所的に生じる。
【0005】
ヒト癌を治療抗体で治療する方法は、この難病に対する新しいアプローチである。米国では、リンパ腫の治療に、IDEC Pharmaceuticals社が生産しているZevalin(商標)とCorixa Corporation社が生産しているBexxar(商標)の、2つの放射性標識ネズミ抗CD20モノクローナル抗体が認可されている。しかしながら、癌を治療するための付加的方法、特に、治療の特異性を高め、このような治療の望ましくない副作用を減じるのに役立つ方法が必要である。
【0006】
特許文献1では、抗テネイシンモノクローナル抗体(anti-tenascin monoclonal antibody)81C6で固形嚢胞状腫瘍を治療する方法を説明している。また、非特許文献1も参照されたい。また、非特許文献2、非特許文献3も参照されたい。特許文献2では、リンパ腫の治療のための抗テネイシンモノクローナル抗体療法について説明している。また、非特許文献4、非特許文献5も参照されたい。特許文献3は、抗体、抗体断片、ホルモン、及び他の標的因子、及びそれらの結合体の改善された細胞標的の方法に関する。対照的に、本発明は、細胞外間質成分を標的とし、細胞それ自体を標的としない、抗体に関する。抗体の標的を間質成分とすることは、特許文献3において示唆も説明もされていない。
【0007】
RIT薬剤を、必要としている被検体に投与した後、放射線エネルギーの一部のみが堆積される、つまり、動物またはヒト組織に実際に吸収される。これは、放射線吸収線量(RAD:Radiation Absorbed Dose)として知られている。前述の参考文献は、
1)131I標識81C6モノクローナル抗体で治療される悪性脳腫瘍を有する患者における用量反応相関の定量、
2)悪性脳腫瘍を有する患者一人当たり20から180mCiまでの範囲の放射線量の投与の後に吸収される放射線エネルギーの量、
3)悪性神経膠腫を有する患者の外科的に作られた切除空洞に投与される131I標識81C6モノクローナル抗体の最大耐量(MTD:maximum tolerated dose)の定量、
4)悪性神経膠腫を有する患者における131I標識81C6モノクローナル抗体120mCiの切除空洞内投与の効力と毒性の評価、及び
5)リンパ腫のヒト/マウスキメラ131I標識81C6モノクローナル抗体(ch81C6:chimeric 131I-labeled 81C6)治療に対する薬物速度、線量測定、毒性、及び反応の研究に関係する。しかし、これらは、所定の安全で、有効なRADを得るために、RIT薬剤を被検体に治療用量としてどれくらい投与する必要があるかを開業医に教示していない。
【0008】
RIT薬剤を癌の治療に使用する際にほかに、投与されるRIT用量からの放射線エネルギーの一部が、注目している疾病または癌性領域ではなく健常組織に実際には蓄積するという固有の問題もある。例えば、モノクローナル抗体81C6は、タンパク質テネイシンについて特異的であり、これは、健常細胞と腫瘍細胞の両方により発現する。従って、131I標識81C6が、RIT薬剤として投与された場合、81C6抗体は、放射性核種(131I)を、テネイシンが置かれる領域に送達するのを容易にする−抗体は、健常組織と癌性組織とを区別できない。従って、放射線の一部は、健常組織により吸収され、その結果、1)健常組織に対する照射毒性が生じ、2)意図されている標的からRIT薬剤が逸れ、被検体に対する治療の効果が低下する。そのため、当業者には、RIT薬剤のその意図された標的への送達を高め、RIT薬剤の健常組織への送達を回避する方法が必要である。本発明による遮断抗体法が、この問題を解決する。
【特許文献1】米国特許第5,624,659号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0187100号明細書
【特許文献3】米国特許第RE38,008号明細書
【特許文献4】米国特許第6,783,760号明細書
【特許文献5】米国特許第6,749,853号明細書
【特許文献6】米国特許第4,474,893号明細書
【特許文献7】米国特許第4,816,567号明細書
【特許文献8】米国特許第4,676,980号明細書
【特許文献9】米国特許第6,787,153号明細書
【特許文献10】米国特許第6,676,924号明細書
【特許文献11】米国特許第6,455,026号明細書
【特許文献12】米国特許第6,274,118号明細書
【非特許文献1】D. Bigner et al., J. Clin. Oncol. 16: 2202 - 2212 (1998)
【非特許文献2】I. Cokgor et al., J. Clin. Oncol. 18(22): 3862 - 3872 (2000)
【非特許文献3】D. Reardon et al., J. Clin. Oncol. 20(5): 1389 - 1397 (2002)
【非特許文献4】D. Rizzieri et al., Blood 104, 642 - 648 (2004)
【非特許文献5】G. Akabani et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 46: 947 - 958 (2000)
【非特許文献6】M. Bourdon et al., Cancer Res. 43: 2796 - 2805 (1983)
【非特許文献7】W. Huse, Science 246, 1275 - 81 (1989)
【非特許文献8】Current Protocols in Irnmunology, Volumes 1 and 2, Coligen et al., Ed. Wiley-Interscience, New York, N.Y., Pubs. (1991)
【非特許文献9】Remington, The Science And Practice of Pharmacy (9th Ed. 1995)
【非特許文献10】Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy (R. Reisfeld and S. Sell Eds. 1985) (Alan R. Liss Inc. N.Y.)
【非特許文献11】P. J. Fraker and J. C. Speck, Jr., Biochem. Biophys. Res. Commun. 80(4): 849 - 857 (1978)
【非特許文献12】M. Zalutsky and A. Narula, Int. J. Rad. Appl. Instrum. 38: 1051 - 1055 (1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題を解決することを対象とする。
【0010】
特に、本発明を利用する開業医は、最終的なRADを得るために必要な投与RIT薬剤の量を見積もることができる。開業医は、本発明の方法に従って、投薬量を段階的に増やし、用量反応分析を実行しながら放射性標識抗体をSCRCに送達することにより、所定のRADを得るために必要なRIT薬剤の投薬量を見積もることができる。更に、本明細書では、コンピュータのハードウェア及びソフトウェアを実現し、これにより、本発明による方法をより効率的に利用できるようにする。それに加えて、本発明は、RIT薬剤のその意図された標的への送達を高め、RIT薬剤の健常組織への送達を回避する遮断抗体法を含む。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、被検体の外科的に作られた切除空洞のところ、またはその周辺の関心領域(ROI:region of interest)について線量測定見積もりを行う方法に関するものであり、この方法は、まず、SCRCのサイズを決定し、次いで、放射性標識抗体の線量測定用量を関心領域に投与し、次いで、線量測定用量を投与した後さまざまな時刻において関心領域から検出された放射線を測定し、次いで、SCRCの測定されたサイズと関心領域からの測定された検出放射線とに基づいて滞留時間(つまり、放射性標識抗体が投与後体内に残る時間)を決定し、最後に、効果のある療法にするために疾病または癌性組織により吸収される必要のある放射線の線量である、所定の放射線吸収線量を得るために投与する必要のある放射性標識抗体(「放射免疫療法」すなわち「RIT」)の量を計算することを伴う。
【0012】
本発明の他の態様は、全身シンチグラフィを使用して関心領域から放射線を検出することに関する。本発明の更なる態様は、全身シンチグラフィが実施される場合に関するものであり、これは、線量測定用量を投与するのと同時に1度目を実行し、次に線量測定用量を投与してから約24時間後に2度目を実行し、続いて線量測定用量を投与してから約48時間後に3度目を実行する。
【0013】
本発明の他の態様は、磁気共鳴映像法(MRI:magnetic resonance imaging)を実行して、SCRCのサイズを定量することを含む。
【0014】
本発明の他の態様は、実験データを使用して、有効な癌療法に必要とされる最適なRADを決定することに関する。本発明の関係する一態様は、所定の吸収線量が約44Gyである場合に関する。
【0015】
本発明の他の態様は、投与される治療RIT用量が、131I標識抗テネイシンネズミ(anti-tenascin murine)81C6(m81C6)モノクローナル抗体または131I標識抗テネイシンヒト/ネズミキメラ(anti-tenascin human/murine chimeric)81C6(ch81C6)モノクローナル抗体の量である方法に関する。
【0016】
本発明の更に他の態様は、関心領域が、切除空洞のマージンから約2センチメートルのところの実質細胞の領域である方法に関する。本発明の他の態様は、投与されるRIT用量が、以下の式に基づいて計算される方法に関するものである:
【0017】
【数3】

【0018】
但し、DSCRCは、所定の吸収線量であり、S(B2−cm←SCRC)は、Gy hr mCi−1単位の切除空洞のサイズに基づいて見積もられたS値であり、τSCRCは、切除空洞滞留時間である。本発明の他の態様は、リックマンリザーバー埋め込みを使用してRIT用量が投与される方法に関する。
【0019】
本発明の他の態様は、被検体の外科的に作られた切除空洞のところ、またはその周辺の関心領域を治療する方法で使用する薬剤を調製するために放射性標識抗体を使用することに関するものであり、この方法は、まず、SCRCのサイズを決定し、次いで、放射性標識抗体の線量測定用量を関心領域に投与し、次いで、線量測定用量を投与した後さまざまな時刻において関心領域から検出された放射線を測定し、次いで、SCRCの測定されたサイズと関心領域からの測定された検出放射線とに基づいて滞留時間を決定し、最後に、所定の放射線吸収線量を得るために投与する必要のある放射性標識抗体の量を計算することを伴う。
【0020】
本発明の他の態様は、必要なRIT用量(投与放射能)を計算するためのコンピュータ実行可能命令を収めたコンピュータ可読媒体を更に伴う線量測定を行う方法に関するものであり、コンピュータ実行可能命令は、SCRCパーセント注入用量、SCRC滞留時間、及び所定のセッションに対するSCRCのS値を計算するために必要な多数のパラメータを受け取り、次いで、それらのパラメータを所定の公式に当てはめて、必要なRIT用量(投与放射能:administered activity)を計算し、計算された必要なRIT用量をユーザーディスプレイに出力する。本発明の関係する態様では、記憶デバイス内にパラメータ及び/または計算された必要なRIT用量を格納するステップを実行するコンピュータ実行可能命令を備える。
【0021】
本発明の他の態様は、被検体のSCRCのところ、またはその周辺の関心領域について線量測定見積もりを行うコンピュータにより実装される方法に関するものであり、外科的に作られた切除空洞のサイズを表すデータを受信し、それに続いて、小さい「線量測定用量(dosimetric dose)」の放射性標識抗体を直接、SCRCまたは周辺領域に投与し、この線量測定用量の投与後のさまざまな時点において残っている放射線の量を検出する第1のステップを伴う。次いで、SCRCのサイズ及び線量測定用量の投与後に測定された放射線の量を使用して、滞留時間(つまり、放射性標識抗体が投与後体内に残る時間)が計算される。最後に、SCRCのサイズ及び放射性標識の滞留時間に基づいて、所定の放射線吸収線量(これは、効果のある療法にするために疾病または癌性組織により吸収される必要のある放射線の線量である)を得るために投与する必要のある放射能(抗体に標識または結合された)の量が計算される。
【0022】
本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法に関するものであり、この方法は、有効な用量の非標識遮断抗体を必要とする被検体に投与し、非標識遮断抗体は正常組織の非標的細胞外間質成分の実質的にすべてに特異的に結合するが、前記腫瘍の実質的にわずかな割合の細胞外間質成分に結合し、それにより、治療抗体が正常細胞の非標的細胞外間質成分に結合するのを阻害することと、次いで治療有効量の治療抗体を被検体に投与し、治療抗体は腫瘍の細胞外間質成分に特異的であることとを伴う。
【0023】
本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法に関するものであり、遮断抗体は、モノクローナル抗体であり、及び/または治療抗体は、モノクローナル抗体であるか、または治療抗体は、限定はしないが、放射性核種、化学療法薬、及び細胞傷害性薬を含む治療薬に結合される。
【0024】
