説明

散布装置

【課題】被散布物のブリッジ現象の発生を適切に防止できる散布装置を提供する。
【解決手段】散布装置11は、被散布物を収容する収容体31を備える。収容体31の下部内には、上下方向の回動中心軸線Xを中心として往復回動しながら被散布物を攪拌する複数の攪拌体41を配設する。散布装置11は、収容体31内での被散布物のブリッジ現象の発生を防止する複数のブリッジ防止体45を備える。ブリッジ防止体45の上端側を収容体31の上端部に取り付け、ブリッジ防止体45の下端側を攪拌体41の先端部に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被散布物のブリッジ現象の発生を適切に防止できる散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された散布装置が知られている。
【0003】
この従来の散布装置は、図6に示すように、被散布物Aが収容される収容体1と、この収容体1内に配設され上下方向の回動中心軸線Xを中心として往復回動しながら被散布物Aを攪拌する攪拌体2と、この攪拌体2とともに往復回動しながら収容体1の排出口3から排出された被散布物Aを散布口から散布する散布体(図示せず)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−270039号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の散布装置では、例えば被散布物Aが比較的固まり易い粉剤や米ぬかである場合等、被散布物Aの種類によっては、図6に示されるように、収容体1内で被散布物Aのブリッジ現象が発生するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被散布物のブリッジ現象の発生を適切に防止できる散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の散布装置は、被散布物が収容される収容体と、この収容体内に配設され、上下方向の回動中心軸線を中心として往復回動しながら被散布物を攪拌する攪拌体と、一端側が前記収容体に取り付けられ、他端側が前記攪拌体に取り付けられ、前記収容体内での被散布物のブリッジ現象の発生を防止するブリッジ防止体とを備えるものである。
【0008】
請求項2記載の散布装置は、被散布物が収容される収容体と、この収容体内に配設され、上下方向の回動中心軸線を中心とする周方向に間隔をおいて位置し、前記回動中心軸線を中心として往復回動しながら被散布物を攪拌する複数の攪拌体と、一端側が前記収容体に取り付けられ、他端側が前記攪拌体に取り付けられ、前記収容体内での被散布物のブリッジ現象の発生を防止する複数のブリッジ防止体とを備えるものである。
【0009】
請求項3記載の散布装置は、請求項1または2記載の散布装置において、ブリッジ防止体は、可撓性を有する長手状部材にて構成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、一端側が収容体に取り付けられ他端側が攪拌体に取り付けられ収容体内での被散布物のブリッジ現象の発生を防止するブリッジ防止体を備えるため、被散布物のブリッジ現象の発生を適切に防止できる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、一端側が収容体に取り付けられ他端側が攪拌体に取り付けられ収容体内での被散布物のブリッジ現象の発生を防止する複数のブリッジ防止体を備えるため、被散布物のブリッジ現象の発生を適切に防止できる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、ブリッジ防止体は可撓性を有する長手状部材にて構成されているため、被散布物のブリッジ現象の発生を適切かつ効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る散布装置の概略側面図である。
【図2】同上散布装置の部分概略平面図である。
【図3】同上散布装置の部分概略断面図である。
【図4】同上散布装置のブリッジ防止体の動きのイメージを示す側面図である。
【図5】同上ブリッジ防止体の動きのイメージを示す平面図である。
【図6】従来の散布装置の部分概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1において、11は散布装置で、この散布装置11は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結されトラクタの走行により圃場を前方(進行方向)に向って移動しながら粒状物や粉状物等の被散布物Aを圃場に散布するスパウト型の散布機である。被散布物Aは、肥料、種子或いは薬剤等で、例えば粉剤や米ぬか等である。
