説明

断熱構造

【課題】外断熱壁による断熱効果をより高めることを可能とした断熱構造を提案する。
【解決手段】外断熱壁1と、屋内の空気aを屋外へ排出する排気設備2と、を備える断熱構造Aであって、外断熱壁1が、壁本体10と、壁本体10の外側面に設置された断熱材11と、断熱材11の外側を覆う外殻12と、断熱材11と外殻12との間に形成されて当該外断熱壁1の下部において開口する通気層13と、を備えてなり、排気設備2が、外断熱壁1の上部において通気層13に接続する排気管20を備えていて、排気管20から通気層13へ排出された屋内の空気aを、通気層13を介して屋外へと排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
外断熱壁は、例えば特許文献1に示すように、壁本体の外面に貼着された断熱材の外側と外殻との間に外断熱壁の下部から上部に連続する通気層を設けているのが一般的である。これは、外断熱壁の下部から外気を取り入れて、外断熱壁の上部から排出することにより、室内側から室外側に移動してくる湿気が断熱材の内部に溜まることを防止するためである。
【0003】
この外断熱壁は、日射による温度上昇に伴う温度差で発生する上昇流や、風圧等による上昇流により外断熱壁内の通気層に外気を取り入れて湿気を排出するものであるが、曇天時や雨天時または無風時には、通気層の換気効果を期待することができない場合があった。
【0004】
そのため、特許文献2には、図6に示すように、室内の暖房機120の排気を通気層113に送り込むことにより、無風時においても通気層113内に上昇流を形成させる外断熱構造が開示されている。この外断熱構造によれば、通気層113に形成された上昇流により、外気a’が外断熱壁101の下部から通気層113内に取り込まれることが可能となる。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3100445号公報
【特許文献2】特開2002−294886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の外断熱構造は、湿気の排出を目的として、通気層113内の上昇流により外気a’を取り入れて、換気を行う構造のため、断熱材111の外側表面(通気層113内)の温度は、外気a’の温度とほぼ等しくなっていた。
そのため、従来の外断熱構造における断熱性能の良否は、断熱材111の断熱性能をそのまま依存することになる。
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、外断熱壁による断熱効果をより高めることを可能とした断熱構造を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、外断熱壁と、屋内の空気を屋外へ排出する排気設備と、を備える断熱構造であって、前記外断熱壁が、壁本体と、前記壁本体の外側面に設置された断熱材と、前記断熱材の外側を覆う外殻と、前記断熱材と前記外殻との間に形成されて当該外断熱壁の下部において開口する通気層と、を備えてなり、前記排気設備が、前記外断熱壁の上部において前記通気層に接続する排気管を備えていて、前記通気層が、前記排気管から該通気層の上部に排気された前記屋内の空気を、下部から屋外へと排出することを特徴としている。
【0009】
かかる断熱構造によれば、断熱材の外側に設けられた通気層に室内からの排気を通過させるため、断熱材の外側表面の温度を居室内の温度に近づけることが可能となる。そのため、居室内の排熱エネルギーを利用して、断熱効果をより高めることが可能となる。
また、従来の外断熱壁は、通気層の上部と下部に開口部が形成されていることで、外気が通気層に導入されてしまうのに対し、本発明に係る断熱構造は、通気層の下部のみにおいて開口されているため、外気が通気層内に導入されることがなく、居室内の排熱エネルギーを有効に利用することが可能となる。
【0010】
また、前記排気管が、前記通気層内において水平方向に前記屋内の空気を排出するように構成されていれば、通気層全体に居室内からの排気を行き渡らせることが可能となり、断熱壁の温度分布を均一化する方向に作用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の断熱構造によれば、より高い断熱効果を備えた断熱壁を構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係る断熱構造Aは、図1に示すように、外断熱壁1と、排気設備2とを備えて構成されている。
【0013】