本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法に関するものであり、RIT抗体は、放射性核種に抱合され、放射性核種は、227Ac、211At、131Ba、77Br、109Cd、51Cr、67Cu、165Dy、155Eu、153Gd、198Au、166Ho、113mIn、115mIn、123I、125I、131I、189Ir、191Ir、192Ir、194Ir、52Fe、55Fe、59Fe、177Lu、109Pd、32P、226Ra、186Re、188Re、153Sm、46Sc、47Sc、72Se、75Se、105Ag、89Sr、35S、177Ta、117mSn、121Sn、166Yb、169Yb、90Y、212Bi、119Sb、197Hg、97Ru、100Pd、101mRh、または212Pbである。
【0025】
本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法に関するものであり、治療抗体は、化学療法薬に抱合され、化学療法薬は、メトトレキサート、ダウノマイシン、マイトマイシン、シスプラチン、ビンクリスチン、エピルビシン、フルオロウラシル、ベラパミル、シクロホスファミド、シトシンアラビノシド、アミノプテリン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、デモコルシン、エトポシド、ミトラマイシン、クロランブシル、メルファラン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモシフェン、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、カンプトセシン、アクチノマイシンD、またはシタラビンである。
【0026】
本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法に関するものであり、治療抗体は、細胞傷害性薬に抱合され、細胞傷害性薬は、リシン(ricin)、アクラシノマイシン、ジフテリア毒素、モネンシン、ベルカリンA、アブリン、ビンカアルカロイド、トリコテセン、及び緑膿菌外毒素A27である。
【0027】
本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法に関するものであり、細胞外間質成分は、フィブリノゲン、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン、テネイシン、エンタクチン、またはトロンボスポンジンである。
【0028】
本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法に関するものであり、治療抗体の投与は、静脈注射により実行される。本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法に関するものであり、治療抗体は、注射により投与される。本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法に関するものであり、治療抗体は、遮断抗体が投与されてから少なくとも2日後に、より具体的には、遮断抗体が投与されてから少なくとも4日後に投与される。
【0029】
本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法に関するものであり、被検体は、リンパ腫を患っているか、または被検体は、脳腫瘍を患っている。
【0030】
本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法に関するものであり、それぞれの被検体は、第1のステップで投与された遮断抗体に対する有害反応がないか監視され、更に、第1のステップで投与された遮断抗体に対するこのような有害反応を生じた被検体は、第2のステップで治療抗体の投与を受けない。
【0031】
本発明の他の態様は、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法で使用する薬剤を調製するために非標識遮断抗体を使用することに関するものであり、この使用することは、有効な用量の非標識遮断抗体を必要とする被検体に投与し、非標識遮断抗体は正常組織の非標的細胞外間質成分の実質的にすべてに特異的に結合するが、前記腫瘍の実質的にわずかな割合の細胞外間質成分に結合し、それにより、治療抗体が正常細胞の非標的細胞外間質成分に結合するのを阻害することと、次いで治療有効量の治療抗体を被検体に投与し、治療抗体は腫瘍の細胞外間質成分に特異的であることとを伴う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
定義
本明細書で使用されている「線量測定法(Dosimetry)」は、用量、特に線量の正確な測定及び決定を指す。
【0033】
本明細書で使用されている「磁気共鳴映像法(MRI:Magnetic Resonance Imaging)」は、磁気、電波、及びコンピュータを使用して身体の内部構造を撮像し、身体構造の画像を生成するように設計された放射線診断技術である。磁気共鳴映像法では、スキャナは、巨大な円形磁石により囲まれた管である。患者は、磁石の中に挿入される移動式ベッド上に置かれる。磁石は、水素原子の陽子を整列する強磁場を発生し、次いで、水素原子の陽子が、電波ビームに曝される。これにより、身体のさまざまな陽子がスピンし、これらの陽子は、MRIスキャナの受信機部分により検出される微弱信号を発生する。コンピュータは、受信機情報を処理し、画像が出力される。画像及び分解能は、かなり細かく、身体内、特に軟組織、脳及び脊髄、腹部、及び関節内の構造のわずかな変化を検出することができる。MRIは、当業者には周知である。
【0034】
本明細書で使用されている「約(about、approximately)」は、当業者により決定されるような特定の値に対して許容可能な誤差範囲内であることを意味し、これは、値がどのように測定または決定されるか、つまり、測定システムの限度に部分的に依存する。例えば、「約」は、当業者の慣例に従い、1または1を超える標準偏差の範囲内であることを意味しうる。それとは別に、「約」は、所定の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、より好ましくは更に1%までの範囲を意味しうる。それとは別に、特に生体系または生物学的過程に関して、この用語は、ある値の一桁の範囲内、好ましくは5倍の範囲内、より好ましくは2倍の範囲内であることを意味しうる。例えば、放射線医学分野では、「約44Gy」は、放射線吸収線量を正確に測定するのには固有の難しさがあるため、44Gy±20%(35.2から52.8Gyまでの範囲)であることを意味しうる。好ましくは、実際には、「約44Gy」は、44Gy±10%(39.6から48.4Gyまでの範囲)を意味するが、この精度レベルは、達成しがたい場合がある。本明細書で使用されている「薬剤として許容される」という言い回しは、動物またはヒトにおけるインビボ使用に生物学的または薬理学的に適合することを意味し、好ましくは、動物、より具体的にはヒトにおける使用について、連邦政府または州政府の監督官庁により承認されているか、または米国薬局方または他の広く認知されている薬局方に記載されていることを意味する。
【0035】
「外科的に作られた切除空洞(SCRC:surgically created resection cavity)」とは、多形性膠芽腫(GBM:glioblastoma multiforme)などの脳腫瘍を除去する際に外科的に作られる脳内の空洞のことである。「マージン(margin)」は、SCRCを囲む実質細胞または脳組織の一領域であり、SCRC/実質細胞界面、またはSCRCの外縁からの距離を使って表すことができる。
【0036】
本明細書で使用されている「関心領域(ROI:region of interest)は、SCRC内またはその近くの組織の定義済み領域である。ROIは、SCRCのマージン(または外縁)に配置された領域とすることができる。一実施形態では、ROIは、SCRCの周辺の、SCRCを取り囲む、SCRCのマージン(または外縁)から外へ伸びる、実質組織の幅5cmの領域である。他の実施形態では、ROIは、SCRCの周辺の、SCRCを取り囲む、SCRCのマージン(または外縁)から外へ伸びる、実質組織の幅4cmの領域である。他の実施形態では、ROIは、SCRCの周辺の、SCRCを取り囲む、SCRCのマージン(または外縁)から外へ伸びる、実質組織の幅3cmの領域である。他の実施形態では、ROIは、SCRCの周辺の、SCRCを取り囲む、SCRCのマージン(または外縁)から外へ伸びる、実質組織の幅2cmの領域である。他の実施形態では、ROIは、SCRCの周辺の、SCRCを取り囲む、SCRCのマージン(または外縁)から外へ伸びる、実質組織の幅1cmの領域である。他の実施形態では、ROIは、SCRCの周辺の、SCRCを取り囲む、SCRCのマージン(または外縁)から外へ伸びる、実質組織の幅0.5cmの領域である。それとは別に、ROIは、必要に応じて、SCRCの周辺の、SCRCを取り囲む、任意のサイズの領域とすることができる。本明細書で使用されている「実質細胞(parenchyma)」または「実質組織(parenchymal tissue)」は、機能細胞で構成される組織からなる。実質細胞は、構造細胞、または間葉組織に比べて、劣化環境、例えばSCRCに対する耐性がかなり弱い。本明細書で使用されているSCRC「界面(interface)」は、SCRCと周辺健常組織との間の境界を記述するものである。
【0037】
本明細書で使用されている「滞留時間(residence time)」は、放射性核種が体内に保持されている時間の測定である。「全身クリアランス率(whole-body clearance rate)」とは、全身体滞留時間のことである。
【0038】
本明細書で使用されている「S値(S-value)」は、他の線源から放出された放射線から特異的標的領域への吸収線量を記述する値である。S値は、当業者に知られている計算により、モンテカルロ法及びMIRDファントムを使用して求めることができる。S値は、外科的に作られた切除空洞のサイズに依存し、このサイズは、約2cm(約9.60E−3 Gy hr mCi−1のS値)から約60cm(約2.34E−3 Gy hr mCi−1のS値)までの範囲内、またはそれ以上とすることができる。
【0039】
本明細書で使用されている「吸収線量(absorbed dose)」は、物質の質量単位当たりの関心領域または他の物質内に吸収された(または「蓄積された(deposited)」)放射線エネルギー(または放射能)である。これは、被検体に投与された放射能の総量である、「投与(administered)」または「治療(therapeutic)」または「放射免疫療法(RIT)」用量と異なる。吸収線量は、組織に投与され、吸収された(または「蓄積された」)放射線エネルギー(または放射能)の量のみを指す。「吸収線量」は、別に「放射線吸収線量」または「RAD」とも呼ばれる。RIT用量を見積もる本発明による線量測定法を使用する前に吸収線量またはRIT用量が決定される場合、吸収線量またはRADは、「所定の吸収線量」または「所定のRAD」と呼ばれる。所定のRADは、実験データに基づく所定の最適なRADであってよい。所定の最適なRADは、特定の放射線治療薬の安全性及び効力を定量することができる実験を含む、癌または疾病治療の分野で受け入れられている手段により決定することができる。例えば、最適なRADは、観察被検体群の毒性及び臨床転帰に基づいて決定することができる。一実施形態では、所定の最適なRADは、約44Gyである。
【0040】
本明細書で使用されている「放射免疫療法用量」(「RIT用量(RIT dose)」)は、治療目的のために送達されるRIT薬剤の用量である。治療RIT用量は、所定の放射線吸収線量が得られるように計算される。
【0041】
本明細書で使用されている「標的部分(targeting moiety)」は、療法の意図された標的に結合できる部分、つまり療法の意図された標的の「結合相手(binding partner of)」であり、一定量の放射性標識(放射線治療薬(radiotherapeutic agent))、化学療法薬、細胞傷害性薬、または当業者に知られている他の治療薬を送達する。例えば、標的部分は、標的が細胞受容体である場合の受容体リガンドであってよい。好ましくは、治療薬は、抗体、例えば、81C6モノクローナル抗体である。標的部分が抗体であり、治療薬が放射性標識である場合、複合体は、放射免疫療法(RIT)投薬と呼ぶことができる。
【0042】
本明細書で使用されている「線量測定用量(dosimetric dose)」は、将来投与されるRIT用量を計算するために使用される小用量(「治療量以下の(sub-therapeutic)」)である。線量測定用量を複数回、量を増やしつつ投与し、その後、一連の用量反応分析を実行し、所定の吸収線量に基づいて、所望のRIT線量を決定する。
【0043】
本明細書で説明されている「放射性核種(radionuclide)」は、限定はしないが、227Ac、211At、131Ba、77Br、109Cd、51Cr、67Cu、165Dy、155Eu、153Gd、198Au、166Ho、113mIn、115mIn、123I、125I、131I、189Ir、191Ir、192Ir、194Ir、52Fe、55Fe、59Fe、177Lu、109Pd、32P、226Ra、186Re、188Re、153Sm、46Sc、47Sc、72Se、75Se、105Ag、89Sr、35S、177Ta、117mSn、121Sn、166Yb、169Yb、90Y、212Bi、119Sb、197Hg、97Ru、100Pd、101mRh、及び212Pbを含む、腫瘍または癌細胞に治療放射線量を送達するのに適している任意の放射性核種とすることができる。
【0044】
