説明

放熱シート、インターフェース、電子部品及び放熱シートの製造方法

【課題】高い放熱性を備える放熱シート及び、その製造方法を提供する。
【解決手段】
基板上に、発熱面に対してほぼ垂直な方向に配向したカーボンナノチューブ11から、シート状に構成されたカーボンナノチューブシート13を形成する。カーボンナノチューブシート13を水に浸し、基板からカーボンナノチューブシート13を剥離する。次に、樹脂12を発熱体に塗布した上に、剥離させたカーボンナノチューブシート13を貼り付け、カーボンナノチューブシート13のカーボンナノチューブ11間に樹脂12を浸透させ、硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを利用した放熱シート、その放熱シートを用いたインターフェース、電子部品とその放熱シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品から発せられる熱を放熱するため、グラファイトシート(例えば特許文献1)やセラミック分散型シートが用いられてきた。しかし、グラファイトシートは、カーボンナノチューブと比較して、熱伝導率が低く、放熱性の点で劣っていた。また、セラミック分散シートは、カーボンナノチューブと比較して放熱性の点で劣ることに加え、有機物にセラミックを分散させているため、樹脂系の材料に用いることができないという問題があった。
【0003】
そこで、放熱性に優れたカーボンナノチューブが、用いられるようになった。カーボンナノチューブの高い放熱性を良好に得るためには、熱伝達方向にカーボンナノチューブを配向させることが望ましい。カーボンナノチューブを特定の方向へ配向させるためには、数百℃の炉の中でカーボンナノチューブを基板上に合成するのが一般的であり、カーボンナノチューブは、基板が付いた状態で放熱材として利用されていた。
また、例えば特許文献2に開示されているように、カーボンナノチューブを利用し、且つ基板のない放熱材もある。
【特許文献1】特許第3419399号公報
【特許文献2】特開2003−249613号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2に開示された放熱材は、放熱材に対する樹脂の割合が高く、放熱性が低いという問題があった。
また、基板付きの場合、数百℃の炉で用いられる基板は、耐熱性の素材から構成され、基板が熱的な抵抗となり、カーボンナノチューブの高い放熱性を良好に得ることができない問題点があった。加えて、近年、電子部品の小型化が進んでおり、基板の厚みは製品の小型化の妨げとなるという問題もあった。そこで、高い放熱性を備える放熱シートが求められていた。また、基板の不要な放熱シートが求められていた。
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、高い放熱性を備える放熱シート及び、その製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は特に基板の不要な放熱シート及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る放熱シートは、
発熱体の熱を放熱する放熱シートであって、
複数のカーボンナノチューブからシート状に構成されたカーボンナノチューブシートと、
前記カーボンナノチューブの間に充填された樹脂と、
から構成される放熱シートであり、
前記カーボンナノチューブは、発熱面に対して交差する方向に配向していることを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る放熱シートは、
発熱体の熱を放熱する放熱シートであって、
複数のカーボンナノチューブからシート状に構成されたカーボンナノチューブシートと、
前記カーボンナノチューブの間に充填された樹脂と、
から構成される放熱シートであり、
前記カーボンナノチューブシートは、密度が一様に形成されていることを特徴とする。
【0008】
前記カーボンナノチューブは、前記発熱体の発熱面に対して、ほぼ垂直に配向してもよい。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点にかかる放熱シートは、
発熱体の熱を放熱する放熱シートであって、
複数のカーボンナノチューブからシート状に構成されたカーボンナノチューブシートと、
前記カーボンナノチューブの間に充填された樹脂と、
から構成される放熱シートであり、
前記カーボンナノチューブは、前記発熱体の発熱面に沿って延在し、かつ互いに交錯されていることを特徴とする。
【0010】
前記カーボンナノチューブシートは、液相中で形成されてもよい。
【0011】
前記樹脂は、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、レゾルシノール樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル系、ウレタン樹脂系、ポリイミド系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ポリサルファイド系、ブチルゴム系、シリコン系、アクリルゴム系、変成シリコン系、ウレタンゴム系のいずれかであってもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点にかかるインターフェースは、
