説明

映像処理装置

【課題】復調された映像の色差信号は、OSDを合成する前に、4:2:2フォーマットの信号に変換するため垂直フィルタがかけられる。さらに、OSD合成後に出力解像度へのスケーリング処理として垂直フィルタがかけられる。このように、2度に分けてフィルタ処理が施されるため、周波数特性が劣化する。
【解決手段】映像処理装置は、4:2:0フォーマットの映像信号に、OSD映像信号を重畳する。映像処理装置は、OSD映像信号をYUV信号に変換する変換部と、YUV信号に含まれるOSD輝度信号をスケーリング処理するOSD輝度信号スケーリング部と、スケーリングされたOSD輝度信号と、4:2:0フォーマットの映像信号の輝度信号とを合成する輝度信号合成部と、YUV信号に含まれるOSD色差信号をスケーリング処理するOSD色差信号スケーリング部と、スケーリング処理されたOSD色差信号と、4:2:0フォーマットの映像信号の色差成分とを合成する色差信号合成部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル放送の視聴、記録および/または再生に関連する映像処理技術に関する。また本発明は、BDやDVDなどのディジタル記録メディアに記録された動画像を再生する機器に用いられる映像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル放送の番組やBD、DVDなどに記録されたコンテンツを再生すると、字幕やテロップなど(以下本願明細書において「字幕」を例に挙げる。)が映像と同時に表示されることがある。このとき、映像機器は、映像信号の上に字幕のグラフィックスを重畳する出画イメージを生成している。
【0003】
ディジタル放送の番組や、BD、DVDに記録されているコンテンツの映像信号は、たとえば4:2:0サンプリングされた後、MPEG規格にしたがって圧縮符号化されている。
【0004】
この「4:2:0サンプリング」とは、輝度信号(Y)に対し、色差信号(Cb信号およびCr信号)を、映像の水平方向(走査線上)にも垂直方向にも1/2の割合で取得することをいう。たとえば縦2画素横2画素の4画素に着目すると、輝度信号(Y)は4画素の各々について生成され、色差信号(Cb信号またはCr信号)は4画素を代表する同じ1画素として生成される。4:2:0サンプリングされた映像信号は「4:2:0フォーマットの映像信号」とも呼ばれる。
【0005】
再生装置は、圧縮符号化された映像信号を復調し、字幕のグラフィックスデータをOSD(On Screen Display)プレーンの映像信号(OSD映像信号)として生成した後、映像信号とOSD映像信号の透過情報に従って合成を行い、描画している。この合成処理は、映像の色差信号に垂直フィルタ処理を行い、映像の輝度信号と位相(「垂直位相」または「サンプリング位相」とも言う。)が等しい色差信号(4:2:2または4:4:4信号)に変換した後に行われる(たとえば特許文献1参照)。
【0006】
再生装置では、接続された表示装置の解像度に整合させるため、上記合成された映像信号にスケーリング処理を行い、その後、表示装置に出力する。このスケーリング処理においては、IP変換(インターレース−プログレッシブ変換)が行われることがある。IP変換時にもまた、合成された映像信号の色差信号に垂直フィルタ処理が行われる。
【0007】
たとえば図7(a)〜(d)は、合成後の色差信号に関する従来の映像処理の一例を示す。この例は、水平走査線1080本のインタレース映像(1080i映像)を、水平走査線720本のプログレッシブ映像(720p映像)に変換して出力する例を示している。1080i映像は、4:2:0フォーマットであるとする。ただし以下の説明では輝度信号には言及しない。以下では映像信号が画素単位で処理されていることを明確化するため、色差信号の各画素が持つ値を「色差データ」と表現する。
【0008】
図7(a)は、1080i映像のトップフィールドおよびボトムフィールドを示している。トップフィールドの色差データ(●)はたとえばCb信号を構成し、ボトムフィールドの色差データ(○)はたとえばCr信号を構成する。
【0009】
図7(b)は、図7(a)のトップフィールドおよびボトムフィールドの色差信号に垂直フィルタ処理を施すことによって得られた、4:2:2フォーマットの映像信号を示す。たとえば図7(a)の色差データ(●)と図7(b)の色差データ(●)とを結ぶ矢印は、図7(b)の各フィールドの色差データが、図7(a)のどの色差データを用いて生成されるかを示している。垂直フィルタ処理により、各フィールドの色差信号の情報量が2倍に増加している。
【0010】
