昆虫を防除するための組成物及び方法
【課題】昆虫などの無脊椎動物に選択性があり、脊椎動物、例えば哺乳動物、魚、家禽及びその他の種にほとんど又は全く毒性をもたず且つ環境に残留しない及び害を与えない昆虫防除用組成物を提供する。
【解決手段】昆虫の防除に関連した組成物、方法及び細胞からなる。組成物の実施態様は、植物精油からなり、チラミン受容体、Or83b嗅覚受容体、及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される昆虫の少なくとも1つの受容体を標的とし、昆虫内のcAMP、Ca2+又はその両方の細胞内濃度の変化をもたらす。
【解決手段】昆虫の防除に関連した組成物、方法及び細胞からなる。組成物の実施態様は、植物精油からなり、チラミン受容体、Or83b嗅覚受容体、及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される昆虫の少なくとも1つの受容体を標的とし、昆虫内のcAMP、Ca2+又はその両方の細胞内濃度の変化をもたらす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年4月24日付け出願の米国仮出願第60/465,320号、及び2003年12月24日付け出願の米国仮出願第60/532,503号の優先権を主張する。これらの出願は共に、その全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、昆虫を防除するための組成物、方法、細胞系及びレポート(report)に関する。
【背景技術】
【0003】
動物は、多数の一連の環境刺激を認識し、行動反応を生じる化学感覚系や機械感覚系を有する。行動学的研究は、これらの系の遺伝学を理解するために行われている。嗅覚系は、昆虫を含め、種の生存及び維持において役割を果たす。
【0004】
ショウジョウバエは、分子技術を使用する突然変異分析、行動分析、及び電気生理学的分析を受けることができ、そしてその嗅覚系が哺乳動物の嗅覚系に匹敵することから、感覚系を研究するためのモデルの一つである。
【0005】
種々の化学薬品及び混合物が、長年の間、昆虫などの無脊椎動物に選択性があり、脊椎動物、例えば哺乳動物、魚、家禽及びその他の種にほとんど又は全く毒性をもたず且つ環境に残留しない及び害を与えない製品を得ることを目的として、殺虫活性について研究されている。
【0006】
また、有用な十分な殺虫活性を有する従来公知の製品及び商品化されている製品の大部分は、製品の標的でない哺乳動物、魚、家禽又はその他の種に対して有毒又は有害な影響を及ぼす。例えば、有機リン化合物及びカルバメート類は、昆虫及び全ての分類の動物においてアセチルコリンエステラーゼの活性を阻害する。クロルジメホルム及び関連ホルムアニリド類は、昆虫のオクトパミン受容体に作用することが知られているが、脊椎動物における心臓毒の可能性及び動物における発癌性及び種々の昆虫に対する多様な影響のために、市場から排除されてきている。哺乳動物及びその他の標的としないに対して低毒性であり得る別の化合物は、確認する(identify)ことが困難な場合が多い。
【発明の開示】
【0007】
発明の要約
本発明は、昆虫防除用組成物及び及びこれらの組成物の使用方法を含む。本発明は、1種又はそれ以上の植物精油を含有してなる昆虫防除用組成物及びれらの組成物の使用方法を含む。植物精油は、併用すると、相乗効果を有し得る。前記の組成物は、不揮発性で香りのない植物油である不揮発性油を含有し得る。さらに、これらの組成物は、安全であると一般的にみなされる(GRAS)化合物から構成され得ると考えられる。
【0008】
本発明は、1種又はそれ以上の植物精油と昆虫防除剤を含有してなる組成物及びこれらの組成物の使用方法を含む。昆虫防除剤の例としては、DEET及びD-アレスリンが挙げられる。植物精油と昆虫防除剤は、併用すると、相乗効果を有し得る。例えば、DEET29%の昆虫防除活性は、本発明の組み合わせに含有させた場合にはDEET5%を用いて達成し得る。
【0009】
本発明は、昆虫防除活性について化合物を選別する方法を含む。本発明は、チラミン受容体(TyrR)、Or83b嗅覚受容体(Or83b)又はOr43a嗅覚受容体が安定的に移入された細胞系であって昆虫防除活性について組成物を選別するのに使用し得る細胞系を含む。
【0010】
本発明は、昆虫防除活性を有する1種又はそれ以上の組成物を同定するレポートを作成する方法を含む。“レポート”という用語は、印刷文書、データベース、コンピューター装置、又はその他の媒体に含まれる記述又は記載をいう。
【0011】
簡略化のために、“昆虫”という用語を本出願の明細書全体を通じて使用する;しかし、“昆虫”という用語は、昆虫ばかりではなく、クモ形動物、幼虫、及び同様の無脊椎動物も示す。また、本出願のために、“昆虫防除”という用語は、忌避効果、殺虫効果又はこの両方を有することを示す。“忌避効果”とは、昆虫防除用組成物で処理されていない対照の宿主又は領域よりも昆虫防除用組成物で処理されている宿主又は領域から多くの昆虫が忌避される効果である。幾つかの実施態様では、忌避効果とは、昆虫防除用組成物で処理された宿主又は領域から昆虫の少なくとも約75%が忌避される効果である。幾つかの実施態様では、忌避効果とは、昆虫防除用組成物で処理された宿主又は領域から昆虫の少なくとも約90%が忌避される効果である。“殺虫効果”とは、昆虫防除用組成物による処理が昆虫の少なくとも約1%を死に至らしめる効果である。この点で、昆虫防除用組成物のLC1〜LC100(致死濃度)又はLD1〜LD100(致死量)が殺虫効果を生じる。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約10%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約5%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約10%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約25%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約50%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約75%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約90%を死に至らしめる効果である。本発明の幾つかの実施態様では、このような濃度又は用量を用いた処理は、数秒以内又は数分以内に生じる昆虫のノックダウンをもたらすであろう。
【0012】
本発明の組成物は、宿主を直接に処理するか、又は宿主が存在する領域、例えば屋内居住空間、屋外の中庭又は庭園を処理することによって昆虫を防除するのに使用し得る。本出願の目的ために、宿主は、植物、ヒト又はその他の動物と定義される。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、昆虫防除に関する組成物、方法、細胞系及びレポートに関する。昆虫防除は、チラミン受容体(TyrR)、Or83b嗅覚受容体(Or83b)、及びOr43a嗅覚受容体(Or43a)からなる1種又はそれ以上の受容体に関するものであり得る。
【0014】
本発明は、昆虫防除活性について組成物を選別する方法を含む。本発明は、TyrR、Or43a、又はOr83bを安定的に移入されたショウジョウバエのシュナイダー(Schneider)細胞系であって、昆虫防除活性について組成物を選別するのに使用し得る細胞系を含む。TyrRの核酸配列及びペプチド配列は、図31A及び31Bに示す。Or43aの核酸配列及びペプチド配列は、図32A及び32Bに示す。Or83bの核酸配列及びペプチド配列は、図3A及び33Bに示す。
【0015】
昆虫防除活性の可能性は、TyrR、Or83b、及び/又はOr43aを発現する細胞系で受容体に対する試験組成物の親和性を測定することによって確認し得る。また、昆虫防除活性についての可能性は、試験組成物を用いて処理した後にTyrR、Or83b及び/又はOr43aを発現する細胞系の細胞内cAMP及び/又はCa2+の変化を測定することによって確認し得る。TyrR受容体、Or83b受容体及びOr43a受容体の遺伝子配列は、種々の昆虫種の間で実質的に類似性を有する。このように、これらの受容体を発現するショウジョウバエのシュナイダー細胞系は、種々の昆虫種において昆虫防除活性を有する組成物を選別するのに使用し得る。
【0016】
本発明は、昆虫防除用組成物及びこれらの組成物の使用方法を含む。本発明は、1種又はそれ以上の植物精油を含有してなる昆虫防除用組成物及びこれらの組成物の使用方法を含む。植物精油は、併用された場合には、相乗効果を有し得る。本発明の組成物は、下記の油又はその混合物を含有し得る:
t-アネトール ライム油 ピペロニル
ブラックシードオイル(BSO) d-リモネン 酢酸ペロニル
カンフェン アントラニル酸リナリル ピペロニルアルコール
カルバクロール リナロール ピペロニルアミン
d-カルボン リンデノール キノン
l-カルボン クエン酸メチル サビネン
1,8-シネオール ジヒドロジャスモン酸メチル α-テルピネン
p-シメン ミルセン テルピネン900
フタル酸ジエチル ペリリルアルコール α-テルピネオール
オイゲノール フェニルアセトアルデヒド γ-テルピネオール
ゲラニオール α-ピネン 2-tert-ブチル-p-キノン
クエン酸イソプロピル β-ピネン α-ツヨン
レモングラス油 ピペロナール タイム油
ライラックフラワー油(LFO) チモール
【0017】
また、本発明の組成物は、下記の油又はその混合物を含有し得る:
硫化アリル β-エレメン サリチル酸メンチル
三硫化アリル γ-エレメン ミルテナール
二硫化アリル エレモール 酢酸ネラールジメチル
アネトール エストラゴール ネロリドール
アルテミシアルコール酢酸エステル 2-エチル-2-ヘキセン-1-オール ノナノン
酢酸ベンジル 酢酸オイゲノール 1-オクタノール
ベンジルアルコール α-ファルネセン E オシメノン
ベルガモテン (Z,E)-α-ファルネセン Z オシメノン
β-ビサボレン E-β-ファルネセン 3-オクタノン
ビサボレンオキシド フェンチョン オシメン
α-ビサボロール フランジエン フラノ- 酢酸オクチル
オイデスマ-1,3-ジエン
ビサボロールオキシド ハッカ油
ビサボロールオキシドβ フラノオイデスマ-1,4-ジエン α-フェランドレン
酢酸ボルニル フラノゲルマクラ-1,10(15)- β-フェランドレン
ジエン-6-オン
β-ブルボレン ピペロナール
α-カジノール フラノセスキテルペン プレナール
カンフェン ゲラニオール プレゴン
α-カンホレン 酢酸ゲラニル サビネン
α-カンホレンアルデヒド ゲルマクレンD 酢酸サビニル
カンファー ゲルマクレンB α-サンタレン
カリオフィレンオキシド α-グルユネン サンタロール
カマアズレン α-フムレン Sativen
シンナムアルデヒド α-ヨネン 5-セリネン
シス-ベルベノール β-ヨネン β-セスキフェンランドレン
シトラールA イソボルネオール スパツレノール
シトラールB イソフラノゲルマクレン タゲトン
シトロネラール イソメントン α-テルピネン
シトロネロール イソプレゴン 4-テルピネオール
酢酸シトロネリル ジャスモン α-テルピノレン
ギ酸シトロネリル ライラックフラワー油 酢酸α-テルピニル
α-コパエン リモネン α-ツエン
コーンミント油 リナロール チミルメチルエーテル
β-コストール 酢酸リナリル トランス-カリオフィレン
クリプトン リンデストレン トランス-ピノカルベオール
クルゼレノン メチル-アリル-トリスルフィド トランス-ベルベノール
d-カルボン メントール ベルベノン
l-カルボン 2-メトキシフラノヂエン ヨモギアルコール
Davanone メントン ジンギベレン
ジアリルテトラスルフィド 酢酸メンチル ジヒドロタゲントン
ジヒドロピロクルゼレノン 桂皮酸メチル
【0018】
2種以上の油を含有するこれらの組成物において、それぞれの油は、組成物混合物の重量で約1%〜約99%を構成し得る。例えば、本発明の一つの組成物は、チモール約1%と ゲラニオール約99%を含有する。場合によっては、組成物は、さらに不揮発性の香りのない植物油である不揮発性油を含有していてもよい。例えば、組成物は下記の1種又はそれ以上の不揮発性油を含有することができる:
ヒマシ油 鉱油 サフラワー油
トウモロコシ油 オリーブ油 ゴマ油
クミン油 落花生油 ダイズ油
【0019】
例えば、本発明の一つの組成物は、チモール約1%と、ゲラニオール約50%と、鉱油約49%を含有する。さらに、これらの組成物は、安全であると一般的にみなされる(GRAS)化合物、例えば:タイム油、ゲラニオール、レモングラス油、ライラックフラワー油、ブラックシードオイル、ライム油、オイゲノール、ヒマシ油、鉱油、及びサフラワー油から構成され得ると考えられる。
【0020】
本発明は、1種又はそれ以上の植物精油と昆虫防除剤、例えばDEET及びD-アレスリンを含有してなる組成物、及びこれらの組成物の使用方法を含む。植物精油と昆虫防除剤は、併用すると、相乗効果を有し得る。例えば、DEET29%の昆虫防除活性は、本発明の組み合わせに含有させた場合にはDEET5%を用いて達成し得る。
【0021】
本発明の組成物は、適当な担体及び場合によっては適当な界面活性剤、2種以上の植物精油化合物及び/又はこれらの誘導体(天然物及び/又は合成物)、例えばラセミ混合物、鏡像異性体、ジアステレオマー、水和物、塩、溶媒和物及び代謝産物などとの混合物で含有し得る。
【0022】
適当な担体としては、担体が本発明の組成物に悪影響を及ぼさない限りは、当該技術において植物精油について知られている担体を挙げ得る。本明細書で使用する“担体”という用語は、無機物又は有機物であってもよいし及び合成又は天然起源のものであってもよい不活性又は液状の物質を意味し、処理すべき容器又はカートンあるいはその他の対象物に対するその適用あるいはその貯蔵、輸送及び/又は取り扱いを容易にするために活性化合物と混合されるか又は配合される。一般的に、忌避剤、殺虫剤、除草剤又は殺菌剤を製剤するのに慣用される物質が適当である。本発明の組成物は、単独で用いてもよいし、又は必要ならばこのような固形及び/又は液状分散性担体ビヒクル及び/又はその他の公知の適合性活性剤、例えばその他の忌避剤、殺虫剤、又は殺ダニ剤、殺線虫剤、殺菌剤、殺細菌剤、殺鼠剤、除草剤、肥料、成長調節剤などとの混合物の形で用いてもよいし、あるいはこれらから調製される特定の用途の個々の投薬製剤の形、例えば使用できる状態である溶液、乳剤、懸濁剤、粉剤、ペースト剤、及び粒剤の形で用いてもよい。本発明の組成物は、所望ならば、慣用の不活性農薬希釈剤又は慣用の昆虫防除剤に使用できる種類の増量剤、例えば慣用の分散性担体ビヒクル、例えばガス、溶液、乳濁液、懸濁液、乳剤、噴霧粉末、ペースト、水溶剤、粉剤、粒剤、フォーム、ペースト剤、錠剤、エアゾール、活性化合物含浸天然及び合成物質、微細カプセル、種子に使用される被覆組成物、及び燃焼装置を用いて使用される製剤、例えば燻蒸用カートリッジ、燻蒸缶及び燻蒸用コイル、並びにULV冷ミスト及び加熱ミスト製剤などと配合又は混合することができる。
【0023】
本発明の組成物はまた、界面活性剤を含有していてもよい。本発明で使用し得る界面活性剤、すなわち慣用の担体ビヒクル助剤の例は、乳化剤、例えば非イオン性及び/又は陰イオン性の乳化剤(例えば、脂肪酸のポリエチレンオキシドエステル、脂肪アルコールのポリエチレンオキシドエーテル、アルキル硫酸塩、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルブミン加水分解物など、特にアルキルアリールポリグリコールエーテル、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウムなど);及び/又は分散剤、例えばリグニン、亜硫酸パルプ廃液、メチルセルロースなどからなる。
【0024】
本発明の組成物は、宿主を直接に処理するか、又は宿主が存在するであろう領域を処理することによって昆虫防除に使用し得る。例えば、宿主は、クリーム又は噴霧製剤を使用することによって直接に処理し得、例えばヒトの皮膚に外面施用又は局所使用し得る。組成物は、宿主に、例えばヒトの場合には、皮膚又は毛髪に使用される種々のパーソナル製品又は化粧品の製剤を使用して施用することができる。例えば、香料、着色剤、顔料、染料、オーデコロン、皮膚クリーム、皮膚ローション、デオドラント、タルク、バスオイル、石鹸、シャンプー、ヘアーコンディショナー及び整髪剤を使用できる。
【0025】
動物、ヒト又はヒト以外の動物の場合には、宿主はまた、経口的に送達される組成物の製剤を使用することによって直接に処理し得る。例えば、組成物は、液状カプセルに封入することができるし、口から取り込ませることができる。
【0026】
ある領域は、本発明の組成物を用いて、例えば、該組成物を含有する噴霧製剤、例えばエアゾール又はポンプスプレー、あるいは燃焼製剤、例えばキャンドル又は芳香片を使用することによって処理し得る。勿論、種々の処理法が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく使用し得る。例えば、組成物は、家庭用品、例えば: 芳香剤(例えば、加熱、例えば電気加熱されるか又は燃焼によって昆虫忌避物質を放出する“加熱”芳香剤);塗装面クリナー;又は洗濯用品(例えば、洗濯用洗浄剤含有組成物、コンディショナー)に含有させ得る。
【実施例】
【0027】
本発明を、以下の具体的実施例であって限定されない実施例によりさらに例証する。以下の実施例は、実施例に示した及び含まれる数値、結果及び/又はデータにもかかわらず予言的なものである。実施例1〜5は、チラミン受容体(TyrR)を発現する細胞系の調製及びこの細胞系を使用する本発明の組成物の選別に関する。実施例6〜11は、Or83b受容体を発現する細胞系の調製、Or43a受容体を発現する細胞系の調製、及びこれらの細胞系を使用する前記組成物の選別に関する。実施例12〜34は、本発明の組成物の忌避効果及び/又は殺虫効果の測定に関する。
【0028】
実施例1
チラミン受容体(TvrR)を安定的に移入したシュナイダー細胞系の調製
A.キイロショウジョウバエのチラミン受容体のPCR増幅及びサブクローニング
バークレー・ショウジョウバエゲノムプロジェクトを通じて得られるキイロショウジョウバエ(Drosophilia melanogaster)の頭部のcDNAファージライブラリーGHから、チラミン受容体を増幅させた(Baumann, A., 1999, Drosophilia melanogaster mRNA for octopamine receptor, splice varinat 1B NCBI direct submission, Accession AJ007617)。TyrRの核酸配列及びペプチド配列を、図31A及び31Bに示す。このライブラリーから液体培養溶菌液を使用して、ファージDNAを精製した(Baxter, et al., 1999, Insect Biochem Mol Biol 29, 461-467)。手短に言えば、ショウジョウバエのチラミン受容体(TyrR)の読み取り枠を増幅させるのに使用するオリゴヌクレオチド(Han, et al., 1998, J Neurosci 18, 3650-3658; von Nickisch-Rosenegk, et al., 1996. Insect Biochem Mol Biol 26, 817-827) は、5´オリゴヌクレオチド:
及び3´オリゴヌクレオチド:
からなる。大文字はチラミン受容体配列に一致する。付加されたKozak配列〔Grosmaitre, X., Jacquin-Joly, E., 2001 Mamestra brassicae putative octopamine receptor (OAR) mRNA, complete cds. NCBI direct submission, Accession AF43878)〕は、下線を引いたヌクレオチドによって示される。5´オリゴヌクレオチドはまた、EcoRI部位を含有し、また3´オリゴヌクレオチドXbaI部位も含有する。PCRを、Ventポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用し、次の条件を用いて行った:約95℃、約5分を約1サイクル;約95℃、約30秒;及び約70℃、約90秒間を約40サイクル;及び約70℃、約10分間を約1サイクル。
【0029】
PCR生成物をEcoRI及びXbaIで消化し、pCDNA3 (Invitrogen)中にサブクローン化し、そして自動DNA配列決定装置(Vanderbilt Cancer Center)で両方の鎖を配列決定した。この読み取り枠をタンパク質に翻訳すると、公表されたチラミン受容体配列(Saudou, et al., The EMBO Journal vol 9 no 1, 6-617)と正確に一致することが認められた。ショウジョウバエのシュナイダー細胞中で発現させるために、TyrR ORFをpCDNA3から切り取り、EcoRI及びXbaI制限部位を使用してpAC5.1/V5-His(B)[pAc5(B)]に挿入した。
【0030】
トランスフェクションについては、Invitrogen Drosophilia Expression System (DBS)マニュアルに記載のリン酸カルシウム-DNA共沈プロトコールを使用して、ショウジョウバエのシュナイダー細胞に、pAc5(B)-TyrR ORFを安定的に移入した。共沈プロトコールは、安定したトランスフェクションのために抗生物質抵抗性プラスミドを使用した以外は、過渡的トランスフェクション又は安定したトランスフェクションについて同じである。安定的に移入された細胞の少なくとも約10個のクローンを選択し、別々に増殖させた。前記受容体を発現する安定なクローンを、3H-チラミンを使用して全細胞結合/取り込みによって選択した。このアッセイについては、細胞を洗浄し、昆虫食塩水(insect saline)(170mM NaCl、6mM KCl、2mM NaHCO3 、17mMグルコース、6mM NaH2PO4 、2mM CaCl2 及び4mM MgCl2)に回収した。昆虫食塩水約1mL中の約3百万個の細胞を、4nM 3H-チラミンと共に約23℃で約5分間インキュベートした。細胞を約30秒間遠心分離し、得られた結合溶液を吸引した。得られた細胞ペレットを、昆虫食塩水約500μlで洗浄し、細胞を再懸濁し、そしてシンチレーション液に移した。非特異的結合を、反応において約50μM非標識チラミンを含有させることによって測定した。結合は、液体シンチレーションβ-カウンター(Beckman、Model LS 1801)を使用して放射能をカウントすることによって定量した。
【0031】
B.高濃度の機能的に活性なチラミン受容体タンパク質を有するクローンの選別
チラミン受容体の結合/取り込みを行い、移入されたクローンの中のどのクローンが高濃度の機能的に活性なチラミン受容体タンパク質を有するかについて調べた。チラミン受容体について約10個のクローン系が存在し及び対照について約2個のpAc(B)が存在する。約50pM非標識チラミンを特異競合剤として存在させるか又は存在させずに、3H-チラミン(約4nM/反応)をトレーサーとして使用する。このアッセイについては、細胞をプレート中で増殖させ、カウントする細胞用の培地約3ml中に回収し、そして細胞の個数を細胞約3×106個/mlに調節した。約2個のpAcBクローンを同時に対照として使用した。反応当たりにつき約1mlの細胞懸濁液を使用した。特異結合に基づいて、約3個のクローンが高濃度の活性チラミン受容体タンパク質を発現した。最も特異性の高いチラミン受容体結合(約90%)を有するクローンを、別の研究用に選択した。選択したクローンを増殖させ、液体窒素中で保存した。選択したクローンのアリコートを、全細胞結合及び速度論研究及び選別研究用の形質膜調製用に増殖させた。対照pAcBは、チラミン受容体について特異的結合を実証しなかった。
【0032】
C.チラミン受容体の相互作用について組成物を選別するためのチラミン受容体を移入したシュナイダー細胞の効果
チラミン受容体(約1×106細胞/ml)を移入した細胞を、マルチウエルプレートの各ウエルで培養した。細胞を塗布した約24時間後に、培地を回収し、約1mlの昆虫食塩水(約23℃)と交換した。種々の濃度の3H-チラミン(約0.1〜10nM)を、約10μMの非標識チラミンと共に及び非標識チラミン無しで加え、室温(RT)でインキュベートした。約20分のインキュベーションの後に、反応を食塩水の迅速吸引によって停止させ、約2mlの昆虫食塩水(約23℃)で少なくとも1回洗浄した。細胞を、0.3M NaOH約300μlにRTで約20分間可溶化させた。溶解した細胞を、約4mlの液体シンチレーション溶液(LSS)に移し、約30秒間激しく攪拌し、その後に液体シンチレーションβ-カウンター(Beckman、Model LS1801) (LSC)を使用して放射能をカウントした。
【0033】
図1に関して、受容体特異的結合データは、細胞1×106個当たりのfmol特異結合として表し、3H-チラミン濃度の関数として測定した。特異結合の値は、約10μMの非標識チラミンの不存在下の値と存在下の値の間の差として算出した。図1に示すように、最大特異結合が約5nM 3H-チラミンで生じた。非移入細胞は、約100μMほどの高い濃度ではチラミンに反応しなかった。
【0034】
pAcB-TyrRを安定的に移入した細胞におけるチラミン受容体の速度論を研究するために、前記移入細胞から粗膜画分を調製し、平衡解離定数(Kd)、最大結合能(Bmax)、平衡阻害剤解離定数(Ki)及びEC50(結合が50%阻害される有効濃度)を算出するのに使用した。受容体結合活性について膜タンパク質の最適濃度を調べるための予備研究を行った。この研究において、種々の濃度のタンパク質(約10〜50μg/反応)を、約1mlの結合緩衝液(50mM Tris、pH7.4、5mM MgCl2及び2mMアスコルビン酸)中でインキュベートした。約5nMの3H-チラミンを、約10μM非標識チラミンと共に及び非標識チラミン無しで加えることによって、反応を開始させた。室温で約1時間インキュベートした後に、予め約0.3%ポリエチレンイミン(PEI)に浸しておいたGF/Cフィルター(VWR)に通して濾過することによって反応を停止させた。このフィルターを約4mlの氷冷Tris緩衝液で1回洗浄し、風乾し、その後にLSCを使用して残留放射能を測定した。結合データを、曲線の当てはめ(GraphPad software、Prism)により分析した。データは、チラミン受容体特異結合において約10、20、30及び50μgタンパク質/反応の間で差がないことを実証している。従って、約10μgタンパク質/反応を使用した。