第1の観点乃至第3の観点のいずれかに記載の放熱シートと、
前記放熱シートが接合される基体と、から構成されることを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第5の観点にかかる電子部品は、
第1の観点乃至第3の観点のいずれかに記載の放熱シートが接合されることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第6の観点にかかる放熱シートの製造方法は、放熱シートを製造する方法であって、
基板上に、複数のカーボンナノチューブが発熱面に対して交差する方向に配向するようにカーボンナノチューブシートを形成する合成工程と、
前記基板上に形成された前記カーボンナノチューブシートを、前記基板から剥離する剥離工程と、
剥離された前記カーボンナノチューブシートの前記カーボンナノチューブ間に、樹脂を浸透させる浸透工程と、
前記カーボンナノチューブ間に浸透させた樹脂を硬化させる硬化工程と、
から構成されることを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第7の観点にかかる放熱シートの製造方法は、放熱シートを製造する方法であって、
基板上に、複数のカーボンナノチューブの密度が一様に形成されるようにカーボンナノチューブシートを形成する合成工程と、
前記基板上に形成された前記カーボンナノチューブシートを、前記基板から剥離する剥離工程と、
剥離された前記カーボンナノチューブシートの前記カーボンナノチューブ間に、樹脂を浸透させる浸透工程と、
前記カーボンナノチューブ間に浸透させた樹脂を硬化させる硬化工程と、
から構成されることを特徴とする。
【0016】
前記カーボンナノチューブは前記基板に対してほぼ垂直に配向してもよい。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の第8の観点にかかる放熱シートの製造方法は、放熱シートを製造する方法であって、
カーボンナノチューブは、基板に沿って延在し、かつ互いに交錯されるように前記カーボンナノチューブシートを形成する合成工程と、
前記基板上に形成された前記カーボンナノチューブシートを、前記基板から剥離する剥離工程と、
剥離された前記カーボンナノチューブシートの前記カーボンナノチューブ間に、樹脂を浸透させる浸透工程と、
前記カーボンナノチューブ間に浸透させた樹脂を硬化させる硬化工程と、
から構成されることを特徴とする。
【0018】
前記合成工程は、液相中で前記カーボンナノチューブを合成し、形成された前記カーボンナノチューブシートを当該液相から引き上げる工程を更に備えてもよい。
【0019】
前記剥離工程は、水、エタノール、アセトン、過酸化水素水、塩酸、硫酸、硝酸のいずれかの溶液に、前記カーボンナノチューブシートが形成された前記基板を浸すことであってもよい。
【0020】
前記剥離工程は、前記カーボンナノチューブシートが形成された前記基板を前記溶液に浸透させた後、前記カーボンナノチューブシートを乾燥させる工程を更に備えてもよい。
【0021】
前記剥離工程は、弱い粘着力を持つ粘着テープを前記カーボンナノチューブシートに貼り付け、前記浸透工程は、前記粘着テープより強い粘着力を有する樹脂を前記カーボンナノチューブシートに浸透させることであってもよい。
【0022】
前記剥離工程は、前記カーボンナノチューブシートが形成された前記基板に振動を加えて、前記基板と前記カーボンナノチューブシートとの結合を弱め、剥離してもよい。
【0023】
前記カーボンナノチューブ間に浸透させる前記樹脂は、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、レゾルシノール樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル系、ウレタン樹脂系、ポリイミド系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ポリサルファイド系、ブチルゴム系、シリコン系、アクリルゴム系、変成シリコン系、ウレタンゴム系のいずれかであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基板の不要な放熱性の高い放熱シート、その放熱シートを用いたインターフェース、電子部品、及びその放熱シートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態に係る放熱シートについて図を用いて説明する。
本発明の実施の形態に係る放熱シート1を図1に示す。この放熱シート1を撮像装置2に利用した例を図2に示す。
【0026】
