説明

有害物質処理装置

【課題】 VOCや悪臭などの有害物質を高濃度に含むガスを効果的に処理することのできる有害物質処理装置を提供する。
【解決手段】 被処理ガスに含まれる有害物質を処理する有害物質処理装置1において、紫外線ランプ210と、前記紫外線ランプ210を囲み前記紫外線ランプ210が放射する紫外線により活性化され通気性を有する光触媒フィルタ222とを有する光触媒ユニット21を備え、前記紫外線ランプ210の長軸に対して前記被処理ガスが略垂直に通過するように前記光触媒ユニット21を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)や悪臭などの有害物質を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有害物質には揮発性有機化合物(以下、VOCという)や悪臭などがある。VOCは大気中に気体として存在する有機化合物の総称であり、このような有機化合物としては、例えば芳香族有機炭素のトルエンやキシレン、ハロアルカン類のジクロロメタンおよびハロアルケン類のトリクロロエチレンなどが挙げられる。かかるVOCは一般に塗料、印刷および接着などの用途に幅広く利用されているものの、大気汚染の直接的原因である浮遊粒子状物質(SPM:Suspended Particulate Matter)や光化学オキシダント(略してOx:Oxidantとも呼ばれる)などの発生に起因する物質とされている。
【0003】
また、悪臭は、いやな臭いや不快な臭いの総称と考えられ、悪臭の主要な原因物質は、一般的に、(1)アンモニア等の窒素化合物、(2)ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類、(3)硫化水素などのイオウ化合物、(4)トルエンなどの炭化水素、(5)酪酸などの脂肪酸類、(6)塩素などのハロゲン元素などが挙げられる。また、悪臭防止法では、「特定悪臭物質」として、悪臭公害の主要な原因物質であり濃度測定可能なアンモニアなどの22種類の物質が指定されている。
【0004】
有害物質を処理する方法としては、従来から燃焼法や吸着法、生物法などの方法が知られている。燃焼法はVOCを含むガスを燃焼させ酸化分解により除去する方法でであり、直接燃焼法や蓄熱式燃焼法、触媒燃焼法などが知られている。これらの燃焼法は、原理および機構が簡単であり、有害物質の除去効率も高く、信頼性の高い方法であるものの、ランニングコストが高く、施設規模も大きくなるという欠点がある。
【0005】
また、吸着法は、活性炭などの吸着剤にVOCを吸着させて除去する方法でであり、設備と運転操作が簡単であり信頼性も高いものの、高濃度のVOCの除去に対しては不向きであり、吸着剤の定期的な交換が必要であるため吸着剤の廃棄・交換費用などのランニングコストが高いという欠点がある。
【0006】
生物法は、生物の作用(主に微生物)を利用し生化学的反応によってVOCを除去する方法でであり、運転コストが安く、維持管理が比較的容易であるものの、有害物質の除去能力が低く、設備規模が大きくなり広い敷地面積を必要となるなどの欠点がある。
【0007】
そこで近年では、VOCや悪臭の処理方法として光触媒技術を利用した脱臭装置や空気清浄機が開発されてきている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−246228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光触媒を用いた装置は、装置規模のコンパクト化が可能であるものの、VOCや悪臭に対する除去能力が低く、特に、高濃度のVOCや悪臭に対しては除去能力が極めて低下するといった問題があった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、VOCや悪臭などの有害物質を高濃度に含むガスを効果的に処理することのできる有害物質処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、被処理ガスに含まれる有害物質を処理する有害物質処理装置において、紫外線ランプと、前記紫外線ランプを囲み前記紫外線ランプが放射する紫外線により活性化される、通気性を有する光触媒フィルタとを有する光触媒ユニットを備え、前記紫外線ランプの長軸に対して前記被処理ガスが略垂直に通過するように前記光触媒ユニットを配置したことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記発明において、前記紫外線ランプは高圧水銀ランプであることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記発明において、前記光触媒ユニットが前記紫外線ランプの長軸方向に複数連設されていることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記発明において、前記光触媒ユニットが前記紫外線ランプの長軸に対する垂直方向に複数段連設されていることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