【0035】
TyrRを発現する膜のチラミン受容体(TyrR)についてBmax値及びKd値を測定するために、飽和結合実験を行った。手短に言えば、約10μgのタンパク質を、一連の濃度(約0.2〜20nM)の3H-チラミンと共にインキュベートした。結合データを、曲線の当てはめ (GraphPad software、Prism)により分析し、チラミン受容体に対するチラミン結合のKdを測定した。
【0036】
TyrRに対する数種のリガンドの親和性を調べるために、数種の化合物の濃度を高めながら、約2nM 3H-チラミンの結合を阻害する能力について試験した。飽和アッセイ及び阻害アッセイについては、全結合及び非特異結合を、約10μMの非標識チラミンの不存在下及び存在下でそれぞれで測定した。受容体結合反応物を、制限された光の中で、室温(RT)で約1時間インキュベートした。反応は、予め約0.3%ポリエチレンイミン(PEI)に浸しておいたGF/Cフィルター(VWR)で濾過することによって反応を停止させた。このフィルターを約4mlの氷冷Tris緩衝液で1回洗浄し、風乾し、その後にLSCを使用して残留放射能を測定した。結合データを、曲線の当てはめ(GraphPad software、Prism)により分析した。
【0037】
図2に関して、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミン(3H-TA)の飽和結合曲線を描くと、3H-チラミンは、pAcB-TyrRが安定的に移入された細胞中でチラミン受容体に対して高い親和性を有し、Kdは約1.257nMと測定され且つBmaxは約0.679 pmol/mgタンパク質と測定された。
【0038】
図3に関して、種々の濃度の非標識チラミン(TA)の存在下及び不存在下でチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミン(3H-TA)の阻害結合曲線を描くと、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のチラミン受容体に対するチラミンのEC50及びKiは、それぞれ約0.331μM及び0.127μMであった。
【0039】
チラミン受容体(TyrR)の薬理学的プロフィールを調べるために、多数の推定されるショウジョウバエ神経伝達物質についてチラミン受容体を発現する膜から3H-チラミン(3H-TA)結合を置換する能力を試験した。図4に関して、種々の濃度の非標識リガンド〔例えば、チラミン(TA)、オクトパミン(OA)、ドーパミン(DA)及びセロトニン(SE)〕の存在下及び不存在下でチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミン(3H-TA)の阻害結合曲線を描くと、チラミンは、ショウジョウバエTyrRについて最も高い親和性(約0.127μMのKi 、約0.305μMのEC50)を示した、オクトパミン、ドーパミン及びセロトニンは、置換3H-チラミン結合の置換においてチラミンよりも効果が劣った。
【0040】
表Aに関して、リガンドのKi及びEC50 を挙げると、有効性の順序は、次の通り:チラミン>オクトパミン>ドーパミン>セロトニンであり、安定的に移入されたシュナイダー細胞が機能的に活性なチラミン受容体を発現している可能性を示す。
【0041】
このように、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞は、チラミン受容体と相互作用する組成物の研究及び選別用モデルとして有効である。
【0042】
実施例2
チラミン受容体を発現する細胞の処理及び細胞内[cAMP]に対する組成物の効果
細胞をシャーレで増殖させ、培地を処理前日に変えた。細胞が約95%融合した際に、培地を吸引し、細胞を約27℃の昆虫食塩水(170mM NaCl、6.0mM KCl、2.0mM NaHCO3 、17.0 mMグルコース、6.0mM NaH2PO4 、2.0mM CaCl2 、4.0mM MgCl2;pH7.0)約5mLで1回洗浄した。昆虫食塩水約20mLを加え、細胞を穏やかに擦り取ることによって回収した。細胞のアリコートを血球計でカウントし、次いで細胞を約5分間、約1000RPMで遠心分離した。細胞を再懸濁してmL当たり細胞約3×106個を得た。DBMXを約200μMまで加えた。次いで、細胞懸濁物約1mLを処理用に分取した。フォルスコリン(cAMP誘発剤)、チラミン又は種々の候補組成物を加え、細胞を約27℃で約10分間インキュベートした。
【0043】
処理した細胞を、約13000 gで約10秒間遠心分離した。溶液を吸引し、約−20℃の70%エタノール約1mLを加えた。細胞のペレットをかき混ぜることによって崩壊させ、試料を約−20℃で一夜置いた。エタノール抽出を行った後に、細胞砕片を約13000 gで約5分間遠心分離することによってペレット化した。上清を管に移し、rotary speed-vac中で凍結乾燥して乾固し、得られた抽出物を約100μLのTEに再懸濁し、cAMPアッセイに使用した。
【0044】
cAMPアッセイは、cAMP結合タンパク質に対する内因性cAMPと3H-cAMPとの間の競合結合に基づく。3H-cAMP Biotrak装置(Amersham Biosciences) を、製造業者の使用説明書により、このアッセイに使用した。手短に言えば、細胞抽出物約50μLを、約50μLの3H-cAMP及び約100μLのcAMP結合タンパク質と共に、氷浴中で約2〜4時間インキュベートした。次いで、木炭(約100μL)を加え、溶液を約4℃で約3分間、遠心分離した。反応混合物約200μLを取り出し、3H-cAMPの量を、シンチレーションでカウントすることによって調べた。細胞由来の内因性cAMPの量を、反応当たり約0〜16 pmolの範囲の冷cAMPを用いて、標準曲線を使用して算出した。
【0045】
実施例3
チラミン受容体を発現する細胞の処理及び細胞内[Ca2+]に対する組成物の効果
細胞内カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)を、蛍光指示薬fura-2のアセトキシメチル(AM)エステルを使用することによって測定した(Enan, et al., Biochem. Pharmacol vol 51, 447-454)。この研究では、チラミン受容体を発現する細胞を標準条件下で増殖させた。細胞懸濁物をアッセイ緩衝液(140mM NaCL、10mM HEPES、10mMグルコース、5mM KCl、1mM CaCl2 、1mM MgCl2)中で調製し、細胞の個数をml当たり約2×106個に調整した。手短に言えば、約1.0mlの細胞懸濁物(約2×106 細胞)を、約5μMのFura 2/AMと共に約28℃で約30分間インキュベートした。インキュベーション後に、細胞を約3700 rpmで室温で約10秒間 遠心分離することによってペッレット化し、次いで約1.5mlのアッセイ緩衝液に再懸濁した。[Ca2+]i変化を、試験化学物質の存在下及び不存在下で分光蛍光光度計で分析した。励起波長は、約340nm (Ca2+結合fura-2によって生じる)及び約380mn (Ca2+無含有fura-2に相当する)であった。蛍光の強さを、約510mnの発光波長で監視した。蛍光アーチファクト(artifacts)の吸光度は、使用した化合物のいずれについても認められなかった。約340/380 nmの比を算出し、時間の関数としてプロットした。
【0046】
実施例4
チラミン受容体を発現する細胞におけるチラミン受容体結合活性に対するライラックフラワー油及びブラックシードオイルの効果
特定の油、すなわちライラックフラワー油(LFO)及びブラックシードオイル(BSO)が相互作用し、チラミン受容体の機能的発現を調節するかどうかを調べるために、安定的に移入されたシュナイダー細胞及び及び非移入シュナイダー細胞由来の膜を、3H-チラミン結合について分析した。
【0047】
受容体部位での3H-チラミンとの相互作用については、前記と同じ結合プロトコールを使用した。LFO及びBSOの用量応答(約1〜100μg/ml)を行い、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合に対するLFO及びBSOの効果を調べた。図5に関して、種々の濃度のLFO及びBSOの存在下及び不存在下でのチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合を描くと、チラミン受容体に対する3H-チラミンの阻害が、LFO及びBSOによる処理に用量に依存して応答して実証された。LFO及びBSOのEC50値は、それぞれほぼ10μg/ml及び20 pg/mlの付近にあった。
【0048】
図6について、LPO又はBSOの存在下及び不存在下で、あるいは約1μM及び10μMの非標識チラミンと組み合わせて、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合を描くと、LFO(約25 μg/ml)は、それ自体でチラミン受容体に対する3H-チラミンの結合を阻害した。この効果は、約10μM(約1.74μg/ml)の非標識チラミンの効果に対してはあいまいである(equivocal)。また、LFOは、非標識チラミンを約1μMで使用した場合にのみ3H-チラミン結合に対する非標識チラミンの有効性を高める。これに対して、BSO(約25μg/ml)は、3H-チラミン結合に対してLFOよりも効果がなかった。しかし、BSOは、非標識チラミンの濃度に関係なく、3H-チラミン結合に対する非標識チラミンの有効性を著しく増大する。上記2種類の油は、非移入シュナイダー細胞において3H-チラミン結合に対して効果を示さなかった。
【0049】
このように、LFO及びBSOはチラミン受容体と異なって相互作用すると思われる。理論又はメカニズムに縛られることを望まないが、LFO及びチラミンは同じ結合部位で競合し、これに対してBSOは内因性リガンド(チラミン)よりも受容体の種々の部位で作用すると思われる。ある種の別の油、例えば、本出願明細書に最初に明示した油もまた、チラミン受容体と相互作用する。
【0050】
実施例5
チラミン受容体を発現する細胞における細胞内[cAMP]に対するライラックフラワー油及びブラックシードオイルの効果
チラミン受容体の試験化学物質依存結合を調べるために、pAcB-TyrRをシュナイダー細胞中で安定的に発現させた。移入及び非移入細胞を、フォルスコリン(FK)(約10μM)の存在下及び不存在下で、チラミン(約10μM)、LFO(約25μg/ml)及びBSO(約25μg/ml)で処理した。cAMP産生を前記のように3H-cAMPアッセイキット(Amersham)を使用して測定した。
【0051】
この細胞モデルでのcAMPカスケードが機能的に活性であることを確実にするために、フォルスコリン(cAMP誘発剤)を標準薬として使用した。図7〜9〔チラミン(約10μM)及びフォルスコリン(約10μM)の存在下及び不存在下で、LFO(約25μg/ml)及びBSO(約25μg/ml)で処理した後のチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP量のチラミン依存変化を表す〕に示すように、溶媒(エタノール)のみで処理した細胞中のcAMPの基礎量と比べて、フォルスコリン処理に応答して移入細胞中でのみcAMP量の約19倍の増大があった。
【0052】
一方、チラミンは、cAMP産生においてわずかな低下(約10%)を誘導した。しかし、チラミンは、チラミン受容体を発現する細胞中のフォルスコリンで刺激されたcAMP量を著しくアンタゴナイズし、チラミン受容体が、図7に示すようにチラミンの存在下でGαi/Oに結合することを示唆する。cAMP量の約34%及び25%の低下が、移入細胞においてのみLFO及びBSOそれぞれの処理に応じて認められた(図8)。チラミンは、チラミン受容体移入細胞中のcAMP産生に対するLFOの効果を高めるが、BSO及びチラミンの同時処理は、図8に示すように、BSOそれ自体の効果を越えるcAMP量の変化を誘導しなかった。チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のLFO及びBSOで低下させたcAMP量は、図9に示すように、フォルスコリンの存在下で減少した。
【0053】
ある種の別の植物精油、例えば、本出願明細書に明示し植物精油もまた、チラミン受容体を発現する細胞において細胞内cAMPの量の変化をもたらす。
【0054】
実施例6
嗅覚受容体(Or83b及びOr43a)を安定的に移入されたシュナイダー細胞系の調製
A.キロショウジョウバエ嗅覚受容体Or83b及びOr43aのRT-PCR増幅及びサブクローニング
全RNAを、野生型キイロショウジョウバエ(Drosophilia melanogaster)の頭部及び触覚からTrizol試薬(Invitrogen)を使用して調製した。これらを、モーター駆動テフロン乳棒及びガラスホモジナイザーを使用してTrizol中でホモジナイズした。次いで、RNAを、製造業者の取扱説明書に従って調製し、沈降によるプロテオグリカン及び多糖類の除去を含む。全RNAを、プライマーとしてオリゴ-dTを使用し且つMuLV逆転写酵素(Applied Biosystems)を使用して逆転写した。読み取り枠をPC増幅するために、下記のオリゴヌクレオチドを使用した:
Or83bセンス
Or83bアンチセンス
Or43aセンス
及びOr43aアンチセンス
大文字は、Or83b及びOr43a受容体の配列と一致する。センスオリゴヌクレオチドは、NotI部位を含有し、またアンチセンスオリゴヌクレオチドは、SacII部位を含有する。両方の制限部位は、下線を付したヌクレオチドにより示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、停止コドンを含んでおらず、従ってpAC 5.1プラスミド由来のV5エピトープは、翻訳されたタンパク質と共にフレーム内にあるであろう。Or83bのPCR増幅については、Ventポリメラーゼ (New Engl及びBiolabs)を、次の条件と共に使用した:約95℃、約5分で1サイクル; 約95℃、約30秒;及び約70℃、約90秒で約40サイクル;及び約70℃、約10分で1サイクル。Or43aのPCR増幅については、Failsafe PCRプレミックス選別キット(Epicentre Technologies) を次の条件と共に使用した:約95℃、約5分を約1サイクル;約95℃、約30秒;約60℃、約30秒及び約70℃、約90秒を約50サイクル;及び約70℃、約10分を約1サイクル。Failsafeプレミックス緩衝液Fは、正確な大きさの生成物を生成する。PCR生成物を、SacII及びNotIで消化し、ゲル精製し、pAC5.1/V5 His B(Invitrogen)に結合した。挿入片を、自動蛍光配列決定装置(Vanderbilt Cancer Center)で両方の鎖について配列決定した。Or83b読み取り枠及びOr43a読み取り枠の両方は、PubMed上の配列情報及びWebサイト上のゲノム配列において見出された配列情報と比べると、同じタンパク質をコードした。Or43aの核酸配列及びペプチド配列を、図32A及び32Bに示す。Or83bの核酸配列及びペプチド配列を、図33A及び33Bに示す。
【0055】
トランスフェクションについて、ショウジョウバエのシュナイダー細胞に、前記のInvitrogen Drosophila Expression System (DBS) マニュアルに記載のリン酸カルシウム−DNA共沈プロトコールを使用して、pAc5(B)-Or83b ORF又はpAc5(B)-Or43a ORFを安定的に移入した。Or83b又はOr43aのいずれかを安定的に移入された細胞の少なくとも約10個のクローンを選択し、別々に増殖させた。安定なクローンを、これらが対応するmRNAを発現するか否かを試験するために、RT-PCR法を使用して分析した。製造業者の取り扱い説明書に従ってTrizolを使用して、細胞からRNAを調製した。全RNAを、MuLV逆転写酵素を用いて逆転写した。Ventポリメラーゼ並びに次のプライマー:Or83bセンス及びOr83bアンチセンス;Or43aセンス及びOr43aアンチセンスを使用してPCRを行った。PCR生成物をアガロースゲル電気泳動により分析し、RT-PCRに使用した対照シュナイダー細胞RNAと比較した。r83b-mRNA又はOr43a-mRNAを高度に発現するクローンを、別の研究で使用して、タンパク質発現(ウエスタンブロット)、及びチラミン及びcある種の植物精油による処理に応じるシグナル伝達(cAMP産生及び[Ca2+])を扱った。
【0056】
RT-PCRを使用して、どのクローンがOr83b及びOr43a遺伝子を発現したかを調べた。アガロースゲル分析は、約10個のクローンのうち約4個のクローンが約1.46 kbの正確な大きさの生成物を生成することを示した。同様に、Or43aについて、約2個のクローンが約1.1 kbの正確な大きさの生成物を生成した。これらの生成物のいずれも、対照シュナイダー細胞についてPCRを行った場合には得られなかった。mRNAを発現するクローンを、前記受容体と共にさらなる研究用に選択した。
【0057】
B.Or83b及びOr43a受容体相互作用について組成物を選別するためのOr83b受容体又はOr43a受容体を移入したシュナイダー細胞系の効果
Or83b受容体及びOr43a受容体が、チラミンについて特異的結合部位を含有しているか否かを扱うために、Or83b受容体又はOr43a受容体を発現する膜を、前記のようにしていずれかの受容体を発現する細胞から調製し、3H-チラミンとの競合結合に使用した。結合アッセイプロトコールは、まさに前記のようにTyrRを発現する細胞について説明したものである。図10に示すように、約20μMの非標識チラミンの存在下及び不存在下で、Or83b受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの飽和結合曲線を描き、及び図11に示すように、Or43a受容体を発現する細胞について上記と同じ情報を描くと、3H-チラミンはOr83b受容体及びOr43a受容体に特異的に結合した。表Bに示すように、チラミンは、Or83b受容体に結合し、約96.90nMのKd及び約4.908pmol/mgタンパク質のBmaxを有し、Or43aについては、対応する値はKdが約13.530nM及びBmaxが約1.122 pmol/mgタンパク質であった。
【0058】
【0059】
実施例7
嗅覚受容体を発現する細胞でのcAMPの産生
この細胞モデルでのcAMPカスケードが機能的に活性であることを裏付けるために、フォルスコリン(cAMP誘発剤)を標準薬として使用した。サイクリックAMPの量を、実施例2に記載のcAMPアッセイを使用して測定した。図12に示すように、Or83b受容体を発現する細胞中のcAMP量のフォルスコリン依存変化を描くと、約10μMフォルスコリンを用いて室温で約10分間処理した細胞中の基礎cAMP量から約13倍の増大がある。Or43a受容体を発現する細胞を用いて、同様の結果が得られた。このように、嗅覚受容体を発現する細胞は機能的に活性なcAMPカスケードを有する。
【0060】
実施例8
嗅覚受容体を発現する細胞中でのCa2+の細胞内動員
細胞内Ca2+濃度を、実施例3に記載の方法で測定した。カルシウム動員は、Or83b受容体又はOr43a受容体を発現する細胞内でイオノマイシン(Ca2+誘発剤)及びチラミンによる処理に応じて生じる。具体的には、図13及び14に関して、図では340 nm及び380 nmによる励起から測定された蛍光比が、Or83b又はOr43aを発現する細胞に約2μMのイオノマイシンを加えた場合の細胞内カルシウム濃度と相関性があり、細胞内カルシウムの顕著な増加が検出された。カルシウムの約3.8倍及び7倍の増加が、Or83b及びOr43aそれぞれを発現する細胞でイオノマイシンによる処理に応じて認められた。図15に関して、約10μMでのチラミンの試験はまた、Or83b及びOr43aそれぞれをを発現する細胞で細胞内カルシウムの約1.18倍の増加及び3.5倍の増加を誘発することができる。
【0061】
総合すると、薬理学的分析データは、Or83b受容体遺伝子又はOr43a受容体遺伝子が移入されたこれらの細胞モデルが機能性タンパク質受容体を発現していることを裏付ける。
【0062】
実施例9
嗅覚受容体の結合活性に対する種々の植物精油の効果及び前記受容体に対して下流のシグナル伝達経路
前記の嗅覚受容体の一つを発現する細胞を使用して、植物精油とこれらの受容体との相互作用及びそれぞれの受容体の下流のシグナル伝達カスケードを調べた。
【0063】
結合活性については、膜をそれぞれの細胞モデルから調製し、植物精油と受容体結合部位との相互作用を調べるのに使用した。図16に関して、下記の油が嗅覚受容体と相互作用する:ライラックフラワー油 (LFO)、フタル酸ジエチル、α-テルピネオール、及びピペロナール。
【0064】
同様に、図17及び18に関して、下記の油が嗅覚受容体と相互作用する:ブラックシードオイル(BSO)、α-ピネン、キノン、p−シメン、サビネン、α-ツヨン及びd-リモネン。
【0065】
同様に、図19〜21に関して、下記の油が嗅覚受容体と相互作用する:ゲラニオール、アントラニル酸リナリル、フェニルアセトアルデヒド、リナロール、α-テルピネオール、t-アネトール、テルピネン900、リンデノール、オイゲノール、タイム油、カルバクロール、チモール、ピペロナール、ピペロニルアルコール、酢酸ピペロニル、及びピペロニルアミン。
【0066】
その他のある種の油、例えば本出願明細書に明示した油類もまた、嗅覚受容体と相互作用する。
【0067】
実施例10
Or43a受容体を発現する細胞でのCa2+の細胞内動員に対する種々の植物精油の効果
細胞内カルシウム動員に対する種々の植物精油の効果を調べるために、各細胞モデルから得た無傷細胞を前記のアッセイに使用した。細胞内Ca2+濃度の変化を、処理前及び処理の約150秒後の340/380蛍光比の間の差に基づいて算出した。図22に示すように、対照細胞内でCa2+の動員を誘発するイオノマイシン及びチラミンによる処理は、Or43a受容体を発現する細胞内で細胞内Ca2+濃度をごくわずかしか増加させなかった。
【0068】
図22〜28に関し、下記の油は、Or43a受容体を発現する細胞内でカルシウム動員をもたらした:アントラニル酸リナリル、リナロール、ペリリルアルコール、t-アネトール、ゲラニオール、フェニルアセトアルデヒド、オイゲノール、ピペロニルアルコール、酢酸ピペロニル、ピペロニルアミン、α-テルピネオール、リンデノール、テルピネン900、タイム油、チモール、カルバクロール、LFO、BSO、α-ピネン、p-シメン、d-リモネン、サビネン、キニーネ、l-カルボン、d-カルボン及びα-ツヨン。最後に、図24に示すように、ピペロナールの処理は、Or43a受容体を発現する細胞内で細胞内Ca2+濃度を低下させた。
【0069】
その他のある種の植物精油、例えば本出願明細書に明示した植物精油による処理もまた、Or43a受容体を発現する細胞内で細胞内Ca2+濃度の変化を生じた。
【0070】
また、その他のある種の植物精油、例えば本出願明細書に明示した植物精油による処理は、Or83b受容体を発現する細胞内で細胞内Ca2+濃度の変化を生じた。
【0071】
実施例11
嗅覚受容体を発現する細胞内のcAM産生に対する種々の植物精油の効果
前記の嗅覚受容体の一つを発現する細胞での細胞内cAMP産生及びcAMPのチラミ依存変化に対する種々の植物精油の効果を調べるために、各細胞モデルから得た細胞を、チラミン(約20μM)及びフォルスコリン(約10μM)の存在下及び不存在下で、LPO(約50μg/ml)及びBSO(約50μg/ml)で処理し、その後に細胞内cAMPを実施例に記載のcAMPアッセイを使用して定量した。
【0072】
図29及び30に示すように、下記の油による処理は、Or43a受容体を発現する細胞内のcAMP濃度の増加をもたらした:チラミン; LFO;BSO;LFO及びチラミン;BSO及びチラミン;フォルスコリン;チラミン及びフォルスコリン;LFO及びフォルスコリン;LFO、フォルスコリン及びチラミン;BSO;並びにBSO、チラミン及びフォルスコリン。
【0073】
さらに図29及び30を参照すると、Or83b受容体を発現する細胞内のcAMP産生の約34%、32%及び64%の増加が、約20μMチラミン、約50μg LFO/ml及び約50μg BSO/mlそれぞれによる処理に応じて生じた。チラミン及びLFOによる同時処理に応じて、それぞれ一つの単独での効果に比べて、cAMP産生に対する拮抗効果(約24%)が認められた。一方、BSO及びチラミンによる同時処理に応じて、相乗効果(約300%増大)が認められた。
【0074】
フォルスコリン(約10μM)の存在下で、cAMPの産生において約3000倍の増大が認められた。フォルスコリン予備処理細胞をチラミン又はLFOと共に投与すると、フォルスコリンそれ自体での効果よりもcAMP産生において約10〜13%の増大が認められた。フォルスコリン予備処理細胞に対するBSOの添加は、これらの細胞におけるフォルスコリン誘発cAMP産生よりも約22%大きいcAMP産生の増大を誘発した。
【0075】
また、その他のある種の植物精油、例えば本出願明細書に明示した植物精油による処理は、Or43a受容体又はOr83b受容体を発現する細胞内で細胞内cAMP濃度の変化をもたらした。
【0076】
実施例12
キイロショウジョウバエに対する組成物の毒性
試験組成物から2種類のアセトン溶液(約1%及び10%)を調製した。次いで、試験濃度のアセトンを、底の約3cm上に印をつけたガラス瓶(約5mL)に加えた。このガラス瓶を、前記の印から頸部の間の領域を除いた瓶の内面に、試験組成物の薄膜が残るように回転させた。処理した瓶にハエを導入する前に、全ての瓶を約10秒間空気にさらしてアセトンの完全な蒸発を確実にした。アセトンの蒸発を終えた後に、雌雄が混ざったハエの成虫約10匹をそれぞれの瓶に加え、瓶に綿栓で蓋をした。暴露の約24時間後に死虫率を観察した。
【0077】
実施例13
野生型ショウジョウバエ及びチラミン受容体突然変異バエに対するライラックフラワー油(LFO)及びブラックシードオイル(BSO)の毒性