放熱シート1は、図1に示すように、発熱面に対してほぼ垂直な方向に配向した複数のカーボンナノチューブ11からシート状に構成されたカーボンナノチューブシート13と、それぞれのカーボンナノチューブ11の間に充填された樹脂12と、を備え、数ミクロン〜数十ミクロンの厚みに形成される。放熱シート1は、図2に示すように、発熱体であるDSP(Digital Signal Processor)21と、レンズ22と、レンズホルダ23と、CCD(Charge Coupled Device)24と、ガラエポ基板25と、を備える撮像装置2において、DSP21に接するように形成されている。
【0027】
カーボンナノチューブ11は、炭素から構成され、それぞれ中空の形状である。この形状からカーボンナノチューブ11から構成されるカーボンナノチューブシート13は、高い熱伝導率を備え、放熱性に優れる。カーボンナノチューブ11は、後述する合成装置3で、一様な密度で基板上に形成される。基板上に形成されるカーボンナノチューブ11の密度及び配向性は、後述するように、基板31上に形成される触媒薄膜32の密度、基板31表面の状態、基板31の材質等の合成時の条件によって定まる。これらの合成時の条件は、形成されたカーボンナノチューブ11が基板31から剥離された際にシート状の形状を維持し得る程度で、且つ要求される放熱性を実現し得る密度及び配向性を備えるように設定される。
【0028】
具体的には、平滑にされた基板上にスパッタ等で触媒薄膜を形成すると、図3(a)に示すように連続した触媒薄膜32が形成される。触媒薄膜32が連続していると、カーボンナノチューブ11が成長する際の核となる触媒薄膜32も連続して形成される。この場合、カーボンナノチューブ11は、図3(b)に示すように、基板31に対してほぼ垂直方向に成長する。結果として、一様な密度で、高配向のカーボンナノチューブシート13を得ることができる。
【0029】
一方、表面が粗く、凹凸がある基板31上に触媒薄膜32を形成すると、図4(a)に示すように、非連続の触媒薄膜32が形成される。この場合、カーボンナノチューブ11が成長する際の核となる触媒薄膜32も非連続となる。従って、図4(b)に示すように、カーボンナノチューブ11は基板31の表面に延在し、交錯するように成長する。この場合、一様な密度で、低配向のカーボンナノチューブシート13を得ることができる。
【0030】
樹脂12は、それぞれのカーボンナノチューブ11の間に充填される。樹脂12は、カーボンナノチューブシート13のカーボンナノチューブ11を相互に固定するだけでなく、発熱体にカーボンナノチューブシート13を固定する。従って、樹脂12は、未硬化時に、それぞれのカーボンナノチューブ11の間に浸透できる程度に低粘度であり、且つ、硬化時に発熱体からの熱に耐えうる程度、例えば100℃程度の耐熱性を備える。樹脂12は、未硬化時に発熱体に塗布され、カーボンナノチューブ11の間に浸透した後、硬化される。具体的には、例えば、図2に示す撮像装置2のDSP21上に放熱シート1を形成する場合、樹脂12はDSP21の一面に塗布された上で、カーボンナノチューブシート13と重ね合わされる。樹脂12は、カーボンナノチューブ11の間に浸透した後、冷却され、硬化される。
【0031】
樹脂12は、未硬化時における低粘度、及び硬化時の耐熱性の特性を備える様々な樹脂を用いることができる。具体的には、硬化型の樹脂では、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、レゾルシノール樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル系、ウレタン樹脂系、ポリイミド系等を、樹脂12として用いることができる。また、弾性体系の樹脂では、例えば、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ポリサルファイド系、ブチルゴム系、シリコン系、アクリルゴム系、変成シリコン系、ウレタンゴム系を、樹脂12として用いることができる。
【0032】
以上のような構成を採る放熱シート1のカーボンナノチューブ11は、例えば図2に示す例では、一様な密度で発熱体であるDSP21に対し、ほぼ垂直に配向して形成されている。また、放熱シート1は、基板を介さずに樹脂12によって接合されている。このように、発熱面にほぼ垂直に配向してカーボンナノチューブ11が形成されていること、及び基板がないため熱的な抵抗が少なく、カーボンナノチューブ11の放熱性の高さが損なわれないことから、放熱シート1は放熱性に優れる。
【0033】
また、基板を介さず樹脂12でカーボンナノチューブシート13を接合することにより、放熱シート1の厚みは、数ミクロン〜数十ミクロン程度に留まり、放熱のために必要となるスペースが少ない。従って、放熱シート1は、電子部品の小型化を妨げない。
【0034】
以上のように、カーボンナノチューブ11の間に樹脂を充填し、発熱体に直接放熱シートを接合させることから、良好な放熱性を備えた放熱シート1を提供することができる。また、基板の不要な放熱シート1を提供することができる。
【0035】
次に、放熱シート1の製造方法について、図を用いて説明する。
【0036】
まず、図5にカーボンナノチューブ11を合成する合成装置3を示す。図示するように合成装置3は、基板31と、触媒薄膜32と、冷却手段33と、溶液34と、電極35と、基板ホルダ36と、を備える。
