説明

放電装置

【課題】最新の研究では、電撃だけでなく、放電によって生じる生成物である空気イオン、オゾン、衝撃波、紫外線等も適度な強さや量で施せば、農産物を含む植物一般の成長促進にも有効であることも分かってきている。しかし、生成物を利用できる装置は未だない。
【解決手段】高電圧発生部の出力端が接続される放電側電極9と、前記放電側電極と放電ギャップGを介して対向した接地側電極13とが誘導部材3によって囲われており、放電により生じた生成物はその開放口5からのみ外に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞生物の育成や細胞膜を破壊することで細胞生物を死滅できる放電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ほだ木に雷が落ちるとシイタケが異常発生することが知られていたが近年になってこれを積極的に利用するべく、特許文献1に記載のように、発芽直前のほだ木に電撃を与える放電装置が開発されている。
ところで、最新の研究では、非特許文献1に記載のように、電撃だけでなく、放電によって生じる生成物である空気イオン、オゾン、衝撃波、紫外線、プラズマ等も適度な強さや量で施せば、農産物を含む植物一般の成長促進や殺菌にも有効であることも分かってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−98322号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】静電気学会「静電気ハンドブック」 株式会社オーム社 2006年11月15日 p.815−830
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、上記の非特許文献では、具体的な装置の構成については触れられていない。また、上記の特許文献の装置はシイタケ等に電撃を与えることを想定して構成されたものであり、放電空間は限定され且つ密閉されており、紫外線を除けば、空気イオン等の放電生成物はそこから外に出ることはできない。そのため、かかる装置では、屋外で路地栽培されたり自生しているような種子を含む植物に対しては放電生成物を暴露させることはできない。
また、放電空間を全て開放してしまえば、放電生成物は寿命が大変短いため、植物に対して効率良く放電効果を供給することはできない。
さらに、雑草等の駆逐対象物については、細胞膜を破壊して枯らすのが手っ取り早いが、直接電撃を加えようとしても、それが屋外で自生しているような種子を含む植物の場合には、上記の特許文献の装置では難しい。
【0006】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、植物に対して放電生成物を効率良く活用できる、放電装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、高電圧発生部の出力端が接続される放電側電極と、前記放電側電極と間隔をあけて対向する接地側電極の少なくともいずれか一方の電極と、それらの電極の間に形成される放電空間で生成された放電生成物を被暴露物に向けて誘導する、絶縁性乃至半絶縁性素材で構成された誘導部材とを備えた放電部を含むことを特徴とする放電装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した放電装置において、誘導部材は側面側が切欠かれて開口した筒状体で構成され、放電側電極と接地側電極とが前記筒状体の閉塞した軸方向両端側から内部にそれぞれ入り込んで対向していることを特徴とする放電装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載した放電装置において、筒状体内には放電系路に補助電極が1個以上設けられていることを特徴とする放電装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載した放電装置において、補助電極は放電側電極と接地側電極のそれぞれに頂部が向く針状になっていることを特徴とする放電装置である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3に記載した放電装置において、補助電極は筒状体の内面に接着された粉末によって構成されていることを特徴とする放電装置である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した放電装置において、複数の放電部が連結部を介して一体化されていることを特徴とする放電装置である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載した放電装置において、連結部どうしが中継ユニットを介して連結されていることを特徴とする放電装置である。
