説明

新規のエリスロマイシン誘導体、それらの製造方法及びそれらの薬剤としての使用

【課題】新規エリスロマイシン誘導体の提供。
【解決手段】式(A)の化合物(OZは遊離の又は保護されたOH基を表わす)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のエリスロマイシン誘導体、それらの製造方法及びそれらの薬剤としての使用に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明は、抗生物質として有用な新規のエリスロマイシン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の主題は、次式(I)の化合物及びそれらの酸付加塩にある:
【化1】

(ここで、XはCH2又はNH基を表わし、
nは1〜8の範囲の整数を表わし、
Yは水素又はハロゲン原子を表わし、
Rは次式:
【化2】

の基を表わし、
W及びW’は水素原子、ハロゲン原子又は8個までの炭素原子を有し且つ随意に1個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を表わし、
Zは水素原子又は酸の残基を表わす)。
【発明を実施するための形態】
【0004】
酸付加塩の例としては、酢酸、プロピオン酸、トリフルオル酢酸、マレイン酸、酒石酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、及び特にステアリン酸、エチルコハク酸又はラウリルスルホン酸と共に形成された塩を挙げることができる。
Yがハロゲン原子を表わす場合、これは例えば弗素、塩素又は臭素原子である。
【0005】
本発明のより特定的な主題は、式(I)においてXがCH2基を表わす化合物、式(I)においてYが水素原子を表わす化合物、式(I)においてYが弗素原子を表わす化合物及び式(I)においてnが数4を表わす化合物にある。
本発明のより一層特定的な主題は、下記の実験の部に製造例を与えた化合物、特に例1、3及び5の化合物にある。
【0006】
一般式(I)の化合物は、グラム陽性菌、例えばブドウ球菌、連鎖球菌及び肺炎球菌に対して非常に良好な抗生活性を有する。
【0007】
従って、本発明の化合物は、病原微生物感受性(germ-sensitive)の感染症の処置、特にブドウ球菌感染症{例えばブドウ球菌性敗血症、顔や皮膚の悪性ブドウ球菌感染症、膿皮症、感染創、化膿創、腫脹、炭疽、フレグモーネ(蜂巣炎)、丹毒、ニキビ(挫創)、急性一次アンギナ若しくはインフルエンザ後の急性アンギナ、気管支肺炎及び肺化膿}、連鎖球菌感染症(例えば急性アンギナ、耳炎、静脈洞炎及び猩紅熱)、並びに肺炎球菌症(例えば肺炎及び気管支炎)、ブルセラ症、ジフテリア及び淋菌感染症の処置における薬剤として用いることができる。
【0008】
本発明の化合物はまた、ヘモフィリス・インフルエンザ(Haemohilus influenzae)、リケッチア(Rickettsiae)、マイコプラスマ・ニューモニア(Mycoplasma pneumoniae)、クラミジア(Chlamydia)、レジオネラ(Legionella)、ウレアプラスマ(Ureaplasma)、トキソプラスマ(Toxoplasma)のような病原微生物又はマイコバクテリウム(Mycobacterium)属の病原微生物によって引き起こされる感染症に対しても活性である。
【0009】
従って、本発明の主題は、薬剤、特に抗生物質薬剤としての前記の式(I)の化合物及びそれらの製薬上許容できる無機又は有機酸付加塩にもある。
【0010】
本発明のより一層特定的な主題は、薬剤、特に抗生物質薬剤としての、例1、3及び5の化合物並びにそれらの製薬上許容できる塩にある。
【0011】
本発明の主題はまた、前記の少なくとも1種の薬剤を活性成分として含有する製薬組成物にもある。
【0012】
これらの組成物は、経口、直腸経路若しくは非経口で、又は皮膚若しくは粘膜への局部的適用による局所経路で投与することができるが、経口投与が好ましい。
【0013】
これら組成物は固体又は液体であることができ、ヒトの医薬に通常用いられる製薬上の形、例えば通常の錠剤、糖衣錠剤、ゼラチンカプセル、顆粒、座薬、注射用製剤、軟膏、クリーム又はジェルの形で存在させることができる。これらは、通常の方法に従って調製される。活性成分は、これら製薬組成物に通常用いられる賦形剤、例えばタルク、アラビアゴム、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、カカオ脂、水性若しくは非水性ビヒクル、動物性若しくは植物性の脂肪物質、パラフィン誘導体、グリコール類、各種の湿潤剤、分散剤若しくは乳化剤、又は保存剤と共に組み込むことができる。
【0014】