外断熱壁1は、図1に示すように、屋内5側に配設された壁本体10と、壁本体10の外側面に設置された断熱材11と、断熱材11の外側(屋外6側)を覆う外殻12と、断熱材11と外殻12との間に形成されて外断熱壁1の下部において開口する通気層13と、を備えてなる。
【0014】
壁本体10は、プレキャスト製のパネル部材からなり、その上部と下部において、天井スラブ3および床スラブ4にそれぞれ治具により固定されている。壁本体10を構成する材料は限定させるものではなく、適宜公知の材料から選定して採用することが可能である。
【0015】
断熱材11は、壁本体10の外側(屋外6側)面を覆うように貼着されている。なお、断熱材11には、適宜公知の材料が採用可能である。また、断熱材11の固定方法は限定されるものではなく、適宜公知の手段により行えばよい。
【0016】
外殻12は、外断熱壁1の外側(屋外6側)面を覆う外装材である。本実施形態では、パネル部材からなる外殻12を、断熱材11の外側面から所定の隙間(通気層13)をあけて配置する。
外殻12の構成や材料は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0017】
外殻12の下部には、開口部14が形成されている。開口部14は、通気層13内に送気された屋内の空気aを排気することが可能な形状(大きさ)に構成されている。本実施形態では、外殻12と床スラブ4との間に隙間を形成することにより開口部14を形成するものとする。なお、開口部14の形成方法は限定されるものではなく、例えば、外殻12の下端部を切り欠くことや、孔を貫通させることにより形成してもよい。
【0018】
通気層13は、断熱材11と外殻12との間に通気可能に形成された空間である。通気層13に空気を通過させることにより断熱材11に湿気等の水分が溜まることを防止している。通気層13の幅等は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0019】
通気層13の上端は、天井スラブ3により閉塞されている。一方、通気層13の下端には、外殻12と床スラブ4との間に隙間を設けることにより開口部14が形成されている。
開口部14は、通気層13と屋外6とを連通し、後記する排気孔21よりも下方にのみ形成されており、排気孔21よりも上方には形成しないものとする。
【0020】
排気設備2の排気管20の排気孔21は、通気層13の上部に配置されている。排気設備2を介して排気管20へ送気された屋内の空気aは、排気孔21を通って通気層13内に送り込まれる。
通気層13内に送り込まれた屋内の空気aは、通気層13の下部(外殻12の下部)に形成された開口部14から屋外6へと排気される。
【0021】
排気設備2は、屋内の空気aを屋外へ排出する装置であって、図1に示すように、天井スラブ3に吊持された状態で配置されている。排気設備2は、外断熱壁1の上部において通気層13に接続する排気管20と、屋内の空気aを排気管20を介して通気層13へ送り出す送風機22と、を備えている。なお、排気設備2の構成は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0022】
送風機22は、天井スラブ3と天井板30との間に形成された天井裏空間31に配置されており、天井スラブ3に固定された治具23を介して天井スラブ3に吊持されている。なお、送風機22の固定方法は限定されるものではない。
【0023】
送風機22には、図2にも示すように、吸気管24と排気管20とが接続されている。吸気管24は、室内から送風機22へ至る管路である。
【0024】
排気管20は、図1および図2に示すように、吸気管24を介して室内から取り込まれた屋内の空気aを、通気層13に送り出す管路であって、先端部が壁本体10と断熱材11を貫通して通気層13に接続されている。
【0025】
排気管20を構成する材料は限定されるものではなく、適宜公知の材料の中から選定して採用すればよい。また、本実施形態では、排気管20として、円形断面のものを採用するものとしたが、排気管20の断面形状は限定されるものではなく、例えば矩形断面でもよい。また、吸気管24を構成する材料は、排気管20と同様のものを使用する。
【0026】
排気管20は、図3に示すように、先端部の周壁を切り欠くことにより、排気孔21,21が形成されている。排気孔21,21は、排気管20の左右両側に形成されている。
【0027】
排気管20は、図2に示すように、先端面が、外殻12の内側面に突き合わされた状態で配管されており、排気管20に送り込まれた屋内の空気aは、左右の排気孔21,21を介して水平方向(図2中の左右方向)に排出される。
