説明

既設配水管の弁部交換用ユニット

【課題】 消防用配水管等の既設配水管の弁部に不具合を生じた際に、弁部の交換作業を極めて容易に迅速に行える手段を提供する。
【解決手段】 両側通水口2a,2bに雌ねじ24a,24bを有する交換用逆止弁2と、一端側のみに雄ねじ6aを設けた一対の接続用管体6,6と、両端部間に締付けボルト72を取付けた帯状金属板からなる開環状ケーシング70の内側に環状ゴムスリーブ71が配置した一対の配管カプラ7,7と、これらの連結部全体を被包する発泡合成樹脂成型物からなる半割型の断熱材8と、断熱材8を被包状態で固定するバックル90とを備えた弁部交換用キットを用い、逆止弁2に螺合連結した各接続用管体6の他端側と、既設の水平管部10aの旧弁部を切断除去した切断端部との突き合わせ部分に配管カプラ7を跨嵌させ、締付けボルト72を緊締して開環径を縮小することにより、水平管部10aに新弁部を連通接続し、断熱材8で被包してバックル90にて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防用連結送水管、屋内外消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、消防用連結散水設備の如き各種の消防用配水管、高架水槽や受水槽の如き諸水槽の配管部等の既設配水管において、該配水管に介装された逆止弁等の弁体に不具合を生じた際の交換に用いる弁部交換用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、消防用連結送水管は、例えば図1に示すように、地上部に設けた送水口11と建物屋上等に設置する補助水槽12とを結ぶ主管10から、フロア毎や部屋毎に対応した複数の放水口13…に繋がる枝管14…が分岐しており、火災が発生した際、補助水槽12からの放水により、消防タンク車や消火栓接続による送水口11からの本格送水の開始前に、補助水槽12内の貯留水を使って消火を行えるようになっている。そして、主管10における補助水槽12に繋がる上側水平管部10aには、仕切弁1の下流側に近接して逆止弁2が介装されると共に、放水能力点検用のテスト放水口15が更に下流側に介装されている。
【0003】
なお、主管10の送水口11に繋がる下側水平管部10bには、上部側と同様の仕切弁1’及び逆止弁2’が介装されると共に、これらよりも送水口11側に排水弁16が設けてある。また、補助水槽12にはレベルスイッチ17が設けてあり、水面が設定範囲よりも高低いずれかになった際に、例えばマンションの管理室に設置した警報器18を作動させる。19は補助水槽12への水補給を行うための高架水槽であるが、水道管から直接に補助水槽12へ水補給する仕様もある。
【0004】
ところで、平成14年7月1日施行の『消防用設備点検基準等の改正(消防法第17条の3の3)』に伴い、施工後10年を経過した連結送水管については、その経過時点と以降の3年毎に、耐圧試験を実施して結果を消防署に報告することが義務づけられている。この耐圧試験では、図1に示すように水槽付き動力消防ポンプ車PCのホースHを送水口11に接続し、放水口13…を閉止し、補助水槽12側の仕切弁1は開放し(なお、使用時には上記開放状態にある)、且つ圧力計付きのテスト放水口15を開放した状態で、送水口11側の仕切弁1’を開いて該ポンプ車PCより給水し、充水点検として配管全体に水を満たして漏水等の異常の有無を調べ、異常がなければ更に圧力点検としてテスト放水口15を閉鎖して配管系に、例えば圧力計が100メガパスカルになるよう圧力をかけ、これを3分間維持し、この3分間に圧力計に変動がなければ正常であるが、圧力計の指針が減圧方向に徐々に移動すれば、漏水されていると判断し漏水箇所を調査して補修整備し、再度の通水及び圧力点検を行い、漏水なしで合格、漏水箇所が修復不能であれば不合格と判定する。なお、連結送水管の設備状況によっては、充水点検の前に配管に空気を送り込んで気密点検を行う場合がある。
【0005】