これらの組成物はまた、好適な媒体(例えば非加熱滅菌水)中に即時的に溶解させるための粉末の形で存在させることもできる。
【0015】
投与薬量は、処置される病気、対象とする患者、投与経路及び用いられる物質に応じて変えることができ、例えば例1の化合物について成人に対して経口投与する場合には1日当たり50mg〜300mgの範囲であることができる。
【0016】
本発明の主題はまた、前記式(I)の化合物又はその酸付加塩の製造方法にもあり、この方法は、次式(II):
【化3】

(ここで、Yはその前記の意味を維持し、
Mは酸の残基を表わす)
の化合物に次式(III):
【化4】

(ここで、R、n及びXはそれらの前記の意味を維持する)
の化合物を作用させて対応する式(I)においてZが酸の残基を表わす化合物を得て、次いで、
・式(I)においてZが水素原子を表わす化合物を得ることが望まれる場合には2’位のヒドロキシル官能基を遊離させる試薬を作用させ、且つ(又は)
・塩を形成させることが望まれる場合には酸を作用させる
ことを特徴とする。
【0017】
出発物質として用いられる式(II)においてYが水素原子を表わす化合物は、ヨーロッパ特許第0949268号明細書に記載されて特許請求されている。式(II)においてYが弗素原子を表わす化合物の製造の詳細な例は、後記する。この方法は、次のように図式化することができる。即ち、次式(A):
【化5】

(ここで、OZは遊離の又は保護されたOH基を表わす)
の化合物に弗素化剤を作用させて対応する次式(B):
【化6】

の化合物を得て、これにカルボニルジイミダゾールを作用させて対応する式(II)においてYが弗素原子を表わす化合物を得る。
【0018】
出発物質として用いられる式(III)の化合物は新規であり、それら自体本発明の主題である。それらの製造は後記の実験の部に与える。
【0019】
本発明の主題はまた、新規の化学物質としての前記の式(III)の化合物、特に式(III)においてnが数3を表わし且つXがCH2基を表わす化合物にもある。
【実施例】
【0020】
以下、実施例によって本発明を例示する。
【0021】
例1:11,12−ジデオキシ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−[オキシカルボニル−[[4−[4−(1H−インドール−3−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]ブチル]イミノ]]エリスロマイシン
下記の調製例1において得られるアミン3.78gとアセトニトリル25ミリリットルと水2.5ミリリットルと12−(オキシカルボニルイミダゾール)−11−デオキシ−10,11−ジデヒドロ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソエリスロマイシンの2’−アセトキシ誘導体4.2gとの混合物を70℃において48時間撹拌する。蒸発乾固させた後に、メタノール30ミリリットルを添加し、還流下で3時間撹拌する。蒸発乾固させた後に、得られた生成物をシリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤は酢酸エチルとエタノールとトリエチルアミンとの比90:5:5の混合物)にかける。得られた生成物2.2gをシリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤はクロロホルムとメタノールと水酸化アンモニウムとの比96:4:0.5の混合物)によって精製する。得られた生成物1.73gを酢酸エチル中に取り出し、1%水酸化アンモニウム水溶液で洗浄し、乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させ、次いで酢酸エチル中でペースト状にし、分離し、乾燥させる。目的物質1.440gが得られた。
【0022】
NMRスペクトル(CDCl3中、400MHz)
H2:3.86ppm
H4:3.08ppm
H5:4.25ppm
H7:1.60、1.81ppm
H8:2.60ppm
H10:3.13ppm
H11:3.58ppm
H13:4.95ppm
H14:1.56、1.96ppm
H15:0.83ppm
2Me:1.38ppm
4Me:1.31ppm
6Me:1.34又は1.47ppm
8Me:1.15ppm
10Me:1.00ppm
12Me:1.34又は1.47ppm
6OMe:2.65ppm
1’:4.29ppm
2’:3.19ppm
3’:2.45ppm
4’:1.66及び1.23ppm
5’:3.53ppm
NMe2:2.26ppm
NCH2:3.65、3.76ppm
CH2:1.68、1.91ppm
CH2N:3.99ppm
イミダゾール:7.23、7.53ppm