、上記発明において、前記光触媒フィルタは、3次元網目構造を有したセラミックスであることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、上記発明において、前記光触媒フィルタ表面の紫外線強度が少なくとも10mW/cm2以上となるように、前記紫外線ランプと前記光触媒フィルタとを配置したことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、上記発明において、前記被処理ガスの流れ方向における前記光触媒ユニットの風上側に、活性酸素発生用の紫外線ランプを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、紫外線ランプと、前記紫外線ランプを囲み前記紫外線ランプが放射する紫外線により活性化される通気性を有する光触媒フィルタとを有する光触媒ユニットを備え、前記紫外線ランプの長軸に対して前記被処理ガスが略垂直に通過するように前記光触媒ユニットを配置する構成としたため、紫外線ランプから放射される紫外線が外部にほとんど漏れることなく光触媒フィルタの表面に照射されて当該光触媒フィルタを効果的に活性化することができる。また、被処理ガスの流れに対し光触媒フィルタを約45度の角度に配置し、光触媒フィルタが被処理ガスの流れに対し水平にならないようにすることで、光触媒フィルタ上の最も紫外線ランプの光を強く受ける部分に有効的に被処理ガスを通過させることができる。このような構造をとることにより、有害物質除去率を向上できる。さらに、空気が光触媒ユニットを通過する際には、光触媒フィルタを少なくとも2回通過するため、有害物質の除去率が高められる。したがって、空気中にVOCや悪臭などの有害物質が高濃度に含まれている場合でも、その有害物質を十分かつ効果的に処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施の形態を示す有害物質処理装置1の外観図であり、図2は有害物質処理装置1の内部構成を示す正面図、図3はその側面図である。有害物質処理装置1は空気(被処理ガス)に含まれるVOCや悪臭などの有害物質を分解除去するものであり、図1乃至図3に示すように、箱型の筐体2を備え、筐体2の下方正面には吸気口3が形成された下段パネル4が設けられ、また、筐体2の上方正面には排気口5が形成された上段パネル6が設けられている。
【0020】
図2および図3に示すように、筐体2の内部には、オゾン発生ランプユニット10と、光触媒ユニット装置20と、オゾン分解ユニット30と、送風ファン40とが収容されている。オゾン発生ランプユニット10は吸気口3に対応して配置され、これらのオゾン発生ランプユニット10の上方に光触媒ユニット装置20とオゾン分解ユニット30とがこの順に配設され、また、排気口5に対応して送風ファン40が配置される。
【0021】
送風ファン40には、吸入口40Aおよび吐出口40Bを有するシロッコファンが用いられ、吸入口40Aが筐体2の下方、吐出口40Bが排気口5に向けて配置される。したがって、送風ファン40の駆動によって、筐体2下方の吸気口3から空気が吸い込まれ、オゾン発生ランプユニット10、光触媒ユニット装置20およびオゾン分解ユニット30を経由して排気口5から排気される。
【0022】
図3に示すように、筐体2内部下方には、吸気口3と対向する箇所に傾斜板50が配設され、この傾斜板50の傾斜により吸気口3から吸い込まれた空気が上方にスムーズに向かうように構成されている。また、吸気口3には防塵用フィルタ51が配設され、空気から塵や埃が取り除かれるようになっている。
【0023】
上記オゾン発生ランプユニット10は、活性酸素を発生させるものであり、活性酸素発生用の複数の紫外線ランプ10Aを有している。これらの紫外線ランプ10Aは、真空紫外域(波長200nm以下)の波長帯の紫外線を放射するものであり、その外球が当該紫外線を透過可能な例えば溶融石英製・合成石英製または特殊ガラス等の材質から形成されている。そして、オゾン発生ランプユニット10が空気中の酸素に真空紫外域の紫外線を照射することで酸素分子を活性化し、いわゆる「活性酸素」を発生させる。
【0024】
活性酸素とは、酸素の放電や放射線の照射時に生じる反応性の高い一群の酸素活性種を指し、酸素原子や励起酸素分子、オゾン、または、ヒドロキシラジカルや過酸化水素、アルコキシラジカルなどの活性種も含まれる。このような活性酸素は、反応性が高く、空気中に含まれるVOCや悪臭などの有害物質と即座に結合・酸化分解し、最終的には有害物質を水と二酸化炭素に分解する。したがって、オゾン発生ランプユニット10によって生成された活性酸素により、吸気口3から吸い込まれた空気に含まれる有害物質が酸化分解されることになる。
【0025】
光触媒ユニット装置20は、活性酸素により分解しきれなかった残りの有害物質を光触媒を用いて除去するものである。具体的には、図4に示すように、光触媒ユニット装置20は、紫外線ランプ210と、この紫外線ランプ210を囲うように配置された光触媒フィルタユニット220とを有する光触媒ユニット21を有し、2つの光触媒ユニット21が紫外線ランプ210の長軸方向に連設されて構成されている。さらに、この光触媒ユニット21は、紫外線ランプ210の長軸に対して垂直な方向にも複数段(本実施の形態では2段)連設されている。