垂直フィルタ処理を行う理由は、輝度信号の画素数と色差信号の画素数とを整合させておくことにより、後に行われるIP変換処理が容易になるためである。
【0011】
図7(c)は、IP変換処理後の色差信号を表す。IP変換処理により、トップフィールドおよびボトムフィールドの色差データが統合されて1枚のフレームの色差データが得られている。すなわち、IP変換処理により、プログレッシブ方式のフレームの色差信号(1080p)が生成されている。この後、走査線の数を720本に変換するスケーリング処理(垂直フィルタ処理)が行われる。
【0012】
図7(d)は、スケーリング処理後のフレームの色差信号(720p)を示す。図7(c)の色差データと図7(d)の色差データとを結ぶ矢印は、図7(d)のフレームの各走査線の色差データが、図7(c)のどの色差データを用いて生成されるかを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表平10−501942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の映像処理によれば、復調された映像の色差信号はOSD合成の前に垂直フィルタ処理を施されて4:2:2信号に変換される。さらに、変換後の色差信号にも、OSD合成後に出力解像度へのスケーリング処理として垂直フィルタ処理が施される。いずれの処理も、複数の色差データを利用して1つの色差データを生成する処理を含むため、その処理ごとに信号の周波数特性が劣化する。そのため、2度に分けてフィルタ処理を施すと、1度にフィルタ処理を施した場合に比べて、信号の周波数特性が劣化する。表示装置の性能が飛躍的に向上した現在においては、信号の周波数特性の劣化は、画質(たとえば諧調)の劣化として知覚される。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、映像信号にOSD映像信号を重畳しても、重畳後の映像信号の周波数特性の劣化や諧調の劣化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による映像処理装置は、4:2:0フォーマットの映像信号に、OSD映像信号を重畳する映像処理装置であって、OSD映像信号をYUV信号に変換する変換部と、前記YUV信号に含まれるOSD輝度信号をスケーリング処理するOSD輝度信号スケーリング部と、スケーリングされた前記OSD輝度信号と、前記4:2:0フォーマットの映像信号の輝度信号とを合成する輝度信号合成部と、前記YUV信号に含まれるOSD色差信号をスケーリング処理するOSD色差信号スケーリング部と、スケーリング処理された前記OSD色差信号と、前記4:2:0フォーマットの映像信号の色差成分とを合成する色差信号合成部とを備えている。
【0017】
前記OSD色差信号スケーリング部は、前記4:2:0フォーマットの映像信号の色差信号のサンプリング位相に合わせて、前記OSD色差信号の倍率を変更したOSD色差拡大信号を生成してもよい。
【0018】
前記色差信号合成部は、前記OSD色差拡大信号と前記4:2:0フォーマットの映像信号の色差成分とを合成してもよい。
【0019】
前記映像処理装置は、前記色差信号合成部から出力された、合成された色差信号をスケーリング処理する色差信号スケーリング部をさらに備え、前記色差信号スケーリング部は、前記合成された色差信号がインタレース信号であるとき、前記合成された色差信号を4:2:2フォーマットに変換することなく、プログレッシブ信号に変換してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、映像信号の色とOSDの色がずれることなく、4:2:0から直接出力解像度への色差信号のスケーリングが可能となり、周波数特性や諧調劣化のない出力信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態によるレコーダ100のブロック図である。
【図2】映像処理部105の詳細な機能ブロックの構成を示す図である。
【図3】従来の合成処理方法を示す図である。
【図4】本実施形態による合成処理方法を示す図である。
【図5】OSD映像信号を3倍に拡大する例を示す図である。
【図6】(a)、(c)および(d)は、色差信号に関する本実施形態の映像処理の一例を示す図である。