インドール:8.60、7.67、7.39、7.18、7.90ppm
質量分析スペクトル
MH+:850+
デスオサミン:158+
M−H-:848-
【0023】
例2:11,12−ジデオキシ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−2−フルオル−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−[オキシカルボニル−[[4−[4−(1H−インドール−3−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]ブチル]イミノ]]エリスロマイシン
下記の調製例2に示したようにして得られる式(II)の2−弗素化化合物から出発して例1におけるように操作することによって、目的物質が得られた。
【0024】
NMRスペクトル(CDCl3中、400MHz)
H4:3.53ppm
H5:4.07ppm
H7:1.52、1.85ppm
H8:2.62ppm
H10:3.19ppm
H11:3.44ppm
H13:4.89ppm
H14:1.63、1.98ppm
15Me:0.87ppm
2Me:1.79ppm
4Me:1.32ppm
6Me:1.34又は1.50ppm
8Me:1.16ppm
10Me:1.01ppm
12Me:1.34又は1.50ppm
6OMe:2.57ppm
1’:4.31ppm
2’:3.20ppm
3’:2.48ppm
4’:1.68及び1.24ppm
5’:3.53ppm
NMe2:2.28ppm
CH2:1.66、1.86ppm
CH2N:3.74、3.69ppm
質量分析スペクトル
MH+:868+
【0025】
例3(参考例):11,12−ジデオキシ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−[オキシカルボニル−[[4−[4−[(2−フラニルカルボニル)アミノ]−1H−イミダゾール−1−イル]ブチル]イミノ]]エリスロマイシン
前記のように操作することによって、目的物質が得られた。
f=0.25(CH2Cl2−CH3OH−NH4OH、比95:5:0.4)
【0026】
NMRスペクトル(CDCl3中)
H2:3.85ppm
H4:3.07ppm
H5:4.24ppm
H7:1.58及び1.84ppm
H8:2.62ppm
H10:3.12ppm
H11:3.56ppm
H13:4.91ppm
H14:1.60−1.97ppm
H15:0.85ppm
2Me:1.25ppm
4Me:1.30ppm
6Me:1.36又は1.47ppm
8Me:1.17ppm
10Me:1.00ppm
12Me:1.36又は1.47ppm
6OMe:2.63ppm
1’:4.28ppm
2’:3.20ppm
3’:2.48ppm
4’:1.67及び1.23ppm
5’:3.56ppm
5Me:1.25ppm
N(Me)2:2.28ppm
NCH2:3.96ppm
CH2:1.84ppm
CH2:1.62ppm
CH2N:3.63及び3.32ppm
H2、H5:7.39及び7.28ppm
H3:7.18ppm
H4:6.53ppm
H5:7.50ppm
NHC=O:8.30ppm
【0027】
例4(参考例):11,12−ジデオキシ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−2−フルオル−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−[オキシカルボニル−[[4−[4−[(2−フラニルカルボニル)アミノ]−1H−イミダゾール−1−イル]ブチル]イミノ]]エリスロマイシン
前記のように操作することによって、目的物質が得られた。
【0028】
NMRスペクトル(CDCl3中、400MHz)
H4:3.54ppm
H5:4.07ppm
H7:1.51及び1.87ppm
H8:2.62ppm
H10:3.10ppm
H11:3.42ppm
H13:4.86ppm
H14:1.65−1.98ppm
H15:0.89ppm
2Me:1.78(d)ppm
4Me:1.31ppm
6Me:1.36又は1.50ppm
8Me:1.19ppm
10Me:1.01ppm
12Me:1.36又は1.50ppm
6OMe:2.55ppm
1’:4.31ppm
2’:3.20ppm
3’:2.48ppm
4’:1.69及び1.24ppm
5’:3.54ppm
5’Me:1.24ppm
N(Me)2:2.29ppm
NCH2:3.58−3.71ppm
CH2:1.62ppm
CH2:1.83ppm
CH2N:3.94ppm
イミダゾール:7.27−7.39ppm
NH:8.65ppm
