説明

旋削用切削インサート

旋削インサートは、少なくとも一つのコーナ領域を有する少なくとも一つの切削面を含んでいる。コーナ領域は、30゜〜85゜の範囲内でノーズ角を規定する。コーナ領域はベベルエッジを含んでいる。ノーズ角の二等分線は、直角にベベルエッジの中間に交差する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋削用切削インサートに関し、切削インサートは少なく一つのコーナ領域で少なくとも一つの切削ジオメトリ面を備え、コーナ領域のノーズ角は0゜<α<85゜の間にある。切削インサート材料は、切り屑を排出する加工のための切削インサートが一般的に製造される種々の異なる硬質材料、例えば超硬合金、セラミックス、立方晶窒化硼素やダイヤモンド等とすることができる。
【背景技術】
【0002】
旋削加工のために使用される切削インサートの主切れ刃のアブレッシブジェット摩耗は、従来技術が種々の方法で解決しようとしている問題の一つである。一般に、より小さいセット角で、アブレッシブジェット摩耗の程度がより小さくなる。
【0003】
一例によると、四角の切削インサートが使用され、セット角は45゜に設定されている。
【0004】
他の例によると、丸い切削インサートが使用され、この場合の切込みは、一般に、切削インサートの直径の約25%に制限されている。
【0005】
また、他の例によると、相対的に大きいコーナ半径を有する切削インサートが使用され、この場合の切込みは、コーナ半径の約30%に制限されている。これは、仕上加工において適切であるが、粗加工においては、一般的に、より大きな切込みが必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、切り屑排出加工において、周知の切削インサートと比較してコーナ切れ刃の減少したアブレッシブジェット摩耗を示す旋削インサートを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、仕上加工後にフィレットに残される材料を減らすことである。
【0008】
また、本発明の目的は、切削インサートを用いた加工が、同一切れ刃を有する互いに垂直な2方向でもたらされるということである。
【0009】
本発明の少なくとも主な目的は、旋削加工のための切削インサートを用いて実現されることであり、旋削インサートは、少なくとも一つのコーナ領域を有する少なくとも一つの切削面を備える。コーナ領域は、30゜〜85゜の範囲内にあるノーズ角を規定する。コーナ領域ははす縁を含み、ノーズ角の二等分線は直角にはす縁の中間点に交差する。
【0010】
以下に、本発明による切削インサートの好ましい実施形態が、添付される図面を参照しつつ説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の図1による切削インサートは、一般にネガである。図1による切削インサートは、2つの切削面、すなわち、互いに平行で、かつ、互いから所定距離に配置されているインサートの上・下面を備えている。図1において、切削面1の一つだけが見えている。切削面1は、切削インサートがネガであるため、一般に、切削ジオメトリ面1に対して垂直に延びる4つの側面によって相互接続されている。
【0012】
さらに、図1に示される切削インサートは、切削インサートをホルダ(図示せず)の座部に固定するために、ねじ又は同種のものを受け入れるための中心孔5を有している。
【0013】
以下に、図1に示される切削ジオメトリ面と関係して配置される切削インサートの構成部分を説明する。図1において、図1で表示されていない切削面は表示されている切削面と同じように形成されているということが、指摘されるべきである。図1に示される本発明による旋削インサートの切削面1に隣接して、正反対に位置する2つのコーナ領域7が配置されている。2つのコーナ領域は、本発明の基本部分を構成する。個々のコーナ領域7は、例示されている実施形態において、一般的に、図1による切削インサートの使用において主切れ刃を構成する、直線状のベベルエッジ9又は傾斜切れ刃を備える。ベベルエッジ9に隣接して、図1による切削インサートは、一般に、二つの同じベベルエッジ9間に延びる逃げ面10を有している。個々の直線状のベベルエッジ9の内側に、チップブレーカ11が配置されている。チップブレーカ11は、本発明の技術的思想の範囲内において様々なデザインを持つことができるため、より詳細には説明されていない。
【0014】
個々の側面3は、互いに平行で、かつ、ベベルエッジ9近傍でその一端に接続する二つの長手方向の横切れ刃12を含んでいる。図1に示される実施形態において、連結は、いわゆるワイパー技術、すなわち、ベベルエッジ9と横切れ刃12の間で移行を規定し、それぞれに曲率半径を持つ円弧状のワイパー切れ刃部分13,14を介して行われる。横切れ刃12は、この実施形態で主切れ刃を構成する。
【0015】