野生型キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)及びチラミン受容体突然変異ショウジョウバエを、LFO及びBSOの毒性を調べるためのモデルとして使用した。これらの油の毒性は、実施例12に記載の方法を使用して調べた。以下の表C及びDに関して、両方の化学物質は、野生型キイロショウジョウバエに対して有毒であった。LFOは、両方のキイロショウジョウバエに対してBSOよりも約300倍有毒であった。LFOのLC50は、約25〜30 ng/mm2の付近にあり、BSOの対応する値は約94μg/cm2であった。これに対して、LFO は、チラミン受容体突然変異バエに対してBSOよりも少なくとも約1000倍毒性が小さかった。ショウジョウバエに対する両方の化学物質の毒性は、チラミン受容体によって伝えられる。チラミン受容体の突然変異体は、ショウジョウバエに対するLFOの毒性を著しく低下させるが、同じ突然変異体はBSOに対してより感受性のショウジョウバエ系を発生する。
【0078】
【0079】
実施例14
農場アリに対する組成物の忌避効果
組成物の忌避効果を試験するために成虫昆虫を無作為に選択し、個々には印をつけなかった。反復試験当たり約5匹の昆虫を使用した。それぞれの処理について約3回の反復試験を使用した。未処理対照試験は、同じ条件下で維持された同じ大きさの個体群/反復試験に対する溶媒(アセトン)のみの施用を含む。濾紙(約80cm2)を前記組成物(アセトン300ml中に約100mg)で処理した。約3分の風乾の後に、濾紙をシャーレに置き、昆虫に対する忌避を行った。昆虫をシャーレに放ち、一匹の昆虫を同時にシャーレの向こう側に放った。1個以上のストップウォッチを使用して、シャーレの濾紙上で又は未処理表面で過ごした時間を、最大約300秒間記録した。忌避率(RR)を次のように算出した:
RR=[(対照表面での時間−処理表面での時間)/全試験時間]
RR>0の場合には、組成物が忌避効果、すなわちより多くの昆虫が対照表面よりも処理表面から離れて忌避されるという効果を有するとみなし;RR<0の場合には、組成物は忌避効果をもたないとみなす。
【0080】
実施例15
農場アリに対するライラックフラワー油(LFO)及びブラックシードオイル(BSO)の忌避効果
農場アリ(farm ants)に対するLFO(約1.4mg/cm2)及びBSO(約1.4mg/cm2)の忌避効果を、実施例14に記載の方法を使用して調べた。表E及びFに示すように、BSOは、農場アリに対してLFOよりもよい忌避性を実証した。農場アリに対して約90%及び100%の忌避性が、LFO及びBSOそれぞれによって得られた。また、LPO及びBSOはまた、農場アリに対して暴露24時間以内に100%死虫率を誘導した。
【0081】
BSOで処理したシャーレはまた、アリに対する忌避性に対するBSOの残留効果を扱うためにも使用した。前記の忌避性プロトコールに従って1日当たり5匹のアリを使用した。同時に、BSOについて経時毒性を調べた。毒性実験では、アリを上記と同じ処理表面に約10秒間暴露し、次いで新しい容器に移した。暴露の約24時間後に死虫率データを記録した。1日当たりにつきアリ5匹を使用した。表Gに示すように、BSOは農場アリに対して最大4日間忌避性を示した。
【0082】
【0083】
実施例16
農場アリに対するd-リモネン、α-ピネン及びp-シメンの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0084】
表Hに関して、d-リモネン、α-ピネン及びp-シメンそれぞれは、単独で忌避性を実証した。しかし、複数の油を混合して組成物A、すなわちd-リモネン、α-ピネン及びp-シメンをそれぞれ約1/3ずづ含有する組成物を形成すると、相乗効果があり、忌避率%が著しく増大した。
【0085】
同様に、表Iに関して、d-リモネン及びα-ピネンそれぞれは、単独で忌避性を実証した。しかし、複数の油を混合して組成物B、すなわちd-リモネン及びα-ピネンをそれぞれ約半分ずづ含有する組成物を形成すると、相乗効果があり、忌避率%が著しく増大した。
【0086】
【0087】
実施例17
農場アリに対するリナロール、d-リモネン、α-ピネン、p-シメン及びタイム油の単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0088】
表Jに示すように、d-リモネン、α-ピネン及びp-シメン及びタイム油それぞれは忌避性を示すが、組成物C、すなわち前記の油類を約25%ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0089】
同様に、表Kに示すように、リナロール、α-ピネン、p-シメン及びタイム油それぞれは忌避性を示すが、組成物D、すなわち前記の油類を約25%ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0090】
同様に、表Lに示すように、リナロール、α-ピネン及びp-シメンそれぞれは忌避性を示すが、組成物E、すなわち前記の油類を約1/3ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0091】
【0092】
実施例18
農場アリに対するα-ピネン、タイム油、α-ツヨン、サビネンの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0093】
表Mに示すように、α-ピネン、タイム油、α-ツヨン及びサビネンそれぞれは忌避性を示すが、組成物F、すなわち前記の油類を約25%ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0094】
【0095】
実施例19
農場アリに対するd-リモネン、p-シメン、チモール、カルバクロール及びゲラニオールの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0096】
表Nに示すように、d-リモネン、p-シメン、チモール及びカルバクロールそれぞれは忌避性を示すが、組成物G、すなわち前記の油類を約25%ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0097】
同様に、表Oに示すように、d-リモネン、p-シメン及びチモールそれぞれは忌避性を示すが、組成物H、すなわち前記の油類を約1/3ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0098】
同様に、表Pに示すように、d-リモネン、p-シメン、チモール及びゲラニオールそれぞれは忌避性を示すが、組成物I、すなわち前記の油類を約25%ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0099】
【0100】
実施例20
農場アリに対するアントラニル酸リナリル、α-ピネン、d-リモネン、p-シメン及びゲラニオールの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0101】
表Qに示すように、ゲラニオール、d-リモネン、p-シメン及びアントラニル酸リナリルそれぞれは忌避性を示すが、組成物J、すなわちゲラニオール約40%、d-リモネン約30%、p-シメン約10%、α-ピネン約10%及びアントラニル酸リナリル約10%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0102】
【0103】
実施例21
農場アリに対するd-リモネン、チモール、α-テルピネオール、酢酸ピペロニル、ピペロニルアミン及びピペロナールの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0104】
表Rに示すように、d-リモネン、チモール、α-テルピネオール、酢酸ピペロニル、ピペロニルアミン及びピペロナールそれぞれは忌避性を示すが、組成物K、すなわちd-リモネン約20%、チモール約30%、α-テルピネオール約20%、酢酸ピペロニル約10%、 ピペロニルアミン約10%及びピペロナール約10%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0105】
【0106】
実施例22
農場アリに対するゲラニオール、d-リモネン、オイゲノール、リンデノール及びフェニルアセトアルデヒドの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0107】
表Sに示すように、ゲラニオール、d-リモネン、オイゲノール、リンデノール及びフェニルアセトアルデヒドそれぞれは忌避性を示すが、組成物L、すなわちゲラニオール約50%、d-リモネン約20%、オイゲノール約10%、リンデノール約10%、及びフェニルアセトアルデヒド約10%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0108】
【0109】
実施例23
オオアリに対するゲラニオール、レモングラス油、オイゲノール及び鉱油の単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0110】
表Tに示すように、ゲラニオール、レモングラス油及びオイゲノールそれぞれは忌避性を示すが、組成物M、すなわちゲラニオール約50%、レモングラス油約40%及びオイゲノール約10%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。ゲラニオール、レモングラス油及びオイゲノールは全て、米国環境保護局(EPA)及び食品医薬品局(PDA)によって安全である(GRAS化合物)と一般にみなされており、それ自体、EPA農薬登録要件を免除されている。
【0111】
同様に、表Uに示すように、ゲラニオール及びレモングラス油それぞれは忌避性を示すが、組成物N、すなわちゲラニオール約70%及びレモングラス約30%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0112】
さらにまた、表Vに示すように、組成物O、すなわちゲラニオール約60%、レモングラス油約30%及び鉱油約10%を含有する組成物を形成するための鉱油の添加は、ゲラニオール及びレモングラス油の相乗作用に影響を及ぼさなかった。鉱油単独は、忌避性を実証しなかったが、組成物を安定させるのに役立ち、活性成分の蒸発を抑える。ゲラニオール及びレモングラス油と同様に鉱油は、GRAS化合物である。
【0113】
【0114】
実施例24
オオアリに対するゲラニオール、チモール、レモングラス油及び鉱油の単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0115】
表Wに示すように、ゲラニオール、チモール及びレモングラス油それぞれは忌避性を示すが、組成物P、すなわちゲラニオール約50%、チモール約20%、レモングラス油約20%及び鉱油約10%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。ゲラニオール、チモール、レモングラス油、オイゲノール及び鉱油は全て、米国環境保護局(EPA)及び食品医薬品局(PDA)によって安全である(GRAS化合物)と一般にみなされており、それ自体、EPA農薬登録要件を免除されている。
【0116】
【0117】
実施例25
オオアリに対するブラックシードオイル(BSO)、ライラックフラワー油(LFO)、ゲラニオール、チモール、レモングラス油及び鉱油の単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0118】
表Xに示すように、ゲラニオール、チモール及びタイム油それぞれは忌避性を示す。表Yに示すように、BSO、LFO、ゲラニオール、チモール、タイム油、鉱油、サフラワー油及びヒマシ油の種々の組み合わせを含有する組成物Q〜Vは、高められた忌避性を示す。
【0119】
【0120】
実施例26
オオアリに対する市販忌避剤DEET29%の忌避効果
種々の植物精油から調製した種々の組成物の忌避効果と比較するために、REPEL(登録商標)(Wisconsin Pharmacal Company, Inc, Jackson、WY)という名前で購入し得る昆虫防除剤(DEET29%の市販忌避剤)を、濾紙をDEET29%で処理することによってオオアリに対して調べた。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。表Zに示すように、29%DEETは、0日目で約98.4%の忌避率%を有していた。LFO、BSO及び本発明の組成物の忌避率%を比較でき、及びその幾つかの場合には、29%DEETの忌避率%よりも高かった。
【0121】
【0122】
実施例27
オオアリに対する市販忌避剤DEETの単独及びゲラニオール、チモール及びレモングラス油、又はゲラニオール、D-リモネン、オイゲノール、リンデノール及びフェニルアセトアルデヒドとの組み合わせの忌避効果
市販の忌避剤DEET及び種々の植物精油の忌避効果を、試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0123】
表AA及びBBに示すように、約5〜10%の濃度のDEETによる処理は、忌避の徴候を示さなかった。しかし、表AAに示すように、組成物W、すなわちゲラニオール約25%、チモール10%、レモングラス油10%及び鉱油(DEETの最終濃度に応じて45〜55%)を含有する組成物と組み合わせると、忌避率%は100に達する。同様に、表BBに示すように、組成物X、すなわちゲラニオール約25%、d-リモネン10%、オイゲノール5%、リンデノール5% 、フェニルアセトアルデヒド5%及び鉱油(DEETの最終濃度に応じて45〜55%)を含有する組成物と組み合わせると、忌避率%は約97〜98%であった。また、表AA及びBBに示すように、種々の油をDEETと組み合わせると、高められた忌避性が示された。
【0124】
【0125】
実施例28
アタマシラミに対する組成物の殺虫効果
エジプト共和国アレキサンドリア、Karmos地域に住んでいる約4〜11歳の女の子及び男の子から、生きているアタマジラミ(Pediculus humanus capitus)の成虫を採取した。この昆虫を目の細かいシラミ検出用の櫛を使用して採取し、一緒にプールした。採取したシラミをシャーレで飼い及び採取の約30分以内に試験に使用した。
【0126】
試験する種々の濃度の組成物を水で調製した。これらの組成物の殺虫効果を市販の殺シラミ剤イベルメクチンの殺虫効果と比較するために、イベルメクチンを水に溶解した。それぞれの濃度の組成物約1mlをシャーレに施用し、イベルメクチン溶液約1mlをシャーレに施用し、そして水約1mlを対照のシャーレに施用した。約10匹のアタマジラミ成虫をそれぞれのシャーレに導入した。
【0127】
処理シャーレ及び対照シャーレを連続観察下で保持し、LT100を観察した。LTとは、所定の割合の昆虫を殺すのに必要な時間をいう;従って、LT100は、シラミを100%殺すのに必要な時間をいう。アタマジラミは、硬い物体(hard object)に対する応答が認められない場合には死んだとみなす。
【0128】
実施例29
アタマシラミに対するゲラニオール、D-リモネン、ベンジルアルコール、P-シメン及びライラックフラワー油を含有する組成物の殺虫効果
組成物Y、すなわちp-シメン約20%、ライラックフラワー油(LFO)約40%、ベンジルアルコール約30%及び鉱油約10%を含有する組成物の殺虫効果を、実施例28に記載の方法を使用して調べた。この組成物のLT100を、市販の殺シラミ剤イベルメクチンのLT100と比較した。表CCに示すように、組成物Yで処理したシラミは、イベルメクチンで処理したシラミよりも早く死んだ。
【0129】
【0130】
実施例30
蚊に対する組成物の忌避効果
A.経口投与
無毛又は毛を剃ったマウス及びモルモットを使用して、経口投与された組成物の忌避効果を試験した。試験油〔例えば、ライラックフラワー油(LFO)又はブラックシードオイル(BSO)〕又は試験組成物(例えば、ゲラニオール、d-リモネン、オイゲノール及びリンデノールを含有する組成物)を、約10匹の前記齧歯動物に経口投与した。対照物質、例えば鉱油を、約10匹の前記齧歯動物に経口投与した。約30分後に、各齧歯動物を密閉容器に入れた。各容器に約20匹の蚊を導入した。各容器を約1時間観察した。それぞれの蚊が齧歯動物の表面で過ごした時間を記録し、蚊によって生じた齧歯動物の皮膚の外傷の個数を記録した。蚊は、対照物質の投与を受けた齧歯動物上で過ごした時間よりも、試験組成物の投与を受けた齧歯動物上で過ごした時間が短かった。試験組成物の投与を受けた齧歯動物は、対照物質の投与を受けた齧歯動物よりも外傷が少なかった。
【0131】
B.局所投与
無毛又は毛を剃ったマウス及びモルモットを使用して、局所投与された組成物の忌避効果を試験した。試験油〔例えば、ライラックフラワー油(LFO)又はブラックシードオイル(BSO)〕又は試験組成物(例えば、ゲラニオール、d-リモネン、オイゲノール及びリンデノールを含有する組成物)を、約10匹の前記齧歯動物の皮膚に局所投与した。対照物質、例えば鉱油を、約10匹の前記齧歯動物の皮膚に局所投与した。約30分後に、各齧歯動物を密閉容器に入れた。各容器に約20匹の蚊を導入した。各容器を約1時間観察した。蚊がネズミの表面で過ごした時間を記録し、蚊によって生じた齧歯動物の皮膚の外傷の個数を記録した。蚊は、対照物質の投与を受けた齧歯動物上で過ごした時間よりも、試験組成物の投与を受けた齧歯動物上で過ごした時間が短かった。試験組成物の投与を受けた齧歯動物は、対照物質の投与を受けた齧歯動物よりも外傷が少なかった。
【0132】
実施例31
蚊に対する組成物の忌避効果
約3個のケージそれぞれに、約7〜10日齢のネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)約100匹を放った。蚊は約12時間飢えさせた。それぞれのケージに、砂糖水を浸したワタを満たした4個の容器を供給した。
【0133】
4個の容器のうちの3個は、試験する組成物約1000ppm(約1mg/l)で無作為に処理し、残りの1個は未処理対照として役立てた。これらの容器をそれぞれのケージの四隅に置き、試験する組成物をそれぞれの隅に添加した後に約0時間、1時間、2時間、4時間及び6時間の間隔で着地回数を数えた。前記容器を、暴露間隔の間にケージから取り出した。各暴露間隔は、約5分間続けた。
【0134】
表DDに記載の組成物の忌避効果をこの方法を使用して試験した。
【0135】
LFO、クミン油、ゲラニオール、タイム油、及びレモングラス油は、米国環境保護局(EPA)及び食品医薬品局(PDA)によって安全である(GRAS化合物)とみなされており、それ自体、EPA農薬登録要件を免除されている。
【0136】
表DDに挙げた組成物をそれぞれの容器に添加した後に約0時間、1時間、2時間、4時間及び6時間の間隔で着地回数を数えた。着地回数を表EEに示す。このデータを使用して忌避率%を算出し、表FFに示した。それぞれの暴露間隔で、組成物EE、AA及びBBはほぼ100%の忌避率を示した。6時間後でも、該組成物は蚊に対して100%の忌避率を示した。
【0137】
【0138】
実施例32
赤アリに対する植物精油を含有する組成物の忌避効果及び殺虫効果を試験する方法
赤アリに対する植物精油を含有する種々の組成物の殺虫効果を、次の方法で試験した。ペーパーディスクを、それぞれの試験する組成物約20μlで処理し、処理したディスクそれぞれを瓶に入れた。未処理ペーパーディスクは、対照の瓶に入れた。また、ペーパーディスクを100%DEET約20μlで処理し、組成物の殺虫効果と公知の市販の昆虫防除剤DEETの殺虫効果と比較するために瓶に入れた。それぞれの瓶に赤アリ約3匹を導入し、瓶の開口部をワタで密封し、昆虫が逃げるのを防止した。昆虫を前記組成物に約1時間又はそれ以下暴露し、死虫率を記録した。
【0139】
赤アリに対する植物精油を含有する種々の組成物の忌避効果を、次の方法で試験した。ペーパーディスクを、それぞれの試験する組成物約200μlで処理し、瓶に入れた。未処理ペーパーディスクは、対照の瓶に入れた。また、ペーパーディスクを100%DEET約200μlで処理し、組成物の忌避効果と公知の市販の昆虫防除剤DEETの忌避効果と比較するために瓶に入れた。赤アリをそれぞれの瓶に導入した。処理したペーパーディスクに向かう昆虫の挙動及び回数を約5分間監視した。赤アリによるペーパーディスクに向かう回数を記録した。
【0140】
残留性を、殺虫効果及び忌避効果に関して、ペーパーディスクを試験する組成物で処理し、処理したペーパーディスクを実験室条件下で所定の時間(例えば、0分、6時間、1日、3日、5日、7日)保ち、そして赤アリを処理ペーパーディスクに前記のようにして暴露することによって試験した。
【0141】
実施例33
赤アリに対する植物精油を含有する組成物の忌避効果及び殺虫効果
表GGに記載の組成物の殺虫効果及び忌避効果を、実施例32に記載の方法を使用して試験した。未処理ディスクは、赤アリに対して毒性もないし、赤アリを忌避もしない。
【0142】
それぞれの組成物は、ペーパーディスクを前記組成物で処理後、該ペーパーディスクに赤アリを約0分、6時間、1日、3日、5日又は7日間暴露させた場合に、DEETの死虫率に匹敵する100%の死虫率をもたらした。
【0143】
表HHに示すように、赤アリは、ペーパーディスクを処理するのに使用した組成物によって忌避された。また、残留性に関して、組成物は、ペーパーディスクに施用後少なくとも1週間その効力を保持することによってDEETよりも効能が優れ、これに対してDEETは1日後に効能を失い始めた。表HHは、処理したペーパーディスクへの赤アリの移動の回数を示す。表に記載の時間、0分、6時間、1日、3日、5日、又は7日は、組成物によるペーパーディスクの処理と、処理したペーパーディスクに対する赤アリの暴露との間のおおよその経過時間を示す。
【0144】
【0145】
実施例34
赤アリに対する植物精油を含有する組成物の忌避効果及び殺虫効果
表JJに記載の組成物の殺虫効果及び忌避効果を、実施例32に記載の方法を使用して試験した。前記組成物のそれぞれによる処理は、忌避効果と殺虫効果を生じた。
【0146】
【0147】
種々の変更及び改変が本発明において本発明の範囲又は精神から逸脱することなくなし得ることは、当業者には明らかであろう。明細書及び実施例は、単なる例としてみなされ、本発明の範囲又は精神を限定することを目的とするものではないことが意図される。本明細書で引用した参考文献及び刊行物は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0148】
特に明示しない限りは、明細書、実施例及び特許請求の範囲で使用した成分の量を表す全ての数値、反応条件のような性質などは、全ての場合に“約”という用語で修飾されると理解されるべきである。従って、特に明示しない限りは、明細書、実施例及び特許請求の範囲で挙げた数値パラメーターは、本発明によって決定されると考えられる所定の性質に応じて変化し得る近似である。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】チラミン受容体が移入されたシュナイダー細胞中の受容体特異結合を表す。
【図2】非標識チラミンの存在下又は不存在下で種々の濃度の3H-チラミンと共にインキュベートした後の、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜における3H-チラミンの飽和結合曲線を表す。
【図3】種々の濃度の非標識チラミンの存在下及び不存在下で3H-チラミンと共にインキュベートした後の、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合曲線を表す。
【図4】種々の濃度の非標識リガンド:チラミン(TA)、オクトパミン(OA)、ドーパミン(DA)及びセロトニン(SE)の存在下又は不存在下でチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合曲線を表す。
【図5】種々の濃度のライラックフラワー油(LFO)及びブラックシードオイル(BSO)の存在下及び不存在下で3H-チラミンと共にインキュベートした後の、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合曲線を表す。
【図6】LFO又はBSOの存在下及び不存在下で、あるいは種々の濃度の非標識チラミン(TA)と組み合わせて3H-チラミンと共にインキュベートした後の、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミン(3H-TA)の阻害結合を表す。
【図7】フォルスコリン及びチラミンの存在下で及び不存在下でチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のチラミン依存変化を表す。
【図8】フォルスコリン及びチラミンの存在下及び不存在下でライラックフラワー油及びブラックシードオイルで処理されたチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のチラミン依存変化を表す。
【図9】チラミン、ライラックフラワー油及びブラックシードオイルの存在下及び不存在下でフォルスコリンで処理した後のチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のチラミン依存変化を表す。
【図10】Or83b受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの飽和結合曲線を表す。
【図11】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの飽和結合曲線を表す。
【図12】Or83b受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のフォルスコリン依存変化を表す。
【図13】Or83b受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度のイオノマイシン依存変化を表す。
【図14】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度のイオノマイシン依存変化を表す。
【図15】対照シュナイダー細胞、Or83b受容体を発現するシュナイダー細胞、及びOr43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度のチラミン依存変化を表す。
【図16】植物精油、例えばLFO、ピペロナール、フタル酸ジエチル及びα-テルピネオールと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr83b及びOr43a受容体との相互作用を表す。
