説明

断熱材形成用組成物の製造方法及び断熱材形成用組成物、この組成物から得られた断熱材

【課題】発泡ポリウレタンの粒状物を含む断熱性能に優れた断熱材を形成するための組成物を提供する。
【解決手段】本発明の断熱材形成用組成物は、(a)発泡ポリウレタンの粒状物を、有機バインダーを含む水分散液に添加し、攪拌して混合することにより、上記粒状物に上記水分散液を浸透させると共に、上記粒状物に上記有機バインダーを付着させる工程、(b)上記(a)工程で得られた混合物を昇温した後、生石灰を添加することにより、上記粒状物の表面上に炭酸カルシウムを含む被覆層を形成すると共に、上記粒状物に浸透した水分散液中の水を蒸発させ、次いで得られた被覆層を有する粒状物を降温する工程、及び、(c)上記(b)工程で得られた被覆層を有する粒状物に、石膏及びセメントから成る群から選択された水硬性粉体を添加して混合する工程、を含む方法により得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ポリウレタンの粒状物を含む断熱性能に優れた断熱材を形成するための組成物の製造方法に関する。本発明はさらに、この製造方法により得られた断熱材形成用組成物、及び、この組成物から得られた断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡ポリウレタン、発泡ポリスチレン等の発泡プラスチックから成る成形体は、軽量で、緩衝性能及び断熱性能に優れるため、電化製品やガラス製品等の運搬の際の緩衝材、業務用冷凍冷蔵庫の断熱材、家屋の壁面や屋根等に配置される断熱材、などの広範な用途に使用されているが、この成形体は極めて嵩高いため、回収して再利用されることがほとんどなく、そのまま廃棄されることが多かった。
【0003】
この問題に対し、発泡プラスチック成形体を破砕して粒状物とし、この粒状物にセメント等の水硬性粉体を混合することにより断熱材形成用組成物を得る方法が従来から提案されている。このような断熱材形成用組成物において、使用済みの発泡プラスチック成形体を使用すれば、該成形体のリサイクルが達成されて経済的である。
【0004】
例えば、特許文献1(特公平3−3636号公報)は、セメント、粒径5mm以下の未発泡プラスチック粒、粒径0.5〜6mmであって発泡倍率が少なくとも30倍以上である発泡プラスチック粒、及び必要に応じてポリ酢酸ビニルなどの接着性粉末を含むことを特徴とする断熱材形成用組成物を開示している。この組成物において、未発泡プラスチック粒は従来のセメント組成物における砂或いは小石に代わる熱伝導率の低い骨材として使用されており、発泡ポリスチレン等の板状体を破砕することにより得られる発泡プラスチック粒は、この組成物から得られる断熱材の断熱性能を著しく向上させるために使用されている。上記接着性粉末は、組成物中の各成分間のなじみ性を向上させるために添加されている。
【0005】
また、特許文献2(特開平7−224266号公報)は、建物の壁面等にボードを張り付ける際に壁面等とボードとの間に介在させて断熱材を形成するために用いられる張付材料として、発泡スチロール及び/又は発泡ウレタンからなる粉砕化された発泡廃材と、石膏及び/又はセメントからなる固結材(水硬性粉体)と、合成樹脂接着剤とを主成分とした組成物を開示している。組成物中の固結材の配合量は、断熱材の吸水性を抑制するために、発泡廃材100容量部に対して50容量部以下に設定されている。また、合成樹脂接着剤は、壁面等とボードとの接着性を確保するために使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平3−3636号公報