本明細書で使用されている「抗体(antibody若しくはantibodies)」は、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを含む、あらゆる種類の免疫グロブリンを指す。「免疫グロブリン(immunoglobulin)」という用語は、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4などの免疫グロブリンのサブタイプを含む。これらの免疫グロブリンのうち、IgM及びIgGが好ましく、IgGは特に好ましい。抗体は、(例えば)マウス、ラット、ウサギ、ウマ、またはヒトを含む、任意の由来種であるか、またはキメラ抗体であってよい。本明細書で使用されている「抗体」という用語は、標的抗原に結合する能力を保持する抗体断片、例えば、Fab、F(ab’)2、及びFv断片、一本鎖抗体(scAbs:single-chain antibodies)、及びIgG以外の抗体から得られる対応する断片を含む。このような断片は、更に、当業者に周知である技術により産生される。
【0045】
本明細書で使用されている「細胞外間質成分(extracellular stromal constituent)」は、グリコカリックス、細胞外マトリックス、及び基底膜を含む、細胞外(細胞または細胞表面とは反対の)空間に特異的な化合物を指す。細胞外間質成分の例は、限定はしないが、フィブリノゲン、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン、テネイシン、エンタクチン、及びトロンボスポンジンを含む。細胞成分が、腫瘍または癌細胞を含む場合、細胞外間質成分は、「腫瘍の」細胞外間質成分である。細胞外間質成分内のテネイシンを結合する遮断抗体は、正常組織と腫瘍性組織の両方の細胞外間質成分内のテネイシン分子に結合する。
【0046】
本明細書で使用されている「化学療法薬(chemotherapeutic agent)」は、限定はしないが、メトトレキサート、ダウノマイシン、マイトマイシン、シスプラチン、ビンクリスチン、エピルビシン、フルオロウラシル、ベラパミル、シクロホスファミド、シトシンアラビノシド、アミノプテリン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、デモコルシン、エトポシド、ミトラマイシン、クロランブシル、メルファラン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモシフェン、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、カンプトセシン、アクチノマイシンD、及びシタラビンを含む。
【0047】
本明細書で使用されている「細胞傷害性薬(cytotoxic agent)」は、限定はしないが、リシン(ricin)(またはより具体的にはリシンA鎖)、アクラシノマイシン、ジフテリア毒素、モネンシン、ベルカリンA、アブリン、ビンカアルカロイド、トリコテセン、及び緑膿菌外毒素Aを含む。
【0048】
本明細書で使用されている「放射免疫療法」または「RIT」は、放射性核種(または放射性標識(radio-label))に抱合された抗体を使用する療法を指す。
【0049】
本明細書で使用されている「化学免疫療法(chemoimmunotherapy)」は、化学療法薬に抱合された抗体を使用する療法を指す。
【0050】
本明細書で使用されている「細胞傷害性免疫療法(cytotoxic immunotherapy)」は、細胞傷害性薬に抱合された抗体を使用する療法を指す。
【0051】
本明細書で使用されている「治療抗体(therapeutic antibody)」は、放射性核種(または「放射性標識(radio-label)」)、化学療法薬、または細胞傷害性薬に結合された抗体である。治療抗体が放射性核種に抱合されている場合、これは、RIT薬剤またはRIT抗体と呼ばれる。
【0052】
本明細書で使用されている「非標識遮断抗体(unlabeled blocking antibody)」は、放射性核種、化学療法薬、または細胞傷害性薬に抱合されていない抗体を記述するものである。対応する治療抗体が放射性核種に結合されている場合、非標識遮断抗体は、「寒冷(cold)」抗体とも呼ばれる。
【0053】
本明細書で使用されている「実質的に小さな割合」は、20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、理想的には1%以下を意味する。
【0054】
本明細書で使用されている「治療効果のある量(therapeutically effective amount)」は、状態、疾患、または病状を治療するために被検体に投与されたときに、治療の効果を十分もたらす化合物の量を意味する(以下定義される通り)。「治療効果のある量」は、化合物、疾病及びその重症度、及び治療される被検体の年齢、体重、生理的状態、及び反応性により異なる。本発明によれば、一実施形態では、治療効果のある量の放射性標識抗体は、さまざまな癌を治療するのに有効な量である。他の実施形態では、治療効果のある量の非標識抗体は、放射性標識抗体が健常非標的組織に結合するのを阻害する効果を有する量である。
【0055】
本明細書で使用される「治療する(treat)」は、被検体の病状(例えば、1つまたは複数の症状)の改善、疾病の進行を遅らせること、症状の発現を遅らせること、または症状の進行速度を遅くすることなどを含む、疾病に苦しんでいる、または発病する危険性のある被検体に恩恵をもたらすあらゆる種類の治療または予防を指す。そのようなものとして、「治療(treatment)」という用語は、更に、症状の発現を防止する被検体の予防的処置も含む。本明細書で使用される「治療」及び「予防(prevention)」は、被検体の病状(例えば、1つまたは複数の症状)の改善、疾病の進行を遅らせることなどを含む、疾病に苦しんでいる被検体に恩恵をもたらすあらゆる種類の治療に対する、症状の治癒または完全な解消を暗示することを必ずしも意図していない。
【0056】
本明細書で使用されている「治療有効量(treatment effective amount)」は、被検体の病状(または1つまたは複数の症状)の改善、疾病の進行を遅らせることなどを含む、リンパ腫で苦しんでいる被検体に望ましい効果をもたらすのに十分な抗体の量を意味する。
【0057】
「被検体(subject)」または「必要としている被検体(subject in need)」は、放射免疫治療(RIT)、化学免疫療法、細胞傷害性免疫療法、または本発明による他の治療法を必要とするヒトまたは非ヒト哺乳類である。
【0058】
癌の治療で使用される抗体
本発明による抗体は、過剰発現されるとともに、発現細胞から細胞外マトリックスまたは細胞外間質などの周囲環境に分泌されるタンパク質を標的とする抗体である。このような抗体は、ポリクローナル抗体(つまり、血清または血清から精製された抗体製剤;「PAb:polyclonal antibodies」)またはモノクローナル抗体(「MAb:monoclonal antibodies」)とすることができる。このようなモノクローナル抗体は、限定はしないが、モノクローナル抗体81C6を含む。本発明による抗体は、限定はしないが、ヒト、マウス(ネズミ)、ウサギ、ヤギ、及びブタ抗体を含む、任意の種からの抗体を含む。このような抗体は、限定はしないが、ネズミモノクローナル抗体81C6(m81C6)を含む。本発明による抗体は、更に、複数の種からのものであってもよい(つまり、キメラ:chimeric)。このような抗体は、限定はしないが、マウス81C6可変領域及びヒトIgG2定常領域を含む、ヒト/ネズミキメラモノクローナル抗体81C6(ch81C6)を含む。癌及び腫瘍の細胞外間質成分に結合する抗体は、知られており、例えば、特許文献4及び特許文献5で説明されている。
【0059】
本発明を実施する際に使用される抗体は、テネイシンに結合する抗体である。特に好ましいのは、モノクローナル抗体81C6、及びモノクローナル抗体81C6により結合されるエピトープのところ、またはその近くに結合する抗体(つまり、モノクローナル抗体81C6と交差反応するか、またはモノクローナル抗体81C6の結合を阻害する抗体)である。モノクローナル抗体81C6は、非特許文献6で知られており、また説明されているようにBALB/cマウスにグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP:glial fibrillary acidic protein)発現永久ヒトグリオーマ株U−251 MGの免疫付与を行った後、ハイブリドーマ融合から生じたネズミIgG2bモノクローナル抗体である。
【0060】
本発明を実施するうえで特に好ましいのは、特許文献1で説明されているような、マウス−ヒトキメラモノクローナル抗体81C6である。本発明で使用する抗体は、比較的高い結合親和力を有する、例えば解離定数が約10−4から約10−13である、テネイシンに特異的に結合する。本発明の特定の実施形態では、抗体−テネイシン複合体の解離定数は、少なくとも10−4、好ましくは少なくとも10−6、より好ましくは少なくとも10−9である。
【0061】
本発明のモノクローナル抗体は、特許文献6または特許文献7で開示されている方法により産生される組換え型モノクローナル抗体とすることができる。抗体は、更に、特許文献8で開示されている方法により作られる特異抗体により化学的に作ることもできる。本明細書で引用されているすべての米国特許文献の開示は、参照により全体を本明細書に組み込まれる。
【0062】
モノクローナル抗体は、知られている技術により産生されるキメラ抗体であってよい。例えば、キメラモノクローナル抗体は、知られている技術により産生される相補性決定領域グラフト化抗体(complementarily determining region-grafted antibodies)(または「CDRグラフト化抗体(CDR-grafted antibodies)」)であってよい。
【0063】
モノクローナルFab断片は、当業者に知られている組換え型技術により大腸菌の中で産生することができる。例えば、非特許文献7を参照されたい。本発明を実施する際に使用される抗体は、被検体の癌性または腫瘍性状態に過剰発現される任意のタンパク質または他の高分子に特異的な(結合する)抗体である。本発明の一実施形態では、抗体は、テネイシンに結合する抗体である。本発明の他の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体81C6、またはモノクローナル抗体81C6により結合されるエピトープに結合する抗体(つまり、モノクローナル抗体81C6と交差反応するか、またはモノクローナル抗体81C6の結合を阻害する抗体)とすることができる。モノクローナル抗体81C6は、非特許文献6で知られており、また説明されているようにBALB/cマウスにグリア細胞繊維性酸性タンパク質発現永久ヒトグリオーマ株U−251 MGの免疫付与を行った後、ハイブリドーマ融合から生じたネズミIgG2bモノクローナル抗体である。本発明の他の実施形態では、抗体は、テネイシンのスプライス変異に対抗するポリクローナル抗体とすることができる。
【0064】
本発明を実施するうえで特に好ましいのは、特許文献1で説明されているような、マウス−ヒトキメラモノクローナル抗体81C6であるか、または以下の実施例で更に説明されているような、ウサギポリクローナル抗体、抗TNfn C−Dである。本発明で使用する抗体は、比較的高い結合親和力を有する、例えば解離定数が約10−4から10−13である、テネイシンに特異的に結合する。本発明の実施形態では、抗体−テネイシン複合体の解離定数は、少なくとも10−4、好ましくは少なくとも10−6、より好ましくは少なくとも10−9である。
【0065】
本発明の抗体は、放射性同位体に結合することができる。この抗体は、非特許文献8で説明されている技術を使用して放射性同位体に結合することができる。この抗体に結合することができる放射性同位体の実施例は、限定はしないが、227Ac、211At、131Ba、77Br、14C、109Cd、51Cr、67Cu、165Dy、155Eu、153Gd、198Au、166Ho、113mIn、115mIn、123I、125I、131I、189Ir、191Ir、192Ir、194Ir、52Fe、55Fe、59Fe、177Lu、109Pd、32P、226Ra、186Re、188Re、153Sm、46Sc、47Sc、72Se、75Se、105Ag、89Sr、35S、177Ta、117mSn、121Sn、166Yb、169Yb、90Y、212Bi、119Sb、197Hg、97Ru、100Pd、101mRh、及び212Pbを含む。
【0066】
本明細書で使用されているモノクローナル抗体は、病気を患っている被検体の有用な免疫反応を引き起こすために必要な抗体の定常領域の部分を組み込むことが理解されるであろう。
【0067】
本発明により検出及び/または診断されうる腫瘍、癌、及び新生物組織の例は、限定はしないが、乳癌、骨肉腫、血管肉腫、線維肉腫及び他の肉腫、白血病、リンパ腫(ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、及び他の血液癌、骨髄異形成症候群、骨髄増殖症候群、静脈洞腫瘍(sinus tumors)、卵巣癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、及び他の泌尿生殖器癌、結腸癌、食道癌、胃癌、及び他の消化管癌、肺癌、骨髄腫、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、内分泌癌、皮膚癌、並びに神経膠腫及び神経芽腫を含む、悪性または良性の、脳または中枢神経系(CNS:central nervous system)及び末梢神経系(PNS:peripheral nervous system)腫瘍などの悪性疾患を含む。
【0068】
被検体