フランH3:7.18ppm
H4:6.52ppm
H5:7.49ppm
【0029】
例5(参考例):11,12−ジデオキシ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−[オキシカルボニル[[4−(5−クロル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−1−イル)ブチル]イミノ]]エリスロマイシン
調製例3の生成物799g、THF5ミリリットル、イソプロパノール5ミリリットル、12−(オキシカルボニルイミダゾール)−11−デオキシ−10,11−ジデヒドロ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソエリスロマイシンの2’−アセトキシ誘導体706mg及びDBU30マイクロリットルを周囲温度において48時間撹拌する。この反応混合物を水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、乾燥させ、濾過し、濃縮する。得られた生成物をメタノール7ミリリットル中に注ぎ、周囲温度において24時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮する。得られた生成物をシリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤は塩化メチレンとメタノールと水酸化アンモニウムとの比95:5:0.3の混合物)によって精製する。単離された生成物240mgを酢酸エチル中に溶解させ、水酸化アンモニウムで洗浄し、乾燥させ、濾過し、乾固させる。得られた生成物をエチルエーテルから結晶化させ、洗浄し、減圧下で70℃において乾燥させる。目的物質117mgが単離された。融点200〜202℃。
【0030】
質量分析スペクトル
MH+:820+
NMRスペクトル(CDCl3中、ppm)
3.86:H2
3.06:H4
4.24:H5
2.60:H8
3.14:H10
3.54:H11
4.88:H13
1.38:2Me
1.30:4Me
1.16:8Me
100:10−Me
2.59:6OMe
4.27:H1’
3.17:H2’
2.45:H3’
3.54:H5’
1.25:5’Me
N(Me)2:2.26
NCH2:3.64−3.80
CH2N:4.24
H2:8.14
H6、H7:7.28−7.78
【0031】
例6(参考例):11,12−ジデオキシ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−[オキシカルボニル[[4−(5−クロル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イル)ブチル]イミノ]]エリスロマイシン
前記のように操作することによって、目的物質が得られた。
【0032】
質量分析スペクトル
MH+:820+
NMRスペクトル(CDCl3中、400MHz)
H2:3.84(q)
H4:3.06(m)
H5:4.24(d)
H8:2.60(マスク)
H10:3.13(q)
H11:3.55(s)
H13:4.91(dd)
H15:0.85(t)
2Me:1.37(d)
4Me:1.30(d)
8Me:1.16(d)
10Me:1.00(d)
12Me:1.36又は1.46(s)
6OMe:2.60(s)
H1’:4.29(d)
H2’:3.18(dd)
H3’:2.45(m)
H4’:1.24−1.68(m)
H5’:3.55(m)
5’Me:1.26(d)
N(Me):2.26(s)
O−CO−N−CH2:3.67−3.75(m)
CH2:1.68(m)
CH2:1.96(m)
NCH2:4.33(m)
H2'':8.09(s)
H4'':7.98(d)
H5'':7.22(d)
【0033】
調製例1:4−(1H−インドール−3−イル)−1H−イミダゾール−1−ブタンアミン
工程A:3−(1H−イミダゾール−4−イル)−1H−インドール
2−ブロム−1−(1H−インドール−3−イル)エタノン12.87g及びホルムアミド27.4ミリリットルを180℃において1時間撹拌し、次いで水中に取り出し、酢酸エチルで洗浄し、5%水酸化アンモニウム溶液によってpHを10より大きい値に調節し、酢酸エチルで抽出し、乾燥させ、蒸発乾固させる。得られた生成物をシリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤は塩化メチレンとメタノールと水酸化アンモニウムとの比96:4:0.5の混合物)にかけて、目的物質2.53gが得られた。
【0034】