【図7】(a)〜(d)は、合成後の色差信号に関する従来の映像処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による映像処理装置の実施形態を説明する。以下の説明では、映像処理装置はディジタル放送の記録機能を有するレコーダであるとする。レコーダにはディスクドライブ部が設けられており、ディスクドライブ部はディジタル放送の記録および記録されたディジタル放送の再生に利用される。ディスクドライブ部にはたとえばブルーレイディスク(BD)を装着可能であり、ブルーレイディスクに記録されたコンテンツの再生も可能である。なお、本願発明はレコーダとして実施される以外にも、たとえば後述の処理を行う再生装置(プレーヤ)、テレビ、テレビ受信機能を有する携帯電話、PCなどとしても実施され得る。
【0023】
図1は本実施形態によるレコーダ100のブロック図である。
【0024】
レコーダ100は、ディスクドライブ部102と、アンテナ103と、チューナ104と、映像処理部105と、出力部106とを備えている。
【0025】
ディスクドライブ部102はディスク101に格納された情報を再生して,映像信号や字幕のグラフィックスデータなどのディジタル信号を出力する。ディスク101は映像信号やグラフィックスデータが記録されたディスク(たとえばBD)である。なお、ディスクはレコーダ100から取り外し可能であり、レコーダ100の構成要素ではない。
【0026】
アンテナ103は放送波を受信する。チューナ104は、アンテナ103で受信した放送波に含まれる放送データのディジタル信号を出力する。映像処理部105は、入力されるディジタル信号を選択・復調し、ベースバンドの映像信号に変換する。映像処理部105は、好ましくは1つのチップ回路で実現される。出力部106は、映像処理部105から出力されたベースバンドの映像信号を、例えばHDMI規格の信号などに変換し、その変換した信号を出力する。
【0027】
以下、図2を用いて映像処理部105の詳細を説明する。なお、本実施形態においては、映像処理部105に入力される映像信号は4:2:0フォーマットの映像信号であるとして説明する。4:2:0フォーマットは、本願明細書の背景技術の欄においてすでに詳細に説明したとおりである。
【0028】
図2は、映像処理部105の詳細な機能ブロックの構成を示す。映像処理部105は、ストリーム制御部201と、ビデオデコーダ202と、グラフィック処理部203と、メモリ204と、RGB−YUV変換部205と、OSD輝度信号スケーリング部206と、OSD色差信号スケーリング部207と、輝度信号合成部208と、色差信号合成部209と、輝度信号スケーリング部210と、色差信号スケーリング部211と、CPU212とを有している。
【0029】
ストリーム制御部201は、入力されたディジタル信号のうち、再生する信号を選択する。ここで再生する信号を選択するとは、例えば、ディスクドライブ部102からの入力を再生するか、もしくは、チューナ104からの入力を再生するかを選択することである。その後、選択された信号に対応する映像信号はビデオデコーダ202へ出力される。また、選択された信号に対応するグラフィックスデータはグラフィック処理部203へ出力される。
【0030】
ビデオデコーダ202は、映像信号を復調して、輝度信号と色差信号を出力する。本実施形態においては、映像処理部105に入力されるディジタル信号は4:2:0フォーマットの映像信号であるため、復調される色差信号(Cb信号およびCr信号)の情報量(画素数またはサイズ)は輝度信号(Y信号)の情報量に対して縦横半分となる。また、4:2:0フォーマットの映像信号における色差信号は輝度信号に対して、画素位置が0.5ラインずれたデータとしてデコードされる。
【0031】
ビデオデコーダ202から出力される輝度信号は輝度信号合成部208に入力される。ビデオデコーダ202から出力された色差信号は、色差信号合成部209に入力される。
【0032】
背景技術欄において説明したとおり、従来は、ビデオデコーダ202からの色差信号に垂直フィルタ処理を施し、4:2:2フォーマットの映像信号に変換した上で、色差信号を合成していた。
【0033】
しかしながら本実施形態においては、ビデオデコーダ202は、色差信号に垂直フィルタ処理を行わずに4:2:0フォーマットの映像信号のまま出力をする。従来行われていた垂直フィルタ処理を行わないため、周波数特性や諧調劣化のない出力信号を得ることができる。この際、ビデオデコーダ202は、輝度信号と垂直の画素数をあわせ、伝送を容易にするためにダミーデータ(無効データ)を挿入する処理を行っても良い。
【0034】
この処理の一例としては、入力された色差信号の画素データの値(色差データ)をそのまま保ち、縦方向にその色差データの値を繰り返すリピート出力を行うことにより輝度信号との垂直画素数をそろえる。この場合、有効な色差データに注目すると、輝度信号の垂直画素位置と色差信号の垂直画素位置とは0.5ライン分だけずれている。また、無効データは、輝度信号と垂直画素位置が大きくずれているため、後段では処理に用いられない。