本明細書で説明されている方法による治療を必要とする被検体は、限定はしないが、乳癌、骨肉腫、血管肉腫、線維肉腫及び他の肉腫、白血病、リンパ腫(ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、及び他の血液癌、骨髄異形成症候群、骨髄増殖症候群、静脈洞腫瘍、卵巣癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、及び他の泌尿生殖器癌、結腸癌、食道癌、胃癌、及び他の消化管癌、肺癌、骨髄腫、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、内分泌癌、皮膚癌、並びに神経膠腫及び神経芽腫を含む、悪性または良性の、脳または中枢神経系及び末梢神経系腫瘍を含む、悪性疾患に苦しんでいる被検体を含む。
【0069】
本発明の方法により治療することができるリンパ腫は、限定はしないが、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫を両方とも含む。
【0070】
本発明の方法により治療することができる脳腫瘍または癌は、限定はしないが、多形性膠芽腫(GBM:glioblastoma multiforme)及び嚢胞性星状細胞腫を含む。
【0071】
投与
本発明による標識及び非標識抗体は、当業者に知られている医学的に適切な手技により投与することができる。このような抗体は、本発明による使用のため、線量測定投薬抗体、放射免疫療法抗体、非標識遮断抗体、及び任意の標識治療抗体として投与される抗体を含む。投与経路は、限定はしないが、針促進性注射(needle - facilitated injection)、例えば、静脈内(i.v.:intravenous)注射、筋肉内(i.m.:intramuscular)注射、皮下(s.c.:subcutaneous)注射、動脈注射、脳脊髄液中への注射、腔内注射、髄膜注射、皮内注射、腫瘍内への直接注射、または任意の関心領域内への直接注射を含む。更に、限定はしないが、リックマンリザーバーインプラントを含む、リザーバー埋め込みを通じての投与も含まれる。
【0072】
製剤
線量測定投薬抗体、放射免疫治療抗体、非標識遮断抗体、及び他の標識治療抗体は、投与に先立って、毒性のない、薬剤として許容される担体物質(例えば、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)と混合されることができ、静脈内または動脈内注射などにより医学的に適切な手技、例えば、非経口的投与(例えば、注射)を使用して投与される。
【0073】
上述の遮断抗体及び治療抗体化合物は、知られている技術による薬剤担体に入れて投与するように製剤することができる。例えば、非特許文献9を参照されたい。本発明による製剤処方の製造において、活性化合物(その生理学的に許容される塩を含む)は、典型的には、なかんずく、許容される担体と混合される。担体は、もちろん、製剤の他の成分と親和性があるという意味で許容されなければならず、また、被検体に悪影響があってはならない。担体は、液体であってよく、好ましくは、この化合物と、活性化合物の0.01または0.5重量%から95重量%または99重量%までを含むことができる単位用量製剤として製剤される。
【0074】
非経口的投与に適している本発明の製剤は、活性化合物の殺菌した水性及び非水性注射溶液を含み、その調合剤は、好ましくは、意図された摂取者の血液との等張性を持つ。これらの調合剤は、酸化防止剤、緩衝液、静菌薬、及び製剤を意図された摂取者の血液との等張性を持つようにする溶解質を含むことができる。
【0075】
本発明による線量測定投薬抗体、遮断抗体、及びすべての治療抗体は、凍結乾燥形態で殺菌済み無菌容器に入れて供給することができるか、または殺菌済み無ピロゲン水または殺菌済み無ピロゲン生理食塩水などの薬剤として許容される担体と組み合わせて製剤処方で供給することができる。
【0076】
他の実施形態では、治療抗体は、適宜、本明細書で説明されている疾患または病状の治療(例えば、化学療法)で有用な他の異なる活性化合物とともに投与することができる。他の化合物は、併用投与することもできる。本明細書で使用されている「併用」という単語は、複合効果をもたらすのに時間的に十分に近いことを意味する(つまり、併用は、同時であるか、または互いの投与の前後に2回またはそれ以上の回数の投与があってもよい)。
【0077】
RIT用量の線量測定見積もり
線量測定は、用量の正確な測定を指す。注目している用量が放射線量の場合、線量測定は、組織内の放射線エネルギーの量の正確な測定を指す。これは、放射線を使用して被検体の疾病または癌を治療する場合に特に重要である。そのため、放射線を使用しすぎると、被検体に対する傷害性が非常に大きいが、使用するのが少なすぎると、療法として効果がない。
【0078】
本発明による方法は、安全で有効なRIT用量(投与される放射能の量)の正確な決定を規定している。最初に、いわゆる「放射線吸収線量」または「RAD」が、決定される。これは、特定の放射線治療薬の安全性及び効力を定量することができる実験を含む、癌または疾病治療の分野で受け入れられている任意の手段により実行できる。例えば、最適なRADは、観察被検体群の毒性及び臨床転帰に基づいて決定することができる。所定のRADの量は、約10Gyから約100Gyまでの量となるように決定できる。より好ましくは、所定のRADの量は、約25Gyから約75Gyまでの量となるように決定できる。より好ましくは、所定のRADの量は、約30Gyから約60Gyまでの量となるように決定できる。より好ましくは、所定のRADの量は、約40Gyから約50Gyまでの量となるように決定できる。より好ましくは、所定のRADの量は、約42Gyから約48Gyまでの量となるように決定できる。好ましい一実施形態では、所定のRADの量は、約44Gyである。
【0079】
所定のRADが設定されたら、本発明による方法を使用して、投与すべきRIT用量を決定し、所定のRADを得ることができる。最初に、放射性標識抗体のいわゆる「線量測定用量(dosimetric dose)」は、量を段階的に増やしつつ、放射免疫療法を必要とする被検体に投与される。例えば、一実施形態では、放射性標識抗体(または「RIT薬剤」)は、131I標識81C6モノクローナル抗体である。このRIT薬剤を使用した場合、線量測定用量は、81C6の約1から2mg、または131Iの5mCiまでとすることができる。
【0080】
線量測定用量が投与された後、一連の用量反応読み取り値が取られ、滞留時間を決定するために使用される。次いで、S値は、限定はしないが、モンテカルロ法及びMIRDファントムを含む、当業者に周知である方法を使用して計算される。
【0081】
所定のRAD、SCRCサイズ、滞留時間、及びS値に対する値は、式
SCRC=AS(B2−cm←SCRC)τSCRC
に当てはめられ、この式は、投与用量、または所定の吸収線量(RAD)を得るために必要なRIT用量である、Aについて解かれるが、但し、DSCRCは、所定の吸収線量(またはRAD)であり、Aは、mCiで表される投与線量(またはRIT用量)であり、S(B2−cm←SCRC)は、Gy hr mCi−1で表される対応するS値であり、τSCRCは、hr単位の滞留時間である。
【0082】
治療線量は、約10mCiから約200mCiまでの範囲とすることができる。しかし、治療線量は、一般的に、約20mCiから約180mCiまでの範囲である。
【0083】
従って、線量測定用量を使用して、被検体の所望のまたは所定の放射線吸収線量(RAD)を得るために必要なRIT用量を計算することができる。RIT用量は、シンチグラフィデータ及び切除空洞のサイズにより決定される被検体の特定の滞留時間に基づくことができるため、治療用量を計算して、被検体の所望のまたは所定の吸収線量を得ることができる。従って、投薬の精度を高めることができ、RITの毒作用を低減することができる。
【0084】
他の実施形態では、全身シンチグラフィは、関心領域から放射線を検出するために実行される。関心領域は、SCRCを含む定義済み領域であるか、またはSCRCのマージンから1乃至2センチメートルまでなどのSCRCのマージンから所定の距離のところにある脳の実質細胞とすることができる。シンチグラフィは、複数回数実行することができ、例えば、第1回は、線量測定RIT用量の投与と実質的に同時であり、第2回は、第1回から約24時間後であり、第3回は、第1回から約48時間後である。他のシンチグラフィスケジュールは、必要に応じて使用できる。例えば、他の実施形態では、シンチグラフィは、線量測定RIT用量の投与と実質的に同時である第1回、第1回から約2から3日後である第2回、そして第1回から約5から7日後である第3回に実行される。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態によりさまざまなRIT薬剤を使用できることは理解されるであろう。更に、線量測定RIT用量は、治療RIT用量と同じまたは異なるRIT薬剤から得られる。例えば、一定量の131ヨウ素標識抗テネイシンネズミ81C6モノクローナル抗体をRIT薬剤として使用することができる。RIT薬剤は適当なものであればどのようなものでも使用できる。他のRIT薬剤は、好適な任意の放射性核種、例えば、211アスタチン、177ルテチウム、及び90イットリウムを含むことができる。
【0086】
線量測定用量及び/または治療RIT用量は、限定はしないが、リックマンリザーバーインプラントなどの、リザーバー埋め込みを含む、当業者に知られている手段により投与することができる。
【0087】
コンピュータ駆動線量測定法
本発明は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、及び/またはコンピュータプログラム製品のブロック図及び/または流れ図を参照しつつ以下で説明される。ブロック図及び/または流れ図のそれぞれのブロック、及びブロック図及び/または流れ図内のブロックの組合せは、コンピュータプログラム命令により実装できることは理解される。これらのコンピュータプログラム命令を、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、及び/またはマシンを形成する他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに送り、これにより、コンピュータ及び/またはプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行される命令が、ブロック図及び/または流れ図の1つまたは複数のブロックで指定された機能/活動を実装する手段を構成することができる。
【0088】
コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置を特定の方法で機能させることができるこれらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ可読メモリに格納することもでき、これにより、コンピュータ可読メモリ内に格納される命令で、ブロック図及び/または流れ図の1つまたは複数のブロックで指定された機能/活動を実装する命令を含む製造品を生産する。
【0089】
コンピュータプログラム命令は、更に、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置上にロードされ、これにより、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で一連の動作ステップが実行され、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で実行される命令がブロック図及び/または流れ図の1つまたは複数のブロックで指定された機能/活動を実行するステップを実現するようなコンピュータ実装プロセスを形成することができる。
【0090】
従って、本発明は、ハードウェア及び/またはソフトウェア(ファームウェア、常駐型ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)で具現化することができる。更に、本発明は、命令実行システムによりまたは命令実行システムに関連して使用するコンピュータ使用可能またはコンピュータ可読プログラムコードが媒体内に具現化されているコンピュータ使用可能またはコンピュータ可読記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形を取りうる。本明細書の文脈において、コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスにより、または命令実行システム、装置、またはデバイスに関連して使用されるプログラムを含む、格納する、やり取りする、伝播する、または移送することができる任意の媒体とすることができる。
【0091】
コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体は、例えば、限定はしないが、電子、磁気、光、電磁気、赤外線、または半導体のシステム、装置、デバイス、または伝搬媒体とすることができる。コンピュータ可読媒体のより具体的な実施例(完全な一覧ではない)としては、1つまたは複数の電線を有する電気接続、ポータブルコンピュータのディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、及びポータブルコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)がある。プログラムが、例えば、紙または他の媒体の光学式走査を介して電子的に取り込まれ、次いでコンパイルされ、解釈実行されるか、または必要ならば他の何らかの形で適当な方法により処理され、次いでコンピュータメモリ内に格納されるようにできるので、コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体は、プログラムが印刷される紙または他の適当な媒体であってもよいことに留意されたい。
【0092】