工程B:2−[4−[4−(1H−インドール−3−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]ブチル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
工程Aの生成物7.9g、DMF50ミリリットル及び炭酸カリウム11.93gを110℃において15分間撹拌し、オーブン中で無水燐酸下で乾燥させる。DMF30ミリリットル中にN−(4−ブロムブチル)フタルイミド15.83gを含有させた溶液を周囲温度において滴下する。110℃において1時間撹拌する。この反応混合物を酸性燐酸ナトリウム中に注ぎ、次いで減圧下で蒸発させる。得られた粗製生成物19.11gをシリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤は塩化メチレンとメタノールと水酸化アンモニウムとの比97:3:0.5の混合物)によって精製する。目的物質4.58gが得られた。
【0035】
工程C:4−(1H−インドール−3−イル)−1H−イミダゾール−1−ブタンアミン
前の工程の生成物4.58gとエタノール200ミリリットルとヒドラジン水和物1.45ミリリットルとの混合物を還流下で24時間撹拌し、次いで30ミリリットルに濃縮し、濾過し、エタノールですすぎ、蒸発乾固させる。目的物質3.78gが得られた。
【0036】
調製例2:12−(オキシカルボニルイミダゾール)−11−デオキシ−10,11−ジデヒドロ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソエリスロマイシンの2’−アセトキシ−2α−フルオル誘導体
工程A:11−デオキシ−10,11−ジデヒドロ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソエリスロマイシン
2’−アセトキシ−11−デオキシ−10,11−ジデヒドロ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソエリスロマイシン(ヨーロッパ特許第596802号明細書)8.22gと無水メタノール350ミリリットルとの混合物を44時間撹拌し、次いで蒸発させ、塩化メチレン中に取り出し、乾燥させて、目的物質8.794gが得られた。
【0037】
工程B:11−デオキシ−10,11−ジデヒドロ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソエリスロマイシンの2’−トリメチルシリルオキシ誘導体
前の工程の生成物3.08g、イミダゾール340mg、無水THF32ミリリットル及びヘキサメチルジシラザン1.06ミリリットルを含有させた混合物を周囲温度において4日間撹拌する。この反応混合物を蒸発乾固させ、塩化メチレン60ミリリットルと0.5M酸性燐酸ナトリウム水溶液60ミリリットルとの混合物中に取り出す。この混合物を15分間撹拌下に保ち、デカンテーションし、塩化メチレンで抽出し、乾燥させ、蒸発乾固させる。目的物質3.345gが得られた。
【0038】
工程C:11−デオキシ−10,11−ジデヒドロ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソエリスロマイシンの2’−トリメチルシリルオキシ−2α−フルオル誘導体
11−デオキシ−10,11−ジデヒドロ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソエリスロマイシン2’−トリメチルシリルオキシ誘導体668mg及び無水THF6.7ミリリットルを含有させた溶液に、アルゴン雰囲気下で−12℃において、THF中0.97Mカリウムt−ブチラート溶液1.24ミリリットルを添加する。この反応混合物を5分間撹拌し、N−フルオルジベンゼンスルホンイミド378mgを添加する。この反応混合物を−12℃において10分間撹拌し、放置して1時間30分かけて周囲温度に戻す。単離及び精製操作を実施して、目的物質695mgが得られた。
【0039】
工程D:11−デオキシ−10,11−ジデヒドロ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソエリスロマイシンの2α−フルオル誘導体
前の工程の生成物5.476gとTHF50ミリリットルとTHF中1M弗化テトラブチルアンモニウム11.2ミリリットルとの混合物を3時間30分撹拌する。溶媒を蒸発させ、酢酸エチル37ミリリットル、水37ミリリットル及び20%水酸化アンモニウム7.5ミリリットルを添加する。10分間撹拌し、デカンテーションし、酢酸エチルで抽出し、乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮乾固させる。得られた生成物をシリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤はアンモニアを添加したCH2Cl2とMeOHとの比99:1、次いで比98:2、比97:3、比96:4、比95:5の混合物)にかける。目的物質2.452gが得られた。