【特許文献2】特開平7−224266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、発泡プラスチックとして発泡ポリウレタンを使用する場合には、発泡ポリウレタンが連続気泡を有するため、上述の特許文献に示されたような組成物に水を添加して混練し、混練物を壁面等に塗布しようとすると、発泡ポリウレタンの粒状物の気泡中に水が浸透する。この気泡中の水により断熱材の断熱性能が低下するばかりでなく、吸水時及び乾燥時の粒状物の変形により断熱材にひび割れが生じるおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、発泡ポリウレタンの粒状物と水硬性粉体と水との混練物から断熱材を得る過程で、発泡ポリウレタンの粒状物の気泡中に水が浸透しにくく、断熱性能に優れる断熱材を与える断熱材形成用組成物及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、鋭意検討した結果、発泡ポリウレタンの粒状物を、有機バインダーを含む水分散液に添加し、攪拌して混合することにより、発泡ポリウレタンの粒状物に上記水分散液を浸透させると共に、上記粒状物に上記有機バインダーを付着させる処理を行い、次いで、処理後の発泡ポリウレタン粒状物を含む水分散液を昇温した後に生石灰(酸化カルシウム)を添加する処理を行うことにより、上記課題が解決することを発見し、発明を完成させた。
【0010】
したがって、本発明はまず、
(a) 発泡ポリウレタンの粒状物を、有機バインダーを含む水分散液に添加し、攪拌して混合することにより、上記粒状物に上記水分散液を浸透させると共に、上記粒状物に上記有機バインダーを付着させる工程、
(b) 上記(a)工程で得られた混合物を昇温した後、生石灰を添加することにより、上記粒状物の表面上に炭酸カルシウムを含む被覆層を形成すると共に、上記粒状物に浸透した水分散液中の水を蒸発させ、次いで得られた被覆層を有する粒状物を降温する工程、及び、
(c) 上記(b)工程で得られた被覆層を有する粒状物に、石膏及びセメントから成る群から選択された水硬性粉体を添加して混合する工程
を含むことを特徴とする、断熱材形成用組成物の製造方法に関する。
【0011】
(b)工程において、生石灰(酸化カルシウム)と水との激しい発熱反応により、発泡ポリウレタンの気泡中に浸透した水分散液中の水が蒸発し、気泡が膨張する。さらに、生石灰と水との反応により生成した消石灰(水酸化カルシウム)が空気中の二酸化炭素と反応して少なくとも一部が炭酸カルシウムに変化するが、有機バインダーの作用により、発泡ポリウレタンの粒状物の表面上に硬い炭酸カルシウムを含む被覆層が形成される。そして、この硬い被覆層により、(c)工程における水硬性粉体との混合時ばかりでなく、得られた断熱材形成用組成物に水を添加して混練する際にも、さらにはこの混練物を吹付けやこて塗り等により壁面、床面等の基体上に被着させて乾燥する過程においても、粒状物の形状の変化が抑制され、粒状物中の膨張した気泡が維持される。また、断熱材形成用組成物に水を添加しても、この硬い被覆層により水が発泡ポリウレタン粒状物の気泡内部まで浸透しにくくなるため、やはり粒状物の形状の変化が抑制され、膨張した気泡が維持される。その結果、本発明の製造方法により得られた断熱材形成用組成物は、断熱性能に優れる断熱材を与える。
【0012】
上記(b)工程では、生石灰と水との反応及び消石灰と二酸化炭素との反応を迅速に進めるために、(a)工程で得られた混合物を昇温する。昇温時の混合物の温度には厳密な制限が無いが、(a)工程で得られた混合物を上記水分散液が沸騰するまで加熱するのが好ましい。そして、加熱を停止した後、生石灰を添加すると、生石灰と水との反応及び消石灰と二酸化炭素との反応を迅速に進めることができ、発泡ポリウレタン粒状物の表面上に炭酸カルシウムを含む被覆層を迅速に形成することができる。
【0013】
上記(b)工程では、降温した後の被覆層を有する粒状物をさらに除湿室内で乾燥するのが好ましい。除湿室内での乾燥により、被覆層を有する粒状物の脱水がさらに進行すると共に、被覆層が除湿室内の二酸化炭素と反応して炭酸化がさらに進行するため、被覆層の硬度がさらに向上する。
【0014】