【0014】
請求項8の発明は、請求項6または7に記載した放電装置において、中継ユニットがユニット化されていることを特徴とする放電装置である。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1に記載した放電装置において、誘導部材は軸方向一端側が開口した筒状体で構成されており、放電側電極が閉塞端側に配されていることを特徴とする放電装置である。
【0016】
請求項10の発明は、請求項9に記載した放電装置において、放電側電極の先端が針状になっていることを特徴とする放電装置である。
【0017】
請求項11の発明は、請求項9または10に記載した放電装置において、放電系路には抵抗器が挿入されていることを特徴とする放電装置である。
【0018】
請求項12の発明は、請求項9から11のいずれかに記載した放電装置において、接地側電極が前記開口側に配されていることを特徴とする放電装置である。
【0019】
請求項13の発明は、請求項12に記載した放電装置において、接地側電極は開口縁に沿って配されたリング状体によって構成されていることを特徴とする放電装置である。
【0020】
請求項14の発明は、請求項9から13のいずれかに記載した放電装置において、放電空間を空気流で満たす空気流形成手段を備え、放電生成物を前記空気流に乗せて強制的に外に排出することを特徴とする放電装置である。
【0021】
請求項15の発明は、請求項1に記載した放電装置において、放電側電極または接地側電極のいずれか一方の電極が1個以上回転体によって吊下げ支持され、前記回転側の電極はカバー状の誘導部材によって先端部を除いてカバーされており、前記回転体の回転により前記電極は対向する接地側または放電側の電極に対して相対移動することを特徴とする放電装置である。
【0022】
請求項16の発明は、請求項15に記載した放電装置において、放電空間を空気流で満たす空気流形成手段を備えることを特徴とする放電装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の放電装置によれば、寿命の短い放電生成物を効率良く利用でき、農産物を含む植物の育成に有効活用できる。また、開口を利用すれば、屋外にある植物にも手軽に直接電撃を加えることができる。
なお、本明細書では、接地側電極とは放電された電荷を受け取る側の電極を意味しており、装置の使用時に大地等の基準に接続されている必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る放電装置の放電部の概念図である。
【図2】図1の放電装置の斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る放電装置の放電部の概念図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る放電装置の放電部の概念図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る放電装置の放電部の概念図である。
【図6】図5の放電部の改変例である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る放電装置の放電部の概念図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係る放電装置の放電部の上方から見た概念図である。
【図9】図8の側方から見た概念図である。
【図10】本発明の第7の実施の形態に係る放電装置の概念図である。
【図11】本発明の第8の実施の形態に係る放電装置の放電部の概念図である。
【図12】本発明の第9の実施の形態に係る放電装置の放電部の概念図である。
【図13】本発明の第10の実施の形態に係る放電装置の放電部の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る放電部1を示す。
この放電部1では、筒状の誘導部材3の側周面の約1/4が切欠かれて開放口5となっている。両端側は閉塞している。誘導部材3は絶縁性乃至半絶縁性素材で形成されている。
この誘導部材3内には軸方向一端壁を貫通して放電側導線7が入り込んでおり、その先端には放電側電極9が導通接続されている。この放電側導線7の基端には高電圧発生部の出力端が接続されている。放電側導線7は導線が絶縁チューブに覆われてケーブル状になっている。
他端壁も貫通した接地側導線11が入り込んでおり、その先端は接地側電極13が導通接続されている。この接地側導線11も絶縁チューブに覆われてケーブル状になっている。
【0026】
上記した放電側電極9と接地側電極13は間隔をあけて対向した状態で配されている。
