説明

映像伝送装置

【課題】複数のソースを1元的に処理できるようにすることにより、実装効率を高めて小型で低コストな映像伝送装置を提供する。
【解決手段】映像伝送装置100は、入力信号をシリアル信号からパラレル信号に変換して所定のデータを抽出したりマスキング等の処理を行うデータ処理部120と、映像データの検出に用いるクロック信号の位相を調整する位相調整部130と、データ処理部120から映像データや音声データ等を入力してエンコードまたはトランスコードの処理を行うエンコーダ部140と、エンコーダ部140から出力されるデータをもとにOFDM変調されたデジタルデータを生成するOFDM部150と、OFDM部150から出力されるデジタルデータをアナログ信号に変換するD/A変換部160とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校、ホテル、病院、放送局等の館内で地上デジタル放送等を配信する館内放送システム等に用いられる映像伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
学校、ホテル、病院、放送局等の施設では、館内の各室や公共の場所等に音声や映像等を配信するための館内放送システムが配備されている(例えば、特許文献1に記載の地域ケーブル放送送受信システム)。このような館内放送システムでは、外部のケーブルテレビや衛星放送、あるいは光ディスクやHDD等の記録装置等から映像、音声、各種データ等(以下では、このような各種媒体から与えられる映像データ等を総称的にソースという)を入力し、これらを多重化して館内に配信する処理を行う映像伝送装置が用いられている。映像伝送装置は、映像、音声等の信号をソース別に設けられたエンコーダにそれぞれ入力し、変換処理された信号を多重化した後にOFDM(直交周波数分割多重方式)変調して館内に設置されている受信器等に配信している。
【0003】
現在、テレビ放送ではアナログ方式からデジタル方式への移行作業が進められており、従来のアナログ方式の映像や音声だけでなく、デジタル化された高精細な映像や音声等も外部から入力して配信できる映像伝送装置がすでに提供されている。デジタル放送により高精細な質の高い画像が得られるようになるだけでなく、音声データや文字データ等も映像信号のTS(トランスポート・ストリーム)データに含めて伝送されている。館内放送システムでも、このようなデジタル化に対応した映像伝送装置が導入されつつある。
【0004】
病院、学校、ホテル等に導入されている館内放送システムでは、すべての受信器を一度にまとめてデジタル対応に置き換えるのは、コスト面等の点から困難と考えられる。そのため、テレビ放送が地上デジタル放送に完全移行した後も、しばらくはデジタル放送と並行してアナログ放送の配信も必要になると予想される。従って、今後ともデジタル放送と並行してアナログ放送も配信できる映像伝送装置が要望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−340526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、地上デジタル放送への移行に伴って館内放送システムで配信するソースがさらに多様化してきている。このようなソースの多様化に対応させるために、映像伝送装置に多くのエンコーダを内蔵させる必要が生じており、とくに映像データと音声データのそれぞれで別のエンコーダを用いていることから、ソースの多様化によって内蔵させるエンコーダの数が大幅に増えてしまう。また、各エンコーダからの出力を多重化させるための制御部も内蔵させる必要がある。そのため、映像伝送装置が大型化して高コストになってしまうといった問題が生じている。さらに、情報量の増大に伴ってより一層の高速化が求められており、高性能な部品を多数必要とするために高コストになるといった問題もある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複数のソースを1元的に処理できるようにすることにより、実装効率を高めて小型で低コストな映像伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の映像伝送装置の第1の態様は、映像データを含む入力信号が入力される入力部と、前記入力部から前記入力信号を入力してシリアル信号からパラレル信号に変換するデータ処理部と、前記パラレル信号には映像データとクロック信号が含まれており、前記データ処理部から前記パラレル信号を入力してエンコード処理またはトランスコード処理を行って多重化したTS(トランスポート・ストリーム)データを出力するエンコーダ部と、前記エンコーダ部で前記パラレル信号から前記映像データを検出するために前記クロック信号の位相を調整する位相調整部と、前記エンコーダ部から前記TSデータを入力してOFDM変調を行うOFDM部と、を備え、前記エンコーダ部は、前記入力部で入力される前記入力信号に対して1元的にエンコード処理またはトランスコード処理を行うことを特徴する。
【0009】
本発明の映像伝送装置の他の態様は、前記エンコーダ部は1つの集積回路(IC)で実現されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の映像伝送装置の他の態様は、前記位相調整部は、前記エンコーダ部で映像データを検出するタイミングとして前記クロック信号の立上りまたは立下りのタイミングのいずれか一方を選択することを特徴とする。