【図17】種々の植物精油、例えばBSO、キニーネ、サビネン、α-ツヨン、α-ピネン、d-リモネン及びp-シメンと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr43a受容体との相互作用を表す。
【図18】種々の植物精油、例えばBSO、キニーネ、サビネン、α-ツヨン、α-ピネン、d-リモネン及びp-シメンと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr83b受容体との相互作用を表す。
【図19】種々の植物精油、例えばゲラニオール、アントラニル酸リナリル、フェニルアセトアルデヒド、リナロール、α-テルピネオール、t-アネトール、テルピネン900、リンデノール及びオイゲノールと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr83b及びOr43a受容体との相互作用を表す。
【図20】種々の植物精油、例えばタイム油、カルバクロール及びチモールと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr83b及びOr43a受容体との相互作用を表す。
【図21】種々の植物精油、例えばピペロナール、ピペロニルアルコール、酢酸ピペロニル、及びピペロニルアミンと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr83b及びOr43a受容体との相互作用を表す。
【図22】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するイオノマイシン、チラミン、及びアントラニル酸リナリルの効果を表す。
【図23】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するリナロール、ペリリルアルコール、t-アネトール、ゲラニオール、フェニル アセトアルデヒド、及びオイゲノールの効果を表す。
【図24】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するピペロニル、ピペロニルアルコール、酢酸ピペロニル、及びピペロニルアミンの効果を表す。
【図25】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するα-テルミネオール、リンデノール、及びテルピネン900の効果を表す。
【図26】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するタイム油、チモール、及びカルバクロールの効果を表す。
【図27】Or43a受容体又はOr83b受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するLFOの効果を表す。
【図28】Or43a受容体又はOr83b受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するBSO、α-ピネン、p-シメン、d-リモネン、サビネン、キニーネ、l-カルボン、d-カルボン、及びα-ツヨンの効果を表す。
【図29】チラミン、LFO及びBSOの存在下及び不存在下のOr83b受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のチラミン依存変化を表す。
【図30】チラミン及びフォルスコリンの存在下及び不存在下のLPO及びBSOで処理したOr83b受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のチラミン依存変化を表す。
【図31A】チラミン受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【図31B】チラミン受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【図32A】Or43a嗅覚受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【図32B】Or43a嗅覚受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【図33A】Or83b嗅覚受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【図33B】Or83b嗅覚受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年4月24日付け出願の米国仮出願第60/465,320号、及び2003年12月24日付け出願の米国仮出願第60/532,503号の優先権を主張する。これらの出願は共に、その全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、昆虫を防除するための組成物、方法、細胞系及びレポート(report)に関する。
【背景技術】
【0003】
動物は、多数の一連の環境刺激を認識し、行動反応を生じる化学感覚系や機械感覚系を有する。行動学的研究は、これらの系の遺伝学を理解するために行われている。嗅覚系は、昆虫を含め、種の生存及び維持において役割を果たす。
【0004】
ショウジョウバエは、分子技術を使用する突然変異分析、行動分析、及び電気生理学的分析を受けることができ、そしてその嗅覚系が哺乳動物の嗅覚系に匹敵することから、感覚系を研究するためのモデルの一つである。
【0005】
種々の化学薬品及び混合物が、長年の間、昆虫などの無脊椎動物に選択性があり、脊椎動物、例えば哺乳動物、魚、家禽及びその他の種にほとんど又は全く毒性をもたず且つ環境に残留しない及び害を与えない製品を得ることを目的として、殺虫活性について研究されている。
【0006】
また、有用な十分な殺虫活性を有する従来公知の製品及び商品化されている製品の大部分は、製品の標的でない哺乳動物、魚、家禽又はその他の種に対して有毒又は有害な影響を及ぼす。例えば、有機リン化合物及びカルバメート類は、昆虫及び全ての分類の動物においてアセチルコリンエステラーゼの活性を阻害する。クロルジメホルム及び関連ホルムアニリド類は、昆虫のオクトパミン受容体に作用することが知られているが、脊椎動物における心臓毒の可能性及び動物における発癌性及び種々の昆虫に対する多様な影響のために、市場から排除されてきている。哺乳動物及びその他の標的としないに対して低毒性であり得る別の化合物は、確認する(identify)ことが困難な場合が多い。
【発明の開示】
【0007】
発明の要約
本発明は、昆虫防除用組成物及び及びこれらの組成物の使用方法を含む。本発明は、1種又はそれ以上の植物精油を含有してなる昆虫防除用組成物及びれらの組成物の使用方法を含む。植物精油は、併用すると、相乗効果を有し得る。前記の組成物は、不揮発性で香りのない植物油である不揮発性油を含有し得る。さらに、これらの組成物は、安全であると一般的にみなされる(GRAS)化合物から構成され得ると考えられる。
【0008】
本発明は、1種又はそれ以上の植物精油と昆虫防除剤を含有してなる組成物及びこれらの組成物の使用方法を含む。昆虫防除剤の例としては、DEET及びD-アレスリンが挙げられる。植物精油と昆虫防除剤は、併用すると、相乗効果を有し得る。例えば、DEET29%の昆虫防除活性は、本発明の組み合わせに含有させた場合にはDEET5%を用いて達成し得る。
【0009】
本発明は、昆虫防除活性について化合物を選別する方法を含む。本発明は、チラミン受容体(TyrR)、Or83b嗅覚受容体(Or83b)又はOr43a嗅覚受容体が安定的に移入された細胞系であって昆虫防除活性について組成物を選別するのに使用し得る細胞系を含む。
【0010】
本発明は、昆虫防除活性を有する1種又はそれ以上の組成物を同定するレポートを作成する方法を含む。“レポート”という用語は、印刷文書、データベース、コンピューター装置、又はその他の媒体に含まれる記述又は記載をいう。
【0011】
簡略化のために、“昆虫”という用語を本出願の明細書全体を通じて使用する;しかし、“昆虫”という用語は、昆虫ばかりではなく、クモ形動物、幼虫、及び同様の無脊椎動物も示す。また、本出願のために、“昆虫防除”という用語は、忌避効果、殺虫効果又はこの両方を有することを示す。“忌避効果”とは、昆虫防除用組成物で処理されていない対照の宿主又は領域よりも昆虫防除用組成物で処理されている宿主又は領域から多くの昆虫が忌避される効果である。幾つかの実施態様では、忌避効果とは、昆虫防除用組成物で処理された宿主又は領域から昆虫の少なくとも約75%が忌避される効果である。幾つかの実施態様では、忌避効果とは、昆虫防除用組成物で処理された宿主又は領域から昆虫の少なくとも約90%が忌避される効果である。“殺虫効果”とは、昆虫防除用組成物による処理が昆虫の少なくとも約1%を死に至らしめる効果である。この点で、昆虫防除用組成物のLC1〜LC100(致死濃度)又はLD1〜LD100(致死量)が殺虫効果を生じる。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約10%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約5%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約10%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約25%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約50%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約75%を死に至らしめる効果である。幾つかの実施態様では、殺虫効果は、昆虫防除用組成物による処理が該組成物に暴露された昆虫の少なくとも約90%を死に至らしめる効果である。本発明の幾つかの実施態様では、このような濃度又は用量を用いた処理は、数秒以内又は数分以内に生じる昆虫のノックダウンをもたらすであろう。
【0012】
本発明の組成物は、宿主を直接に処理するか、又は宿主が存在する領域、例えば屋内居住空間、屋外の中庭又は庭園を処理することによって昆虫を防除するのに使用し得る。本出願の目的ために、宿主は、植物、ヒト又はその他の動物と定義される。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、昆虫防除に関する組成物、方法、細胞系及びレポートに関する。昆虫防除は、チラミン受容体(TyrR)、Or83b嗅覚受容体(Or83b)、及びOr43a嗅覚受容体(Or43a)からなる1種又はそれ以上の受容体に関するものであり得る。
【0014】
本発明は、昆虫防除活性について組成物を選別する方法を含む。本発明は、TyrR、Or43a、又はOr83bを安定的に移入されたショウジョウバエのシュナイダー(Schneider)細胞系であって、昆虫防除活性について組成物を選別するのに使用し得る細胞系を含む。TyrRの核酸配列及びペプチド配列は、図31A及び31Bに示す。Or43aの核酸配列及びペプチド配列は、図32A及び32Bに示す。Or83bの核酸配列及びペプチド配列は、図3A及び33Bに示す。
【0015】
昆虫防除活性の可能性は、TyrR、Or83b、及び/又はOr43aを発現する細胞系で受容体に対する試験組成物の親和性を測定することによって確認し得る。また、昆虫防除活性についての可能性は、試験組成物を用いて処理した後にTyrR、Or83b及び/又はOr43aを発現する細胞系の細胞内cAMP及び/又はCa2+の変化を測定することによって確認し得る。TyrR受容体、Or83b受容体及びOr43a受容体の遺伝子配列は、種々の昆虫種の間で実質的に類似性を有する。このように、これらの受容体を発現するショウジョウバエのシュナイダー細胞系は、種々の昆虫種において昆虫防除活性を有する組成物を選別するのに使用し得る。
【0016】
本発明は、昆虫防除用組成物及びこれらの組成物の使用方法を含む。本発明は、1種又はそれ以上の植物精油を含有してなる昆虫防除用組成物及びこれらの組成物の使用方法を含む。植物精油は、併用された場合には、相乗効果を有し得る。本発明の組成物は、下記の油又はその混合物を含有し得る:
t-アネトール ライム油 ピペロニル
ブラックシードオイル(BSO) d-リモネン 酢酸ペロニル
カンフェン アントラニル酸リナリル ピペロニルアルコール
カルバクロール リナロール ピペロニルアミン
d-カルボン リンデノール キノン
l-カルボン クエン酸メチル サビネン
1,8-シネオール ジヒドロジャスモン酸メチル α-テルピネン
p-シメン ミルセン テルピネン900
フタル酸ジエチル ペリリルアルコール α-テルピネオール
オイゲノール フェニルアセトアルデヒド γ-テルピネオール
ゲラニオール α-ピネン 2-tert-ブチル-p-キノン
クエン酸イソプロピル β-ピネン α-ツヨン
レモングラス油 ピペロナール タイム油
ライラックフラワー油(LFO) チモール
【0017】
また、本発明の組成物は、下記の油又はその混合物を含有し得る:
硫化アリル β-エレメン サリチル酸メンチル
三硫化アリル γ-エレメン ミルテナール
二硫化アリル エレモール 酢酸ネラールジメチル
アネトール エストラゴール ネロリドール
アルテミシアルコール酢酸エステル 2-エチル-2-ヘキセン-1-オール ノナノン
酢酸ベンジル 酢酸オイゲノール 1-オクタノール
ベンジルアルコール α-ファルネセン E オシメノン
ベルガモテン (Z,E)-α-ファルネセン Z オシメノン
β-ビサボレン E-β-ファルネセン 3-オクタノン
ビサボレンオキシド フェンチョン オシメン
α-ビサボロール フランジエン フラノ- 酢酸オクチル
オイデスマ-1,3-ジエン
ビサボロールオキシド ハッカ油
ビサボロールオキシドβ フラノオイデスマ-1,4-ジエン α-フェランドレン
酢酸ボルニル フラノゲルマクラ-1,10(15)- β-フェランドレン
ジエン-6-オン
β-ブルボレン ピペロナール
α-カジノール フラノセスキテルペン プレナール
カンフェン ゲラニオール プレゴン
α-カンホレン 酢酸ゲラニル サビネン
α-カンホレンアルデヒド ゲルマクレンD 酢酸サビニル
カンファー ゲルマクレンB α-サンタレン
カリオフィレンオキシド α-グルユネン サンタロール
カマアズレン α-フムレン Sativen
シンナムアルデヒド α-ヨネン 5-セリネン
シス-ベルベノール β-ヨネン β-セスキフェンランドレン
シトラールA イソボルネオール スパツレノール
シトラールB イソフラノゲルマクレン タゲトン
シトロネラール イソメントン α-テルピネン
シトロネロール イソプレゴン 4-テルピネオール
酢酸シトロネリル ジャスモン α-テルピノレン
ギ酸シトロネリル ライラックフラワー油 酢酸α-テルピニル
α-コパエン リモネン α-ツエン
コーンミント油 リナロール チミルメチルエーテル
β-コストール 酢酸リナリル トランス-カリオフィレン
クリプトン リンデストレン トランス-ピノカルベオール
クルゼレノン メチル-アリル-トリスルフィド トランス-ベルベノール
d-カルボン メントール ベルベノン
l-カルボン 2-メトキシフラノヂエン ヨモギアルコール
Davanone メントン ジンギベレン
ジアリルテトラスルフィド 酢酸メンチル ジヒドロタゲントン
ジヒドロピロクルゼレノン 桂皮酸メチル
【0018】
2種以上の油を含有するこれらの組成物において、それぞれの油は、組成物混合物の重量で約1%〜約99%を構成し得る。例えば、本発明の一つの組成物は、チモール約1%と ゲラニオール約99%を含有する。場合によっては、組成物は、さらに不揮発性の香りのない植物油である不揮発性油を含有していてもよい。例えば、組成物は下記の1種又はそれ以上の不揮発性油を含有することができる:
ヒマシ油 鉱油 サフラワー油
トウモロコシ油 オリーブ油 ゴマ油
クミン油 落花生油 ダイズ油
【0019】
例えば、本発明の一つの組成物は、チモール約1%と、ゲラニオール約50%と、鉱油約49%を含有する。さらに、これらの組成物は、安全であると一般的にみなされる(GRAS)化合物、例えば:タイム油、ゲラニオール、レモングラス油、ライラックフラワー油、ブラックシードオイル、ライム油、オイゲノール、ヒマシ油、鉱油、及びサフラワー油から構成され得ると考えられる。
【0020】
本発明は、1種又はそれ以上の植物精油と昆虫防除剤、例えばDEET及びD-アレスリンを含有してなる組成物、及びこれらの組成物の使用方法を含む。植物精油と昆虫防除剤は、併用すると、相乗効果を有し得る。例えば、DEET29%の昆虫防除活性は、本発明の組み合わせに含有させた場合にはDEET5%を用いて達成し得る。
【0021】
本発明の組成物は、適当な担体及び場合によっては適当な界面活性剤、2種以上の植物精油化合物及び/又はこれらの誘導体(天然物及び/又は合成物)、例えばラセミ混合物、鏡像異性体、ジアステレオマー、水和物、塩、溶媒和物及び代謝産物などとの混合物で含有し得る。
【0022】
適当な担体としては、担体が本発明の組成物に悪影響を及ぼさない限りは、当該技術において植物精油について知られている担体を挙げ得る。本明細書で使用する“担体”という用語は、無機物又は有機物であってもよいし及び合成又は天然起源のものであってもよい不活性又は液状の物質を意味し、処理すべき容器又はカートンあるいはその他の対象物に対するその適用あるいはその貯蔵、輸送及び/又は取り扱いを容易にするために活性化合物と混合されるか又は配合される。一般的に、忌避剤、殺虫剤、除草剤又は殺菌剤を製剤するのに慣用される物質が適当である。本発明の組成物は、単独で用いてもよいし、又は必要ならばこのような固形及び/又は液状分散性担体ビヒクル及び/又はその他の公知の適合性活性剤、例えばその他の忌避剤、殺虫剤、又は殺ダニ剤、殺線虫剤、殺菌剤、殺細菌剤、殺鼠剤、除草剤、肥料、成長調節剤などとの混合物の形で用いてもよいし、あるいはこれらから調製される特定の用途の個々の投薬製剤の形、例えば使用できる状態である溶液、乳剤、懸濁剤、粉剤、ペースト剤、及び粒剤の形で用いてもよい。本発明の組成物は、所望ならば、慣用の不活性農薬希釈剤又は慣用の昆虫防除剤に使用できる種類の増量剤、例えば慣用の分散性担体ビヒクル、例えばガス、溶液、乳濁液、懸濁液、乳剤、噴霧粉末、ペースト、水溶剤、粉剤、粒剤、フォーム、ペースト剤、錠剤、エアゾール、活性化合物含浸天然及び合成物質、微細カプセル、種子に使用される被覆組成物、及び燃焼装置を用いて使用される製剤、例えば燻蒸用カートリッジ、燻蒸缶及び燻蒸用コイル、並びにULV冷ミスト及び加熱ミスト製剤などと配合又は混合することができる。
【0023】
本発明の組成物はまた、界面活性剤を含有していてもよい。本発明で使用し得る界面活性剤、すなわち慣用の担体ビヒクル助剤の例は、乳化剤、例えば非イオン性及び/又は陰イオン性の乳化剤(例えば、脂肪酸のポリエチレンオキシドエステル、脂肪アルコールのポリエチレンオキシドエーテル、アルキル硫酸塩、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルブミン加水分解物など、特にアルキルアリールポリグリコールエーテル、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウムなど);及び/又は分散剤、例えばリグニン、亜硫酸パルプ廃液、メチルセルロースなどからなる。
【0024】
本発明の組成物は、宿主を直接に処理するか、又は宿主が存在するであろう領域を処理することによって昆虫防除に使用し得る。例えば、宿主は、クリーム又は噴霧製剤を使用することによって直接に処理し得、例えばヒトの皮膚に外面施用又は局所使用し得る。組成物は、宿主に、例えばヒトの場合には、皮膚又は毛髪に使用される種々のパーソナル製品又は化粧品の製剤を使用して施用することができる。例えば、香料、着色剤、顔料、染料、オーデコロン、皮膚クリーム、皮膚ローション、デオドラント、タルク、バスオイル、石鹸、シャンプー、ヘアーコンディショナー及び整髪剤を使用できる。
【0025】
動物、ヒト又はヒト以外の動物の場合には、宿主はまた、経口的に送達される組成物の製剤を使用することによって直接に処理し得る。例えば、組成物は、液状カプセルに封入することができるし、口から取り込ませることができる。
【0026】
ある領域は、本発明の組成物を用いて、例えば、該組成物を含有する噴霧製剤、例えばエアゾール又はポンプスプレー、あるいは燃焼製剤、例えばキャンドル又は芳香片を使用することによって処理し得る。勿論、種々の処理法が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく使用し得る。例えば、組成物は、家庭用品、例えば: 芳香剤(例えば、加熱、例えば電気加熱されるか又は燃焼によって昆虫忌避物質を放出する“加熱”芳香剤);塗装面クリナー;又は洗濯用品(例えば、洗濯用洗浄剤含有組成物、コンディショナー)に含有させ得る。
【実施例】
【0027】
本発明を、以下の具体的実施例であって限定されない実施例によりさらに例証する。以下の実施例は、実施例に示した及び含まれる数値、結果及び/又はデータにもかかわらず予言的なものである。実施例1〜5は、チラミン受容体(TyrR)を発現する細胞系の調製及びこの細胞系を使用する本発明の組成物の選別に関する。実施例6〜11は、Or83b受容体を発現する細胞系の調製、Or43a受容体を発現する細胞系の調製、及びこれらの細胞系を使用する前記組成物の選別に関する。実施例12〜34は、本発明の組成物の忌避効果及び/又は殺虫効果の測定に関する。
【0028】
実施例1
チラミン受容体(TvrR)を安定的に移入したシュナイダー細胞系の調製
A.キイロショウジョウバエのチラミン受容体のPCR増幅及びサブクローニング
バークレー・ショウジョウバエゲノムプロジェクトを通じて得られるキイロショウジョウバエ(Drosophilia melanogaster)の頭部のcDNAファージライブラリーGHから、チラミン受容体を増幅させた(Baumann, A., 1999, Drosophilia melanogaster mRNA for octopamine receptor, splice varinat 1B NCBI direct submission, Accession AJ007617)。TyrRの核酸配列及びペプチド配列を、図31A及び31Bに示す。このライブラリーから液体培養溶菌液を使用して、ファージDNAを精製した(Baxter, et al., 1999, Insect Biochem Mol Biol 29, 461-467)。手短に言えば、ショウジョウバエのチラミン受容体(TyrR)の読み取り枠を増幅させるのに使用するオリゴヌクレオチド(Han, et al., 1998, J Neurosci 18, 3650-3658; von Nickisch-Rosenegk, et al., 1996. Insect Biochem Mol Biol 26, 817-827) は、5´オリゴヌクレオチド:
及び3´オリゴヌクレオチド:
からなる。大文字はチラミン受容体配列に一致する。付加されたKozak配列〔Grosmaitre, X., Jacquin-Joly, E., 2001 Mamestra brassicae putative octopamine receptor (OAR) mRNA, complete cds. NCBI direct submission, Accession AF43878)〕は、下線を引いたヌクレオチドによって示される。5´オリゴヌクレオチドはまた、EcoRI部位を含有し、また3´オリゴヌクレオチドXbaI部位も含有する。PCRを、Ventポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用し、次の条件を用いて行った:約95℃、約5分を約1サイクル;約95℃、約30秒;及び約70℃、約90秒間を約40サイクル;及び約70℃、約10分間を約1サイクル。
【0029】
PCR生成物をEcoRI及びXbaIで消化し、pCDNA3 (Invitrogen)中にサブクローン化し、そして自動DNA配列決定装置(Vanderbilt Cancer Center)で両方の鎖を配列決定した。この読み取り枠をタンパク質に翻訳すると、公表されたチラミン受容体配列(Saudou, et al., The EMBO Journal vol 9 no 1, 6-617)と正確に一致することが認められた。ショウジョウバエのシュナイダー細胞中で発現させるために、TyrR ORFをpCDNA3から切り取り、EcoRI及びXbaI制限部位を使用してpAC5.1/V5-His(B)[pAc5(B)]に挿入した。
【0030】
トランスフェクションについては、Invitrogen Drosophilia Expression System (DBS)マニュアルに記載のリン酸カルシウム-DNA共沈プロトコールを使用して、ショウジョウバエのシュナイダー細胞に、pAc5(B)-TyrR ORFを安定的に移入した。共沈プロトコールは、安定したトランスフェクションのために抗生物質抵抗性プラスミドを使用した以外は、過渡的トランスフェクション又は安定したトランスフェクションについて同じである。安定的に移入された細胞の少なくとも約10個のクローンを選択し、別々に増殖させた。前記受容体を発現する安定なクローンを、3H-チラミンを使用して全細胞結合/取り込みによって選択した。このアッセイについては、細胞を洗浄し、昆虫食塩水(insect saline)(170mM NaCl、6mM KCl、2mM NaHCO3 、17mMグルコース、6mM NaH2PO4 、2mM CaCl2 及び4mM MgCl2)に回収した。昆虫食塩水約1mL中の約3百万個の細胞を、4nM 3H-チラミンと共に約23℃で約5分間インキュベートした。細胞を約30秒間遠心分離し、得られた結合溶液を吸引した。得られた細胞ペレットを、昆虫食塩水約500μlで洗浄し、細胞を再懸濁し、そしてシンチレーション液に移した。非特異的結合を、反応において約50μM非標識チラミンを含有させることによって測定した。結合は、液体シンチレーションβ-カウンター(Beckman、Model LS 1801)を使用して放射能をカウントすることによって定量した。
【0031】
B.高濃度の機能的に活性なチラミン受容体タンパク質を有するクローンの選別