導線の引込み口にはケーブルグランド15が設けられており、放電側導線7、接地側導線11ともケーブルグランド15で締結固定されることで、誘導部材3内への差し込み長さは調整可能となっている。放電側電極9と接地側電極13との間が放電系路でその放電ギャップGは、上記した構成により、調整可能となっているので放電量を調整できる。
【0027】
また、放電側電極9と接地側電極13は針状になっており、その頂部が対向しているので、球状のものより低い電圧で放電を起こす。従って、放電距離を長く取れるようになっている。農産物の成長促進に効果のある放電は10〜70kVであり、これを超すと却って逆効果となると言われているから、無闇に放電圧を高くすることはできないが、放電距離をできるだけ長くすることで、適度な放電圧で放電による寿命の短い生成物を作物により確実に暴露させることができる。
【0028】
上記した構成の放電部1は、誘導部材3が放電系路の周囲を外部から遮られて、開放口5からのみ生成物が外に誘導排出されるので、寿命の短い生成物に向けて誘導されて効率的に農産物に暴露させることができる。
また、放電空間が開放口5を除いては外部から遮られているので、図2に示す手持ち式の放電装置17に安全に組み込むことができる。この放電装置17の長筒状の筺体は3つの部材からなっており、左方から手持ち部19、連結部21、誘導部材3が一体に連設されて棒状になっている。この誘導部材3が上記した図1の誘導部材3に相当する。
手持ち部19は導電材、例えば金属材で構成されており、アース線20が接続されている。連結部21は絶縁体、例えばPMMA、PC、PVC、PE、PP、POM、PET、PFA、PTFEなどで構成される。誘導部材3は透明乃至半透明で、上記した絶縁体や、10〜1010Ω程度の抵抗値を有する半導電体、例えば、PVC、PET、PMMA、PCなどで構成される。
【0029】
手持ち部19側から放電側導線7が引き込まれており、この放電側導線7の先端は誘導部材3内まで延びている。誘導部材3の放電側導線7用のケーブルグランド15に代えて手持ち部19の引込み口にケーブルグランド15が設けられており、放電側導線7が所定の長さまで引き込まれた状態で締結固定される。放電側導線7は引き込まれた部分は絶縁筒に通されている。
【0030】
放電側電極9から連結部21までの距離(A)は十分に長く設定でき(なお、図では全体の視認の便宜のため短く描画されている。)、誘導部材3は絶縁体でなく半導電体で構成した場合でも抵抗が10〜1010Ω程度はあるので、放電側電極9と接地側電極13との間の放電を阻害することはなく、しかも放電側電極9からの絶縁・沿面距離が十分に確保されている。従って、屋外で作業しても、周囲の環境にかかわらず、継続して安定的に、且つ安全に放電を起こすことができる。
【0031】
また、連結部21は十分な長さ(B)を有し、フッ素系樹脂を塗布する撥水処理が施されているので、湿気等により水分が付着してもその水分が玉状となる。従って、手持ち部19と放電側電極9との間の絶縁性は確保される。
誘導部材3が半導電体から成る場合には、接地側電極13側の残留電荷は誘導部材3と放電側電極9を介して、放電側導線7の基端側に接続された高電圧発生部25、さらには最終的にアース線まで導かれるので、作業者が移動する際に誤って接地側電極13のアース線に触れても感電することはない。
このように、作業者の安全性も十分に確保されている。
【0032】
高電圧発生部25はコッククロフトウォルトン回路が組み込まれており、小型で取扱いの容易なものとなっている。
高電圧発生部25にはコントローラ27が接続されている。コントローラ27には放電圧の大きさ、放電間隔等を規定したプログラムやデータが格納されており、プログラム運転されるので、作業者は手持ち部19を持って誘導部材3を農産物に暴露しながら移動するだけで済む。
【0033】
図3(1)は、本発明の第2の実施の形態に係る放電部29を示す。
この放電部29では誘導部材31が第1の実施の形態に係る放電部1の誘導部材3と同じ素材で構成されており、大凡の形状に似ているが、天面に相当する部位の面積が広くなっており、そこには、複数の補助電極33が絶縁性の支持部材35を介して吊下げ支持されている。各補助電極33は針状をしており、その2つの頂部がそれぞれ放電側電極9側と接地側電極13側を向いている。複数の補助電極33は、放電側電極9と接地側電極13の対向空間である放電系路に位置している。
【0034】
図3(2)は、上記した図3(1)の改変例を示す。この放電部29では、補助電極34がより鋭角で細長く伸びた針状になっている。
このように、長くすることで作物の植付け間隔に合わせて放電間隔を調整することができる。
【0035】
空気中の放電距離は針状電極でも、10kV辺り15〜30mmであり、放電による生成物が生じる範囲は決して広くはない。作物は広い土地で栽培されるので、この範囲が狭いと作業に多くの時間がかかる。
