説明

既設管の更新工法

【課題】断水することなく、新たな用地を必要とすることなく、既設管を更新できるようにする。
【解決手段】新管10を既設管12の外側に隙間を隔てて布設する既設管の更新工法であって、前記既設管の外径より大きい内径の新管を周方向に複数分割した形状に相当する各分割管14を用意し、前記各分割管を前記既設管の外周を被うように接合して前記新管を形成する。ここで、前記各分割管を、前記新管を2分割した形状に相当する半割管とすることができる。また、前記各分割管をそれぞれ接合する際、前記各分割管と前記既設管との間の複数箇所に、所定長さの間隔保持治具18を介在させ、両者間に均一な隙間を形成し、この隙間にモルタル20を充填することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管の更新工法に係り、特に既設管を断水することなく更新する際に適用して好適な既設管の更新工法に関する。
【背景技術】
【0002】
水道管等の既設管が古くなったため、新管に更新することが従来より行われている。
【0003】
このような既設管(旧管)を新管に取り替える更新工法として、特許文献1には、取り替えるべき古管の両端部分に、発進立坑と到達立坑を掘削し、発進立坑側から、先端に鞘管ビットを装着し、外管と内管の間に送水パイプを配設した鞘管を、前記古管の外周に覆せ、前記送水パイプ先端から圧力水を噴出させつつ、ボーリング機により前記古管にそって前記鞘管を回転・給進し、前記鞘管ビットが前記到達立坑に到達した後、前記到達立坑側から、スイベルジョイントを介して新管を順次押し込んで、前記鞘管と古管とを後退させ、発進立坑に押出された前記鞘管と古管とを回収することにより、打撃等の衝撃力によらなくとも円滑に新管を押入することができ、古管の跡位置に新管を設置することができる工法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、旧管を被覆するようにして新管を旧管の長手方向一端側からその長手方向に沿って推進せしめる管推進工程と、新管内で旧管をその長手方向に交差させて切断する旧管切断工程と、旧管の切断された部分を新管から排出する旧管排出工程とを備えることにより、非開削工法により短期かつ低コストで管の更新を行うことができ、かつ、旧管の破片を地中に残留させることがない工法が開示されている。
【0005】
また同様に、例えば特許文献3には、水道管は市街地に多く布設されていることから、近年一般的となっている非開削で行う更新工法の一つとして、PIP(パイプインパイプ)工法が開示されている。
【0006】
このPIP工法は、図1にその地中における概略を示すように、更新対象の老朽管(既設管)100の両端近傍にそれぞれ立坑102、104を形成し、一方の立坑102に対応する一方の管端から、所定長さの新管106を老朽管100の内側に挿入するとともに、他方の立坑104に設置した牽引機108により他端側へ移動させ、既に挿入してある他の新管106と軸方向端部を突き合せ、その突き合せ端部を互いに溶接して新管を布設することにより、更新を行う方法である。
【0007】
このように、PIP工法は老朽化した管を残したまま、その内側に新管を布設する工法であるため、新管は老朽管に対して口径サイズを、例えば100mm程度小さくすることにより施工が可能となるという特徴を有している。
【0008】
以上説明した前記特許文献3等に開示されているPIP工法の場合は、老朽管の内側に新管を布設するために、又、前記特許文献1、2に開示されている各更新工法の場合は、老朽管と同じ位置に新管を布設して旧管を取り除いているために、いずれの場合も断水して布設することを前提としており、通水したままの不断水状態の下で更新することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭64−49786号公報
【特許文献2】特開2002−4768号公報
【特許文献3】特開昭61−249623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、例えば幹線の中にはどうしても断水できない水道管があり、その老朽化が進んだために布設替えの対象となっているような水道管に対しては、断水することなく更新することが可能な工法が必要となる。
【0011】
なお、断水することなく更新可能な不断水工法の一つとしては、バックアップルートを形成する管路の二重化を挙げることができるが、管路の二重化には新たな用地の確保が必要となる上に、膨大なコストがかかるために現実的な工法とはいえないという別の問題がある。
【0012】
また、他の不断水工法としては、老朽管にバルブを不断水の下で設け、その両端部にこれも不断水の下でT分岐を出して仮配管を設置することにより、一時的に該仮配管に水を流しておき、その間に本管を更新する方法が考えられるが、この工法もコストが膨大にかかるという問題がある。
【0013】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、断水することなく、しかも新たな用地を必要とすることもなく、既設管を確実に更新することができる既設管の更新工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、新管を既設管の外側に隙間を隔てて布設する既設管の更新工法であって、前記既設管の外径より大きい内径の新管を周方向に複数分割した形状に相当する各分割管を用意し、前記各分割管を前記既設管の外周を被うように接合して前記新管を形成することにより、前記課題を解決したものである。