【0016】
散布装置11は、図1に示されるように、トラクタの後部の3点リンクヒッチ部(作業機昇降支持装置)に連結される機体12を備えている。
【0017】
機体12はトラクタ連結部である3点連結部13を有し、この3点連結部13はマスト部14およびロワアーム部15等にて構成されている。機体12は軸保持部16を有し、この軸保持部16にて前後方向の入力軸17が回転可能に保持されている。入力軸17は、トラクタのPTO軸に動力伝達手段(図示)を介して接続される。
【0018】
また、機体12は軸保持部18を有し、この軸保持部18にて上下方向の駆動軸である回動軸21が回動可能に保持されている。回動軸21は、ヨーク22、フライホール23、第1歯車24および第2歯車25等にて構成された動力伝達手段26を介して、入力軸17に接続されている。
【0019】
そして、入力軸17の回転時には、入力軸17からの動力が動力伝達手段26にて回動軸21へ伝達され、その結果、回動軸21は、この回動軸21の軸芯を通る上下方向の回動中心軸線Xを中心として、予め設定された往復回動角度αをもって往復回動する。往復回動角度αは、例えば30度〜60度である(図2参照)。
【0020】
なお、往復回動角度αを所定範囲内で調整可能な構成としてもよい。また、ここでいう上下方向の回動中心軸線Xには、厳密な意味で上下方向である必要はなく、略上下方向も含まれる。
【0021】
また、機体12には、被散布物Aが収容されるホッパ等の収容体31が固設されている。収容体31は、例えば下方に向って徐々に縮径する略逆截頭円錐状のもので、上面に形成され被散布物Aが投入される略円形状の投入口32と、下面に形成され被散布物Aを排出する略円形状の排出口33とを有している。
【0022】
そして、回動軸21の上端側が排出口33から収容体31内に挿入され、この回動軸21の軸芯(回動中心軸線X)が収容体31の軸方向中心軸線と一致している。
【0023】
回動軸21の上端部外周面には、複数、例えば回動軸21の周方向に略120度間隔で並ぶ3つの長手状の攪拌体41が回動軸21の径方向外方に向って突設されている。つまり、図2にも示されるように、散布装置11は、収容体31の下部内に排出口33と近接対向するように配設され回動中心軸線Xを中心とする周方向に略120度間隔をおいて位置し収容体31に対して回動軸21と一体となって回動中心軸線Xを中心として往復回動角度αで往復回動しながら被散布物Aを攪拌する3本の攪拌体41を備えている。
【0024】
攪拌体41は、例えば細長い板状のもので、基端部が回動軸21の上端部外周面に取り付けられ、自由端部側の先端側が上方に向って傾斜状に折り曲げられた折曲部42となっている。
【0025】
また、散布装置11は、図3にも示されるように、一端側である上端側が収容体31の上部に細長板状の取付金具等の取付体44を介して取り付けられ他端側である下端側が攪拌体41の先端部に直接取り付けられ収容体31内での被散布物Aのブリッジ現象の発生を防止する長手状の複数、例えば攪拌体41の数と同数の3つのブリッジ防止体45を備えている。
【0026】
取付体44は、一端部に収容体取付部46を有し、他端部にブリッジ防止体取付部47を有している。そして、収容体取付部46は、ボルト48およびナット49にて収容体31の上端部に取り付けられている。ブリッジ防止体取付部47は、収容体31の上端部内面から所定距離離れて位置し、このブリッジ防止体取付部47にブリッジ防止体45の上端側が取り付けられている。
【0027】
ブリッジ防止体45は、例えば可撓性を有する長手状部材51にて構成されている。長手状部材51は、例えばワイヤ、チェーン、紐状材、線状材、或いは帯状材等、可撓性を有すれば、いかなる部材からなるものであってもよい。
【0028】
そして、図5に示されるように、長手状部材51の一端部である上端部が取付体44のブリッジ防止体取付部47の孔部47aに取り付けられ、長手状部材51の他端部である下端部が攪拌体41の先端部の折曲部42の孔部42aに取り付けられている。
【0029】
長手状部材51の長さ寸法は、ブリッジ防止体取付部47の孔部47aと折曲部42の孔部42aとの間の直線距離よりも長く、このため、長手状部材51は、回動軸21の停止時(散布作業停止時)には、図3に示すように、自重に基づいて略湾曲状に撓んだ状態となる。
【0030】
そして、回動軸21の往復回動時つまり攪拌体41の往復回動時(散布作業時)には、図4および図5に示すように、長手状部材51は、下端部が攪拌体41とともに往復回動することに基づき上端部を固定部として全体が攪拌体41に連動して複雑に揺動することにより、被散布物Aを攪拌する。つまり、長手状部材51は、収容体31内で複雑に揺動しながら被散布物Aを攪拌し、例えば収容体31の内面に付着した被散布物Aの塊をくずして、被散布物Aのブリッジ現象の発生を防止する。