【0040】
工程E:11−デオキシ−10,11−ジデヒドロ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソエリスロマイシンの2’−アセトキシ−2α−フルオル誘導体
工程Dの生成物1.02g、塩化メチレン10ミリリットル及び無水酢酸241マイクロリットルを3時間撹拌下に保ち、次いで蒸発させ、水10ミリリットル及び酢酸エチル10ミリリットルを添加する。この反応混合物を周囲温度において1時間撹拌し、デカンテーションし、乾燥させ、蒸発させる。目的物質1.01gが得られた。
【0041】
工程F:12−(オキシカルボニルイミダゾール)−11−デオキシ−10,11−ジデヒドロ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソエリスロマイシンの2’−アセトキシ−2α−フルオル誘導体
前の工程の生成物1.01g及び無水THF10ミリリットルを含有させた溶液に、0℃において、カルボニルジイミダゾール0.388g及びDBU24マイクロリットルを添加する。この反応混合物を0℃において19時間撹拌する。THFを蒸発させ、水10ミリリットル及び酢酸エチル10ミリリットルを添加する。この反応混合物を10分間撹拌し、抽出し、乾燥させ、蒸発させる。得られた粗製の目的物質0.902gをクロマトグラフィー(溶離剤は酢酸エチルとトリエチルアミンとの比96:4の混合物)にかける。目的物質0.573gが得られた。
【0042】
調製例3:N−[1−(4−アミノブチル)−1H−イミダゾール−4−イル]−2−フランカルボキサミド
工程A:2−[4−(4−ニトロ−1H−イミダゾール−4−イル)ブチル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
4−ニトロ−1H−イミダゾール15gとDMF250ミリリットルと炭酸カリウム26.95gと2−(4−ブロムブチル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン37.41gとの混合物を2時間還流する。この反応混合物を放置して周囲温度に戻し、水中に注ぐ。濾過し、すすぎ、乾燥させた後に、目的物質33.31gが得られた。
【0043】
工程B:4−ニトロ−1H−イミダゾール−1−ブタンアミン
工程Aの生成物33.31gとエタノール555ミリリットルとヒドラジン11.33ミリリットルとの混合物を20時間還流する。濾過した後に、反応混合物を放置して周囲温度に戻し、乾固させる。生成物33.04gが得られた。
【0044】
工程C:1,1−ジメチルエチル[4−(4−ニトロ−1H−イミダゾール−1−イル)ブチル]カルバメート
前の工程の生成物33.04g、THF665.8ミリリットル、水222.32ミリリットル、トリエチルアミン19.2ミリリットル及びt−ブチリックアンヒドライド27.76gを周囲温度において1時間30分撹拌する。この反応混合物を減圧下で濃縮し、水中に取り出し、次いで分離し、洗浄し、減圧下で60℃において乾燥させる。目的物質20.3gが得られた。
【0045】
工程D:1,1−ジメチルエチル[4−(4−アミノ−1H−イミダゾール−1−イル)ブチル]カルバメート
前の工程の生成物19.25g、エタノール5.77ミリリットル及びラネーニッケル19gの混合物を用いて水素化を実施する。濾過し、窒素雰囲気下においてエタノールですすいだ後に、目的物質21.38gが得られた。
【0046】
工程E:1,1−ジメチルエチル[4−[4−(2−フラニルカルボニル)アミノ−1H−イミダゾール−1−イル]ブチル]カルバメート
前の工程の生成物21.38gとTHF962ミリリットルとトリエチルアミン14.19ミリリットルとの混合物を窒素雰囲気下において5分間撹拌する。この反応混合物0℃にし、2−フラニルカルボニルクロリド7.52ミリリットルを導入する。この反応混合物を放置して周囲温度に戻し、2時間撹拌し、塩化メチレンとメタノールとの比96:4の混合物を用いて溶離させ、次いで水中に注ぐ。撹拌し、酢酸エチル500ミリリットルを添加し、次いで撹拌し、デカンテーションし、酢酸エチルで抽出する。有機相を水で洗浄し、乾燥させ、濾過し、乾固させる。目的物質25.18gが得られた。
【0047】
工程F:N−[1−(4−アミノブチル)−1H−イミダゾール−4−イル]−2−フランカルボキサミド