チラミン受容体の結合/取り込みを行い、移入されたクローンの中のどのクローンが高濃度の機能的に活性なチラミン受容体タンパク質を有するかについて調べた。チラミン受容体について約10個のクローン系が存在し及び対照について約2個のpAc(B)が存在する。約50pM非標識チラミンを特異競合剤として存在させるか又は存在させずに、3H-チラミン(約4nM/反応)をトレーサーとして使用する。このアッセイについては、細胞をプレート中で増殖させ、カウントする細胞用の培地約3ml中に回収し、そして細胞の個数を細胞約3×106個/mlに調節した。約2個のpAcBクローンを同時に対照として使用した。反応当たりにつき約1mlの細胞懸濁液を使用した。特異結合に基づいて、約3個のクローンが高濃度の活性チラミン受容体タンパク質を発現した。最も特異性の高いチラミン受容体結合(約90%)を有するクローンを、別の研究用に選択した。選択したクローンを増殖させ、液体窒素中で保存した。選択したクローンのアリコートを、全細胞結合及び速度論研究及び選別研究用の形質膜調製用に増殖させた。対照pAcBは、チラミン受容体について特異的結合を実証しなかった。
【0032】
C.チラミン受容体の相互作用について組成物を選別するためのチラミン受容体を移入したシュナイダー細胞の効果
チラミン受容体(約1×106細胞/ml)を移入した細胞を、マルチウエルプレートの各ウエルで培養した。細胞を塗布した約24時間後に、培地を回収し、約1mlの昆虫食塩水(約23℃)と交換した。種々の濃度の3H-チラミン(約0.1〜10nM)を、約10μMの非標識チラミンと共に及び非標識チラミン無しで加え、室温(RT)でインキュベートした。約20分のインキュベーションの後に、反応を食塩水の迅速吸引によって停止させ、約2mlの昆虫食塩水(約23℃)で少なくとも1回洗浄した。細胞を、0.3M NaOH約300μlにRTで約20分間可溶化させた。溶解した細胞を、約4mlの液体シンチレーション溶液(LSS)に移し、約30秒間激しく攪拌し、その後に液体シンチレーションβ-カウンター(Beckman、Model LS1801) (LSC)を使用して放射能をカウントした。
【0033】
図1に関して、受容体特異的結合データは、細胞1×106個当たりのfmol特異結合として表し、3H-チラミン濃度の関数として測定した。特異結合の値は、約10μMの非標識チラミンの不存在下の値と存在下の値の間の差として算出した。図1に示すように、最大特異結合が約5nM 3H-チラミンで生じた。非移入細胞は、約100μMほどの高い濃度ではチラミンに反応しなかった。
【0034】
pAcB-TyrRを安定的に移入した細胞におけるチラミン受容体の速度論を研究するために、前記移入細胞から粗膜画分を調製し、平衡解離定数(Kd)、最大結合能(Bmax)、平衡阻害剤解離定数(Ki)及びEC50(結合が50%阻害される有効濃度)を算出するのに使用した。受容体結合活性について膜タンパク質の最適濃度を調べるための予備研究を行った。この研究において、種々の濃度のタンパク質(約10〜50μg/反応)を、約1mlの結合緩衝液(50mM Tris、pH7.4、5mM MgCl2及び2mMアスコルビン酸)中でインキュベートした。約5nMの3H-チラミンを、約10μM非標識チラミンと共に及び非標識チラミン無しで加えることによって、反応を開始させた。室温で約1時間インキュベートした後に、予め約0.3%ポリエチレンイミン(PEI)に浸しておいたGF/Cフィルター(VWR)に通して濾過することによって反応を停止させた。このフィルターを約4mlの氷冷Tris緩衝液で1回洗浄し、風乾し、その後にLSCを使用して残留放射能を測定した。結合データを、曲線の当てはめ(GraphPad software、Prism)により分析した。データは、チラミン受容体特異結合において約10、20、30及び50μgタンパク質/反応の間で差がないことを実証している。従って、約10μgタンパク質/反応を使用した。
【0035】
TyrRを発現する膜のチラミン受容体(TyrR)についてBmax値及びKd値を測定するために、飽和結合実験を行った。手短に言えば、約10μgのタンパク質を、一連の濃度(約0.2〜20nM)の3H-チラミンと共にインキュベートした。結合データを、曲線の当てはめ (GraphPad software、Prism)により分析し、チラミン受容体に対するチラミン結合のKdを測定した。
【0036】
TyrRに対する数種のリガンドの親和性を調べるために、数種の化合物の濃度を高めながら、約2nM 3H-チラミンの結合を阻害する能力について試験した。飽和アッセイ及び阻害アッセイについては、全結合及び非特異結合を、約10μMの非標識チラミンの不存在下及び存在下でそれぞれで測定した。受容体結合反応物を、制限された光の中で、室温(RT)で約1時間インキュベートした。反応は、予め約0.3%ポリエチレンイミン(PEI)に浸しておいたGF/Cフィルター(VWR)で濾過することによって反応を停止させた。このフィルターを約4mlの氷冷Tris緩衝液で1回洗浄し、風乾し、その後にLSCを使用して残留放射能を測定した。結合データを、曲線の当てはめ(GraphPad software、Prism)により分析した。
【0037】
図2に関して、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミン(3H-TA)の飽和結合曲線を描くと、3H-チラミンは、pAcB-TyrRが安定的に移入された細胞中でチラミン受容体に対して高い親和性を有し、Kdは約1.257nMと測定され且つBmaxは約0.679 pmol/mgタンパク質と測定された。
【0038】
図3に関して、種々の濃度の非標識チラミン(TA)の存在下及び不存在下でチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミン(3H-TA)の阻害結合曲線を描くと、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のチラミン受容体に対するチラミンのEC50及びKiは、それぞれ約0.331μM及び0.127μMであった。
【0039】
チラミン受容体(TyrR)の薬理学的プロフィールを調べるために、多数の推定されるショウジョウバエ神経伝達物質についてチラミン受容体を発現する膜から3H-チラミン(3H-TA)結合を置換する能力を試験した。図4に関して、種々の濃度の非標識リガンド〔例えば、チラミン(TA)、オクトパミン(OA)、ドーパミン(DA)及びセロトニン(SE)〕の存在下及び不存在下でチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミン(3H-TA)の阻害結合曲線を描くと、チラミンは、ショウジョウバエTyrRについて最も高い親和性(約0.127μMのKi 、約0.305μMのEC50)を示した、オクトパミン、ドーパミン及びセロトニンは、置換3H-チラミン結合の置換においてチラミンよりも効果が劣った。
【0040】
表Aに関して、リガンドのKi及びEC50 を挙げると、有効性の順序は、次の通り:チラミン>オクトパミン>ドーパミン>セロトニンであり、安定的に移入されたシュナイダー細胞が機能的に活性なチラミン受容体を発現している可能性を示す。
【0041】
このように、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞は、チラミン受容体と相互作用する組成物の研究及び選別用モデルとして有効である。
【0042】
実施例2
チラミン受容体を発現する細胞の処理及び細胞内[cAMP]に対する組成物の効果
細胞をシャーレで増殖させ、培地を処理前日に変えた。細胞が約95%融合した際に、培地を吸引し、細胞を約27℃の昆虫食塩水(170mM NaCl、6.0mM KCl、2.0mM NaHCO3 、17.0 mMグルコース、6.0mM NaH2PO4 、2.0mM CaCl2 、4.0mM MgCl2;pH7.0)約5mLで1回洗浄した。昆虫食塩水約20mLを加え、細胞を穏やかに擦り取ることによって回収した。細胞のアリコートを血球計でカウントし、次いで細胞を約5分間、約1000RPMで遠心分離した。細胞を再懸濁してmL当たり細胞約3×106個を得た。DBMXを約200μMまで加えた。次いで、細胞懸濁物約1mLを処理用に分取した。フォルスコリン(cAMP誘発剤)、チラミン又は種々の候補組成物を加え、細胞を約27℃で約10分間インキュベートした。
【0043】
処理した細胞を、約13000 gで約10秒間遠心分離した。溶液を吸引し、約−20℃の70%エタノール約1mLを加えた。細胞のペレットをかき混ぜることによって崩壊させ、試料を約−20℃で一夜置いた。エタノール抽出を行った後に、細胞砕片を約13000 gで約5分間遠心分離することによってペレット化した。上清を管に移し、rotary speed-vac中で凍結乾燥して乾固し、得られた抽出物を約100μLのTEに再懸濁し、cAMPアッセイに使用した。
【0044】
cAMPアッセイは、cAMP結合タンパク質に対する内因性cAMPと3H-cAMPとの間の競合結合に基づく。3H-cAMP Biotrak装置(Amersham Biosciences) を、製造業者の使用説明書により、このアッセイに使用した。手短に言えば、細胞抽出物約50μLを、約50μLの3H-cAMP及び約100μLのcAMP結合タンパク質と共に、氷浴中で約2〜4時間インキュベートした。次いで、木炭(約100μL)を加え、溶液を約4℃で約3分間、遠心分離した。反応混合物約200μLを取り出し、3H-cAMPの量を、シンチレーションでカウントすることによって調べた。細胞由来の内因性cAMPの量を、反応当たり約0〜16 pmolの範囲の冷cAMPを用いて、標準曲線を使用して算出した。
【0045】
実施例3
チラミン受容体を発現する細胞の処理及び細胞内[Ca2+]に対する組成物の効果
細胞内カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)を、蛍光指示薬fura-2のアセトキシメチル(AM)エステルを使用することによって測定した(Enan, et al., Biochem. Pharmacol vol 51, 447-454)。この研究では、チラミン受容体を発現する細胞を標準条件下で増殖させた。細胞懸濁物をアッセイ緩衝液(140mM NaCL、10mM HEPES、10mMグルコース、5mM KCl、1mM CaCl2 、1mM MgCl2)中で調製し、細胞の個数をml当たり約2×106個に調整した。手短に言えば、約1.0mlの細胞懸濁物(約2×106 細胞)を、約5μMのFura 2/AMと共に約28℃で約30分間インキュベートした。インキュベーション後に、細胞を約3700 rpmで室温で約10秒間 遠心分離することによってペッレット化し、次いで約1.5mlのアッセイ緩衝液に再懸濁した。[Ca2+]i変化を、試験化学物質の存在下及び不存在下で分光蛍光光度計で分析した。励起波長は、約340nm (Ca2+結合fura-2によって生じる)及び約380mn (Ca2+無含有fura-2に相当する)であった。蛍光の強さを、約510mnの発光波長で監視した。蛍光アーチファクト(artifacts)の吸光度は、使用した化合物のいずれについても認められなかった。約340/380 nmの比を算出し、時間の関数としてプロットした。
【0046】
実施例4
チラミン受容体を発現する細胞におけるチラミン受容体結合活性に対するライラックフラワー油及びブラックシードオイルの効果
特定の油、すなわちライラックフラワー油(LFO)及びブラックシードオイル(BSO)が相互作用し、チラミン受容体の機能的発現を調節するかどうかを調べるために、安定的に移入されたシュナイダー細胞及び及び非移入シュナイダー細胞由来の膜を、3H-チラミン結合について分析した。
【0047】
受容体部位での3H-チラミンとの相互作用については、前記と同じ結合プロトコールを使用した。LFO及びBSOの用量応答(約1〜100μg/ml)を行い、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合に対するLFO及びBSOの効果を調べた。図5に関して、種々の濃度のLFO及びBSOの存在下及び不存在下でのチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合を描くと、チラミン受容体に対する3H-チラミンの阻害が、LFO及びBSOによる処理に用量に依存して応答して実証された。LFO及びBSOのEC50値は、それぞれほぼ10μg/ml及び20 pg/mlの付近にあった。
【0048】
図6について、LPO又はBSOの存在下及び不存在下で、あるいは約1μM及び10μMの非標識チラミンと組み合わせて、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合を描くと、LFO(約25 μg/ml)は、それ自体でチラミン受容体に対する3H-チラミンの結合を阻害した。この効果は、約10μM(約1.74μg/ml)の非標識チラミンの効果に対してはあいまいである(equivocal)。また、LFOは、非標識チラミンを約1μMで使用した場合にのみ3H-チラミン結合に対する非標識チラミンの有効性を高める。これに対して、BSO(約25μg/ml)は、3H-チラミン結合に対してLFOよりも効果がなかった。しかし、BSOは、非標識チラミンの濃度に関係なく、3H-チラミン結合に対する非標識チラミンの有効性を著しく増大する。上記2種類の油は、非移入シュナイダー細胞において3H-チラミン結合に対して効果を示さなかった。
【0049】
このように、LFO及びBSOはチラミン受容体と異なって相互作用すると思われる。理論又はメカニズムに縛られることを望まないが、LFO及びチラミンは同じ結合部位で競合し、これに対してBSOは内因性リガンド(チラミン)よりも受容体の種々の部位で作用すると思われる。ある種の別の油、例えば、本出願明細書に最初に明示した油もまた、チラミン受容体と相互作用する。
【0050】
実施例5
チラミン受容体を発現する細胞における細胞内[cAMP]に対するライラックフラワー油及びブラックシードオイルの効果
チラミン受容体の試験化学物質依存結合を調べるために、pAcB-TyrRをシュナイダー細胞中で安定的に発現させた。移入及び非移入細胞を、フォルスコリン(FK)(約10μM)の存在下及び不存在下で、チラミン(約10μM)、LFO(約25μg/ml)及びBSO(約25μg/ml)で処理した。cAMP産生を前記のように3H-cAMPアッセイキット(Amersham)を使用して測定した。
【0051】
この細胞モデルでのcAMPカスケードが機能的に活性であることを確実にするために、フォルスコリン(cAMP誘発剤)を標準薬として使用した。図7〜9〔チラミン(約10μM)及びフォルスコリン(約10μM)の存在下及び不存在下で、LFO(約25μg/ml)及びBSO(約25μg/ml)で処理した後のチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP量のチラミン依存変化を表す〕に示すように、溶媒(エタノール)のみで処理した細胞中のcAMPの基礎量と比べて、フォルスコリン処理に応答して移入細胞中でのみcAMP量の約19倍の増大があった。
【0052】
一方、チラミンは、cAMP産生においてわずかな低下(約10%)を誘導した。しかし、チラミンは、チラミン受容体を発現する細胞中のフォルスコリンで刺激されたcAMP量を著しくアンタゴナイズし、チラミン受容体が、図7に示すようにチラミンの存在下でGαi/Oに結合することを示唆する。cAMP量の約34%及び25%の低下が、移入細胞においてのみLFO及びBSOそれぞれの処理に応じて認められた(図8)。チラミンは、チラミン受容体移入細胞中のcAMP産生に対するLFOの効果を高めるが、BSO及びチラミンの同時処理は、図8に示すように、BSOそれ自体の効果を越えるcAMP量の変化を誘導しなかった。チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のLFO及びBSOで低下させたcAMP量は、図9に示すように、フォルスコリンの存在下で減少した。
【0053】
ある種の別の植物精油、例えば、本出願明細書に明示し植物精油もまた、チラミン受容体を発現する細胞において細胞内cAMPの量の変化をもたらす。
【0054】
実施例6
嗅覚受容体(Or83b及びOr43a)を安定的に移入されたシュナイダー細胞系の調製
A.キロショウジョウバエ嗅覚受容体Or83b及びOr43aのRT-PCR増幅及びサブクローニング
全RNAを、野生型キイロショウジョウバエ(Drosophilia melanogaster)の頭部及び触覚からTrizol試薬(Invitrogen)を使用して調製した。これらを、モーター駆動テフロン乳棒及びガラスホモジナイザーを使用してTrizol中でホモジナイズした。次いで、RNAを、製造業者の取扱説明書に従って調製し、沈降によるプロテオグリカン及び多糖類の除去を含む。全RNAを、プライマーとしてオリゴ-dTを使用し且つMuLV逆転写酵素(Applied Biosystems)を使用して逆転写した。読み取り枠をPC増幅するために、下記のオリゴヌクレオチドを使用した:
Or83bセンス
Or83bアンチセンス
Or43aセンス
及びOr43aアンチセンス
大文字は、Or83b及びOr43a受容体の配列と一致する。センスオリゴヌクレオチドは、NotI部位を含有し、またアンチセンスオリゴヌクレオチドは、SacII部位を含有する。両方の制限部位は、下線を付したヌクレオチドにより示す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、停止コドンを含んでおらず、従ってpAC 5.1プラスミド由来のV5エピトープは、翻訳されたタンパク質と共にフレーム内にあるであろう。Or83bのPCR増幅については、Ventポリメラーゼ (New Engl及びBiolabs)を、次の条件と共に使用した:約95℃、約5分で1サイクル; 約95℃、約30秒;及び約70℃、約90秒で約40サイクル;及び約70℃、約10分で1サイクル。Or43aのPCR増幅については、Failsafe PCRプレミックス選別キット(Epicentre Technologies) を次の条件と共に使用した:約95℃、約5分を約1サイクル;約95℃、約30秒;約60℃、約30秒及び約70℃、約90秒を約50サイクル;及び約70℃、約10分を約1サイクル。Failsafeプレミックス緩衝液Fは、正確な大きさの生成物を生成する。PCR生成物を、SacII及びNotIで消化し、ゲル精製し、pAC5.1/V5 His B(Invitrogen)に結合した。挿入片を、自動蛍光配列決定装置(Vanderbilt Cancer Center)で両方の鎖について配列決定した。Or83b読み取り枠及びOr43a読み取り枠の両方は、PubMed上の配列情報及びWebサイト上のゲノム配列において見出された配列情報と比べると、同じタンパク質をコードした。Or43aの核酸配列及びペプチド配列を、図32A及び32Bに示す。Or83bの核酸配列及びペプチド配列を、図33A及び33Bに示す。
【0055】
トランスフェクションについて、ショウジョウバエのシュナイダー細胞に、前記のInvitrogen Drosophila Expression System (DBS) マニュアルに記載のリン酸カルシウム−DNA共沈プロトコールを使用して、pAc5(B)-Or83b ORF又はpAc5(B)-Or43a ORFを安定的に移入した。Or83b又はOr43aのいずれかを安定的に移入された細胞の少なくとも約10個のクローンを選択し、別々に増殖させた。安定なクローンを、これらが対応するmRNAを発現するか否かを試験するために、RT-PCR法を使用して分析した。製造業者の取り扱い説明書に従ってTrizolを使用して、細胞からRNAを調製した。全RNAを、MuLV逆転写酵素を用いて逆転写した。Ventポリメラーゼ並びに次のプライマー:Or83bセンス及びOr83bアンチセンス;Or43aセンス及びOr43aアンチセンスを使用してPCRを行った。PCR生成物をアガロースゲル電気泳動により分析し、RT-PCRに使用した対照シュナイダー細胞RNAと比較した。r83b-mRNA又はOr43a-mRNAを高度に発現するクローンを、別の研究で使用して、タンパク質発現(ウエスタンブロット)、及びチラミン及びcある種の植物精油による処理に応じるシグナル伝達(cAMP産生及び[Ca2+])を扱った。
【0056】
RT-PCRを使用して、どのクローンがOr83b及びOr43a遺伝子を発現したかを調べた。アガロースゲル分析は、約10個のクローンのうち約4個のクローンが約1.46 kbの正確な大きさの生成物を生成することを示した。同様に、Or43aについて、約2個のクローンが約1.1 kbの正確な大きさの生成物を生成した。これらの生成物のいずれも、対照シュナイダー細胞についてPCRを行った場合には得られなかった。mRNAを発現するクローンを、前記受容体と共にさらなる研究用に選択した。
【0057】
B.Or83b及びOr43a受容体相互作用について組成物を選別するためのOr83b受容体又はOr43a受容体を移入したシュナイダー細胞系の効果
Or83b受容体及びOr43a受容体が、チラミンについて特異的結合部位を含有しているか否かを扱うために、Or83b受容体又はOr43a受容体を発現する膜を、前記のようにしていずれかの受容体を発現する細胞から調製し、3H-チラミンとの競合結合に使用した。結合アッセイプロトコールは、まさに前記のようにTyrRを発現する細胞について説明したものである。図10に示すように、約20μMの非標識チラミンの存在下及び不存在下で、Or83b受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの飽和結合曲線を描き、及び図11に示すように、Or43a受容体を発現する細胞について上記と同じ情報を描くと、3H-チラミンはOr83b受容体及びOr43a受容体に特異的に結合した。表Bに示すように、チラミンは、Or83b受容体に結合し、約96.90nMのKd及び約4.908pmol/mgタンパク質のBmaxを有し、Or43aについては、対応する値はKdが約13.530nM及びBmaxが約1.122 pmol/mgタンパク質であった。
【0058】
【0059】
実施例7
嗅覚受容体を発現する細胞でのcAMPの産生
この細胞モデルでのcAMPカスケードが機能的に活性であることを裏付けるために、フォルスコリン(cAMP誘発剤)を標準薬として使用した。サイクリックAMPの量を、実施例2に記載のcAMPアッセイを使用して測定した。図12に示すように、Or83b受容体を発現する細胞中のcAMP量のフォルスコリン依存変化を描くと、約10μMフォルスコリンを用いて室温で約10分間処理した細胞中の基礎cAMP量から約13倍の増大がある。Or43a受容体を発現する細胞を用いて、同様の結果が得られた。このように、嗅覚受容体を発現する細胞は機能的に活性なcAMPカスケードを有する。
【0060】
実施例8
嗅覚受容体を発現する細胞中でのCa2+の細胞内動員
細胞内Ca2+濃度を、実施例3に記載の方法で測定した。カルシウム動員は、Or83b受容体又はOr43a受容体を発現する細胞内でイオノマイシン(Ca2+誘発剤)及びチラミンによる処理に応じて生じる。具体的には、図13及び14に関して、図では340 nm及び380 nmによる励起から測定された蛍光比が、Or83b又はOr43aを発現する細胞に約2μMのイオノマイシンを加えた場合の細胞内カルシウム濃度と相関性があり、細胞内カルシウムの顕著な増加が検出された。カルシウムの約3.8倍及び7倍の増加が、Or83b及びOr43aそれぞれを発現する細胞でイオノマイシンによる処理に応じて認められた。図15に関して、約10μMでのチラミンの試験はまた、Or83b及びOr43aそれぞれをを発現する細胞で細胞内カルシウムの約1.18倍の増加及び3.5倍の増加を誘発することができる。
【0061】
総合すると、薬理学的分析データは、Or83b受容体遺伝子又はOr43a受容体遺伝子が移入されたこれらの細胞モデルが機能性タンパク質受容体を発現していることを裏付ける。
【0062】
実施例9
嗅覚受容体の結合活性に対する種々の植物精油の効果及び前記受容体に対して下流のシグナル伝達経路
前記の嗅覚受容体の一つを発現する細胞を使用して、植物精油とこれらの受容体との相互作用及びそれぞれの受容体の下流のシグナル伝達カスケードを調べた。
【0063】
結合活性については、膜をそれぞれの細胞モデルから調製し、植物精油と受容体結合部位との相互作用を調べるのに使用した。図16に関して、下記の油が嗅覚受容体と相互作用する:ライラックフラワー油 (LFO)、フタル酸ジエチル、α-テルピネオール、及びピペロナール。
【0064】
同様に、図17及び18に関して、下記の油が嗅覚受容体と相互作用する:ブラックシードオイル(BSO)、α-ピネン、キノン、p−シメン、サビネン、α-ツヨン及びd-リモネン。
【0065】
同様に、図19〜21に関して、下記の油が嗅覚受容体と相互作用する:ゲラニオール、アントラニル酸リナリル、フェニルアセトアルデヒド、リナロール、α-テルピネオール、t-アネトール、テルピネン900、リンデノール、オイゲノール、タイム油、カルバクロール、チモール、ピペロナール、ピペロニルアルコール、酢酸ピペロニル、及びピペロニルアミン。
【0066】
その他のある種の油、例えば本出願明細書に明示した油類もまた、嗅覚受容体と相互作用する。
【0067】
実施例10
Or43a受容体を発現する細胞でのCa2+の細胞内動員に対する種々の植物精油の効果
細胞内カルシウム動員に対する種々の植物精油の効果を調べるために、各細胞モデルから得た無傷細胞を前記のアッセイに使用した。細胞内Ca2+濃度の変化を、処理前及び処理の約150秒後の340/380蛍光比の間の差に基づいて算出した。図22に示すように、対照細胞内でCa2+の動員を誘発するイオノマイシン及びチラミンによる処理は、Or43a受容体を発現する細胞内で細胞内Ca2+濃度をごくわずかしか増加させなかった。
【0068】
図22〜28に関し、下記の油は、Or43a受容体を発現する細胞内でカルシウム動員をもたらした:アントラニル酸リナリル、リナロール、ペリリルアルコール、t-アネトール、ゲラニオール、フェニルアセトアルデヒド、オイゲノール、ピペロニルアルコール、酢酸ピペロニル、ピペロニルアミン、α-テルピネオール、リンデノール、テルピネン900、タイム油、チモール、カルバクロール、LFO、BSO、α-ピネン、p-シメン、d-リモネン、サビネン、キニーネ、l-カルボン、d-カルボン及びα-ツヨン。最後に、図24に示すように、ピペロナールの処理は、Or43a受容体を発現する細胞内で細胞内Ca2+濃度を低下させた。