本発明の製造方法により得られた断熱材形成用組成物は、断熱性能に優れる断熱材を与える。したがって、本発明はまた、上記製造方法により得られた、表面上に炭酸カルシウムを含む被覆層を有する発泡ポリウレタンから成る粒状物と、石膏及びセメントから成る群から選択された水硬性粉体とを含む断熱材形成用組成物、及び、該断熱材形成用組成物に水を添加して混練した混練物を基体上に被着させ、乾燥することにより得られた断熱材に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法により得られた、炭酸カルシウムを含む硬い被覆層を表面上に有する発泡ポリウレタンの粒状物と、石膏及びセメントから成る群から選択された水硬性粉体とを含む断熱材形成用組成物を使用すると、発泡ポリウレタン粒状物の表面上の硬い被覆層により、粒状物の変形や粒状物内への水の浸透が抑制され、粒状物中の気泡の膨張が維持されるため、断熱性能に優れる断熱材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】断熱材の断熱性能を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
表面上に炭酸カルシウムを含む被覆層を有する発泡ポリウレタンから成る粒状物と、石膏及びセメントから成る群から選択された水硬性粉体とを含む本発明の断熱材形成用組成物は、
(a) 発泡ポリウレタンの粒状物を、有機バインダーを含む水分散液に添加し、攪拌して混合することにより、上記粒状物に上記水分散液を浸透させると共に、上記粒状物に上記有機バインダーを付着させる工程、
(b) 上記(a)工程で得られた混合物を昇温した後、生石灰を添加することにより、上記粒状物の表面上に炭酸カルシウムを含む被覆層を形成すると共に、上記粒状物に浸透した水分散液中の水を蒸発させ、次いで得られた被覆層を有する粒状物を降温する工程、及び、
(c) 上記(b)工程で得られた被覆層を有する粒状物に、石膏及びセメントから成る群から選択された水硬性粉体を添加して混合する工程
を含む製造方法により得ることができる。以下、各工程について説明する。
【0018】
(a)工程
発泡ポリウレタンから成る粒状物は、粒状に成形した物でも良く、板状等に成形された成形体を破砕して粒状物とした物であっても良い。特に業務用冷凍冷蔵庫の断熱材等として使用されていた発泡ポリウレタン廃材を原料とすると、発泡ポリウレタンのリサイクルにつながるため経済的に好ましい。また、成形体を破砕した粒状物は、表面が粗く凸凹を有するため、以下に示す有機バインダーや水硬性粉体とのなじみが良い。発泡ポリウレタンから成る粒状物の粒径は、一般的には0.5〜30mmの範囲、好ましくは8〜12mmの範囲である。この範囲で、高強度で且つ断熱性能の高い断熱材へと導く断熱材形成用組成物が得られる。
【0019】
水分散液の形態で使用される有機バインダーは、水に分散可能な接着性を有するポリマーであれば良く、水性エマルジョン型接着剤に一般的に使用されているポリマーを特に限定無く使用することができる。例としては、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの酢酸ビニル系ポリマー;2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体などのアクリル系ポリマー;スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴムなどのゴム系ポリマーが挙げられる。これらのポリマーは、1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
【0020】
この工程では、上記発泡ポリウレタン粒状物を上記水分散液に添加し、攪拌して混合する。軽量である発泡ポリウレタン粒状物と水分散液が良好に接触するような方法であれば、攪拌方法に特に制限はないが、攪拌混合用の容器に水分散液と発泡ポリウレタン粒状物とを導入し、容器に蓋をした後、水分散液に空気を流通させてバブリングさせる方法により、攪拌混合を簡便に行うことができる。水分散液の使用量は、発泡ポリウレタン粒状物に水分散液が十分に浸透する量であり、攪拌方法に依存するが、上述した空気を流通させる方法により攪拌混合を行う場合には、発泡ポリウレタン粒状物の体積の一般的には1〜4倍、好ましくは1.5〜3倍の体積の水分散液が使用される。攪拌時間は、発泡ポリウレタン粒状物に水分散液が十分に浸透する時間であり、攪拌方法に依存するが、上述した空気を流通させる方法により攪拌混合を行う場合には、攪拌時間は一般的には12〜24時間、好適には22〜24時間の範囲である。
【0021】