【0035】
グラフィック処理部203は、ストリーム制御部201からスクリプトデータあるいは圧縮されたグラフィックデータを受信する。グラフィック処理部203は、スクリプトデータなどの描画指示により、メモリ204にグラフィックス画像(たとえば字幕画像)をOSDプレーンの映像信号(OSD映像信号)として描画する。OSD映像信号はRGB色空間で表現されている。すなわち、輝度信号(Y)、Cb信号およびCr信号の情報量は同じである。
【0036】
RGB−YUV変換部205は、メモリ204に描画されたRGBからなるOSDデータを輝度信号と色差信号に変換する。なお、RGB−YUV変換部205に入力される前の信号がRGB信号であるので、RGB−YUV変換部205から出力される信号は4:4:4フォーマットの映像信号である。
【0037】
RGB−YUV変換部205から出力される輝度信号は、OSD輝度信号スケーリング部206に入力される。同様に、RGB−YUV変換部205から出力される色差信号は、OSD色差信号スケーリング部207に入力される。
【0038】
CPU212は、ビデオデコーダ202から出力された映像信号の画素数に関する情報と、RGB−YUV変換部205からのOSDの画素数に関する情報とを取得する。
【0039】
画素数に関する情報は、例えば、チューナ104から出力されるディジタル信号にヘッダ情報として含まれている、もしくは、ディスク101に管理情報として記録されている。そして、CPU212はOSD輝度信号スケーリング部206およびOSD色差信号スケーリング部207に対し、スケーリング量を制御するための信号を出力する。
【0040】
ここで、スケーリング量について説明する。一例として、いまビデオデコーダ202から出力された映像信号の画素数がRGB−YUV変換部205からのOSDの画素数の2倍である場合を想定する。この場合、ビデオデコーダ202から出力された映像信号の輝度信号の画像数は、RGB−YUV変換部205からのOSDの輝度信号の画素数の2倍である。したがって、OSD輝度信号スケーリング部206では、画素数を2倍にするよう、スケーリング量が制御される。
【0041】
一方、ビデオデコーダ202から出力された映像信号の色差信号の画像数は、RGB−YUV変換部205からのOSDの色差信号の画素数と等しい。その理由は以下のとおりである。ビデオデコーダ202から出力された映像信号は4:2:0フォーマットであるため、色差信号の画素数は、輝度信号の画素数の半分になる。一方、RGB−YUV変換部205から出力された映像信号は4:4:4フォーマットの色差信号であるので、輝度信号の画素数と等しい。そして、ビデオデコーダ202から出力された映像信号の画素数は、RGB−YUV変換部205からのOSDの画素数の2倍であるという前提が存在する。よって、先に説明したとおりとなる。
【0042】
この結果、OSD色差信号スケーリング部207では、画素数を変化させない(すなわち1倍にする)よう、スケーリング量が制御される。
【0043】
他の例として、ビデオデコーダ202から出力された映像信号の画素数がRGB−YUV変換部205からのOSDの画素数の4倍であった場合には、OSD輝度信号スケーリング部206におけるスケーリング量は4倍となり、OSD色差信号スケーリング部207におけるスケーリング量は2倍となる。
【0044】
以下では上述の最初の例にしたがって、ビデオデコーダ202から出力された映像信号の画素数がRGB−YUV変換部205からのOSDの画素数の2倍であった場合で説明する。
【0045】
輝度信号合成部208は、ビデオデコーダ202からの映像の輝度信号と、OSD映像信号の輝度信号とを合成する。OSD映像信号の輝度信号の画素数や画素位置は、OSD輝度信号スケーリング部206によって、ビデオデコーダ202からの映像の輝度信号の画素数や画素位置と整合するよう処理されている。輝度信号スケーリング部210は、合成された輝度信号を出力解像度にスケーリングした後に、その輝度信号を出力する。
【0046】
色差信号合成部209は、ビデオデコーダ202からの映像の色差信号と、OSD映像信号の色差信号とを合成する。OSD映像信号の色差信号の画素数や画素位置は、OSD色差信号スケーリング部207によって、ビデオデコーダ202からの映像の色差信号の画素数や画素位置と整合するよう処理されている。
【0047】