【0069】
その他のある種の植物精油、例えば本出願明細書に明示した植物精油による処理もまた、Or43a受容体を発現する細胞内で細胞内Ca2+濃度の変化を生じた。
【0070】
また、その他のある種の植物精油、例えば本出願明細書に明示した植物精油による処理は、Or83b受容体を発現する細胞内で細胞内Ca2+濃度の変化を生じた。
【0071】
実施例11
嗅覚受容体を発現する細胞内のcAM産生に対する種々の植物精油の効果
前記の嗅覚受容体の一つを発現する細胞での細胞内cAMP産生及びcAMPのチラミ依存変化に対する種々の植物精油の効果を調べるために、各細胞モデルから得た細胞を、チラミン(約20μM)及びフォルスコリン(約10μM)の存在下及び不存在下で、LPO(約50μg/ml)及びBSO(約50μg/ml)で処理し、その後に細胞内cAMPを実施例に記載のcAMPアッセイを使用して定量した。
【0072】
図29及び30に示すように、下記の油による処理は、Or43a受容体を発現する細胞内のcAMP濃度の増加をもたらした:チラミン; LFO;BSO;LFO及びチラミン;BSO及びチラミン;フォルスコリン;チラミン及びフォルスコリン;LFO及びフォルスコリン;LFO、フォルスコリン及びチラミン;BSO;並びにBSO、チラミン及びフォルスコリン。
【0073】
さらに図29及び30を参照すると、Or83b受容体を発現する細胞内のcAMP産生の約34%、32%及び64%の増加が、約20μMチラミン、約50μg LFO/ml及び約50μg BSO/mlそれぞれによる処理に応じて生じた。チラミン及びLFOによる同時処理に応じて、それぞれ一つの単独での効果に比べて、cAMP産生に対する拮抗効果(約24%)が認められた。一方、BSO及びチラミンによる同時処理に応じて、相乗効果(約300%増大)が認められた。
【0074】
フォルスコリン(約10μM)の存在下で、cAMPの産生において約3000倍の増大が認められた。フォルスコリン予備処理細胞をチラミン又はLFOと共に投与すると、フォルスコリンそれ自体での効果よりもcAMP産生において約10〜13%の増大が認められた。フォルスコリン予備処理細胞に対するBSOの添加は、これらの細胞におけるフォルスコリン誘発cAMP産生よりも約22%大きいcAMP産生の増大を誘発した。
【0075】
また、その他のある種の植物精油、例えば本出願明細書に明示した植物精油による処理は、Or43a受容体又はOr83b受容体を発現する細胞内で細胞内cAMP濃度の変化をもたらした。
【0076】
実施例12
キイロショウジョウバエに対する組成物の毒性
試験組成物から2種類のアセトン溶液(約1%及び10%)を調製した。次いで、試験濃度のアセトンを、底の約3cm上に印をつけたガラス瓶(約5mL)に加えた。このガラス瓶を、前記の印から頸部の間の領域を除いた瓶の内面に、試験組成物の薄膜が残るように回転させた。処理した瓶にハエを導入する前に、全ての瓶を約10秒間空気にさらしてアセトンの完全な蒸発を確実にした。アセトンの蒸発を終えた後に、雌雄が混ざったハエの成虫約10匹をそれぞれの瓶に加え、瓶に綿栓で蓋をした。暴露の約24時間後に死虫率を観察した。
【0077】
実施例13
野生型ショウジョウバエ及びチラミン受容体突然変異バエに対するライラックフラワー油(LFO)及びブラックシードオイル(BSO)の毒性
野生型キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)及びチラミン受容体突然変異ショウジョウバエを、LFO及びBSOの毒性を調べるためのモデルとして使用した。これらの油の毒性は、実施例12に記載の方法を使用して調べた。以下の表C及びDに関して、両方の化学物質は、野生型キイロショウジョウバエに対して有毒であった。LFOは、両方のキイロショウジョウバエに対してBSOよりも約300倍有毒であった。LFOのLC50は、約25〜30 ng/mm2の付近にあり、BSOの対応する値は約94μg/cm2であった。これに対して、LFO は、チラミン受容体突然変異バエに対してBSOよりも少なくとも約1000倍毒性が小さかった。ショウジョウバエに対する両方の化学物質の毒性は、チラミン受容体によって伝えられる。チラミン受容体の突然変異体は、ショウジョウバエに対するLFOの毒性を著しく低下させるが、同じ突然変異体はBSOに対してより感受性のショウジョウバエ系を発生する。
【0078】
【0079】
実施例14
農場アリに対する組成物の忌避効果
組成物の忌避効果を試験するために成虫昆虫を無作為に選択し、個々には印をつけなかった。反復試験当たり約5匹の昆虫を使用した。それぞれの処理について約3回の反復試験を使用した。未処理対照試験は、同じ条件下で維持された同じ大きさの個体群/反復試験に対する溶媒(アセトン)のみの施用を含む。濾紙(約80cm2)を前記組成物(アセトン300ml中に約100mg)で処理した。約3分の風乾の後に、濾紙をシャーレに置き、昆虫に対する忌避を行った。昆虫をシャーレに放ち、一匹の昆虫を同時にシャーレの向こう側に放った。1個以上のストップウォッチを使用して、シャーレの濾紙上で又は未処理表面で過ごした時間を、最大約300秒間記録した。忌避率(RR)を次のように算出した:
RR=[(対照表面での時間−処理表面での時間)/全試験時間]
RR>0の場合には、組成物が忌避効果、すなわちより多くの昆虫が対照表面よりも処理表面から離れて忌避されるという効果を有するとみなし;RR<0の場合には、組成物は忌避効果をもたないとみなす。
【0080】
実施例15
農場アリに対するライラックフラワー油(LFO)及びブラックシードオイル(BSO)の忌避効果
農場アリ(farm ants)に対するLFO(約1.4mg/cm2)及びBSO(約1.4mg/cm2)の忌避効果を、実施例14に記載の方法を使用して調べた。表E及びFに示すように、BSOは、農場アリに対してLFOよりもよい忌避性を実証した。農場アリに対して約90%及び100%の忌避性が、LFO及びBSOそれぞれによって得られた。また、LPO及びBSOはまた、農場アリに対して暴露24時間以内に100%死虫率を誘導した。
【0081】
BSOで処理したシャーレはまた、アリに対する忌避性に対するBSOの残留効果を扱うためにも使用した。前記の忌避性プロトコールに従って1日当たり5匹のアリを使用した。同時に、BSOについて経時毒性を調べた。毒性実験では、アリを上記と同じ処理表面に約10秒間暴露し、次いで新しい容器に移した。暴露の約24時間後に死虫率データを記録した。1日当たりにつきアリ5匹を使用した。表Gに示すように、BSOは農場アリに対して最大4日間忌避性を示した。
【0082】
【0083】
実施例16
農場アリに対するd-リモネン、α-ピネン及びp-シメンの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0084】
表Hに関して、d-リモネン、α-ピネン及びp-シメンそれぞれは、単独で忌避性を実証した。しかし、複数の油を混合して組成物A、すなわちd-リモネン、α-ピネン及びp-シメンをそれぞれ約1/3ずづ含有する組成物を形成すると、相乗効果があり、忌避率%が著しく増大した。
【0085】
同様に、表Iに関して、d-リモネン及びα-ピネンそれぞれは、単独で忌避性を実証した。しかし、複数の油を混合して組成物B、すなわちd-リモネン及びα-ピネンをそれぞれ約半分ずづ含有する組成物を形成すると、相乗効果があり、忌避率%が著しく増大した。
【0086】
【0087】
実施例17
農場アリに対するリナロール、d-リモネン、α-ピネン、p-シメン及びタイム油の単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0088】
表Jに示すように、d-リモネン、α-ピネン及びp-シメン及びタイム油それぞれは忌避性を示すが、組成物C、すなわち前記の油類を約25%ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0089】
同様に、表Kに示すように、リナロール、α-ピネン、p-シメン及びタイム油それぞれは忌避性を示すが、組成物D、すなわち前記の油類を約25%ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0090】
同様に、表Lに示すように、リナロール、α-ピネン及びp-シメンそれぞれは忌避性を示すが、組成物E、すなわち前記の油類を約1/3ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0091】
【0092】
実施例18
農場アリに対するα-ピネン、タイム油、α-ツヨン、サビネンの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0093】
表Mに示すように、α-ピネン、タイム油、α-ツヨン及びサビネンそれぞれは忌避性を示すが、組成物F、すなわち前記の油類を約25%ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0094】
【0095】
実施例19
農場アリに対するd-リモネン、p-シメン、チモール、カルバクロール及びゲラニオールの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0096】
表Nに示すように、d-リモネン、p-シメン、チモール及びカルバクロールそれぞれは忌避性を示すが、組成物G、すなわち前記の油類を約25%ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0097】
同様に、表Oに示すように、d-リモネン、p-シメン及びチモールそれぞれは忌避性を示すが、組成物H、すなわち前記の油類を約1/3ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0098】
同様に、表Pに示すように、d-リモネン、p-シメン、チモール及びゲラニオールそれぞれは忌避性を示すが、組成物I、すなわち前記の油類を約25%ずつ含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0099】
【0100】
実施例20
農場アリに対するアントラニル酸リナリル、α-ピネン、d-リモネン、p-シメン及びゲラニオールの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0101】
表Qに示すように、ゲラニオール、d-リモネン、p-シメン及びアントラニル酸リナリルそれぞれは忌避性を示すが、組成物J、すなわちゲラニオール約40%、d-リモネン約30%、p-シメン約10%、α-ピネン約10%及びアントラニル酸リナリル約10%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0102】
【0103】
実施例21
農場アリに対するd-リモネン、チモール、α-テルピネオール、酢酸ピペロニル、ピペロニルアミン及びピペロナールの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0104】
表Rに示すように、d-リモネン、チモール、α-テルピネオール、酢酸ピペロニル、ピペロニルアミン及びピペロナールそれぞれは忌避性を示すが、組成物K、すなわちd-リモネン約20%、チモール約30%、α-テルピネオール約20%、酢酸ピペロニル約10%、 ピペロニルアミン約10%及びピペロナール約10%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0105】
【0106】
実施例22
農場アリに対するゲラニオール、d-リモネン、オイゲノール、リンデノール及びフェニルアセトアルデヒドの単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0107】
表Sに示すように、ゲラニオール、d-リモネン、オイゲノール、リンデノール及びフェニルアセトアルデヒドそれぞれは忌避性を示すが、組成物L、すなわちゲラニオール約50%、d-リモネン約20%、オイゲノール約10%、リンデノール約10%、及びフェニルアセトアルデヒド約10%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0108】
【0109】
実施例23
オオアリに対するゲラニオール、レモングラス油、オイゲノール及び鉱油の単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0110】
表Tに示すように、ゲラニオール、レモングラス油及びオイゲノールそれぞれは忌避性を示すが、組成物M、すなわちゲラニオール約50%、レモングラス油約40%及びオイゲノール約10%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。ゲラニオール、レモングラス油及びオイゲノールは全て、米国環境保護局(EPA)及び食品医薬品局(PDA)によって安全である(GRAS化合物)と一般にみなされており、それ自体、EPA農薬登録要件を免除されている。
【0111】
同様に、表Uに示すように、ゲラニオール及びレモングラス油それぞれは忌避性を示すが、組成物N、すなわちゲラニオール約70%及びレモングラス約30%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。
【0112】
さらにまた、表Vに示すように、組成物O、すなわちゲラニオール約60%、レモングラス油約30%及び鉱油約10%を含有する組成物を形成するための鉱油の添加は、ゲラニオール及びレモングラス油の相乗作用に影響を及ぼさなかった。鉱油単独は、忌避性を実証しなかったが、組成物を安定させるのに役立ち、活性成分の蒸発を抑える。ゲラニオール及びレモングラス油と同様に鉱油は、GRAS化合物である。
【0113】
【0114】
実施例24
オオアリに対するゲラニオール、チモール、レモングラス油及び鉱油の単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0115】
表Wに示すように、ゲラニオール、チモール及びレモングラス油それぞれは忌避性を示すが、組成物P、すなわちゲラニオール約50%、チモール約20%、レモングラス油約20%及び鉱油約10%を含有する組成物は、単独で使用されるその成分油それぞれの忌避性を越える忌避性を実証した。ゲラニオール、チモール、レモングラス油、オイゲノール及び鉱油は全て、米国環境保護局(EPA)及び食品医薬品局(PDA)によって安全である(GRAS化合物)と一般にみなされており、それ自体、EPA農薬登録要件を免除されている。
【0116】
【0117】
実施例25
オオアリに対するブラックシードオイル(BSO)、ライラックフラワー油(LFO)、ゲラニオール、チモール、レモングラス油及び鉱油の単独及び組み合わせの忌避効果
種々の植物精油の忌避効果を、該試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0118】
表Xに示すように、ゲラニオール、チモール及びタイム油それぞれは忌避性を示す。表Yに示すように、BSO、LFO、ゲラニオール、チモール、タイム油、鉱油、サフラワー油及びヒマシ油の種々の組み合わせを含有する組成物Q〜Vは、高められた忌避性を示す。
【0119】
【0120】
実施例26
オオアリに対する市販忌避剤DEET29%の忌避効果
種々の植物精油から調製した種々の組成物の忌避効果と比較するために、REPEL(登録商標)(Wisconsin Pharmacal Company, Inc, Jackson、WY)という名前で購入し得る昆虫防除剤(DEET29%の市販忌避剤)を、濾紙をDEET29%で処理することによってオオアリに対して調べた。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。表Zに示すように、29%DEETは、0日目で約98.4%の忌避率%を有していた。LFO、BSO及び本発明の組成物の忌避率%を比較でき、及びその幾つかの場合には、29%DEETの忌避率%よりも高かった。
【0121】
【0122】
実施例27
オオアリに対する市販忌避剤DEETの単独及びゲラニオール、チモール及びレモングラス油、又はゲラニオール、D-リモネン、オイゲノール、リンデノール及びフェニルアセトアルデヒドとの組み合わせの忌避効果
市販の忌避剤DEET及び種々の植物精油の忌避効果を、試験油で濾紙を処理することによって試験した。室温で約5分経過した後に、濾紙をシャーレに置き、アリを一度に導入した。忌避性は、実施例14に記載のようにして調べた。油は、単独で試験した。また、複数の油を混合して組成物を形成し、次いでこれを試験した。
【0123】
表AA及びBBに示すように、約5〜10%の濃度のDEETによる処理は、忌避の徴候を示さなかった。しかし、表AAに示すように、組成物W、すなわちゲラニオール約25%、チモール10%、レモングラス油10%及び鉱油(DEETの最終濃度に応じて45〜55%)を含有する組成物と組み合わせると、忌避率%は100に達する。同様に、表BBに示すように、組成物X、すなわちゲラニオール約25%、d-リモネン10%、オイゲノール5%、リンデノール5% 、フェニルアセトアルデヒド5%及び鉱油(DEETの最終濃度に応じて45〜55%)を含有する組成物と組み合わせると、忌避率%は約97〜98%であった。また、表AA及びBBに示すように、種々の油をDEETと組み合わせると、高められた忌避性が示された。
【0124】
【0125】
実施例28
アタマシラミに対する組成物の殺虫効果
エジプト共和国アレキサンドリア、Karmos地域に住んでいる約4〜11歳の女の子及び男の子から、生きているアタマジラミ(Pediculus humanus capitus)の成虫を採取した。この昆虫を目の細かいシラミ検出用の櫛を使用して採取し、一緒にプールした。採取したシラミをシャーレで飼い及び採取の約30分以内に試験に使用した。
【0126】
試験する種々の濃度の組成物を水で調製した。これらの組成物の殺虫効果を市販の殺シラミ剤イベルメクチンの殺虫効果と比較するために、イベルメクチンを水に溶解した。それぞれの濃度の組成物約1mlをシャーレに施用し、イベルメクチン溶液約1mlをシャーレに施用し、そして水約1mlを対照のシャーレに施用した。約10匹のアタマジラミ成虫をそれぞれのシャーレに導入した。
【0127】
処理シャーレ及び対照シャーレを連続観察下で保持し、LT100を観察した。LTとは、所定の割合の昆虫を殺すのに必要な時間をいう;従って、LT100は、シラミを100%殺すのに必要な時間をいう。アタマジラミは、硬い物体(hard object)に対する応答が認められない場合には死んだとみなす。
【0128】
実施例29
アタマシラミに対するゲラニオール、D-リモネン、ベンジルアルコール、P-シメン及びライラックフラワー油を含有する組成物の殺虫効果
組成物Y、すなわちp-シメン約20%、ライラックフラワー油(LFO)約40%、ベンジルアルコール約30%及び鉱油約10%を含有する組成物の殺虫効果を、実施例28に記載の方法を使用して調べた。この組成物のLT100を、市販の殺シラミ剤イベルメクチンのLT100と比較した。表CCに示すように、組成物Yで処理したシラミは、イベルメクチンで処理したシラミよりも早く死んだ。
【0129】
【0130】
実施例30
蚊に対する組成物の忌避効果
A.経口投与
無毛又は毛を剃ったマウス及びモルモットを使用して、経口投与された組成物の忌避効果を試験した。試験油〔例えば、ライラックフラワー油(LFO)又はブラックシードオイル(BSO)〕又は試験組成物(例えば、ゲラニオール、d-リモネン、オイゲノール及びリンデノールを含有する組成物)を、約10匹の前記齧歯動物に経口投与した。対照物質、例えば鉱油を、約10匹の前記齧歯動物に経口投与した。約30分後に、各齧歯動物を密閉容器に入れた。各容器に約20匹の蚊を導入した。各容器を約1時間観察した。それぞれの蚊が齧歯動物の表面で過ごした時間を記録し、蚊によって生じた齧歯動物の皮膚の外傷の個数を記録した。蚊は、対照物質の投与を受けた齧歯動物上で過ごした時間よりも、試験組成物の投与を受けた齧歯動物上で過ごした時間が短かった。試験組成物の投与を受けた齧歯動物は、対照物質の投与を受けた齧歯動物よりも外傷が少なかった。
【0131】
B.局所投与
無毛又は毛を剃ったマウス及びモルモットを使用して、局所投与された組成物の忌避効果を試験した。試験油〔例えば、ライラックフラワー油(LFO)又はブラックシードオイル(BSO)〕又は試験組成物(例えば、ゲラニオール、d-リモネン、オイゲノール及びリンデノールを含有する組成物)を、約10匹の前記齧歯動物の皮膚に局所投与した。対照物質、例えば鉱油を、約10匹の前記齧歯動物の皮膚に局所投与した。約30分後に、各齧歯動物を密閉容器に入れた。各容器に約20匹の蚊を導入した。各容器を約1時間観察した。蚊がネズミの表面で過ごした時間を記録し、蚊によって生じた齧歯動物の皮膚の外傷の個数を記録した。蚊は、対照物質の投与を受けた齧歯動物上で過ごした時間よりも、試験組成物の投与を受けた齧歯動物上で過ごした時間が短かった。試験組成物の投与を受けた齧歯動物は、対照物質の投与を受けた齧歯動物よりも外傷が少なかった。
【0132】
実施例31
蚊に対する組成物の忌避効果
約3個のケージそれぞれに、約7〜10日齢のネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)約100匹を放った。蚊は約12時間飢えさせた。それぞれのケージに、砂糖水を浸したワタを満たした4個の容器を供給した。
【0133】
4個の容器のうちの3個は、試験する組成物約1000ppm(約1mg/l)で無作為に処理し、残りの1個は未処理対照として役立てた。これらの容器をそれぞれのケージの四隅に置き、試験する組成物をそれぞれの隅に添加した後に約0時間、1時間、2時間、4時間及び6時間の間隔で着地回数を数えた。前記容器を、暴露間隔の間にケージから取り出した。各暴露間隔は、約5分間続けた。
【0134】
表DDに記載の組成物の忌避効果をこの方法を使用して試験した。
【0135】
LFO、クミン油、ゲラニオール、タイム油、及びレモングラス油は、米国環境保護局(EPA)及び食品医薬品局(PDA)によって安全である(GRAS化合物)とみなされており、それ自体、EPA農薬登録要件を免除されている。
【0136】
表DDに挙げた組成物をそれぞれの容器に添加した後に約0時間、1時間、2時間、4時間及び6時間の間隔で着地回数を数えた。着地回数を表EEに示す。このデータを使用して忌避率%を算出し、表FFに示した。それぞれの暴露間隔で、組成物EE、AA及びBBはほぼ100%の忌避率を示した。6時間後でも、該組成物は蚊に対して100%の忌避率を示した。
【0137】
【0138】
実施例32
赤アリに対する植物精油を含有する組成物の忌避効果及び殺虫効果を試験する方法
赤アリに対する植物精油を含有する種々の組成物の殺虫効果を、次の方法で試験した。ペーパーディスクを、それぞれの試験する組成物約20μlで処理し、処理したディスクそれぞれを瓶に入れた。未処理ペーパーディスクは、対照の瓶に入れた。また、ペーパーディスクを100%DEET約20μlで処理し、組成物の殺虫効果と公知の市販の昆虫防除剤DEETの殺虫効果と比較するために瓶に入れた。それぞれの瓶に赤アリ約3匹を導入し、瓶の開口部をワタで密封し、昆虫が逃げるのを防止した。昆虫を前記組成物に約1時間又はそれ以下暴露し、死虫率を記録した。
【0139】
赤アリに対する植物精油を含有する種々の組成物の忌避効果を、次の方法で試験した。ペーパーディスクを、それぞれの試験する組成物約200μlで処理し、瓶に入れた。未処理ペーパーディスクは、対照の瓶に入れた。また、ペーパーディスクを100%DEET約200μlで処理し、組成物の忌避効果と公知の市販の昆虫防除剤DEETの忌避効果と比較するために瓶に入れた。赤アリをそれぞれの瓶に導入した。処理したペーパーディスクに向かう昆虫の挙動及び回数を約5分間監視した。赤アリによるペーパーディスクに向かう回数を記録した。
【0140】
残留性を、殺虫効果及び忌避効果に関して、ペーパーディスクを試験する組成物で処理し、処理したペーパーディスクを実験室条件下で所定の時間(例えば、0分、6時間、1日、3日、5日、7日)保ち、そして赤アリを処理ペーパーディスクに前記のようにして暴露することによって試験した。
【0141】
実施例33
赤アリに対する植物精油を含有する組成物の忌避効果及び殺虫効果
表GGに記載の組成物の殺虫効果及び忌避効果を、実施例32に記載の方法を使用して試験した。未処理ディスクは、赤アリに対して毒性もないし、赤アリを忌避もしない。
【0142】
それぞれの組成物は、ペーパーディスクを前記組成物で処理後、該ペーパーディスクに赤アリを約0分、6時間、1日、3日、5日又は7日間暴露させた場合に、DEETの死虫率に匹敵する100%の死虫率をもたらした。
【0143】
表HHに示すように、赤アリは、ペーパーディスクを処理するのに使用した組成物によって忌避された。また、残留性に関して、組成物は、ペーパーディスクに施用後少なくとも1週間その効力を保持することによってDEETよりも効能が優れ、これに対してDEETは1日後に効能を失い始めた。表HHは、処理したペーパーディスクへの赤アリの移動の回数を示す。表に記載の時間、0分、6時間、1日、3日、5日、又は7日は、組成物によるペーパーディスクの処理と、処理したペーパーディスクに対する赤アリの暴露との間のおおよその経過時間を示す。
【0144】
【0145】
実施例34
赤アリに対する植物精油を含有する組成物の忌避効果及び殺虫効果
表JJに記載の組成物の殺虫効果及び忌避効果を、実施例32に記載の方法を使用して試験した。前記組成物のそれぞれによる処理は、忌避効果と殺虫効果を生じた。
【0146】
【0147】
種々の変更及び改変が本発明において本発明の範囲又は精神から逸脱することなくなし得ることは、当業者には明らかであろう。明細書及び実施例は、単なる例としてみなされ、本発明の範囲又は精神を限定することを目的とするものではないことが意図される。本明細書で引用した参考文献及び刊行物は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0148】
特に明示しない限りは、明細書、実施例及び特許請求の範囲で使用した成分の量を表す全ての数値、反応条件のような性質などは、全ての場合に“約”という用語で修飾されると理解されるべきである。従って、特に明示しない限りは、明細書、実施例及び特許請求の範囲で挙げた数値パラメーターは、本発明によって決定されると考えられる所定の性質に応じて変化し得る近似である。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】チラミン受容体が移入されたシュナイダー細胞中の受容体特異結合を表す。