【0026】
光触媒フィルタユニット220は、略矩形に形成された板状の4枚の光触媒フィルタ222と、これらの光触媒フィルタ222を断面視略正方形の中空四角柱状に組むためのフィルタフレーム221とを有して構成され、光触媒フィルタユニット220の略中心Oに紫外線ランプ210が配置されて光触媒ユニット21が構成されている。
【0027】
光触媒フィルタ222は、三次元網目構造を有するセラミック多孔体の表面に表層用セラミック粒子によって形成した凹凸表面層を有してなると共に、この凹凸表面層に光触媒を担持させてなる、通気性を有する板状材であり、光触媒として二酸化チタン(TiO2)が用いられている。
【0028】
紫外線ランプ210は、周囲に向けて紫外線を放射して、当該紫外線ランプ210を囲む各光触媒フィルタ222に紫外線を照射し、光触媒フィルタ222に担持された光触媒を活性化させるものである。本実施の形態では、かかる紫外線ランプ210として波長360nmの紫外域の波長を中心とした幅広い紫外線を放射する高圧水銀ランプが用いられている。この高圧水銀ランプは、一般的な低圧水銀ランプに比べて入力電力を何倍にも高めることが可能であり、その紫外線強度が低圧水銀ランプの1000倍以上にすることが可能である。また、高圧水銀ランプは、低圧水銀ランプからの発光紫外線が波長254nmに集中するのに対して、図5に示すように、その発光波長分布が400nm以下に幅広く分布するため、400nm以下の紫外線ならどの波長でも有効に作用する、例えば二酸化チタンなどの光触媒の活性化光源として大変適している。
【0029】
本実施の形態では、このような高圧水銀ランプを紫外線ランプ210として用いるとともに、当該紫外線ランプ210の周囲を光触媒フィルタ222により囲む構成とすることで、紫外線ランプ210から放射される紫外線を含む光を外部にほとんど漏らすことなく光触媒フィルタ222の表面に照射させることができ、当該光触媒フィルタ222に担持される光触媒を効果的に活性化させることができる。
【0030】
さらに、高圧水銀ランプを紫外線ランプ210として用いることで、光触媒フィルタ222が担持する二酸化チタンの担持密度を向上させた場合であっても、この担持密度に応じた十分に高い密度(紫外線強度)の紫外線を光触媒フィルタ222に照射可能となり、有害物質の除去率を向上させることが可能となる。さらに、光触媒フィルタ222として、その表層のみならず内部にも光触媒が含まれる部材を用いた場合、高圧水銀ランプを紫外線ランプ210として用いることで、光触媒フィルタ222の内部にまで紫外線を浸透させることができるため、光触媒フィルタ222の表層のみならず内部の光触媒も活性化させて、有害物質の除去率をより高めることが可能となる。
【0031】
なお、高圧水銀ランプは低圧水銀ランプなどの一般的な紫外線ランプと比べて発熱量が大きいため、当該高圧水銀ランプを紫外線ランプ210として用いる場合には、高圧水銀ランプの点灯を送風ファン40の駆動と連動させ、高圧水銀ランプの点灯時には、送風ファン40により高圧水銀ランプが空冷される構成とすることが望ましい。
【0032】
ここで、図4に示す紫外線ランプ210の長軸Nから光触媒フィルタ222表面までの距離Lは、光触媒フィルタ222の表面上の紫外線強度(360nm中心感度)が約10mW/cm2となる距離が最適であることが実験的に求められている。すなわち、紫外線強度がそれ以下であると、強度の低下に伴って光触媒フィルタ222の有害物質の除去率が低下し、また、それ以上の紫外線強度では有害物質の除去率が略一定となり飽和することが実験的に求められている。
【0033】
しかしながら、光触媒フィルタ222の隅部P1、P2は紫外線ランプ210からの距離が最遠方に位置するため、当該隅部P1、P2における紫外線強度が他の箇所よりも低くなる。そこで、本実施の形態では、光触媒フィルタ222の隅部P1、P2での紫外線強度が約10mW/cm2となるように、紫外線ランプ210の長軸N方向の光触媒フィルタ222の長さWが設計されており、これにより、光触媒フィルタ222の表面の各部で紫外線強度が少なくとも約10mW/cm2以上になされている。
【0034】
以上のことを踏まえ、紫外線ランプ210として、125Wの高圧水銀ランプを用いた場合、高圧水銀ランプの外球表面から光触媒フィルタ222の表面までの距離Lを約5cmとするのが適当である。
【0035】
また、図3に示すように、本実施の形態では、光触媒ユニット装置20を筐体2に配設する際に、処理対象となる空気の流れが紫外線ランプ210の長軸Nに略垂直であり、かつ、空気が光触媒ユニット21の断面対角方向に流れるように配置される。これにより、光触媒ユニット21の各側面を構成する光触媒フィルタ222が空気の流れに対して傾斜する姿勢で配置され、空気が光触媒ユニット21を通過する際に光触媒フィルタ222の表面のみならず内部をも必ず通過するようになるため、有害物質の除去率が高められる。これに加えて、空気が光触媒ユニット装置20を通過する際に、紫外線ランプ210の上下側の側面を構成する各光触媒フィルタ222を合わせて2回通過するため、光触媒フィルタ222を1回だけ通過する構成に比べて、有害物質の除去率を高められる。