色差信号スケーリング部211は、合成された色差信号を出力解像度にスケーリングして出力する。より具体的には色差信号スケーリング部211は、合成された色差信号に含まれる有効データを抽出し、4:2:0フォーマットの画素位置を基準に出力解像度に整合するよう合成された色差信号にスケーリングを行う。
【0048】
以下、図3および図4を参照しながら、CPU212によるOSD輝度信号スケーリング部206およびOSD色差信号スケーリング部207の制御方法を説明する。まず図3に示される従来の方式を説明し、その後図4に示される本実施形態の方式を説明する。ここではビデオデコーダ202によってデコードされた映像信号はプログレッシブ方式のフレーム画像群であるとする。以下では映像信号が画素単位で処理されていることを明確化するため、輝度信号および色差信号の各画素が持つ値を「輝度データ」および「色差データ」と表現する。
【0049】
図3は、従来の合成処理方法を示す。図3の左半分(「●」が記載されている区画)は輝度データの処理を示し、図3の右半分(「○」が記載されている区画)は色差データの処理を示す。なお図3に示される複数の平行な破線は、映像信号の輝度データの垂直方向の画素位置を示す。輝度データの処理と色差データの処理とを併記しているのは記載の便宜のためである。後の図4でも同様である。
【0050】
この方法は、映像信号に対して1/2サイズのOSD信号を拡大して合成し、4:2:2フォーマットの映像信号を生成するときの、CPU212による制御方法である。図3は従来の制御方法に関しているが、後述するように、本実施形態の変形例にかかる装置は、図3の処理および図4の処理を切り替えて動作することが可能である。よって図2に示す本実施形態による映像処理部105は、従来の制御方法に基づいて動作することが可能である。
【0051】
ここで、輝度信号合成部208および色差信号合成部209で合成される画素の組み合わせが、楕円形の破線aで囲まれて示されている。また図3には、OSD輝度信号スケーリング部206のフィルタに入力されるデータ(この場合は「OSD輝度データ」)を基準とした、フィルタ出力の最初のデータ(OSD輝度拡大データ)の位相差を示すパラメータbが示されている(以降、このパラメータを「フィルタ初期位相」と呼ぶ)。なお、フィルタ初期位相0.25の遅延は、0.5ライン分の遅延に等しい。さらに図3には、OSD色差信号スケーリング部207でOSD色差データをフィルタ処理で拡大する場合のフィルタ初期位相cが示されている。
【0052】
本実施形態と異なり、従来方式においては、映像信号は4:2:0フォーマットから4:2:2フォーマットに変換された後に、OSD映像信号と合成される。4:2:2フォーマットの映像信号に変換され、かつ、映像信号の色差信号がビデオデコーダ202内で垂直フィルタ処理を施されると、映像信号の輝度信号の垂直画素位置と色差信号の垂直画素位置とが揃えられる。
【0053】
また、ビデオデコーダ202から出力されるデータを基準としたとき、RGB−YUV変換部205から出力されるOSDデータの位相差(フィルタ初期位相)は0.25遅れており、画素数は半分である。この場合、ビデオデコーダ202の出力に合わせるようにOSDデータの位相をずらして補間をする必要がある。例えば、OSD輝度データの位相は映像輝度データの位相に対して、0.25が遅れており、且つ、画素数が半分である。CPU212は、補間後のOSD輝度拡大データの位相と、映像輝度信号の位相とを一致させ、また、画素数を一致させるように補間する。色差信号についても同様である。
【0054】
この場合、OSD輝度信号スケーリング部206、OSD色差信号スケーリング部207のフィルタでの倍率、フィルタ初期位相は、同じ値となる。すなわちb=c=−0.25となる。
【0055】
なお、上記の説明ではフィルタ初期位相が−0.25の場合の例で説明したが、他の数値の場合であっても、同様にOSD信号を映像信号に合わせるように補間をすればよい。
【0056】
図4は、本実施形態による合成処理方法を示す。図4の左半分(「●」が記載されている区画)は輝度データの処理を示し、図4の右半分(「○」が記載されている区画)は色差データの処理を示す。この方法は、映像信号に対して1/2サイズのOSD信号を拡大して映像信号と合成し、4:2:0フォーマットの映像信号を生成するときの、CPU212による制御方法である。図4には、ビデオデコーダ202において無効データが挿入された場合に、色差信号合成部209で合成される画素の組み合わせが矩形の破線dで囲まれて示されている。なお、破線aで囲まれる有効データ中のOSD色差拡大データを見ると、いずれも1つのOSD色差データから生成されていることが理解される。他の画素位置のOSD色差データを利用しないため、画質の劣化が起こりにくい。