【0015】
ここで、前記各分割管としては、前記新管を2分割した形状に相当する半割管とすることができる。
【0016】
また、前記各分割管の接合を、裏当金溶接法により行うことができる。
【0017】
また、前記各分割管をそれぞれ接合する際、前記各分割管と前記既設管との間の複数箇所に、所定長さの間隔保持治具を介在させ、両者間に均一な隙間を形成することができる。
【0018】
また、前記各分割管をそれぞれ接合した後、前記既設管と前記新管との間に形成されている隙間に充填材を充填することができ、前記充填材をモルタルとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、既設管の外径より大きい内径の新管を周方向に複数分割した形状に相当する分割管を前記既設管の外周を被うように配置し、それぞれ接合して前記新管を形成するようにしたので、断水することなく、しかも新たな用地を必要とすることなく、既設管を確実に更新することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来のPIP工法の特徴を示す地中断面図
【図2】本発明に係る一実施形態のPOP(パイプアウトパイプ)更新工法の特徴を示す地中断面図
【図3】裏当金溶接法の特徴を模式的に示す拡大部分断面図
【図4】前記実施形態の更新工法の手順を示すフローチャート
【図5】前記実施形態による施工後の更生管の特徴を示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図2は、本発明に係る一実施形態である既設管のPOP更新工法の概要を示す地中断面図である。
【0023】
本実施形態の更新工法は、新管10を既設管12の外側に隙間を隔てて布設する工法である。以下に、その概要について説明する。
【0024】
先ずは、前記既設管12の外径より大きい内径(口径)の新管10を周方向に複数分割した形状に相当する分割管を製作して用意する。ここでは、分割管として2分割した半割管14を使用するが、各半割管14は予め工場で製作し、各半割管14の内面には錆止め塗装をしておく。
【0025】
次いで、前記半割管14を施工現地へ搬送し、前記図2に示したように、前記各半割管14を前記既設管12の外周を被うように、周方向及び軸方向の各端部を突き合せて配置し、各突き合せ端部をそれぞれ裏当金溶接法により接合して前記新管10を形成する。
【0026】
この裏当金溶接法は、図3にV型開先の突き合せ端部を拡大して示すように、新管10の内面に相当する半割管14の突き合せ位置に裏当金16を取り付け、外面側から開先内部を溶接する方法であり、周方向については周方向に合わせて、軸方向については軸方向に合わせて、それぞれ対応する裏当金16を内面に密着した状態で取り付けて突き合せ端部の開先溶接を行う。
【0027】
次に、図4に示したフローチャートに従って、前記更新工法を具体的に説明する。
【0028】
本実施形態では、既設管12と新管10との間に所定の隙間を形成するために、前記突き合せ端部をそれぞれ溶接する際、前記各半割管14と前記既設管12との間の複数箇所に、所定長さの間隔保持治具18を介在させ、両者間に該間隔保持治具18の長さに相当する隙間を形成する。具体的には、図2に示されているように、接触電位の発生を防止するために耐熱性樹脂等からなる非金属製の間隔保持治具18を、半割管14の溶接箇所に対応する位置以外の前記既設管12の外周面にその一端を固定して取り付ける(ステップS1)。
【0029】
その後、前に新管10が形成してあるか否かを判定し、未だ形成していない場合は(ステップS2でN)、図示しないクレーン等で吊り上げた半割管14を既設管12の下側に配置し(ステップS3)、次いで新たな半割管14を同様に移動させ、既設管12の上側に配置した後、上下半割管14の周方向2箇所の突き合せ端部をそれぞれ裏当金溶接法により接合し、図示しない最初の新管10を形成する(ステップS4)。
【0030】
次いで、更新範囲の全てについて新管10の布設が終了したか否かを判定し、終了している場合は単独新管とし(ステップS5でY)、未だ終了していない場合は(ステップS5でN)、ステップS2に戻る。この場合は既に新管10が形成されている(ステップS2でY)ために、同様にクレーン等で吊り上げた半割管14を前記既設管12の下側に移動させ、図2に示されているように既に形成されている新管10の下側半分の軸方向端部に、該半割管14の対応する軸方向端部を突き合せた後、該突き合せ端部を同様に前記裏当金溶接法により接合して下側半分の管部を形成する(ステップS6)。
【0031】
次いで、新たな半割管14を同様に移動させ、前記下側半分の管部に対応する上側半分の管部について軸方向端部と、2箇所の周方向端部とをそれぞれ突き合せて管状にした後、各突き合せ端部を同様に前記裏当金溶接法により接合して新たな新管10を連結形成する(ステップS7)。
【0032】
このように新管10を連結形成しても既設管12に更新範囲が残っている場合は(ステップS5でN)、更新範囲全体を新管10で被うまで、以上のステップS2、S6、S7の各工程を繰り返し、所定長さを単位とする新管10を順次連結する。