図1に示されるように、横切れ刃12の内側に位置する部分15は、おおむねチップブレーカ11と同じデザインを有する。しかしながら、部分15は、一般的に、切り屑を停止させるいかなる作用も生じない。
【0016】
図2において、概略の平面図は、図1による切削インサートのコーナ領域7について示されている。図2によるこの概略の平面図において、コーナ領域7のノーズ角、すなわち、横切れ刃12間の角度は、二等分線Bによって二つの等しい大きな角度α/2に分けられている。図1及び2による切削インサートにおいて、α=80゜である。
【0017】
二等分線Bは、ベベルエッジ9の中間に交差する。すなわち、二等分線Bの両側に配置されたベベルエッジ9の部分が、等しい長さである。二等分線Bは、直角にベベルエッジ9に交差する。図2において、二等分線Bとベベルエッジ9の延長線の間の角度βが、90゜の値をもつという事実によって規定されている。ベベルエッジ9の長さは、Lによって示されている。
【0018】
図2において、仮想内接円iCは、鎖線によって描かれている。二つの主切れ刃に接近している内接円はコーナ領域の反対側に配置されている。内接円iCの中心は、図1の中心孔5の中心と一致し、反対側のコーナ領域7との間で中間に配置され、全部で4つの横切れ刃14に接している。
【0019】
図2を検討すると、図1に示される本発明による旋削用の切削インサートが二等分線に関して対象である。
【0020】
図3において、図1による切削インサートとコーナ半径Rを有する従来の切削インサートによる旋削における比較が示されている。問題における切込みapは、二つの切削インサートで等しく、45゜のセット角Kr1が、従来の切削インサートに関して得られるようにするならば、切込みapは約0.3×Rになるということが、はじめの説明によって指摘されている。図3に見られるように、一致する切込みapは、図1による切削インサートに関して得られており、この場合のセット角Kr2は45゜である。図3によると、本発明による旋削に関する切削インサートは、フィレットにおいて従来の切削インサートより少ない材料を残す。図1による切削インサートは、旋削に関して、ホルダ内で切削インサートの位置が変えられることなしに、互いに垂直な二つの方向で使用可能であるということが、図2及び3を検討することによって予測される。
【0021】
図4において、他の実施形態が、本発明による旋削用の切削インサートについて示されている。図4示される切削インサートは、倣い削り用であり、一般的にポジティブジオメトリを有している。したがって、図4による切削インサートは、底側支持面(図示せず)と同様の上側切削面101を有している。切削面101と支持面は、互いに平行で、かつ、互いから一定の距離だけ離れて配置されている。切削面101と支持面は、4つの側面103で相互接続されている。切削インサートはポジティブであるため、鋭角下で側面103は切削ジオメトリ面101に接続し、一方、鈍角下で側面103は支持面に接続する。二つの側面103は図4に示されている。
【0022】
さらに、図4に示される切削インサートは、中心孔105を有している。中心孔105は、ホルダ(図示せず)の座部に切削インサートを固定するためにねじや同種のものを受け入れるようになっている。
【0023】
以下に、図4に示される切削インサートの切削ジオメトリ面101と関係して配置されるコーナ領域107を説明する。正反対に配置された二つのコーナ領域107は、上述したように、本発明の基本部分を構成する。個々のコーナ領域107は、例示されている実施形態において、直線状のベベルエッジ109を備える。ベベルエッジ109は、一般的に、図4による切削インサートの使用において主切れ刃を構成する。ベベルエッジ109に隣接して、図1による切削インサートは、逃げ面110を有している。個々の直線状のベベルエッジ109の内側には、チップブレーカ111が配置されている。チップブレーカ111は、本発明の技術的思想の範囲内において様々なデザインを持つことができるため、より詳細には説明されていない。
【0024】
個々の側面103は、二つの長手方向の横切れ刃112を含んでいる。横切れ刃112は、互いに平行で、かつ、ベベルエッジ109に隣接してその端部に接続している。図4に示される実施形態において、接続は、図1に関して上述されたように、いわゆるワイパー技術を介して行われる。
【0025】
図5において、概略の平面図は、図4による切削インサートのコーナ領域107について示されている。図5による概略の平面図において、コーナ領域107のノーズ角、すなわち、両切れ刃112の角度は、二等分線Bによって二つの等しい大きい角度α/2に分けられている。図4及び5による切削インサートにおいて、α=35°である。二等分線Bは、その中心で、すなわち、二等分線Bの両側に配置されたベベルエッジ109の部分が等しい長さになる部分で、ベベルエッジ109に交差している。二等分線Bは、ベベルエッジ109に直角に交差している。図5において、二等分線Bとベベルエッジ109の延長線との間の角度βは、90°の値を持つという事実によって規定されている。ベベルエッジ109の長さは、Lによって示されている。