【図2】非標識チラミンの存在下又は不存在下で種々の濃度の3H-チラミンと共にインキュベートした後の、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜における3H-チラミンの飽和結合曲線を表す。
【図3】種々の濃度の非標識チラミンの存在下及び不存在下で3H-チラミンと共にインキュベートした後の、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合曲線を表す。
【図4】種々の濃度の非標識リガンド:チラミン(TA)、オクトパミン(OA)、ドーパミン(DA)及びセロトニン(SE)の存在下又は不存在下でチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合曲線を表す。
【図5】種々の濃度のライラックフラワー油(LFO)及びブラックシードオイル(BSO)の存在下及び不存在下で3H-チラミンと共にインキュベートした後の、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの阻害結合曲線を表す。
【図6】LFO又はBSOの存在下及び不存在下で、あるいは種々の濃度の非標識チラミン(TA)と組み合わせて3H-チラミンと共にインキュベートした後の、チラミン受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミン(3H-TA)の阻害結合を表す。
【図7】フォルスコリン及びチラミンの存在下で及び不存在下でチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のチラミン依存変化を表す。
【図8】フォルスコリン及びチラミンの存在下及び不存在下でライラックフラワー油及びブラックシードオイルで処理されたチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のチラミン依存変化を表す。
【図9】チラミン、ライラックフラワー油及びブラックシードオイルの存在下及び不存在下でフォルスコリンで処理した後のチラミン受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のチラミン依存変化を表す。
【図10】Or83b受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの飽和結合曲線を表す。
【図11】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞から調製した膜に対する3H-チラミンの飽和結合曲線を表す。
【図12】Or83b受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のフォルスコリン依存変化を表す。
【図13】Or83b受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度のイオノマイシン依存変化を表す。
【図14】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度のイオノマイシン依存変化を表す。
【図15】対照シュナイダー細胞、Or83b受容体を発現するシュナイダー細胞、及びOr43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度のチラミン依存変化を表す。
【図16】植物精油、例えばLFO、ピペロナール、フタル酸ジエチル及びα-テルピネオールと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr83b及びOr43a受容体との相互作用を表す。
【図17】種々の植物精油、例えばBSO、キニーネ、サビネン、α-ツヨン、α-ピネン、d-リモネン及びp-シメンと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr43a受容体との相互作用を表す。
【図18】種々の植物精油、例えばBSO、キニーネ、サビネン、α-ツヨン、α-ピネン、d-リモネン及びp-シメンと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr83b受容体との相互作用を表す。
【図19】種々の植物精油、例えばゲラニオール、アントラニル酸リナリル、フェニルアセトアルデヒド、リナロール、α-テルピネオール、t-アネトール、テルピネン900、リンデノール及びオイゲノールと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr83b及びOr43a受容体との相互作用を表す。
【図20】種々の植物精油、例えばタイム油、カルバクロール及びチモールと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr83b及びOr43a受容体との相互作用を表す。
【図21】種々の植物精油、例えばピペロナール、ピペロニルアルコール、酢酸ピペロニル、及びピペロニルアミンと、3H-チラミンと共にインキュベートした後の嗅覚受容体を発現するシュナイダー細胞中のOr83b及びOr43a受容体との相互作用を表す。
【図22】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するイオノマイシン、チラミン、及びアントラニル酸リナリルの効果を表す。
【図23】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するリナロール、ペリリルアルコール、t-アネトール、ゲラニオール、フェニル アセトアルデヒド、及びオイゲノールの効果を表す。
【図24】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するピペロニル、ピペロニルアルコール、酢酸ピペロニル、及びピペロニルアミンの効果を表す。
【図25】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するα-テルミネオール、リンデノール、及びテルピネン900の効果を表す。
【図26】Or43a受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するタイム油、チモール、及びカルバクロールの効果を表す。
【図27】Or43a受容体又はOr83b受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するLFOの効果を表す。
【図28】Or43a受容体又はOr83b受容体を発現するシュナイダー細胞中の細胞内Ca2+濃度に対するBSO、α-ピネン、p-シメン、d-リモネン、サビネン、キニーネ、l-カルボン、d-カルボン、及びα-ツヨンの効果を表す。
【図29】チラミン、LFO及びBSOの存在下及び不存在下のOr83b受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のチラミン依存変化を表す。
【図30】チラミン及びフォルスコリンの存在下及び不存在下のLPO及びBSOで処理したOr83b受容体を発現するシュナイダー細胞中のcAMP濃度のチラミン依存変化を表す。
【図31A】チラミン受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【図31B】チラミン受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【図32A】Or43a嗅覚受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【図32B】Or43a嗅覚受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【図33A】Or83b嗅覚受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【図33B】Or83b嗅覚受容体の核酸配列及びペプチド配列を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の油を含有してなる昆虫防除用組成物であって、該組成物がチラミン受容体、Or83b嗅覚受容体及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される昆虫の少なくとも1種の受容体を標的とし、該昆虫においてcAMP、Ca2+又はこの両方の細胞内濃度の変化をもたらすものである昆虫防除用組成物。
【請求項2】
少なくとも2種類の油が、t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、及びチモールの中から選択される油からなるものである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物を用いた処理が忌避効果を有するものである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物を用いた処理が殺虫効果を有するものである請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
さらに少なくとも1種の不揮発性油を含有してなる請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の不揮発性油が、ヒマシ油、トウモロコシ油、クミン油、鉱油、オリーブ油、落花生油、サフラワー油、ゴマ油、及びダイズ油の中から選択される油である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
選択される油がライラックフラワー油;ゲラニオール、及びタイム油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記の油がライラックフラワー油;ゲラニオール、タイム油及びからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
選択される油がライラックフラワー油、ゲラニオール、タイム油及びクミン油からなるものである請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
選択される油がライラックフラワー油約44重量%、ゲラニオール約10重量%、タイム油約2重量%及びクミン油約44重量%からなるものである請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
選択される油がd-リモネン、タイム油、ゲラニオール、α-ピネン、及びp-シメンからなるものである請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
選択される油がd-リモネン、タイム油、ゲラニオール、α-ピネン、及びp-シメンからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項13】
選択される油がd-リモネン約20重量%、タイム油約20重量%、ゲラニオール約20重量%、α-ピネン約20重量%、及びp-シメン約20重量%からなるものである請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
さらにフェニルアセトアルデヒドを含有してなる請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
さらにフェニルアセトアルデヒドを含有してなる請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
選択される油がd-リモネン約10重量%、タイム油約30重量%、ゲラニオール約35重量%、α-ピネン約10重量%、フェニルアセトアルデヒド約5重量%からなるものである請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
選択される油がゲラニオール、タイム油、及びレモングラス油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項18】
選択される油がゲラニオール、タイム油、及びレモングラス油からなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項19】
選択される油がゲラニオール約50重量%、タイム油約40重量%、及びレモングラス油約10重量%からなるものである請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
選択される油がd-リモネン、リンデノール、オイゲノール、フェニルアセトアルデヒド、及びゲラニオールからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項21】
選択される油がd-リモネン、リンデノール、オイゲノール、フェニルアセトアルデヒド、及びゲラニオールからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項22】
選択される油がd-リモネン約20重量%、リンデノール約10重量%、オイゲノール約10重量%、フェニルアセトアルデヒド約10重量%、及びゲラニオール約50重量%からなるものである請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
選択される油がd-リモネン、ゲラニオール、α-ピネン、p-シメン、及びフェニルアセトアルデヒドからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項24】
選択される油がd-リモネン、ゲラニオール、α-ピネン、p-シメン、及びフェニルアセトアルデヒドからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項25】
選択される油がd-リモネン約15重量%、ゲラニオール約50重量%、α-ピネン約15重量%、p-シメン約15重量%、及びフェニルアセトアルデヒド約5重量%からなるものである請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
選択される油がd-リモネン及びp-シメンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項27】
選択される油がd-リモネン、p-シメン、及びα-ピネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項28】
選択される油がd-リモネン及びα-ピネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項29】
選択される油がd-リモネン及びタイム油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項30】
選択される油がα-ピネン及びタイム油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項31】
選択される油がp-シメン、α-ピネン及びタイム油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項32】
選択される油がp-シメン及びα-ピネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項33】
選択される油がリナロール、p-シメン、タイム油、及びα-ピネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項34】
選択される油がリナロール、p-シメン、及びα-ピネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項35】
選択される油がd-リモネン、p-シメン、及びチモールからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項36】
選択される油がd-リモネン、p-シメン、チモール及びゲラニオールからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項37】
選択される油がα-ツヨン、α-ピネン、サビネン、β-ピネン、p-シメン及びリモネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項38】
選択される油がα-ツヨン、α-ピネン、サビネン、β-ピネン、p-シメン及びリモネンからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項39】
選択される油がフタル酸ジエチル、α-テルピネオール、ピペロナール、リナロール、γ-テルピネオール、ジヒドロジャスモン酸メチル、クエン酸メチル及びクエン酸イソプロピルからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項40】
選択される油がフタル酸ジエチル、α-テルピネオール、ピペロナール、リナロール、γ-テルピネオール、ジヒドロジャスモン酸メチル、クエン酸メチル及びクエン酸イソプロピルからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項41】
選択される油がd-リモネン及びp-シメン、α-ピネン、タイム油、リナロール、チモール、及びゲラニオールの中から選択される少なくとも2種の油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項42】
選択される油がd-リモネン及びp-シメン、α-ピネン、タイム油、リナロール、チモール、及びゲラニオールの中から選択される少なくとも2種の油からなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項43】
組成物がd-リモネン、p-シメン、α-ピネン、タイム油、チモール、ゲラニオール、レモングラス油、ブラックシードオイル、ライラックフラワー油、鉱油、及びフェニルアセトアルデヒドの中から選択される少なくとも2種の油を含有してなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項44】
組成物がd-リモネン、p-シメン、α-ピネン、タイム油、チモール、ゲラニオール、レモングラス油、ブラックシードオイル、ライラックフラワー油、鉱油、及びフェニルアセトアルデヒドの中から選択される少なくとも2種の油を含有してなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項45】
ブラックシードオイル、カンフェン、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油、ライム油、アントラニル酸リナリル、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロニル、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、及びα-ツヨンの中から選択される少なくとも2種類の油を含有してなる昆虫防除用組成物。
【請求項46】
さらに少なくとも1種の不揮発性油を含有してなる請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
少なくとも1種の不揮発性油が、ヒマシ油、トウモロコシ油、クミン油、鉱油、オリーブ油、落花生油、サフラワー油、ゴマ油、及びダイズ油の中から選択される油からなるものである請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
選択される油がライラックフラワー油及びクミン油からなるものである請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
ブラックシードオイル及びライラックフラワー油の中から選択される少なくとも1種の油を含有してなる昆虫防除用組成物。
【請求項50】
さらに少なくとも1種の植物精油を含有してなる請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
少なくとも1種の植物精油が、t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、チモール、ヒマシ油、トウモロコシ油、クミン油、鉱油、オリーブ油、落花生油、サフラワー油、ゴマ油、及びダイズ油の中から選択される油からなるものである請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
選択される油がライラックフラワー油及びクミン油からなるものである請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
選択される油がライラックフラワー油;ゲラニオール、及びタイム油からなるものである請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
選択される油がライラックフラワー油;ゲラニオール、タイム油、及びクミン油からなるものである請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
少なくとも1種の植物精油と昆虫防除剤を含有してなる昆虫防除用組成物であって、前記昆虫防除剤の最終濃度が、前記昆虫防除剤を単独で使用する場合に昆虫防除活性を示すのに必要な濃度よりも低いものである昆虫防除用組成物。
【請求項56】
少なくとも1種の植物精油が、t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油(LPO)、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン 900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、及びチモールの中から選択される少なくとも1種の油からなるものである請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
昆虫防除剤がDEETである請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
昆虫防除剤がDEETである請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
DBETの最終濃度が少なくとも10%と低いものである請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
DBETの最終濃度が少なくとも5%と低いものである請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
さらに不揮発性油を含有してなる請求項57に記載の組成物。
【請求項62】
不揮発性油が、ヒマシ油、トウモロコシ油、クミン油、鉱油、オリーブ油、落花生油、サフラワー油、ゴマ油、及びダイズ油の中から選択される油からなるものである請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
選択される油がDEET、ライラックフラワー油及びクミン油からなるものである請求項
62に記載の組成物。
【請求項64】
選択される油がDEET約10重量%、ライラックフラワー油約45重量%及びクミン油約45重量%からなるものである請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
選択される油がDEET、d-リモネン、タイム油、ゲラニオール、α-ピネン、及びp-シメンからなるものである請求項57に記載の組成物。
【請求項66】
選択される油がDEET約10重量%、d-リモネン約18重量%、タイム油約18重量%、ゲラニオール約20重量%、α-ピネン約20重量%、及びp-シメン約18重量%からなるものである請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、及びチモールの中から選択される少なくとも2種類の油を含有してなる組成物を準備し;該組成物を昆虫に忌避効果を生じるのに十分な濃度で暴露させることからなる昆虫の防除方法。
【請求項68】
選択される油がライラックフラワー油; ゲラニオール、及びタイム油からなるものである請求項67に記載の方法。
【請求項69】
選択される油がα-ツヨン、α-ピネン、サビネン、β-ピネン、p-シメン及びリモネンからなるものである請求項67に記載の方法。
【請求項70】
選択される油がフタル酸ジエチル、α-テルピネオール、ピペロナール、リナロール、γ-テルピネオール、ジヒドロジャスモン酸メチル、クエン酸メチル及びクエン酸イソプロピルからなるものである請求項67に記載の方法。
【請求項71】
ブラックシードオイル及びライラックフラワー油の中から選択される少なくとも1種の油を含有してなる組成物を準備し;該組成物を昆虫に忌避効果を生じるのに十分な濃度で暴露させることからなる昆虫の防除方法。
【請求項72】
準備される組成物がさらに少なくとも1種の追加の植物精油を含有してなるものである請求項71に記載の方法。
【請求項73】
請求項52に記載の組成物を準備し;該組成物を昆虫に忌避効果を生じるのに十分な濃度で暴露させることからなる昆虫の防除方法。
【請求項74】
準備される組成物の昆虫防除剤がDEETである請求項73に記載の方法。
【請求項75】
t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油(LFO)、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、及びチモールの中から選択される少なくとも2種類の油を含有してなる組成物を準備し;該組成物を昆虫に殺虫効果を生じるのに十分な濃度で暴露させることからなる昆虫の防除方法。
【請求項76】
少なくとも1種の植物精油と昆虫防除剤(但し、前記昆虫防除剤の最終濃度は、該昆虫防除剤を単独で使用した場合に昆虫防除活性を示すのに必要とされる濃度よりも低い)とを含有してなる組成物を準備し;且つ忌避効果を生じるのに十分な濃度の前記組成物に昆虫を暴露することからなる昆虫の防除方法。
【請求項77】
準備される組成物の昆虫防除剤がDEETである請求項76に記載の方法。
【請求項78】