【0036】
図2および図3に示すオゾン分解ユニット30は、オゾン発生ランプユニット10によって生成されたオゾンを分解するものであり、例えばマンガン触媒などのオゾン分解触媒をフィルタ材に担持させてなるフィルタユニットを備えて構成されている。ここで、オゾンガスはVOCなどの有害物質の酸化処理に重要な役割を果たすが、活性酸素(オゾン)自体は、有臭であり、また、人体に悪影響を及ぼすことが知られているため、極力空気に含まれない形で排出するようオゾン分解触媒の量を調節することが望ましい。
【0037】
以上のような構成の下、送風ファン40の駆動に伴って、トルエン等のVOCや悪臭等の有害物質を含む空気が吸気口3から吸入されると、オゾン発生ランプユニット10により生成されたオゾンなどの活性酸素と有害物質が反応して酸化される。活性酸素との反応により有害物質が完全に酸化された場合、当該有害物質は最終的に二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に至り、また、酸化途中の有害物質や酸化されなかった有害物質は後段の光触媒ユニット装置20を通過する際に更に酸化され、これにより空気中の有害物質が完全に処理されて排気口5から排出される。
【0038】
また、オゾン発生ランプユニット10によって生成されたオゾンを含む活性酸素のうち、有害物質との酸化反応に寄与しなかった活性酸素は、光触媒ユニット装置20の光触媒フィルタ222の光触媒と反応して自己分解し、また、オゾン分解ユニット30を通過する際にも除去され、これにより、排気口5から排出される空気中にオゾンガスを含まない形で排出され、オゾンにより人体に悪影響が及ぶことが防止される。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、紫外線ランプ210と、この紫外線ランプ210を囲むように配置され通気性を有する光触媒フィルタ222とを有する光触媒ユニット21を、紫外線ランプ210の長軸に対して空気が略垂直に通過するように配置する構成としたため、紫外線ランプ210から放射される紫外線を含む光を外部にほとんど漏らすことなく光触媒フィルタ222の表面に照射させて当該光触媒フィルタ222に担持される光触媒を効果的に活性化することができる。また、空気(被処理ガス)の流れに対し光触媒フィルタ222を約45度の角度に配置し、光触媒フィルタ222が空気の流れに対し水平にならないようにすることで、光触媒フィルタ222上の最も紫外線ランプ210の光を強く受ける部分に有効的に空気を通過させることができる。このような構造をとることにより、有害物質除去率を向上できる。また、空気が光触媒ユニット21を通過する際に、紫外線ランプ210の上下側の側面を構成する各光触媒フィルタ222のそれぞれを通過するため、有害物質の除去率が高められる。したがって、空気中にVOCや悪臭などの有害物質が高濃度に含まれている場合でも、その有害物質を十分かつ効果的に処理することができる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、紫外線ランプ210として高圧水銀ランプを用いたため、十分に高い密度(紫外線強度)の紫外線を光触媒フィルタ222に照射可能となり、光触媒フィルタ222の内部にまで紫外線を浸透させることができるため、光触媒フィルタ222の表層のみならず内部をも活性化させて有害物質の除去率を向上させることが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、光触媒フィルタ222表面における紫外線強度が少なくとも10mW/cm2以上となるように、紫外線ランプ210と光触媒フィルタ222とを配置する構成としたため、効率良く光触媒を活性化させることができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、空気の流れ方向における光触媒ユニット21の風上側に活性酸素発生用の紫外線ランプ10Aを配設し、当該紫外線ランプ10Aにより発生された活性酸素と、上記光触媒ユニット21とのそれぞれで有害物質を分解する構成としたため、有害物質の除去率が高められ、空気中に有害物質が高濃度に含まれている場合であっても、有害物質を十分に除去することが可能となる。
【0043】
このように、本実施の形態の有害物質処理装置1は、空気中に有害物質が高濃度に含まれている場合であっても、その有害物質を十分かつ効率的に除去することが可能であるため、塗装工場などの高濃度なVOCを発生する場所や、それに隣接する事務所や居住空間の空気の浄化に有効である。また、有害物質処理装置1は、有害物質の高い除去率(除去能力)を有するため、工場などの広い空間の空気の浄化に用いても十分に有効である。
【0044】