【0057】
本実施形態では、映像信号は4:2:0フォーマットである。したがって、映像色差データの位相は映像輝度データの位相に対し、0.25遅れている。一方、RGB−YUV変換部205から出力されるOSD映像信号については、OSD色差データの位相は、OSD輝度データの位相に対し、0.25遅らせた場合を想定する。この場合、OSD輝度データの位相と映像輝度データの位相とはずれるが、OSD色差データの位相と映像色差データの位相は一致する。したがって、本実施形態のように、OSD色差データ拡大倍率が1倍の場合は、補間等のデータ処理をすることなく、OSD色差データをそのまま合成すれば良いこととなる。したがって、補間等のデータ処理をしないので、本来のOSD色差データの持つ周波数情報が失われない。
【0058】
色差信号合成部209より出力される合成色差信号では、OSDが重畳されていない画素はビデオデコーダ202から出力される映像信号の色差信号の画素のままである。よって、色差信号スケーリング部211で無効データを破棄して4:2:0フォーマットの画素位置を基準に出力解像度へスケーリングを行うことにより、周波数特性や諧調劣化の少ないスケーリングを行うことができる。
【0059】
また、色差信号合成部209より出力される合成色差信号では、OSDが重畳されている画素は正しく4:2:0フォーマットの画素位置に変換されているため、映像とOSDの色ずれも発生しない。特に、日本国内のディジタル放送などで用いられているような、映像の垂直解像度に対しグラフィックスの垂直解像度が1/2とされているときには、本実施形態の合成処理方法によればOSD信号には垂直フィルタ処理がかからない。それは、初期位相が0で2倍拡大のため、2ライン毎の有効データは常に位相差が0となり、垂直フィルタが不要だからである。これにより、OSDの周波数特性も改善される。
【0060】
なお、本実施形態ではビデオデコーダ202において無効データを挿入すると説明した。しかしながら、無効データ期間出力を休止し、無効データが挿入された場合における、図4の矩形の破線d(色差信号合成部209で合成される画素の組み合わせ)を存在させないようにしてもよい。
【0061】
本実施形態では、映像処理部105は、常時、図4に示す合成処理方法を実行することを想定して説明した。しかしながら、OSDの解像度などの変化により、図3で示す合成処理方法と、図4で示す合成処理方法とを切り替えて制御を行っても良い。
【0062】
また、上記のような構成により、色差信号は4:2:2フォーマットに変換された後、フィルタ処理がされない輝度信号にビット精度を合わせるため、演算により生成された下位ビットの丸め処理によって、色差信号の諧調劣化が発生することを軽減することができる また、4:2:0フォーマットの信号に直接OSDを合成したときに4:2:0フォーマットの信号は輝度信号と色差信号の画素位置が垂直方向に0.5ラインずれた場合に、映像信号の色とOSDの色がずれることを軽減することができる。
【0063】
図4に関連して、OSD映像信号を2倍に拡大する例を説明した。しかし、拡大率は適宜変更できる。図5は、OSD映像信号を3倍に拡大する例を示す。OSD信号の情報量が3倍に拡大されていることが理解される。なお、拡大率の相違により、フィルタ初期位相も異なることに留意されたい。
【0064】
次に、上述した合成処理の後に、輝度信号スケーリング部210および色差信号スケーリング部211において、IP変換が行われるときの処理を説明する。ここでは例として色差信号スケーリング部211において行われる処理を説明するが、輝度信号スケーリング部210において行われる処理も同様である。
【0065】
図6(a)、(c)および(d)は、色差信号に関する本実施形態の映像処理の一例を示す。ここでは4:2:0フォーマットの水平走査線1080本のインタレース映像(1080i映像)を、水平走査線720本のプログレッシブ映像(720p映像)に変換して出力する例を説明する。
【0066】
図6(a)に示すように、色差信号スケーリング部211には、図4の右半分の、映像色差データおよびOSD色差拡大データとが楕円形で囲まれている色差データ(有効データ)が入力される。さらにこのデータが、トップフィールドおよびボトムフィールドに分けてそれぞれ入力される。
【0067】
図6(c)は、IP変換処理後の色差信号を表す。IP変換処理により、プログレッシブ方式のフレームの色差信号(1080p)が生成されている。
【0068】