【0011】
本発明の映像伝送装置の他の態様は、前記位相調整部は、前記データ処理部から前記クロック信号を入力して該クロック信号の位相を調整し、これを前記エンコーダ部に出力することを特徴とする。
【0012】
本発明の映像伝送装置の他の態様は、前記入力部は、前記異なる種類の入力信号を個別に入力するための入力端子を2以上備え、所定の選択信号に従って前記2以上の入力端子のいずれか1つを選択して前記入力信号を出力するスイッチをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の映像伝送装置の他の態様は、前記入力信号はSDI方式の信号であり、前記データ処理部は、前記入力信号のブランキング区間では前記音声データのクロック成分を前記クロック信号に変換して前記位相調整部または前記エンコーダ部に出力することを特徴とする。
【0014】
本発明の映像伝送装置の他の態様は、前記入力信号はSDI方式の信号であり、前記データ処理部は、前記入力信号のブランキング区間に設定されているデータを未定義データで書き換えることを特徴とする。
【0015】
本発明の映像伝送装置の他の態様は、前記OFDM部は、デジタル演算によりOFDM変調を行っており、前記OFDM部からOFDM変調されたデジタルデータを入力してD/Aコンバータでアナログ信号に変化するD/A変換部をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の映像伝送装置の他の態様は、館内放送システムに用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のソースを1元的に処理できるようにすることにより、実装効率を高めて小型で低コストな映像伝送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る映像伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図2】HD−SDI方式の信号における映像データのデータ形式とアナログ映像信号とのタイミング関係を示す説明図である。
【図3】入力信号のアイダイアグラムとサンプリングに用いるクロック、及びサンプリング結果の一例を示す説明図である。
【図4】PCM方式でデジタル化された音声データの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る映像伝送装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態における映像伝送装置について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0020】
本発明の映像伝送装置は、異なる種類の複数のソース、及び映像データと音声データとを1元的に高精度に処理できるようにしており、これを実現するために以下のような3つの課題を解決しなければ、安定した処理ができないことがわかった。まず第1の課題として、入力した映像データを確実に検出してエンコード処理またはトランスコード処理を行うために、映像データの検出に用いるクロック信号の位相をソース毎に適切に調整する必要がある。また第2の課題として、エンコーダ部を安定的に動作させるために、入力信号が持つクロック信号を常にエンコーダ部に入力させるようにする必要がある。さらに第3の課題として、エンコーダ部における処理で映像データを他のデータと明確に区別できるようにするために、映像データ以外のデータを所定のデータで書き換える必要がある。上記の3つの課題を解決して複数のソースを1元的に高精度に処理するように構成した本発明の映像伝送装置の好ましい実施形態を以下に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る映像伝送装置を、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態の映像伝送装置100の構成を示すブロック図である。図1において、映像伝送装置100は、外部から各種ソースを入力するための1以上の入力端子(101a、101b、・・・)を有する入力部101と、入力端子のいずれか1つを選択するスイッチ110と、サンプリング用クロックを用いて、入力信号をシリアル信号からパラレル信号に変換する処理、所定データを抽出する処理、映像データ以外のデータを所定のデータに書き換える処理、及びマスキングの処理等を行うデータ処理部120と、映像データの検出に用いるクロック信号の位相を調整する位相調整部130と、データ処理部120から映像データや音声データ等を入力してエンコードまたはトランスコードの処理を行うエンコーダ部140と、エンコーダ部140から出力されるデータをもとに変調(OFDM変調)されたデジタルデータを生成するOFDM部150と、OFDM部150から出力されるデジタルデータをアナログ信号に変換(D/A変換)するD/A変換部160と、D/A変換部160から出力されるアナログ信号のデジタル放送電波(RF)を外部に出力する出力端子102とを備えている。
【0022】