なお、上述した実施の形態はあくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形可能である。
【0045】
例えば上述した実施の形態において、光触媒ユニット21が備える紫外線ランプ210として高圧水銀ランプを用いた場合について例示したが、これに限らず、他の紫外線光源を用いても良い。例えば紫外線光源として、360nm中心波長のブラックライトや冷陰極ランプ、また、254nm中心波長の殺菌用ランプ、更に172nmの波長などの紫外線を放射するエキシマランプなどが紫外線ランプ210に使用可能である。
【0046】
また例えば、上述した実施の形態では、4枚の光触媒フィルタ222を組み合わせて断面視正方形の中空四角柱の光触媒フィルタユニット220を構成し、この光触媒フィルタユニット220の内部に紫外線ランプ210を配置して、当該紫外線ランプ210の周囲を光触媒フィルタ222が囲む構成としたが、光触媒フィルタユニット220の形状は、これに限らない。すなわち、紫外線ランプ210の周囲を囲む形状であり、かつ、紫外線ランプ210の長軸に対して空気が略垂直に通過するように光触媒ユニット21を配置した際に、光触媒フィルタユニット220が構成する光触媒ユニット21の側面が当該空気の流れと並行な面を有しない形状であれば、任意の形状とすることが可能である。
【0047】
また、上述した実施の形態では、光触媒フィルタ222として、三次元網目構造を有するセラミック多孔体に光触媒を担持させたフィルタを例示したが、これに限らない。すなわち、光触媒フィルタ222として、アルミニウムやステンレスなどの金属をハニカム状に形成してなる構造体に光触媒を塗布又は蒸着したものや、二酸化チタン自体をシート状にした光触媒シートといった、表層のみならず内部にも光触媒が含まれるものを用いることができる。特に、紫外線ランプ210として高強度を有する高圧水銀ランプを用いることで、その内部の光触媒をも活性化させて、光触媒フィルタ222の有害物質の除去率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る有害物質処理装置の正面図である。
【図2】有害物質処理装置の内部構造を示す正面図である。
【図3】有害物質処理装置の内部構造を示す側面図である。
【図4】光触媒ユニット装置の構成を示す図である。
【図5】紫外線ランプに用いられた高圧水銀ランプの波長分布を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 有害物質処理装置
2 筐体
3 吸気口
5 排気口
10 オゾン発生ランプユニット
10A 紫外線ランプ(活性酸素発生用の紫外線ランプ)
20 光触媒ユニット装置
21 光触媒ユニット
30 オゾン分解ユニット
210 紫外線ランプ
220 光触媒フィルタユニット
222 光触媒フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスに含まれる有害物質を処理する有害物質処理装置において、
紫外線ランプと、
前記紫外線ランプを囲み前記紫外線ランプが放射する紫外線により活性化される、通気性を有する光触媒フィルタとを有する光触媒ユニットを備え、
前記紫外線ランプの長軸に対して前記被処理ガスが略垂直に通過するように前記光触媒ユニットを配置したことを特徴とする有害物質処理装置。
【請求項2】
前記紫外線ランプは高圧水銀ランプであることを特徴とする請求項1に記載の有害物質処理装置。
【請求項3】
前記光触媒ユニットが前記紫外線ランプの長軸方向に複数連設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有害物質処理装置。
【請求項4】
前記光触媒ユニットが前記紫外線ランプの長軸に対する垂直方向に複数段連設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有害物質処理装置。
【請求項5】
前記光触媒フィルタは、3次元網目構造を有したセラミックスであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有害物質処理装置。
【請求項6】
前記光触媒フィルタ表面の紫外線強度が少なくとも10mW/cm2以上となるように、前記紫外線ランプと前記光触媒フィルタとを配置したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の有害物質処理装置。
【請求項7】
前記被処理ガスの流れ方向における前記光触媒ユニットの風上側に、活性酸素発生用の紫外線ランプを備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の有害物質処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−296980(P2006−296980A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126993(P2005−126993)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】