【0037】
基板31は、例えばケイ素(Si)から形成されており、基板ホルダ36によって溶液34中に保持されている。基板31の表面上には触媒薄膜32が形成されており、この触媒薄膜32にカーボンナノチューブ11が形成されてカーボンナノチューブシート13が形成される。形成されたカーボンナノチューブシート13と基板31との結合の強さは基板31の材質によって異なり、本実施の形態では、最終的に基板31からカーボンナノチューブシート13を剥離するため、カーボンナノチューブシート13と基板31との結合が、比較的弱いケイ素を利用している。なお、カーボンナノチューブシート13と基板31との結合が容易に剥離することができる程度に弱ければ、基板31をケイ素以外から形成することも可能である。
【0038】
触媒薄膜32は、例えば鉄(Fe)等から形成される。Feは、スパッタ等により基板31上に堆積された上で、水素プラズマ処理を施され、液体微粒子となり基板31上に島状に分布する。カーボンナノチューブ11は、このFeの液体微粒子を核として成長する。従って、触媒薄膜32を連続した状態に形成すれば、核となるFeの液体微粒子も連続して分布し、高密度且つ高配向性のカーボンナノチューブ11を得ることができる。
【0039】
例えば、図3(a)に示すように、基板31を平滑に処理しておくと、連続した触媒薄膜32を形成することができる。この場合、図3(b)に示すように、カーボンナノチューブ11は、基板31に対して垂直方向に成長する。
一方、図4(a)に示すように、基板31表面に凹凸があると、触媒薄膜32は不連続に形成される。この場合、カーボンナノチューブ11は、図4(b)に示すように、発熱面上に延在し、交錯して成長する。
【0040】
このように、基板31の表面処理、基板31上に形成する触媒薄膜32等を調節することで、形成されるカーボンナノチューブ11の配向性、密度を調節することができる。加えて、カーボンナノチューブシート13の放熱性は、カーボンナノチューブ11の密度、配向性等に依存するため、カーボンナノチューブシート13の放熱性を調節することができる。本実施の形態では、形成されたカーボンナノチューブ11が基板31から剥離された際にシート状の形状を維持し得る程度で、且つ要求される放熱性を実現し得る密度及び配向性を備えるように、基板31の表面及び触媒薄膜32を形成する。
【0041】
冷却手段33は、溶液34の温度を沸点以下に維持する。
溶液34は、例えばメタノールを用いる。溶液34は、メタノールに限らず他の有機液体を用いることもできる。
基板ホルダ36は、電極35を備えており、基板31に電流を流すために用いられる。
【0042】
以上の構成を採る合成装置3で、電極35及び基板ホルダ36を介し基板31の温度が約900℃となるように、基板31に電流を流し、この電流値を維持する。基板31の表面は高温であるが、冷却手段33によって基板の周囲の溶液は約60℃程度に維持されているため、基板31表面に急激な温度勾配が生じる。この温度勾配と、Feの触媒作用によって、メタノールガス中で熱分解反応が生じ、触媒薄膜32のFe液体微粒子に溶け込むカーボン原子が生成する。この溶け込んだカーボン原子が液体微粒子の表面に析出し、成長核を形成する。この核にカーボン原子が連続的に供給され、カーボンナノチューブ11が成長し、カーボンナノチューブシート13が形成される。
【0043】
上述の合成装置3で基板31上に、その厚み方向に形成されたカーボンナノチューブ11からシート状に形成されたカーボンナノチューブシート13を、溶液34から引き上げる。次に、カーボンナノチューブシート13が形成された基板31を水に浸して、基板31とカーボンナノチューブシート13を剥離させる。なお、剥離するとは、基板31とカーボンナノチューブシート13との結合が完全に切断された状態とするだけでなく、基板31とカーボンナノチューブシート13間の結合が弱くなり、容易に剥離できる状態とすることも含む。また、カーボンナノチューブシート13を剥離するためには、水に限らず、エタノール、アセトン、過酸化水素水、塩酸、硫酸、硝酸のいずれかの溶液を利用することが可能である。
【0044】
次に、カーボンナノチューブシート13を乾燥させる。
【0045】
次に、図6(a)に示すようにDSP21の一面に樹脂12を塗布する。樹脂12を塗布したDSP21を、図6(b)に示すように、カーボンナノチューブシート13が形成された基板31に接合させ、カーボンナノチューブ11の間に樹脂12を浸透させる。カーボンナノチューブ11の間に樹脂12が浸透した後、冷却して樹脂12を硬化させ、図6(c)に示すように基板31から離す。
【0046】
以上の構成を採ることにより、DSP21に基板等を介さずに形成された放熱シート1を得ることができる。
【0047】
なお、カーボンナノチューブシート13を剥離する方法は、水又は溶液に浸すことだけでなく、粘着テープを用いる方法と、振動による方法とを採用することもできる。粘着テープを用いる場合、まず、基板31上に形成されたカーボンナノチューブシート13に、弱い粘着力を有する粘着テープを貼り付け、カーボンナノチューブシート13を、基板から剥離する。次に、粘着テープよりも、強い粘着力を有する樹脂を、カーボンナノチューブシート13を配置する場所に塗布する。次に、樹脂を、粘着テープに貼り付けられたカーボンナノチューブシート13に浸透させ、粘着テープを剥離する。