従って、この放電部29のように、補助電極33、34を配して放電ギャップGを増やすことで、効率良く広い範囲に栽培された作物に対して効率良く生成物の暴露作業を行うことができる。
【0036】
補助電極33、34の素材は空気絶縁を目安としてそれよりも低いものであればよく、金属だけでなく半導電体でもよい。一方、支持部材35の素材はそれよりも高いものであればよい。
また、補助電極33、34の配置は一直線状でも、一曲線状でも、それらを組み合わせた平面状でもよい。但し、込み入った配置にする場合には、これら補助電極33、34を支持する支持部材35が放電系路を遮断しないよう設計する必要がある。
【0037】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る放電部37を示す。
この放電部37では、補助電極38が金属粉になっており、この粉状の補助電極38が絶縁性接着剤39を介して誘導部材31の天板に接着されている。
このようにすることで、放電ギャップGの微小なものを作りだせる。
【0038】
図5は本発明の第4の実施の形態に係る放電部41を示す。
この放電部41も、図2に示す手持ち式の放電装置17に組み込むことができる。
この放電部41の誘導部材43は、第2の実施の形態に係る誘導部材31と同じ筒状であるが、先端側が開口して開放口45となっている。そして、閉塞端である基端側には放電側電極47が入り込んでおり、接地側電極49が誘導部材43の側壁を貫通してその内面に接触した状態で配されている。この誘導部材43には、空気供給手段のチューブ51が放電側電極47より基端寄りで連通しており、このチューブ51を通って空気が誘導部材43内に供給されると、誘導部材43内を開放口45側に向かう空気流が形成される。
【0039】
この放電部41では、放電側電極47は先端が針状になっており、しかも放電側電極47と接地側電極49との間の放電空間は閉鎖されるのでより安全に放電ができる。その一方で、放電による生成物は空気流に乗って先端側から外に確実に排出される。また、放電空間が常時新鮮な空気で満たされることになり、安定した放電を起こすことができる。
【0040】
図6の放電部48は図5に示す放電部41の改変例である。この放電部48では複数の補助電極50が誘導部材43の内側面に取り付けられている。このように補助電極50を併用すれば、生成物の流出を妨げることなく、放電距離を延ばせる。
【0041】
図7は本発明の第5の実施の形態に係る放電部53を示す。
この放電部53は、第4の実施の形態に係る放電部41と、接地側電極の形状及び設置場所が異なる。接地側電極55は、リング状を為し、誘導部材43の先端開口縁に沿って配されている。
放電生成物の寿命は短く、特に、空気イオンやオゾンは接地側電極に接触すると直ちに還元してしまうため、生成物の誘導経路上には接地側電極が極力干渉しないことが望ましい。しかし、その一方で、接地側電極を広げることで効率良く生成物を生成できる。
この放電部53によれば、上記要求に答えて、接地側電極55が上記したように構成されているため、生成物の誘導経路には殆ど干渉せず、しかも、必要な大きさで配されている。
【0042】
図8、図9は、本発明の第6の実施の形態に係る放電部57を示す。
この放電部57では、絶縁棒が格子状に連結された支持体59が配されており、この支持体59は回転軸61に支持されて回転可能になっている。この支持体59には絶縁性素材で構成された筒状の誘導部材63が這わされており、その誘導部材63の先端側は直角に屈曲した下方を向いている。誘導部材63には放電側導線7が通されており、その先端の放電側電極9が裸出して下方を向いている。また、側方には、ブロア65が配されている。
この実施の形態では、放電部57の下方には栽培容器を配置しており、この栽培容器側が接地側電極となっている。上記したように、本明細書では、使用時に基準と接続して接地効果を示すものに限定されているわけではないので、栽培容器はプラスチック等の絶縁性素材で構成されていてもよい。
【0043】
上記の放電部57では、誘導部材63により放電側は放電側電極9のみが露出しており、その下方に接地側電極としての機能を担った栽培容器があるので、両電極間に形成される放電空間は全面的に開放されているが、その放電生成物は容器内の植物やその種子は放電空間内にあるので、放電生成物は速やかに植物等に暴露される。
【0044】
上記した支持体59を回転させることで、放電部57の放電側電極9と栽培容器との間で生成された生成物を、複数の栽培容器に対して万遍無く均一に与えることができる。また、支持体59を回転させると共に、空気流形成手段としてのブロア65を適宜作動させることで、放電側電極9の周囲を常に新鮮な空気で囲ませることができ、安定した放電を起こさせることができる。