【0031】
さらに、散布装置11は、図1および図2に示されるように、機体12にこの機体12から後方に突出するように設けられ回動軸21と一体となって回動中心軸線Xを中心として往復回動角度αで左右方向に往復回動しながら収容体31の排出口33から排出された被散布物Aを後端部の散布口54から散布する略筒状のスパウト等の散布体55を備えている。
【0032】
散布体55の前端側は収容体31の下端部に接続され、この散布体55の内部空間が排出口33を介して収容体31の内部空間に連通している。そして、収容体31の排出口33から落下して排出された被散布物Aは、散布体55の内部空間に供給され、この散布体55内を通って後端部の散布口54から後方に向って散布される。
【0033】
次に、散布装置11の作用等について説明する。
【0034】
散布装置11をトラクタの走行により圃場上を前方へ移動させると、回動軸21と一体となって左右方向に往復回動する散布体55によって被散布物Aが散布される。
【0035】
このとき、収容体31内では、3本の攪拌体41が回動軸21と一体となって往復回動するとともに、3本のブリッジ防止体45である可撓性の長手状部材51が攪拌体41に連動して複雑に揺動する(図4および図5参照)。
【0036】
そして、これら攪拌体41および長手状部材51にて収容体31内の被散布物Aの全体が攪拌されることとなり、被散布物Aは、ブリッジ現象を起すことなく、自重で排出口33側に向って円滑に流動し、その排出口33から落下して散布体55内に供給され、散布口54から散布される。
【0037】
このように、散布装置11によれば、上端側が収容体31の上端部に取り付けられかつ下端側が攪拌体41の先端部に取り付けられ収容体31内での被散布物Aのブリッジ現象の発生を防止する複数のブリッジ防止体45である可撓性の長手状部材51を備えるため、被散布物Aの種類に拘らず、収容体31内での被散布物Aのブリッジ現象の発生を適切かつ効果的に防止でき、よって、散布作業を効率的に行うことができる。すなわち例えば比較的固まり易い粉剤や米ぬかを散布する場合であっても、ブリッジ現象が発生せず、効率良く散布作業ができる。
【0038】
また、ブリッジ防止体45である長手状部材51は既存の収容体31および攪拌体41に対して容易に後付けできるため、この長手状部材51を後付けするだけで、散布可能な被散布物Aの種類が拡大し、汎用性の向上を図ることができる。
【0039】
なお、散布装置11は、攪拌体41およびブリッジ防止体45をそれぞれ3つ備えた構成には限定されず、攪拌体41の数およびブリッジ防止体45の数はそれぞれ任意であり、例えばそれぞれ1つ、2つ、4つ或いは5つ以上備えた構成等でもよい。
【0040】
また、攪拌体41の数とブリッジ防止体45の数とが異なる構成でもよく、例えば5つの攪拌体41と、これら5つの攪拌体41の中から選択された3つの攪拌体41に下端部を取り付けた3つのブリッジ防止体45とを備えた構成等でもよい。
【0041】
さらに、例えば取付体44を用いることなく、ブリッジ防止体45の上端側を収容体31の上部に直接取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
11 散布装置
31 収容体
41 攪拌体
45 ブリッジ防止体
51 長手状部材
A 被散布物
X 回動中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被散布物が収容される収容体と、
この収容体内に配設され、上下方向の回動中心軸線を中心として往復回動しながら被散布物を攪拌する攪拌体と、
一端側が前記収容体に取り付けられ、他端側が前記攪拌体に取り付けられ、前記収容体内での被散布物のブリッジ現象の発生を防止するブリッジ防止体と
を備えることを特徴とする散布装置。
【請求項2】
被散布物が収容される収容体と、
この収容体内に配設され、上下方向の回動中心軸線を中心とする周方向に間隔をおいて位置し、前記回動中心軸線を中心として往復回動しながら被散布物を攪拌する複数の攪拌体と、
一端側が前記収容体に取り付けられ、他端側が前記攪拌体に取り付けられ、前記収容体内での被散布物のブリッジ現象の発生を防止する複数のブリッジ防止体と
を備えることを特徴とする散布装置。
【請求項3】
ブリッジ防止体は、可撓性を有する長手状部材にて構成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−55799(P2011−55799A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211630(P2009−211630)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】