【0028】
排気管20により通気層13に送気された屋内の空気aは、図4に示すように、通気層13内において排気孔21,21から水平方向に排出された後、斜め下方へ向かい、最終的には通気層13の下部に形成された開口部14から屋外へと排出される。
【0029】
以上、本実施形態の断熱構造Aによれば、屋内の空気aを屋外に排気する際に、通気層を通過させることで、断熱材の外表面(屋外6側表面)を室内温度(屋内5の温度)に近づけることが可能となる。そのため、外断熱壁1による断熱効果がより高まる。故に、居室内の排熱エネルギーを有効に利用することが可能となる。
【0030】
また、排気管20が、屋内の空気aを水平方向に排出するように構成されているため、通気層13内の全体に屋内の空気aを送ることが可能となる。そのため、通気層13内の温度分布を均一化に貢献する。
【0031】
なお、夏期は、排気される屋内の空気aの温度の方が外気の温度よりも低いため、通気層13の上部に排出された屋内の空気aは、通気層13の下部に自然に流れようとする。そのため、通気層13内において排気管20から離れた位置まで室内の空気aが届くように送風機22による送風量を調整し、通気層13内全体に室内の空気aを送る込むものとする。
一方、冬期は、送風機22により屋内の空気aを通気層13に送り込むと、外気よりも温度の高い屋内の空気aは、通気層13の上部に滞留しながら次第に冷えて下部に移動し屋外へと排出する。そのため、送風機22の送風量が夏期よりも少なくても、通気層13内の空気を開口部14から押し出す流れを形成する。
【0032】
また、排気管20を直接屋外に接続するのではなく、通気層13に接続することで、排気ガラリが外壁(外殻12)の外面に露出することがないため、意匠的な設計の自由度が増す。
【0033】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であることは言うまでもない。
【0034】
例えば、前記実施形態では、排気管20の切り欠き部(排気孔21)から屋内の空気aを水平方向に排気するものとしたが、水平方向に排気するための構成は限定されるものではない。例えば、図5(a)に示すように、通気層13内において、水平方向に配管された水平管25に排気管20を接続してもよい。水平管25には、複数の排気孔26,26,…を形成しておく。このようにすると、通気層13の全体に屋内の空気aを送り込むことが可能となる。
【0035】
また、前記実施形態では、屋内の空気aを水平方向に排気するものとしたが、必ずしも水平方向に排気する必要はない。このように、水平方向に屋内の空気aを排気しない場合には、排気管20を、図5(b)に示すように、通気層13に開口させるだけでよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る断熱構造の概要を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す断熱構造を示す平断面図である。
【図3】図1に示す断熱構造の排気管を示す斜視図である。
【図4】図1に示す断熱構造のX−X断面図である。
【図5】(a)および(b)は本発明に係る断熱構造の変形例を示す平断面図である。
【図6】従来の断熱構造の概要を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 外断熱壁
10 壁本体
11 断熱材
12 外殻
13 通気層
14 開口部
2 排気設備
20 排気管
21 排気孔
A 断熱構造
a 屋内の空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外断熱壁と、屋内の空気を屋外へ排出する排気設備と、を備える断熱構造であって、
前記外断熱壁が、壁本体と、前記壁本体の外側面に設置された断熱材と、前記断熱材の外側を覆う外殻と、前記断熱材と前記外殻との間に形成されて当該外断熱壁の下部において開口する通気層と、を備えてなり、
前記排気設備が、前記外断熱壁の上部において前記通気層に接続する排気管を備えていて、
前記排気管から前記通気層へ排出された前記屋内の空気を、前記通気層を介して屋外へと排出することを特徴とする、断熱構造。
【請求項2】
前記排気管が、前記通気層内において水平方向に前記屋内の空気を排出するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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