植物へは低電位(低エネルギー)を印加すると育成促進効果が得られ、高電位(高エネルギー)を印加すると殺菌効果が得られることが知られているので、この両方を使い分け、種子段階では殺菌効果を、発芽段階では育成促進効果を享受することができる。
【0045】
図10は、本発明の第7の実施の形態に係る放電装置の放電部71を示す。
この放電部71は、図5に示す第4の実施の形態に係る放電部41の改変例である。この放電部71には接地側電極は設けられておらず、電撃対象物である植物との間で一次放電を起こさせるようになっている。
この放電側電極47の先端は細く且つ先鋭化され、さらにこの放電側電極47に至る放電系路には、抵抗部73が挿入されているので、より一層安定した放電が起こせる。
また、高電圧側が絶縁性の誘導部材43で覆われているので安全である。この誘導部材43は抵抗部73の分だけ、図5のものより若干延びている。
【0046】
この放電部71では、図示するように、植物に対して直接電撃を与えることができ、細胞膜を破壊させて除草できる。
また、収穫後の茎、葉等の不用部位を枯らして容積を小さくしたりすることも考えられる。さらに、食物や家畜飼料となるものによっては、細胞膜を破壊することによって摂取後の消化吸収が良くなるものがあるので、そのための細胞膜破壊処理に利用させることもできる。これらの場合にも、地面に寝かせてやれば、設置用電極を兼ねさせることができ、不都合は無い。
【0047】
図11は、本発明の第8の実施の形態に係る放電装置の放電部75を示す。
この放電部75では、第1の実施の形態に係る放電部1を複数組み合わせており、放電部1どうしが連結部77を介して二つ連結されている。連結部77は高電圧ケーブルのように導線が絶縁性の高いカバーで覆われたもので構成されている。連結部77の導線は、放電側導線7と接地側導線11の機能を共に担っている。
このように、放電部1を複数繋ぐことで、離れた二つの照射箇所に、単一の高電圧源から供給された高電圧を利用して同時に処理を施すことができる。しかも、連結部77は外部に対しては絶縁されているので、途中系路でのリークは防止される。このように構成すれば、畝に沿って植物に対して処理を施すような場合には、畝二条分同時に処理でき、効率的である。
【0048】
図12は、第9の実施の形態に関するものであり、図11の放電部75の改変例である。
この放電部79では、接地側電極が設けられていない。大地から出ている植物は水分を含んでいるので導体であり、直接的に放電を起こすことができる。この直接放電により、植物の細胞膜を破壊して、枯らすことができる。
高電圧の出力としては、特開2012−186885に示すように、正極型と負極型があり、発明者の確認した範囲では、植物の育成用には負極出力型が適し、枯らす場合には正極出力型が適していることが分かっているので、この放電部79を構成する場合は、高電圧発生装置を正極出力型に設計することが推奨される。
【0049】
図13は、第10の実施の形態に関するものであり、図11の放電部75の改変例である。
この放電部81では、複数の連結部77が中継部83を介して互い連結されて二次元状に配されている。
中継部83をそれぞれユニット化することで、農地や植物構工場等、使用場所に応じてその適切な配列に組み合わせて、効率良く照射作業を進めることができる。また、組み合わせも簡単で短時間で済む利点もある。さらに、これらをユニット化することで、大量生産でき、コストダウンを図れる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、放電部に接続する高電圧発生部は放電に必要な高電圧を発生できるものであればよく、既に公知や市販されているものを利用することで対応できる。すなわち、上記の実施の形態ではコッククロフトウォルトン回路が利用されているが、これに限らず、静電発電機、ウィムスハースト発電機、ヴァンデグラーフ発電機、圧電トランス高電圧発生装置などを利用してもよい。
また、第6の実施の形態では、栽培容器側が接地側電極になっているが、これを放電側電極に構成してもよい。また、回転させる側の電極は1個でもよい。
また、図5の接地側電極49を接地と非接地とに使い分けられるようにすれば、図5と図10の両方の使用態様が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の放電装置は、植物を含む細胞生物に放電効果を効率良く与えることができるので、農作業において有用な装置となると期待される。また、農作業以外でも、食品表面殺菌、容器殺菌にも適用が期待される。
【符号の説明】
【0052】
1…放電部(第1の実施の形態) 3…誘導部材
5…開放口 7…放電側導線
9…放電側電極 11…接地側導線
13…接地側電極 15…ケーブルグランド