この工程において、発泡ポリウレタン粒状物に水分散液が浸透し、且つ、発泡ポリウレタン粒状物に水分散液中の有機バインダーが付着する。発泡ポリウレタン粒状物の体積は水の浸透により大きく減少するが、以下の(b)工程において復元する。また、発泡ポリウレタン粒状物に付着した有機バインダーは、以下の(b)工程において被覆層を発泡ポリウレタン粒状物の表面上に形成するときに、被覆層と発泡ポリウレタン粒状物とを接着する役割を果たす。
【0022】
使用する水分散液中の有機バインダーの固形分濃度は、水分散液全体の質量に対して1〜15質量%、好ましくは2〜8質量%の範囲である。有機バインダーの固形分濃度が1質量%より少ないと、以下の(b)工程において被覆層を発泡ポリウレタン粒状物の表面上に形成する際の接着力が十分でなく、15質量%より多いと、水分散液の高すぎる粘性により発泡ポリウレタン粒状物と水分散液との攪拌混合が阻害される場合があり、また経済的にも不利である。
【0023】
(b)工程
次いで、(a)工程で得られた混合物を加熱可能な容器に移す。このとき、混合物中の液分の一部を除去するのが好ましい。除去した液は上記(a)工程において再利用することができる。
【0024】
そして、加熱可能な容器中の混合物を攪拌しながら昇温した後、生石灰(酸化カルシウム)を容器中に導入する。生石灰を添加した直後に、生石灰と水との激しい発熱反応及びこの反応により生成した消石灰(水酸化カルシウム)と二酸化炭素との反応が迅速に進行する。昇温時の混合物の温度に厳密な制限が無いが、一般的には70℃〜水分散液の沸点までの範囲、好適には80℃〜水分散液の沸点までの範囲である。この範囲内で生石灰と水との反応及び消石灰と二酸化炭素との反応が迅速に進行する。また、(a)工程で得られた混合物を水分散液が沸騰するまで加熱し、加熱を停止した後、生石灰を添加する簡便な方法を実施することもできる。
【0025】
そして、酸化カルシウムと水との激しい発熱反応により、発泡ポリウレタン粒状物に浸透した水分散液中の水が急速に蒸発し、発泡ポリウレタンの気泡が著しく膨張し、発泡ポリウレタン粒状物の体積が著しく増加する。同時に、生石灰と水との反応により生成した消石灰が空気中の二酸化炭素と反応して生成した炭酸カルシウムを含む粉体が、有機バインダーの作用により、発泡ポリウレタン粒状物の表面上に被覆層を形成する。
【0026】
この工程における生石灰の使用量は、発泡ポリウレタン粒状物の表面全体が被覆層で覆われる量であれば良く、発泡ポリウレタン粒状物の粒径に依存するが、発泡ポリウレタン粒状物の初期の体積(上記(a)工程実施前の体積)の一般的には0.1〜0.5倍、好ましくは0.2〜0.3倍の体積の生石灰が使用される。なお、生石灰からの反応生成物の一部が発泡ポリウレタン粒状物の表面に付着せずに残留しても、残留物は以下の(c)工程により得られる断熱材形成用組成物において、骨材として作用するので問題が無い。
【0027】
次いで、被覆層を有する発泡ポリウレタン粒状物を降温する。温度の低下につれて、被覆層の硬度が上昇するが、被覆層を有する発泡ポリウレタン粒状物を除湿室内で乾燥するのが好ましい。乾燥効率を向上させるためには、絶対湿度が低い低温の空気を含む除湿室内で乾燥を行うのが好ましい。この工程により、被覆層を有する粒状物の脱水がさらに進行すると共に、炭酸カルシウムを含む被覆層が空気中の二酸化炭素と反応して炭酸化がさらに進むため、被覆層の硬度がさらに上昇する。除湿室内での乾燥時間には厳密な制限がないが、一般的には20〜24時間、好ましくは22〜24時間の範囲である。
【0028】
(c)工程
この工程において水硬性粉体として使用されるセメントとしては、公知のセメントを特に限定無く使用することができる。例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント、膨張セメント、酸性リン酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、キーンスセメントが挙げられる。特に白色ポルトランドセメントを使用するのが好ましい。また、同様に水硬性粉体として使用される石膏としては、公知の水硬性石膏を特に限定無く使用することができ、例えば、α型半水石膏、β型半水石膏、II型無水石膏、III型無水石膏が挙げられる。これらの水硬性粉体は、1種を単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。