【0048】
振動による剥離方法の場合、カーボンナノチューブシート13が形成された基板31に振動をかけ、基板31とカーボンナノチューブシート13との結合を剥離可能な程度に弱め、カーボンナノチューブシート13を剥離する。
【0049】
本発明は上述した実施の形態に限られず、様々な修正及び応用が可能である。
例えば、上述した実施の形態では、発熱体であるDSP21に直接放熱シート1を形成する場合を例に挙げて説明したが、これに限られず、熱伝達性の優れた基板に放熱シート1を形成し、この基板を発熱体に貼り付ける構成を採ることも可能である。
【0050】
また、上述した例に限らず、樹脂12をカーボンナノチューブ11の周囲に浸透させ、硬化させて一旦シート状に形成した上で、接着剤等で発熱体又は基板等に接合させる構成を採用することも可能である。
【0051】
また、上述した実施の形態では、カーボンナノチューブシート13を液相中で形成する方法を例に挙げて説明したが、これに限られず、形成したカーボンナノチューブが、湿式、乾式のいずれかの方法で容易に剥離することができ、且つ、カーボンナノチューブがシート状を維持できる程度の密度に形成されるものであれば、他の合成方法を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係る放熱シートの構成例を模式的に示した図である。
【図2】図1に示す放熱シートを、撮像装置に利用した場合の構成例を示す図である。
【図3】カーボンナノチューブを形成する前の基板と、基板上に形成されたカーボンナノチューブとを模式的に示す図である。
【図4】カーボンナノチューブを形成する前の基板と、基板上に形成されたカーボンナノチューブとを模式的に示す図である。
【図5】カーボンナノチューブ合成装置の一例を示す図である。
【図6】放熱シートの製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 放熱シート
2 撮像装置
3 合成装置
11 カーボンナノチューブ
12 樹脂
13 カーボンナノチューブシート
21 DSP
22 レンズ
23 レンズホルダ
24 CCD
25 ガラエポ基板
31 基板
32 触媒薄膜
33 冷却手段
34 溶液
35 電極
36 基板ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体の熱を放熱する放熱シートであって、
複数のカーボンナノチューブからシート状に構成されたカーボンナノチューブシートと、
前記カーボンナノチューブの間に充填された樹脂と、
から構成される放熱シートであり、
前記カーボンナノチューブは、発熱面に対して交差する方向に配向していることを特徴とする放熱シート。
【請求項2】
発熱体の熱を放熱する放熱シートであって、
複数のカーボンナノチューブからシート状に構成されたカーボンナノチューブシートと、
前記カーボンナノチューブの間に充填された樹脂と、
から構成される放熱シートであり、
前記カーボンナノチューブシートは、密度が一様に形成されていることを特徴とする放熱シート。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブは、前記発熱体の発熱面に対して、ほぼ垂直に配向していることを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱シート。
【請求項4】
発熱体の熱を放熱する放熱シートであって、
複数のカーボンナノチューブからシート状に構成されたカーボンナノチューブシートと、
前記カーボンナノチューブの間に充填された樹脂と、
から構成される放熱シートであり、
前記カーボンナノチューブは、前記発熱体の発熱面に沿って延在し、かつ互いに交錯されていることを特徴とする放熱シート。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブシートは、液相中で形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項6】
前記樹脂は、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、レゾルシノール樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル系、ウレタン樹脂系、ポリイミド系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ポリサルファイド系、ブチルゴム系、シリコン系、アクリルゴム系、変成シリコン系、ウレタンゴム系のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放熱シート。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の放熱シートと、