【0026】
図5において、内接円iCは、鎖線の輪状線に描かれている。これに関連して、内接円iCの中心Cは、図4における中心孔105の中心と一致し、4つの全ての横切れ刃112に接するということが指摘されるべきである。
【0027】
図5を検討すると、図4に示される本発明による旋削用の切削インサートは、二等分線Bに関して対称である。
【0028】
図6において、概略の平面図が、本発明による旋削用の切削インサートの他の実施形態のコーナ領域207について示されている。切削インサートは、図1による切削インサートを同じ基本的形状を有している。主として、図6によるコーナ領域207を図2によるコーナ領域7から分離するものは、ベベルエッジ209のデザインであり、図6では直線状でない。より詳細には、ベベルエッジ209は、二つの直線状部分209aと、二つの直線状部分209aに交差する湾曲した中間部分209bとを備え、直線状部分209aは図6に示される平面図において互いに平行でない。また、この場合、ノーズ角αの二等分線Bは、ベベルエッジ209の中間に直角で交差する。ベベルエッジ209の長さLは、直線でないベベルエッジ209の端部の間で、直線距離として規定されている。
【0029】
図7及び8において、概略の平面図は、本発明による旋削用の切削インサートの他の実施形態のコーナ領域について示されている。本発明の技術的思想の範囲内において、ベベルエッジは、凸状曲線切れ刃309a(図7)又は凹状曲線切れ刃309b(図8)のどちらにでもすることができる。明瞭にするため、ベベルエッジ309a,309bは誇張されている。基準線RLと、基準線RLから最も離れている個々のベベルエッジ309a,309bの点との間の距離は、5によって示されている。図6と同じように、ベベルエッジ309a,309bの長さLは、湾曲したベベルエッジ309a又は309bの端部の間の直線距離として規定されている。本発明の技術的思想の範囲内において、δ/L=0.15が最大値である。二等分線Bは、その中心で、すなわち、二等分線Bの両側に配置されるベベルエッジ309a又は309bの部分が等しい長さになる部分で、ベベルエッジ309a,309bに交差する。二等分線Bはベベルエッジ309a,309bに直角で交差する。直角は図7及び8に示されている。
【0030】
旋削用の切削インサートの上述した実施形態は、好ましくは高温材料の加工に意図されている。しかしながら、本発明の主概念は、硬質材旋削用の切削インサートに適用されることもできる。このような場合、ベベルエッジは、実質的により小さい長さとなる。
【0031】
一般に、本発明による旋削用の切削インサートにおいて、ベベルエッジ9,109,209の長さと内接円iCの直径Dとの関係には、0.01<L/D<0.45を適用する。高温材料を加工するために意図される切削インサートに関しては、より特別の関係0.1<L/D<0.45を適用する。硬質材旋削用の切削インサートに関しては、より特別の関係0.01<L/D<0.1を適用する。
【0032】
(本発明の実行可能な変形)
本発明による旋削用の切削インサートの上記実施形態は、ホルダに個々の切削インサートをクランプするための中心孔5,105を有している。しかしながら、本発明による切削インサートは、中心孔を無くすることもできる。このような場合、例えば、クランプによって保持される。この場合、図5及び6の仮想内接円iCは、図1〜7に示される実施形態において、二等分線Bによって分割されている対向するノーズ領域の中間位置で二等分線B上にその中心を位置させる。三角形インサート(図示せず)の場合、仮想内接円iCは、3つの全ての主切れ刃に接するように配置される。
【0033】
本発明による旋削用の切削インサートの上記実施形態において、ベベルエッジ9,109と接続する横切れ刃12,112との間の移行に関してワイパー技術を有している。しかしながら、ベベルエッジ9,109と接続する横切れ刃12,112との間の移行は、一定の半径によって生じるということが、本発明の技術的思想の範囲内において創造される。
【0034】
旋削用の2つの上述した切削インサートは、一般にネガである。しかしながら、本発明の概念は、ネガの切削インサートに制限されるものではなく、ポジの切削インサートに適用することもできる。
【0035】
本発明による旋削用の切削インサートの2つの上述した実施形態は、一般に、平面図において菱形形状を有する。しかしながら、本発明の技術的思想の範囲内において、切削インサートは、一般に、平面図において三角形状を有することが創造される。
【0036】
上記で指摘されたように、硬質材旋削用の切削インサートが、本発明によって形成されることもできる。しかしながら、これらの切削インサートは、主として、チップブレーカが形成されるものではないが、切れ刃の内側に位置する平面は、チップブレーカを構成してもよい。
