説明

時刻情報送出装置

【目的】本発明の目的は、GNSS受信機で受信した現在位置情報と、時刻情報を利用して、当該GNSS受信機が位置する国(地域)の時刻情報を、所定の標準電波により放送し、適合する電波時計が、当該現地時刻に自動的に補正できる、安価な時刻情報送出装置を提供することにある。
【構成】時刻情報と、位置情報とを出力するGNSS受信機と、GNSS受信機から出力された位置情報を入力し、当該受信機が位置する地域の判別と当該地域の時差情報を出力する地域判別手段と、GNSS受信機から出力された時刻情報と、地域判別手段から出力された地域の時差情報とを入力し、当該地域の現地時刻情報を出力する現地時刻送出手段と、現地時刻送出手段から出力された現地時刻情報を標準時送出形式に変調する変調手段と、変調された現地時刻情報を送信する送信機と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻情報送出装置に関するものであり、特に時差のある地域間で移動して用いる時刻表示装置の時刻補正を必要に応じて自動的に調整する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我々が、日常用いている時間は、日本国内では、日本標準時に基づいている。また、例えば、ドイツ国内では、ドイツ国内の標準時(日本標準時より8時間の遅れ)に基づいている。この様に時刻は国(地域)によってそれぞれ個別に定められている。国(地域)によって異なっている時刻の差を時差という。
また、世界的にみると、イギリスのグリニッチ天文台を通る子午線を標準時とする世界標準時(GMT:Greenwich Mean Time)がある。現在では、GMTと時刻表示が同じである協定世界時(UTC:Universal Coordinated Time)が広く使われている。例えば、日本標準時は、UTC+9時間(UTCより9時間進んでいる)である。また、ドイツの標準時は、UTC+1時間(UTCより1時間進んでいる)である。各国(地域)のUTCとのずれ時間(時差)は、図4のようになっている。
【0003】
現在、長波の標準電波を利用した電波時計の自動補正は、日本、アメリカ及びドイツ等、利用できる国(地域)が限られている。また、その変調形式、送信周波数が、各国(地域)で異なる。そのため、特定の国(地域)向けの電波時計は、他の国(地域)では、自動的に現地の時刻に補正する事が出来ず、手動により現地時刻に補正して使用している。また、上記長波の標準電波を利用できる国(地域)以外では、電波時計を使用しても、長波の標準電波による時刻情報が放送されていないため、自動的に時刻の補正をする事が出来ず、手動による時刻補正を行っている。
【0004】
GPS受信機を利用して、当該受信機の現在位置と、UTC時刻情報を取得し、現在位置からUTC時刻と現在位置の時刻との差を検出して、現在位置の時刻を表示する技術が、特許文献1に開示されている。
【0005】
しかし、現地時刻を、GNSS受信機の位置情報と、時刻情報とを利用し算出して、標準電波を利用して、放送する技術を開示したものはない。
【0006】
【特許文献1】特開2005−069710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、GNSS受信機で受信した現在位置情報と、時刻情報を利用して、当該GNSS受信機が位置する国(地域)の時刻情報を、所定の標準電波により放送し、適合する電波時計が、当該現地時刻に自動的に補正できる、安価な時刻情報送出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
時刻情報と、位置情報とを出力するGNSS受信機と、GNSS受信機から出力された位置情報を入力し、当該受信機が位置する地域の判別と当該地域の時差情報を出力する地域判別手段と、GNSS受信機から出力された時刻情報と、地域判別手段から出力された地域の時差情報とを入力し、当該地域の現地時刻情報を出力する現地時刻送出手段と、現地時刻送出手段から出力された現地時刻情報を標準時送出形式に変調する変調手段と、変調された現地時刻情報を送信する送信機と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
GNSS受信機で受信した現在位置情報と、時刻情報を利用して、当該GNSS受信機が位置する国(地域)の時刻情報を、所定の標準電波により放送することにより、当該標準電波を受信可能な電波時計が、当該現地時刻に自動的に補正できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
現地時刻情報を送信する送信機を特定小電力送信機で構成してある。また、変調手段は、日本標準時のJJYタイムコードで変調される。または、指定された国の時刻標準のタイムコードで変調される。
【0011】
地域判別手段の地域区分は、協定世界時(UTC)との時差に基づく区分とされている。時差情報には、うるう秒、夏時間の情報を含んでいる。そして、GNSS受信機は、GPS受信機である。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態に関し図面に基づき説明する。図1は、本発明の時刻情報送出装置の全体構成例を説明する図である。本実施例では、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機の1つであるGPS受信機を用いた例で説明する。
【0013】
1はGPS信号受信用アンテナ、10はGPS受信機、11はGPS受信機のRF、IF増幅部、12はGPSの信号処理部、13はデータ処理部、14は位置演算部、15は時刻生成部、20は地域の判定と当該地域の時差情報を出力する地域判別部、21は判定部、22は時差情報記憶部、23は時刻送出部、30は変調部、31はタイムコード発生部、32は標準電波周波数変換部、33は標準電波送信機、2は送信用アンテナである。
【0014】
GPS信号受信用アンテナ1で受信されたGPS衛星信号は、RF・IF増幅部11で約2MHzに帯域制限され、所定レベルまで増幅される。そして、増幅された信号はA/D変換され、BPSKのスペクトラム拡散されたディジタル信号として、信号処理部12に供給される。
【0015】