前の工程の生成物25.18g及び塩化メチレン126ミリリットルの溶液を0℃にする。TFA103ミリリットルを滴下する。この反応混合物を放置して周囲温度に戻し、1時間30分撹拌する。塩化メチレンを蒸発させ、次いでエーテル中に取り出し、エーテルの存在下で1時間撹拌し、濾過し、乾燥させる。得られた生成物を樹脂を用いて精製する。目的物質9.4gが得られた。
【0048】
調製例4:5−クロル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−ブタンアミン及び5−クロル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−1−ブタンアミン
工程A:6−クロル−2,3−ピリジンジアミン
酢酸78ミリリットル及び6−クロル−3−ニトロ−2−ピリジンジアミン3.415gを含有させた溶液に鉄粉末4.484gを添加する。この反応混合物を60℃〜70℃に2時間45分加熱し、次いで放置して周囲温度に戻す。水200ミリリットル中に注いだ後に、水酸化アンモニウム200ミリリットルをpHが9になるまで添加し、次いで酢酸エチルで抽出し、乾燥させ、濾過し、濃縮する。得られた粗製生成物3.14gをシリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤は酢酸エチルとトリエチルアミンとの比95:5の混合物)にかける。目的物質2.43gが得られた。
【0049】
工程B:5−クロル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン
前の工程の生成物5.16g及びギ酸50ミリリットルを含有させた溶液を16時間還流する。得られた生成物をエチルエーテル中でペースト状にし、分離する。得られた生成物を2N苛性ソーダ水溶液60ミリリットル中に入れる。水性相を酢酸エチルとテトラヒドロフランとの比80:20の混合物で抽出し、塩水で洗浄する。有機相を一緒にし、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、乾固させる。こうして目的物質2gが単離された。融点226〜228℃。母液から目的物質0.79gが得られた。融点225〜227℃。
【0050】
工程C:2−[4−[5−クロル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イル]ブチル]−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
DMF2.5ミリリットル及び油中50%水素化ナトリウム173mgを含有させた懸濁液中に、前の工程の生成物461mg及びシリポライト(siliporite)上のDMF5ミリリットルを注ぐ。この反応混合物を60℃に10分間加熱する。N−(4−ブロムブチルフタルイミド)864mg及びDMF5ミリリットルを注ぐ。周囲温度において2時間30分撹拌し、次いで氷と水と酢酸エチルとの混合物中に注ぐ。酢酸エチルで抽出し、次いで水で洗浄する。水性相を一緒にし、乾燥させ、濾過し、濃縮する。単離された生成物1.58gをシリカを用いたクロマトグラフィーにかけて、異性体A化合物583mgが得られた。融点137〜139℃。
【0051】
NMRスペクトル(CDCl3中、250MHz)
1.77(m)2H中央の2CH2
1.98(m)2H中央の2CH2
3.76(t)2H CH2−CH2−Pht
4.34(t)2H = C−N−CH2−CH2
7.23(d、J=8)H6
8.00(d、J=8)H7
8.06(s)H2
7.72(m)2H フタルイミド
7.84(m)2H フタルイミド
質量分析スペクトル
355+:MH+
418+:MNa+ + CH3CN
731+:2M+ + Na
【0052】
第二の異性体Bも単離された。融点181〜182℃。
NMRスペクトル(CDCl3中)
1.75(m)、1.93(m)中央の2CH2
3.75(t)CH2CH2Pht
【化7】

7.25(d、J=8.5)H6
7.74(d、J=8.5)H7
7.74(m)、7.85(m)4H フタルイミド
8.13(s)H2
NMRスペクトル(DMSO)
1.55(m)1.83(m)中央の2CH2
3.60(t)CH2CH2−Pht
4.32(t)C−N−CH2−CH2
7.33(d、J=8.5)H6
8.20(d、J=8.5)H7
8.55(d)H2
7.84(m)4H フタルイミド
【0053】
工程D:5−クロル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−ブタンアミン
エタノール10ミリリットル、前の工程の生成物(異性体A)0.815g及びヒドラジン水和物225マイクロリットルを含有させた懸濁液を還流する。この反応混合物を18時間加熱還流し、放置して周囲温度に戻し、次いで濾過し、エタノールですすぎ、乾固させる。目的物質799mgが得られた。