【0037】
本発明は、好ましい実施形態に関係して説明されているが、追加、削除、変更や、特に説明されない代用が、追加クレームで定義されたように、本発明の精神と技術的思想の範囲から分離されることなしになされるということが、当業者によって認められるものと信ずる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による切削インサートの一実施形態の斜視図を示す。
【図2】図1による切削インサートのコーナの概略の平面図を示す。
【図3】本発明による切削インサートの作用コーナと従来による切削インサートの作用コーナとの間の比較を示す。
【図4】本発明に切削インサートの他の実施形態を示す。
【図5】図4による切削インサートのコーナの概略の平面図を示す。
【図6】本発明による切削インサートの他の実施形態のコーナの概略の平面図を示す。
【図7】本発明による切削インサートの更に他の実施形態のコーナの概略の平面図を示す。
【図8】本発明による切削インサートの他の実施形態の図7に類似する図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのコーナ領域を有する少なくとも一つの切削面を備え、前記コーナ領域は30゜〜85゜の範囲でノーズ角を規定する旋削インサートであって、
前記コーナ領域はベベルエッジを含み、前記ノーズ角の二等分線が直角に前記ベベルエッジの中間点に交差する旋削インサート。
【請求項2】
前記切削コーナは、前記ベベルエッジの内側に配置されたチップブレーカを含む請求項1に記載の旋削インサート。
【請求項3】
前記ノーズ角は、前記コーナ領域に関して反対側にそれぞれ配置された二つの横切れ刃によって規定され、締付ねじを受け入れるように構成されている中心貫通孔をさらに含み、前記ベベルエッジは、長さLと、前記二つの横切れ刃に内接し前記貫通孔と同心である仮想円とを規定し、前記仮想円は直径Dを規定し、L/D比が0.01から0.45の範囲にある請求項2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記ベベルエッジは直線である請求項3に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記ベベルエッジの少なくとも一部分が曲線である請求項3に記載の旋削インサート。
【請求項6】
前記ベベルエッジの両側が、少なくとも一つの弧状のワイパー切れ刃によって、個々の主切れ刃に接続している請求項3に記載の旋削インサート。
【請求項7】
個々の前記インサートに関して、前記少なくとも一つの切削面は、上面及び下面を規定する第1及び第2の略同一の切削面であり、該切削面に対して垂直方向に向けられている少なくとも3つの側面と交差している請求項3に記載の旋削インサート。
【請求項8】
前記横切れ刃は主切れ刃を構成する請求項3に記載の旋削インサート。
【請求項9】
前記少なくとも一つのコーナ領域は、互いに反対側に配置され、二等分線によって分割される第1及び第2のコーナ領域であり、前記個々のコーナ領域の反対側に配置され、それぞれのコーナ領域のベベルエッジは、長さLと、前記第1及び第2のコーナ領域の間の真ん中で、前記二等分線上に位置する中間を規定する前記第1及び第2のコーナ領域の4つ全ての横切れ刃に内接する仮想円とを規定し、前記仮想円は直径Dを規定し、L/D比が0.01から0.45の範囲にある請求項2に記載の旋削インサート。
【請求項10】
前記ベベルエッジは直線である請求項9に記載の旋削インサート。
【請求項11】
前記ベベルエッジの少なくとも一部分が曲線である請求項9に記載の旋削インサート。
【請求項12】
前記ベベルエッジの両側が、少なくとも一つの弧状のワイパー切れ刃によって、個々の主切れ刃に接続している請求項1に記載の旋削インサート。
【請求項13】
個々の前記インサートに関して、前記少なくとも一つの切削面は、上面及び下面を規定する第1及び第2の略同一の切削面であり、該切削面に対して垂直方向に向けられている少なくとも3つの側面と交差している請求項1に記載の旋削インサート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−525131(P2006−525131A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508042(P2006−508042)
【出願日】平成16年5月4日(2004.5.4)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000679
【国際公開番号】WO2004/098821
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】