被検体用量検証で使用される用量データは、(a)読み取り計測装置上のディスプレイ、(b)電子読み取り装置からのプリントアウト、または(c)コンピュータ画面の3つの形式のうちの1つで表示することができる。後者の場合、コンピュータ画面上に表示される情報は、数値または表、場合によってはグラフの形態をとる。
【0093】
上述のコンピュータ及びコンピュータソフトウェアは、所定の用量を特に定義されている空洞マージンに送達するのに必要な投与活性を計算するために使用することができる。コンピュータソフトウェアは、読み取り計測器またはユーザーから入力されたデータ、更には、典型的には知られている方法による線量測定システムの前の較正に続く、ユーザーによってすでに入力されている較正または補正率を使用して、このような計算を実行することができる。このソフトウェアは、次いで、用量計算結果と所定の標的用量とを比較し、好都合にもディスプレイで強調表示することにより、補正動作に対する偏差を示すことができる。更に、ソフトウェアは、本明細書で説明されている公式を操作し、コンピュータに入力され、コンピュータが受け取るすべてのデータに適用することができる。コンピュータは、テーブルを作成して格納し、入力されたすべてのデータを公式に正確に適用し、所定の空洞マージンに特定の標的用量を送達するのに必要な投与活性A0を出力することができる。
【0094】
上記のコンピュータソフトウェア実装は、必要な投与活性を計算するコンピュータ実行可能命令を収めたコンピュータ可読媒体を用意することにより実現することができる。コンピュータ実行可能命令は、SCRCパーセント注入用量、SCRC滞留時間、及び所定のセッションのSCRCに対するS値を計算するために必要な多数のパラメータを受け取るように構成される。パラメータが受信されると、コンピュータ実行可能命令は、それらのパラメータを定義済み公式に当てはめて、必要な投与活性を計算する。次いで、必要な投与活性及び入力パラメータのどれかを分析のためユーザーディスプレイに出力することができる。また有用なことであるが、実行可能命令は、これらのパラメータを記憶デバイス内に格納するようにセットアップすることができる。
【0095】
更に、上で簡単に説明したように、開業医(例えば、放射線腫瘍医または医学物理学者または医師)は、コンピュータの助けを借りて、切除空洞内のある点において、標的RIT用量を高い精度で決定することができる。所定の源構成の合格または不合格の基準として、この用量は、移植された腫瘍の周辺に適用される可能性が高く、問題は正常組織への損傷を最小限に抑えることである。すべて不可避的に薬が使用される状況の線量測定不確定性に大きく関与している源定位、組織不均質性、及び測定アクセス性の実用上の難しさを考えると、所定の単一源用量分布に関連する誤差の成分が、この前述の難しさがある場合にできる限り正確で、再現性のあるものであることを要求することは妥当である。
【0096】
本発明の実施形態は、データ処理システム5及び投与用量モジュール10に関して説明されているが、本発明の実施形態による動作を実行するために他の構成も使用できることは理解されるであろう。例えば、投与用量モジュール10は、オペレーティングシステム60など、メモリ14の他のコンポーネント内に組み込むことができる。当業者に使用されるMRI映像法及びシンチグラフィ以外の技術は、更に、切除空洞のサイズを決定し、及び/または被検体の関心領域からの放射線を検出するためにも使用することができる。
【0097】
本発明の実施形態による例示的なシステムは、図1に例示されている。例示されているように、データ処理システム5は、データバス48を介してメモリ14とやり取りするプロセッサ10を備える。メモリ14は、データ処理システム5で使用されるソフトウェア及びデータのいくつかのカテゴリ、つまり、オペレーティングシステム60、アプリケーションプログラム54、入出力(I/O)デバイスドライバ58、及びデータ56を含む。
【0098】
データ56は、例えば切除空洞サイズを決定するために、被検体の画像を出力するように構成されているMRIシステム25から得られる、磁気共鳴映像(MRI)データ50を含むことができる。データ56は、更に、例えば当業者に知られているシンチグラフィ技術を使用して放射線を検出するように構成されているシンチグラフィシステム20から得られる、シンチグラフィデータ52を含むこともできる。
【0099】
アプリケーションプログラム54は、例えば本明細書で説明されている技術を使用して、投与された治療RIT用量を計算するように構成された投与用量モジュール10を含むことができる。投与用量モジュール10は、被検体内の切除空洞のところ、またはその周辺の関心領域に対する線量測定量を見積もることができる。
【0100】
例えば、投与用量モジュール10は、図2に関して以下の動作の1つまたは複数を実行することができる。切除空洞のサイズは、例えば、図1のMRIシステム25からのMRI画像に基づいてサイズを計算することにより決定することができる(ブロック102)。線量測定RIT用量は、被検体の切除空洞に投与され、MRI画像のサイズは、線量測定RIT用量が、投与される前後に得ることができる。線量測定RIT用量が投与された後、滞留時間を決定することができる(ブロック104)。例えば、投与用量モジュール10は、線量測定用量を投与した後複数回にわたって関心領域からの空洞のサイズ及び検出放射線に基づいて滞留時間を計算することができる。検出放射線は、シンチグラフィシステム20から出るシンチグラフィデータ52から投与用量モジュール10により得られる。投与治療RIT用量は、滞留時間、切除空洞のサイズ、及び所定の吸収線量に基づいて計算することができる(ブロック106)。
【0101】
従って、線量測定RIT用量を使用することで、被検体の所望の吸収線量を得るために将来使用する治療用量を計算することができる。治療用量は、シンチグラフィデータ及び切除空洞のサイズにより決定される被検体の特定の滞留時間に基づくことができるため、治療用量を計算して、被検体の所望のまたは所定の吸収線量を得ることができる。従って、投薬の精度を高めることができ、RITの毒作用を低減することができる。所定の吸収線量は、実験データに基づく最適な吸収線量とすることができる。例えば、最適な線量は、観察被検体群の毒性及び臨床転帰に基づいて決定することができる。所定のRADの量は、約10Gyから約100Gyまでの量となるように決定できる。より好ましくは、所定のRADの量は、約25Gyから約75Gyまでの量となるように決定できる。より好ましくは、所定のRADの量は、約30Gyから約60Gyまでの量となるように決定できる。より好ましくは、所定のRADの量は、約40Gyから約50Gyまでの量となるように決定できる。より好ましくは、所定のRADの量は、約42Gyから約48Gyまでの量となるように決定できる。好ましい一実施形態では、所定のRADの量は、約44Gyである。
【0102】
所定のRADが設定されたら、本発明による方法を使用して、投与すべきRIT用量を決定し、所定のRADを得ることができる。一実施形態では、所定のRADは、約44Gyである。線量測定RIT用量は、131I標識81C6の約1から2mg、または131Iの約5mCiまでとすることができる。治療線量は、一般的に、約10mCiから約200mCiまでの範囲である。
【0103】
本発明の実施形態は、データ処理システム5及び投与用量モジュール10に関して説明されているが、本発明の実施形態による動作を実行するために他の構成も使用できることは理解されるであろう。例えば、投与用量モジュール10は、オペレーティングシステム60など、メモリ14の他のコンポーネント内に組み込むことができる。MRI映像法及びシンチグラフィ以外の技術は、更に、切除空洞のサイズを決定し、及び/または被検体の関心領域からの放射線を検出するためにも使用することができる。
【0104】
一実施形態では、全身シンチグラフィは、関心領域から放射線を検出するために実行される。関心領域は、切除空洞のマージンから1乃至2センチメートルまでなどの切除空洞のマージンから所定の距離のところにある脳の実質細胞を含む定義済み領域とすることができる。シンチグラフィは、複数回数実行することができ、例えば、第1回は、線量測定RIT用量の投与と実質的に同時であり、第2回は、第1回から約24時間後であり、第3回は、第1回から約48時間後である。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態によりさまざまなRIT薬剤を使用できることは理解されるであろう。更に、線量測定RIT用量は、治療RIT用量と同じまたは異なるRIT薬剤から得られる。例えば、一定量の131ヨウ素標識抗テネイシンネズミ81C6モノクローナル抗体をRIT薬剤として使用することができる。RIT薬剤は適当なものであればどのようなものでも使用できる。他のRIT薬剤は、好適な任意の放射性核種、例えば、211アスタチン、177ルテチウム、及び90イットリウムを含むことができる。線量測定用量及び/または治療RIT用量は、リックマンリザーバーインプラントなどの、リザーバー埋め込みを通して投与することができる。
【0106】
遮断抗体
本発明の他の態様は、男性及び女性の被検体、及び新生児、幼児、児童、青年、成人、及び高齢者の被検体を含む、ヒトの被検体の治療に関係する方法における遮断抗体の使用に関するものであるが、本発明は、更に、獣医医療を目的として動物被検体、特に、マウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜類、及びウマなどの哺乳類被検体について実施することもできる。
【0107】
他の実施形態では、これらの方法は、薬剤スクリーニング及び薬剤開発を目的として使用することができる。
【0108】
1.遮断抗体法
本発明による遮断抗体法は、身体中に通常存在する特定の巨大分子が癌細胞により過剰発現される現象に頼る。例えば、テネイシンは、脳腫瘍、リンパ腫、及び他の癌に関連する腫瘍細胞により過剰発現される。従って、テネイシンを標的とする抗体、例えば、81C6は、癌細胞により過剰発現されるテネイシン上の結合部位を飽和させる前に、正常な健常細胞の近くにあるその特異結合部位(エピトープ:epitopes)を飽和させることになる。RITの目標は、標的癌細胞のみに結合して殺し、非標的健常細胞だけを残すことである。この目標は、本発明による方法を使用することで達成されうる。例えば、開業医は、治療量以下の非標識(「寒冷(cold)」)MAb 81C6で被検体を予め処置しておくことができる。投与される寒冷抗体の量は、正常な健常細胞により過剰発現されたテネイシン分子が81C6抗体により飽和されるか、またはほぼ飽和されるように調整することができる(つまり、正常な健常細胞により発現された利用可能なテネイシン分子の100%またはほぼ100%が、抗体により結合される)。他方で、この少量の81C6は、癌細胞により過剰発現されるテネイシン分子の実質的にわずかな部分のみを占有するのに十分であり、テネイシン分子の大半を占有されていないままにし、そのため、放射性標識81C6抗体による後からの結合の「影響を受けやすくなる(susceptible)」。好ましくは、非標識遮断抗体の予備投与の効果があるため、遮断抗体が存在しなかった場合に比べて、腫瘍の細胞外間質成分に対する治療抗体の結合は少なくとも2倍増大する。より好ましくは、遮断抗体が存在しなかった場合に比べて、腫瘍の細胞外間質成分に対する治療抗体の結合は少なくとも5倍増大する。従って、本発明により寒冷抗体で前処置することで、放射性標識81C6抗体の後からの投与からのすべての、またはほぼすべての健常テネイシン生産細胞を効果的に「遮蔽(shield)」または「阻害(block)」するが、それと同時に、放射性標識81C6抗体による後からの放射免疫治療(「RIT」)からのテネイシン過剰発現癌細胞のうちのわずかな割合しか阻害しない。更に、RIT用量は、標的分子(この場合は、テネイシン)の飽和が有効であることを必要としない。そのため、寒冷81C6抗体による前処置の後、放射性標識抗体の治療用量はRITとして投与することができ、それらの放射性標識抗体は、癌を患っている細胞の付近で優先的にテネイシンを結合することができ、それらを殺すことができる。
【0109】
2.抗体及び治療抗体
本発明を実施するために使用される遮断抗体は、一般に、任意の治療薬に結合または抱合されないが、本発明を実施するために使用される治療抗体は、一般に、治療薬に結合または抱合される。そのため、遮断抗体は、それ自体、本明細書で説明されている方法で癌を治療するうえで治療的に活性であるわけではない。
【0110】
治療に使用される(つまり、癌を治療する方法における)抗体は、それ自体ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であるか、または治療薬に結合されたモノクローナル抗体であってよい。このような抗体は、ときには、本明細書では治療抗体と呼ばれる。
【0111】
(限定はしないが)放射性核種、細胞傷害性薬、及び化学療法薬を含む、モノクローナル抗体に従来結合されていた治療薬を使用することができる。全体としては、非特許文献10を参照されたい。放射性核種、細胞傷害性薬、及び化学療法薬などの治療薬は、上で説明されており、また特許文献9、特許文献4、特許文献10、特許文献11、及び特許文献12でも説明されている。
【0112】
治療薬は、限定はしないが、特許文献9、特許文献4、特許文献10、特許文献11、及び特許文献12で説明されているものを含む、任意の好適な技術を使用する直接的手段または間接的手段(例えば、キレート剤を使って)により抗体に結合することができる。治療薬は、当業者には明らかなように、ヨードゲン法により抗体に(例えば、非特許文献11を参照)、またはN−スクシンイミジル−3−(トリ−n−ブチルスタニル)ベンゾエート(「ATE法」)と結合または抱合させることができる。例えば、非特許文献12を参照されたい。
【0113】
3.遮断抗体及び治療抗体の用量