このような耐圧試験の結果、配管自体の漏水の他に、補助水槽12側の逆止弁2の不具合が見つかり、その交換を要することが往々にしてある。すなわち、一般的に連結送水管に用いる逆止弁2は、図14に示すように、水平支軸20に円板状の弁体21が揺動自在に枢支され、垂直方向に対してやや傾斜した面に沿う円環状の弁座22に、当該弁体21が常時は自重によって図示の如く密接して流路孔23を封鎖しており、図示左側の通水口2aからの水圧によって開弁する一方、図示右側の通水口2bからの水圧によって弁座22に強く押接して閉弁するものであるが、長期間放置されている内に内部の腐食や析出物の付着等を生じ、閉弁時の弁体21と弁座22が密着不良になったり、弁体21の揺動性が悪化することがある。なお、この不具合の有無は、前記耐圧試験において仕切弁1の開閉による圧力差を生じるか否かで容易に判定できる。
【0006】
しかして、逆止弁2に不具合があれば、火災発生時に高架水槽12の貯留水を使用後、仕切弁1の開放下で消防ポンプ車PC等による送水口11からの給水が始まった際、該逆止弁2での封鎖不良によって送水の一部が高架水槽12内へ逆流し、これに伴う放水圧の低下で消火作業が困難になる。従って、不具合を生じた逆止弁2は新品との交換が不可欠である。
【0007】
ところが、防用連結送水管においては、図13に示すように、仕切弁1と逆止弁2とは、両側通水口1a,1b,2a,2bに雌ねじ(図示省略…逆止弁2側は図14で符号24a,24bとして図示)を有しており、両端部に図15の如く逆ねじの雄ねじ3a,3bを設けた両ねじ短管3を介して近接して螺合連結されると共に、この連結した両端部を同様の両ねじ短管3,3を介して水平管部10aの雄ねじを設けた端部に螺合連結されている場合が多いが、両側の両ねじ短管3,3と水平管部10aとの螺合部分は長期間の内に錆びつき等で固着して離脱困難である上、これら弁1,2の連結部を含む配管全体が通常では図示仮想線で示すように発泡合成樹脂成形物からなる厚い断熱材4で覆われ、更に断熱材4の表面がステンレス鋼等よりなる保護カバー5で被覆され、仕切弁1のハンドル1cのみが外部へ露呈した状態であるため、両側の両ねじ短管3,3の正確な螺合位置を知ることも困難である。
【0008】
このため、従来においては、不具合を生じた逆止弁2を交換する際、例えば図13の一点鎖線で示す切断線C,Cのように、該逆止弁2及び仕切弁1の介装部分全体を含む両側の大まかな位置で、水平管部10aを断熱材層4及び金属製の保護カバー5ごと切断したのち、前記両側の両ねじ短管3,3に代えるものとして用意した未加工の管体を適合する長さに切り、その各々の両端部外周に雄ねじを形成して接続用管体とすると共に、切断した水平管部10aの両側の端部内周にも雌ねじを形成した上で、新品の逆止弁2と仕切弁1とを両ねじ短管3を介して連結し、その両側を前記接続用管体を介して両側の水平管部10aの端部に螺合連結し、更にこの交換部分を断熱材4及び保護カバー5で被包するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、消防用連結送水管における高架水槽下流側の逆止弁に不具合を生じて交換する際、従来では、新たに用いる接続用管体の各両端部の雄ねじと切断した配管側の両端部の雌ねじとを現場でのタッピング加工によって形成すると共に、交換部分を被包する断熱材や保護カバーについても現場で長さ調整せねばならず、もって交換作業に多大な労力と時間を費やし、また接続用管体をねじ込む上で切断した配管両端の間隔を両側の螺合代だけ拡げることになり、そのために広範囲にわたって配管の取付部分を脱着する等の煩雑な操作も必要になるという問題があった。しかも、従来にあっては、前記の点検及び耐圧試験、配管及び弁部の補修交換、断熱材や保護カバーの取付施工は各々個別に専門業者が行うのが普通であるため、補修完了までに期日を要すると共に、補修コストが高くつくという難点もあった。
【0010】