映像伝送装置100は、デジタル映像・音声、アナログ映像・音声等のように、異なる方式で生成された信号(ソース)を外部から入力して処理できるように、入力部101に入力端子を1以上備えている。例えば、デジタル映像・音声の信号として、HD−SDI(High Definition Serial Digital Interface)、SD(Standard Definition )−SDI、HDMI(High Definition Multimedia Interface)の規格に従って生成されたものがあり、それぞれに対応した入力端子101a、101b、・・・を設けることができる。HD−SDI方式の信号を例に、映像データのデータ形式とアナログ映像信号とのタイミング関係を図2に示す。同図(a)はアナログ映像信号を模式的に示し、同図(b)は映像データのデジタルデータ形式を示している。
【0023】
図2において、Tはクロック周期、SAVは有効映像開始タイミング基準コード、EAVは有効映像終了タイミング基準コードをそれぞれ示している。映像信号のデジタルデータ形式では、デジタルラインがブランキング区間とデジタル有効ラインの区間で構成されており、SAVとEAVとの間がデジタル有効ラインであることが示されている。HD−SDI方式では、同図(a)に示すアナログ水平基準位相0に対し、デジタルラインが88クロック周期前から始まり、デジタル有効ラインが192クロック周期後から始まることが示されている。このようなアナログ信号とデジタルデータ形式との間のタイミング関係は、ソース毎に異なっている。
【0024】
デジタル有効ラインに格納される映像データは、HD−SDI方式では10ビットの映像データ(色データ)と10ビットの色差データとで構成されている。一方、ブランキング区間には音声や文字等の付加データを持たせることができる。これにより、映像データと、映像以外の音声データ等を同時に伝送させることができる。
【0025】
スイッチ110は、入力部101に入力端子が2以上設けられているときにそのいずれか1つを選択し、選択した入力端子から信号を入力してデータ処理部120に出力する。入力端子の選択は、選択信号入力部111を介して外部から入力した選択信号に従って行われる。なお、入力部101が入力端子を1つだけ有しているときは、スイッチ110を設ける必要はなく、1つの入力端子からデジタル信号またはアナログ信号が入力される。映像伝送装置100は、基本的にはデジタル信号を入力して用いられることから、以下では、スイッチ110でデジタル信号が選択されたときの処理を例に説明する。
【0026】
データ処理部120は、スイッチ110で選択された入力端子から入力されるシリアル信号がどのソースの信号かを、選択信号入力部111から入力した選択信号をもとに判別し、判別した結果に基づいて入力したシリアル信号をパラレル信号に変換(シリアル/パラレル変換)している。そして、パラレル信号を映像データと音声データ等に仕分けしてエンコーダ部130に出力する。
【0027】
データ処理部120は、図2(b)に示したSAV、EAVのタイミング基準コードをもとに映像データと音声データ等に仕分けする。また、映像データに含まれるクロック成分を抽出してエンコーダ部140に適したクロック信号に変換する。そして、データ処理部120からエンコーダ部140にパラレル信号の映像データS1、音声データS2、及びクロック信号S3等が出力される。映像データS1は、HD規格に対応するデータのときはデータ処理部120からエンコーダ部140に20本の信号線で伝送され、SD規格に対応するときは10本の信号線で伝送される。また、クロック信号S3は1本のクロック信号線で伝送される。
【0028】
音声データS2は、PCM(Pulse CodeModulation)方式でデジタル化された信号であり、ビットクロック、LRクロック、及び音声データで構成されている。これらの信号は、データ処理部120からエンコーダ部140に3本の信号線で伝送される。PCM方式でデジタル化された音声データの一例を図4に示す。同図において、符号21、22、及び23は、それぞれビットクロック、LRクロック、及びデータを示す。LRクロック22は、所定数のビットクロック21毎にL(左)とR(右)とが交互に繰り返される信号となっており、左右のいずれ側の音声であるかを示している。またデータ23は、ビットクロック21に同期して設定されている。
【0029】
エンコーダ部140は、データ処理部120から入力された映像データや音声データ等を検出してエンコードまたはトランスコードの処理を行った後、これらを多重化してTS形式のデータをOFDM部150に出力している。エンコーダ部140では、デジタル形式のデータ、アナログ形式のデータ、およびH264からMPEG2へのトランスコード処理も行えるようにしている。
【0030】
エンコーダ部140で行われるデータ検出の処理方法を、図3を用いてさらに詳細に説明する。図3(a)は、入力したシリアル信号のアイダイアグラム(アイパターン)10を示し、同図(b)は、データ処理部120から入力したクロック信号11を示し、同図(c)は検出したデータの一例(符号12)を示している。クロック信号11を用いて行うデータ検出では、第1クロック11aのようにクロック信号11の立上りのタイミングでデータ検出を行う場合と、第2クロック11bのようにクロック信号11の立下りのタイミングでデータ検出を行う場合の2つのケースがある。第1クロック11aで示す立上りのタイミングと第2クロック11bで示す立下りのタイミングとでは、位相が180°異なっている。
【0031】