遮断抗体の用量は、とりわけ、被検体の病状、治療される癌の特定のカテゴリまたは種類、投与経路、採用される治療薬の性質、及び特定の治療薬に対する腫瘍の感受性に依存する。例えば、用量は、典型的には、被検体体重1キログラム当たり約1から10マイクログラムである。抗体の具体的用量は、罹患集団内のいくつかの個体にいくつかの有益な効き目を現す効果がある限り、重要ではない。一般に、用量は、被検体体重1キログラム当たり約0.05、0.1、0.5、1、5、10、20、または50マイクログラム以下と低く、また被検体体重1キログラム当たり約5、10、20、50、75、または100マイクログラム、またはそれ以上と高い場合がある。治療抗体の用量は、とりわけ、被検体の病状、治療される癌の特定のカテゴリまたは種類、投与経路、採用される治療薬の性質、及び特定の治療薬に対する腫瘍の感受性に同様に依存する。例えば、用量は、典型的には、被検体体重1キログラム当たり約1から10マイクログラムである。抗体の具体的用量は、罹患集団内のいくつかの個体にいくつかの有益な効き目を現す効果がある限り、重要ではない。一般に、用量は、被検体体重1キログラム当たり約0.05、0.1、0.5、1、5、10、20、または50マイクログラム以下と低く、また被検体体重1キログラム当たり約5、10、20、50、75、または100マイクログラム、またはそれ以上と高い場合がある。
【0114】
他の実施例では、治療薬が131Iである場合、被検体への投薬用量は、典型的には、10mCiから100、300、更には500mCiまでである。別の言い方をすると、治療薬が131Iである場合、被検体への投薬用量は、典型的には、5,000ラッドから100,000ラッド(好ましくは、少なくとも13,000ラッド、更には少なくとも50,000ラッド)までである。他の放射性核種の用量は、典型的には、放射線量が異なる場合があっても、殺腫瘍用量が、131Iに対する前記の範囲に相当するように選択される。例えば、放射線量を腫瘍に送達するのにわずか数ミリキューリーの211Atがあればよく、これは、100ミリキューリーの131Iにより送達される線量と同等である。
【0115】
いくつかの点で、遮断抗体の投与及び治療抗体のその後の投与は、特許文献3で説明されているのと同様にして実行することができる。しかし、本発明の利点は、本明細書で説明されているような細胞外成分に特異的な遮断抗体が、細胞に対し特異的な抗体が持つのよりも長い半減期を生体内に持つという点である。従って、遮断抗体の投与から治療抗体のその後の投与まで長い期間がありうる。そのため、一実施形態では、治療抗体の最初の投薬は、遮断抗体の投薬(または複数が与えられる場合には最後の投薬)を投与してから少なくとも1日後に被検体に投与される。他の実施形態では、治療抗体の最初の投薬は、遮断抗体の投薬(または複数が与えられる場合には最後の投薬)を投与してから少なくとも2日後に被検体に投与される。他の実施形態では、治療抗体の最初の投薬は、遮断抗体の投薬(または複数が与えられる場合には最後の投薬)を投与してから少なくとも3日後に被検体に投与される。更に他の実施形態では、治療抗体の最初の投薬は、遮断抗体の投薬(または複数が与えられる場合には最後の投薬)を投与してから少なくとも4日後に被検体に投与される。他の実施形態では、治療抗体の最初の投薬は、遮断抗体の投薬(または複数が与えられる場合には最後の投薬)を投与してから少なくとも1週間後に被検体に投与される。他の実施形態では、治療抗体の最初の投薬は、遮断抗体の投薬(または複数が与えられる場合には最後の投薬)を投与してから少なくとも2週間後に被検体に投与される。本発明のこれらの実施形態において可能な遮断用量と治療用量との間により長い期間があるので、治療抗体の投与前に被検体の健康状態を監視する機会が増える(例えば、毒性、アレルギー性反応、アナフィラキシー、肝臓及び/または脾臓毒性などについて観察)。これにより、外部被検体に基づいて被検体に遮断用量を投与することができる(コストがかなり低く、被検体に対しても潜在的にかなり都合がよい)。これにより、更に、必要ならば、遮断抗体の投与に対する有害反応(例えば、予定されている治療処置を中断するほどの重大な、毒性、アレルギー性反応、アナフィラキシー、肝臓及び/または脾臓毒性など)が観察される場合に、治療抗体の投与を回避する機会が得られる。
【0116】
(実施例)
本発明は、制限するのではなく本発明の例示として与えられている、以下の実施例を参照することによりよく理解することができる。
【0117】
(実施例1)
44Gyの吸収された標的線量に対する131I標識ネズミ81C6モノクローナル抗体の線量測定
【0118】
基本的な製剤
本発明の実施形態によれば、2cm空洞マージンに対する44Gyの標的線量Dを得るのに必要な投与活性Aを見積もるために線量測定の見積もりを実行することができる。基本方程式は、
SCRC=AS(B2−cm←SCRC)τSCRC
で与えられるが、但し、DSCRCは、44Gyの標的線量であり、Aは、mCiで表される投与活性であり、S(B2−cm←SCRC)は、Gy hr mCi−1で表される対応するS値であり、τSCRCは、hr単位の滞留時間である。
【0119】
シンチグラフィの研究
1.全身シンチグラフィ
3つまたはそれ以上のセッションが使用される。それぞれのセッションは、1)被検体の全身画像、2)背景の全身撮像、及び3)最初に約200μCiの131Iが入っているソースバイアルの全身撮像からなる。第1のセッションは、線量測定用量の131I標識ネズミ81C6 MAbを投与した直後に獲得される。第2及び第3は、投与した後24時間及び48時間以内に獲得される。
【0120】
獲得パラメータ:
i.高エネルギーコリメータ、
ii.30cm min−1の頭部速度、
iii.カメラで許容される最大長。
【0121】
2.頭部の磁気共鳴映像
頭部のMRIは、線量測定用量の投与の24時間前に獲得される。MRIは、厚さ3mmの連続する間隔0の軸方向T1重み付きコントラスト増強画像からなる。これらのMRI画像は、SCRCの体積を評価するために使用される。
【0122】
SCRC内の滞留時間の見積もり
同一の円形関心領域(ROI)が、SCRCの周りのすべての平面全身画像内に描かれる。このROIからのカウント総数は、前部及び後部の画像から、及びそれぞれのセッションから得なければならず、パーセント注入用量は、以下の式に基づいて計算される:
【0123】
【数4】

【0124】
但し、%IDSCRC,iは、セッションiに対するSCRCパーセント注入用量であり、CASCRC及びCPSCRCは、前部及び後部SCRCカウントを表し、CABkg及びCPBkgは、前部及び後部背景カウントを表す。これらの計算は、それぞれのセッションiについて実行される。SCRC滞留時間は、以下の式に基づいて計算される:
【0125】
【数5】

【0126】
S値
SCRCに対するS値は、空洞サイズに基づいて計算される。空洞体積の関数としてのS値の表が作られ、表1に示されている。空洞体積は、表1に示されている値の間に補間することができる。S値は、モンテカルロシミュレーションに基づいて計算される。
【0127】
投与活性の計算
44Gyを2cmの空洞マージンに送達するのに必要な投与活性は、以下の式で与えられる:
【0128】
【数6】

【0129】
但し、DSCRCは、44Gyの標的用量であり、S(B2−cm←SCRC)は、表1から見積もられたS値であり、τSCRCは、SCRC滞留時間である。
【0130】
【表1】

【0131】
(実施例2)
新たに診断された原発性及び転移性脳腫瘍を有する被検体の治療に際して外科的に作られた嚢胞性切除空洞周辺に44Gyの標的放射線増強用量を送達するために投与される131ヨウ素標識抗テネイシンネズミモノクローナル抗体81C6(m81C6)のフェーズII研究
131I標識抗テネイシンモノクローナル抗体81C6(131I−81C6)を外科的に作られた切除空洞(SCRC)に投与すると、新たに診断された、再発性悪性神経膠腫を有する被検体の生存率が改善される。すでに実施されている研究の線量測定分析から、131I−81C6により44GyをSCRCに送達することは、低毒性率及び著しい限局性腫瘍管理に関連することが示唆される。この実施例の主要な目的は、SCRC周辺への44Gyブーストを達成するために131I−81C6の用量を投与することの効力と毒性を評価することである。適格基準は、新たに診断された、以前に未治療の悪性神経膠腫を有する成人、全切除、切除空洞と脳脊髄液(CSF)空間との間に連絡なし、60%を超えるKPS(カルノフスキー活動度指数、つまり患者機能の尺度)、並びに適切な骨髄、腎臓、及び肝機能を含む。5mCiの123I−81C6を使った前治療線量測定研究に基づいてSCRCへの44Gyブーストを達成するために、131I−81C6が投与される。従来の外部ビーム放射線療法及び全身性化学療法は、131I−81C6投与に続いて全被検体に処方される。20被検体が治療され、そのうち、14被検体はGBMで、6被検体はAA/AOで治療される。年齢の中央値は、49.5歳(24から70歳までの範囲)である。67%が男性である。投与される131I−81C6の線量中央値は、53mCi(25から150までの範囲)である。
【0132】
結果
すべての被検体は、SCRC周辺に対し44Gy(±10%)ブーストを達成し、どの被検体も、131I−81C6に帰すべきグレード3以上の毒性を経験しなかった。フォローアップの中央値34週で、すべての被検体及びGBMを有する被検体の生存期間の中央値は94週である。
【0133】
(実施例3)
悪性神経膠腫を有する新たに診断された被検体における131I標識抗テネイシン81C6ネズミモノクローナル抗体の線量測定及び放射線分析:フェーズII研究
本発明による線量測定法を使用して、以下のように、必要な投与活性「AO」を見積もることができる。この実施例の目的のために、望ましい標的線量「D」及び空洞マージンのサイズが知られていると仮定する。この実施例では、標的RAD(標的線量「D」)は、44Gyであり、投与放射免疫治療用量が計算される空洞マージンのサイズは、2cmである。S値は、モンテカルロシミュレーションを使用するか、または当業者に知られている他の手段により、計算することができる。まず、「Dscrc」に対する式
SCRC=AS(B2−cm←SCRC)τSCRC
を使用して、投与活性「A0」に対する値を決定する。但し、DSCRCは、44Gyの標的線量であり、Aは、mCiで表される投与活性であり、S(B2−cm←SCRC)は、Gy hr mCi−1で表される対応するS値であり、τSCRCは、hr単位の滞留時間である。次に、SCRC内の滞留時間(τ)を決定する。滞留時間(τ)を計算するのに以下の式が使用され、それぞれのセッション(i)の時間(t)をこの式に挿入する:
【0134】
【数7】

【0135】
この計算は、それぞれのセッション(i)について実行されなければならない。次に、それぞれのセッション(i)に対するSCRCパーセント注入用量「%IDscrc」は、以下の式を使用して計算される:
【0136】
【数8】

【0137】
但し、「CA」及び「CP」は、前部SCRC及び後部SCRC並びに背景放射線カウントを表す。前部及び後部SCRCカウントの計算は、当業者の通常の知識の範囲内のものであり、従って、この実施例の目的に関して、このデータは、式への直接代入に容易に利用できるか、または達成可能であると仮定する。SCRCパーセント注入用量(%IDscrc)が、それぞれのセッション(i)について計算された後、これらの結果は、方程式の中に直接代入され、それにより滞留時間(τ)を計算する。SCRCに対するS値に滞留時間を掛けて、この積を標的線量D(44Dy)で除算すると、44Gyを2cmの空洞マージンに送達するために必要な投与活性が得られる。
【0138】
上記実施例の中の空洞マージンのサイズまたは標的線量を変えることは、S値に反映されるほか、前部及び後部SCRCカウントにも反映される。このような場合、必要な投与活性は、S値及び滞留時間について再計算し、これらの新たに計算された値を上述のようにA0の方程式に再代入することにより計算することができる。
【0139】
以下のステップは、本発明により注入できる放射線の量を計算する一方法である。定義済みの放射能レベル(mCi 131I)が注入され、その結果、さまざまな放射線量(Gy単位)が2cmの空洞マージンに入る。次いで、空洞サイズ及び空洞滞留時間が測定される。次いで、注入されるmCiを知っているので、個々の被検体が受け取る実際の放射線量を計算することができる。次に、被検体が受け取る放射線量と結果、つまり、治療の生存率及び副作用、放射線壊死などとの関係を調べて、44Gyの放射線量を決定して、腫瘍管理を最大にすることと、放射線壊死の重大な副作用を最小にすることとの間の最良の妥協をもたらすことができる。
【0140】
従って、すべての被検体を44Gyを達成するのに十分な放射能レベルで治療することが望ましい。44Gyの線量が望ましいことを知って、次に、44Gyを達成するためにどれだけの放射能を注入する必要があるかを計算しなければならない。そこで、A0に対する方程式を参照すると、Dは、44Gyに等しく、S値は、I−131の崩壊につき2cmの標的体積中にどれだけのエネルギーが蓄積されるかを決定する。S値は、幾何学的形状に左右され、そのため、MRI映像法により実行される空洞体積の測定尺度である。切除空洞滞留時間は、空洞内に放射能がどれだけの期間、残留し、標的体積を照射するかを反映し、連続ガンマ線カメラ撮像または放射線検出器プローブ測定により測定される。
【0141】
(実施例4)
癌被検体内の非標識ヒト/マウスキメラ81C6(ch81C6)抗体の最大耐量(MTD)の見積もり及び非標識ch81C6の用量を段階的に増やした後の癌被検体内の131I標識ch81C6の薬物動態及び線量測定の評価
131I標識キメラモノクローナル抗体81C6(131I−ch81C6)は、静脈を介してヒトに安全に与えることができる。しかし、131I−ch81C6は、正常な健常間質内及び等しい親和性を有する腫瘍性間質内のテネイシンに結合する。本発明によりch81C6の非標識用量で被検体を前治療すると、後から投与される治療抗体(例えば、131I−ch81C6)を腫瘍性間質に送達する能力が高まる。これは、非標識ch81C6がテネイシン発現の正常な健常間質部位を結合し、それにより、それらの部位を放射性標識抗間質抗体から保護し、腫瘍性部位への送達を高めるからである。