【0054】
工程E:5−クロル−1H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−1−ブタンアミン
工程Cの生成物(異性体B)355mgから出発して工程Dにおけるように操作することによって、目的物質146mgが得られた。
NMRスペクトル(CDCl3中、300MHz)
1.52及び1.99 中央のCH2
2.20 NH2
2.77(t)CH2NH2
4.30(t)CH2NC
7.25(d)H6
8.00(d)H7
8.06(s)H2
質量分析スペクトル
225+:MH+
266+:MH+ + CH3CN
154+:[MH+(CH2)4−NH2+
【0055】
製薬組成物の例
次の成分を含有する錠剤を調製した。
・例1の生成物 150mg
・賦形剤 全体を1gにするのに充分な量
(賦形剤の詳細:澱粉、タルク、ステアリン酸マグネシウム)
【0056】
本発明の化合物の薬理学的研究
液状媒体中の希釈方法
一連の試験管を用意し、それらの中に、同じ量の無菌の栄養培地を分配する。研究すべき化合物を段階的に量を変えて各試験管中に分配し、次いで各試験管に細菌の株を接種する。加熱室中で37℃において24時間インキュベートした後に、生長阻害を透視法によって評価する。この方法によって、最小阻害濃度(MIC)(μg/cm3)を決定することができる。次の結果が得られた(24時間経過後の読み取り)。
【0057】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)の化合物又はその酸付加塩:
【化1】

(ここで、XはCH2又はNH基を表わし、
nは1〜8の範囲の整数を表わし、
Yは水素又はハロゲン原子を表わし、
Rは次式:
【化2】

の基を表わし、
Zは水素原子又はアセトキシ基を表わす)。
【請求項2】
XがCH2基を表わす、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Yが水素原子を表わす、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
Yが弗素原子を表わす、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項5】
nが数4を表わす、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
11,12−ジデオキシ−3−デ[(2,6−ジデオキシ−3−C−メチル−3−O−メチル−α−L−リボヘキソピラノシル)オキシ]−6−O−メチル−3−オキソ−12,11−[オキシカルボニル−[[4−[4−(1H−インドール−3−イル)−1H−イミダゾール−1−イル]ブチル]イミノ]]エリスロマイシンである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の式(I)の化合物又はそれらの製薬上許容できる塩から成る薬剤。
【請求項8】
請求項7記載の少なくとも1種の薬剤を活性成分として含有する製薬組成物。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の化合物の製造方法であって、
次式(II):
【化3】

(ここで、Yは請求項1記載の意味と同じ意味を維持し、
Mはアセトキシ基を表わす)
の化合物に次式(III):
【化4】

(ここで、R、n及びXは請求項1記載の意味と同じ意味を維持する)
の化合物を作用させて対応する式(I)においてZがアセトキシ基を表わす化合物を得て、次いで、この化合物に、
・式(I)においてZが水素原子を表わす化合物を得ることが望まれる場合には2’位のヒドロキシル官能基を遊離させる試薬を作用させ、且つ(又は)
・塩を形成させることが望まれる場合には酸を作用させる
ことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項10】
新規の化学物質としての、請求項9記載の式(III)の化合物。
【請求項11】
nが数3を表わし且つXがCH2基を表わす、請求項10記載の式(III)の化合物。

【公開番号】特開2011−136990(P2011−136990A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273652(P2010−273652)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【分割の表示】特願2000−21454(P2000−21454)の分割
【原出願日】平成12年1月31日(2000.1.31)
【出願人】(301014948)アベンティス・ファーマ・ソシエテ・アノニム (14)
【Fターム(参考)】