図3(b)では、第1クロック11aで示す立上りのタイミングがアイダイアグラム10のデータ変化点に一致し、第2クロック11bで示す立下りのタイミングがアイダイアグラム10のデータの中央部に位置している。このようなクロック信号11では、第2クロック11bで示す立下りのタイミングでデータを検出するのが好ましく、クロックやデータのジッタ等の影響を考慮しても、アイダイアグラム10が1/0の判別閾値より高いか低いかの判定をより正確に行うことができる。データ検出を、第1クロック11aで示す立上りのタイミングと第2クロック11bで示す立下りのタイミングのいずれを用いて行うかは、位相調整部130によって選択される。
【0032】
次に、位相調整部130で行う処理を以下に説明する。位相調整部130は、エンコーダ部140に入力される映像データを確実に検出できるようにするために、映像データの検出に用いるクロック信号の位相を決定する。すなわち、位相調整部130は、エンコーダ部140に対して映像データの検出を図3(b)に示す第1クロック11aのように立上りのタイミングで行うのか、あるいは第2クロック11bのように立下りのタイミングで行うのかをエンコーダ部140に指示する。
【0033】
従来の映像伝送装置では、異なる種類のソース毎にエンコーダまたはトランスコーダを設け、さらに映像データと音声データでもそれぞれのエンコーダまたはトランスコーダを設けて別々に処理しており、複数のエンコーダ/トランスコーダを備えていた。本実施形態の映像伝送装置100では、異なる種類のソース及び映像データと音声データに対して1つのエンコーダ部140で1元的に処理させる構成としている。異なる種類のソースの映像データを確実に検出できるようにするためには、映像データの検出に用いるクロック信号の位相をソース毎に適切に調整する必要がある(第1の課題)。
【0034】
位相調整部130は、上記の第1の課題を解決するために設けられたものであり、エンコーダ部140に対して、データ検出にクロック信号の立上りのタイミングを用いるのか、あるいは立下りのタイミングを用いるのかを指示する。これにより、エンコーダ部140は映像データを確実に検出することが可能となる。位相調整部130によるクロック信号の調整は、映像伝送装置100が初期化されたときだけ行っても良い。
【0035】
位相調整部130から指示された映像データの検出にクロック信号の好適なタイミングを用いることで、エンコーダ部140では入力したソースに依存することなく映像データを確実に検出してエンコードまたはトランスコードの処理を行うことができる。
【0036】
本実施形態の映像伝送装置100では、異なる種類のソースから入力した信号を1つのエンコーダ部140で処理し、かつ映像データと音声データについても1つのエンコーダ部140で処理するようにしており、エンコーダ部140を1つのICに実装している。エンコーダ部140は、位相調整部130から指示されるクロック信号を用いて異なる種類のソースの信号からデータを検出してエンコード/トランスコード処理することにより、異なる種類のソースの信号及び映像データと音声データを1元的に処理できるようにしている。これにより、映像伝送装置100の実装効率を高めて小型化するとともに、処理の高速化を実現することができる。
【0037】
次に、エンコーダ部140を安定的に動作させるには、音声データに含まれるクロック信号もエンコーダ部140に入力させる必要がある(第2の課題)。以下では、エンコーダ部140を安定的に動作させるための構成を詳細に説明する。
【0038】
SDI方式の信号では、図2を用いて説明したように、デジタル有効ラインに映像データが格納されるとともに、ブランキング区間に音声や文字等の付加データを持たせることが可能となっている。ここで、SDI方式の信号では、ブランキング区間に音声や文字データが含まれたり、含まれなかったりする。このため、エンコーダ部へ出力される音声信号も送信されたり、されなかったりしていた。このように、エンコード部への信号処理が不定であると、エンコーダ部が不安定となることが分かった。そこで、本実施形態の映像伝送装置100では、ブランキング区間についてはデータ処理部120で音声データからクロック成分を抽出して音声用のクロック信号に変換し、これをエンコーダ部140に出力するようにしている。これにより、SDI方式の信号を含んだ異なる種類のソースのデータを1つのエンコーダ部140で1元的に処理するようにしても、エンコーダ部140を安定的に動作させることが可能となる。
【0039】
さらに、SDI方式の信号では、第3の課題として、エンコーダ部140の処理において映像データを他のデータと明確に区別できるようにする必要がある。SDI信号の映像データをエンコード処理またはトランスコード処理するとき、エンコーダ部140は、デジタル有効ラインにある映像データとブランキング区間にある映像データ以外のデータとを明確に区別する必要がある。データを明確に区別できない場合、映像データのエンコード部に取り込めなくなり、映像データの喪失を生じてしまう。そこで、本実施形態の映像伝送装置100では、ブランキング区間のデータを事前に決定されている特定のデータ(以下ではこのデータを「未定義データ」という)で書き換える(マスキングする)処理を行う。
【0040】