なお、このような問題は、図示のように逆止弁と仕切弁とが近接配置している場合に限らず、逆止弁が仕切弁から離れた位置にあって、不具合を生じた該逆止弁のみをその両側の配管切断によって交換する場合は無論のこと、逆止弁以外の様々な弁体の交換においても同様であり、また消防用連結送水管以外の各種の消防用配水管、更には非消防用を含む高架水槽や受水槽の如き諸水槽の配管部等、様々な既設配水管における弁部の交換を行う場合の共通課題となる。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みて、既設配水管の弁部に不具合を生じた際に、その交換作業を極めて容易に且つ迅速に行える手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、図面の参照符号を付して示せば、両側通水口2a,2bに雌ねじ24a,24bを有する交換用弁体(逆止弁2)と、一端側のみに該交換用弁体の通水口に螺入する雄ねじ6aを設けた一対の接続用管体6,6と、両端部間に締付けボルト72,72を取付けた帯状金属板からなる開環状ケーシング70の内側に環状ゴムスリーブ71が配置した一対の配管カプラ7,7と、これらの連結部全体を被包する発泡合成樹脂成型物からなる半割型の断熱材8と、この断熱材8を被包状態で固定する固定手段(バックル90)とを備え、前記交換用弁体(逆止弁2)に螺合連結した各接続用管体6の他端側と、既設配水管(水平管部10a)の旧弁部を切断除去した切断端部との突き合わせ部分に前記配管カプラ7を跨嵌させ、該配管カプラ7の締付けボルト72,72を緊締して開環径を縮小することにより、既設配水管(水平管部10a)に除去した旧弁部に替わる新弁部を連通接続し、この交換部を前記断熱材8で被包して前記固定手段(バックル90)にて固定するように構成されてなる既設配水管の弁部交換用キットとしている。
【0013】
また、請求項2の発明は、上記請求項1の弁部交換用キットにおいて、前記被包状態の断熱材8の外周を覆う半割型の硬質保護カバー9を備えてなるものとしている。
【0014】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の弁部交換用キットにおいて、前記交換用弁体が逆止弁2と仕切弁1との2個であり、両交換用弁体間1,2に介在させる両端に雄ねじ3a,3bを有する両ねじ短管3を備えてなるものとしている。
【0015】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの弁部交換用キットにおいて、前記配管カプラ7は、両側開口縁の内周側に、多数の内向き歯73a…を備えた開環状グリップリング73が配置すると共に、開環状ケーシング70の幅方向両側に配置する一対の締付けボルト72,72を有してなる構成としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係る既設配水管の弁部交換用キットによれば、既設配水管の弁体に不具合を生じた際、該弁体を両側の配管切断で除去するが、交換用弁体の両側通水口には一端側のみに雄ねじを有する接続用管体の該一端側を螺合し、この接続用管体の他端部と切断した既設配水管の各端部とは、螺合によらずに締め付け式の配管カプラを介して連結することから、従来のような交換側管体の他端部と切断した既設配管の端部に対する現場でのタッピング加工を要さず、また交換部分の連結操作において切断した配管両端の間隔を拡げる必要もないため、配管の取付部分を脱着する等の煩雑な操作が不要であり、しかも半割型の断熱材とその固定手段とがセットになっているから、不具合を生じた逆止弁を除去する際の既設配水管側の断熱材層の切断位置を本キットの断熱材の長さに合わせておくだけで、前記配管カプラによる連結に続いて径方向両側から半割型の断熱材を嵌合することによって交換部を簡単且つ迅速に被包でき、もって弁部の交換作業を非常に容易に短時間で完了できる。しかして、配管カプラの内周には環状ゴムスリーブが配置しているから、そのゴム材質が管体表面に密着することによって連結部分は確実に水密封止される。
【0017】