【0033】
その後、単独形成又は連結形成された新管10により更新範囲が終了したと判定された後(ステップS5でY)、該新管10と既設管12との間の周方向に均一に形成されている前記隙間には、図5の横断面図にイメージを示すように、モルタル20を充填して(ステップS8)、本実施形態の更新工法であるPOP工法による新管の布設を終了する。
【0034】
なお、モルタルの充填は、全ての新管10の連結後にする場合に限らず、新管1本毎にするようにしてもよい。
【0035】
以上詳述した本実施形態によれば、旧管更生の工法として既設の老朽管の外側から新管を布設するようにしたことにより、断水することなく施工をすることができる。
【0036】
また、従来のPIP工法では、老朽管の内側に新管を挿入していたが、本実施形態によれば、既設管の外側に設置できるようにしたことにより、管の通水断面を減らさずに布設することが可能となる。
【0037】
また、新管10を既設管12の外側に隙間を隔てて布設するようにしたことにより、両管の接触に起因する腐食を防止することができる。
【0038】
また、老朽管は残したままとなるが、経年劣化により該老朽管に腐食が進行して亀裂が生じたとしても、新管が外側にあるため漏水に至ることを防止できる。
【0039】
また、使用する半割管14の内面には予め錆止め塗装をしておき、溶接して新管を布設した後には隙間にモルタルを充填して、該隙間から酸素を排除するようにしたので、酸化による腐食を確実に防止することができる。
【0040】
また、既設管12と半割管14との間に間隔保持治具を介在させて溶接したことにより、既設管12と新管10との間に均一な隙間を形成することができる。
【0041】
また、施工する管材として半割管(分割管)を使用するようにしたので、予め工場で製作しておくことができる上に、現地への搬送を容易に行うことができる。
【0042】
更に、半割管の接合に裏当金溶接法を用いたので、周方向及び軸方向の溶接を外面から確実且つ容易に行うことができる。
【実施例】
【0043】
本発明による水道管の更新工法であるPOP工法を、埋設鋼管の布設に適用する好適な例を示す。
【0044】
半割管14、即ち新管10の材質は通常の軟鋼(SS400)を用いることができ、口径は老朽管より100mm大きいサイズを標準とすることができる。その際、新管(半割管)を構成する板材の板厚は、土圧や自動車荷重のような常在の最大荷重に対して十分に安全な強度を有する厚さとし、新管10と既設管12の間の隙間は間隔保持治具18等を用いて均一になるようにする。
【0045】
なお、前記実施形態では、分割管として半割管を用いる場合を説明したが、これに限定されず、溶接箇所が増えることにはなるが、例えば3分割以上した分割管を採用するようにしてもよい。
【0046】
また、分割管の接合は、前記突き合せ溶接に限らず、分割管として形成される新管の一方が他方に挿入可能な大きさの大径用と小径用の2種類を用意し、例えば軸方向の接合には大径の新管に小径の新管の先端部を挿入するように、対応する分割管を配置して接合するようにしても、あるいは同径の分割管でも一方の軸方向端部のみが拡径された新管に相当する分割管を用意し、拡径端部に同径端部を挿入するように、対応する分割管を配置して接合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…新管
12…既設管
14…半割管(分割管)
16…裏当金
18…間隔保持治具
20…モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新管を既設管の外側に隙間を隔てて布設する既設管の更新工法であって、
前記既設管の外径より大きい内径の新管を周方向に複数分割した形状に相当する各分割管を用意し、
前記各分割管を前記既設管の外周を被うように接合して前記新管を形成することを特徴とする既設管の更新工法。
【請求項2】
前記各分割管が、前記新管を2分割した形状に相当する半割管であることを特徴とする請求項1に記載の既設管の更新工法。
【請求項3】
前記各分割管の接合を、裏当金溶接法により行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の既設管の更新工法。
【請求項4】
前記各分割管をそれぞれ接合する際、前記各分割管と前記既設管との間の複数箇所に、所定長さの間隔保持治具を介在させ、両者間に均一な隙間を形成することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の既設管の更新工法。
【請求項5】
前記各分割管をそれぞれ接合した後、前記既設管と前記新管との間に形成されている隙間に充填材を充填することを特徴とする請求項1又は4に記載の既設管の更新工法。
【請求項6】
前記充填材がモルタルであることを特徴とする請求項5に記載の既設管の更新工法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−241727(P2012−241727A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109237(P2011−109237)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)