図6(d)は、スケーリング処理後のフレームの色差信号(720p)を示す。図6(c)の色差データと図7(d)の色差データとを結ぶ矢印は、図6(d)のフレームの各走査線の色差データが、図6(c)のどの色差データを用いて生成されるかを示している。
【0069】
図7と図6とを対比すると、図6には図7(b)に相当する垂直フィルタ処理が含まれていない。従来行われていた垂直フィルタ処理を行わないため、周波数特性や諧調劣化のない出力信号を得ることができる。
【0070】
本実施形態において、図7(b)に相当する垂直フィルタ処理を行っていない理由は、映像処理部105が1チップ回路化されており、IP変換処理において従来要求されている仕様の制約を受けないためである。従来の構成では、通常、IP変換処理のためのチップ回路(IP変換処理回路)が再生装置内に設けられていた。IP変換処理回路は単体で販売されており、再生装置のメーカーはそのIP変換処理回路を自社製品に組み込むことが多かった。汎用性等を確保するため、IP変換処理回路には、入力すべき映像信号の仕様が予め定められている。たとえば、入力映像信号は、4:2:2フォーマットの1080i信号と予め定められている。この仕様に適合させるため、従来は図7(b)に示す4:2:0フォーマットを4:2:2フォーマットに変換する必要があった。
【0071】
一方、本実施形態においては映像処理部105が1チップ回路化されており、IP変換処理回路の仕様の制約を受けない。このように構成すると、1チップ回路化のための開発コストが増加するが、通常必要とされる仕様の制約からは開放される。その結果、画質に影響を与える垂直フィルタ処理(図7(b))が不要となる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、ディジタルテレビやディジタル録画機器等、4:2:0フォーマットの映像信号を復調し、グラフィックスデータを重畳して再生する機器に適用可能であり、最良の再生環境を提供することが可能である点において有用である。
【符号の説明】
【0073】
100 映像処理装置
101 ディスク
102 ディスクドライブ部
103 アンテナ
104 チューナ
105 映像処理部
106 出力部
201 ストリーム制御部
202 ビデオデコーダ
203 グラフィック処理部
204 メモリ
205 RGB−YUV変換部
206 OSD輝度信号スケーリング部
207 OSD色差信号スケーリング部
208 輝度信号合成部
209 色差信号合成部
210 輝度信号スケーリング部
211 色差信号スケーリング部
212 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4:2:0フォーマットの映像信号に、OSD映像信号を重畳する映像処理装置であって、
OSD映像信号をYUV信号に変換する変換部と、
前記YUV信号に含まれるOSD輝度信号をスケーリング処理するOSD輝度信号スケーリング部と、
スケーリングされた前記OSD輝度信号と、前記4:2:0フォーマットの映像信号の輝度信号とを合成する輝度信号合成部と、
前記YUV信号に含まれるOSD色差信号をスケーリング処理するOSD色差信号スケーリング部と、
スケーリング処理された前記OSD色差信号と、前記4:2:0フォーマットの映像信号の色差成分とを合成する色差信号合成部と
を備えた、映像処理装置。
【請求項2】
前記OSD色差信号スケーリング部は、前記4:2:0フォーマットの映像信号の色差信号のサンプリング位相に合わせて、前記OSD色差信号の倍率を変更したOSD色差拡大信号を生成する、請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記色差信号合成部は、前記OSD色差拡大信号と前記4:2:0フォーマットの映像信号の色差成分とを合成する、請求項2に記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記色差信号合成部から出力された、合成された色差信号をスケーリング処理する色差信号スケーリング部をさらに備え、
前記色差信号スケーリング部は、前記合成された色差信号がインタレース信号であるとき、前記合成された色差信号を4:2:2フォーマットに変換することなく、プログレッシブ信号に変換する、請求項1に記載の映像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−55485(P2011−55485A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176335(P2010−176335)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】