請求項2の発明に係る弁部交換用キットによれば、弁交換部の断熱材による被包に続いて、その外周を覆う硬質保護カバーを簡単に取り付けることができる。
【0018】
請求項3の発明に係る弁部交換用キットによれば、逆止弁と仕切弁とが両ねじ短管を介して連結した既設配水管において、該逆止弁に不具合を生じた際、該逆止弁及び仕切弁の介装部分の両側で配管を切断して介装部分全体を除去し、この除去部分に対し、交換用の逆止弁と仕切弁を同様に両ねじ短管を介して連結した状態で前記配管カプラを介して簡単に連結できる。
【0019】
請求項4の発明によれば、前記配管カプラは、両側開口縁の内周側に、多数の内向き歯を備えた開環状グリップリングが配置すると共に、開環状ケーシングの幅方向両側に配置する一対の締付けボルトを有するから、連結する両管体の各々に締付けボルトによる強い緊締力が働く上、各開環状グリップリングの内向き歯が各管体の外周面に食い込むため、両管体に対する強い抜け止め作用を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る既設配水管の弁部交換用キットの一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。この実施形態の弁部交換用キットは、既述の図1で示す消防用連結送水管に対する耐圧試験により、不具合が発見された既設の逆止弁2を隣接する仕切弁1と共に新品に交換するのに用いるものである。
【0021】
図2は既設の消防用連結送水管における水平管部10aに本実施形態の弁部交換用キットを取り付けた状態を示す。この弁部交換用キットは、仕切弁1、逆止弁2、これら両弁1,2を連結する両ねじ短管3、2本の接続用管体6,6、2個の配管カプラ7,7、発泡合成樹脂成形物からなる半割型の断熱材8、ヒンジ連結した半割型の硬質保護カバー9より構成されている。そして、仕切弁1及び逆止弁2と両ねじ短管3は、いずれも新品であるが、図7及び図13に示す既設部分の仕切弁1、逆止弁2、両ねじ短管3とそれぞれ同じ寸法形状を有している。なお、仕切弁1は、内部の図示を省略しているが、流路方向に対して垂直な面方向の遮蔽板がハンドル1cの回転操作によって昇降し、その下限位置で流路を遮断するようになっている。
【0022】
各接続用管体6は、図4に示すように、一端側の外周のみに雄ねじ6aを設けたものとなっている。しかして、2本の接続用管体6,6の雄ねじ6a,6aは互いに逆ねじであり、一方の接続用管体6は仕切弁1の通水口1aに、他方の接続用管体6は逆止弁2の通水口2bに、それぞれ雄ねじ6aを螺合して連結される。また、仕切弁1と逆止弁2とは、両者の通水口1b,2aに両端の雄ねじ3a,3bを螺合した両ねじ短管3によって連結されている。
【0023】
配管カプラ7は、図3,図5及び図6に示すように、外周側の開環状ケーシング70、内周側の環状ゴムスリーブ71、開環状ケーシング70の折り返した一端部70aに抱持された棒状ワッシャ74、同じく他端部70bに抱持された棒状ナット75、棒状ワッシャ74を貫通して棒状ナット75に螺合した幅方向両側一対の締付ボルト72,72、開環状ケーシング70と環状ゴムスリーブ71との間に配置した開環状スライド板76、両側開口部の内周側に配置した開環状グリップリング73,73、開環状スライド板76の斜め内向きに張出した傾斜側縁部76a,76aと開環状ケーシング70の内周との間に配置した断面三角形で開環状の三角リング77,77、開環状ケーシング70の内向きに突出する両側縁部70c,70cと各開環状グリップリング73の根元部との間に配置したスナップリング78,78、環状ゴムスリーブ71の内周側から入り込む左右一対の空洞部71aに配置した環状コイルスプリング79,79、より構成されている。なお、環状ゴムスリーブ71を除く各部材はいずれもステンレス鋼等の金属製である。
【0024】