17…放電装置 19…手持ち部
20…アース線 21…連結部
25…高電圧発生部 27…コントローラ
29…放電部(第2の実施の形態) 31…誘導部材
33、34…補助電極 35…支持部材
37…放電部(第3の実施の形態) 38…補助電極
39…絶縁性接着剤
41…放電部(第4の実施の形態) 43…誘導部材
45…開放口 47…放電側電極
48…放電部(41の改変例) 50…補助電極
49…接地側電極 51…チューブ
53…放電部(第5の実施の形態) 55…接地側電極
57…放電部(第6の実施の形態) 59…支持体
61…回転軸 63…誘導部材
65…ブロア
71…放電部(第7の実施の形態) 73…抵抗部
75…放電部(第8の実施の形態) 77…連結部
79…放電部(第9の実施の形態)
81…放電部(第10の実施の形態) 83…中継部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧発生部の出力端が接続される放電側電極と、前記放電側電極と間隔をあけて対向する接地側電極の少なくともいずれか一方の電極と、それらの電極の間に形成される放電空間で生成された放電生成物を被暴露物に向けて誘導する、絶縁性乃至半絶縁性素材で構成された誘導部材とを備えた放電部を含むことを特徴とする放電装置。
【請求項2】
請求項1に記載した放電装置において、誘導部材は側面側が切欠かれて開口した筒状体で構成され、放電側電極と接地側電極とが前記筒状体の閉塞した軸方向両端側から内部にそれぞれ入り込んで対向していることを特徴とする放電装置。
【請求項3】
請求項2に記載した放電装置において、筒状体内には放電系路に補助電極が1個以上設けられていることを特徴とする放電装置である。
【請求項4】
請求項3に記載した放電装置において、補助電極は放電側電極と接地側電極のそれぞれに頂部が向く針状になっていることを特徴とする放電装置。
【請求項5】
請求項3に記載した放電装置において、補助電極は筒状体の内面に接着された粉末によって構成されていることを特徴とする放電装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した放電装置において、複数の放電部が連結部を介して一体化されていることを特徴とする放電装置。
【請求項7】
請求項6に記載した放電装置において、連結部どうしが中継ユニットを介して連結されていることを特徴とする放電装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載した放電装置において、中継ユニットがユニット化されていることを特徴とする放電装置。
【請求項9】
請求項1に記載した放電装置において、誘導部材は軸方向一端側が開口した筒状体で構成されており、放電側電極が閉塞端側に配されていることを特徴とする放電装置。
【請求項10】
請求項9に記載した放電装置において、放電側電極の先端が針状になっていることを特徴とする放電装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載した放電装置において、放電系路には抵抗器が挿入されていることを特徴とする放電装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかに記載した放電装置において、接地側電極が前記開口側に配されていることを特徴とする放電装置。
【請求項13】
請求項12に記載した放電装置において、接地側電極は開口縁に沿って配されたリング状体によって構成されていることを特徴とする放電装置。
【請求項14】
請求項9から13のいずれかに記載した放電装置において、放電空間を空気流で満たす空気流形成手段を備え、放電生成物を前記空気流に乗せて強制的に外に排出することを特徴とする放電装置。
【請求項15】
請求項1に記載した放電装置において、放電側電極または接地側電極のいずれか一方の電極が1個以上回転体によって吊下げ支持され、前記回転側の電極はカバー状の誘導部材によって先端部を除いてカバーされており、前記回転体の回転により前記電極は対向する接地側または放電側の電極に対して相対移動することを特徴とする放電装置。
【請求項16】
請求項15に記載した放電装置において、放電空間を空気流で満たす空気流形成手段を備えることを特徴とする放電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−90627(P2013−90627A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221797(P2012−221797)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【出願人】(309007818)友信工機株式会社 (19)
【Fターム(参考)】