マスキングに用いる未定義データとして、社団法人電波産業会の標準規格で定められている「未定義ワードデータ」を用いるのがよい。この未定義データへの書き換えは、データ処理部120で行わせることができる。データ処理部120では、入力信号をシリアル/パラレル変換して映像データや音声データ等を取り出しているが、ブランキング区間から音声データ等を取り出した後に未定義データへの書き換えを行っている。このように映像データと映像データ以外のデータを明確に区別することで、映像データの喪失がなくなり、確実な処理を行うことが可能となる。
【0041】
さらに言うと、OFDM部150は、映像データや音声データ等を多重化したTSデータをエンコーダ部140から入力し、これをもとにOFDM変調を行う。OFDM変調は、従来は局所発振器を用いて多数の搬送波(サブキャリア)を発生させて変調を行っていたため、装置が大型化してしまうといった問題があった。これに対し、本実施形態のOFDM部150はデジタル演算によってOFDM変調を行っており、大幅に小型化することが可能となる。OFDM部150は、例えば32チャンネルのOFDM変調されたデジタルデータを、32本の信号線でパラレルにD/A変換部160に出力する。
【0042】
D/A変換部160は、OFDM部150からパラレルに出力されるOFDM変調されたデジタルデータを入力し、これをD/Aコンバータを用いてアナログ信号に変換している。D/Aコンバータで変換されたアナログ信号がデジタル放送電波(RF)として出力端子102から出力される。出力端子102から出力されるデジタル放送電波(RF)は、館内の各受信器に配信される。本実施形態の映像伝送装置100では、デジタル放送電波(RF)をD/Aコンバータを用いて生成することができ、従来のローカル信号を用いて生成する場合に比べて装置を大幅に小型化することができる。
【0043】
本実施形態の映像伝送装置100は、上記のような構成により部品点数を大幅に低減することができる。まず、複数の異なる種類のソースの信号及び映像データと音声データに対するエンコード/トランスコードの処理を1つのエンコーダ部140だけで行えるようにしたことで、エンコーダ部140を1つのICに実装することができる。また、位相調整部130、データ処理部120及びOFDM部150を1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)に実装することが可能となっている。
【0044】
従来は、エンコード/トランスコードの処理部をソースの種類毎及び映像データと音声データに分けて複数設ける必要があったため、それより前段の処理と後段の処理とを別のFPGAに分けて実装する必要があった。これに対し、本実施形態の映像伝送装置100では、エンコーダ部140を1つのICに実装できるようにし、またOFDM変換をデジタル演算で行えるようにすることで、D/A変換部160を除く前段の処理と後段の処理をともに1つのFPGAに実装できるようにしたものである。これにより、映像伝送装置100の実装効率を大幅に高めることが可能となる。
【0045】
上記説明のように、本実施形態の映像伝送装置100は、映像信号としてアナログ信号、デジタル信号およびH264データ等の複数の異なる種類のソースを入力してMPEG2データに変換することができ、これをデジタル放送電波(RF)として館内等に配備された受信器に配信する構成となっている。これにより、複数の種類のソース及び映像データと音声データを1元的に処理(プラットフォーム化)することが可能となる。また、エンコーダ部140を1つのICに実装し、位相調整部130、データ処理部120及びOFDM部150を1つのFPGAに実装することで、実装効率を高めて大幅に小型化するとともに、処理の高速化を実現している。
【0046】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る映像伝送装置を、図5を用いて以下に説明する。図5は、本実施形態の映像伝送装置200の構成を示すブロック図である。図5において、映像伝送装置200は、位相調整部230をデータ処理部120とエンコーダ部240との間に配置している。位相調整部230は、データ処理部120からクロック信号S3を入力し、クロック信号S3に対して所定の位相調整を行ってクロック信号S3’をエンコーダ部240に出力している。
【0047】
第1実施形態では、位相調整部120がエンコーダ部140に対して、映像データを検出するタイミングをクロック信号11の立上りのタイミングかあるいは立下りのタイミングを指示する構成としていた。これに対し本実施形態では、位相調整部230が入力信号から取り込んだクロック信号S3の位相を調整し、これをクロック信号S3’としてエンコーダ部240に出力する構成としている。一例として、映像データを検出するタイミングをクロック信号11の立上りのタイミングとするか、あるいは立下りのタイミングとするかで、クロック信号S3の位相を180°異なるように調整する。これにより、エンコーダ部240では、例えば常にクロック信号11の立上りのタイミングで映像データを検出させるようにすることができる。
【0048】
上記のような構成とすることにより、本実施形態の映像伝送装置200でも複数の種類のソース及び映像データと音声データとを1元的に処理することが可能となり、実装効率を高めて小型で低コストな映像伝送装置を提供することができる。
【0049】