しかして、各開環状グリップリング73は、開環状ケーシング70のコーナー部に位置する外周縁側を三角リング77とスナップリング78とに挟まれることにより、一定間隔置きに多数の内向き歯73aを設けた内周縁側が斜め内向きになる傾斜状態に配置している。また、開環状スライド板76は開環状ケーシング70の開環部分を塞ぐ形で配置すると共に、他の各開環状部材73,77,77も相互に開環部分が周方向にずれるように配置している。なお、開環状ケーシング70の両端部70a,70bは、折り返し端で本体側に溶接しており、それぞれ幅方向両側に締付ボルト72を挿通するための開口部70d…が形成されている。
【0025】
断熱材8は、図11に示すように、半割面を垂直として対称形状をなす一対の半割体8A,8Bより構成されている。これら半割体8A,8Bは、それぞれ発泡ポリスチロールの如き硬質の発泡合成樹脂成形物からなり、図2の如く既設の水平管部10aにおける弁部交換用の切除長さを越える全長を有し、各内面側に、連結状態における仕切弁1、逆止弁2、両ねじ短管3、2本の接続用管体6,6、2個の配管カプラ7,7に加えて、切断した水平管部10aの両側部分を含む全体の外周に対応して密接し得る形状の凹部81,81を有すると共に、両端部82,82が既設の断熱材4の断面形状に合致する半円環状(合わせて円環状)をなしている。そして、この断熱材8の両半割体8A,8Bによる径方向両側からの被包により、図2及び図12に示すように仕切弁1のハンドル1cのみが外部へ露呈するように設定されている。
【0026】
硬質保護カバー9は、ステンレス鋼板、アルミ合金板、亜鉛引き鉄板等の金属板製であり、図12に示すように、断熱材8の両半割体8A,8Bの各々外面形状に対応した内面形状を有する枠状の一対の半割体9a,9bが下端のヒンジ部9cを介して枢着連結された構造であり、半割体9a側上面のレバー金具90aと半割体9b側上面のフック金具90bとからなるバックル90の止着によって 両半割体9a,9bを接合した状態で固定できるようになっている。しかして、この硬質保護カバー9の両端部91,91は、断熱材8側の両端部82,82に対応した半円弧状をなすが、断熱材8の両端よりも少し長くなっている。
【0027】
上記構成の弁部交換用キットを使用する場合、まず図7に示すように、既設の水平管部10aにおける不具合を生じた逆止弁2と隣接する仕切弁1の介装部分を両側の切断位置C1,C1で断熱材4(図13)及び保護カバー5(図13)ごと切断して除去し、更により外側の切断位置C2,C2で既設の断熱材4(図13)と保護カバー5(図13)のみを切断除去して水平管部10aの両側部分を露呈させる。この時、切断位置C1,C1は、その間隔が弁部交換用キットの仕切弁1及び逆止弁2と両ねじ短管3及び接続用管体6,6を連結した長さよりも僅かに長くなるように設定する。また、切断位置C2,C2は、弁部交換用キットの断熱材8の長さに合わせて、その両端が既設の断熱材4の切断端面と略接するように設定する。
【0028】
次に、露呈した水平管部10aの両側部分にそれぞれ、図8の如く切断端から配管カプラ7の略1/2幅となる位置にマーキングMを施した上で、図9に示すように、各配管カプラ7を水平管部10aの切断端から突出しない状態に外嵌し、予め仕切弁1及び逆止弁2と両ねじ短管3及び接続用管体6,6を連結したものを、水平管部10aの両側の切断端間に配置させる。そして、図10に示すように、各配管カプラ7を、その外端がマーキングMに合致する位置、つまり接続用管体6と水平管部10aとの対向する管端間に均等に跨嵌する位置へスライドさせ、この位置で締付ボルト72,72を締め付ける。この締め付け操作により、配管カプラ7の開環状ケーシング70の開環径が縮小し、もって接続用管体6と水平管部10aとが連結されると共に、該配管カプラ7の内周の環状ゴムスリーブ71によって連結部分が確実に液密封止される。なお、この締め付け操作にトルクレンチを用い、所定の締付トルクに設定することで締付けの過不足を防止できる。
【0029】