【0142】
試行
この試行は、正常な健常間質への結合及び他の健常組織への非特異的結合を潜在的に「阻害する」非標識抗体を使用し、関連する治療なしで送達される131I−ch81C6抗体の用量を段階的に増やす前の作業に基づく。第1の試行では、造血抑制により、(131Iの)10mCiの「線量測定用量(dosimetric dose)」を識別し、続いて30mCiの治療用量を最大耐量(MTD:maximum tolerated dose)と識別した(これは、血液細胞の形成の抑制であり、「遮断」抗体が使用されない場合に結果として血小板減少症(血小板の個数の減少)、貧血(赤血球の個数の減少)、及び好中球減少(白血球、特に好中球の個数の減少)を引き起こす)。
【0143】
目的
この試行の主要な目的は、固定放射性標識用量の前にリンパ腫または充実性腫瘍を有している被検体内に静脈を介して送達される非標識キメラ81C6抗テネイシンヒト/キメラモノクローナル抗体(ch81C6)の毒性に関して最大耐量(MTD)を見積もることである。二次的目的は、非標識抗体の用量を段階的に増やした後、131I標識ch81C6抗テネイシンモノクローナル抗体の薬物動態及び線量測定を評価することである。この研究の二次的目標は、131I標識ch81C6抗テネイシンモノクローナル抗体の潜在的抗リンパ腫効果を評価することである。
【0144】
検査群
検査群は、バイオプシー実証済みリンパ腫または充実性腫瘍を有し、少なくとも1つの治療法に失敗している成人被検体を含むことができる。妊娠または乳汁分泌中の女性は、適当でない。被検体は、予定治療の任意の態様を損なうおそれのある著しい内科的疾患及び/または精神病を患っていてはならない。被検体は、適切な(十分に高いか、または十分に低い)実験室決定レベルの白血球、好中球、血小板、アミノ基転移酵素(AST/ALT検査)、アルカリ性ホスファターゼ、ビリルビン、及びクレアチニンクリアランスを有していなければならない。疾病への肝臓及び/または骨髄関与率が25%を超える被検体は、適当でない。被検体は、一般状態が2未満であり、平均余命が少なくとも2ヶ月なければならない。被検体は、幹細胞を採取できなければならない。被検体は、HIV及び活動性ウイルス性肝炎(HBV及びHCV原因)陰性でなければならない。自己(「自分自身」から)または同種(他のヒトから)骨髄移植ですでに治療されている被検体は、適当でない。被検体は、放射線を受けることができなければならない。ヨウ素にアレルギーがある被検体は、除外される。現在ステロイド療法を受けている被検体は、許容されるが、可能な最低の線量を受けているべきであり、線量は、療法が行われる前の少なくとも5日間、安定していなければならない。
【0145】
検査プロトコル
甲状腺抑制は、治療の少なくとも24時間前に開始し、治療線量の後14日間継続する。寒冷(非標識)抗体は、ヒトに毒性を引き起こすことは知られていないが、この試行のときに、81C6抗体毒性が評価される。治療抗体の用量(つまり、放射性標識されている抗体)は、寒冷抗体から毒性が更にある場合に、すでに決定されているMTDよりも16%低く設定される(30mCiではなくむしろ25mCi)。
【0146】
被検体は、最小限3人の被検体を含む集団に登録され、この試行で治療される。それぞれの被検体は、最初に、最低用量の非標識ch81C6抗テネイシン抗体を受ける。最低用量で用量規定毒性(「DLT」)を経験した被検体がいない場合、その用量は、次の用量レベルに段階的に増やされる。3被検体集団内の一人の被検体がDLTを経験する場合、更に3被検体が、同じ用量レベルでその集団に加えられる。これら6被検体のうちの2未満の被検体がDLTを経験する場合、用量は、次の用量レベルまで段階的に増やされる。しかし、3人集団内の2または3被検体がある用量レベルでDLTを経験する場合、MTDを超えていると判断され、試行は、その時点で終了する。MTDは、この試行で使用された非標識抗体の次に低い用量として見積もられる(つまり、MTDを超えなかった最高の用量)。MTDに到達せずに、1600mgの最大予定非標識用量に達した場合、試行は、線量測定評価に応じて修正され、更に段階的に増やす前にIRB及びFDAにより承認されることができる。
【0147】
最初に、検査被検体に、非標識用量の抗体を直に与え、その直後に、ch81C6 MAb 10mgの一定用量に結合された131I 5mCiのトレーサー量(「トレーサー量(tracer amount)」は、シンチグラフィまたは何らかの類似の方法を使用して抗体を局在化するのに十分な量である)を与える。これは、「線量測定用量」と呼ばれる。注射器への放射性標識タンパク質の収量及び移動の変動はわずかなので、線量測定用量は、10mgに2mgを加えた量に調整することができる。投与された、または治療の、放射線量は、同じ理由から、標的線量から10%変動しうる。
【0148】
薬物動態測定のため、被検体から採血を行う間隔は、1)放射性標識抗体(線量測定用量)注入の直後、2)線量測定用量が終わって2から5時間後、3)線量測定用量が終わって約24時間後、4)線量測定用量が終わって2から3日後に1回、5)適切な線量測定分析が完了するまで、線量測定用量の注入に続いて4から7日までの間に1回である。被検体が放射能を保持する期間が長い場合には更に検査が必要になる場合がある。
【0149】
ガンマ線カメラ全身撮像は、上述のすべての時点、つまり、血液採取の度に、実行される。ここでもまた、被検体が放射性標識を保持する期間が長い場合には更に検査が必要になる場合がある。これらのデータから、放射性標識ch81C6の活性が決定される。これから、遮断抗体の用量を送達される全身照射線量が決定される。この後に、治療放射性標識用量が続く。
【0150】
線量測定の前、治療投薬の前、及び回復時(リステージング)に、ヒト抗マウス抗体(HAMA:human-anti-mouse-antibodies)検査のため採血する。被検体は、放射能を直接読み取れるように、線量測定週に1回実行される髄のバイオプシーを受けることができる。バイオプシーの結果と、走査画像との相関を調べ、走査の感度計算を行い、次いで、絶対放射能スケールを決定することができる(バイオプシーなしで可能なすべてである、相対スケールではなく)。被検体は、線量測定の後、触診可能な1cmよりも大きい端点を持つか、または骨髄バイオプシーに修正可能なものとすることができる。線量測定及び薬物動態モデリングの確認を助けるために、この部位の追加バイオプシーを許可するように被検体に求める。
【0151】
被検体は、初期投薬の後約1から2週間してから「治療線量(therapeutic dose)」注入のため戻る。ch81C6 MAb 10mgの一定用量で10mgの抗テネイシンに付属する25mCiの「治療線量」の前に同じ非標識用量の抗体を送達する。治療は、1回限りの事象を含む。
【0152】
長期に渡って血球減少を患っている人は、回復の兆候が見られない場合に回復を助けるために、バックアップ幹細胞を解かして再注入してもらう。被検体は、治療医師の裁量に従って抗生物質、栄養補給、水分補給、及び他の対症療法を受ける。被検体は、放射性標識抗体の治療投薬後7日以内でない限り、治療医師の裁量でG−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)またはGM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)を受けることができる(治療寿命の約半分)。
【0153】
データ分析及び監視
データは、2つの異なる検査群、1)リンパ腫を有する被検体と2)充実性腫瘍を有する被検体について別々に分析される。
【0154】
DLTは、肺、腎臓、肝臓、心臓、胃腸、または神経領域、または長期に渡る血球減少症でNCIバージョン3.0基準を使用して、1週間よりも長く続くグレード3毒性、2日よりも長いグレード4毒性、または生死に関わる非造血毒性として定義される。
【0155】
この試行で見積もられたMTD用量は、用量規定毒性を経験している3被検体の0、または6被検体の<2を産生する放射性標識抗体の固定用量の前に送達される非標識抗体の最大容量である。
【0156】
中空糸システム内の免疫グロブリンの産生
ハイブリドーマ細胞を、Biovest International社(マサチューセッツ州ウースター)のMini-Max(商標)中空糸カートリッジシステム内で増殖させた。カートリッジは、表面積2.3m、カットオフ30,000MW、及び余分な毛細管空間80mlである。細胞は、以下のようにして、Invitrogen社(カリフォルニア州カールズバッド)のCD Hybridoma Mediumで培養された。1から3×10のch81C6ハイブリドーマ細胞を種として、1つの余分な毛細管空間内に植え付け、Sigma Chemical Company社(Cat No. 735-10、ミズーリ州セントルイス)の乳酸塩キットを使用して、乳酸塩のレベルを測定することにより、その代謝活性を監視した。余分な毛細管空間の免疫グロブリン含量は、Biacore 3000 SPR(Surface Plasmon Resonance)ユニット(Biacore、ニュージャージー州ピスカタウェイ)上で監視された。採取された媒体は、3000×gで20分間遠心分離され、細胞が除去され、4℃の温度で貯蔵された。採取された上清は、プールされ、100,000×gで30分間遠心分離され、次いで、Millipak 60の0.22ミクロンフィルタ(Millipore)に通して濾過された。
【0157】
精製されたモノクローナル抗テネイシン抗体ch81C6
培養基1リットル当たり、10mlの殺菌済み1.0Mトリス緩衝液pH8.0を加えることにより、濾過されたch81C6 MAbをpH8.0に調整した。4Mグアニジン−HClの10カラム体積でフラッシングすることにより殺菌されたタンパク質Aセファロースカラム上に通すことにより、キメラ化免疫グロブリンを培養基から精製する。トリスNaCl緩衝液(0.9% Nacl中10mMトリス、pH8.0)の10カラム体積でカラムをすすいだ後、培養基をタンパク質Aカラムに通す。pH8.0トリスNaCl緩衝液でカラムをすすぎ、結合された免疫グロブリンをpH3.0のグリシンHCl緩衝液で溶出する(0.55Mグリシン、0.85% NaCl、及び10mM HCl)。5ml分画を回収し、直ちに、0.5ml 1Mトリスで中和する。吸収度は、分光光度計で280nmと読み取られ、免疫グロブリンを含む分画はプールされる。プールされた免疫グロブリンの純度は、4.6×300mm HPLC Super TSK-3000カラム上でゲル濾過によりチェックされ、次いで、一晩かけて、50,000分画分子量透析管内で50mMトリス酢酸塩緩衝液(pH5.6)の20体積分に対して透析される。サイズ40ミクロンのABx(混合モードイオン交換器)及びPEI(ポリエチレンイミン)を、JT Baker Company社(ニュージャージー州フィリップスバーグ)から大量に購入し、結合される免疫グロブリンの量について適切なサイズのカラムを充填する。乾燥ABx 1グラムは、理想的条件の下で、免疫グロブリン100から200mgを結合する。充填前に、ステンレス製カラムを4時間かけて210℃に加熱して、エンドトキシンを除去する。10カラム体積の4Mグアニジンでフラッシングして、充填材料及びHPLC(「高速液体クロマトグラフィ(High Performance Liquid Chromatography)」)カラムを殺菌する。次いで、20から30カラム体積の50mMトリス酢酸緩衝液(pH5.6)でフラッシングすることにより、カラムを平衡状態にする。透析免疫グロブリンをPEI及びABxカラム上に注入する。カラムを、10カラム体積の平衡緩衝液ですすぎ、ABxカラムから免疫グロブリンを溶出する前に、PEIカラムを除去する(ch81C6ではなく、エンドトキ
シンがPEIに結合し、従って、PEIの除去により、存在するエンドトキシンを除去しやすくなる)。ABxカラムから結合抗体を溶出するには、0%〜100%の250mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.8)から60分間リニアグラジエント(linear gradient)を行い、1ミリリットルの分画(fractions)を回収する。溶離液の吸収度は、280nmで監視される。免疫グロブリンの入っている管をプールし、115mMリン酸緩衝液(pH7.4)に対して完全に透析する。エンドトキシンを除去するために、透析された免疫グロブリンを、1M NaOHで殺菌され、115mMリン酸緩衝液で平衡状態にされた、ActiClean Etoxカラム(Sterogene Bioseparations, Inc.社、カリフォルニア州カールズバッド)上に通す。ch81C6のタンパク質濃度を定量し、抗体溶液の一定量を殺菌済み、ピロゲンなしのバイアルに取るが、そのためには、0.22ミクロンのミリポアフィルタを通して溶液を直接バイアルに注入する。濾過した後タンパク質濃度を定量し、濾過時にタンパク質が失われていないことを確認する。
【0158】
本発明は、本明細書で説明されている特定の実施形態により範囲を制限されないものとする。実際、本明細書で説明されているものに加えて本発明のさまざまな修正形態は、前記の説明を読み、付属の図を参照する当業者にとっては明白なことである。このような修正形態は、付属の請求項の範囲内にあることが意図されている。
【0159】
更に、すべての値は近似的であり、説明のために与えられていることは理解されるであろう。
【0160】
特許、特許出願、出版物、製品説明、及びプロトコルは、本願全体を通して引用されており、その開示は、すべての目的に関して、全体を参照することにより本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】本発明の実施形態によるデータ処理システムの略図である。
