説明

昇降機用レール装置

【課題】 昇降かごの天井から脱出した搭乗者が、上方へも下方へも避難できる梯子を備えた昇降機用のレール装置を提供する。
【解決手段】 構築物の壁面22と昇降かご21との間に昇降空間Sが形成されるように、壁面22から所定間隔を置いて、支持部剤2でレール3を支持する。昇降空間S内に位置して、梯子支持部材4によって、構築物に避難梯子5を支持する。避難梯子5は、ステップバー9が構築物の壁面22に対してほぼ垂直となる向きに配置する。構築物の壁面22と昇降かご21との間に形成される昇降空間Sは、避難梯子5を昇降する人の上下方向の通過を許容する十分な広さを有するように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、構築物の垂直の壁面に沿って敷設されたレールに係合して、駆動装置を搭載した昇降かごが昇降する昇降機におけるレール装置であって、非常脱出用の避難梯子を具備するものに関する。
【背景技術】
【0002】
昇降装置を具備する風力発電機が特許文献1に記載されている。同風力発電機は、地上に鉄塔を組み立て、同鉄塔の先端部に風力発電装置を取付ける一方、鉄塔の外側面に昇降用の梯子を取付け、同梯子に昇降装置を取付けている(特許文献1、図1)。昇降装置1は、梯子5に取付けた上下方向に伸延させたレールと、同レールに沿って昇降自在に配設した略矩形箱型状の昇降機体とからなる。レールは、梯子に取付けた断面H型のレール本体の表面略中央部に、レール本体に沿って伸延させたラックを具備する。昇降機体は、矩形箱型状のケーシング(昇降かご)の背面側に走行部を有し、走行部がレールに昇降自在に係合する。
【特許文献1】特開2000−310261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、上記のような昇降装置においては、何らかの異常原因で昇降かごが昇降途上で停止して走行不能に陥った場合に、搭乗者が、昇降かごの天井に設けられた非常脱出口からかご外へ脱出し、梯子を使って最寄り階のステップまで避難することができるようになっている。ところが、上記のような従来の昇降装置においては、梯子が昇降かごの背面に平行に、接近して配置される(特許文献1の図1,図6参照)ため、天井の脱出口から出た搭乗者は、梯子を登って上方へ避難することができるが、昇降かごがじゃまして梯子を下りて下方へ避難することができない。これでは、停止場所によっては避難を困難にするおそれがある。
したがって、この発明は、昇降かごの天井に設けられた非常脱出口からかご外へ脱出した搭乗者が、上方へも下方へも避難することができる梯子を備えた昇降機用のレール装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、この発明においては、構築物の壁面22と昇降かご21との間に昇降空間Sが形成されるように、壁面22から所定間隔を置いて、支持部剤2でレール3を支持する。昇降空間S内に位置して、梯子支持部材4によって、構築物に避難梯子5を支持する。避難梯子5は、ステップバー9が構築物の壁面22に対してほぼ垂直となる向きに配置する。構築物の壁面22と昇降かご21との間に形成される昇降空間Sは、避難梯子5を昇降する人の上下方向の通過を許容する十分な広さを有するように設定する。
【発明の効果】
【0005】
構築物の壁面22と昇降かご21との間に昇降空間Sが形成され、また避難梯子5が昇降かご21に密着せず、これに対して直交する方向に設けられるから、避難梯子5を下る方向に避難する際に、昇降かご21が障害とならず、したがって、避難梯子5を使って難なく上方又は下方の任意の方向へ避難することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係る昇降機の平面図、図2は同昇降機の概略的斜視図、図3は本発明に係るレール装置の側面図、図4は図3におけるIV−IV断面図、図5は図3におけるV−V断面図である。
【0007】
図において、昇降機21は、円筒状の風力発電タワーの側壁22のような構築物の垂直の壁面に沿って昇降するように設けられる。壁面22に沿って敷設されたレール装置1に係合して、駆動装置23を搭載した昇降かご24が昇降する。昇降かご24は、矩形箱状で、背面側に駆動装置23、左右両側面に図示しない出入り口、天井に非常脱出口25が設けられる。
【0008】
レール装置1は、レール支持部材2と、レール3と、梯子支持部材4と、避難梯子5とを具備する。風力発電タワーの壁面22は、湾曲しているが、本発明に係る昇降機との関係で平面であって差し支えないので以下の説明においては平面として扱う。
【0009】
レール支持部材2は、壁面22から直角に起立する一対の起立片6(6a,6b)と、起立片6の先端間を接続する壁面22と平行な支持片7とを具備する。レール支持部材2は、構築物の壁面22と昇降かご21との間に、人が昇降するに十分な広さの昇降空間Sを形成するために、レール7を構築物の壁面22に対して所定間隔を置いて支持する。