上記では、デジタル信号を入力したときを例に本発明の映像伝送装置について説明したが、アナログ信号を入力した場合も同様にして処理を行うことができる。但し、アナログ信号の入力では、映像信号と音声信号が別々の端子から同時にデータ処理部に入力される。一例として、図1に示す映像伝送装置100では、入力部101の2つの入力端子101a、101bからそれぞれ映像信号と音声信号が同時にデータ処理部120に入力される。データ処理部120では、アナログ信号の映像信号及び音声信号がそれぞれA/D変換器でデジタル信号に変換され、それぞれ映像データS1及び音声データS2として出力される。また、クロック信号S3として、A/D変換器に入力されるサンプリングクロックが出力される。データ処理部120でデジタル信号に変換された後の処理は、上記実施形態における説明と同様に行われ、エンコーダ部140では映像データと音声データが1元的に処理される。
【0050】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る映像伝送装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における映像伝送装置の細部構成及び詳細な動作などに関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
100、200 映像伝送装置
101 入力部
101a、101b、・・・ 入力端子
102 出力端子
110 スイッチ
111 選択信号入力部
120 データ処理部
130、230 位相調整部
140、240 エンコーダ部
150 OFDM部
160 D/A変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像データを含む入力信号が入力される入力部と、
前記入力部から前記入力信号を入力してシリアル信号からパラレル信号に変換するデータ処理部と、
前記パラレル信号には映像データとクロック信号が含まれており、前記データ処理部から前記パラレル信号を入力してエンコード処理またはトランスコード処理を行って多重化したTS(トランスポート・ストリーム)データを出力するエンコーダ部と、
前記エンコーダ部で前記パラレル信号から前記映像データを検出するために前記クロック信号の位相を調整する位相調整部と、
前記エンコーダ部から前記TSデータを入力してOFDM変調を行うOFDM部と、を備え、
前記エンコーダ部は、前記入力部で入力される前記入力信号に対して1元的にエンコード処理またはトランスコード処理を行う
ことを特徴する映像伝送装置。
【請求項2】
前記エンコーダ部は1つの集積回路で実現されている
ことを特徴とする請求項1に記載の映像伝送装置。
【請求項3】
前記位相調整部は、前記エンコーダ部で映像データを検出するタイミングとして前記クロック信号の立上りまたは立下りのタイミングのいずれか一方を選択する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の映像伝送装置。
【請求項4】
前記位相調整部は、前記データ処理部から前記クロック信号を入力して該クロック信号の位相を調整し、これを前記エンコーダ部に出力する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の映像伝送装置。
【請求項5】
前記入力部は、前記異なる種類の入力信号を個別に入力するための入力端子を2以上備え、
所定の選択信号に従って前記2以上の入力端子のいずれか1つを選択して前記入力信号を出力するスイッチをさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の映像伝送装置。
【請求項6】
前記入力信号はSDI方式の信号であり、
前記データ処理部は、前記入力信号のブランキング区間では前記音声データのクロック成分を前記クロック信号に変換して前記位相調整部または前記エンコーダ部に出力する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の映像伝送装置。
【請求項7】
前記入力信号はSDI方式の信号であり、
前記データ処理部は、前記入力信号のブランキング区間に設定されているデータを未定義データで書き換える
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の映像伝送装置。
【請求項8】
前記OFDM部は、デジタル演算によりOFDM変調を行っており、
前記OFDM部からOFDM変調されたデジタルデータを入力してD/Aコンバータでアナログ信号に変化するD/A変換部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の映像伝送装置。
【請求項9】
館内放送システムに用いられる
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の映像伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−253517(P2012−253517A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123658(P2011−123658)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000114226)ミハル通信株式会社 (38)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】