前記放熱シートが接合される基体と、から構成されることを特徴とするインターフェース。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の放熱シートが接合されることを特徴とする電子部品。
【請求項9】
放熱シートを製造する方法であって、
基板上に、複数のカーボンナノチューブが発熱面に対して交差する方向に配向するようにカーボンナノチューブシートを形成する合成工程と、
前記基板上に形成された前記カーボンナノチューブシートを、前記基板から剥離する剥離工程と、
剥離された前記カーボンナノチューブシートの前記カーボンナノチューブ間に、樹脂を浸透させる浸透工程と、
前記カーボンナノチューブ間に浸透させた樹脂を硬化させる硬化工程と、
から構成されることを特徴とする放熱シートの製造方法。
【請求項10】
放熱シートを製造する方法であって、
基板上に、複数のカーボンナノチューブの密度が一様に形成されるようにカーボンナノチューブシートを形成する合成工程と、
前記基板上に形成された前記カーボンナノチューブシートを、前記基板から剥離する剥離工程と、
剥離された前記カーボンナノチューブシートの前記カーボンナノチューブ間に、樹脂を浸透させる浸透工程と、
前記カーボンナノチューブ間に浸透させた樹脂を硬化させる硬化工程と、
から構成されることを特徴とする放熱シートの製造方法。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブは前記基板に対してほぼ垂直に配向していることを特徴とする請求項9又は10に記載の放熱シートの製造方法。
【請求項12】
放熱シートを製造する方法であって、
カーボンナノチューブは、基板に沿って延在し、かつ互いに交錯されるように前記カーボンナノチューブシートを形成する合成工程と、
前記基板上に形成された前記カーボンナノチューブシートを、前記基板から剥離する剥離工程と、
剥離された前記カーボンナノチューブシートの前記カーボンナノチューブ間に、樹脂を浸透させる浸透工程と、
前記カーボンナノチューブ間に浸透させた樹脂を硬化させる硬化工程と、
から構成されることを特徴とする放熱シートの製造方法。
【請求項13】
前記合成工程は、液相中で前記カーボンナノチューブを合成し、形成された前記カーボンナノチューブシートを当該液相から引き上げる工程を更に備えることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の放熱シートの製造方法。
【請求項14】
前記剥離工程は、水、エタノール、アセトン、過酸化水素水、塩酸、硫酸、硝酸のいずれかの溶液に、前記カーボンナノチューブシートが形成された前記基板を浸すことであることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の放熱シートの製造方法。
【請求項15】
前記剥離工程は、前記カーボンナノチューブシートが形成された前記基板を前記溶液に浸透させた後、前記カーボンナノチューブシートを乾燥させる工程を更に備えることを特徴とする請求項14に記載の放熱シートの製造方法。
【請求項16】
前記剥離工程は、弱い粘着力を持つ粘着テープを前記カーボンナノチューブシートに貼り付け、前記浸透工程は、前記粘着テープより強い粘着力を有する樹脂を前記カーボンナノチューブシートに浸透させることであることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の放熱シートの製造方法。
【請求項17】
前記剥離工程は、前記カーボンナノチューブシートが形成された前記基板に振動を加えて、前記基板と前記カーボンナノチューブシートとの結合を弱め、剥離することを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の放熱シートの製造方法。
【請求項18】
前記カーボンナノチューブ間に浸透させる前記樹脂は、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、レゾルシノール樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル系、ウレタン樹脂系、ポリイミド系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系、スチレンブタジエンゴム系、ポリサルファイド系、ブチルゴム系、シリコン系、アクリルゴム系、変成シリコン系、ウレタンゴム系のいずれかであることを特徴とする請求項9乃至17のいずれか1項に記載の放熱シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−147801(P2006−147801A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334986(P2004−334986)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【出願人】(301064633)株式会社マイクロフェーズ (3)
【Fターム(参考)】