少なくとも1種の植物精油が、t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油 (LFO)、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、及びチモールの中から選択される油からなるものである請求項77に記載の方法。
【請求項79】
昆虫防除活性について組成物を選別する方法であって、
チラミン受容体、Or83b嗅覚受容体、及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される受容体を発現する昆虫細胞を準備し;
前記細胞に前記組成物を加え;
前記受容体に対する前記組成物の結合親和性を測定し;且つ
前記受容体に対して親和性を有する組成物を選択する
ことからなる昆虫防除活性について組成物を選別する方法。
【請求項80】
昆虫防除活性について組成物を選別する方法であって、
チラミン受容体、Or83b嗅覚受容体、及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される受容体を発現する昆虫細胞を準備し;
前記細胞に前記組成物を加え;
前記細胞から細胞内cAMP又はCa2+を抽出し;
細胞内のcAMP又はCa2+濃度を測定し;
前記組成物で処理した細胞の細胞内cAMP又はCa2+濃度を、未処理細胞の細胞内cAMP又はCa2+濃度と比較し;且つ
組成物であってそれを用いた処理が細胞内cAMP又はCa2+濃又はこの両方の変化を生じる組成物を選択する
ことからなる昆虫防除活性について組成物を選別する方法。
【請求項81】
チラミン受容体、Or83b嗅覚受容体、及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される受容体を発現する昆虫細胞を準備し;
前記細胞に前記組成物を加え;
前記受容体に対する前記組成物の結合親和性を測定し;且つ
前記受容体に対して親和性を有する組成物を選択する
ことからなる方法によって作成されるレポート。
【請求項82】
チラミン受容体、Or83b嗅覚受容体、及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される受容体を発現する昆虫細胞を準備し;
前記細胞に前記組成物を加え;
前記細胞から細胞内cAMP又はCa2+を抽出し;
細胞内のcAMP又はCa2+濃度を測定し;
前記組成物で処理した細胞の細胞内cAMP又はCa2+濃度を、未処理細胞の細胞内cAMP又はCa2+濃度と比較し;且つ
組成物であってそれを用いた処理が細胞内cAMP又はCa2+濃又はこの両方の変化を生じる組成物を選択する
ことからなる方法によって作成されるレポート。
【請求項83】
チラミン受容体について図31A及び31Bに記載の核酸配列を含有するショウジョウバエのシュナイダー株。
【請求項84】
Or43a嗅覚受容体について図32A及び32Bに記載の核酸配列を含有するショウジョウバエのシュナイダー株。
【請求項85】
Or83b嗅覚受容体について図33A及び33Bに記載の核酸配列を含有するショウジョウバエのシュナイダー株。
【請求項1】
少なくとも2種類の油を含有してなる昆虫防除用組成物であって、該組成物がチラミン受容体、Or83b嗅覚受容体及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される昆虫の少なくとも1種の受容体を標的とし、該昆虫においてcAMP、Ca2+又はこの両方の細胞内濃度の変化をもたらすものである昆虫防除用組成物。
【請求項2】
少なくとも2種類の油が、t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、及びチモールの中から選択される油からなるものである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物を用いた処理が忌避効果を有するものである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物を用いた処理が殺虫効果を有するものである請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
さらに少なくとも1種の不揮発性油を含有してなる請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の不揮発性油が、ヒマシ油、トウモロコシ油、クミン油、鉱油、オリーブ油、落花生油、サフラワー油、ゴマ油、及びダイズ油の中から選択される油である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
選択される油がライラックフラワー油;ゲラニオール、及びタイム油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記の油がライラックフラワー油;ゲラニオール、タイム油及びからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
選択される油がライラックフラワー油、ゲラニオール、タイム油及びクミン油からなるものである請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
選択される油がライラックフラワー油約44重量%、ゲラニオール約10重量%、タイム油約2重量%及びクミン油約44重量%からなるものである請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
選択される油がd-リモネン、タイム油、ゲラニオール、α-ピネン、及びp-シメンからなるものである請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
選択される油がd-リモネン、タイム油、ゲラニオール、α-ピネン、及びp-シメンからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項13】
選択される油がd-リモネン約20重量%、タイム油約20重量%、ゲラニオール約20重量%、α-ピネン約20重量%、及びp-シメン約20重量%からなるものである請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
さらにフェニルアセトアルデヒドを含有してなる請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
さらにフェニルアセトアルデヒドを含有してなる請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
選択される油がd-リモネン約10重量%、タイム油約30重量%、ゲラニオール約35重量%、α-ピネン約10重量%、フェニルアセトアルデヒド約5重量%からなるものである請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
選択される油がゲラニオール、タイム油、及びレモングラス油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項18】
選択される油がゲラニオール、タイム油、及びレモングラス油からなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項19】
選択される油がゲラニオール約50重量%、タイム油約40重量%、及びレモングラス油約10重量%からなるものである請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
選択される油がd-リモネン、リンデノール、オイゲノール、フェニルアセトアルデヒド、及びゲラニオールからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項21】
選択される油がd-リモネン、リンデノール、オイゲノール、フェニルアセトアルデヒド、及びゲラニオールからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項22】
選択される油がd-リモネン約20重量%、リンデノール約10重量%、オイゲノール約10重量%、フェニルアセトアルデヒド約10重量%、及びゲラニオール約50重量%からなるものである請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
選択される油がd-リモネン、ゲラニオール、α-ピネン、p-シメン、及びフェニルアセトアルデヒドからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項24】
選択される油がd-リモネン、ゲラニオール、α-ピネン、p-シメン、及びフェニルアセトアルデヒドからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項25】
選択される油がd-リモネン約15重量%、ゲラニオール約50重量%、α-ピネン約15重量%、p-シメン約15重量%、及びフェニルアセトアルデヒド約5重量%からなるものである請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
選択される油がd-リモネン及びp-シメンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項27】
選択される油がd-リモネン、p-シメン、及びα-ピネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項28】
選択される油がd-リモネン及びα-ピネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項29】
選択される油がd-リモネン及びタイム油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項30】
選択される油がα-ピネン及びタイム油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項31】
選択される油がp-シメン、α-ピネン及びタイム油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項32】
選択される油がp-シメン及びα-ピネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項33】
選択される油がリナロール、p-シメン、タイム油、及びα-ピネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項34】
選択される油がリナロール、p-シメン、及びα-ピネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項35】
選択される油がd-リモネン、p-シメン、及びチモールからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項36】
選択される油がd-リモネン、p-シメン、チモール及びゲラニオールからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項37】
選択される油がα-ツヨン、α-ピネン、サビネン、β-ピネン、p-シメン及びリモネンからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項38】
選択される油がα-ツヨン、α-ピネン、サビネン、β-ピネン、p-シメン及びリモネンからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項39】
選択される油がフタル酸ジエチル、α-テルピネオール、ピペロナール、リナロール、γ-テルピネオール、ジヒドロジャスモン酸メチル、クエン酸メチル及びクエン酸イソプロピルからなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項40】
選択される油がフタル酸ジエチル、α-テルピネオール、ピペロナール、リナロール、γ-テルピネオール、ジヒドロジャスモン酸メチル、クエン酸メチル及びクエン酸イソプロピルからなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項41】
選択される油がd-リモネン及びp-シメン、α-ピネン、タイム油、リナロール、チモール、及びゲラニオールの中から選択される少なくとも2種の油からなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項42】
選択される油がd-リモネン及びp-シメン、α-ピネン、タイム油、リナロール、チモール、及びゲラニオールの中から選択される少なくとも2種の油からなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項43】
組成物がd-リモネン、p-シメン、α-ピネン、タイム油、チモール、ゲラニオール、レモングラス油、ブラックシードオイル、ライラックフラワー油、鉱油、及びフェニルアセトアルデヒドの中から選択される少なくとも2種の油を含有してなるものである請求項2に記載の組成物。
【請求項44】
組成物がd-リモネン、p-シメン、α-ピネン、タイム油、チモール、ゲラニオール、レモングラス油、ブラックシードオイル、ライラックフラワー油、鉱油、及びフェニルアセトアルデヒドの中から選択される少なくとも2種の油を含有してなるものである請求項3に記載の組成物。
【請求項45】
ブラックシードオイル、カンフェン、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油、ライム油、アントラニル酸リナリル、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロニル、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、及びα-ツヨンの中から選択される少なくとも2種類の油を含有してなる昆虫防除用組成物。
【請求項46】
さらに少なくとも1種の不揮発性油を含有してなる請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
少なくとも1種の不揮発性油が、ヒマシ油、トウモロコシ油、クミン油、鉱油、オリーブ油、落花生油、サフラワー油、ゴマ油、及びダイズ油の中から選択される油からなるものである請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
選択される油がライラックフラワー油及びクミン油からなるものである請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
ブラックシードオイル及びライラックフラワー油の中から選択される少なくとも1種の油を含有してなる昆虫防除用組成物。
【請求項50】
さらに少なくとも1種の植物精油を含有してなる請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
少なくとも1種の植物精油が、t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、チモール、ヒマシ油、トウモロコシ油、クミン油、鉱油、オリーブ油、落花生油、サフラワー油、ゴマ油、及びダイズ油の中から選択される油からなるものである請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
選択される油がライラックフラワー油及びクミン油からなるものである請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
選択される油がライラックフラワー油;ゲラニオール、及びタイム油からなるものである請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
選択される油がライラックフラワー油;ゲラニオール、タイム油、及びクミン油からなるものである請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
少なくとも1種の植物精油と昆虫防除剤を含有してなる昆虫防除用組成物であって、前記昆虫防除剤の最終濃度が、前記昆虫防除剤を単独で使用する場合に昆虫防除活性を示すのに必要な濃度よりも低いものである昆虫防除用組成物。
【請求項56】
少なくとも1種の植物精油が、t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油(LPO)、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン 900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、及びチモールの中から選択される少なくとも1種の油からなるものである請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
昆虫防除剤がDEETである請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
昆虫防除剤がDEETである請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
DBETの最終濃度が少なくとも10%と低いものである請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
DBETの最終濃度が少なくとも5%と低いものである請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
さらに不揮発性油を含有してなる請求項57に記載の組成物。
【請求項62】
不揮発性油が、ヒマシ油、トウモロコシ油、クミン油、鉱油、オリーブ油、落花生油、サフラワー油、ゴマ油、及びダイズ油の中から選択される油からなるものである請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
選択される油がDEET、ライラックフラワー油及びクミン油からなるものである請求項
62に記載の組成物。
【請求項64】
選択される油がDEET約10重量%、ライラックフラワー油約45重量%及びクミン油約45重量%からなるものである請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
選択される油がDEET、d-リモネン、タイム油、ゲラニオール、α-ピネン、及びp-シメンからなるものである請求項57に記載の組成物。
【請求項66】
選択される油がDEET約10重量%、d-リモネン約18重量%、タイム油約18重量%、ゲラニオール約20重量%、α-ピネン約20重量%、及びp-シメン約18重量%からなるものである請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、及びチモールの中から選択される少なくとも2種類の油を含有してなる組成物を準備し;該組成物を昆虫に忌避効果を生じるのに十分な濃度で暴露させることからなる昆虫の防除方法。
【請求項68】
選択される油がライラックフラワー油; ゲラニオール、及びタイム油からなるものである請求項67に記載の方法。
【請求項69】
選択される油がα-ツヨン、α-ピネン、サビネン、β-ピネン、p-シメン及びリモネンからなるものである請求項67に記載の方法。
【請求項70】
選択される油がフタル酸ジエチル、α-テルピネオール、ピペロナール、リナロール、γ-テルピネオール、ジヒドロジャスモン酸メチル、クエン酸メチル及びクエン酸イソプロピルからなるものである請求項67に記載の方法。
【請求項71】
ブラックシードオイル及びライラックフラワー油の中から選択される少なくとも1種の油を含有してなる組成物を準備し;該組成物を昆虫に忌避効果を生じるのに十分な濃度で暴露させることからなる昆虫の防除方法。
【請求項72】
準備される組成物がさらに少なくとも1種の追加の植物精油を含有してなるものである請求項71に記載の方法。
【請求項73】
請求項52に記載の組成物を準備し;該組成物を昆虫に忌避効果を生じるのに十分な濃度で暴露させることからなる昆虫の防除方法。
【請求項74】
準備される組成物の昆虫防除剤がDEETである請求項73に記載の方法。
【請求項75】
t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油(LFO)、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、及びチモールの中から選択される少なくとも2種類の油を含有してなる組成物を準備し;該組成物を昆虫に殺虫効果を生じるのに十分な濃度で暴露させることからなる昆虫の防除方法。
【請求項76】
少なくとも1種の植物精油と昆虫防除剤(但し、前記昆虫防除剤の最終濃度は、該昆虫防除剤を単独で使用した場合に昆虫防除活性を示すのに必要とされる濃度よりも低い)とを含有してなる組成物を準備し;且つ忌避効果を生じるのに十分な濃度の前記組成物に昆虫を暴露することからなる昆虫の防除方法。
【請求項77】
準備される組成物の昆虫防除剤がDEETである請求項76に記載の方法。
【請求項78】
少なくとも1種の植物精油が、t-アネトール、ブラックシードオイル、カンフェン、カルバクロール、d-カルボン、l-カルボン、1,8-シネオール、p-シメン、フタル酸ジエチル、オイゲノール、ゲラニオール、クエン酸イソプロピル、レモングラス油、ライラックフラワー油 (LFO)、ライム油、d-リモネン、アントラニル酸リナリル、リナロール、リンデノール、クエン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、ミルセン、ペリリルアルコール、フェニルアセトアルデヒド、α-ピネン、β-ピネン、ピペロナール、ピペロニル、酢酸ピペロニル、ピペロニルアルコール、ピペロニルアミン、キニーネ、サビネン、α-テルピネン、テルピネン900、α-テルピネオール、γ-テルピネオール、2-tert-ブチル-p-キノン、α-ツヨン、タイム油、及びチモールの中から選択される油からなるものである請求項77に記載の方法。
【請求項79】
昆虫防除活性について組成物を選別する方法であって、
チラミン受容体、Or83b嗅覚受容体、及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される受容体を発現する昆虫細胞を準備し;
前記細胞に前記組成物を加え;
前記受容体に対する前記組成物の結合親和性を測定し;且つ
前記受容体に対して親和性を有する組成物を選択する
ことからなる昆虫防除活性について組成物を選別する方法。
【請求項80】
昆虫防除活性について組成物を選別する方法であって、
チラミン受容体、Or83b嗅覚受容体、及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される受容体を発現する昆虫細胞を準備し;
前記細胞に前記組成物を加え;
前記細胞から細胞内cAMP又はCa2+を抽出し;
細胞内のcAMP又はCa2+濃度を測定し;
前記組成物で処理した細胞の細胞内cAMP又はCa2+濃度を、未処理細胞の細胞内cAMP又はCa2+濃度と比較し;且つ
組成物であってそれを用いた処理が細胞内cAMP又はCa2+濃又はこの両方の変化を生じる組成物を選択する
ことからなる昆虫防除活性について組成物を選別する方法。
【請求項81】
チラミン受容体、Or83b嗅覚受容体、及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される受容体を発現する昆虫細胞を準備し;
前記細胞に前記組成物を加え;
前記受容体に対する前記組成物の結合親和性を測定し;且つ
前記受容体に対して親和性を有する組成物を選択する
ことからなる方法によって作成されるレポート。
【請求項82】
チラミン受容体、Or83b嗅覚受容体、及びOr43a嗅覚受容体の中から選択される受容体を発現する昆虫細胞を準備し;
前記細胞に前記組成物を加え;
前記細胞から細胞内cAMP又はCa2+を抽出し;
細胞内のcAMP又はCa2+濃度を測定し;
前記組成物で処理した細胞の細胞内cAMP又はCa2+濃度を、未処理細胞の細胞内cAMP又はCa2+濃度と比較し;且つ
組成物であってそれを用いた処理が細胞内cAMP又はCa2+濃又はこの両方の変化を生じる組成物を選択する
ことからなる方法によって作成されるレポート。
【請求項83】
チラミン受容体について図31A及び31Bに記載の核酸配列を含有するショウジョウバエのシュナイダー株。
【請求項84】
Or43a嗅覚受容体について図32A及び32Bに記載の核酸配列を含有するショウジョウバエのシュナイダー株。
【請求項85】
Or83b嗅覚受容体について図33A及び33Bに記載の核酸配列を含有するショウジョウバエのシュナイダー株。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31A】
【図31B】
【図32A】
【図32B】
【図33A】
【図33B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31A】
【図31B】
【図32A】
【図32B】
【図33A】
【図33B】
【公開番号】特開2011−201898(P2011−201898A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−108286(P2011−108286)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【分割の表示】特願2006−532475(P2006−532475)の分割
【原出願日】平成16年4月26日(2004.4.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(509018568)タイラテック, インク. (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108286(P2011−108286)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【分割の表示】特願2006−532475(P2006−532475)の分割
【原出願日】平成16年4月26日(2004.4.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(509018568)タイラテック, インク. (6)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]