【0010】
避難梯子5は、壁面22と昇降かごと21の間に形成される昇降空間S内に位置して、梯子支持部材4によって、構築物に支持される。避難梯子5は、一対の支柱8,8間を多数のステップバー9で結合してなり、ステップバー9が、壁面22に対してほぼ垂直となる向きに配置される。
【0011】
図示の実施形態において、レール3は、H型鋼材からなるレール本体10と、これに沿って固着されたラック11とを具備する。レール本体10は、一方のフランジ10aを壁面22にほぼ平行に配置して、延長方向の所定間隔毎に、支持部材2の支持片7上に、締め付け金具12とボルト・ナット13で支持される。ラック11は、レール本体10の他方のフランジ10b上に固着され、レール本体10に沿って上下方向へ伸びる。昇降かご21は、ラック11に係合して回転駆動するピニオン26を具備する。
【0012】
図示の実施形態において、避難梯子5は、梯子支持部材である支持アーム4を介してレール本体10のフランジ10a上に支持される。すなわち、支持アーム4は、一端側においてレール本体10の一方のフランジ10aに固着され、レール本体10から構築物の壁面にほぼ平行に水平方向に伸び、他端側においてステップバー9の中央を垂直に貫通させて避難梯子5に固着される。避難梯子5を昇降空間Sに支持する手段は、他にも種々変更が可能である。
【0013】
以上の構成により、昇降かごの上部脱出口25から脱出した搭乗者が、昇降空間Sを通って、避難梯子5により上下任意の方向へ避難することを可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0014】
この発明は、例えば風力発電タワー内に設置される昇降機における避難梯子を備えたレール装置として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る昇降機の平面図である。
【図2】本発明に係る同昇降機の概略的斜視図である。
【図3】本発明に係るレール装置の側面図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】図3におけるV−V断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 レール装置
2 レール支持部材
3 レール
4 梯子支持部材
5 避難梯子
6 起立片
7 支持片
8 支柱
9 ステップバー
10 レール本体
10a フランジ
10b フランジ
11 ラック
12 締め付け金具
13 ボルト・ナット
21 昇降機
22 側壁(壁面)
23 駆動装置
24 昇降かご
25 非常脱出口
26 ピニオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築物の垂直の壁面に沿って敷設されたレールに係合して、駆動装置を搭載した昇降かごが昇降する昇降機におけるレール装置であって;前記レールと;前記構築物の壁面と前記昇降かごとの間に人が昇降するに十分な広さの昇降空間を形成するために、前記レールを前記構築物の壁面に対して所定間隔を置いて支持するレール支持部材と;前記構築物の壁面と前記昇降かごとの間に形成される昇降空間に位置して、梯子支持部材によって、前記構築物に支持される避難梯子とを具備し;この避難梯子は、ステップバーが前記構築物の壁面に対してほぼ垂直となる向きに配置され;それによって、前記昇降かごの上部脱出口から脱出した搭乗者が、前記昇降空間を通って、前記避難梯子により上下任意の方向へ避難することを可能としたことを特徴とする昇降機用レール装置。
【請求項2】
前記レールは、一方のフランジを前記構築物の壁面にほぼ平行に配置して前記支持部材に支持されたH型鋼材からなるレール本体と、このレール本体の他方のフランジに固着されレール本体に沿って上下方向へ伸びるラックとを具備し;前記昇降かごは、前記ラックに係合して回転駆動するピニオンを具備し;前記避難梯子は、支持アームを介して前記レール本体に支持され;前記支持アームは、一端側において前記レール本体の一方のフランジに固着され、レール本体から前記構築物の壁面にほぼ平行に水平方向に伸び、他端側において前記避難梯子のステップバーの中央を垂直に貫通させて避難梯子に固着されることを特徴とする請求項1に記載の昇降機用レール装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−169026(P2007−169026A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372097(P2005−372097)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】