【0029】
水硬性粉体は、水硬性粉体と被覆層を有する発泡ポリウレタン粒状物の体積の合計に対して一般的には20〜30体積%、好ましくは20〜25体積%の範囲で使用される。水硬性粉体が20体積%より少ないと、断熱材形成用組成物から得られる断熱材の強度が十分でなくなり、30%より多いと断熱材の断熱性能が十分でなくなる。
【0030】
この工程では、水溶性高分子、粘土鉱物粒、顔料、接着剤、骨材、防かび剤、難燃剤、消泡剤、硬化時間調整剤等の慣用の添加物を添加しても良い。
【0031】
混和剤として作用する水溶性高分子としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等の水溶性セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、カゼイン、ゼラチン、ペプシン等を1種又は2種以上を混合して使用することができる。特に、水溶性セルロースエーテルを使用すると、断熱材形成用組成物と水との混練物を壁面、床面等の基体上にこて塗り、吹き付け等により被着させる際の作業性が向上し、また得られた断熱材の保水性が向上し、断熱材のひび割れが抑制されるため好ましい。
【0032】
同様に混和剤として作用する粘土鉱物粒としては、タルク、モンモリロナイト、バーミキュライト、パーライト、カオリン等を使用することができる。顔料としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、パーマネントイエロー、パーマネントレッド等の有機顔料のほか、鉄、クロム、チタン、コバルト等の無機顔料を使用することもできる。骨材としては、炭酸カルシウム粒、未発泡プラスチック粒、川砂等を使用することができる。
【0033】
発泡ポリウレタン粒状物、水硬性粉体、及び必要に応じて慣用の添加物を公知の混合機を用いて均一に混合することにより、本発明の断熱材形成用組成物を得ることができる。
【0034】
断熱材の形成
上述した(a)〜(c)工程を含む本発明の製造方法により得られた断熱材形成用組成物に水を添加して混練した後、得られた混錬物をこて塗り、吹き付け等により壁面、屋根裏、床面等の基体上に所望の厚みに塗布し、乾燥することにより断熱材を形成することができる。また、予め所定形状に形成した型枠内に混練物を流し込み、乾燥後に型枠を取り外すことにより、所定形状に成形された断熱材を得ることができる。上記混錬物における水の量は、塗布方法や塗布装置、気象条件等に依存して変化するが、スプレーガンにより吹き付けを行う場合には、断熱材形成用組成物1kg当たり一般的には0.8〜1.2L、好ましくは0.9〜1.1Lの水を使用する。乾燥時間は、常温で、一般的には24〜30時間、好ましくは24〜26時間の範囲である。乾燥後に、高強度で断熱性に優れた断熱材が得られる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0036】
(1)断熱材形成用組成物の製造
実施例
回収した業務用冷凍冷蔵庫から発泡ポリウレタンの板状体を取り出し、該板状体を破砕し、破砕物を篩に通して、8〜12mmの直径を有する粒状物原料を得た。1×1.2×2.4mの水槽に、固形分が4質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む水分散液1.65mを導入し、発泡ポリウレタン粒状物原料を水槽の上端に達するまで投入した。次いで、水槽に蓋をし、水分散液に空気をバブリングさせて、24時間攪拌した。
【0037】
次いで、水槽中の混合物10kgを加熱容器に移し、攪拌しながら水分散液が沸騰するまで加熱した後、加熱を停止し、攪拌しながら生石灰5kgを投入した(体積比 発泡ポリウレタン粒状物原料:生石灰=80:20)。続いて、得られた生成物を乾燥用バットに移し、このバットを温度38℃の除湿室内に24時間放置した。
【0038】
乾燥後の被覆層を有する発泡ポリウレタン粒状物1.5kgと、β型半水石膏を85質量%以上含み、さらに混和剤としての粘土鉱物粒、接着剤、硬化時間調整剤及び防かび剤を含む石膏ボンド1.5kg(体積比 被覆層を有する発泡ポリウレタン粒状物:石膏系ボンド=80:20)と、メチルセルロース20gとを混合し、断熱材形成用組成物を得た。