【図2】本発明の実施形態による線量測定動作を例示する流れ図である。
【符号の説明】
【0162】
5 データ処理システム
10 プロセッサ、投与用量モジュール
14 メモリ
20 シンチグラフィシステム
25 MRIシステム
48 データバス
50 磁気共鳴映像(MRI)データ
52 シンチグラフィデータ
54 アプリケーションプログラム
56 データ
58 入出力(I/O)デバイスドライバ
60 オペレーティングシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする被検体内の外科的に作られた切除空洞のところ、またはその周辺の関心領域に対する線量測定見積もりの方法であって、
(a)前記外科的に作られた切除空洞のサイズを決定することと、
(b)放射性標識抗体の線量測定用量を前記関心領域に投与することと、
(c)前記線量測定用量を投与した後さまざまな時刻において前記関心領域から検出された放射線を測定することと、
(d)前記外科的に作られた切除空洞のサイズと前記関心領域からの前記測定された検出放射線とに基づいて滞留時間を決定することと、
(e)投与放射免疫治療用量を、前記滞留時間、前記外科的に作られた切除空洞のサイズ、及び所定の放射線吸収線量に基づいて計算すること、
とを含む方法。
【請求項2】
更に、全身シンチグラフィを実行することにより前記関心領域から前記放射線を検出することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記全身シンチグラフィは、前記線量測定用量の投与と実質的に同時である第1回、前記線量測定用量の前記投与から約24時間後である第2回、及び前記線量測定用量の前記投与から約48時間後である第3回に実行される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
更に、磁気共鳴映像法を実行することにより前記外科的に作られた切除空洞のサイズを決定することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の放射線吸収線量は、実験データに基づく所定の最適な吸収線量である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所定の放射線吸収線量は、約44Gyである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記投与放射免疫治療用量は、一定量の131I標識抗テネイシンネズミ81C6モノクローナル抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記投与放射免疫治療用量は、一定量の131I標識抗テネイシンヒト/ネズミ81C6モノクローナル抗体である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記関心領域は、前記外科的に作られた切除空洞のマージンから始まり、前記外科的に作られた切除空洞の前記マージンから約2cm外に延びる、前記切除空洞の周辺にあり、前記切除空洞を取り囲んでいる、実質組織の幅2cmの領域である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記投与放射免疫治療用量は、以下の式に基づいて計算される:
【数1】

ここで式中、DSCRCは、前記所定の放射線吸収線量であり、S(B2−cm←SCRC)は、Gy hr mCi−1単位の前記外科的に作られた切除空洞のサイズに基づいて見積もられたS値であり、τSCRCは、前記外科的に作られた切除空洞滞留時間である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記投与放射免疫治療用量は、リックマンリザーバー埋め込みを使用して投与される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
更に、
(a)必要な投与活性を計算するコンピュータ実行可能命令を収めたコンピュータ可読媒体を備えるステップを含み、前記コンピュータ実行可能命令は、
(b)前記外科的に作られた切除空洞パーセント注入用量、前記切除空洞滞留時間、及び所定のセッションの前記外科的に作られた切除空洞に対する前記S値を計算するために必要な多数のパラメータを受け取るステップと、
(c)前記必要な投与活性を計算するために定義済み公式内に前記パラメータを差し込むステップと、
(d)前記計算された必要な投与放射免疫治療用量をユーザーディスプレイに出力するステップとを実行する請求項1に記載の線量測定見積もりの方法。
【請求項13】
更に、記憶デバイス内に前記パラメータ及び/または前記計算済みの必要な投与放射免疫治療用量を格納するステップを実行するコンピュータ実行可能命令を備える請求項12に記載の線量測定見積もりの方法。
【請求項14】
必要とする被検体内の外科的に作られた切除空洞のところ、またはその周辺の関心領域に対する線量測定見積もりの方法であって、(i)(a)前記外科的に作られた切除空洞のサイズ及び(b)前記関心領域内に投与される放射性標識抗体の線量測定用量を投与した後複数回に渡って検出された測定済み放射線に基づく滞留時間、及び(ii)所定の放射線吸収線量から投与放射免疫治療用量を計算することを含む方法。
【請求項15】
必要とする被検体の外科的に作られた切除空洞のところ、またはその周辺の関心領域の治療用の薬剤を調製するための放射性標識抗体の使用であって、前記放射性標識抗体の前記用量は、
(a)前記外科的に作られた切除空洞のサイズを決定することと、
(b)放射性標識抗体の線量測定用量を前記関心領域に投与することと、
(c)前記線量測定用量を投与した後さまざまな時刻において前記関心領域から検出された放射線を測定することと、
(d)前記外科的に作られた切除空洞のサイズと前記関心領域からの前記測定された検出放射線とに基づいて滞留時間を決定することと、
(e)投与放射免疫治療用量を、前記滞留時間、前記外科的に作られた切除空洞のサイズ、及び所定の放射線吸収線量に基づいて計算すること、
とにより求められる放射性標識抗体の使用。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法による、必要とする被検体の外科的に作られた切除空洞のところ、またはその周辺の関心領域の治療用の薬剤を調製するための放射性標識抗体の使用。
【請求項17】
外科的に作られた切除空洞のところ、またはその周辺に投与するため投与放射免疫治療用量を計算する方法であって、所定の滞留時間、前記外科的に作られた切除空洞の所定のサイズ、及び所定の放射線吸収線量に基づいて投与放射免疫治療用量を計算する公式を使用して、前記投与放射免疫治療用量を計算することを含む方法。
【請求項18】
前記投与放射免疫治療用量は、以下の式に基づいて計算される:
【数2】

ここで式中、DSCRCは、前記所定の吸収線量であり、S(B2−cm←SCRC)は、Gy hr mCi−1単位の前記外科的に作られた切除空洞のサイズに基づいて見積もられたS値であり、τSCRCは、前記外科的に作られた切除空洞滞留時間である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
必要とする哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める方法であって、
(a)前記被検体に有効な用量の非標識遮断抗体を投与し、前記非標識遮断抗体は正常組織の非標的細胞外間質成分については実質的にすべてに特異的に結合するがその一方で前記腫瘍の前記細胞外間質成分については実質的にわずかの割合に結合し、それにより正常組織の前記非標的細胞外間質成分への前記治療抗体の前記結合を阻害するステップと、
(b)前記被検体に治療有効量の前記治療抗体を投与し、前記治療抗体は前記腫瘍の前記細胞外間質成分について特異的であるステップと、
を含む方法。
【請求項20】
前記遮断抗体は、モノクローナル抗体である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記治療抗体は、モノクローナル抗体である請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記治療抗体は、治療薬に結合される請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記治療抗体は、放射性核種、化学療法薬、及び細胞傷害性薬からなる群から選択された治療薬に結合される請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記治療抗体は、放射性核種に結合される請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記治療抗体は、227Ac、211At、131Ba、77Br、109Cd、51Cr、67Cu、165Dy、155Eu、153Gd、198Au、166Ho、113mIn、115mIn、123I、125I、131I、189Ir、191Ir、192Ir、194Ir、52Fe、55Fe、59Fe、177Lu、109Pd、32P、226Ra、186Re、188Re、153Sm、46Sc、47Sc、72Se、75Se、105Ag、89Sr、35S、177Ta、117mSn、121Sn、166Yb、169Yb、90Y、212Bi、119Sb、197Hg、97Ru、100Pd、101mRh、及び212Pbからなる群から選択された放射性核種に結合される請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記治療抗体は、化学療法薬に結合される請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記治療抗体は、メトトレキサート、ダウノマイシン、マイトマイシン、シスプラチン、ビンクリスチン、エピルビシン、フルオロウラシル、ベラパミル、シクロホスファミド、シトシンアラビノシド、アミノプテリン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、デモコルシン、エトポシド、ミトラマイシン、クロランブシル、メルファラン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモシフェン、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、カンプトセシン、アクチノマイシンD、及びシタラビンからなる群から選択される化学療法薬に結合される請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記治療抗体は、細胞傷害性薬に結合される請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記治療抗体は、リシン、アクラシノマイシン、ジフテリア毒素、モネンシン、ベルカリンA、アブリン、ビンカアルカロイド、トリコテセン、及び緑膿菌外毒素Aからなる群から選択される細胞傷害性薬に結合される請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞外間質成分は、フィブリノゲン、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、プロテオグリカン、テネイシン、エンタクチン、またはトロンボスポンジンからなる群から選択される請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記投与ステップ(a)は、静脈注射により実行される請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記投与ステップ(b)は、注射により実行される請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記投与ステップ(b)は、前記投与ステップ(a)から少なくとも2日後に実行される請求項19に記載の方法。
【請求項34】
前記投与ステップ(b)は、前記投与ステップ(a)から少なくとも4日後に実行される請求項19に記載の方法。
【請求項35】
前記被検体は、リンパ腫を患っている請求項19に記載の方法。
【請求項36】
前記被検体は、脳腫瘍を患っている請求項19に記載の方法。
【請求項37】
更に、前記ステップ(a)で投与される前記非標識遮断抗体に対する有害反応がないか前記被検体を監視することを含み、被検体がステップ(a)で投与された前記非標識遮断抗体に対する有害反応を経験した場合に、前記被検体は、前記投与ステップ(b)で前記治療抗体を受けない請求項19に記載の方法。
【請求項38】
哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める薬剤の調製のための非標識遮断抗体の使用。
【請求項39】
請求項19から37のいずれか一項に記載の方法による、哺乳類被検体の腫瘍の細胞外間質成分に特異的に結合する治療抗体の送達を高める薬剤の調製のための非標識遮断抗体の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−520707(P2008−520707A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543288(P2007−543288)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/041884
【国際公開番号】WO2006/073586
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(507189666)デューク ユニバーシティ (25)
【Fターム(参考)】