かくして、配管カプラ7,7を介して新しい弁部を水平管部10aに連通接続したのち、図11に示すように径方向両側から断熱材8の両半割体8A,8Bを嵌合し、もって新しい弁部の取付部分を該断熱材8にて被包し、更に図12に示すように該被包部分に硬質保護カバー9を被せ、その両半割体9a,9bを閉じ合わせてバックル90で止着することにより、当該硬質保護カバー9と共に断熱材8も被包状態で固定されて弁部交換が完了する。そして、この弁部交換を完了した状態では、図2に示すように、弁部交換用キットの断熱材8の両端が既設の断熱材4の切断端面と略接するとと共に、硬質保護カバー9の両端部91,91が既設の保護カバー5の両端部に一部外嵌して重なっている。
【0030】
このように、本弁部交換用キットによれば、従来のような既設側と交換側(新設側)との両側の配管接続端部に対するタッピング加工が不要となり、また交換部分の連結操作において螺合代を確保するために水平管部10aの切断した端部間の間隔を拡げる必要もないから、水平管部10aの配管仕様に関係なく配管取付部分の脱着等の煩雑な操作をようらず、しかも交換部分を被包する断熱材8とその外周を覆う硬質保護カバー9もセットになり、これらを配管の連結に続いて極めて簡単に取り付けでき、もって弁部の交換作業を非常に容易に短時間で完了できる。また、該交換作業には配管施工や断熱材施工の専門技術が必要でないから、耐圧試験を担当する事業者が弁部の不具合を発見した際、当該事業者自身がこの弁部交換用キットを用いて支障なく弁交換を行うことができ、もって弁交換コスト低減と工期短縮を図り得る。
【0031】
また、本実施形態では、配管カプラ7として、両側開口縁の内周側に、多数の内向き歯73a…を備えた開環状グリップリング73が配置すると共に、開環状ケーシング70の幅方向両側に配置する一対の締付けボルト72,72を有するものを用いているから、連結する接続用管体6と水平管部10aの各々に1本の締付けボルト72が対応して強い緊締力を働かせることが可能である上、各開環状グリップリング73の内向き歯73a…の外周面への食い込みにより、接続用管体6と水平管部10aに対する強い抜け止め作用が発揮される。
【0032】
なお、上記実施形態では硬質保護カバー9のバックル91が断熱材8を被包状態に固定する固定手段になっているが、硬質保護カバー9としてバックル91のないものを使用したり、硬質保護カバー9を設けない構成においては、該固定手段として金属製や合成樹脂製の締結バンド等の種々の構造のものを適宜使用すればよい。また、断熱材8及び硬質保護カバー9については、例えば弁体部分と管体部分とで異なる複数対の半割体より構成したり、主要部用の半割体と両端部用としての筒状のものを組合せたりすることも可能であり、硬質保護カバー9の半割体が実施形態のようにヒンジ連結していない独立部材からなるものでもよい。
【0033】
更に、上記実施形態では不具合を生じた逆止弁2と共に仕切弁1についても新品に交換するようにしているが、仕切弁1が支障なく使用可能な状態にあって切り取った配管から容易に分離できるのであれば、該仕切弁1を再利用してもよいことは言うまでもない。また、仕切弁1から離れた位置にある逆止弁2を交換する場合は、弁部交換用キットとして、前記実施形態の構成から仕切弁2及び両ねじ短管3を省略した構成とすればよい。その他、逆止弁2及び仕切弁1の内部構造、配管カプラ7の細部構造等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【0034】
しかして、本発明の弁部交換用キットは、屋内外消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、消防用連結散水設備等、前記実施形態で例示した消防用連結送水管以外の各種の消防用配水管にも適用できることは無論のこと、高架水槽や受水槽の如き非消防用を含む諸水槽の配管部等にも適用可能であると共に、交換対象の弁体の種類についても特に制約はない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の弁部交換用キットを適用する既設配水管の一例である消防用連結送水管の配管構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る弁部交換用キットによる弁部交換後の既設配水管を示す縦断側面図である。