このRF・IF増幅部11からのディジタル信号は、信号処理部12内の図示しない各復調器に割り当てられ、各衛星固有の衛星コード(C/Aコード)と相関処理される。このようにして、GPS衛星信号を捕捉し追尾する。そして、衛星コード(C/Aコード)を取り除いた信号がデータ処理部13に出力される。データ処理部13では、これら衛星コード(C/Aコード)が取り除かれた信号、すなわち各衛星固有の精確な軌道データ(エフェメリスデータ)、他の衛星(最大32衛星分)の簡易軌道データ(アルマナックデータ)、衛星のクロックずれ等の各種補正データの復調がおこなわれる。そして、この復調されたデータは、位置演算部14と時刻生成部15にそれぞれ供給される。
【0016】
位置演算部14では、データ処理部13からの、少なくとも3個以上の受信した衛星の各種補正データをもとに位置計算を行ない、位置を算出する。そして、時刻生成部15では、データ処理部13で、復調されたデータから、協定世界時が算出される。現在、GPS時刻と協定世界時のずれは、13秒であり、GPS時刻のほうが13秒進んでいる。位置演算部14で算出された位置と、時刻生成部15で算出された時刻(協定世界時)は、時刻送出部23に送られる。
【0017】
一方、位置演算部14で演算された位置(緯度経度値)は、判定部21に出力される。判定部21では、入力された緯度経度値が、時差情報記憶部22に予め登録されている何処の区域内(UTCとの時差を判定する)であるかを判定する。
【0018】
予め登録されているデータは、位置演算部14で演算された位置(緯度経度値)の世界協定時との時差(図4に示す)、当該値のサマータイムに関する情報等である。これらのデータを判定部21から入力し、時刻生成部15からUTC時刻を入力して時刻送出部23において、当該位置の現地時刻データを作成し出力する。
【0019】
この現地時間、日付データはタイムコード発生部31に送られ、このデータは例えば日本国の標準時タイムコードデータ(JJYタイムコードデータ)に変換される。図3は、JJY標準電波のタイムコード2004年4月1日17時15分での送信波形の例を示す。
【0020】
タイムコード発生部31の出力は、標準電波周波数変換部32にて、標準電波の40kHz又は60kHzの周波数に変換される。そして標準電波送信部33で所定の電力に増幅され送信アンテナ2より送信される。なお、標準電波送信部33の電力は、規格内の微弱電波レベルとすることも可能である。
【0021】
上述のような時刻送出装置をJJY標準電波が受信できない位置に設置することにより、近傍に置かれたJJY標準電波が受信できる電波置時計または携帯用電波時計は、送信アンテナ2から送信された電波を自動的に受信して、設置位置の精確な現地時間、日付に自動的に修正される事となる。
【0022】
図2は、本発明の他の実施例の構成を説明する図である。図1の構成と異なる部分について説明する。図1と同じ番号が付してある部分の説明は、同じ動作であり省略する。図1と異なる部分は、変調部30である。この実施例においては、タイムコード発生部31が、タイムコード発生部31A、タイムコード発生部31B、・・・、タイムコード発生部31Nと複数のタイムコード発生部で構成されており、これらのタイムコード発生部が、アメリカ、ドイツ、日本など各国の標準時送出形式に対応している。
【0023】
また、標準電波周波数変換部32は、上述と同様に標準電波周波数変換部32A、標準電波周波数変換部32B、・・・、標準電波周波数変換部32Nと複数の標準電波周波数変換部で構成されている。これらの標準電波周波数変換部が、アメリカ、ドイツ、日本など各国の標準時送出周波数に対応している。そして、選択部34により、これらの1つを選択する。
【0024】
このように構成することにより、各国の標準電波が受信できる電波置時計または携帯用電波時計にも現地の時刻、日付情報を送出することが可能になる。これにより、前記電波置時計または携帯用電波時計が自動的に修正される事となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の時刻情報送出装置の全体構成例を説明する図
【図2】本発明の他の実施例の構成を説明する図
【図3】JJYタイムコードの構成図
【図4】全世界のタイムゾーンの参考図
【符号の説明】
【0026】
1:GPS信号受信用アンテナ、2:送信用アンテナ、10:GPS受信機、11:GPS受信機のRF、IF増幅部、12:GPSの信号処理部、13:データ処理部、14:位置演算部、15:時刻生成部、20:地域判別部、21:判定部、22:時差情報記憶部、23:時刻送出部、30:変調部、31:タイムコード発生部、32:標準電波周波数変換部、33:標準電波送信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻情報と、位置情報とを出力するGNSS受信機と、
前記GNSS受信機から出力された位置情報を入力し、当該受信機が位置する地域の判定と当該地域の時差情報を出力する地域判別手段と、
前記GNSS受信機から出力された時刻情報と、前記地域判別手段から出力された地域の時差情報とを入力し、当該地域の現地時刻情報を出力する現地時刻送出手段と、
前記現地時刻送出手段から出力された現地時刻情報を標準時送出形式に変調する変調手段と、
前記変調された現地時刻情報を送信する送信機と、
を具備することを特徴とする時刻情報送出装置
【請求項2】
請求項1において、
前記送信機を特定小電力送信機としたことを特徴とする時刻情報送出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかにおいて、
前記変調手段は、日本標準時のJJYタイムコードで変調されることを特徴とする時刻情報送出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかにおいて、
前記地域判別手段の地域区分は、協定世界時(UTC)との時差に基づくことを特徴とする時刻情報送出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかにおいて、
前記時差情報には、うるう秒、夏時間の情報を含むことを特徴とする時刻情報送出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかにおいて、
前記GNSS受信機は、GPS受信機であることを特徴とする時刻情報送出装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2のいずれかにおいて、
前記変調手段は、指定された国の時刻標準のタイムコードで変調されることを特徴とする時刻情報送出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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