【0039】
比較例
実施例において使用した発泡ポリウレタン粒状物原料1.5kgと、石膏ボンド1.5kgと、メチルセルロース20gとを混合し、断熱材形成用組成物を得た。
【0040】
(2)断熱材の形成
厚さ12.5mmの木材で、1×1×1mの開閉可能な箱体を形成した。この箱体の内側に、実施例或いは比較例の断熱材形成用組成物に水3Lを添加して混練した混練物をスプレーガンにより2cmの厚さで吹き付け、24時間乾燥した。
【0041】
(3)断熱性能の評価
この箱体の内部に、40Wの電球と温度計を各1個配置した。電球は、箱体のほぼ中央の位置に、温度計は断熱材の近傍の位置に配置した。次いで、電球を点灯し、箱体内の温度の上昇を測定し、箱体内の温度が50℃に到達した直後に電球を消灯し、箱体内の温度の低下を測定した。実験の間中、箱体の外の気温は15℃に維持した。
【0042】
図1に、測定結果を示す。実施例の断熱材形成用組成物から得られた断熱材を使用した場合には、電球点灯開始から1時間後には箱体内の温度が50℃に達し、開始から11時間後まで40℃を、20時間後まで30℃を保っていた。これに対し、比較例の断熱材形成用組成物から得られた断熱材を使用した場合には、箱体内の温度が50℃に達するのに電球点灯開始から2時間40分を要し、開始から7時間後には温度が40℃以下に低下し、9時間30分後には30℃以下に低下し、15時間経過後には外気温と同じ15℃まで低下した。
【0043】
したがって、本発明の断熱材形成用組成物が優れた断熱性能を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の断熱材形成用組成物は、断熱性能に優れた断熱材を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 発泡ポリウレタンの粒状物を、有機バインダーを含む水分散液に添加し、攪拌して混合することにより、前記粒状物に前記水分散液を浸透させると共に、前記粒状物に前記有機バインダーを付着させる工程、
(b) 前記(a)工程で得られた混合物を昇温した後、生石灰を添加することにより、前記粒状物の表面上に炭酸カルシウムを含む被覆層を形成すると共に、前記粒状物に浸透した水分散液中の水を蒸発させ、次いで得られた被覆層を有する粒状物を降温する工程、及び、
(c) 前記(b)工程で得られた被覆層を有する粒状物に、石膏及びセメントから成る群から選択された水硬性粉体を添加して混合する工程
を含むことを特徴とする、断熱材形成用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(b)工程において、前記(a)工程で得られた混合物を前記水分散液が沸騰するまで加熱し、加熱を停止した後、生石灰を添加する、請求項1に記載の断熱材形成用組成物の製造方法。
【請求項3】
前記(b)工程において、降温した後の被覆層を有する粒状物をさらに除湿室内で乾燥する、請求項1又は2に記載の断熱材形成用組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の断熱材形成用組成物の製造方法により得られた、表面上に炭酸カルシウムを含む被覆層を有する発泡ポリウレタンから成る粒状物と、石膏及びセメントから成る群から選択された水硬性粉体と、を含む断熱材形成用組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の断熱材形成用組成物に水を添加して混練した混練物を基体上に被着させ、乾燥することにより得られた断熱材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−240888(P2012−240888A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112830(P2011−112830)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(511122569)
【Fターム(参考)】