【図3】同弁部交換用キットの配管カプラの斜視図である。
【図4】同弁部交換用キットの接続用管体の半断面側面図である。
【図5】前記配管カプラによる管体連結部を示す縦断側面図である。
【図6】同配管カプラの要部の正面図である。
【図7】同弁部交換用キットによる弁部交換を行う既設送水管の切断位置を示す縦断側面図である。
【図8】同弁部交換における切断後の既設送水管に対する配管カプラの嵌装操作を示す縦断側面図である。
【図9】同弁部交換における配管カプラ嵌装後の交換用弁体連結部分の配置操作を示す縦断側面図である。
【図10】同弁部交換における配管カプラによる配管連結状態を示す縦断側面図である。
【図11】同弁部交換における断熱材の嵌合操作を示す縦断正面図である。
【図12】同弁部交換における硬質保護カバーの取付け操作を示す縦断正面図である。
【図13】弁部交換前の既設配水管を示す縦断側面図である。
【図14】同既設配水管に介装された逆止弁の要部破断側面図である。
【図15】同既設配水管に介装された両ねじ短管の半断面側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 仕切弁
1a,1b 通水口
2 逆止弁
2a,2b 通水口
3 両ねじ短管
3a 雄ねじ
4 断熱材層
5 保護カバー
6 接続用管体
6a 雄ねじ
7 配管カプラ
70 開環状ケーシング
71 環状ゴムスリーブ
72 締付ボルト
73 開環状グリップリング73
73a 内向き歯
8 断熱材
8A,8B 半割体
9 硬質保護カバー
9a,9b 半割体
90 バックル(固定手段)
10 主管(既設配水管)
10a 水平管部(既設配水管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側通水口に雌ねじを有する交換用弁体と、一端側のみに該交換用弁体の通水口に螺入する雄ねじを設けた一対の接続用管体と、両端部間に締付けボルトを取付けた帯状金属板からなる開環状ケーシングの内側に環状ゴムスリーブが配置した一対の配管カプラと、これらの連結部全体を被包する発泡合成樹脂成型物からなる半割型の断熱材と、この断熱材を被包状態で固定する固定手段とを備え、
前記交換用弁体に螺合連結した各接続用管体の他端側と、既設配水管の旧弁部を切断除去した切断端部との突き合わせ部分に前記配管カプラを跨嵌させ、該配管カプラの締付けボルトを緊締して開環径を縮小することにより、既設配水管に除去した旧弁部に替わる新弁部を連通接続し、この交換部を前記断熱材で被包して前記固定手段にて固定するように構成されてなる既設配水管の弁部交換用キット。
【請求項2】
前記被包状態の断熱材の外周を覆う半割型の硬質保護カバーを備えてなる請求項1記載の既設配水管の弁部交換用キット。
【請求項3】
前記交換用弁体が逆止弁と仕切弁との2個であり、両交換用弁体間に介在させる両端に雄ねじを有する両ねじ短管を備えてなる請求項1又は2に記載の既設配水管の弁部交換用キット。
【請求項4】
前記配管カプラは、両側開口縁の内周側に、多数の内向き歯を備えた開環状グリップリングが配置すると共に、開環状ケーシングの幅方向両側に配置する一対の締付けボルトを有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の既設配水管の弁部交換用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−193910(P2006−193910A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4090(P2005−4090)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(505013701)有限会社放水社 (1)
【Fターム(参考)】